説明

衣類乾燥機

【課題】高い除湿率を維持しつつ、乾燥能力を向上して高速での乾燥を実現する。
【解決手段】ヒートポンプ装置6により加熱された温風を回転ドラム1へ供給する送風ファン12と、前記送風ファンにより送風される乾燥用空気を吸熱器10から放熱器8へ流して前記回転ドラムへと導く循環風路13とを備え、前記循環風路は、前記送風ファンの二次側で第1の風路14と第2の風路15に分岐して前記回転ドラムと連通し、分岐した一方の風路に前記ヒートポンプ装置で加熱された温風を加熱する加熱手段16を配設し、前記分岐した複数の風路の少なくとも1つの開口率を可変する風量可変手段17を設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類等の乾燥を行う衣類乾燥機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の衣類乾燥機は、乾燥風を加熱するヒータと除湿手段を組み合わせたものや、ヒートポンプ装置を用いたものが一般的であるが、ヒータと除湿手段にヒートポンプ装置を組み合わせたものも考えられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図7は、特許文献1に記載された従来の衣類乾燥機を示したものである。以下、その構成について説明する。衣類を収納する乾燥室51が本体52内の略中央部に構成され、この乾燥室51から出た乾燥用空気を再び乾燥室51へと戻す循環風路53が設けられている。循環風路53内には、乾燥室51に乾燥用空気を供給する送風ファン54と、乾燥室51に供給される乾燥用空気を加熱するヒータ55と、循環風路53を通過する乾燥用空気を除湿する熱交換器56と、循環風路53を通過する乾燥用空気をさらに除湿し加熱するヒートポンプ装置57が設けられている。
【0004】
上記の構成の場合、主除湿手段である熱交換器56に加えてヒートポンプ装置57でも除湿を行うことにより、ヒータと除湿手段のみで乾燥運転を行う場合と比べて除湿性能を向上することができ、本体外部へ放出される湿気の量を少なくすることができる。
【0005】
また、乾燥運転初期におけるヒートポンプ装置57の冷媒温度が所定の温度にまで上昇するまでの間、ヒータ55によって循環する乾燥用空気を加熱することができるため、乾燥室51を含む循環風路53全体の温度上昇を速め、ヒートポンプ装置57の蒸発器から冷媒に吸熱する熱量も増えるため、冷媒温度が目標温度にまで上昇する時間が短くなると共に、以降もヒータ55とヒートポンプ装置57の両方で乾燥用空気を加熱することで、より高温の乾燥用空気で衣類を乾燥させることが可能となり、ヒータ55やヒートポンプ装置57をそれぞれ単体で乾燥運転を行う場合より短時間での衣類乾燥を実現することができる。
【0006】
また、他の構成として、乾燥風の循環風路に外気導入口を設け、その外気導入口にヒータを設けることが考えられている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
図8は、特許文献2に記載された従来の衣類乾燥機を示したものである。以下、その構成について説明する。衣類を収納する乾燥室61から出た乾燥用空気を再び乾燥室61へと戻す循環風路62が設けられている。循環風路62内には、乾燥室61に乾燥用空気を供給する送風ファン63と、ヒートポンプ装置を構成する蒸発器64および凝縮器65が設けられている。乾燥室61から導かれた乾燥用空気を蒸発器64で冷却除湿し、凝縮器65で加熱して再度乾燥室61へと供給する。循環風路62は、蒸発器64の配設部と凝縮器65の配設部との間に外気導入口66を設け、この外気導入口66にヒータ67が設けられている。
【0008】
上記の構成の場合、乾燥運転初期はヒータ67を発熱させつつ外気を循環風路62内に導入することで、ヒートポンプ装置の冷媒の温度上昇を加速し、以降はヒータ67の発熱を停止し外気を導入することで、凝縮器65の温度過昇を防止し、高圧側の圧力上昇を抑制することができるので、ヒートポンプ装置の圧縮機の仕事を下げる必要がなくなり、乾燥運転の入力を上げることができて乾燥性能が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−62194号公報
【特許文献2】特開2008−200082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記特許文献1に記載された従来の構成では、循環風路53内にヒータ55およびヒートポンプ装置57が設けられているため、どちらか一方のみの場合と比べて圧力損失が増大するため、風量が減少して乾燥能力が低下するという問題があった。
【0011】
また、前記特許文献2に記載された従来の構成では、ヒータ67を循環風路62の主流ではなく外気導入口66に設けられているため、圧力損失の増大は避けられるが、外気を導入する分、本体外部に乾燥風を排気することとなり、除湿率が低下するという問題があった。
【0012】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、高い除湿率を維持しつつ、乾燥能力を向上して高速で乾燥できる衣類乾燥機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記従来の課題を解決するために、本発明の衣類乾燥機は、ヒートポンプ装置により加熱された温風を回転ドラムへ供給する送風ファンと、前記送風ファンにより送風される乾燥用空気を吸熱器から放熱器へ流して前記回転ドラムへと導く循環風路とを備え、前記循環風路は、前記送風ファンの二次側で複数の風路に分岐して前記回転ドラムと連通し、前記分岐した一方の風路に、前記ヒートポンプ装置で加熱された温風を加熱する加熱手段を設け、前記分岐した複数の風路の少なくとも1つの開口率を可変する風量可変手段を設けたものである。
【0014】
これによって、加熱手段を通過しない風路を別途設けることができるようになり、全体の圧力損失の増加を抑制しつつ加熱手段を循環風路内に構成することができ、また、外気混入経路もないので、除湿率を高く維持することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の衣類乾燥機は、高い除湿率を維持しつつ、乾燥能力を向上して高速での乾燥を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1における衣類乾燥機のシステム概念図
【図2】同衣類乾燥機の縦断面図
【図3】同衣類乾燥機の水平断面図
【図4】同衣類乾燥機の背面図
【図5】本発明の実施の形態2における衣類乾燥機の背面図
【図6】本発明の実施の形態3における衣類乾燥機の背面図
【図7】従来の衣類乾燥機の縦断面図
【図8】従来の他の衣類乾燥機の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
第1の発明は、衣類を内部に収容し乾燥させる回転ドラムと、前記回転ドラムを駆動するモータと、圧縮機と前記圧縮機で圧縮された冷媒の熱を放熱する放熱器と高圧の冷媒の圧力を減圧するための絞り手段と減圧されて低圧となった冷媒が周囲から熱を奪う吸熱器
とを冷媒が循環するように管路で連結したヒートポンプ装置と、前記ヒートポンプ装置により加熱された温風を前記回転ドラムへ供給する送風ファンと、前記送風ファンにより送風される乾燥用空気を前記吸熱器から放熱器へ流して前記回転ドラムへと導く循環風路とを備え、前記循環風路は、前記送風ファンの二次側で複数の風路に分岐して前記回転ドラムと連通し、前記分岐した一方の風路に、前記ヒートポンプ装置で加熱された温風を加熱する加熱手段を設け、前記分岐した複数の風路の少なくとも1つの開口率を可変する風量可変手段を設けたことにより、加熱手段を通過しない風路を別途設けることができ、全体の圧力損失の増加を抑制しつつ加熱手段を循環風路内に構成することができ、また外気混入経路もないので、除湿率も高く維持することができる。また、分岐した風路の開口率を変えて、それぞれの分岐風路に流れる風量の割合を変更することが可能となり、乾燥風の温度上昇を速めたり、風路圧損を低減して風量を増やしたりすることができる。加熱手段を通過する風量の割合を乾燥の進行に合わせて制御することで、循環流路が暖まっていない乾燥運転初期では、乾燥風温度上昇を加速させ、乾燥運転中期から末期にかけては、風量を増やすといった乾燥の進行に合わせた制御ができ、最適な風量および温風温度の制御により、効率よく乾燥を行うことができる。
【0018】
第2の発明は、特に、第1の発明の分岐した第1の風路は回転ドラムの下方に連通し、風量可変手段は、少なくとも前記第1の風路以外の風路の開口率を可変するようにしたことにより、風量可変手段を制御して第1の風路から乾燥室に吹き込む風量を増大させることで、乾燥室内における衣類の充填密度の高い下方向へ直接吹き込む乾燥風量を増大させることができ、乾燥風と衣類との接触効率を向上させて、乾燥時間を短縮することができる。
【0019】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の分岐した第1の風路は、本体の正面から見て回転ドラムが時計回りの場合は下方左側に連通し、反時計回りの場合は下方右側に連通するようにしたことにより、衣類を内部の乾燥室に収納し回転する回転ドラムは、衣類の量が少ない場合は、特に乾燥室内における衣類の充填密度に偏りが生じる。本体の正面から見て回転ドラムが時計回りの場合は下方左側、反時計回りの場合は下方右側に衣類が偏り、充填密度が高くなる。したがって、ドラムの回転によって偏る衣類の場所に対応した場所に第1の風路を連通させることができ、ダンパ部材を調整して第1の風路から吹き込む乾燥用空気の風量を増大させることにより、乾燥風と衣類との接触効率が向上し、乾燥時間を短縮することができる。
【0020】
第4の発明は、特に、第1〜第3のいずれか1つの発明に加えて、回転ドラムに投入された衣類の容量を検出する衣類容量検知手段と、前記衣類容量検知手段の情報により風量可変手段を制御する制御手段を備え、前記制御手段は、前記衣類容量検知手段からの情報によって衣類の容量を少なくとも2段階以上に分けて、衣類の量が少ないときは多いときに対して、第1の風路以外の風路の開口率を小さくするようにしたことにより、乾燥室の容量に対して衣類の容量が少ない場合、より一層乾燥室内で衣類が偏る傾向にあるため、第1の風路の開口率を他の風路と比べて高くすることにより、乾燥風と衣類との接触効率が向上し、乾燥時間を短縮することができる。
【0021】
第5の発明は、特に、第1〜第4のいずれか1つの発明の第1の風路に加熱手段を設けたことにより、より衣類と接触しやすい側の風路から吹き込む温風温度を上昇させることができ、乾燥時間を短縮することができる。
【0022】
第6の発明は、特に、第1〜第4のいずれか1つの発明の第1の風路以外の風路に加熱手段を設けたことにより、より衣類と接触しやすい側である第1の風路に、循環風路の圧力損失の要因となる加熱手段がなく、圧力損失が抑制されるので、第1の風路の風量が増加し、乾燥時間を短縮することができる。
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0024】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における衣類乾燥機のシステム概念図、図2は、同衣類乾燥機の正面から見た縦断面図、図3は、同衣類乾燥機の回転ドラムの下方を示す水平断面図、図4は、同衣類乾燥機の背面図である。
【0025】
図1〜図4において、衣類イ等の乾燥対象を収容して乾燥させる回転ドラム1は、衣類乾燥機の本体2内に回転自在に設けられ、モータ3によってドラムベルト4を介して本体2の前後水平方向に設けた回転軸5を中心として、本体2の正面から見て時計回り(矢印A方向)に回転駆動される。
【0026】
ヒートポンプ装置6は、冷媒を圧縮する圧縮機7と、圧縮機7で圧縮された高温高圧の冷媒の熱を放熱する放熱器8と、高圧の冷媒の圧力を減圧して冷媒の圧力差を維持するためのキャピラリーチューブ等の絞り手段9と、減圧されて低圧となった冷媒が周囲から熱を奪う吸熱器10とを冷媒が循環するように管路11で連結されている。矢印Bは冷媒の流れ方向を示している。
【0027】
モータ3のシャフトに取り付けられた第1の送風ファン12(送風ファン)によって送風される乾燥用空気は、循環風路13に配設した吸熱器10と放熱器8を通過し、回転ドラム1へ送風されて循環する。循環風路13は、第1の送風ファン12の二次側(下流側)で、第1の風路14と第2の風路15に分岐し、それぞれ回転ドラム1の背面へと連通する。
【0028】
第1の風路14は、本体2の正面側から見て下方左側、第2の風路15は、本体2の正面側から見て上方で乾燥室としての回転ドラム1と連通する。第1の風路14内に乾燥用空気をさらに加熱するヒータ16(加熱手段)を設け、循環風路13の分岐箇所に第2の風路15の開口率を可変できる可動自在なダンパ部材17(風量可変手段)を設けている。
【0029】
回転ドラム1から出た乾燥風は、循環風路13によって乾燥用空気を冷却する空冷式熱交換器18を通り、ヒートポンプ装置6の吸熱器10と放熱器8へと導かれ、再度第1の送風ファン12へと至る。本体2の正面下部には第2の送風ファン19が設けられ、本体2正面に設けた吸気口20から第2の送風ファン19を介して空冷式熱交換器18まで連通するダクト21によって導かれた冷却風で空冷式熱交換器18を冷却する。空冷式熱交換器18を冷却した後は、圧縮機7近傍の本体2の背面に設けられた排気口22から本体2外部へと排出される。
【0030】
フィルター23は、回転ドラム1の二次側(出口側)に少なくとも1つ設けられ、乾燥用空気中の衣類イから発生したリントやほこりを回収する。吸熱器10や空冷式熱交換器18での熱交換で発生した乾燥用空気の結露水は、吸熱器10の近傍に設けられた排水ポンプ24によって本体2の上方に設けられた排水タンク25に汲み上げられ貯められる。衣類イは、本体2の前面に開閉自在設けたドア26から出し入れされる。
【0031】
乾燥検知手段27は、回転ドラム1内に形成される乾燥室の前面部に設けられ、回転ドラム1内の衣類イに接触する電極の抵抗値から衣類イの乾燥度を検出する。温風温度検知手段28は、循環風路13内の放熱器8と回転ドラム1間、すなわち、放熱器8の下流側で回転ドラム1の上流側となる位置に設置され、衣類イに熱量を供給する前の乾燥用空気
の温度を検知する。
【0032】
衣類容量検知手段29は、回転ドラム1内に形成される乾燥室の前面に、取り付け高さを変えて設けた複数の電極から構成される。複数の電極と衣類イとの接触の有無を電極の抵抗値から検出するが、取り付け高さの異なるそれぞれの電極は、衣類イとの単位時間当たりの接触頻度が異なるため、制御手段30に事前に設定されたパラメータと照合して、衣類イの容量を推定することができる。
【0033】
制御手段30は、乾燥検知手段27、温風温度検知手段28、衣類容量検知手段29などの情報をもとにモータ3、圧縮機7、第1の送風ファン12、ヒータ16、ダンパ部材17、第2の送風ファン19などを制御し、乾燥運転を実行する。なお、矢印Cは乾燥用空気の流れを示している。
【0034】
モータ3は、本体2下部の奥側右方向に配設され、圧縮機7は、本体2下部の奥側左方向の角部近傍に配設されている。さらに、放熱器8、絞り手段9および吸熱器10は、圧縮機7の近傍に配設されることで、ヒートポンプ装置6全体の重心が回転軸5を含む垂直平面に対してモータ3の重心と略対称となっている。
【0035】
以上のように構成された衣類乾燥機について、以下その動作、作用を説明する。まず、ドア26を開いて乾燥をおこなう衣類イを回転ドラム1内に投入する。次に、乾燥運転を開始すると、モータ3が回転し、回転ドラム1および第1の送風ファン12が回転して矢印C方向に乾燥用空気の流れが生じる。
【0036】
乾燥運転初期工程では、衣類イを含む回転ドラム1内の乾燥室の温度は略室温であり、乾燥用空気と比較して低い温度であるため、衣類イの乾燥の進行が遅い。また、循環風路13を流れる乾燥風の温度も低いため、ヒートポンプ装置6の吸熱器10からの吸熱量も小さく、循環する冷媒の温度が所定の温度まで上昇するのに時間がかかる。
【0037】
そのため、ダンパ部材17を制御し、第2の風路15を閉じた状態で、ヒータ16により第1の風路14を通って回転ドラム1内に流入する乾燥風をさらに加熱する。これにより、ヒートポンプ装置6の放熱器8で加熱された乾燥風がヒータ16によってさらに加熱され、乾燥室内の温度上昇が促進されるとともに、吸熱器10からの吸熱量も増加し冷媒温度の上昇も加速するため、目標とする冷凍サイクルに対して迅速にヒートポンプ装置6が立ち上がるため、乾燥時間が短縮される。
【0038】
ヒートポンプ装置6の冷媒温度が所定の温度を超え、乾燥室も暖まった後は、ダンパ部材17の開口率を調整し、回転ドラム1内に第2の風路15からも乾燥風が吹出すようにする。これにより、循環風路13内全体の圧力損失を低減することができ、全体風量が増加するので乾燥の進行が促進されて乾燥時間が短縮され、さらに、ヒートポンプ装置6での熱交換も促進されるため、より圧縮機7の仕事を下げることができ、省エネルギーとなる。
【0039】
第1の風路14と第2の風路15から乾燥室に吹出した乾燥用空気は、回転ドラム1内の衣類イと接触し、水分を奪って多湿となった後、フィルター23を通過し、循環風路13を通って空冷式熱交換器18、ヒートポンプ装置6の吸熱器10と放熱器8へと導かれる。
【0040】
本体2の正面下部に設けられた第2の送風ファン19によって冷却された空冷式熱交換器18と、ヒートポンプ装置6の吸熱器10で乾燥用空気を冷却除湿する。除湿された乾燥空気は放熱器8で再加熱し、再び第1の送風ファン12を介して回転ドラム1へと循環
される。以上の繰り返しによって衣類イの乾燥が進行する。
【0041】
乾燥工程中、吸熱器10や空冷式熱交換器18によって乾燥用空気を除湿した際に発生した結露水は、排水ポンプ24によって本体2の上方に設けられた排水タンク25汲み上げられる。また、衣類イの乾燥が進行すると、回転ドラム1による衣類イの撹拌で、衣類イからリントが発生する。衣類イのほつれや衣類イを投入する際に紛れ込んだほこりなどの殆どのリントは、フィルター23で捕捉回収される。
【0042】
本構成においては、ヒータ16を配設した第1の風路14以外に、第2の風路15を別途設けることで、全体の圧力損失の増加を抑制しつつ、ヒータ16を循環風路13内に構成することができ、また、外気混入経路もないので除湿率を高く維持することができる。
【0043】
また、第2の風路15にダンパ部材17を設け、第2の風路15の開口率を調整することで、上記の通り、乾燥初期工程および以降の工程の双方において、乾燥時間を短縮することができ、より効率のよい乾燥運転を実現することができる。
【0044】
また、第1の風路14は、本体2の正面側から見て下方左側で乾燥室としての回転ドラム1と連通するため、本体2の正面側から見て時計回りに回転する回転ドラム1の乾燥室内において衣類イが偏り、充填密度が高い箇所と連通することとなり、ダンパ部材17の開口率を調整し、第1の風路14から乾燥室に吹き込む風量を増大させることで、乾燥風と衣類イとの接触効率が向上するため、乾燥時間が短縮される。
【0045】
さらに、制御手段30は、回転ドラム1に投入された衣類イの容量を検出する衣類容量検知手段29の情報により風量可変手段29を制御し、衣類容量検知手段29からの情報によって衣類イの容量を少なくとも2段階以上に分けて、衣類イの量が少ないときは多いときに対して、第1の風路14以外の風路(第2の風路15)の開口率を小さくするようにしたものであり、乾燥室の容量に対して衣類イの容量が一定以上少ないときは、第1の風路14の開口率を第2の風路15と比べて大きくすることにより、乾燥室内で衣類イが偏る場合においても、乾燥風と衣類イとの接触効率が向上し、乾燥時間を短縮することができる。
【0046】
また、より衣類イと接触しやすい第1の風路14にヒータ16を配設することで、衣類イの乾燥が促進され、乾燥時間が短縮される。
【0047】
なお、本実施の形態では、循環風路13の分岐箇所に設けたダンパ部材17は、第2の風路15の開口率のみを可変できる構成としたが、それに限るものではなく、第1の風路14と第2の風路15の両方の開口率を可変できるものとしてもよい。それによって、乾燥運転終了間際のリントが発生しやすい運転時間は、第1の風路14を完全に閉じることで、ヒータ16へリントが付着するのを防止することができる。
【0048】
なお、本実施の形態では、回転軸5を水平方向としたが、それに限るものではなく、前方高位方向へ前上がりに5〜45度程度傾けてもよい。これにより、回転ドラム1の衣類投入口を開閉するドア26が斜め上方向に向かって開閉できるようになるため、回転ドラム1内への衣類イの投入および取り出しが容易になる。
【0049】
なお、本実施の形態では、回転ドラム1の回転方向を本体2の正面側から見て時計回りとしたが、それに限るものではなく、反時計回りでもよい。また、時計回りと反時計回りを所定の時間毎、もしくは、所定の制御シーケンスによって交互に反転するようにしてよい。
【0050】
なお、本実施の形態では、第1の送風ファン12をモータ3のシャフトに直結する構成としたが、それに限るものではなく、回転ドラム1の駆動と同様にベルトを介して駆動させてもよい。これにより、第1の送風ファン12の配置の自由度が広がり、放熱器8のすぐ背面側に配設することによって、回転ドラム1へと乾燥用空気を導く構成とすることができ、その結果、循環風路13の圧力損失を低減させることができる。
【0051】
なお、本実施の形態では、排水ポンプ24を用いて除湿水を排水タンク25に溜める構成としたが、それに限るものではなく、吸熱器10の近傍に排水口を開口し、本体2外部へ排出する構成としてもよい。
【0052】
なお、本実施の形態では、温風温度検知手段28を用いて乾燥用空気の温度を検出し、モータ3、圧縮機7などを制御する構成としたが、それに限るものではなく、ヒートポンプ装置6の放熱器8近傍の管路11に取り付けた冷媒温度検出手段から検出される冷媒温度によって、温風温度を推測する構成としてもよい。
【0053】
なお、本実施の形態では、乾燥検知手段27と衣類容量検知手段29は、それぞれ独立したもので構成したが、それに限るものではなく、共用してもよい。その場合、衣類容量検知手段29を構成する複数の電極の内、回転ドラム1の下方に取り付けた電極を乾燥検知手段27と共用することで、衣類イの容量が少ない場合においても精度良く乾燥検知が行える。
【0054】
なお、本実施の形態では、衣類容量検知手段29は、乾燥室の前面に取り付け高さを変えて設けた複数の電極によって構成したが、それに限るものではなく、回転ドラム1内の衣類イを回転させるために回転ドラム1内に設けたバッフルに電極を構成してもよい。この場合は、回転ドラム1が回転するのに合わせてバッフルに取り付けた電極も回転し、衣類イに対する高さ方向の位置が変わる。これによって各々の電極の位置における衣類イとの接触頻度を検出でき、衣類イの容量を推定することができる。
【0055】
(実施の形態2)
図5は、本発明の第2の実施の形態における衣類乾燥機の背面図である。本実施の形態の特徴は、第2の風路15にヒータ16とダンパ部材17を設けたものである。他の構成は実施の形態1と同じであり、同一の構成に同一の符号を付して、詳細な説明は実施の形態1のものを援用する。
【0056】
図5において、ヒータ16とダンパ部材17は、第2の風路15内に設けられている。乾燥運転の初期工程では、第2の風路15を全開口とした状態となるようにダンパ部材17を制御し、ヒータ16により通過する乾燥風を加熱する。これにより、ヒートポンプ装置6の放熱器8で加熱された乾燥風の一部はヒータ16でさらに加熱され、乾燥室内の温度上昇が促進される。また、吸熱器10からの吸熱量も増加し冷媒温度の上昇も加速するため、目標とする冷凍サイクルに対して迅速にヒートポンプ装置6が立ち上がるため、乾燥時間が短縮される。
【0057】
さらに、ヒータ16が配設されていない第1の風路14が設けられることで、ヒータ16を循環風路13内に構成しつつ、循環風路13内の圧力損失を低減することができ、全体風量が増加し、かつ、乾燥室全体に温風が吹き込む構成となり、乾燥室全体を素早く暖めることができる。
【0058】
乾燥室が暖まった後は、温風温度検知手段28、衣類容量検知手段29などの情報をもとに、ダンパ部材17の開口率を調整して第1の風路14から乾燥室に吹き込む風量を増大させる。これによって、乾燥室内における衣類イの充填密度の高い下方向へ直接吹き込
む乾燥風量が増大することとなり、乾燥風と衣類イとの接触効率が向上することに加え、圧力損失の要因となるヒータ16を第1の風路14内に構成していないため、第1の風路14内にヒータ16を配設した場合と比べて風量が増大するので、乾燥が促進され、乾燥時間が短縮される。
【0059】
なお、本実施の形態では、分岐箇所に設けたダンパ部材17は、第2の風路15の開口率のみを可変できる構成としたが、それに限るものではなく、第1の風路14と第2の風路15の両方の開口率を可変できるようにしてもよい。それによって、乾燥運転の初期工程では、第1の風路14を完全に閉じることで乾燥風の全てをヒータ16でさらに加熱することができ、より乾燥時間の短縮が可能となる。
【0060】
(実施の形態3)
図6は、本発明の第3の実施の形態における衣類乾燥機の背面図である。本実施の形態の特徴は、第1の風路14は、本体2の正面から見て回転ドラム1が時計回り(矢印A方向)の場合は、回転ドラム1の下方左側に連通し、反時計回りの場合は回転ドラム1の下方右側に連通するようにしたものである。他の構成は実施の形態1と同じであり、同一の構成に同一の符号を付して、詳細な説明は実施の形態1のものを援用する。
【0061】
図6において、第1の風路14は本体2の正面側から見て下方左側、第2の風路15は下方右側で乾燥室としての回転ドラム1と連通する。第1の風路14内に乾燥用空気をさらに加熱するヒータ16を設け、循環風路13の分岐箇所に第2の風路15の開口率を可変できるダンパ部材17を設けている。
【0062】
乾燥運転初期工程では、ダンパ部材17を制御し、第2の風路15を閉じた状態でヒータ16により乾燥風をさらに加熱する。これにより、実施の形態1と同様、ヒートポンプ装置6の放熱器8で加熱された乾燥風はヒータ16でさらに加熱され、乾燥室内の温度上昇が促進され、吸熱器10からの吸熱量も増加し、冷媒温度の上昇も加速するため、目標とする冷凍サイクルに対して迅速にヒートポンプ装置6が立ち上がるため、乾燥時間が短縮される。
【0063】
ヒートポンプ装置6の冷媒温度が所定の温度を超え、乾燥室も暖まった後は、ダンパ部材17の開口率を調整し、回転ドラム1内に第2の風路15からも乾燥風が吹出すようにする。これにより、循環風路13内全体の圧力損失を低減することとなり、全体風量が増加するので乾燥の進行も促進されて乾燥時間が短縮され、さらに、ヒートポンプ装置6での熱交換も促進されるため、より圧縮機7の仕事を下げることができ、省エネルギーとなる。
【0064】
また、第1の風路14と第2の風路15は、ともに回転ドラム1の下側で連通しているため、乾燥室内における衣類イの充填密度の高い下方向へ直接乾燥風が吹き込むことができるようになり、乾燥風と衣類イの接触効率が向上するため、乾燥時間が短縮される。
【0065】
また、第1の風路14にヒータ16を設けているため、本体2の正面から見て時計回りに回転する回転ドラム1の乾燥室内において、より衣類イの充填密度が高い箇所へ吹き込む乾燥風の温度を高めることができ、さらに乾燥時間が短縮される。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上のように、本発明にかかる衣類乾燥機は、高い除湿率を維持しつつ、乾燥能力を向上して高速での乾燥を実現することができるので、衣類乾燥機として有用である。
【符号の説明】
【0067】
1 回転ドラム
3 モータ
6 ヒートポンプ装置
7 圧縮機
8 放熱器
9 絞り手段
10 吸熱器
11 管路
12 第1の送風ファン(送風ファン)
13 循環風路
14 第1の風路(風路)
15 第2の風路(風路)
16 ヒータ(加熱手段)
17 ダンパ部材(風量可変手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣類を内部に収容し乾燥させる回転ドラムと、前記回転ドラムを駆動するモータと、圧縮機と前記圧縮機で圧縮された冷媒の熱を放熱する放熱器と高圧の冷媒の圧力を減圧するための絞り手段と減圧されて低圧となった冷媒が周囲から熱を奪う吸熱器とを冷媒が循環するように管路で連結したヒートポンプ装置と、前記ヒートポンプ装置により加熱された温風を前記回転ドラムへ供給する送風ファンと、前記送風ファンにより送風される乾燥用空気を前記吸熱器から放熱器へ流して前記回転ドラムへと導く循環風路とを備え、前記循環風路は、前記送風ファンの二次側で複数の風路に分岐して前記回転ドラムと連通し、前記分岐した一方の風路に、前記ヒートポンプ装置で加熱された温風を加熱する加熱手段を設け、前記分岐した複数の風路の少なくとも1つの開口率を可変する風量可変手段を設けた衣類乾燥機。
【請求項2】
分岐した第1の風路は回転ドラムの下方に連通し、風量可変手段は、少なくとも前記第1の風路以外の風路の開口率を可変するようにした請求項1記載の衣類乾燥機。
【請求項3】
分岐した第1の風路は、本体の正面から見て回転ドラムが時計回りの場合は下方左側に連通し、反時計回りの場合は下方右側に連通するようにした請求項1または2記載の衣類乾燥機。
【請求項4】
回転ドラムに投入された衣類の容量を検出する衣類容量検知手段と、前記衣類容量検知手段の情報により風量可変手段を制御する制御手段を備え、前記制御手段は、前記衣類容量検知手段からの情報によって衣類の容量を少なくとも2段階以上に分けて、衣類の量が少ないときは多いときに対して、第1の風路以外の風路の開口率を小さくするようにした請求項1〜3のいずれか1項に記載の衣類乾燥機。
【請求項5】
第1の風路に加熱手段を設けた請求項1〜4のいずれか1項に記載の衣類乾燥機。
【請求項6】
第1の風路以外の風路に加熱手段を設けた請求項1〜4のいずれか1項に記載の衣類乾燥機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−85681(P2013−85681A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228565(P2011−228565)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】