説明

表示札付き苗トレー及び苗トレー用の表示札

【課題】苗の陳列時において表示札の情報提示効果を発揮することができる表示札付き苗トレー及び苗トレー用の表示札を提供する。
【解決手段】苗トレー10は、苗ポット11を収容するトレー本体21と、トレー本体21の上端に設けられたトレー外枠体22とを有しており、トレー外枠体22の外側面には表示札30が貼付されている。表示札30は、トレー外枠体22の外側面に貼付されている固定板部31と、固定板部31からトレー外枠体22とは遠ざかる側に向けて延びている延出板部32と、延出板部32の先端から斜め下方に延びている表示板部33とを有している。表示板部33において斜め上方を向いている表示面には苗13に関する苗情報が表示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示札付き苗トレー及び苗トレー用の表示札に関するものである。
【背景技術】
【0002】
苗が植えられた複数の苗ポットを商品として店舗等に陳列する場合、それら苗ポットの運搬に用いた苗トレーごと苗ポットを店内等に並べることにより、陳列作業の効率化を図ることができる。この場合、苗の種類等の苗情報を示す表示札が苗ポットではなく苗トレーに取り付けられることがある。例えば特許文献1によれば、板状の表示シートが鉛直方向に起立した状態となるように苗トレーの内部に上方から差し入れられ、表示シートにおいて苗トレーより上方に突出した部分に苗情報が表示されている。具体的には、苗トレーは内部を複数に仕切る仕切部を有しており、表示シートには仕切部と係止する係止部が形成され、その係止構造により表示シートが起立状態で保持されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−209450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、表示シートが鉛直方向に起立した状態では苗情報の表示面が水平方向を向いているため、店舗において立ち姿勢をとっている消費者の目の高さよりも低い位置(例えば床面)に苗トレーが置かれていると、消費者の視線に対して表示シートの向きが合っておらず、消費者にとって表示シートの苗情報は見にくいものとなる。この場合、消費者が表示シートの苗情報を視認するためにはかがんだり座ったりする面倒な動作が必要になる。これでは表示シートが有する情報提示効果を発揮させることができない。
【0005】
本発明は、苗の陳列時において表示札の情報提示効果を発揮することができる表示札付き苗トレー及び苗トレー用の表示札を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、第1の発明の表示札付き苗トレーは、苗が植えられた苗ポットを複数収容するとともに、前記苗に関する苗情報を表示する表示札がトレー外周面に取り付けられている表示札付き苗トレーであって、前記表示札は、薄板によって形成され、前記トレー外周面に沿って延びた状態で該トレー外周面に接着固定されている固定板部と、前記薄板において前記固定板部となる部分に対して折り曲げられることにより形成され、前記固定板部よりも幅寸法が小さく、前記固定板部の上部から前記トレー外周面とは遠ざかる側に向けて延びている延出板部と、前記薄板において前記延出板部となる部分に対して折り曲げられることにより形成され、前記延出板部よりも幅寸法が大きく、前記延出板部における前記固定板部とは反対側の端部から前記トレー外周面とは遠ざかる側の斜め下方に向けて延び、斜め上方を向く板面に前記苗情報が表示されている表示板部と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
第1の発明によれば、表示札が粘着層によりトレー側面部の外側面に貼付されている構成において、表示札の表示面が斜め上方を向いている。ここで、表示札は薄板が折り曲げられることで形成されているため、延出板部に対する表示板部の折り曲げ角度を変えるという容易な作業により表示面の向きを変えることにより、立ち姿勢で苗トレーを見下ろしている消費者の視線を想定してその視線に表示面の向きを合わせることができる。この場合、消費者はかがんだり座ったりする面倒な動作をしなくても苗情報を容易に視認することができる。この結果、苗の陳列時において表示札の情報提示効果を発揮することができる。
【0008】
なお、固定板部の幅寸法が延出板部の幅寸法以上とされているため、粘着層による固定板部とトレー側面部との接着面積を極力大きくすることができる。これにより、表示札が固定板部により固定されている構成、つまり表示札が苗トレーに対して片持ち支持されている構成において、表示札がトレー側面部から剥がれ落ちてしまうことを抑制できる。
【0009】
また、延出板部の幅寸法が表示板部の幅寸法より大きくされているため、薄板の折り曲げ作業に際して作業者が延出板部と表示板部との境界を視認することが容易となり、ひいては、折り曲げ作業や表示板部の折り曲げ角度の調整作業を容易化できる。さらに、この場合、表示板部に対して延出板部が細くなっているため、風等により表示板部が揺れやすくなり、表示板部の揺れにより消費者の注意をひいて表示札の情報提示効果を高めることができる。しかも、苗は店舗において屋外に陳列されることが多いため、表示板部を風で揺れやすくした構成は表示札の情報提示効果を高める上で特に効果的である。
【0010】
片持ち支持されている表示札においては、延出板部を利用して表示板部がトレー外周面から遠ざけられている。つまり、表示板部がトレー外周面よりも消費者側にせり出した状態とされている。このため、複数の苗トレーが上下に並べて陳列されていても、表示板部が上方の苗トレーよりも消費者側に突出した状態とすることが容易であるため、苗情報が上方の苗トレーの下に隠れて見えないということを回避できる。すなわち、複数の苗トレーが多段積みされている場合に、表示面の視認性が低下することを回避できる。
【0011】
第2の発明では、前記固定板部は、前記表示板部が前記トレー外周面よりも上方に突出しない高さ位置にて前記トレー外周面に固定されている。
【0012】
表示札がトレー側面部の外側面に取り付けられている場合、表示板部がトレー側面部よりも上方に突出していると、消費者が斜め上方から苗トレーを見下ろした場合に苗が表示板部の上部の背後に隠れて見えないことがある。この点、第3の発明によれば、表示板部がトレー側面部よりも上方に突出していないため、消費者が苗トレーを真上から見下ろした場合はもちろんのこと斜め上方から見下ろした場合でも、苗が表示板部の背後に隠れて見えないということを回避できる。
【0013】
なお、前記固定板部は、該固定板部が前記トレー側面部よりも上方に突出しない高さ位置にて前記トレー側面部の外側面に貼付されていることが好ましい。この構成によれば、苗が表示札における表示板部、延出板部及び固定板部のいずれの背後にも隠れないため、苗が表示札の背後に隠れて見えないということを確実に回避できる。
【0014】
第3の発明では、前記薄板の上端から下方へ所定長さの切り込みが入れられており、且つ切り込み下端から折り曲げられることにより、前記延出板部が形成されている。
【0015】
作業者が表示札を苗トレーに貼り付けた後、その状態で表示板部や延出板部を触る作業を行う場合、その作業中に表示札が苗トレーから剥離してしまうことが懸念される。そこで、作業者が延出板部の下側に手を差し入れて固定板部を苗トレーに押し付けつつ前記作業を行うことにより固定板部の剥離を抑制できる。しかしながら、この方法では、苗トレーが床面等の低い位置に置かれていると、作業者は下方に伸ばした両手を交差させるような状態となり、作業の難易度が高くなってしまう。
【0016】
これに対して、第3の発明によれば、薄板において折り曲げられた部分は延出板部とされており、切り込みを延出板部との境目として固定板部に対して折り曲げられていない部分は固定板部から切り込み下端よりも上方へ延びている。ここで、その延びている部分を上方突出部とすれば、延出板部の上方において突出部を苗トレーに押し付けることにより固定板部の剥離を抑制できる。しかも、作業者は延出板部の下方に手を差し入れる必要がないため、苗トレーが低い位置に置かれていても作業の難易度が高くなることを回避できる。
【0017】
第4の発明の苗トレー用の表示札は、苗が植えられた苗ポットを複数収容する苗トレーのトレー外周面に取り付けられ、前記苗に関する苗情報を表示する苗トレー用の表示札であって、薄板によって形成され、一方の板面に前記トレー外周面に接着するための接着層が設けられている固定板部と、前記薄板において前記固定板部となる部分に対して折り曲げられることにより形成され、前記固定板部よりも幅寸法が小さく、前記固定板部の上端から前記接着層とは反対側へ遠ざかるように延びている延出板部と、前記薄板において前記延出板部となる部分に対して折り曲げられることにより形成され、前記延出板部よりも幅寸法が大きく、前記延出板部における前記固定板部とは反対側の端部から前記トレー外周面とは遠ざかる側に向けて斜め下方に延び、前記延出板部とは反対側の板面に前記苗情報が表示されている表示板部と、を備えていることを特徴とする。
【0018】
第4の発明によれば、苗トレー用の表示札が粘着層によりトレー側面部の外側面に貼付された場合、表示板部において苗情報の表示面が斜め上方を向くことになる。ここで、表示札は薄板が折り曲げられることで形成されているため、延出板部に対しする表示札の折曲角度を変えるという容易な作業により表示面の向きを変えることにより、立ち姿勢で苗トレーを見下ろしている消費者の視線を想定してその視線に表示面の向きを合わせることができる。この場合、消費者はかがんだり座ったりする面倒な動作をしなくても苗情報を容易に視認することができる。この結果、苗の陳列時において表示札の情報提示効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態における表示札付きの苗トレーの構成を示す斜視図。
【図2】表示札付きの苗トレーの構成を示す断面図。
【図3】折り曲げられていない状態の表示札の構成を示す平面図。
【図4】苗トレーの陳列方法について説明するための説明図。
【図5】折り曲げられていない状態の別の表示札の構成を示す平面図。
【図6】折り曲げられていない状態の別の表示札の構成を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は表示札30付きの苗トレー10の構成を示す斜視図、図2は表示札30付きの苗トレー10の構成を示す断面図である。なお、図2においては苗ポット11、土12及び苗13の図示を省略している。
【0021】
図1に示すように、苗トレー10には複数の苗ポット11が収容されている。苗ポット11は上方が開放された容器であり、内部には栽培用の土12が充填され、その土12には苗13が植えられている。苗トレー10は、苗ポット11を収容するトレー本体21と、トレー本体21の上端に設けられたトレー外枠体22とを有している。トレー本体21は、側枠部23と底枠部24とを有しており、それら側枠部23及び底枠部24により形成された収容スペースは上方に向けて開放されている。トレー本体21には、収容スペースを複数に仕切る仕切部25が設けられている。
【0022】
トレー外枠体22は、トレー本体21の側枠部23の周縁部に沿って延びており、トレー外枠体22は側枠部23よりもトレー外方へ突出している。具体的には、図2に示すように、トレー外枠体22は、側枠部23の上端から水平方向に延びる板状のフランジ27と、側枠部23とは反対側のフランジ27の端部から下方に延びる板状のリブ28とを有している。
【0023】
なお、苗トレー10においてトレー側面部は、トレー本体21の側枠部23とトレー外枠体22のリブ28とにより構成されている。
【0024】
図1、図2に示すように、苗トレー10には、苗13の種類等を苗情報として表示する表示札30が取り付けられている。表示札30は、薄板状の合成樹脂板が折り曲げられることにより形成されている。表示札30は、固定板部31と延出板部32と表示板部33とを有しており、固定板部31がトレー外枠体22の外側面に貼付された状態で片持ち支持されている。固定板部31、延出板部32及び表示板部33はそれぞれ略長方形上に形成されており、トレー外枠体22の外側面における固定板部31が貼付されている部分と平行に延びている。なお、トレー外枠体22の外側面がトレー外周面に相当する。
【0025】
固定板部31はトレー外枠体22のリブ28の外側面に沿って延びており、接着層としての粘着層36によりリブ28に貼り付け固定されている。固定板部31の長辺は略水平方向に延びており、短辺はリブ28に沿って上下方向に延びている。固定板部31の短辺の長さ寸法はトレー本体21の高さ寸法より小さくされており、固定板部31はトレー外枠体22よりも上方に突出しない高さ位置に配置されている。この場合、固定板部31の上端はリブ28の上端とほぼ同じ高さレベルにあり、固定板部31の下端はリブ28の下端よりも下方へ突出している。粘着層36は、エマルジョン系接着剤やホットメルト接着剤などの接着剤が固定板部31に塗布されることにより形成されており、固定板部31とリブ28とを接着している。
【0026】
延出板部32は、合成樹脂板において固定板部31に対して折り曲げられた部分により形成されており、固定板部31の上端を基端として苗トレー10から遠ざかる側に向けて延びている。延出板部32は略水平方向に延びており、長辺は固定板部31の長辺と平行に延びている。延出板部32及び固定板部31の長手方向において、延出板部32の幅寸法W2は固定板部31の幅寸法W1より小さくされており(図3参照)、延出板部32は固定板部31のほぼ中央に配置されている。
【0027】
表示板部33は、合成樹脂板において延出板部32に対して折り曲げられた部分により形成されており、延出板部32の先端(固定板部31とは反対側の端部)を基端として苗トレー10から遠ざかる側の斜め下方に向けて延びている。表示板部33の長辺は延出板部32の長辺と平行に延びている。表示板部33及び延出板部32の長手方向において、表示板部33の幅寸法W3は延出板部32の幅寸法W2より大きくされており(図3参照)、延出板部32は表示板部33のほぼ中央に配置されている。延出板部32に対する表示板部33の角度は、表示板部33の先端(延出板部32とは反対側の端部)が苗トレー10の下端より上方にある大きさとされている。
【0028】
表示板部33においては表示面34に苗情報が表示されており、表示面34は固定板部31とは反対側の板面とされ、斜め上方を向いている。なお、苗情報には、苗13の成長後の写真や絵、名称、販売価格などが含まれている。また、苗情報は表示板部33における表示面34とは反対側の板面に表示されていてもよい。
【0029】
表示札30において、固定板部31の上端には延出板部32よりも上方に突出している上方突出部としての突出片37が設けられている。突出片37は固定板部31から連続して延びており、延出板部32とは切り離された状態となっている。この場合、合成樹脂板において延出板部32が固定板部31に対して折り曲げられている構成において、突出片37は固定板部31に対して折り曲げられていない。突出片37は、延出板部32の幅方向において延出板部32の両側方に配置されており、それぞれトレー外枠体22のリブ28の外側面に重なった状態でそのリブ28に沿って延びている。なお、突出片37には粘着層36が設けられておらず、突出片37はリブ28に貼付されてはいない。
【0030】
ここで、表示札30の製作方法について図3を参照しつつ説明する。図3は、折り曲げられていない状態の表示札30の構成を示す図である。図3においては、(a)に折り曲げられていない状態の表示札30の平面図を示し、(b)にその側面図を示す。
【0031】
図3(a),(b)において、折り曲げられていない状態の表示札30は平坦状であって表裏が同一形状の薄板となっている。表示札30には、延出板部32と突出片37とを切り離す切り込み45が設けられている。切り込み45は延出板部32の両側方にそれぞれ設けられており、表示札30を形成する薄板において上端から下方へ向けて互いに平行に延び、所定長さを有している。切り込み45は、突出片37と延出板部32との境界に沿って突出片37の先端(固定板部31とは反対側の端部)と基端(固定板部31側の端部)との間で延びており、延出板部32の両側方にそれぞれ配置されている。切り込み45における固定板部31側の端部には、円形状の切り込み孔46が形成されており、切り込み孔46の円周の一部を介して切り込み孔46の内周側に切り込み45が通じている。
【0032】
表示札30の粘着層36は、固定板部31において表示板部33の表示面と同じ側の板面に設けられており、粘着層36には離型紙55が貼り付けられている。粘着層36は固定板部31の幅方向に沿って延びており、固定板部31の幅寸法とほぼ同じ長さ寸法とされている。離型紙55は粘着層36とほぼ同じ大きさ及び形状とされており、粘着層36における固定板部31とは反対側の面に対して剥離可能に接着されている。この場合、粘着層36の粘着力がごみや埃等の付着により低下することを離型紙55により回避できる。
【0033】
表示札30においては、固定板部31に対して延出板部32が第1折曲線51で折り曲げられるとともに、延出板部32に対して表示板部33が第2折曲線52で折り曲げられることにより形成される。ここでは、固定板部31と延出板部32との境界線が第1折曲線51とされており、表示板部33と延出板部32との境界線が第2折曲線52とされている。この場合、切り込み45を延出板部32との境目として固定板部31に対して折り曲げられていない部分が突出片37とされている。
【0034】
ここで、切り込み孔46は第1折曲線51の両端にそれぞれ配置されている。このため、固定板部31に対して延出板部32が折り曲げられた状態において、その折り曲げ角度が大きくするための荷重や延出板部32に固定板部31から離れる方向への荷重が加えられた場合、その荷重による応力は切り込み孔46の内周面に沿って分散される。例えば、第1折曲線51の端部に切り込み孔46が設けられていない場合、前記荷重による応力は切り込み45と第1折曲線51との交点に集中し、その応力により表示札30が切り込み45の先端から固定板部31が破断してしまうことが懸念される。これに対して、本実施形態では、切り込み孔46により応力を分散することにより表示札30が破断することを抑制できる。
【0035】
なお、表示板部33の表裏両板面にはもともと苗情報などが表示されておらず、その無地の板面に対して例えば印刷処理が施されることで図3に示すような花の絵といった苗情報などが表示される。同様に、固定板部31にはもともと粘着層36及び離型紙55は設けられておらず、固定板部31の板面に両面粘着テープが貼付されることで粘着層36及び離型紙55が取り付けられる。また、図3において折曲線51,52は仮想線であり、表示板部33に表示されているものではない。さらに、粘着層36及び離型紙55が図では表現できないほど薄いものであるため、図3においては、粘着層36及び離型紙55の存在をわかりやすくするためにそれら粘着層36及び離型紙55の厚みを表示札30に比べて大きく図示している。
【0036】
次に、商品として陳列されている苗トレー10について図4を参照しつつ説明する。図4は、苗トレー10の陳列方法の例について説明するための説明図である。
【0037】
図4に示すように、苗トレー10は店舗61において商品陳列棚62に陳列されている。商品陳列棚62は店舗通路63に沿って床面64上に設置されており、複数の棚部65を有している。苗トレー10は、表示札30の表示面を店舗通路63側に向けて棚部65上に載置されている。ここで、表示札30は苗トレー10より上方及び下方のいずれにも突出していないため、表示札30が棚部65に接触するなど苗トレー10の陳列の支障となることがない。
【0038】
商品陳列棚62は、最上段の棚部65に載置された苗トレー10が店舗通路63で立ち姿勢をとっている消費者の目の高さより低い位置となるように構成されており、各棚部65において苗トレー10の表示札30は表示面34が店舗通路63側の斜め上方を向いた状態とされている。この場合、見下ろしている消費者の視線と表示札30の表示面34の向きとが一致するように、表示札30において延出板部32に対する表示板部33の折り曲げ角度が設定されている。ここで、表示札30に対する消費者の視線の角度は棚部65の高さ位置によって異なるため、棚部65ごとに表示板部33の折り曲げ角度が異なる大きさとされている。これにより、消費者はいずれの段の棚部65についてもかがんだり座ったりせずに表示札30の表示面34の苗情報を視認することができる。
【0039】
表示板部33の折り曲げ角度を調整する作業が作業者により行われる場合、作業者は下方に向けて手を伸ばし、片手で延出板部32の上側から突出片37をトレー外枠体22に押し付けつつ、もう片方の手で延出板部32に対する表示板部33の折り曲げ角度を調整することにより、作業中に固定板部31がトレー外枠体22から剥離してしまうことを回避できる。ここで、例えば表示札30に突出片37が設けられていないと、作業者は延出板部32の下側に手を差し入れた状態で固定板部31をトレー外枠体22に押し付けつつ作業を行うことになる。この場合、作業者は下方に延ばした両手を交差させるようにして作業を行わなければならなくなり、作業の難易度が高くなってしまう。これに対して、表示札30に突出片37が設けられている場合、作業の容易化を図ることができる。
【0040】
また、商品陳列棚62において最上段の棚部65については、消費者は苗トレー10内の苗13と表示札30の表示面34とを同時に視認することができる。この場合、表示札30がトレー外枠体22より上方に突出しないようにそのトレー外枠体22の外側面に貼付されているため、表示札30の背後に隠れて苗13が見えないといった不都合を回避できる。これは、下段の棚部65に陳列された苗トレー10や床面64上に陳列された苗トレー10についても同様である。
【0041】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0042】
苗情報を表示する表示札30が苗トレー10のトレー外枠体22の外側面に貼付されている構成において、表示板部33の表示面34が斜め上方を向いている。この場合、苗トレー10が店舗61の床面64や商品陳列棚62などに陳列されることにより立ち姿勢の消費者の目の高さよりも低い位置にあっても、消費者の視線を想定してその視線に表示面34の向きを合わせることが可能となる。このため、消費者はかがんだり座ったりする面倒な動作をしなくても苗情報を容易に視認することができる。したがって、苗トレー10を購入しようとしている消費者だけでなく苗トレー10の陳列場所を通りかかっただけの消費者などより多くの消費者に苗情報を視認させることができる。以上の結果、陳列されている苗13について表示札30の情報提示効果を好適に発揮することができる。
【0043】
表示札30は合成樹脂板が折り曲げ加工されることで形成されているため、延出板部32に対する表示板部33の折り曲げ角度を変えるという容易な作業により表示板部33の表示面34の向きを調整することができる。このため、例えば床面64や商品陳列棚62において複数の苗トレー10が陳列されている場合に、苗トレー10ごとにそれぞれの陳列位置に合わせて表示札30の表示面34の向きを変える作業の負担を低減することができる。
【0044】
表示札30がトレー外枠体22の外側面における店舗通路63側の面に貼付されている構成においては、表示板部33がトレー外枠体22よりも上方に突出していると、消費者が斜め上方から苗トレー10を見下ろした場合に苗13が表示板部33の上部の背後に隠れて見えないことがある。これに対して、本実施形態では表示板部33がトレー外枠体22よりも上方に突出していないため、消費者が苗トレー10を真上から見下ろした場合はもちろんのこと斜め上方から見下ろした場合でも、苗13が表示板部33の背後に隠れて見えないという不都合を回避できる。
【0045】
表示札30が苗トレー10に対して片持ち支持されている構成において、延出板部32は表示板部33より幅寸法が小さくされている。このため、表示板部33に対して延出板部32を極力細くして目立たなくすることができる。また、この場合、延出板部32を極力細くすることができるため、風等により表示板部33が揺れやすい構成を実現できる。この構成では、表示板部33の揺れにより消費者の注意を引いて表示面34の苗情報を視認させやすくできるため、表示札30の情報提示効果を高めることができる。しかも、苗13は店舗61において屋外に陳列されることが多いと考えられるため、表示板部33を風で揺れやすくした構成は表示札30の情報提示効果を高める上で特に効果的である。
【0046】
片持ち支持されている表示札30においては、延出板部32を利用して表示板部33がトレー外周面から遠ざけられている。つまり、表示板部33がトレー外枠体22の外側面よりも店舗通路63側(消費者側)にせり出した状態とされている。このため、複数の苗トレー10が上下に重ねられた状態で陳列されていても、表示板部33が上方の苗よりも店舗通路63側に突出した状態とすることが容易であるため、表示板部33の表示面34が上方の苗トレー10の下に隠れて見えないということを回避できる。すなわち、複数の苗トレー10が多段積みされている場合に、表示面34の視認性が低下することを回避できる。
【0047】
表示札30において固定板部31は延出板部32よりも幅寸法が大きくされている。この場合、固定板部31においてトレー外枠体22との接着面積を極力大きくすることにより、固定板部31をトレー外枠体22から剥がれにくくすることができる。
【0048】
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。
【0049】
(1)表示札30は、固定板部31がトレー外枠体22よりも上方に突出する高さ位置にてトレー外枠体22に貼付されていてもよい。例えば固定板部31の突出片37がトレー外枠体22よりも上方に突出している構成とする。
【0050】
(2)表示板部33において固定板部31は延出板部32より上方に突出していなくてもよい。例えば固定板部31が突出片37を有していない構成とする。この構成によれば、固定板部31が突出片37を有している構成に比べて、表示札30がトレー外枠体22より上方に突出しない範囲で表示板部33の上端が極力高い位置となるように表示札30をトレー外枠体22に貼付することができる。したがって、表示板部33が苗トレー10より下方に突出しない範囲において、表示板部33を極力大きくすることや、延出板部32に対する表示板部33の折り曲げ角度を大きくすることを実現できる。
【0051】
(3)表示札30は、表示板部33が苗トレー10よりも下方に突出する高さ位置にてトレー外枠体22に貼付されていてもよい。
【0052】
(4)表示札30において固定板部31、延出板部32及び表示板部33はそれぞれ略長方形状でなくてもよい。例えば表示板部33が円形状とされている構成とする。また、表示札30は左右非対称な形状とされていてもよい。
【0053】
(5)表示札30の固定板部31には粘着層36の設置位置をガイドするガイド部が設けられていてもよい。例えば図5(a),(b)に示すように、固定板部31の長手方向における両端に側方へ突出した一対の突部71がそれぞれ設けられている構成とする。この構成では一対の突部71がガイド部に相当している。一対の突部71は、固定板部31の端部には固定板部31の側方に向けて開放された凹部を形成している。一対の突部71の離間距離(凹部の底面の幅寸法)は粘着層36及び離型紙55の幅寸法とほぼ同じとされており、粘着層36及び離型紙55は固定板部31の両端の各突部71同士を架け渡すように設けられている。
【0054】
ここで、固定板部31にはもともと粘着層36及び離型紙55が設けられておらず、両面粘着テープを貼付することで粘着層36及び離型紙55が取り付けられる。両面粘着テープの貼付作業は、固定板部31の一端の各突部71から他端の各突部71に向けて両面粘着テープを伸ばしながら貼付し、貼付した両面粘着テープを他端の各突部71の間で切断するという手順で行われる。この場合、固定板部31の両端において一対の突部71の間に両面粘着テープを納めることで両面粘着テープの貼付位置がずれることを抑制でき、一対の突部71の間において固定板部31の端部に沿って両面粘着テープを切断することで両面粘着テープの切断位置がずれることを抑制できる。つまり、両面粘着テープの貼付及び切断に際しては、両面粘着テープの貼付位置及び切断位置が一対の突部71によりガイドされるため、それら貼付作業及び切断作業を容易化することができる。
【0055】
表示札30は、平坦状の薄板が折り曲げ加工されて形成されている。薄板はカットして成形されており、表裏が同一形状となっている。ちなみに、図5は、折り曲げられていない状態の表示札30を示す図である。
【0056】
なお、図5の表示札30は、突出片37に代えて一対の突部71が設けられていることだけが図3の表示札30と異なるものであり、各板部31〜33の大きさ及び形状は図3の表示札30と同じとされている。粘着層36及び離型紙55の厚みを表示札30に比べて大きく図示していることは図3と同様である。
【0057】
また、表示札30の各板部31〜33の大きさ及び形状を変更してもよい。例えば図6(a),(b)に示すように、表示板部33が固定板部31及び延出板部32に対して相対的に大きくされた構成とする。この構成では、図5の表示札30に比べて、厚みがほぼ同じとされ、固定板部31及び延出板部32の幅寸法が大きくされ、さらに表示板部33の縦寸法及び幅寸法が大きくされている。ただし、表示札30、粘着層36及び離型紙55は図では表現できないほど薄いものであるため、図6(b)においては、表示札30、粘着層36及び離型紙55の厚みを示す線が重ならないように、それら表示札30、粘着層36及び離型紙55の厚みを実際より大きく図示している。また、固定板部31にはもともと粘着層36及び離型紙55は設けられていない。
【0058】
(6)表示札30が取り付けられる苗トレー10はトレー外枠体22を有していなくてもよい。この場合、表示札30はトレー側面部としてのトレー本体21の外側面に貼付されていればよい。要は、苗トレー10はトレー側面部の外側面に表示札30を貼付可能な構成であればよく、表示札30を貼付するための専用トレーでなくてもよい。
【符号の説明】
【0059】
10…苗トレー、11…苗ポット、13…苗、22…トレー側面部を構成するトレー外枠体、30…表示札、31…固定板部、32…延出板部、33…表示板部、34…表示面、36…接着層としての粘着層、37…上方突出部としての突出片。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗が植えられた苗ポットを複数収容するとともに、前記苗に関する苗情報を表示する表示札がトレー外周面に取り付けられている表示札付き苗トレーであって、
前記表示札は、
薄板によって形成され、前記トレー外周面に沿って延びた状態で該トレー外周面に接着固定されている固定板部と、
前記薄板において前記固定板部となる部分に対して折り曲げられることにより形成され、前記固定板部よりも幅寸法が小さく、前記固定板部の上部から前記トレー外周面とは遠ざかる側に向けて延びている延出板部と、
前記薄板において前記延出板部となる部分に対して折り曲げられることにより形成され、前記延出板部よりも幅寸法が大きく、前記延出板部における前記固定板部とは反対側の端部から前記トレー外周面とは遠ざかる側の斜め下方に向けて延び、斜め上方を向く板面に前記苗情報が表示されている表示板部と、
を備えていることを特徴とする表示札付き苗トレー。
【請求項2】
前記固定板部は、前記表示板部が前記トレー外周面よりも上方に突出しない高さ位置にて前記トレー外周面に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の表示札付き苗トレー。
【請求項3】
前記薄板の上端から下方へ所定長さの切り込みが入れられており、且つ切り込み下端から折り曲げられることにより、前記延出板部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の表示札付き苗トレー。
【請求項4】
苗が植えられた苗ポットを複数収容する苗トレーのトレー外周面に取り付けられ、前記苗に関する苗情報を表示する苗トレー用の表示札であって、
薄板によって形成され、一方の板面に前記トレー外周面に接着するための接着層が設けられている固定板部と、
前記薄板において前記固定板部となる部分に対して折り曲げられることにより形成され、前記固定板部よりも幅寸法が小さく、前記固定板部の上端から前記接着層とは反対側へ遠ざかるように延びている延出板部と、
前記薄板において前記延出板部となる部分に対して折り曲げられることにより形成され、前記延出板部よりも幅寸法が大きく、前記延出板部における前記固定板部とは反対側の端部から前記トレー外周面とは遠ざかる側に向けて斜め下方に延び、前記延出板部とは反対側の板面に前記苗情報が表示されている表示板部と、
を備えていることを特徴とする苗トレー用の表示札。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−115230(P2012−115230A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270189(P2010−270189)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000102278)エーアールシー株式会社 (11)
【Fターム(参考)】