説明

表示体

【課題】見る角度によって一定の規則性をもって輝き方が変化し、高級感があり、美観に優れた表示体を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る表示体1は、光を反射して金属光沢を呈する金属光沢層5をパターン状に形成してなる表示部3と、表示部3の表面側に形成され、表示部3を覆う透光性樹脂層6とを備え、透光性樹脂層6は、一方向の断面形状が全ての断面で同形同寸法の凸レンズ状になるように形成されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美観に優れた表示体に関するものであり、特に商品等の表面に取り付けられるエンブレムのような、会社名、商品名あるいはマークなどの表示、あるいは、携帯電話をはじめとする電気機器の操作用ボタンに用いられるキーシートやキートップに好適に使用される表示体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属光沢又は真珠光沢を有する装飾シートで美観性を向上させたものとして、特許文献1に記載された装飾シートが知られている。この装飾シートは、基材の一面に透光性樹脂層を積層したドレープ性を有するものであって、基材は透明又は半透明であり、凹凸面をもち、基材の他面に光沢層を設けた構成とされている。上記構成によれば、光沢層は基材の凹凸面に設けられているので、立体感にあふれた深みのある光沢感をだすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−300536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1記載の装飾シートにおいては、立体感には優れているものの、光沢感については変化に乏しいものであった。
【0005】
そこで、本発明では、上記問題に鑑み、見る角度によって一定の規則性をもって輝き方が変化し、高級感があり、美観に優れた表示体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る表示体は、光を反射して金属光沢を呈する金属光沢層をパターン状に形成してなる表示部と、前記表示部の表面側に形成され、前記表示部を覆う透光性樹脂層とを備え、前記透光性樹脂層は、一方向の断面形状が全ての断面で同形同寸法の凸レンズ状になるように形成されたことを特徴とする。
【0007】
上記構成においては、透光性樹脂層は、いわばかまぼこ形状に形成されることになる。具体的な透光性樹脂層の形状として、例えば、表示部を平面視したときに、表示部を囲むように方形に透光性樹脂層を形成し、さらに、透光性樹脂層の高さが表示部の縦方向両端から中央に向かって徐々に高くなるように形成することができる。この場合、横方向から見た透光性樹脂層の断面が凸レンズ状となる。
【0008】
ここで、金属光沢層をパターン状に形成するとは、金属光沢層にレーザー加工やエッチング処理を施したり、あるいは金属光沢層の表面側に塗料を印刷し、金属光沢層を一部露出させることにより、文字・数字・記号・絵柄等の図柄を描画することをいう。
【0009】
上記表示体を適当な角度から視認すると、表示部の一部表面に、光を反射して光輝く光輝部が出現する。光輝部は、表示部の縦方向の一定の範囲で出現し、表示体の角度を変化させることによって、上下方向に移動する。これにより、あたかも横方向に延びる光の帯で表示部上を縦方向に走査し、光の帯が当たった表示部の部分のみが光り輝くように見える。上述のごとく、本発明に係る表示体は、見る角度によって一定の規則性をもって輝き方が変化し、高級感があり、美観に優れるという効果を奏する。
【0010】
なお、光輝部は、厳密にいえば表示部の表面ではなく、透光性樹脂層の表面に現れるものであるが、透光性樹脂層の横方向全体に出現するのではなく、表示部の形状に沿って現れ、表示部以外の部分には現れない。これは、透光性樹脂層から入射した日光や照明光が、表示部で露出する金属光沢層で反射し、これが光輝部として視認されるためであり、表示部以外の部分は表示部に比べて光の反射率が低いため、光輝部としては現れない。よって、光輝部は、表示部の表面に現れるように見える。
【0011】
本発明においては、文字・数字・記号・絵柄等の一つの図柄で一つの表示部が形成される。すなわち、一つの文字等において、規則性をもって輝き方が変化する光輝部が現れるようにすればよい。表示部が並ぶように複数形成される場合、例えば、表示体に複数の文字が形成される場合、表示部ごとに平面視での透光性樹脂層の大きさや高さを変えることができる。
【0012】
また、表示部が並ぶように複数形成される場合、これら複数の表示部を覆うように前記透光性樹脂層が形成され、前記透光性樹脂層は、前記表示部が並ぶ方向に直交する方向の断面形状が全ての断面で同形同寸法の凸レンズ状になるように形成された構成とすることも可能である。
【0013】
上記構成においては、透光性樹脂層は、複数の表示部を囲むように形成される。具体的な透光性樹脂層の形状として、たとえば、表示部が横方向に並ぶように形成される場合、表示部を平面視したときに、複数の表示部を囲むように横長矩形状に透光性樹脂層を形成し、さらに、透光性樹脂層の高さが表示部の縦方向両端から中央に向かって徐々に高くなるように形成することができる。この場合、横方向から見た透光性樹脂層の断面が凸レンズ状となる。
【0014】
上記構成の表示体を適当な角度から視認すると、複数の表示部のそれぞれにおいて、一部表面に横方向に向かって帯状に光輝く光輝部が出現する。光輝部は、表示体の角度を変化させることにより、上下方向に移動する。
【0015】
ここで、光輝部は、間隔をあけて配置される各表示部のそれぞれにおいて、縦方向で同じ位置に現れるため、見え方としては、あたかも複数の表示部に対して横方向に延びる光の帯を照射し、これを縦方向に走査させ、光の帯が当たった表示部の部分のみが光り輝くように見える。これにより複数の表示部が一定の規則性をもって輝き方が変化し、統一性があり美観に優れた表示体を提供することができる。
【0016】
また、透光性樹脂層の形状として、上述した凸レンズ形状のうち、表示部上に積層された部分を残してそれ以外の部分を除去した形状とすることも可能である。これにより、上記構成と同じように光輝部を出現させつつ、各表示部を独立させることができ、各表示をより立体的に表示することができる。さらに、各表示部において、光輝部が表れた部分は表示部の端部がよりくっきりと表示される。これにより、シャープで高級感に優れた表示体を得ることができる。
【0017】
本発明に係る表示体では、金属光沢層と透光性樹脂層との間に、透光性を有する有色薄膜層を形成することも可能である。これにより、金属光沢層を任意に着色することができる。
【0018】
有色薄膜層としては、例えば、染料や顔料等で色づけした、透光性を有する有色樹脂層によって形成することができる。ただ、より美観に優れた表示体を得るためには、有色薄膜層として、金属又は半導体の酸化物、金属又は半導体の窒化物、又は、金属又は半導体の酸窒化物であって、屈折率の異なる誘電体が複数積層されたものとして構成すると、屈折率の組み合わせにより、反射率、透過率の調整が容易になる。即ち、着色と同時に光沢感も調整できる。
【0019】
有色薄膜層に用いる誘電体の材質は特に限定はないが、入手の容易性や成膜の容易性を考慮すれば、相対的に屈折率の高い誘電体からなる高屈折率層を構成する材料として、ニオブ、チタン、タンタル、ジルコニウムのうちの一つの酸化物を使用し、相対的に屈折率の低い誘電体からなる低屈折率層を構成する材料として、ケイ素の酸化物又は窒化物を使用するのが好ましい。
【0020】
本発明における金属光沢層としては、不透光性の金属層を形成し、この層の表面で光を反射させることにより、金属光沢感を出すようにしてもよいが、より鮮やかな金属光沢の色調を表現するには、金属薄膜層又は誘電体層と、その裏面側に配置される光反射層とを備えた構成とすることができる。
【0021】
金属薄膜層又は誘電体層は、透光性及び金属光沢を有するものであればよい。具体的には、金属薄膜層の材質として、スズ、アルミニウム、金、銀、銅、クロム、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、チタン、モリブデン若しくはタングステン又はこれらの合金を用いることができる。誘電体層としては、チタン、ニオブ、ジルコニウム、タンタル、スズ、ハフニウム若しくはイットリウムと、酸素、窒素若しくは酸素窒素との化合物を使用することができる。これらは、1層で又は複数層に積層して使用することができる。
【0022】
上記材質の中でも、光沢度や成膜の容易性を考慮すれば、金属薄膜を用いるのが好ましく、さらにその中でも入手の容易性や加工性等を考慮すれば、スズ、クロム、ニッケル若しくはアルミニウム又はこれらの合金を用いるのが好ましい。
【0023】
光反射層の色は特に限定されないが、白色の光反射層とすれば、白色の光反射層に反射した白色光が、透光性を有する金属薄膜層を通過することによって、金属光沢の色調を明るくすることができ、表示部をより際立たせることができる。
【0024】
なお、金属光沢層として、透光性を有する金属薄膜層と、金属薄膜層の裏面側に配置される白色の光反射層とを備えた構成を採用し、金属薄膜層と透光性樹脂層との間に透光性を有する誘電体からなる有色薄膜層を形成する場合、金属薄膜層及び有色薄膜層に使用する材料の種類の選択により各層の屈折率を調整し、さらに層厚と合わせてコントロールすることで、表示体を傾けて見たときに、光の干渉、角度依存性及び透光性樹脂層の凸レンズ効果によって着色薄膜層の色調が強調されるようにすることが可能となる。
【0025】
すなわち、光輝部の色を着色薄膜層の色に着色することが可能となる。これにより、表示体を見る角度によって、輝き方を変化させることが可能となるだけでなく、その色をも変化させることが可能となり、高級感にあふれた表示体を得ることができる。
【0026】
本発明に係る表示体の具体的な用途としては、商品に取り付けられる、会社名、商品名あるいはマーク等を表示するエンブレムやパネルとして使用することができる。その他にも、例えば、電気機器等の押ボタンスイッチ用のキーシートやキートップとして使用することも可能である。これにより、商品や電気機器の品位を高め、高級感を付与することが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る表示体は、金属光沢層をパターン状に形成してなる表示部と、前記表示部の表面側に形成され、前記表示部を覆う透光性樹脂層とを備え、透光性樹脂層は、一方向の断面形状が全ての断面で同形同寸法の凸レンズ状になるように形成されたため、見る角度によって一定の規則性をもって輝き方が変化し、高級感があり、美観に優れるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る表示体の第1実施形態を示す斜視図
【図2】上記表示体の縦方向の概略断面図
【図3】本発明の表示体の第2実施形態を示す斜視図
【図4】図3の表示体の角度を変化させた斜視図
【図5】本発明の表示体の第3実施形態を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0029】
[第1実施形態]
以下、本発明の実施形態について図面を基に説明する。図1は、本発明に係る表示体の第1実施形態を示す斜視図であり、図2は表示体の縦方向の概略断面図である。なお、図1及び図2においては、実際には金属薄膜層や有色薄膜層はごく薄い厚みに形成されているため、構成をわかりやすくするために模式的に表している。
【0030】
本実施形態の表示体1は、商品等に取り付けられるエンブレムとして好適に用いられるものであり、その構成は、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の透明で剛性を有するシートを基材2とし、その裏面に印刷層12、透光性を有する有色薄膜層4及び金属光沢層5がこの順に積層されて一体化されている。基材2の厚みは特に制限はないが、一例として、基材2としてPETを使用する場合には25μm〜200μmの厚みのものを使用することができる。本実施形態では、基材2として125μmのPETシートを用いている。
【0031】
印刷層12はパターン状に印刷されており、これにより金属光沢層5及び有色薄膜層4が一部露出して情報を表示する表示部3が形成される。そして、表示部3の表面側には、基材2を介して透光性樹脂層6が形成されている。
【0032】
印刷層12は、例えば、不透光性の印刷材を用い、文字、記号、数字、絵柄、図柄等の情報を抜き文字印刷することで形成することができる。この場合、抜き文字部分が表示部3となる。なお、表示部3は必ずしも抜き文字にする必要はなく、たとえば、上記の場合とはネガ・ポジの関係になるように、文字、記号、数字、絵柄、図柄等を印刷材で印刷して、その周囲を印刷しないようにすることもできる。この場合には、文字等印刷された部分が印刷層12となり、そのまわりの印刷されていない部分が表示部3となる。
【0033】
本実施形態においては、印刷層12が「ABCD」の文字に抜き文字印刷されており、「ABCD」の抜き文字部分が表示部3とされる。図1に示すように、「ABCD」の文字を構成する4つの表示部3は、横方向Xに沿って並ぶように配置されている。
【0034】
透光性樹脂層6は、表示部3を平面視したときに、「ABCD」の4つの表示部3を囲む横長の長方形の領域に形成される。透光性樹脂層6は、その高さが表示部3の縦方向両端から表示部中央に向かって徐々に高くなるように形成される。この場合、横方向Xから見た透光性樹脂層6の断面が凸レンズ状となる。
【0035】
本実施形態では「ABCD」の抜き文字はすべて同じ高さとなっているため、透光性樹脂層6はすべての文字において同じ断面形状になるように形成されている。ここで、表示部3の抜き文字が、「Accc」のように高さが異なる文字が混在する場合には、大文字の「A」に合わせて全ての文字において同じ断面形状になるように透光性樹脂層6を形成することができる。
【0036】
また、大文字である「A」と、小文字である「ccc」とで透光性樹脂層6の断面形状を変化させることも可能である。すなわち、「A」の部分については、「A」の上端から下端まで透光性樹脂層6によって覆い、「ccc」の部分については、「ccc」の上端から下端まで透光性樹脂層6によって覆うようにすることも可能である。
【0037】
本実施形態の表示体1を傾けて見た場合、表示部の一部表面に、光り輝く光輝部7が出現する。光輝部7は、表示部3の縦方向の一定位置で一定の範囲に現れる。光輝部7は、表示体1の角度を変化させることにより、上下方向に移動する。このように、本発明の表示体1は、見る角度によって一定の規則性をもって表示部3の輝き方が変化し、高級感があり、美観に優れるという効果を奏する。
【0038】
透光性樹脂層6の表面形状としては、凸レンズ効果を奏する曲面で形成されていればよいが、一定曲率の曲面とすれば、光輝部7が表示部3の表面を一定の幅で縦方向に移動する効果を奏する点で好ましい。また、表示体1の角度を変化させることで、光輝部が表示部3の表面を一定幅で上下方向(縦方向)に移動する効果を高めるためには、表示部3が平面上に形成され、その平面に対して透光性樹脂層6を一定曲率の曲面で断面凸レンズ状に形成するのが望ましい。
【0039】
なお、透光性樹脂層6の縦方向中央高さについては特に制限はないが、高くなるほど表示体1を取り付ける面に対して出っ張り感あるいは浮いた感じが大きくなる。従って、表示体1にあまり出っ張り感を与えず、すっきりした外観とするには、透光性樹脂層6を一定曲率の曲面で構成する場合、例えば、透光性樹脂層6の縦方向の長さを7mmとしたとき、透光性樹脂層6の縦方向の中央高さを、好ましくは0.05mm〜1.0mmの範囲で、より好ましくは0.05mm〜0.5mmの範囲で設定することができる。本実施形態では、透光性樹脂層6の中央高さは0.15mmとしている。このように、透光性樹脂層6の厚みは比較的薄くてすむため、表示体1の外観としても美観を損なうことがない。
【0040】
透光性樹脂層6は、透光性樹脂層6に入射した光が金属光沢層5に反射して外部から視認できる程度の透光性を有していればよいが、透光性樹脂層6の透明性を高くするほど、光輝部7を鮮やかに出現させることができる点で好ましい。
【0041】
透光性樹脂層6を構成する樹脂としては、十分な透光性を有するものであれば特に限定されず、例えば、アクリル−ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂等を用いることができる。その中でも、透明性、硬化性及び密着性に優れている紫外線硬化型アクリル−ウレタン系樹脂を用いるのが好ましい。
【0042】
金属光沢層5は、光を反射して金属光沢を呈する層であり、たとえば、不透光性の金属箔で構成することができる。ただ、金属光沢層5を不透光性の金属箔で構成した場合は、反射光が暗くなり、かえって光沢感が抑制される。そこで、本実施形態においては、金属光沢層5として、透光性及び金属光沢を有する金属薄膜層8と、金属薄膜層8の裏面側に配置される白色の光反射層9からなる構成とし、これにより、金属光沢感を向上させている。
【0043】
金属薄膜層8を構成する金属としては、たとえば、スズ、アルミニウム、金、銀、銅、クロム、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン等の金属又はこれらの合金を挙げることができる。金属薄膜層8は、スパッタリング法、真空蒸着法、抵抗加熱法、イオンプレーティング法等によって形成することができる。
【0044】
中でも、スズ、クロム、ニッケル、アルミニウム又はこれらの合金が、十分な光沢感が得られ、また成膜も容易であることから好ましい。
【0045】
金属薄膜層8は、透光性を有することが必要とされるため、膜厚としては、5nm〜50nm程度とするのが好ましい。金属薄膜層8の裏面側には白色の光反射層9が配されており、光反射層9で反射した白色光が金属薄膜層8を通過することによって、明るくかつ金属光沢感を備えた光となって視認される。
【0046】
金属薄膜層8の表面側には有色薄膜層4が設けられる。これにより、金属光沢層5から反射した光を着色することが可能となる。有色薄膜層4は、透光性を有することが必要とされるため、膜厚としては、50nm〜300nm程度とするのが好ましい。
【0047】
有色薄膜層4を構成する材料としては、金属又は半導体の酸化物、金属又は半導体の窒化物、又は、金属又は半導体の酸窒化物を用いることが可能であり、特に、高屈折率層を構成する材料として、ニオブ、チタン、タンタル、ジルコニウムのうちの一つの酸化物を使用し、低屈折率層を構成する材料として、ケイ素の酸化物又は窒化物を使用するのが好ましい。
【0048】
そして、これらの材料を用い、スパッタリング法、真空蒸着法、抵抗加熱法、イオンプレーティング法等によって製膜することができる。なお、有色薄膜層4の形成は任意であり、また、表示部3が複数形成される場合には、各表示部3によって有色薄膜層4の種類を変えることも可能である。
【0049】
有色薄膜層4を形成する場合、有色薄膜層4を材料の異なる複数層で構成し、金属薄膜層8の屈折率と吸収に合わせて、有色薄膜層4を構成する各層の屈折率に差を設けるようにするのが好ましい。これにより、表着色薄膜層4を様々な色に着色することが可能となる。
【0050】
具体的には、図2に示すように、印刷層12の裏面に、誘電体からなる有色薄膜層4の第一層41として比較的に屈折率の高い五酸化ニオブからなる薄膜(膜厚:70nm)を形成した。さらに、第一層41の裏面に、第二層42として比較的に屈折率の低いシリカ層(膜厚:20nm)を形成し、その裏面に金属薄膜層8として金属Sn層(膜厚:15nm)を形成した。そして、金属薄膜層8の裏面側に、金属薄膜層8を保護する保護層11としての窒化珪素層(膜厚:15nm)を形成し、さらにその裏面に白色塗料を塗布することにより光反射層9を形成した。光反射層9の厚みに特に制限はないが、一例として、本実施形態では8μmの厚みとした。
【0051】
上記構成の表示体1を正面から見たときには、表示部3の色は金属Snの色調であるシルバー色であった。表示体1を傾けることにより、表示部3に光輝部3が出現した。このとき、光輝部7の部分は、薄いブルーに光り輝いて見えた。すなわち、表示体1を正面から見るときの色と、光輝部の光り輝く色とが相違するという優れた視覚効果を奏する。
【0052】
上述のように、有色薄膜層4(誘電体膜層)を構成する第一層41と第二層42の両層の間に屈折率の差を設け、さらに金属薄膜層8及び有色薄膜層4の両層の屈折率に差を設けることによって、表示体1を見る角度によって、輝き方を変化させることが可能となるだけでなく、その色をも変化させることが可能となり、高級感にあふれた表示体を得ることができる。
【0053】
[第2実施形態]
図3は、本発明の表示体の第2実施形態を示す斜視図である。本実施形態では、透光性樹脂層の形状を変更した点が特徴とされ、他の構成は第1実施形態と同じとされている。
【0054】
図3に示すように、本実施形態の表示体1においては、透光性樹脂層6の形状が、図1に示す凸レンズ形状から、表示部3上に積層された部分を残してそれ以外の部分を除去した形状とされている。
【0055】
上記構成においては、各表示部3は、それぞれ独立して配置されることになり、さらに表示部3上に形成された透光性樹脂層6によって、各表示部3は立体的に表示されることになる。このように各表示部3は独立して配置されるにもかかわらず、図4に示すように、表示体1の角度を変化させると、複数の表示部がそれぞれ同じ規則性をもって輝き方が変化するという優れた視覚効果を有する。
【0056】
本発明に係る表示体1は、商品等に取り付けられるエンブレムのみならず、電気機器等の押ボタン用のキートップとして用いることもできる。この場合には、押ボタンに表示される図柄ごとに実施形態1で示したような表示体(キートップ)が形成される。
【0057】
[第3実施形態]
図5は本発明の表示体の第3実施形態を示す図である。本発明に係る表示体1は、電気機器等の押ボタン用のキーシートとして好適に用いることができる。図5は、携帯電話のキーシートとしての表示体1の一部を示す平面図である。
【0058】
本実施形態では、1枚の基材2にテンキーの数字及び記号が表示部3として形成されており、表示部3ごとに、独立した透光性樹脂層6が形成されている点が特徴とされ、他の構成は第1実施形態と同じとされている。
【0059】
すなわち、表示部3ごとに、横長矩形状の透光性樹脂層6が形成される。なお、透光性樹脂層6は、表示部3上に積層された部分を残してそれ以外の部分を除去した形状とすることも可能である。また、有色薄膜層4及び金属薄膜層5の構成材料は、すべての表示部3で同一とすることもできるし、表示部3ごとに変えてもよい。
【0060】
本発明に係る表示体1は、照光式とすることも可能である。具体的には、光反射層9の裏面側からバックライトを適宜照射することで、暗い場所で表示を見やすくすることが可能である。なお、この場合、光反射層9は透光性を有するものを用いればよい。
【符号の説明】
【0061】
1 表示体
2 基材
3 表示部
4 有色薄膜層
5 金属光沢層
6 透光性樹脂層
7 光輝部
8 金属薄膜層
9 光反射層
11 保護層(窒化珪素層)
12 印刷層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を反射して金属光沢を呈する金属光沢層をパターン状に形成してなる表示部と、前記表示部の表面側に形成され、少なくとも前記表示部を覆う透光性樹脂層とを備え、前記透光性樹脂層は、一方向の断面形状が全ての断面で同形同寸法の凸レンズ状になるように形成されたことを特徴とする表示体。
【請求項2】
前記表示部が並ぶように複数形成され、これら複数の表示部を覆うように前記透光性樹脂層が形成され、前記透光性樹脂層は、前記表示部が並ぶ方向に直交する方向の断面形状が全ての断面で同形同寸法の凸レンズ状になるように形成されたことを特徴とする請求項1記載の表示体。
【請求項3】
前記透光性樹脂層が、前記凸レンズ形状のうち前記表示部上に積層された部分を残してそれ以外の部分を除去した形状とされたことを特徴とする請求項1又は2記載の表示体。
【請求項4】
前記金属光沢層と透光性樹脂層との間に、透光性を有する有色薄膜層が形成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の表示体。
【請求項5】
前記有色薄膜層は、金属又は半導体の酸化物、金属又は半導体の窒化物、又は、金属又は半導体の酸窒化物であって、屈折率の異なる誘電体が複数積層されたものであることを特徴とする請求項4に記載の表示体。
【請求項6】
前記金属光沢層は、透光性を有する金属薄膜層と、金属薄膜層の裏面側に配置される光反射層とを備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の表示体。
【請求項7】
前記金属薄膜層は、スズ、クロム、ニッケル若しくはアルミニウム又はこれらの合金であることを特徴とする請求項6記載の表示体。
【請求項8】
前記表示体が商品用のエンブレム又はパネルである請求項1〜7のいずれかに記載の表示体。
【請求項9】
前記表示体が押ボタンスイッチ用キーシート又はキートップである請求項1〜7のいずれかに記載の表示体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−170077(P2011−170077A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33444(P2010−33444)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(592070878)株式会社アトライズヨドガワ (3)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【出願人】(591124765)ジオマテック株式会社 (35)