説明

衣類整形供給装置

【課題】 衣類整形供給装置として、従来から衣類を人型に着せ掛けるようにしたもの(特公平1−61079号)や、袖送りコンベアを上下にスイングさせるようにしたもの(特公平4−59920号)が知られているが、何れも構成が複雑でコスト高であった。
【解決手段】 衣類整形供給装置において、衣類の両袖Yd,Ydを広げた状態で該衣類Yを載せ掛け得る載せ掛けコンベア3を有し、該載せ掛けコンベア3の上部に、衣類Yの左右各襟下Yc,Yc部分をそれぞれ着脱自在に保持できる左右一対の襟下保持手段5,5と、該各襟下保持手段5,5を載せ掛けコンベア3上の使用位置と該載せ掛けコンベア3の上方に退避する退避位置との間で変位せしめる変位作動手段6とを有した整形補助装置4を備え、衣類Yを載せ掛けコンベア3上で整形する際に衣類の各襟下Yc,Yc部分を各襟下保持手段5,5で保持した状態で行えるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、例えばクリーニング工場において、洗濯・脱水後の浴衣やガウンのような袖つき衣類を整形した状態で次工程(例えばプレス工程や折畳み工程)側へ供給し得るようにした衣類整形供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クリーニング工場において浴衣やガウンのような袖つき衣類は、洗濯・脱水後にきれいに整形した状態で次工程(プレス工程や折畳み工程)側へ送り込んで所定の処理を行うが、その場合、衣類をきれいに展張(整形)させた状態で供給する必要がある。
【0003】
洗濯後の衣類をきれいに整形した(両袖を左右に展張させ、身頃をきれいに合わした)状態で次工程側に供給するための整形供給装置として、従来から特開2001−799号公報(特許文献1)に示されるものや、特公平4−59920号公報(特許文献2)に示されるものが知られている。
【0004】
特許文献1(特開2001−799号公報)の衣類整形供給装置は、衣類を着せ掛け得る人型本体に各袖を左右に展張させる腕部材を出没自在に取付けるとともに、人型全体を下方の衣類着せ掛け位置と上方の衣類受け渡し位置との間で昇降させ得るように構成されている。そして、この特許文献1の衣類整形供給装置では、人型を下方に降ろした状態(各腕部材は人型本体内に格納されている)で、人型本体に衣類を着せ掛けた後、スタートボタンを押すと、各腕部材が左右水平位置に突出して着せ掛けている衣類の両袖を左右に伸展させ、続いて人型が上動して、上方に待機している挟持コンベアで衣類の上辺部分を挟み取って該衣類を展張状態のまま人型から抜き外すようになっている。
【0005】
特許文献2(特公平4−59920号公報)の衣類整形供給装置は、衣類の背幅程度の幅のセンターテーブルの左右各側にそれぞれ袖送りコンベアを吊下姿勢と水平姿勢との間の角度90°の範囲で上下にスイングするように設置しているとともに、センターテーブルの上方直近において衣類の裾を保持して奥方向へ引っ張る裾搬送手段を設けている。そして、この特許文献2の衣類整形供給装置では、衣類の裾を衣類の背幅程度に折畳んだ状態でセンターテーブルの前部寄り上方において裾搬送手段の裾保持部に保持させ、その裾保持部を裾搬送手段で奥方向に引っ張り、衣類の袖が吊下姿勢の各袖送りコンベアの外面に対応する位置で搬送動作を停止させ(このとき衣類の背部分の下半部が供給コンベア上に載る)、続いて吊下姿勢の各袖送りコンベアを水平姿勢まで外側にスイングさせて該各袖送りコンベアでそれぞれ各袖を掬い上げる。その後、供給コンベア及び各袖送りコンベアが駆動して、衣類を展張状態のまま次工程(プレス機)側に搬送させるようになっている。
【0006】
ところで、上記特許文献1(特開2001−799号公報)の人型昇降式の衣類整形供給装置では、人型本体に対して両腕部材を出没させたり人型全体を昇降させたりする必要があって構造が複雑となり、且つ装置全体が大掛かりとなって製作コストが高くなるという問題がある。又、上記特許文献2(特公平4−59920号公報)の袖送りコンベアスイング式の衣類整形供給装置では、各袖送りコンベアを上下にスイングさせる必要があるので、この場合も構造が複雑となり、且つ装置全体が大掛かりとなって製作コストが高くなるという問題がある。
【0007】
他方、本件出願人は、この種の衣類整形供給装置として、図8及び図9に示す簡易なものを提供している。この図8及び図9の衣類整形供給装置は、衣類折畳み機1の前部に設置したもので、作業位置(機枠2の前部側位置)に衣類Yを載せ掛けるための載せ掛けコンベア3を設置し、該載せ掛けコンベア3の上面走行部を下面側から吸引するバキューム装置7を備えて構成されている。
【0008】
バキューム装置7は、載せ掛けコンベア3の上面走行部の下面にバキュームボックス71を設置し、該バキュームボックス71内の空気を吸引ファン72で吸引することで、衣類Yを載せ掛けコンベア3の上面に吸着させ得るようにしたものである。
【0009】
図8及び図9の衣類折畳み機1は、図10の(A)〜(F)に示すように衣類Yを背出し状態で折畳む場合と、図11の(A)〜(F)に示すように衣類Yを胸出し状態で折畳む場合との2通りの折り方法が行えるものであるが、これらの折り方法については本願実施例の項で説明する(本願実施例でも、この衣類折畳み機1を採用している)。
【0010】
図8及び図9に示す衣類整形供給装置は、次のように使用される。尚、運転時には、バキューム装置7(吸引ファン72)を連続作動させている。そして、載せ掛けコンベア3を停止させた状態で、図8及び図9に示すように作業員が手作業で載せ掛けコンベア3上の所定位置(コンベア幅の中央位置)に衣類Yの襟Yb部分を載せ掛けて、左右の袖Yd,Ydをきれいに広げるとともに身頃Ya部分をきれいに合わせる。このとき、衣類Yの上部側は、バキューム装置7により載せ掛けコンベア3の上面に吸着されている。
【0011】
載せ掛けコンベア3上において衣類Yをきれいに整形した後、スタートボタン20を押すと、載せ掛けコンベア3が走行し、衣類Yが整形状態のまま載せ掛けコンベア3上から後続のコンベア11上に移乗され、各折り装置(21〜26)により順次図10の(A)〜(E)又は図11の(A)〜(E)の各工程を経て所定形状(図10(F)又は図11(F)の状態)に折畳まれる。
【0012】
尚、次工程(図8及び図9では折畳み工程)側に供給する衣類Yは、載せ掛けコンベア3から後続コンベア11上に移乗させる際に、後続コンベアの幅方向所定(中央)位置で傾きのない姿勢でないと、後工程(折畳み工程)において正常形状に折畳めないので、衣類Yを載せ掛けコンベア3上に載せ掛ける作業には、細心の注意が必要で且つかなりの熟練を要するものである。
【0013】
【特許文献1】特開2001−799号公報
【特許文献2】特公平4−59920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、図8及び図9の衣類整形供給装置は、載せ掛けコンベア3とバキューム装置7とによる簡易な構成であるが、この衣類整形供給装置では、作業位置において載せ掛けコンベア3上で衣類Yをきれいに整形させる際に、衣類Yを位置決めするものがないので、載せ掛けコンベア3上での衣類Yが正規の位置及び姿勢に決まりにくいという問題がある。
【0015】
即ち、図8及び図9の衣類整形供給装置では、載せ掛けコンベア3上に衣類Yに載せ掛ける際に、該衣類Yの載せ掛け位置を示す的確な指標がないので、衣類Yがコンベア幅方向にずれたり、あるいは該衣類Yをコンベアに対して正常姿勢に載置できにくい(平行度がでにくい)という問題があった。尚、衣類Yの載せ掛け位置がコンベア幅方向にずれたり、あるいは衣類Yが傾斜姿勢で載せ掛けられると、図10及び図11の各(B)に示す袖折り線L1や、同各図の各(D)に示す身頃折り線L3等が位置ずれして、衣類を正常形状に折畳めない(仕上がり状態が悪い)。
【0016】
又、載せ掛けコンベア3上では衣類Yの上部側がバキューム装置7によって吸着されるので、衣類Yが不正常な姿勢で載せ掛けられた場合に、その姿勢修正作業が非常にしにくくなる。即ち、衣類上部側の比較的広範囲の面積が載せ掛けコンベア3上に吸着されているので、衣類の姿勢を修正させにくく、且つ強く動かし過ぎると衣類Yの基準となる部分(襟Yb)が載せ掛けコンベア3に対して移動したり傾いたりして正常姿勢で整形できにくくなるという問題もある。尚、バキューム装置7による吸引力を弱くすると、載せ掛けコンベア3上での衣類Yを動かし易くなるが、バキューム装置7の吸引力が弱いと載せ掛けコンベア3上に載せ掛けた衣類Yが垂れ下がり部分の重量で落下するおそれがある。
【0017】
そこで、本願発明は、上記した従来の衣類整形供給装置の問題点に鑑み、比較的簡易な構成の付加により、左右の袖を含めて衣類全体をきれいに整形した状態で次工程側に供給し得るようにした衣類整形供給装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願発明は、上記課題を解決するための手段として次の構成を有している。尚、本願発明は、浴衣やガウン(バスローブを含む)のような袖つき衣類を整形するとともにその整形した状態で次工程(例えば折畳み工程やプレス工程)側に供給するための衣類整形供給装置を対象にしている。
【0019】
そして、本願の衣類整形供給装置は、作業位置において両袖を広げた状態で衣類を載せ掛け得る載せ掛けコンベアを有しているとともに、該載せ掛けコンベアの上部に、載せ掛けコンベア上で衣類を整形する際の整形補助装置を備えて構成されている。
【0020】
載せ掛けコンベアは、機枠の前部において作業員が載せ掛けコンベア上面に衣類を手掛けし得る高さ(例えば床面から1m高さ)に設置されている。尚、この載せ掛けコンベアは、衣類の両袖を左右に広げた幅よりやや広い幅を有している。
【0021】
又、この載せ掛けコンベアには、その上面走行部の下面に衣類吸着用のバキューム装置を設けておくことが好ましい。その場合、載せ掛けコンベアとして、多数の細幅ベルトを小間隔をもって配置したものを使用したり(小間隔部分から空気が吸引される)、ベルトに多数の小孔(空気吸引用)を形成したものを使用するとよい。
【0022】
載せ掛けコンベアの終端部には、載せ掛けコンベア上で整形させた衣類を次工程(例えば折畳み工程やプレス工程)側に搬送するための搬送コンベアが接続されている。尚、載せ掛けコンベアは、衣類載せ掛け時には停止しており、作業位置にあるスタートボタンを押すことによって走行するとともに、整形衣類の終端部(裾部)が後続の搬送コンベア側に移乗した時点(センサーで検知)で停止するようになっている。
【0023】
整形補助装置は、衣類の左右各襟下部分をそれぞれ着脱自在に保持できる左右一対の襟下保持手段と、該各襟下保持手段を載せ掛けコンベア上の使用位置と該載せ掛けコンベアの上方に退避する退避位置との間で変位せしめる変位作動手段とを有している。
【0024】
整形補助装置の各襟下保持手段は、衣類の襟部分を挟んだ左右の各襟下部分をそれぞれ奥側側から着脱自在に保持できるものであり、例えば開閉自在なチャック式のものが使用できる。この各襟下保持手段は、載せ掛けコンベア上の、作業位置から余裕をもって手が届く位置(例えば載せ掛けコンベアの前縁から35〜40cm程度奥側位置)で載せ掛けコンベアの幅方向中央部から左右に等距離ずつ振り分けた位置に設置されている。又、この各襟下保持手段の左右間隔は、特に限定するものではないが40cm程度が適当である。
【0025】
整形補助装置の変位作動手段は、各襟下保持手段を載せ掛けコンベア上の使用位置(襟下保持位置)と上方の退避位置(襟下保持手段の下方を衣類が通過し得る位置)との間で変位させるためのものであり、この変位作動手段には例えば伸縮シリンダが使用できる。尚、両襟下保持手段は、共通の軸に取付けて、該軸を伸縮シリンダ(変位作動手段)で回転させることによって、両襟下保持手段を同時に変位させ得るようにするとよい。
【0026】
本願の衣類整形供給装置(整形補助装置付き)は、次のように使用される。まず、衣類載せ掛け前には、左右の襟下保持手段が載せ掛けコンベア上の使用位置にあって該各襟下保持手段が開放状態で待機している。又、衣類載せ掛け前には、載せ掛けコンベアは停止している。尚、載せ掛けコンベアに後続する搬送コンベアは、連続走行させておく。又、載せ掛けコンベア部分に衣類吸着用のバキューム装置を設けたものでは、該バキューム装置を作動させておく。
【0027】
そして、作業位置において作業員が衣類の襟部分を捜し出して、その左右の各襟下部分(襟を整形させた状態で該襟中心から左右に20cm程度ずつ離れた位置)をそれぞれ左右の襟下保持手段(チャック部)に差込み、該各襟下保持手段を閉じる。この場合、各襟下部分がそれぞれ襟下保持手段で保持できる位置にあるか否かをそれぞれセンサーで検出して、該各センサーからの信号によって各襟下保持手段(チャック)を閉作動させるようにするとよい。このように、左右の襟下部分がそれぞれ襟下保持手段で保持された状態では、衣類の襟付近が所定位置で固定されている。尚、このとき、衣類の裾側(残余長さ)は載せ掛けコンベアの前縁部から下方に垂れ下がっている。
【0028】
次に、載せ掛けコンベア上に載せ掛けている衣類をきれいに整形する(両袖を左右に展張させ、身頃上部及び垂れ下がり部分をきれいに折り重ねる)が、その際に衣類の袖や身頃部分を引っ張っても襟付近(各襟下保持手段による保持部分)が位置ずれすることがない。そして、載せ掛け衣類をきれいに整形させた後、スタートボタンを押すと、各襟下保持手段がそれぞれ開放し、続いて変位作動手段により両襟下保持手段が上方の退避位置まで移動せしめられる。このとき、衣類は、きれいに整形されたままで載せ掛けコンベア上に残っている。
【0029】
続いて、所定タイマー後に載せ掛けコンベアが作動して、載せ掛け衣類を整形状態のまま後送させる。このとき、載せ掛け衣類の垂れ下がり部が順次載せ掛けコンベア上に引き上げられるが、作業員が手作業で身頃部分の整形が崩れないように補助をするとよい。
【0030】
そして、衣類の全体が後続の搬送コンベア上に移乗した時点で、載せ掛けコンベアが停止し、続いて変位作動手段により両襟下保持手段が下方の使用位置まで移動し、次の衣類載せ掛け作業が行えるようになる。
【発明の効果】
【0031】
このように、本願発明の衣類整形供給装置(整形補助装置付き)では、衣類を載せ掛けコンベア上で整形する際に、衣類の両襟下付近をそれぞれ襟下保持手段で保持させた状態で行えるので、衣類整形作業時に両袖や身頃部分を引っ張っても、基準となる襟付近が位置ずれすることがなく、従って衣類の整形が非熟練者でも簡単且つ正確に行えるとともに、その衣類整形作業が短時間で行えるという効果がある。
【0032】
又、本願の衣類整形供給装置で使用される整形補助装置は、両襟下保持手段と変位作動手段とからなる比較的簡単な構成であるので、特許文献1や特許文献2のものに比して、極めて安価に製作できる。
【実施例】
【0033】
以下、図1〜図7(及び図10〜図11)を参照して本願実施例の衣類整形供給装置を説明すると、この実施例の衣類整形供給装置は、図1〜図3に示すように衣類折畳み機1の一部として組み込まれている。
【0034】
本願実施例で整形すべき衣類Yは、ガウン(バスローブ)のような比較的厚手の生地を使用したものが採用されている。そして、この種の厚手生地からなる衣類Yでは、洗濯・乾燥後にプレスすることなく直接折畳んで納品する場合が多く、この実施例では衣類整形供給装置で整形した衣類Yを直接衣類折畳み機1で折畳むようにしている。尚、浴衣のような薄手生地からなる衣類では、プレスした後に折畳んで納品するが、その場合には、衣類整形供給装置で整形された衣類をプレス機に搬送する。
【0035】
図1〜図3の衣類折畳み機1に組み込まれている衣類整形供給装置は、機枠2の前部側に載せ掛けコンベア3を設置しているとともに、該載せ掛けコンベア3の上部に、載せ掛けコンベア3上で衣類Yを整形する際の整形補助装置4を備えて構成されている。
【0036】
載せ掛けコンベア3は、衣類Yの両袖Yd,Ydを左右に広げた幅よりやや広い幅を有し、且つ走行方向に適宜長さ(例えば60cm程度)を有したものを使用している。そして、この載せ掛けコンベア3は、機枠2の前部において作業員が載せ掛けコンベア3の上面に衣類Yを手掛けし得る高さ位置(例えば床面から1m高さ)にやや昇り傾斜状態で設置されている。
【0037】
又、この載せ掛けコンベア3は、多数の細幅ベルトを小間隔をもって配置し、さらに各細幅ベルトに空気吸引用の多数の小孔を形成したものを使用している。
【0038】
この載せ掛けコンベア3には、その上面走行部を下面側から吸引するためのバキューム装置7を設けている。このバキューム装置7は、該載せ掛けコンベア3の上面走行部の下面側に吸引ボックス71を設置するとともに、該吸引ボックス71内を吸引ファン72,72で吸引することにより、載せ掛けコンベア3の上面に衣類Yを吸着させるようにしたものである。
【0039】
整形補助装置4は、衣類Yの左右各襟下Yc,Yc部分をそれぞれ着脱自在に保持できる左右一対の襟下保持手段5,5と、該各襟下保持手段5,5を載せ掛けコンベア3上の使用位置と該載せ掛けコンベア3の上方に退避する退避位置との間で変位せしめる変位作動手段6とを有している。
【0040】
整形補助装置4の各襟下保持手段5,5は、衣類Yの襟Yb部分を挟んだ左右の各襟下Yc,Yc部分をそれぞれ前方側から着脱自在に保持できるものであり、この実施例では開閉自在なチャック式のものが使用されている。尚、以下の説明では、この襟下保持手段5をチャック装置ということがある。
【0041】
この各チャック装置(襟下保持手段)5,5は、図4〜図7に拡大図示するように、ブラケット52の下部に受台53を設け、該受台53に対して開閉されるチャック片54を有し、該チャック片54を伸縮シリンダ56で開閉操作し得るようにしたものである。尚、この実施例で使用されるチャック装置5では、チャック片54はスプリング55で常時閉方向に付勢されている一方、該チャック片54の上部にスプリング55の反付勢方向から伸縮シリンダ56のロッド先端57を当接させている。そして、伸縮シリンダ56が伸長すると、図4に示すようにチャック片54の上部がロッド先端57で押されてチャック爪部が受台53から離間し(チャックが開状態となる)、伸縮シリンダ56が縮小すると、図5に示すようにチャック片54に対するロッド先端57の押圧力が解除されてスプリング55の付勢力によりチャック爪部が受台53に近接する(チャックが閉状態となる)ようになっている。
【0042】
この各チャック装置5,5は、その各ブラケット52,52を機枠2の左右側板間に架設した1本の軸51に所定間隔をもって固定されている。そして、この各チャック装置5,5は、載せ掛けコンベア3上の、作業位置から余裕をもって手が届く位置(例えば載せ掛けコンベア3の前縁から35〜40cm程度奥側位置)で載せ掛けコンベア3の幅方向中央部から左右に等距離ずつ振り分けた位置に設置されている。又、この各チャック装置(襟下保持手段)5,5の左右間隔は、40cm程度に設定されている。
【0043】
整形補助装置4の変位作動手段6は、各チャック装置(襟下保持手段)5,5を載せ掛けコンベア3上の使用位置(図4〜図6の状態)と上方の退避位置(図7の状態)との間で変位させるためのものである。この実施例では、変位作動手段6として伸縮シリンダ61が使用されている。そして、上記軸51(各チャック装置5,5が取付られている)の一端に取付けたアーム62を伸縮シリンダ61で揺動させることによって、両チャック装置5,5を同時に使用位置と退避位置との間で変位させ得るようになっている。
【0044】
載せ掛けコンベア3の終端部には、載せ掛けコンベア3上で整形させた衣類Yを次工程(この実施例では折畳み工程)側に搬送するための搬送コンベア(第1コンベア11)が接続されている。
【0045】
図1に示す衣類折畳み機1の概要を説明すると、この衣類折畳み機1は、図10(A)〜(F)に示すように衣類Yを背出し状態で折畳む場合(以下、これを背出し折りという)と、図11(A)〜(F)に示すように衣類Yを胸出し状態で折畳む場合(以、下これを胸出し折りという)との2通りの折り方法が行えるものである。
【0046】
図1に示す衣類折畳み機1には、第1コンベア11〜第9コンベア19からなる9本のコンベアを有しているとともに、第3コンベア13上に図10(B)〜(C)の袖折り工程で使用される袖折り装置21と、第3コンベア13と第2コンベア12間に図10(C)〜(D)の裾折り工程で使用される裾折り装置22と、第5コンベア15上に図11(B)〜(C)の袖折り工程で使用される袖折り装置25と、第5コンベア15と第4コンベア14間に図11(C)〜(D)の裾折り工程で使用される裾折り装置(エアブロー式)26と、第6コンベア16上に図10(D)〜(E)の幅折り工程で使用される幅折り装置23と、第6コンベア16と第7コンベア17間に図10(E)〜(F)の2つ折り工程で使用される2つ折り装置24と、第9コンベア19の下面に図10及び図11の各折畳み衣類Y4,Y8を下方に落下させるゲート板27と、該ゲート板27から落下した折畳み衣類を排出する排出コンベア28、とを備えている。又、衣類Yの折り方法は、図10の背出し折りにするか図11の胸出し折りにするかを予め操作部で選択・設定することができるとともに、その選択した折り方法に対応して、所定の各コンベアや各折り装置が作動するようになっている。
【0047】
この実施例の衣類整形供給装置付きの衣類折畳み機1は、次のように使用される。まず、メインスイッチをONし、衣類Yの折り方法を選択・設定する。又、衣類載せ掛け前には、載せ掛けコンベア3は停止しており、左右のチャック装置(襟下保持手段)5,5が図4に示すように載せ掛けコンベア3上の使用位置にあって該各チャック装置5,5が開放状態で待機している。又、バキューム装置7は作動させておく。尚、第1コンベア11は連続走行させておいてもよいが、各折り装置(21〜26)部分及びゲート板27部分に関連する各コンベア(12〜19)は、所定タイミングで発停又は逆転走行される。
【0048】
そして、作業位置において作業員が衣類Yの襟Yb部分を捜し出して、その左右の各襟下Yc,Yc部分(襟を整形させた状態で該襟中心から左右に等距離の位置)をそれぞれ左右のチャック装置5,5(受台53とチャック片54間)に差込み、図5に示すように該各チャック装置5,5を閉じる。この場合、各襟下Yc,Yc部分がそれぞれチャック装置5,5で保持できる位置にあるか否かをそれぞれセンサー(図示していない)で検出して、該センサーからの信号によって各チャック装置(伸縮シリンダ)5,5を閉作動させるようにするとよい。このように、左右の襟下Yc,Yc部分がそれぞれチャック装置5,5で保持された状態では、衣類の襟Yb付近が所定位置で固定されている。尚、このとき、衣類の裾側(残余長さ)は載せ掛けコンベア3の前縁部から下方に垂れ下がっている。
【0049】
次に、載せ掛けコンベア3上に載せ掛けている衣類Yを、図2〜図3に示すようにきれいに整形する(両袖Yd,Ydを左右に展張させ、身頃Ya上部及び垂れ下がり部分をきれいに折り重ねる)。このとき、左右の襟下Yc,Yc部分がそれぞれチャック装置5,5で保持されている(図5の状態)ので、衣類の袖Yd,Ydや身頃Ya部分を引っ張っても該襟付近が位置ずれすることがない。従って、衣類Yの整形が非熟練者でも簡単且つ正確に行えるとともに、その衣類整形作業が短時間で行える。又、衣類Yにおける載せ掛けコンベア3上に載置されている部分は、バキューム装置7により載せ掛けコンベア3の上面に吸着されるので、きれいに整形した袖Yd,Ydや身頃Yaが不用意に型崩れしない。
【0050】
そして、載せ掛け衣類Yをきれいに整形させた後、スタートボタン20を押すと、各チャック装置5,5の伸縮シリンダ56が伸長してチャック片54を図6に鎖線図示(符号54′)するように開放し、続いて所定タイマー後に変位作動手段6の伸縮シリンダ61が縮小して、図7に示すように両襟下保持手段5,5を上方の退避位置に移動させる。このとき、衣類Yは、きれいに整形されたままで載せ掛けコンベア3上に残っている。
【0051】
続いて、所定タイマー後に載せ掛けコンベア3が作動して、載せ掛け衣類Yが整形状態のまま後送される。このとき、載せ掛け衣類Yの垂れ下がり部が順次載せ掛けコンベア3上に引き上げられるが、作業員が手作業で身頃部分の整形が崩れないように補助をするとよい。そして、図2に鎖線図示(符号Y′)するように整形衣類が完全に第1コンベア11上に移乗すると、それをセンサー(図示していない)が検出してその信号により載せ掛けコンベア3を停止させ、続いて変位作動手段6の伸縮シリンダ61が図7の状態から伸長して、各チャック装置5,5を図4に示す下方の使用位置まで移動させてそこで待機させる(次の衣類載せ掛け作業が行えるようになる)。
【0052】
図1の衣類折畳み機1による衣類折り方法として、図10に示す背出し折りを選択している場合は次のように作動する。まず、第1コンベア11上に移乗された整形衣類Y′(図2の鎖線図示状態)は、図10(A),(B)に示す整形状態で第1コンベア11から第2コンベア12と第3コンベア13に跨がる位置(裾折り装置22が図10(C)の折り線L2で折畳める位置)まで搬送されてそこで一旦停止し、第3コンベア13上にある袖折り装置21により図10(B)の折り線L1,L1で両袖Yd,Ydを図10(C)のように谷折りする(衣類が図10(C)のY1の状態となる)。その直後に第3コンベア13が反転走行する(このとき第2コンベア12も走行する)と同時に裾折り装置22が作動して図10(C)の折り線L2で裾Ye寄りの所定長さ部分を谷折りしつつ第2コンベア12と第3コンベア13間を通し(衣類が図10(D)のY2の状態となる)、さらに第4コンベア14を経て衣類Y2が完全に第5コンベア15上に移乗された後に該第5コンベア15が反転走行して衣類Y2を第5コンベア15から第6コンベア16上に移乗させ、該衣類Y2が第6コンベア16上の所定位置に達したときに該第6コンベア16が停止する。その後、幅折り装置23により図10(D)の各折り線L3,L3で谷折りして図10(E)の衣類Y3のように幅折りし、続いて第6コンベア16が走行するとともに、衣類Y3が2つ折り装置24により図10の折り線L4で谷折りされて(図10(F)の最終折畳み衣類Y4の状態となる)、第7コンベア17及び第8コンベア18を経て第9コンベア19の下面側(ゲート板27上)に搬送される。そして、最終折畳み衣類Y4がゲート板27上の所定位置に達したときに該ゲート板27が開き、該最終折畳み衣類Y4を排出コンベア28上に落下させる。
【0053】
衣類折畳み機1の作業位置では、載せ掛けコンベア3上で整形させた衣類Yを後送させた後、直ちにチャック装置5,5が使用位置に戻り、次の衣類の整形作業が行えるように待機している。そして、上記と同様に、載せ掛けコンベア3上で衣類Yを整形した後、その整形衣類を後送させて順次折畳み、その最終折畳み衣類Y4をゲート板27から排出コンベア28上に落下(先の衣類上に積層)させる。尚、排出コンベア28上に所定枚数(例えば3〜5枚)の折畳み衣類が積層されると、該排出コンベア28が作動して、その積層衣類を排出コンベア28上から排出する。
【0054】
他方、衣類折り方法として、図11に示す胸出し折りを選択している場合は次のように作動する。第1コンベア11上に移乗された整形衣類Y′(図2の鎖線図示状態)は、図11の(A)に示す整形状態で第1コンベア11から第2コンベア12上に移乗され、続いて第2コンベア12と第3コンベア13間を通って図11(B)に示す裏返し姿勢で第4コンベア14と第5コンベア15に跨がる位置(裾折り装置26が図11(C)の折り線L2で折畳める位置)まで搬送されてそこで一旦停止し、第5コンベア15上にある袖折り装置25で図11(B)の折り線L1,L1で両袖Yd,Ydを図11(C)のように谷折りする(衣類が図11(C)のY5の状態となる)。その直後に第5コンベア15が反転走行すると同時に裾折り装置(エアブロー式)26が作動して図11(C)の折り線L2で裾Ye寄り部分を谷折りしつつ第5コンベア15と第4コンベア14間を通し(衣類が図11(D)のY6の状態となる)、さらに衣類Y6が完全に第6コンベア16上の所定位置に達したときに該第6コンベア16が停止する。その後、幅折り装置23により図11(D)の各折り線L3,L3で谷折りして図11(E)の衣類Y7のように幅折りし、続いて第6コンベア16が走行するとともに、衣類Y3が2つ折り装置24により図11の折り線L4で谷折りされて(図11(F)の最終折畳み衣類Y8の状態となる)、第7コンベア17及び第8コンベア18を経て第9コンベア19の下面側(ゲート板27上)に搬送される。そして、最終折畳み衣類Y8がゲート板27上の所定位置に達したときに該ゲート板27が開き、該最終折畳み衣類Y8を排出コンベア28上に落下させる。尚、以下同様に、順次最終折畳み衣類Y8をゲート板27から排出コンベア28上に落下(先の衣類上に積層)させ、排出コンベア28上に所定枚数(例えば3〜5枚)の折畳み衣類が積層されると、該排出コンベア28が作動して、その積層衣類を排出コンベア28上から排出する。
【0055】
尚、この実施例では、衣類整形供給装置(載せ掛けコンベア3及び整形補助装置4)を衣類折畳み機1の一部として使用しているが、他の実施例では、この衣類整形供給装置で整形される衣類Yをプレス機側に供給する場合にも使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本願実施例の衣類整形供給装置を備えた衣類折畳み機の概略正面図である。
【図2】図1の衣類整形供給装置付き衣類折畳み機の前半部の平面図である。
【図3】図1の左側面図である。
【図4】図2のIV−IV拡大断面図である(チャック装置が閉状態)。
【図5】図4の状態からの作動変化図である(チャック装置が閉状態)。
【図6】図5の状態からのチャック装置の作動説明図である。
【図7】図6の状態からの作動変化図である(チャック装置が退避状態)。
【図8】従来の衣類整形供給装置付き衣類折畳み機の概略正面図である。
【図9】図8の衣類整形供給装置付き衣類折畳み機の前半部の平面図である。
【図10】図1又は図8の衣類折畳み機で行われる第1の折畳み工程図である。
【図11】図1又は図8の衣類折畳み機で行われる第2の折畳み工程図である。
【符号の説明】
【0057】
1は衣類折畳み機、2は機枠、3は載せ掛けコンベア、4は整形補助装置、5は襟下保持手段(チャック装置)、6は変位作動手段、7はバキューム装置、54はチャック片、56は伸縮シリンダ、61は伸縮シリンダ、Yは衣類、Yaは身頃、Ybは襟、Ycは襟下、Ydは袖、Yeは裾である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴衣やガウンのような袖つきの衣類(Y)を整形した状態で次工程側に供給するための衣類整形供給装置であって、
作業位置において両袖(Yd,Yd)を広げた状態で衣類(Y)を載せ掛け得る載せ掛けコンベア(3)を有し、
該載せ掛けコンベア(3)の上部に、衣類(Y)の左右各襟下(Yc,Yc)部分をそれぞれ着脱自在に保持できる左右一対の襟下保持手段(5,5)と、該各襟下保持手段(5,5)を載せ掛けコンベア(3)上の使用位置と該載せ掛けコンベア(3)の上方に退避する退避位置との間で変位せしめる変位作動手段(6)とを有した整形補助装置(4)を備えている、
ことを特徴とする衣類整形供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−119281(P2008−119281A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−307320(P2006−307320)
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【出願人】(502407130)株式会社プレックス (75)