説明

衣類投入機

【課題】袖の展開が確実に行え、皺が発生しない衣類投入機を提供する。
【解決手段】洗濯した後の半乾燥状態の衣類Cをアイロナーに投入するための投入装置であって、衣類Cを預け渡す下コンベヤ1および上コンベヤ2と、衣類Cを被せて整姿状態とし、下コンベヤ1および上コンベヤ2に衣類を渡す整形体10を備えており、整形体10は、左右方向に伸縮して、衣類の両袖を左右方向に展開する左右一対のアーム21と、アーム21で展開された両袖を垂れ下りを抑制するように空気を吹き付ける左右一対のエアブローノズルを備えている。エアブローノズルは、前記アームで展開された両袖の上縁に空気を吹き付ける上ノズル25と、両袖の端縁に向けて空気を吹き付ける下ノズル26とからなる。アーム21で袖を大体展開した状態で、更にエアブローノズル25、26で袖を完全に展開するので、袖に皺がない状態でコンベヤ機構に送り込める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類投入機に関する。さらに詳しくは、洗濯した後の半乾燥状態の衣類を整形体に掛けることによって整姿状態とし、整形体からコンベヤへ衣類を預け渡し、最終的には、アイロン掛けを行うアイロナーや折り畳み機等へ衣類を搬送する衣類投入機に関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯した後に半乾燥した衣類をアイロナー、あるいは折り畳み機等へ投入するために、整形体を有する投入機を使用することは既に公知である。整形体は、たとえば模擬人体と称される部材を有し、そこに衣類を着せるように掛けて整姿状態とし、袖を伸ばすなどして、衣類が原形に近い状態で仕上げられるようにされている。このような投入装置の従来例として特許文献1がある。
【0003】
この特許文献1の従来技術は図13に示すように、投入機本体111の下部前面に整形体112を備え、本体111の上部に下コンベヤ121および上コンベヤ122を備えている。整形体112の基端部はベース113に対し傾斜自在に取付けられ、伸縮機構114で昇降自在である。また、整形体112の上部には左右の伸縮腕115,116が取付けられ、この伸縮腕115,116は左右の伸縮機構117,118で左右方向に伸長したり収縮するようになっている。
【0004】
そして、半乾燥した衣類を投入するときは、図14に示すように、まず、(a)整形体112に衣類Cを被せ、ついで、(b)伸縮腕115,116を伸ばして衣類Cの袖を左右に広げ、さらに(c)整形体112を上昇させる。この動作により図13に示す上下コンベヤ121,122に受け渡すことができる。
【0005】
しかるに、上記従来例では伸縮腕115,116を伸長させるだけであるので、左右の袖の両端部に垂れ下がりが生じ、衣類Cの袖を完全に左右に広げることができなかった。このため、アイロナーでアイロン掛けしても、袖に皺が残ったままアイロンされるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-87321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、左右の袖の展開が端々まで確実に行え、皺が発生しない衣類投入機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明の衣類投入機は、洗濯した後の半乾燥状態の衣類を後工程装置に投入するための投入装置であって、後工程装置に衣類を預け渡すコンベヤ機構と、衣類等を被せて整姿状態とし、前記コンベヤ機構に衣類を渡す整形体を備えており、該整形体は、左右方向に伸縮して、衣類の両袖を左右方向に展開する左右一対のアームと、該アームで展開された両袖を垂れ下りを抑制するように空気を吹き付ける左右一対のエアブローノズルを備えていることを特徴とする。
第2発明の衣類投入機は、第1発明において、前記エアブローノズルには、前記アームで展開された両袖の上縁に空気を吹き付ける上ノズルと、両袖の端縁に向けて空気を吹き付ける下ノズルとからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
第1発明によれば、アームで両袖を大体展開した状態で、さらにエアブローノズルで袖を完全に展開するので、袖に皺がない状態で、コンベヤ機構に送り込むことができ、後工程装置で皺のない状態に仕上げることができる。
第2発明によれば、上ノズルで衣類の両袖の上縁が垂れ下がらないように風圧で支持し、下ノズルで両袖の端縁が左右両方向に広げた状態となるように風圧をかけるので、袖に皺がない状態でコンベヤ機構に送り込むことができ、皺のない状態に仕上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の衣類投入機で用いられる袖展開機構の構造説明図である。
【図2】図1の袖展開機構における展開初期の説明図である。
【図3】図1の袖展開機構における展開完了時の説明図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る衣類投入機の正面図である。
【図5】図4の衣類投入機の側面図である。
【図6】上コンベヤ2と下コンベヤ1からなるコンベヤ機構の正面図である。
【図7】上コンベヤ2と下コンベヤ1からなるコンベヤ機構の断面図である。
【図8】袖バキュームボックスの正面図である。
【図9】袖バキュームボックスの断面図である。
【図10】整形体10の正面図である。
【図11】整形体10の側面図である。
【図12】(A)は整形体10の正面一部破断図、(B)は(A)図のB−B線横断面図である。
【図13】従来の衣類投入機の正面図である。
【図14】従来例による衣類投入作業の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
つぎに、本発明の一実施形態に係る衣類投入機を図面に基づき説明する。
まず、図4および図5に基づき本実施形態に係る衣類投入機の基本構成を説明する。
衣類投入機Pの下部正面には、整形体10が立設され、衣類投入機Pの上部正面には、下コンベヤ1と上コンベヤ2の対が設けられている。下コンベヤ1と上コンベヤ2の対が、特許請求の範囲にいうコンベヤ機構である。整形体10は洗濯した後に半乾燥した衣類C(代表的には浴衣やガウンであるが、これには限られない)を整姿状態とし、その状態で衣類Cを下コンベヤ1と上コンベヤ2の間に挿入する装置である。
【0012】
下コンベヤ1と上コンベヤ2の対は、整形体10から送り込まれた衣類Cを受け取って、搬送を開始するための機構である。このコンベヤ1,2の下流には更にコンベヤC1,C2、C3が連設され、ロールアイロナーRにつなげられている。ロールアイロナーRは衣類にアイロン掛けをする公知の装置である。なお、アイロナーRの代りに折り畳み装置が設けられることもある。アイロナーRや折り畳み装置が特許請求の範囲にいう後工程装置である。
【0013】
上記衣類投入機Pの各部の詳細説明をさらに続ける。
図6および図7に示すように、下コンベヤ1は10本から20本位のベルト1aを並列に掛け並べたもので、その全幅は衣類Cの両軸を広げたときの幅よりも広くなっている。各ベルト1aは数本のガイドロール1bと背面吸引ボックス3の吸引面に掛け回されている。
【0014】
上コンベヤ2は下コンベヤ1の幅方向中央部における上方部分に配置されている。その構成は、数本(図では6本)のベルト2aを並列に掛け並べたもので、その幅は衣類Cの肩幅に相当する程度である。各ベルト2aは、上下に配置した水平なガイドローラ2bに掛け回されており、2本のガイドローラ2bは左右に離れて配置された2本の傾動アーム2cに軸支されている。この傾動アーム2cの上端にはエアシリンダ2dが連結されている。このため、エアシリンダ2dを伸縮させることにより、上コンベヤ2を下コンベヤ1に接触させた接触位置とそこから離れた離間位置との間で姿勢変更することができる。
【0015】
背面吸引ボックス3は投入機Pの前面内側に設けられており、下コンベヤ1とほぼ同じ全幅、つまり衣類Cの両袖(広げられた状態)の全幅よりも広いをもっている。また、下コンベヤ1のベルト1aは多孔ベルトであり、背面吸引ボックス3による空気の吸引を許容する。このため、衣類Cの背面を吸引して落下しないように保持することができる。
【0016】
下コンベヤ2の左右両端部の前面には、図4に示すように、袖吸引ボックス4、4が左右に2個設けられている。つまり、袖吸引ボックス4、4は衣類の両袖を左右方向に吸引する位置に配置されている。この袖吸引ボックス4は、図8および図9に示すように、上傾動アーム4aと下傾動アーム4bで支持されており、上傾動アーム4aにはエアシリンダ4cが連結されている。このため、エアシリンダ4cを伸縮させると、袖吸引ボックス4を下コンベヤ1の表面に近接した吸引位置とここから離れた離間位置との間で姿勢変更することができる。なお、4eは袖吸引ボックス4の内側に取付けられた透明板で、空気の流れを案内しつつ、作業員が袖の状態を視認できるようにしている。
【0017】
前記背面吸引ボックス3と袖吸引ボックス4は、ダクト5a、5b、5cでブロア5dに接続されている。また、ブロア5cの入側ダクトには、ダンパー5e、5fを取付けており、背面吸引ボックス3と袖吸引ボックス4の吸引・停止を制御できるようになっている。
【0018】
図10および図11に基づき、整形体10の基本構造を説明する。
整形体10は基板11と昇降板12を備えている。基板11はベース部材13にピンで前後傾自在に軸支されており、エアシリンダ14で直立姿勢と少し後方に傾斜した後傾姿勢との間で傾斜動作できるようになっている。
【0019】
図12に基づき、整形体10の昇降機構を説明する。基板11には縦方向にレール15aが取付けられており、昇降板12にはスライダ15bが取付けられ、レール15aにはスライダ15bが昇降自在となっている。また、基板11と昇降板12との間には伸縮機構としてのエアシリンダ16が取付けられている。このため、エアシリンダ16を昇降させると、昇降板12が上昇したり下降したりする。
なお、昇降板12には前カバー17が取付けられており、この前カバー17は基板11の前面も覆っている。
【0020】
つぎに、本発明の特徴である整形体10に設けられた袖展開機構を説明する。
図1において、21は左右のアームであり、衣類Cの左右の袖を左右方向に張り出すための部材である。
各アーム21は湾曲しており、上昇動作することによって左右に張り出すようになっている。この動作を可能とするため、その下端部分はエアシリンダ22に連結されており、かつ各アーム21の上端部分は3個のガイドローラ23で挟まれている。
【0021】
このため、エアシリンダ22を伸長すると、図2に示すように各アーム21はガイドローラ23で案内され、左右両方向に張り出すことになる。なお、エアシリンダ22を収縮させると、各アーム21は図1に示すように、引き込まれる。
【0022】
本発明では上記アーム21に加え、ブローノズル25、26が追加されている点が特徴である。ブローノズル25、26は昇降板12の上端部において、右側縁と左側縁の2か所に2個づつ設置されている。
上段のノズル25は斜め上方であって外向きに空気を吹き出すものであり、下段のノズル26は横向きかつ外向きに空気を吹き出すものである。
【0023】
上記のブローノズル25、26から噴き出される空気は衣類Cの両袖の内部に空気を吹き入れる。しかも上段ノズル25が斜め上方に吹く空気は袖の上縁を真横に向けて支え、下段ノズル26が横向きに吹く空気は袖全体の垂れ下がりを抑止するので、衣類Cの両袖は真横に向けて展開され、先端部においても垂れ下がることはない。
【0024】
つぎに、本実施形態における衣類投入機Pの投入動作を説明する。
まず全体の動作手順は、次のとおりである。
(1)投入動作前の整形体10は、図10および図11に実線で示すように、下降位置にあり、直立している。この状態で整形体10に衣類Cを被せる。
(2)整形体10が図10および図11の点線で示すように、コンベヤ1の面に沿う角度に後傾し、昇降体12が上昇する。この状態になった後、衣類Cの袖を左右に広げる展開作業が行われるが、その詳細は後述する。
(3)図4に示すように、袖吸引ボックス4が下コンベヤ1の面に沿った状態で吸引すると、衣類Cの左右の袖は左右に展開される。
(4)袖吸引ボックス4の吸引を停止し、同時に背面吸引ボックス3が吸引を開始すると下コンベヤ1の表面に衣類Cが張り付く。
(5)上コンベヤ2が下降し衣類Cの衿付近をコンベヤ1と挟み込む。同時に袖吸引ボックス4が旋回して上昇する。
(6)整形体10が下降し、同時に下コンベヤ1が起動して衣類Cだけが搬送される。
(7)衣類Cが下コンベヤ1を通過し終えると、背面吸引ボックス3は吸引を止める。
(8)衣類Cはその後、コンベヤC1、C2、C3の順番で搬送され、ロールアイロナーRまで搬送される。
【0025】
次に、本発明の特徴部分である袖展開動作を、図1〜図3に基づき説明する。
整形体10は、左右一対のアーム21を備えており、各アーム21はエアシリンダ等のアクチュエータ22で、左右に出没できることは、既述のとおりである。
没入状態では各アーム21は整形体10内に収まり(図1参照)、張り出し状態では衣類の袖の中に入り袖を左右に半分位展開することができる(図2参照)。
【0026】
図2に示すように、アーム21が左右に飛び出し、袖を5割程展開させるが、そのアーム動作と同時に、人体内部に設置したブローノズル25、26よりエアブローをアームの軌跡上に吹きつける。このときから、袖Csはアーム21の動きとエアー圧を受けて、先端部分の袖も左右に張られることになる。そして、図3に示すように、アーム21が完全に延びた状態で、なお、2組のブローノズル25、26がエアーを吹きだすと、衣類の両方の袖Csは完全に左右に展開される。すなわち、上段ノズル25が斜め上方に吹く空気は袖の上縁を真横に向けて支え、下段ノズル26が横向きに吹く空気は袖全体の垂れ下がりを抑止するので、衣類Cの両袖は真横に向けて展開され、先端部においても垂れ下がることはない。
【0027】
以上のように、衣類Cの両袖が展開した後は、袖吸引ボックス4で、袖をバキューム力にて引っ張り、皺を伸ばし完全に展開させ前記(5)で述べたように、上コンベヤ2と下コンベヤ1で衣類Cの搬送を開始する。
【0028】
本実施形態によれば、アーム21での展開、袖吸引ボックス4によるバキュームでの展開作業がエアブローにて補助でき、高速処理が行える。
また、エアブローは、アームアクチュエーターの経年劣化による速度低下やバキューム吸引力低下(ごみつまりなど)の悪影響に依存しないという利点もある。
【0029】
(他の実施形態)
上記実施形態では、ブローノズルを2個用いたが、上ノズル25と下ノズル26のいずれか一方でもよい。また、2個のノズル25、26に別のノズルを加えて、更にエアーブローカを増大させてもよい。
【0030】
(先の出願の記載事項)
以下は、先の出願における袖展開機構の記載である。ただし、符号は本項の実施形態に合わせるよう変更している。
【0031】
A.袖展開機構
整形体10は、左右一対のアーム21を備えており、各アーム21はエアシリンダ等のアクチュエータ22で、左右に出没するようになっている。
没入状態では各アーム21は整形体10内に収まり、張り出し状態では衣類の袖の中に入り袖を左右に半分位展開することができる。
整形体10に着せた衣類等の袖の中に空気を送り込める位置にはブローノズル61が取り付けられている。
このブローノズル25、26は、袖の内部の上面にエアーを吹くものと、袖の開口側にエアーを吹くものの2組からなる。
この2組のブローノズル25、26がエアーを吹きだすと、衣類の両方の袖Csは完全に左右に展開される。
【0032】
(動作概略)
動作手順(3)においてアーム21が左右に飛び出し、袖を5割程展開させるが、そのアーム動作と同時に、人体内部に設置したブローノズル61よりエアブローをアーム軌跡上に吹く。
また、動作(4)において袖をバキューム力にて引っ張り、皺を伸ばし完全に展開させるが、同時に、同ブローノズル25、26よりエアブローを吹く。
【0033】
(効果)
アーム21での展開、バキュームでの展開作業がエアブローにて補助でき、高速処理が行える。
また、エアブローということでアームアクチュエーターの経年劣化による速度低下やバキューム吸引力低下(ごみつまりなど)の悪影響に依存しない。
【符号の説明】
【0034】
1 下コンベヤ
2 上コンベヤ
10 整形体
11 基板
12 昇降板
21 アーム
4 袖吸引ボックス
25、26 ブローノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯した後の半乾燥状態の衣類を後工程装置に投入するための投入装置であって、
後工程装置に衣類を預け渡すコンベヤ機構と、
衣類等を被せて整姿状態とし、前記コンベヤ機構に衣類を渡す整形体を備えており、
該整形体は、左右方向に伸縮して、衣類の両袖を左右方向に展開する左右一対のアームと、
該アームで展開された両袖を垂れ下りを抑制するように空気を吹き付ける左右一対のエアブローノズルを備えている
ことを特徴とする衣類投入機。
【請求項2】
前記エアブローノズルには、前記アームで展開された両袖の上縁に空気を吹き付ける上ノズルと、両袖の端縁に向けて空気を吹き付ける下ノズルとからなる
ことを特徴とする請求項1記載の衣類投入機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2012−125538(P2012−125538A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99228(P2011−99228)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(502407130)株式会社プレックス (75)