説明

衣類の乾燥装置

【課題】 衣類のしわ伸ばしを行いつつ、乾燥を更に効率よく行うことが可能な乾燥装置を提供する。
【解決手段】 クリーニングの仕上げ工程で衣類5を乾燥させる乾燥装置1において、内部に乾燥室2が形成された装置本体3と、乾燥室2の天井から衣類5を吊り下げる吊り下げ装置7と、吊り下げ装置7を揺動させる揺動装置8と、乾燥室2の壁面に設けられた吹き出し口4bから乾燥室2内に温風を送風する誘引ファン10と、吹き出し口4bから吹き出される温風の風向を変える風向変更羽根12とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニングの仕上げ工程で衣類を乾燥させる乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーニングした後の衣類を乾燥させる乾燥装置が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の乾燥装置は、ドライクリーニングした衣類を乾燥および仕上げするもので、蒸気を衣類に当てながら温風により衣類に染み込んでいるクリーニング液(溶剤)を揮発させ、次に蒸気を充満させて衣類を蒸らすことで皺を伸ばし、再度温風を衣類に当てて最終的な乾燥を行いつつ仕上げを行っている。そして、これらの乾燥および仕上げを行っている間、ハンガーに掛けられた衣類を振動モータの振動により揺動させている。
【特許文献1】特開平9−38400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載の乾燥装置は、衣類を揺動させつつ、蒸気による蒸らし、温風による乾燥を行うことで、乾燥および仕上げ工程を同一の装置内で効率よく行っているが、更なる乾燥効率の向上が望まれている。
それは、温風を衣類に当てる時間が長くなればなるほど、衣類に与えるダメージは大きくなるので、時間を短縮するために温風の温度を高くすることも考えられる。しかし、それは更に衣類を傷めることとなり逆効果である。
また温風の強さを強くすることも考えられるが、送風に使用するモータなどの出力を大きいものとする必要があり、消費電力が増大するだけでなく、騒音が増大する。
【0004】
そこで本発明においては、衣類のしわ伸ばしを行いつつ、乾燥を更に効率よく行うことが可能な乾燥装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の衣類の乾燥装置は、クリーニングの仕上げ工程で衣類を乾燥させる乾燥装置において、内部に乾燥室が形成された装置本体と、前記乾燥室の天井から前記衣類を吊り下げる吊り下げ手段と、前記吊り下げ手段を揺動させる揺動手段と、前記乾燥室の壁面に設けられた吹き出し口から前記乾燥室内に温風を送風する送風手段と、前記吹き出し口から吹き出される温風の風向を変える風向調整手段とを備えたことを特徴としたものである。
【0006】
吊り下げ手段により吊り下げられた湿った衣類は、送風手段からの温風に曝された状態で、揺動手段により揺動されるので、衣類を湿らせている水や溶剤を蒸発させて乾燥させつつ、衣類のしわ伸ばしをすることができる。また揺動手段により揺動される衣類は、吊り下げ手段に吊り下げられているので、衣類の下端は、その揺動に伴って振り子のように揺れる。従って、衣類が振り子のように揺れることで、吹き出し口から吹き出される温風を、様々な角度から衣類へ吹き付けることができる。更に、吹き出し口から吹き出される温風は、風向調整手段により風向きが変わるので、衣類へ吹き付けられる温風の角度をより大きく変えることができる。従って、湿気を帯びた衣類に対して様々な方向から温風を当てることができる。
【0007】
前記揺動手段が前記衣類を揺動する周期と、前記風向調整手段が前記風向を変える周期とは異なる周期とするのが望ましい。揺動手段が衣類を揺動する周期と、風向調整手段が風向を変える周期とを異なる周期とすれば、衣類が振り子のように揺れたときに当たる風向きが一定方向とならずに、様々な角度から風を当てることができる。
【0008】
更に、前記吹き出し口が前記乾燥室の壁面の下部に設けられ、前記風向調整手段が前記吹き出し口に設けられているのが望ましい。乾燥室の壁面の下部に設けられた吹き出し口から風が吹き込み、風向調整手段により風向を変えているので、湿気が残りやすい衣類の下部に、様々な角度から直に風を当てることができる。また壁面の上部に吹き出し口を配置させると、温風は冷たい空気より軽いものであり、吹き出された後の温風は徐々に温度が低下していくものなので、乾燥室の天井付近と床面付近とに温度差ができやすい。吹き出し口を乾燥室の壁面の下部に設けることで、乾燥室内を早く温度上昇させることができるだけでなく、乾燥室内の温度を均一とすることができる。更にその温風を、風向調整手段により乾燥室内の空気を撹拌するように風向を変えているので、乾燥室内の温度をより均一とすることができる。湿った衣類は、その雰囲気の中で揺動しているので、衣類全体の乾燥を促進させることができる。
【0009】
そして、前記風向調整手段により案内された風に付加するように、蒸気を噴出させる蒸気噴出手段が前記風向調整手段の前方に設けられているのが望ましい。乾燥室の壁面の下部に設けられた吹き出し口から吹き込む風に蒸気を付加するように蒸気噴出手段を設けているので、噴出された蒸気が天井付近まで上昇した後に自重で落下してくるが、吹き出し口から吹き上げられる風に乗って再び蒸気を上昇させることができる。従って、しわ伸ばしを行う際に、蒸気を乾燥室内の全体に行き渡らせることができるので、衣類に満遍なく蒸気を付着させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
(1)内部に乾燥室が形成された装置本体と、乾燥室の天井から前記衣類を吊り下げる吊り下げ手段と、吊り下げ手段を揺動させる揺動手段と、乾燥室内へ送風する送風手段と、送風手段からの温風の風向きを変える風向調整手段とを備えたことにより、湿気を帯びた衣類に対して様々な方向から風を当てることができるので、衣類の乾燥が促進され、乾燥の効率化を図ることができる。よって、送風手段により吹き出される温風の量を大きくすることなく、乾燥時間を短縮させることができるので、乾燥効率の高い乾燥装置とすることができる。
(2)揺動手段が衣類を揺動する周期と、風向調整手段が風向を変える周期とは異なる周期としたことにより、衣類が振り子のように揺れたときに当たる温風の風向きを一定方向とせずに、様々な角度から風を当てることができるので、より乾燥の効率化が図れ、乾燥時間を短縮させることができる。
(3)吹き出し口が乾燥室の壁面の下部に設けられ、風向調整手段が吹き出し口に設けられていることで、湿気が残りやすい衣類の下部に、様々な角度から直に温風を当てることができ、乾燥室内を早く温度上昇させることができるだけでなく、乾燥室内の温度を均一とすることができるので、湿りを残すことなく衣類全体を早く乾燥させることができる。
(4)風向調整手段により案内された風に付加するように、蒸気を噴出させる蒸気噴出手段が風向調整手段の前方に設けられているので、しわ伸ばしを行う際に、蒸気を乾燥室内の全体に行き渡らせることができる。従って、衣類に満遍なく蒸気を付着させることができる。よって、衣類に蒸気が付着しないために揺動させても洗濯した際のしわが残ってしまう状態を防止することができるので、品質の高い乾燥装置とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施の形態に係る衣類の乾燥装置を図1から図4に基づいて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る衣類の乾燥装置の正面図である。図2は、本発明の実施の形態に係る衣類の乾燥装置の右側面図である。図3は、本発明の実施の形態に係る衣類の乾燥装置の左側面図である。図4は、本発明の実施の形態に係る衣類の乾燥装置の平面図である。
【0012】
図1に示すように、乾燥装置1は、内部に乾燥室2が形成された装置本体3と、乾燥室2内の空気を循環させる循環管路4とを備えている。
【0013】
乾燥室2は、クリーニングの仕上げ工程で水や溶剤で湿った衣類5を乾燥させるための部屋であり、ドア3aを閉めることに密閉された空間となる。衣類5は、ハンガー6に掛けた状態で、吊り下げ装置7により吊り下げられている。この吊り下げ装置7は、装置本体3の天井に設けられた揺動装置8に接続され揺動される。
【0014】
ここで、吊り下げ装置7および揺動装置8について図5に基づいて詳細に説明する。図5(a)は吊り下げ装置7および揺動装置8を説明する側面方向から見た図であり、(b)は揺動装置8の回転円板の底面図である。
【0015】
図5(a)および同図(b)に示すように吊り下げ装置7は、乾燥室2の天井に吊り下げた状態で取り付けられたガイドレール7aと、このガイドレール7aを走行する2つの車輪部7bと、この2つの車輪部7bにより担持され、ハンガー6(図1参照)を掛ける掛止棒7cと、吊り下げ装置7の2つの車輪部7bを連結する連結板7dに直交する方向と平行となるように2枚の板を対向させて配設した平行摺動板7eとを備えている。
【0016】
そして、揺動装置8は、乾燥室2の天井上面に設けられたモータ8aと、天井を貫通するモータ8aの回転軸8a−1が中心となる位置に固定した状態で取り付けられている回転円板8bと、回転円板8bの中心から半径方向へ偏心した位置に取り付けられた駆動部8cとを備えている。駆動部8cは、回転円板8bに固定した状態で取り付けられて偏心軸8c−1と、この偏心軸8c−1に回動自在に取り付けられているローラ8c−2が設けられている。
【0017】
揺動装置8と、吊り下げ装置7とは、駆動部8cのローラ8c−2を、平行摺動板7eの間に配置した状態で接続されている。揺動装置8のモータ8aを回転させることで、吊り下げ装置7が、約1分間に90回〜100回程度の往復運動の揺動をさせることができる。
【0018】
図1から図4に戻って、装置本体3は、乾燥室2を形成する内板材としてステンレス鋼などの耐腐食材料を用いている。装置本体3の外板材は、内板材と同様にステンレス鋼などの耐腐食材料を用いているが、ボンデ鋼板なども使用することができる。内板材と外板材との間にはウレタンボードなどの断熱材が配設されている。
【0019】
循環管路4は、ボンデ鋼で形成され、装置本体3の天井と一方の側面の下部とを接続するように配設されている。循環管路4が接続している装置本体3の天井部分が、空気の流入口4aとなる。また循環管路4が接続している装置本体3の一方の側面の下部が、空気の吹き出し口4bとなっている。
【0020】
この流入口4aから吹き出し口4bまでの循環管路4には、図示しない除塵装置と、水冷式冷却フィン9と、誘引ファン10と、蒸気式加熱ヒータ11と、風向変更羽根12とが設けられている。
【0021】
水冷式冷却フィン9は、約90℃程度に加熱された乾燥室2内の温風を約50℃程度に冷却した空気とする。
【0022】
誘引ファン10は、乾燥室2の流入口4aから取り入れた温風を、循環管路4内を通過させ、吹き出し口4bから乾燥室2へ吹き出している。この誘引ファン10により、空気が循環管路4内を約7m/sの流速で通過する。
【0023】
蒸気式加熱ヒータ11は、水冷式冷却フィン9により約50℃程度となった空気を加熱して、約90℃程度とする。
【0024】
風向変更羽根12は、吹き出し口4bに設けられており、吹き出し口4bから乾燥室2内へ吹き出される温風の風向を変える風向調整手段である。
【0025】
ここで風向変更羽根12およびこの風向変更羽根12の向きを変更する風向変更部14について、図6および図7に基づいて詳細に説明する。図6は、風向変更羽根12を説明する図であり、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は吹き出し口4b部分に風向変更羽根12を取り付けた状態の断面図である。図7は、風向変更羽根12の向きを変更する風向変更部14を説明する図であり、(a)は乾燥装置1の背面から見た要部拡大図、(b)は乾燥装置1の側面から見た要部拡大図である。
【0026】
図6(a)から同図(c)に示すように風向変更羽根12は、吹き出し口4bから吹き込む温風を斜め上方へ案内するように断面略く字状に折り曲げた温風案内部12aが形成されている。風向変更羽根12の温風案内部12aが形成された反対側の端辺には、この風向変更羽根12を回動させるための回動棒12bが設けられている。
【0027】
図7(a)および同図(b)に示すように、風向変更羽根12は、この回動棒12bの両端部を循環管路4の吹き出し口4b部分の両側面に貫通させ、回動自在に取付金具13によって取り付けられている。回動棒12bの一端には、風向変更部14のリンク14aが接続されており、このリンク14aに回動自在にシリンダ14bが接続されている。このシリンダ14bは、油圧で伸縮を制御されている。シリンダ14bの伸縮は、1分間に5往復となるように設定され、揺動装置8が衣類5を揺動する周期と異なる周期としている。
【0028】
図3に示すように、吹き出し口4bから風向変更羽根12により案内される温風に付加するように、蒸気を噴出させる蒸気噴出手段である蒸気噴出パイプ16が設けられている。この蒸気噴出パイプ16は、直径が約2mmの貫通孔が設けられており、この貫通孔から蒸気を噴出する。この蒸気噴出パイプ16へ導入される蒸気は、この乾燥装置1を設置したときに外部より接続される蒸気配管(図示せず)により供給される。この蒸気配管より供給される蒸気は、蒸気噴出パイプ16へ蒸気を供給するとともに、蒸気式加熱ヒータ11へ供給され、循環管路4を循環する空気を加熱する。
【0029】
誘引ファン10が設けられている循環管路4の上流側には、水冷式冷却フィン9で温風が冷却されて液化した水と溶剤を溶剤回収装置17へ導入する溶剤導入管17aが接続されている。
【0030】
溶剤回収装置17は、液化した水と溶剤とを貯留し、その比重差から水に浮上して層をなした溶剤を図示しないオーバーフローパイプから取り出して、再利用するようにしたものである。
【0031】
水冷式冷却フィン9の起動と停止と温度管理、誘引ファン10の起動と停止、蒸気式加熱ヒータ11の起動と停止と温度管理、風向変更羽根12を回動させるシリンダ14bの伸縮の制御、蒸気噴出パイプ16から噴出される蒸気量、および揺動装置8のモータ8aの起動と停止は、制御装置15により制御され、制御装置15に設けられた操作盤により、運転方法を操作者が選択することができる。
【0032】
以上のように構成される本発明の実施の形態に係る衣類の乾燥装置1の動作および使用方法を図1から図7に基づいて説明する。
【0033】
図1に示すように、操作者は、装置本体3のドア3aを開け、ハンガー6に吊したクリーニングの仕上げ工程前の衣類5を掛止棒7cに掛ける。そして操作者は、ドア3aを閉め乾燥室2を密閉状態とする。
【0034】
操作者は、制御装置15の操作盤を操作して運転を開始する。運転開始により制御装置15は、誘引ファン10と、蒸気式加熱ヒータ11と、揺動装置8のモータ8aとを起動するとともに、風向変更羽根12を回動させるシリンダ14bを伸縮と、蒸気噴出パイプ16から蒸気を噴出させる準備とを行う。
【0035】
誘引ファン10が起動されると、流入口4aから乾燥室2内の空気が吸引され、循環管路4内を通過して吹き出し口4bから乾燥室2内へ吹き出すように循環し始める。そのうちに、蒸気式加熱ヒータ11により循環する空気は加熱され温風となる。
【0036】
図5(a)および同図(b)に示すように、揺動装置8のモータ8aは、回転することでモータ8aの回転軸8a−1に接続された回転円板8bを回転させる。回転円板8bが回転すると、この回転に伴って中心から半径方向へ偏心した位置に取り付けられた駆動部8cが回転軸8a−1を中心として回転動作を開始する。駆動部8cのローラ8c−2は、この回転動作によって平行摺動板7eに摺動しながら2枚の板と平行となる方向に往復運動する。ローラ8c−2の往復運動により平行摺動板7eは、ローラ8c−2が往復運動する方向とは直交する方向に往復運動するので、連結板7dおよび掛止棒7cを介してハンガー6に掛けられた衣類5が揺動する。この揺動により吊り下げられた衣類5は、湿らせている水や溶剤を蒸発させて乾燥させつつ、しわ伸ばしをすることができる。また揺動装置8により揺動される衣類5の下端は、その揺動に伴って振り子のように揺れる。従って、衣類5が振り子のように揺れることで、吹き出し口4bから吹き出される温風を、様々な角度から衣類5へ吹き付けることができる。また掛止棒7cに複数のハンガー6を密集させて掛けたとしても、この揺動で衣類5間に隙間ができるので、温風が当たらない箇所の発生を防止することができる。
【0037】
一方、吹き出し口4bから吹き出される風であるが、蒸気式加熱ヒータ11の加熱に伴い循環管路4を循環する空気が徐々に加熱される。加熱されることで、温風が吹き出し口4bから吹き出される。
【0038】
図7(a)および同図(b)に示すように、シリンダ14bが伸びるとリンク14aを押し、風向変更羽根12に設けられた回動棒12bを、時計回り方向R1に回動させて、風向変更羽根12の温風案内部12aが乾燥室2の上部方向へ温風を案内するように向く。そして、シリンダ14bが縮むとリンク14aを引き、回動棒12bを反時計回り方向R2に回動させて、風向変更羽根12の温風案内部12aが乾燥室2の上部方向へ温風を案内するように向く。制御装置15は、シリンダ14bの伸縮を衣類5の乾燥を行う間継続的に繰り返す。回動軸12bが時計方向R1および反時計方向R2に回動することで、風向変更羽根12の温風案内部12aは下方向30°、上方向60°の計90°角度を変える。
【0039】
このように、衣類5へ吹き付けられる温風は、衣類5が揺動しつつ、風向調整羽根12により風向きを変えているので、衣類5に吹き付けられる角度をより大きく変えることができる。従って、湿気を帯びた衣類5に対して様々な方向から温風を当てることができる。よって、衣類5の乾燥が促進され、乾燥の効率化を図ることができるので、誘引ファン10の出力を大きくして温風の送風量を増やすことなく、乾燥時間の短縮を図ることができる
【0040】
また、揺動装置8が衣類5を揺動する周期と、風向変更羽根12が風向を変える周期とは異なる周期としているので、衣類5が振り子のように揺れたときに当たる風向きを一定方向とならずに、様々な角度から風を当てることができる。従って、より乾燥時間の効率化が図れ、乾燥時間を短縮させることができる。
【0041】
また、吹き出し口4bが乾燥室2の下部に設けられているので、湿気が残りやすい衣類5の下部に、様々な角度から直に風を当てることができる。また、吹き出し口4bを乾燥室2の壁面の下部に設けることで、乾燥室2内を早く温度上昇させることができるだけでなく、乾燥室2内の温度を均一とすることができる。更に、その温風を風向変更羽根12により乾燥室2内の空気を撹拌するように風向を変えているので、乾燥室2内の温度を均一とすることができる。湿った衣類5は、その雰囲気の中で揺動しているので、衣類5全体の乾燥を促進させることができる。
【0042】
また、温風を循環管路4を取り込む流入口4aを乾燥室2の上部となる天井に設けているので、衣類5の繊維の内を通過して冷却された空気が、吹き込み口4bから吹き出される温風と混じり合うことを抑制することができる。
【0043】
蒸気式加熱ヒータ11で加熱された蒸気は、蒸気噴出パイプ16から噴出され、吹き出し口4bから吹き出される温風とともに、衣類5に吹き付けられる。乾燥室2の壁面の下部に設けられた吹き出し口4bから吹き込む温風に蒸気を付加するように蒸気噴出パイプ16を配設しているので、噴出された蒸気が天井付近まで上昇した後に自重で落下してくるが、吹き出し口から吹き上げられる風に乗って再び蒸気を上昇させることができる。従って、しわ伸ばしを行う際に、蒸気を乾燥室2内の全体に行き渡らせることができるので、衣類5に満遍なく蒸気を付着させることができる。また、衣類5は揺動して振り子のように揺れているので、蒸気が直接吹き付けられる衣類5の下部や、落下しながら付着する衣類5の上部だけなく、衣類5の中央付近も満遍なく蒸気を付着させることができる。従って衣類5へ満遍なく蒸気を付着させることができるので、衣類5に蒸気が付着しないために揺動させても洗濯した際のしわが残ってしまう状態を防止することができるので、品質の高い乾燥装置1とすることができる。
【0044】
流入口4aから吸引した乾燥室2内の空気は、水冷式冷却フィン9により冷却されることで、水蒸気の元である水と、クリーニングの洗浄工程で使用された溶剤とが液化する。液化した水と溶剤は、溶剤導入管17aを通過して溶剤回収装置17に貯留される。貯留された水と溶剤とは、徐々に蓄積され、その比重差から溶剤が水に浮上して層を形成するように分離する。水面付近に層を形成した溶剤は、オーバーフローパイプから回収され、再利用される。
【0045】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、例えば、揺動装置8は、水平方向に揺動するものであるが、上下方向、斜め上方向から斜め下方向、またはその組み合わせとしてもよい。
また、風向変更羽根12は、1枚としたが2枚以上としてもよい。2枚以上とする場合には、吹き出し口4bの開口面積応じてその間隔を適宜決定するのが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、衣類のしわ伸ばしを行いつつ、乾燥を更に効率よく行うことが可能なので、クリーニングの仕上げ工程で衣類を乾燥させる乾燥装置に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態に係る衣類の乾燥装置の正面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る衣類の乾燥装置の右側面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る衣類の乾燥装置の左側面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る衣類の乾燥装置の平面図である。
【図5】(a)は吊り下げ装置および揺動装置を説明する側面方向から見た図であり、(b)は揺動装置の回転円板の底面図である。
【図6】風向変更羽根を説明する図であり、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は吹き出し口部分に風向変更羽根を取り付けた状態の断面図である。
【図7】風向変更羽根の向きを変更する風向変更部を説明する図であり、(a)は乾燥装置の背面から見た要部拡大図、(b)は乾燥装置の側面から見た要部拡大図である。
【符号の説明】
【0048】
1 乾燥装置
2 乾燥室
3 装置本体
3a ドア
4 循環管路
4a 流入口
4b 吹き出し口
5 衣類
6 ハンガー
7 吊り下げ装置
7a ガイドレール
7b 車輪部
7c 掛止棒
7d 連結板
7e 平行摺動板
8 揺動装置
8a モータ
8a−1 回転軸
8b 回転円板
8c 駆動部
8c−1 偏心軸
8c−2 ローラ
9 水冷式冷却フィン
10 誘引ファン
11 蒸気式加熱ヒータ
12 風向変更羽根
12a 温風案内部
12b 回動棒
13 取付金具
14 風向変更部
14a リンク
14b シリンダ
15 制御装置
16 蒸気噴出パイプ
17 溶剤回収装置
17a 溶剤導入管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリーニングの仕上げ工程で衣類を乾燥させる乾燥装置において、
内部に乾燥室が形成された装置本体と、
前記乾燥室の天井から前記衣類を吊り下げる吊り下げ手段と、
前記吊り下げ手段を揺動させる揺動手段と、
前記乾燥室の壁面に設けられた吹き出し口から前記乾燥室内に温風を送風する送風手段と、
前記吹き出し口から吹き出される温風の風向を変える風向調整手段とを備えたことを特徴とする衣類の乾燥装置。
【請求項2】
前記揺動手段が前記衣類を揺動する周期と、前記風向調整手段が前記風向を変える周期とは異なる周期としたことを特徴とする請求項1記載の衣類の乾燥装置。
【請求項3】
前記吹き出し口が前記乾燥室の壁面の下部に設けられ、
前記風向調整手段が前記吹き出し口に設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の衣類の乾燥装置。
【請求項4】
前記風向調整手段により案内された温風に付加するように、蒸気を噴出させる蒸気噴出手段が前記風向調整手段の前方に設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれかの項に記載の衣類の乾燥装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリーニングの仕上げ工程で衣類を乾燥させる乾燥装置において、
内部に乾燥室が形成された装置本体と、
前記乾燥室の天井から前記衣類を吊り下げる吊り下げ手段と、
前記吊り下げ手段を揺動させる揺動手段と、
前記乾燥室の壁面の下部に設けられた吹き出し口から前記乾燥室内に温風を送風する送風手段と、
前記吹き出し口に設けられ、前記吹き出し口から吹き出される温風の風向を周期的に変える風向調整手段とを備え
前記揺動手段が前記衣類を揺動する周期と、前記風向調整手段が前記風向を変える周期とは異なる周期としたことを特徴とする衣類の乾燥装置。
【請求項2】
前記風向調整手段により案内された温風に付加するように、蒸気を噴出させる蒸気噴出手段が前記風向調整手段の前方に設けられていることを特徴とする請求項記載の衣類の乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−130157(P2006−130157A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−324191(P2004−324191)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【特許番号】特許第3744930号(P3744930)
【特許公報発行日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(594035437)マグ末広工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】