説明

表示素子用電解質、表示素子及び表示装置

【課題】 電極等への腐食性が抑制され、経時的に安定であるとともに、電気安定性に優れる表示素子用電解質、並びに、該表示素子用電解質を用いてなる表示素子及び表示装置を提供する。
【解決手段】下記一般式(1);


(式中、Xは、B、C、O、Al、Si、P、S、As及びSeからなる群より選択される少なくとも1種の元素を表す。A及びBは、同一又は異なって、有機連結基を表す。Qは、有機基を表す。aは、1以上の整数であり、b、c、d及びeは、0以上の整数である。)で表されるアニオンを有するイオン性物質を含有する表示素子用電解質である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示素子用電解質、表示素子及び表示装置に関する。より詳しくは、電子情報を閲覧するための媒体を構成する表示素子に使用される表示素子用電解質、並びに、該表示素子用電解質を用いてなる表示素子及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示素子は、電子情報を閲覧するための媒体を構成するものであり、従来より、CRT(Cathode Ray Tube)や液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等に広く用いられているものである。このような表示素子の発達により、電子書類として配信された文章類をハードコピーとして打ち出すことなく閲覧することが可能となっているが、これらの従来の表示素子は発光型であるため、人間工学的理由から疲労が著しく、長時間の読書には耐えられない点が指摘されており、また、閲覧場所がコンピュータの設置場所に限られるという点から、これらの点を改善できる新たな表示素子が求められていた。
【0003】
そこで、発光型表示素子に代替する技術として、主に電気泳動法により着色粒子を電極間で移動させるか又は二色性を有する粒子を電場で回転させることにより着色する、いわゆるペーパーライクディスプレイ又は電子ペーパーと呼ばれる反射型の表示素子が開発されている(例えば、特許文献1、2参照。)。また、銀塩を溶解させた溶液からなる溶液が対向電極間に配され、これらの電極の駆動制御により銀の析出又は溶解を生じさせ、着色又は消色するように構成された光学装置(例えば、特許文献3、4参照。)や、このような構成において、更に白色の反射板を背面に設けたエレクトロデポジション型画像表示装置(例えば、特許文献5参照。)、更に白色度の向上のために高分子固体電解質層に着色剤を含有させたエレクトロクロミック表示素子(例えば、特許文献6参照。)が開示されている。
しかしながら、これらの表示素子や装置においては、イソプロピルアルコール、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート等の揮発性の有機溶剤が主として使用されており、製造時や廃棄時における環境面や安全面に充分に配慮した表示素子を得るための工夫の余地があった。
【0004】
このような有機溶剤に代えてイオン性流体を使用した表示素子に関し、常温溶融塩及びエレクトロクロミック性発色物質を含むエレクトロクロミックデバイス用組成物(例えば、特許文献7参照。)や、2つの電極間に、着色剤、金属イオン及びイオン性流体を含有する高分子固体電解質層を有する表示素子が開示されている(例えば、特許文献8参照。)。
しかしながら、これらの組成物や電解質層においては、表示素子に用いた場合に充分な性能を発揮できるようにするために、電極等への腐食性を充分に抑制し、より長期安定性を奏するものとするための工夫の余地があった。
【特許文献1】米国特許第6120588号明細書(特許請求の範囲)
【特許文献2】米国特許第5754332号明細書(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平10−133236号公報(第2頁)
【特許文献4】特開平10−148851号公報(第2頁)
【特許文献5】特開平11−101994号公報(第2頁)
【特許文献6】特開2002−258327号公報(第2頁)
【特許文献7】特開2002−99001号公報(第2頁)
【特許文献8】特開2004−177755号公報(第2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、電極等への腐食性が抑制され、経時的に安定であるとともに、電気安定性に優れる表示素子用電解質、並びに、該表示素子用電解質を用いてなる表示素子及び表示装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、表示素子用電解質について種々検討したところ、従来の溶媒に代えてイオン性物質を使用することにより、良好なイオン伝導性を発揮しながらも、溶媒の持つ揮発性や引火性等の問題が改善され、安全に取り扱うことができることに着目し、該イオン性物質として特定のアニオンを有するものとすると、良好な電気化学安定性を示し、また電極等への腐食性が抑制され、経時的に安定に機能することができるものとなることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到した。そして、このような表示素子用電解質を使用した表示素子や表示装置が、環境面や安全面に充分に配慮しつつ、近年のネットワーク社会に充分に適合できるものであることを見いだし、本発明に到達したものである。
【0007】
すなわち本発明は、下記一般式(1);
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、Xは、B、C、O、Al、Si、P、S、As及びSeからなる群より選択される少なくとも1種の元素を表す。A及びBは、同一又は異なって、有機連結基を表す。Qは、有機基を表す。aは、1以上の整数であり、b、c、d及びeは、0以上の整数である。)で表されるアニオンを有するイオン性物質を含有する表示素子用電解質である。
以下に本発明を詳述する。
【0010】
本発明の表示素子用電解質は、イオン性物質を含有するものであるが、イオン性物質とは、カチオンとアニオンとにより構成される化合物を意味する。本発明においては、このようなイオン性物質を1種又は2種以上含有することができ、これらを2種以上含有する場合には、カチオンとアニオンとにより構成される化合物が2種以上含有することになればよく、カチオン又はアニオンが同種のものであってもよい。
上記イオン性物質は、40℃において、一定体積をもち、かつ流動性を有する液体であることが好ましい。具体的には、40℃で200mPa・s以下の液体であることが好ましい。より好ましくは、40℃で100mPa・s以下の液体であり、更に好ましくは、40℃で50mPa・s以下の液体である。なお、粘度の測定方法としては、例えば、TV−20形粘度計 コーンプレートタイプ(トキメック社製)を用いて測定することができる。
【0011】
上記イオン性物質としては、上記一般式(1)で表されるアニオンを有するものであるが、このようなアニオンを有することにより、高イオン伝導性を有し、耐久性や長期安定性に優れ、長期間経過してもなお充分な電気安定性を発揮できるという本発明の作用効果をより充分に発揮することが可能となる。また、上記アニオンがフッ素を含まない場合には、電極等の耐腐食性により優れることとなる。
【0012】
上記一般式(1)で表されるアニオンに関し、一般式(1)中の記号について、以下に更に説明する。
Xは、B、C、O、Al、Si、P、S、As及びSeから選ばれる少なくとも1種の元素を表すが、C、N又はSが好ましい。より好ましくは、C又はSであり、これにより、系を低粘度化することが可能になり、性能向上が可能となる。このように上記一般式(1)におけるXが、炭素原子(C)又は硫黄原子(S)である形態は、本発明の好適な形態の1つである。更に好ましくはCであり、これによって更に耐熱性を向上することが可能となる。
A及びBは、同一又は異なって、有機連結基を表すが、それぞれ独立に、−S−、−O−、−SO−及び−CO−から選ばれる少なくとも1種の連結基であることが好ましく、より好ましくは、−SO−、−CO−である。
Qは、有機基を表すが、水素原子、ハロゲン原子、C(2p+1−q)、OC(2p+1−q)、SO(2p+1−q)、CO(2p+1−q)、COC(2p+1−q)、SO5−r、NO(式中、1≦p≦6、0<q≦13、0<r≦5である)等が好ましい。より好ましくは、フッ素原子、塩素原子、C(2p+1−q)、SO(2p+1−q)である。
【0013】
またaは、1以上の整数であり、b、c、d及びeは、0以上の整数であるが、a、d及びeは、元素Xの価数によって決まることになり、例えば、Xが硫黄原子(S)の場合、a=1、d=0、e=0となり、Xが窒素原子の場合、(1)a=2、d=0、e=0、(2)a=1、d=1、e=0、又は、(3)a=1、d=0、e=1のいずれかとなる。また、b及びcは0であることが好適である。
上記一般式(1)で表されるアニオンとしては、ジシアノアミドアニオン(DCA)、チオシアネートアニオン、トリシアノメチドアニオン(TCM)、テトラシアノホウ素アニオン、シアノオキシアニオン(CYO)等が、フッ素を含まず、電極等の耐腐食性に優れるため好ましく、特にトリシアノメチドアニオンが好適である。
【0014】
上記一般式(1)で表されるアニオンとしてはまた、下記一般式(2);
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、Xは、B、C、O、Al、Si、P、S、As及びSeからなる群より選択される少なくとも1種の元素を表す。A及びBは、同一又は異なって、有機連結基を表す。aは、1以上の整数であり、b、c、d及びeは、0以上の整数である。)で表されるアニオンであってもよく、上記イオン性物質が、上記一般式(2)で表されるアニオンを有する形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
上記一般式(2)で表されるアニオンにおいて、X、A及びBは、上述したとおりである。また、aは、1以上の整数であり、b、c及びdは、0以上の整数であるが、a及びdは、元素Xの価数によって決まることになり、例えば、Xが硫黄原子(S)の場合、a=1及びd=0となり、Xが窒素原子の場合、a=2及びd=0、又は、a=1及びd=1となる。
上記一般式(2)で表されるアニオンとしては、ジシアノアミドアニオン(DCA)、トリシアノメチドアニオン(TCM)等が、フッ素を含まず、電極等の耐腐食性に優れるため好ましく、特にトリシアノメチドアニオンが好適である。
【0017】
上記イオン性物質としては、表示素子用電解質とした場合に好適に作用するものであればその他のアニオンを含有することができる。その他のアニオンとしては、例えば、ビストリフルオロメタンスルホニルイミドアニオン(TFSI)、テトラフルオロホウ酸アニオン、酢酸や安息香酸等のモノカルボン酸、フタル酸、マレイン酸、コハク酸アニオン等のジカルボン酸アニオン、メチル硫酸、エチル硫酸等の硫酸エステルアニオン等を含有していてもよい。また、含フッ素無機イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロヒ酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、ヘキサフルオロニオブ酸イオン、ヘキサフルオロタンタル酸イオン等の含フッ素無機イオン;フタル酸水素イオン、マレイン酸水素イオン、サリチル酸イオン、安息香酸イオン、アジピン酸イオン等のカルボン酸イオン;ベンゼンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、パーフルオロブタンスルホン酸等のスルホン酸イオン;ホウ酸イオン、リン酸イオン等の無機オキソ酸イオン;ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドイオン、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドイオン、パーフルオロアルキルフルオロボレートイオン、パーフルオロアルキルフルオロホスフェートイオン、ボロジカテコレート、ボロジグリコレート、ボロジサリチレート、ボロテトラキス(トリフルオロアセテート)、ビス(オキサラト)ボレート等の四配位ホウ酸イオン等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0018】
上記表示素子用電解質において、アニオンの存在量(全てのアニオンの存在量)としては、表示素子用電解質100質量%に対し、アニオンの由来となる化合物の含有量の下限値が1質量%となることが好ましい。より好ましくは5質量%であり、更に好ましくは10質量%である。また、上限値としては99.5質量%が好ましい。より好ましくは95質量%であり、更に好ましくは90質量%である。
なお、本発明の表示素子用電解質に含まれる全アニオン中の上記一般式(1)で表されるアニオンの質量割合としては、アニオンの総量100質量%に対し、下限が10質量%であることが好適である。これにより、本発明の作用効果をより充分に発揮することが可能となる。より好ましい下限は30質量%である。
【0019】
本発明の表示素子用電解質としてはまた、イオン性物質を構成するカチオンを含有することになるが、その他のカチオンを含有することもできる。このような本発明の表示素子用電解質に含有されることになるカチオンとしては、表示素子用電解質とした場合に好適に作用するものであればよく、例えば、下記一般式(3);
【0020】
【化3】

【0021】
(式中、Lは、C、Si、N、P、S又はOを表す。Rは、同一又は異なって、有機基であり、互いに結合していてもよい。sは、3、4又は5であり、元素Lの価数によって決まる値である。)で表されるオニウムカチオンを必須としてなることが好適である。また、このようなカチオンは、本発明の表示素子用電解質に含有されるイオン性物質を形成するカチオンであることが好ましい。より好ましくは、上記イオン性物質が、上記一般式(1)で表されるアニオンと上記一般式(3)で表されるカチオンとから構成されるものであることである。この場合、上記一般式(1)で表されるアニオンと上記一般式(3)で表されるカチオンとから構成されるイオン性物質は、常温で溶融した状態を安定に保つ常温溶融塩となり、このような溶融塩を含む本発明の表示素子用電解質は、長期間に亘って更に充分な安定性を発揮できることとなり、長期間に耐える表示素子用の電解質として好適なものとなる。なお、溶融塩とは、室温から80℃の温度範囲において液体状態を安定に保つことができるものである。
【0022】
上記一般式(3)で表されるオニウムカチオンとしては、下記一般式;
【0023】
【化4】

【0024】
(式中、Rは、上記一般式(3)と同様である。)で表されるものがより好適である。これらの中でも、下記の(I)〜(IV)のオニウムカチオンが更に好ましい。
なお、下記(I)〜(III)のカチオンを表す式中、R〜R12は、同一若しくは異なって、有機基を表し、互いに結合していてもよいものであるが、例えば、水素原子、フッ素原子、アミノ基、イミノ基、アミド基、エーテル基、エステル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルバモイル基、シアノ基、スルホン基、スルフィド基や、直鎖、分岐鎖又は環状で、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等を含んでもよい炭素数1〜18の炭化水素基、炭化フッ素基等が好ましく、より好ましくは、水素原子、フッ素原子、シアノ基、スルホン基、炭素数1〜8の炭化水素基、炭化フッ素基である。
【0025】
(I)下記一般式で表される10種類の複素環オニウムカチオン。
【0026】
【化5】

【0027】
(II)下記一般式で表される5種類の不飽和オニウムカチオン。
【0028】
【化6】

【0029】
(III)下記一般式で表される9種類の飽和環オニウムカチオン。
【0030】
【化7】

【0031】
(IV)RがC〜Cのアルキル基である鎖状オニウムカチオン。
これらのオニウムカチオンの中でも、特に好ましくは、一般式(3)におけるLが窒素原子であるものであり、最も好ましくは、下記一般式;
【0032】
【化8】

【0033】
(式中、R〜R12は、上記(I)〜(III)を表す一般式におけるR〜R12と同様である。)で表される6種類のオニウムカチオンや、トリエチルメチルアンモニウム、ジメチルエチルプロピルアンモニウム、ジエチルメチルメトキシエチルアンモニウム、トリメチルプロピルアンモニウム、トリメチルブチルアンモニウム、トリメチルヘキシルアンモニウム等の鎖状オニウムカチオン等である。
【0034】
上記表示素子用電解質において、カチオンの存在量(全てのカチオンの存在量)としては、表示素子用電解質中に存在するアニオン1molに対し、下限値が0.5molであることが好ましい。より好ましくは0.8molである。また、上限値としては2.0molであることが好ましく、より好ましくは1.2molである。
なお、上記表示素子用電解質に含まれる全カチオン中の上記一般式(3)で表されるオニウムカチオンの質量割合としては、カチオンの総量100質量%に対し、下限が10質量%であることが好適である。これにより、長期間に亘る安定性を更に充分に発揮でき、本発明の作用効果をより充分に発揮することが可能となる。より好ましい下限は30質量%である。
【0035】
本発明の表示素子用電解質としては、金属イオンを含有することが好適である。この場合、金属イオンは、変色に用いられることとなるが、電気的な酸化還元により色を変化させるという電気化学的な析出、いわゆる電解めっきと、その逆反応である溶出とが可逆的に行われることによって表示(すなわち可視化)が行われることになる。
このような電気化学的な析出と溶出とによって発色と消色とを行うことのできる金属イオンとしては特に限定されず、通常使用されるものを用いることができるが、例えば、ビスマス、銀、リチウム、鉄、クロム、ニッケル及びカドミウムの各イオン又はこれらのうち2以上の組み合わせからなるイオンであることが好適である。すなわち上記金属イオンは、ビスマスイオン、銀イオン、リチウムイオン、鉄イオン、クロムイオン、ニッケルイオン及びカドミウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種の金属イオンであることが好ましい。中でも、可逆的な反応を容易に進めることができることから、ビスマスイオン、銀イオンがより好適である。
【0036】
上記金属イオンの含有量としては、使用する金属の種類や用途等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、表示素子用電解質100質量%に対し、金属イオンの由来となる化合物の含有量の下限が0.1質量%、上限が50質量%であることが好適である。これにより、表示素子に充分な表示機能を付与することが可能となる。より好ましくは、下限が0.5質量%、上限が20質量%である。
【0037】
上記表示素子用電解質としては、着色剤を含有することが好適である。これにより、コントラストを向上させることが可能となり、金属イオンと併用することによって、金属イオンの酸化還元により発色する色に対してより充分にコントラストを得ることが可能となる。すなわち、上記表示素子用電解質が、金属イオン及び着色剤を含んでなる形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
上記着色剤としては特に限定されないが、無機顔料若しくは有機顔料、又は、色素であることが好適である。無機顔料、有機顔料及び色素としては、通常用いられるものを使用すればよく、求められる用途等に応じて適宜設定することが好ましいが、色素としては、油溶性染料を用いることが好適である。なお、金属イオンの発色が黒色の場合には、背景色として白色の隠蔽性の高い着色剤を用いることが好ましく、このような着色剤として、例えば、二酸化チタン、炭酸カルシウム、シリカ、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等の無機白色粒子の1種又は2種以上を使用することができる。
また蛍光や青み等で視覚的な白色度を向上する目的で、蛍光増白剤やブルーイング剤等を必要に応じて添加してもよい。
【0038】
上記着色剤の含有量としては、使用する着色剤の種類や用途等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、無機粒子を着色剤として用いる場合には、表示素子用電解質100質量%に対し、無機粒子の含有量の上限が20質量%であることが好適である。20質量%を超える場合には、酸化チタン等の無機白色粒子が重合体への溶解性がなく分散するだけであることに起因して、無機粒子が凝集する結果、光学濃度が充分に均一なものとはならないおそれがある。また、無機粒子にはイオン導電性がないため、混合割合の増加によって表示素子用電解質の導電性が充分なものとはならないおそれがある。より好ましい上限は10質量%である。また、下限は1質量%であることが好適であり、より好ましくは5質量%である。
なお、色素を着色剤として用いる場合には、色素の発色効率が無機粒子に比べてはるかに高いため、電気化学的に安定した色素であれば、少量でも充分なコントラストを出すことができる。例えば、表示素子用電解質100質量%に対し、色素の含有量の下限は1質量%、上限は10質量%であることが好適である。
【0039】
上記表示素子用電解質としては、マトリクス(母材)用ポリマー(重合体)を含んでなることが好適であり、このようなマトリクス用ポリマーとして、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレンイミン、ポリエチレンスルフィド等が挙げられ、これらを主鎖構造として有している樹脂であってもよいし、分岐構造として有している樹脂があってもよい。また、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル等の樹脂も好適に用いることができる。なお、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。このように、上記表示素子用電解質が、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレンイミン、ポリエチレンスルフィド、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、これらを主鎖構造として枝分かれを有する樹脂、又は、これらの混合物を含んでなる形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
【0040】
上記表示素子用電解質としてはまた、本発明の作用効果を損なわない範囲内で、水や有機溶媒を含有することができる。有機溶媒としては、例えば、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、クラウンエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエ−テル、ジオキサン等のエーテル類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等のカーボネート類;炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジフェニル、炭酸メチルフェニル等の鎖状炭酸エステル類;炭酸エチレン、炭酸プロプレン、2,3−ジメチル炭酸エチレン、炭酸ブチレン、炭酸ビニレン、2−ビニル炭酸エチレン等の環状炭酸エステル類;蟻酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸、プロピオン酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル等の脂肪族カルボン酸エステル類;安息香酸メチル、安息香酸エチル等の芳香族カルボン酸エステル類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン等のカルボン酸エステル類;リン酸トリメチル、リン酸エチルジメチル、リン酸ジエチルメチル、リン酸トリエチル等のリン酸エステル類;アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、2−メチルグルタロニトリル等のニトリル類;N−メチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルピロリドン、N−ビニルピロリドン等のアミド類;ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、スルホラン、3−メチルスルホラン、2,4ジメチルスルホラン等の硫黄化合物類:エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のアルコール類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、2,6−ジメチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類;ジメチルスルホキシド、メチルエチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド類;ベンゾニトリル、トルニトリル等の芳香族ニトリル類;ニトロメタン、1,3−ジメチル−2イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
これらの中でも、炭酸エステル類、脂肪族エステル類、エーテル類がより好ましく、カーボネート類が更に好ましい。
なお、これらの溶媒は、上記マトリクス用ポリマーが親水性である場合は、水や親水性有機溶媒を用いることが好ましく、上記マトリクス用ポリマーが疎水性である場合には、疎水性有機溶媒を用いることが好適である。
【0041】
上記水や有機溶媒の含有割合としては、表示素子用電解質100質量%に対し、上限値が99質量%であることが好適である。これにより、揮発分が充分に低減され、しかも例えば−55℃の低温においても凍ることがなく、化学的及び熱的安定性に優れるものとなる。より好ましくは85質量%であり、更に好ましくは75質量%であり、特に好ましくは65質量%である。また、下限値としては1質量%であることが好適であり、より好ましくは1.5質量%であり、更に好ましくは20質量%であり、特に好ましくは50質量%である。
なお、表示素子用電解質が非水系溶媒を含有する場合には、水分含量を制御することが好適であり、これにより、水に起因する影響が充分に軽減され、表示素子や表示装置において好適に機能することとなる。具体的には、非水系溶媒を含有する場合、上記表示素子用電解質中の水分濃度の下限が1質量%であることが好適であり、より好ましくは0.1質量%である。また、上限値は0.01質量%であることが好ましい。
【0042】
上記表示素子用電解質は、支持電解質を含有するものであることが好適である。
上記支持電解質としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及び/又はアルキルアンモニウム塩であることが好適であり、これらの電解質は1種又は2種以上を使用することができる。アルカリ金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩が好適であり、アルカリ土類金属塩としては、カルシウム塩、マグネシウム塩が好適であり、より好ましくは、リチウム塩である。
【0043】
上記アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及び/又はアルキルアンモニウム塩としては、上述した一般式(1)で表されるアニオンやその他のアニオンを必須とする化合物であってもよいし、それ以外の化合物であってもよい。
上記アニオンを必須とする化合物の場合には、上記一般式(1)で表されるアニオンのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及び/又はアルキルアンモニウム塩であることが好ましく、中でも、リチウム塩であることがより好ましい。このようなリチウム塩としては、上述した好ましいアニオンのリチウム塩の他にも、LiC(CN)、LiSi(CN)、LiB(CN)、LiAl(CN)、LiP(CN)、LiP(CN)、LiAs(CN)、LiOCN、LiSCN等が好適である。
【0044】
それ以外の化合物である場合には、表示素子用電解質中での解離定数が大きい電解質塩であることが好ましく、例えば、LiCFSO、NaCFSO、KCFSO等のトリフロロメタンスルホン酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩;LiN(CFSO、LiN(CFCFSO等のパーフロロアルカンスルホン酸イミドのアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩;LiPF、NaPF、KPF等のヘキサフロロリン酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩;LiClO、NaClO等の過塩素酸アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩;LiBF、NaBF等のテトラフロロ硼酸塩;LiCl、LiBr、LiI、LiBF、LiClO、LiPF、LiCFSO、LiAsF、KCl、KI、KBr、NaCl、NaI、NaBr、NaAsF等のアルカリ金属塩;ほうフッ化テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラエチルアンモニウム、ほうフッ化テトラブチルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムハライド等のテトラアルキルアンモニウム塩等が好適である。なお、アルキルアンモニウム塩を2種以上使用する場合は、そのアルキル鎖長は同じであっても異なっていてもよい。
これらの中でも、溶解性等の観点から、アルカリ金属塩やアルキルアンモニウム塩を用いることが好適である。すなわち、上記表示素子用電解質が、アルカリ金属塩及びアルキルアンモニウム塩のうち少なくとも1種の塩を含んでなる形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
なお、(CHP・BF、(CP・BF等の四級ホスホニウム塩等を用いることもできる。
【0045】
上記支持電解質の含有量としては、表示素子用電解質100質量%に対し、支持電解質の下限が0.1質量%であることが好ましく、また、上限が50質量%であることが好ましい。0.1質量%未満であると、イオンの絶対量が充分とはならず、イオン導電性を充分に向上させることができないおそれがあり、50質量%を超えると、イオンの移動がより円滑なものとはならないおそれがある。より好ましい上限値は30質量%である。
【0046】
上記表示素子用電解質はまた、共役二重結合を有する窒素複素環カチオンを必須としてなることが好ましく、これにより、電気化学的安定性がより向上されることとなる。
上記共役二重結合を有する窒素複素環カチオンとしては、上述した(I)の10種類の複素環オニウムカチオンや、上記(II)の5種類の不飽和オニウムカチオン等のうち、共役二重結合を有し、上記一般式(2)におけるLが窒素原子であるものが好適である。
【0047】
上記表示素子用電解質にはまた、上述した塩や溶媒の他にも種々の添加剤を含有させてもよい。添加剤を加える目的は多岐にわたり、電気伝導率の向上、熱安定性の向上、水和や溶解による電極劣化の抑制、ガス発生の抑制、耐電圧の向上、濡れ性の改善等を挙げることができる。
このような添加剤としては、例えば、p−ニトロフェノール、m−ニトロアセトフェノン、p−ニトロ安息香酸等のニトロ化合物;リン酸ジブチル、リン酸モノブチル、リン酸ジオクチル、オクチルホスホン酸モノオクチル、リン酸等のリン化合物;ホウ酸又はホウ酸と多価アルコール(エチレングリコール、グリセリン、マンニトール、ポリビニルアルコール等)や多糖類との錯化合物等のホウ素化合物;ニトロソ化合物;尿素化合物;ヒ素化合物;チタン化合物;ケイ酸化合物;アルミン酸化合物;硝酸及び亜硝酸化合物;2−ヒドロキシ−N−メチル安息香酸、ジ(トリ)ヒドロキシ安息香酸等の安息香酸類;グルコン酸、重クロム酸、ソルビン酸、ジカルボン酸、EDTA、フルオロカルボン酸、ピクリン酸、スベリン酸、アジピン酸、セバシン酸、ヘテロポリ酸(タングステン酸、モリブデン酸)、ゲンチシン酸、ボロジゲンチシン酸、サリチル酸、N−アミノサリチル酸、ボロジプロトカクテ酸、ボロジピロカテコール、バモン酸、ボン酸、ボロジレゾルシル酸、レゾルシル酸、ボロジプロトカクエル酸、グルタル酸、ジチオカルバミン酸等の酸類;そのエステル、そのアミド及びその塩;シランカップリング剤;シリカ、アミノシリケート等のケイ素化合物;トリエチルアミン、ヘキサメチレンテトラミン等のアミン化合物;L−アミノ酸類;ベンゾール;多価フェノール;8−オキシキノリン;ハイドロキノン;N−メチルピロカテコール;キノリン;チオアニソール、チオクレゾール、チオ安息香酸等の硫黄化合物;ソルビトール;L−ヒスチジン等の1種又は2種以上を使用することができる。また、その他、無水酢酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸等の酸無水物やその酸化合物、トリエチルアミン、メチルイミダゾール等の塩基性化合物を添加してもよい。
上記添加剤の含有量は特に限定されないが、例えば、表示素子用電解質100質量%に対して、0.1質量%以上、また、20質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、0.5質量%以上、10質量%以下である。
【0048】
本発明はまた、駆動素子により制御される第一の電極と、該第一の電極に対向する第二の電極とを備えた表示素子であって、該表示素子は、第一の透明電極と第二の電極との間に高分子固体電解質層を有し、該高分子固体電解質層は、上記表示素子用電解質を含有するものである表示素子でもある。
本発明は更に、上記表示素子を複数個、面状に配列してなる表示装置でもある。
【0049】
本発明の表示素子は、第一の電極、上記高分子固体電解質層及び第二の電極をこの順に積層してなる構造を有するものであるが、本発明の作用効果を損なわない範囲内で、更に他の層を電極間に有することもできる。通常では、支持体(基板)間に、電極及び高分子固体電解質層を有する表示素子が形成されることになり、当該形態は、本発明の表示装置の好適な構造の1つである。また、上記表示装置においては、第一の電極側と第二の電極側とを対向させるために、これらそれぞれを支持する支持体を保持する封止部を周囲に形成してもよい。なお、支持体の間隔や電極厚等は、本発明の作用効果が充分に発揮されるように適宜設定することが好ましい。
【0050】
上記表示素子において、第一の電極は、通常、支持体(基板)上に形成されることになる。
上記支持体としては、透明なものであることが好ましく、例えば、石英ガラス板、白板ガラス板等の透明なガラス基板を用いることができるが、これらに限定されず、例えば、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;酢酸セルロース等のセルロースエステル系樹脂;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン−コヘキサフルオロプロピレン等のフッ素系樹脂、ポリオキシメチレン等のポリエーテル系樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ノルボルネン系開環重合物等のポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリイミド−アミドやポリエーテルイミド等のポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン及びポリエーテルスルホン等の樹脂フィルムが挙げられる。
なお、上記支持体として樹脂フィルムを用いる場合には、容易に曲がらないような剛性基板状にすることも可能であるが、可撓性を持ったフィルム状の構造体とすることも可能であり、また、可撓性と強度とを両立する目的から、透明なガラス基板と、樹脂フィルム又は複数種の樹脂フィルムとを積層した積層支持体も使用することが可能である。
【0051】
上記第一の電極としては、透明電極であることが好適であり、例えば、InとSnOの混合物、いわゆるITO膜や、SnO又はInをコーティングした膜を用いることができ、これらの膜にSnやSbをドーピングしたものでもよく、また、MgOやZnO等を用いてもよい。
なお、上記第一の電極は、上記支持体上に、例えば、蒸着法やスパッタ法等を用いて形成することが好ましい。
【0052】
上記第一の電極は、駆動素子により制御されることになるが、駆動素子としては、TFT(Thin Film Transistor)であることが好適であり、例えば、通常の液晶ディスプレイ等で用いられている半導体製造技術において使用されている材料を適宜選択して使用すればよく、また、特開平10−125924号公報、特開平10−135481号公報、特開平10−190001号公報、特開2000−307172号公報等に記載されている有機化合物からなる有機TFTを用いることもできる。また、TFT以外の駆動素子として、液晶ディスプレイ等の平面型表示素子に用いられているマトリクス駆動回路において透明基板上に形成できるものもまた、使用することができる。
上記駆動素子としては、第一の電極の一角を占めるように形成されるが、第一の電極が駆動素子と積層方向で重なる構造であってもよい。駆動素子には、具体的には、ゲート線とデータ線とが接続され、ゲート線に駆動素子のゲート電極が接続され、データ線に駆動素子のソース・ドレインの一方が接続され、そのソース・ドレインの他方は第一の電極に電気的に接続される。
なお、上記駆動素子は、例えば、通常の半導体製造技術を用いて形成することが好適である。
【0053】
次に、上記支持体上の第一の電極及び駆動素子を形成した面側に、高分子固体電解質層が形成されることになる。
上記高分子固体電解質層は、本発明の表示素子用電解質を含有するものであるが、該表示素子用電解質が上記イオン性物質を含むものであることに起因して、環境面や安全面に充分に配慮しつつ、近年のネットワーク社会に充分に適合できる表示素子及び表示装置を得ることができる。なお、上記表示素子用電解質は、金属イオン及び着色剤を含有する形態であることが特に好適であるが、これによって、コントラストや黒色濃度をより高くすることが可能となる。
【0054】
上記高分子固体電解質層の膜厚としては、本発明の作用効果が充分に発揮されるように適宜設定することが好ましいが、例えば、無機粒子を着色剤として混合する場合には、下限が20μm、上限が200μmであることが好ましい。膜厚が薄い方が電極間の抵抗が小さくなるので発色・消色時間の低減や消費電力の低下につながり好適であるが、20μm未満では、機械的強度が充分とはならず、ピンホールや亀裂が生じるおそれがある。また、あまり薄い場合には、白色粒子の混合量が少なくなるため、隠蔽性や白色性(光学濃度)が充分とはならないおそれもある。より好ましい下限は50μmであり、更に好ましくは70μmである。また、より好ましい上限は150μmである。
上記高分子固体電解質層の形成に際しては、例えば、まず、上述したマトリクス用ポリマーとなる合成樹脂、イオン性物質、支持電解質、金属イオンを生成しうる金属イオン生成剤及び必要に応じてこれらを溶解する溶剤等を混合し、更に着色剤として白色粒子等を分散させることにより表示素子用電解質を調製することが好適であり、次いで、この表示素子用電解質を上記支持体上(第一の電極及び駆動素子が形成された支持体上)に塗布することにより高分子固体電解質層を形成することが好ましい。
【0055】
次に、上記高分子固体電解質層を挟んで、第一の電極と対向する側に第二の電極が形成されることになる。
上記第二の電極としては、電気化学的に安定な金属を用いることができ、中でも、白金、クロム、アルミニウム、コバルト、パラジウム等を用いることが好適であり、例えば、支持体に通常の方法を用いて金属膜として成膜することにより作製することができる。また、カーボンや導電性金属粒子等の導電性粒子を含有する導電性塗料を支持体上に塗布することにより主反応に用いる金属を予め又は随時に充分に補うことができれば、カーボンを第二の電極として使用することも可能である。カーボンを電極上に担持させる方法としては、樹脂を用いてインク化し、基板面に印刷する方法が挙げられる。なお、カーボンを使用することで、電極の低価格化を図ることができる。
上記第二の電極を支持する支持体としては、上述した第一の透明電極を設けるために用いられる支持体を用いることができるが、第二の電極は、透明であっても透明でなくてもよく、第二の電極や高分子固体電解質層を確実に保持できる基板やフィルム等を適宜選択して用いることができる。
なお、上記第二の電極自体に充分な剛性がある場合には、支持体を設けなくてもよい。
【0056】
上記第二の電極を高分子固体電解質層上に形成する方法としては、例えば、下記の方法によることが好適である。
すなわち、図3(c)に示すように、予め、支持体6上に所定の金属膜からなる第二の電極5を形成した第二の電極付き支持体を作製し、この第二の電極付き支持体の第二の電極5側を、高分子固体電解質層4に圧着し、図3(d)に示すように貼合する。この貼合した後に、減圧乾燥させて高分子固体電解質層4を、支持体6と支持体1との間に形成する。なお、この貼合した端部に、図3(e)に示すような封止部材(封着部材)7を取り付けてもよく、このようにして本発明の表示装置が完成することになる。
【0057】
本発明の表示装置の好適な形態の1形態について、図面を参照して以下に説明するが、本発明はこれらの形態のみに限定されるものではない。
図1において、透明画素電極(第一の電極)2及びTFT(駆動素子)3は、1つずつを組み合わせて1画素を構成するように形成され、透明支持体(支持体)1上に各画素がマトリクス状に配列されている。また、透明画素電極(第一の電極)2と対向する側に共通電極(第二の電極)5及び該共通電極を支持する支持体6が形成されている。
透明画素電極2は、略矩形又は正方形パターンに形成された透明導電性膜からなり、各画素間が分離され、その一部に各画素ごとのTFT3が設置されている。
各画素ごとに形成されたTFT3は、図示しない配線によって選択され、対応する透明画素電極2を制御する。TFT3は、画素間のクロストークを防止するのに極めて有効である。TFT3には、具体的には、ゲート線とデータ線が接続され、各ゲート線に各TFTのゲート電極が接続され、データ線には各TFTのソース・ドレインの一方が接続され、そのソース・ドレインの他方は透明画素電極2に電気的に接続される。
【0058】
図2は、第一の電極側2と第二の電極側5とを対向させるために、両支持体1及び6を保持する封着樹脂部(封止部)7を設けた形態である。この封着樹脂部7によって、両支持体1、6と、これらの間に配設された透明画素電極2及びTFT3と、高分子固体電解質層4と、共通電極5とが確実に保持されることになる。
【0059】
図4は、本発明の表示装置の好適な形態における回路図である。透明画素電極2とこれに対応するTFT3とからなる画素がマトリクス状に配されており、容量の対向電極側が共通電極5となる。TFT3のゲート電極はゲート線(走査線配線)12に接続され、TFTのソース、ドレインの一方はデータ線(信号線配線)13に、他方は透明画素電極2にそれぞれ接続されている。ゲート線12はゲート線駆動回路11に接続され、データ線13はデータ線駆動回路9、10に接続されている。ゲート線駆動回路11及びデータ線駆動回路9、10は、信号制御部8に接続されている。
【発明の効果】
【0060】
本発明の表示素子用電解質は、上述のような構成であるので、電極等への腐食性が抑制され、経時的に安定であるとともに、電気安定性に優れるものであることから、環境面や安全面に充分に配慮しつつ、近年のネットワーク社会に充分に適合できる表示素子や表示装置を提供できることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0062】
実施例1
<第一の電極の作製>
ガラス基板(厚さ1.5mm、10cm×10cm)上に、150μmピッチで平面的に配列されたITO膜とTFTとを通常の手法により作製した。
<第二の電極の作製>
ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ500μm、10cm×10cm)上に、スパッタ法によって厚さ3000Åのパラジウム膜を形成した。
【0063】
<高分子固体電解質層の作製>
分子量約30万のポリフッ化ビニリデン1質量部、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリシアノメチド3質量部、LiBF 2質量部、及び、塩化ビスマス2質量部を混合し、120℃に加熱して均一溶液を調製した。これに0.5μmの二酸化チタン0.5質量部を添加し、ホモジナイザーでこれを均一に分散させた。
このようにして得た表示素子用電解質を、上述したようにして得たITO膜とTFTとを有するガラス基板上に、ドクターブレードにより厚さ60μmで塗布した後、上述したようにして得た第二の電極である共通電極を直ちに貼り合わせて圧着し、これを110℃、0.1MPaで1時間乾燥し、高分子固体電解質層を二つの電極間に形成した。
次いで貼り合わせの端面をエポキシ系接着剤によって封止し、表示装置を作製した。
【0064】
<駆動及び表示特性の評価>
上述したようにして作製した表示装置において、通常のアクティブマトリクス駆動回路により、発色時には1画素あたり6μCの電気量で表示極を酸化し、消色時には同一電気量で還元することにより、黒色表示と無色(白色)表示とを切り替え、表示特性を評価した。
その結果、無色(白色)時の反射率は72%であり、発色(黒色)時の表示部の光学濃度(OD)は約0.9(反射率10%)であった。したがって、反射率のコントラストとしては1:7.2が得られた。発色状態に置いた後、回路を開放して放置したところ、1週間後の表示部の光学濃度に特に変化はなく、メモリー性を有していた。
【0065】
実施例2
実施例1の<高分子固体電解質層の作製>において、塩化ビスマスをAgBFに変更した以外同様の作業を行い、表示装置を作製した。
この表示装置において、実施例1と同様に表示特性を評価した結果、無色(白色)時の反射率は72%であり、発色(黒色)時の表示部の光学濃度(OD)は約1.0(反射率10%)であった。したがって、反射率のコントラストとしては1:7.2が得られた。発色状態に置いた後、回路を開放して放置したところ、1週間後の表示部の光学濃度に特に変化はなく、メモリー性を有していた。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一つの実施形態である表示装置を概念的に示した斜視図である。
【図2】本発明の一つの実施形態である表示装置を概念的に示した斜視図である。
【図3】本発明の一つの実施形態である表示装置において、第二の電極を形成する方法を示すために用いた概念図である。
【図4】本発明の一つの実施形態である表示装置における回路図である。
【符号の説明】
【0067】
1 :支持体(透明支持体)
2 :第一の電極(透明画素電極)
3 :駆動素子(TFT)
4 :高分子固体電解質層
5 :第二の電極(共通電極)
6 :支持体
7 :封止部(封止部材、封着樹脂部)
8 :信号制御部
9 :データ線駆動回路
10:データ線駆動回路
11:ゲート線駆動回路
12:ゲート線
13:データ線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1);
【化1】

(式中、Xは、B、C、O、Al、Si、P、S、As及びSeからなる群より選択される少なくとも1種の元素を表す。A及びBは、同一又は異なって、有機連結基を表す。Qは、有機基を表す。aは、1以上の整数であり、b、c、d及びeは、0以上の整数である。)で表されるアニオンを有するイオン性物質を含有することを特徴とする表示素子用電解質。
【請求項2】
前記一般式(1)におけるXは、炭素原子(C)又は硫黄原子(S)であることを特徴とする請求項1に記載の表示素子用電解質。
【請求項3】
前記表示素子用電解質は、金属イオンを含んでなり、
該金属イオンは、ビスマスイオン、銀イオン、リチウムイオン、鉄イオン、クロムイオン、ニッケルイオン及びカドミウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種の金属イオンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の表示素子用電解質。
【請求項4】
前記表示素子用電解質は、着色剤を含んでなり、
該着色剤は、無機顔料若しくは有機顔料、又は、色素であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の表示素子用電解質。
【請求項5】
前記表示素子用電解質は、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレンイミン、ポリエチレンスルフィド、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、これらを主鎖構造として枝分かれを有する樹脂、又は、これらの混合物を含んでなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の表示素子用電解質。
【請求項6】
前記表示素子用電解質は、アルカリ金属塩及びアルキルアンモニウム塩のうち少なくとも1種の塩を含んでなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の表示素子用電解質。
【請求項7】
駆動素子により制御される第一の電極と、該第一の電極に対向する第二の電極とを備えた表示素子であって、
該表示素子は、第一の透明電極と第二の電極との間に高分子固体電解質層を有し、
該高分子固体電解質層は、請求項1〜6のいずれかに記載の表示素子用電解質を含有するものであることを特徴とする表示素子。
【請求項8】
請求項7に記載の表示素子を複数個、面状に配列してなることを特徴とする表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate