説明

表示素子

【課題】簡便な部材構成で、低電圧で駆動可能で、表示コントラストが高い表示素子であり、白表示反射率が十分高く色純度が良好な反射型フルカラー表示素子を提供する。
【解決手段】カラーフィルターと、白黒表示を行う表示部とを有する表示素子において、前記カラーフィルターが、1画素が複数のサブピクセルの組み合わせから形成され、該サブピクセルがBGRあるいはYMCの三原色を呈するサブピクセルと、実質的に透明なサブピクセルとから選ばれるカラーフィルターであり、前記白黒表示を行う表示部が、銀、または銀を化学構造中に含む化合物を含有する電解質と、多孔質白色散乱層とを有し、銀の溶解析出を生じさせるように対向電極の駆動操作を行う表示部であることを特徴とする表示素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルターと白黒表示部との組み合わせによりカラー表示を行う表示素子のうち、特に銀の溶解析出を利用した電気化学的な表示素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの動作速度の向上、ネットワークインフラの普及、データストレージの大容量化と低価格化に伴い、従来紙への印刷物で提供されたドキュメントや画像等の情報を、より簡便な電子情報として入手、電子情報を閲覧する機会が益々増大している。
【0003】
この様な電子情報の閲覧手段として、従来の液晶ディスプレイやCRT等の発光型ディスプレイが主として用いられているが、特に、電子情報がドキュメント情報の場合、比較的長時間にわたって閲覧手段を注視する必要があるが、発光型の閲覧手段を注視することは必ずしも人間に優しい手段とは言い難く、フリッカーで目が疲労する、読む姿勢が制限され、静止画面に視線を合わせる必要が生じる、などの欠点がある。
【0004】
これらの欠点を補う表示手段として、外光を利用し、像保持の為に電力を消費しない(メモリー性)反射型表示素子がいくつか提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)が、下記の理由で十分な性能を有していない。
【0005】
すなわち、反射型液晶等の偏光板を用いる方法は、反射率が約40%と低く、白表示に難があり、また構成部材の作製に用いる製法の多くは簡便とは言いがたい。また、ポリマー分散型液晶は高い駆動電圧を必要とし、有機物同士の屈折率差を利用しているため、得られる画像のコントラストが十分でない。電気泳動法による表示素子もまた、10V以上の高い駆動電圧を必要とし、長期間の画像表示で粒子凝集による焼き付きと言われる問題も指摘されている。エレクトロクロミック法による表示素子は、3V以下での駆動が可能であるが、色品質が十分でなく、メモリー性も低い。
【0006】
さらに、上記の方法でフルカラー表示を行おうとする場合、液晶ディスプレイやCRT等で用いられているようなカラーフィルターを利用することが必要となるが、カラーフィルターにより一画素内の表示エリアが数分の一になることから、コントラストや色純度の低下りなどの問題が生じ、閲覧に十分な性能を維持できない。
【0007】
カラーフィルターによる色純度の低下を防ぎ、明度を上げる目的で、一般的なカラーフィルターが有するRGBの三原色以外に、白フィルター部を設ける提案もなされている(例えば、特許文献4〜6参照。)。このようなカラーフィルターは従来のカラーフィルターの複数画素を一単位とするため、色純度や明度は向上するが、実質的に総画素数が減るため、精細度が低下してしまう。映像表示などのディスプレイではあまり問題にならないが、ドキュメント情報を表示するための表示素子には不十分である。一方、精細度を確保するために、従来3色のサブピクセルで構成されていた画素を4つのサブピクセルに分配しなおすと、一つのサブピクセルがより小さくなるため、画像にじみの少ない表示素子が求められる。
【特許文献1】米国特許第4,240,716号明細書
【特許文献2】特許第3428603号公報
【特許文献3】特開2003−241227号公報
【特許文献4】特開平4−54207号公報
【特許文献5】国際公開第05/101366号パンフレット
【特許文献6】国際公開第05/101807号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、簡便な部材構成で、低電圧で駆動可能で、表示コントラストが高い表示素子であり、白表示反射率が十分高く色純度が良好な反射型フルカラー表示素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、上記のような4色で構成されるカラーフィルターを用いた表示素子に、電解析出型の表示素子を用いることで、従来のカラーフィルターを利用した反射型表示素子よりコントラストが高く、白地明度が良好で、色純度の高いフルカラー表示素子を得ることに成功した。更に多孔質白色散乱層を設けることで、より良好な白地、コントラスト、色純度を確保できた。
【0010】
特に、電解質層にメルカプト基含有化合物、もしくはチオエーテル類を用いることで、よりにじみの少ない画像が得られるため、4色フィルターのような狭いサブピクセルにより構成されるフィルターを用いても、コントラストが高く、しかも色純度も良好なカラー表示を得ることができた。
【0011】
上記課題は、以下の構成により解決することができた。
【0012】
1.カラーフィルターと、白黒表示を行う表示部とを有する表示素子において、前記カラーフィルターが、1画素が複数のサブピクセルの組み合わせから形成され、該サブピクセルがBGRあるいはYMCの三原色を呈するサブピクセルと、実質的に透明なサブピクセルとから選ばれるカラーフィルターであり、前記白黒表示を行う表示部が、銀、または銀を化学構造中に含む化合物を含有する電解質と、多孔質白色散乱層とを有し、銀の溶解析出を生じさせるように対向電極の駆動操作を行う表示部であることを特徴とする表示素子。
【0013】
2.前記電解質に、下記一般式(1)または(2)で表される化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする前記1に記載の表示素子。
【0014】
【化1】

【0015】
〔式中、R1〜R3は各々水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルカルボンアミド基、アリールカルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、スルホニル基、アミノ基、ヒドロキシ基または複素環基を表す。〕
【0016】
【化2】

【0017】
〔式中、Mは水素原子、金属原子または4級アンモニウムを表す。Zはイミダゾール環類を除く含窒素複素環を表す。nは0〜5の整数を表し、R4は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルカルボンアミド基、アリールカルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、スルホニル基、アミノ基、ヒドロキシ基または複素環基を表し、nが2以上の場合、それぞれのR4は同じであってもよく、異なってもよく、お互いに連結して縮合環を形成してもよい。〕
3.前記電解質に含有される、前記一般式(1)あるいは(2)で表される化合物のメルカプト基の総モル数を[−SH](モル/kg)とし、該銀を化学構造中に含む化合物の銀の総モル数を[Ag](モル/kg)とした時に、下式(1)の条件を満たすことを特徴とする前記2に記載の表示素子。
【0018】
式(1) 2≦[−SH]/[Ag]≦10
4.該電解質に、下記一般式(3)で表される化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする前記1〜3の何れか1項に記載の表示素子。
【0019】
一般式(3)
5−S−R6
〔式中、R5、R6は各々アルキル基、アリール基または複素環基を表し、それぞれ同じであってもよく、異なってもよく、お互いに連結して環を形成してもよい。〕
5.前記電解質に含有される、一般式(3)で表される化合物または該一般式(3)で表される化合物より生成する化合物のチオエーテル基のモル濃度を[−S−](モル/kg)、該銀を化学構造中に含む化合物の銀の総モル数を[Ag](モル/kg)とした時に、下式(2)の条件を満たすことを特徴とする前記4に記載の表示素子。
【0020】
式(2) 2≦[−S−]/[Ag]≦10
6.前記電解質が、下記一般式(4)または(5)で表される化合物の少なくとも一種を含有することを特徴とする前記1〜5の何れか1項に記載の表示素子。
【0021】
【化3】

【0022】
〔式中、Lは酸素原子またはCH2を表し、R7〜R10は各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基またはアルコキシ基を表す。〕
【0023】
【化4】

【0024】
〔式中、R11、R12は各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基またはアルコキシ基を表す。〕
7.前記多孔質白色散乱層が、酸化チタン粒子により構成されることを特徴とする前記1〜6の何れか1項記載の表示素子。
【0025】
8.前記酸化チタン粒子の表面が、シリカ及びアルミナで処理されていることを特徴とする前記7に記載の表示素子。
【0026】
9.前記酸化チタン粒子の粒径分布が、少なくとも0.1μm以上、0.4μm以下の部分に極大値を有することを特徴とする前記7または8項に記載の表示素子。
【0027】
10.前記カラーフィルターの1画素が、BGRあるいはYMCのサブピクセル各1と実質的に透明なサブピクセル1との4つのサブピクセルの組み合わせで構成されていることを特徴とする前記1〜9の何れか1項に記載の表示素子。
【0028】
11.前記カラーフィルターの各サブピクセルが実質的に同じ面積であることを特徴とする前記1〜10の何れか1項に記載の表示素子。
【0029】
12.前記表示部が、前記カラーフィルターのサブピクセル単位で駆動されることを特徴とする前記1〜11のいずれか1項に記載の表示素子。
【発明の効果】
【0030】
本発明により、簡便な部材構成で、低電圧で駆動可能で、表示コントラストが高く、白表示反射率が十分高く色純度が良好な反射型フルカラー表示素子を得ることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の表示素子の詳細について説明する。
【0032】
〔セルの基本構成〕
図1は、本発明の表示素子の基本的な構成を示す概略断面図である。
【0033】
図1において、本発明の表示素子は、カラーフィルター1および白黒表示部2を有し、白黒表示部2は、電極(透明電極)3と電極4の間に電解質層5を保持する。電解質層5には、多孔質白色散乱層6が設けられ、電極3と電極4との間に電源Vから電圧または電流を印加することにより、電解質5中に含まれる銀の溶解反応または析出反応を生じさせ、銀を含む化合物の光の透過/吸収という光学的特性の違いを利用して表示状態を変更する表示素子である。
【0034】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0035】
(カラーフィルター)
本発明における表示素子は、白黒表示部とカラーフィルターとを組み合わせてフルカラー表示を行う表示素子である。
【0036】
一般的なカラーフィルターの製造工程は、ガラス等の透明基板上に真空成膜法等を用いてクロムを成膜した後、フォトレジストを塗布し、フォトマスクを配置して露光、現像、クロムエッチング、フォトレジスト剥離を行い、パターン状のブラック遮光層を形成する。また、特定のブラック遮光層を設けず、着色層を重ね合わせて遮光層を形成するタイプのカラーフィルターも開発・生産されている。次にブラック遮光層の上から、1色目の着色有機高分子ペースト材料を塗布した後、フォトマスクを配置して露光し、その後現像、キュアを行い1色目のカラーパターンを形成し、同様にして2色目以降のカラーパターンを形成する。最後に液晶駆動用の電極として用いられる透明導電膜をカラーパターン上に形成する工程を経てカラーフィルターが完成する。このとき、カラーパターンと透明導電膜の間に、画素の保護やカラーパターンの平坦化を目的として、有機高分子材料からなるオーバーコート層を形成する場合もある。
【0037】
カラーフィルターに使用する基板は特に限定されないが、光線透過率が高く、機械的強度、寸法安定性が優れたガラスが最適であり、ソーダガラス、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラスなどが好適である。他にポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂などのプラスチック板や、ロール状に巻き上げられたフィルムなどを使用することができる。
【0038】
カラーフィルター基板のブラックマトリックス層としては特に限定されないが、クロムやクロムと酸化クロムや窒化クロム、ニッケル合金、チタン合金の多層膜などからなる無機系や、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂などに黒色顔料を分散した有機系の材料が用いられる。無機系、有機系とも本発明において好適に用いられるが、成膜に複雑な真空系を要する無機系に比べ製造コストの面で有利であり、地球環境への影響も少ない有機系を用いるのが望ましい。ブラックマトリックス層の厚みは無機系で0.1〜0.3μm、有機系で0.5〜2μmのものが多く用いられる。ブラックマトリックス層は通常フォトリソグラフィ法やインクジェット法、印刷法により所定のパターンを形成する。
【0039】
着色層としては特に限定はされないが、色素を樹脂中に分散したものを用いることができる。顔料は3原色を表すために適当なものを組み合わせて使用することができる。使用できる色素としては赤、橙、黄、緑、青、紫などの顔料や染料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また樹脂としては、前記した有機高分子材料が好適に用いられる。3原色としては、RGBあるいはYMCの組み合わせを利用できる。また、本発明のカラーフィルターに含まれる透明部分は、着色剤を入れないことで形成できる。
【0040】
有機高分子層を形成する方法としては特に限定はされないが、例えば着色層を形成する場合、着色ペーストを基板上に塗布・乾燥した後にパターニングを行う方法などがある。着色ペーストを得る方法としては、溶媒中に樹脂と着色剤を混合させた後、三本ロール、サンドグラインダー、ボールミルなどの分散機中で分散させる方法などが用いられる。着色ペーストを塗布する方法としては、特に限定されずディップ法、ロールコータ法、スピナー法、ダイコーティング法、ワイヤーバー法などの方法が好適に用いられ、この後、オーブンやホットプレートを用いて加熱乾燥(セミキュア)を行う。セミキュアの条件は使用する樹脂、溶媒、ペースト塗布量により最適な値が選ばれるが、通常60〜200℃で1〜60分加熱することが好ましい。
【0041】
このようにして得られた着色ペースト被膜は、樹脂が非感光性の場合はその上にフォトレジストの被膜を形成した後に、また樹脂が感光性の場合はそのままかあるいはポリビニルアルコールなどの酸素遮断膜を形成した後に、露光・現像を行う。その後必要に応じて、フォトレジストまたは酸素遮断膜を除去し、再度加熱乾燥(本キュア)を実施する。本キュア条件は、樹脂により異なるが、前駆体からポリイミド系樹脂を得る場合には、通常200〜300℃で1〜60分加熱するのが一般的である。以上のプロセスにより基板上にパターニングされた着色層が形成される。
【0042】
カラーフィルターには平坦性を向上するために着色層上にオーバーコート層を形成することが好ましい。オーバーコート層としては特に限定されないが、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、オルガノシランを縮重合して得られるシリコーン樹脂、オルガノシランとイミド基を有する化合物とを縮重合して得られるイミド変形シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ゼラチンなどが用いられる。中でも、工程での加熱や、有機溶剤への耐性を有する樹脂を用いることが好ましく、この点から感光性もしくは非感光性のポリイミド系樹脂やアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂が好ましく用いられる。オーバーコート層を形成する方法としては特に限定されず、遮光層、着色層と同様、ディップ法、ロールコーター法、スピナー法、ダイコーティング法、ワイヤーバーによる方法などが好適に用いられる。オーバーコート層の膜厚としては特に限定されないが、0.05〜3.0μmが好ましい。画素内段差を小さくする点からは厚いほうが好ましいが、均一塗布が難しくなる。もちろん遮光層と着色層の膜厚の組み合わせにより、オーバーコート層の厚みは好適に決定できる。
【0043】
本発明の表示素子に用いるカラーフィルターは、1画素の中に実質的に透明な部分を有する。本発明で言う実質的に透明とは、視感的に無着色であり、可視光領域における光透過率が好ましくは60%以上であり、更に好ましくは75%以上である。
【0044】
図2にカラーフィルターの例を示すが、これに限定されるものではない。また、各色の配列も自由に選択できる。
【0045】
(電解質)
本発明に係る電解質には、銀、または銀を化学構造中に含む化合物を含有する。本発明に係る銀または銀を化学構造中に含む化合物とは、例えば、酸化銀、硫化銀、金属銀、銀コロイド粒子、ハロゲン化銀、銀錯体化合物、銀イオン等の化合物の総称であり、固体状態や液体への可溶化状態や気体状態等の相の状態種、中性、アニオン性、カチオン性等の荷電状態種は、特に問わない。
【0046】
本発明の表示素子においては、ヨウ化銀、塩化銀、臭化銀、酸化銀、硫化銀、クエン酸銀、酢酸銀、ベヘン酸銀、p−トルエンスルホン酸銀、メルカプト類との銀塩、イミノジ酢酸類との銀錯体、等の公知の銀塩化合物を用いることができる。これらの中でハロゲンやカルボン酸や銀との配位性を有する窒素原子を有しない化合物を銀塩として用いるのが好ましく、例えば、p−トルエンスルホン酸銀が好ましい。
【0047】
本発明に係る電解質層に含まれる銀イオン濃度は、0.2モル/kg≦[Ag]≦2.0モル/kgが好ましい。銀イオン濃度が0.2モル/kgより少ないと希薄な銀溶液となり駆動速度が遅延し、2モル/kgよりも大きいと溶解性が劣化し、低温保存時に析出が起きやすくなる傾向にあり不利である。
【0048】
(一般式(1)または(2)で表される化合物)
本発明の表示素子は、電解質中に前記一般式(1)または(2)で表される化合物の少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0049】
前記一般式(1)において、R1〜R3は各々水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルカルボンアミド基、アリールカルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、スルホニル基、アミノ基、ヒドロキシ基または複素環基を表す。
【0050】
前記一般式(1)において、R1〜R3で表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、ドデシル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、トリフルオロメチル、ベンジル等の各基が挙げられ、アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、アルキルカルボンアミド基としては、例えば、アセチルアミノ、プロピオニルアミノ、ブチロイルアミノ等の各基が挙げられ、アリールカルボンアミド基としては、例えば、ベンゾイルアミノ基等が挙げられ、アルキルスルホンアミド基としては、例えば、メタンスルホニルアミノ基、エタンスルホニルアミノ基等が挙げられ、アリールスルホンアミド基としては、例えば、ベンゼンスルホニルアミノ基、トルエンスルホニルアミノ基等が挙げられ、アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基等が挙げられ、アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、ブチルチオ基等が挙げられ、アリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ基、トリルチオ基等が挙げられ、アルキルカルバモイル基としては、例えば、メチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、ジブチルカルバモイル、ピペリジルカルバモイル、モルホリルカルバモイル等の各基が挙げられ、アリールカルバモイル基としては、例えば、フェニルカルバモイル、メチルフェニルカルバモイル、エチルフェニルカルバモイル、ベンジルフェニルカルバモイル等の各基が挙げられ、アルキルスルファモイル基としては、例えば、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、エチルスルファモイル、ジエチルスルファモイル、ジブチルスルファモイル、ピペリジルスルファモイル、モルホリルスルファモイル等の各基が挙げられ、アリールスルファモイル基としては、例えば、フェニルスルファモイル、メチルフェニルスルファモイル、エチルフェニルスルファモイル、ベンジルフェニルスルファモイル等の各基が挙げられ、アルキルスルホニル基としては、例えば、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基等が挙げられ、アリールスルホニル基としては、例えば、フェニルスルホニル、4−クロロフェニルスルホニル、p−トルエンスルホニル等の各基が挙げられ、アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブトキシカルボニル等の各基が挙げられ、アリールオキシカルボニル基としては、例えば、フェノキシカルボニル基等が挙げられ、アルキルカルボニル基としては、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチロイル等の各基が挙げられ、アリールカルボニル基としては、例えば、ベンゾイル基、アルキルベンゾイル基等が挙げられ、アシルオキシ基としては、例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチロイルオキシ等の各基が挙げられ、複素環基としては、例えば、オキサゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、セレナゾール環、テトラゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、チアジン環、トリアジン環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズイミダゾール環、インドレニン環、ベンズセレナゾール環、ナフトチアゾール環、トリアザインドリジン環、ジアザインドリジン環、テトラアザインドリジン環基等が挙げられる。これらの置換基はさらに置換基を有するものを含む。
【0051】
一般式(1)で表される化合物の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0052】
【化5】

【0053】
【化6】

【0054】
次に、一般式(2)で表される化合物について説明する。
【0055】
前記一般式(2)において、Mは水素原子、金属原子または4級アンモニウムを表す。Zはイミダゾール環類を除く含窒素複素環を表す。nは0〜5の整数を表し、R4は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルカルボンアミド基、アリールカルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、スルホニル基、アミノ基、ヒドロキシ基または複素環基を表し、nが2以上の場合、それぞれのR4は同じであってもよく、異なってもよく、お互いに連結して縮合環を形成してもよい。
【0056】
一般式(2)のMで表される金属原子としては、例えば、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Ag等が挙げられ、4級アンモニウムとしては、例えば、NH4、N(CH34、N(C494、N(CH331225、N(CH331633、N(CH33CH265等が挙げられる。
【0057】
一般式(2)のZで表される含窒素複素環としては、例えば、テトラゾール環、トリアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、インドール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾセレナゾール環、ナフトオキサゾール環等が挙げられる。
【0058】
一般式(2)のR4で表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、ドデシル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、トリフルオロメチル、ベンジル等の各基が挙げられ、アリール基としては、例えば、フェニル、ナフチル等の各基が挙げられ、アルキルカルボンアミド基としては、例えば、アセチルアミノ、プロピオニルアミノ、ブチロイルアミノ等の各基が挙げられ、アリールカルボンアミド基としては、例えば、ベンゾイルアミノ等が挙げられ、アルキルスルホンアミド基としては、例えば、メタンスルホニルアミノ基、エタンスルホニルアミノ基等が挙げられ、アリールスルホンアミド基としては、例えば、ベンゼンスルホニルアミノ基、トルエンスルホニルアミノ基等が挙げられ、アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ等が挙げられ、アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ、エチルチオ、ブチルチオ等の各基が挙げられ、アリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ基、トリルチオ基等が挙げられ、アルキルカルバモイル基としては、例えば、メチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、ジブチルカルバモイル、ピペリジルカルバモイル、モルホリルカルバモイル等の各基が挙げられ、アリールカルバモイル基としては、例えば、フェニルカルバモイル、メチルフェニルカルバモイル、エチルフェニルカルバモイル、ベンジルフェニルカルバモイル等の各基が挙げられ、アルキルスルファモイル基としては、例えば、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、エチルスルファモイル、ジエチルスルファモイル、ジブチルスルファモイル、ピペリジルスルファモイル、モルホリルスルファモイル等の各基が挙げられ、アリールスルファモイル基としては、例えば、フェニルスルファモイル、メチルフェニルスルファモイル、エチルフェニルスルファモイル、ベンジルフェニルスルファモイル等の各基が挙げられ、アルキルスルホニル基としては、例えば、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基等が挙げられ、アリールスルホニル基としては、例えば、フェニルスルホニル、4−クロロフェニルスルホニル、p−トルエンスルホニル等の各基が挙げられ、アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブトキシカルボニル等の各基が挙げられ、アリールオキシカルボニル基としては、例えばフェノキシカルボニル等が挙げられ、アルキルカルボニル基としては、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチロイル等の各基が挙げられ、アリールカルボニル基としては、例えば、ベンゾイル基、アルキルベンゾイル基等が挙げられ、アシルオキシ基としては、例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチロイルオキシ等の各基が挙げられ、複素環基としては、例えば、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、セレナゾール環、テトラゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、チアジン環、トリアジン環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、インドレニン環、ベンズセレナゾール環、ナフトチアゾール環、トリアザインドリジン環、ジアザインドリジン環、テトラアザインドリジン環基等が挙げられる。これらの置換基はさらに置換基を有するものを含む。
【0059】
次に、一般式(2)で表される化合物の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されているわけではない。
【0060】
【化7】

【0061】
【化8】

【0062】
上記化合物の中でも好ましい化合物は、1−2、1−4、1−11、2−11、2−12である。
【0063】
一般に、銀の溶解析出を生じさせるためには、電解質層中で銀を可溶化することが必要である。例えば、銀と配位結合を生じさたり、銀と弱い共有結合を生じさせるような、銀と相互作用を示す化学構造種を含む化合物等と共存させて、銀または銀を含む化合物を可溶化物に変換する手段を用いるのが一般的である。前記化学構造種として、ハロゲン原子、メルカプト基、カルボキシル基、イミノ基等が知られているが、この中でメルカプト基が好ましい理由は、共存化合物への影響が少なく、溶媒への溶解度が高いことが理由の一つであり、特に好ましい化合物は、1−2、1−4、1−11である。
【0064】
本発明の表示素子においては、メルカプト化合物のメルカプト基の総モル数を[−SH]とし、銀を含む化合物の銀の総モル数を[Ag]とした時、2≦[−SH]/[Ag]≦10を満たすことが好ましい。[−SH]/[Ag]が2未満である場合には、銀のブロックが十分ではなく、高温高湿時、又は、共存物に塩基性の化合物が存在した場合に、銀の黒化が進み、白色時の反射率の低下と、白色度の汚染を招く。また、[−SH]/[Ag]が10を超える場合には、メルカプト化合物による黒化銀の溶解速度が速くなり、メモリー性の劣化に繋がる。本発明において、更に好ましい範囲は、2.5≦[−SH]/[Ag]≦5である。
【0065】
また、メルカプト化合物は、分子量が、50≦分子量≦149の条件を満たす化合物が好ましい。メルカプト化合物の分子量が50未満である場合には、臭気があり作業性に劣り、また、分子量が150を超えると、質量濃度が大きくなり、電気伝導性に必要な化合物の溶解度を結果的に下げることになるので、駆動速度が遅くなり不利である。
【0066】
また、メルカプト化合物は複数化合物種を併用して用いることが好ましい。化合物種を複数種含有させることにより、銀の溶解モル濃度の向上と、電解質液低温時の析出防止効果が得られる。
【0067】
また、本発明の表示素子は、電解質中に一般式(3)で表される化合物の少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0068】
前記一般式(3)において、R5、R6は各々アルキル基、アリール基または複素環基を表し、それぞれ同じであってもよく、異なってもよく、お互いに連結して環を形成してもよい。
【0069】
前記一般式(3)のR5、R6で表されるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、ドデシル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、トリフルオロメチル、ベンジル等の各基が挙げられ、アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、複素環基としては、例えば、オキサゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、セレナゾール環、テトラゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、チアジン環、トリアジン環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズイミダゾール環、インドレニン環、ベンズセレナゾール環、ナフトチアゾール環、トリアザインドリジン環、ジアザインドリジン環、テトラアザインドリジン環基等が挙げられる。これらの置換基はさらに置換基を有するものを含む。
【0070】
次に、一般式(3)で表される化合物の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0071】
3−1:CH3SCH2CH2OH
3−2:HOCH2CH2SCH2CH2OH
3−3:HOCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2OH
3−4:HOCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2OH
3−5:HOCH2CH2SCH2CH2OCH2CH2OCH2CH2SCH2CH2OH
3−6:HOCH2CH2OCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2OCH2CH2OH
3−7:H3CSCH2CH2COOH
3−8:HOOCCH2SCH2COOH
3−9:HOOCCH2CH2SCH2CH2COOH
3−10:HOOCCH2SCH2CH2SCH2COOH
3−11:HOOCCH2SCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2SCH2COOH
3−12:HOOCCH2CH2SCH2CH2SCH2CH(OH)CH2SCH2CH2SCH2CH2COOH
3−13:HOOCCH2CH2SCH2CH2SCH2CH(OH)CH(OH)CH2SCH2CH2SCH2CH2COOH
3−14:H3CSCH2CH2CH2NH2
3−15:H2NCH2CH2SCH2CH2NH2
3−16:H2NCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2NH2
3−17:H3CSCH2CH2CH(NH2)COOH
3−18:H2NCH2CH2OCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2OCH2CH2NH2
3−19:H2NCH2CH2SCH2CH2OCH2CH2OCH2CH2SCH2CH2NH2
3−20:H2NCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2NH2
3−21:HOOC(NH2)CHCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2CH(NH2)COOH
3−22:HOOC(NH2)CHCH2SCH2CH2OCH2CH2OCH2CH2SCH2CH(NH2)COOH
3−23:HOOC(NH2)CHCH2OCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2OCH2CH(NH2)COOH
3−24:H2N(O=)CCH2SCH2CH2OCH2CH2OCH2CH2SCH2C(
=O)NH2
3−25:H2N(O=)CCH2SCH2CH2SCH2C(O=)NH2
3−26:H2NHN(O=)CCH2SCH2CH2SCH2C(=O)NHNH2
3−27:H3C(O=)NHCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2NHC(O=)C
3
3−28:H2NO2SCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2SO2NH2
3−29:NaO3SCH2CH2CH2SCH2CH2SCH2CH2CH2SO3Na
3−30:H3CSO2NHCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2NHO2SCH3
3−31:H2N(NH=)CSCH2CH2SC(=NH)NH2・2HBr
3−32:H2N(NH=)CSCH2CH2OCH2CH2OCH2CH2SC(=NH)NH2・2HCl
3−33:H2N(NH=)CNHCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2NHC(=NH)NH2・2HBr
3−34:〔(CH33NCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2N(CH332+・2Cl-
【0072】
【化9】

【0073】
【化10】

【0074】
特に好ましいのは、3−2、3−3である。
【0075】
また、本発明の表示素子においては、電解質層に含まれる銀または銀を化学構造中に含む化合物の銀の総モル濃度を[Ag](モル/kg)とし、電解質層に含まれる上記一般式(3)で表される化合物のチオエーテル基のモル濃度を[−S−](モル/kg)としたとき、2≦[−S−]/[Ag]≦10の条件を満たすことが好ましい。[−S−]/[Ag]が2よりも小さい場合は、銀の溶解性が十分でなく低温時に析出物を生じる欠点がある。また、[−S−]/[Ag]が10よりも大きい場合は、銀の溶解性は十分であるがメモリー性の低下を招く欠点がある。本発明においてさらに好ましい範囲は、2.5≦[−S−]/[Ag]≦5である。
【0076】
本発明の表示素子においては、電解質層中に一般式(4)または(5)で表される化合物を少なくとも一種含有することが好ましい。
【0077】
本発明に係る一般式(4)で表される化合物は、前記一般式(4)において、Lは酸素原子またはCH2を表し、R7〜R10は各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基またはアルコキシ基を表す。
【0078】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等、アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等、シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等、アルコキシアルキル基として、例えば、β−メトキシエチル基、γ−メトキシプロピル基等、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等を挙げることができる。
【0079】
以下、本発明に係る一般式(4)で表される化合物の具体例を示すが、本発明ではこれら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
【0080】
【化11】

【0081】
次いで、本発明に係る一般式(5)で表される化合物について説明する。
【0082】
前記一般式(5)において、R11、R12は各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基またはアルコキシ基を表す。
【0083】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等、アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等、シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等、アルコキシアルキル基として、例えば、β−メトキシエチル基、γ−メトキシプロピル基等、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等を挙げることができる。
【0084】
以下、本発明に係る一般式(5)で表される化合物の具体例を示すが、本発明ではこれら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
【0085】
【化12】

【0086】
本発明に係る一般式(4)または(5)で表される化合物は電解質溶媒の一種であるが、本発明の表示素子においては、目的効果を損なわない範囲で更に別の溶媒を併用することができる。具体的には、テトラメチル尿素、スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−(N−メチル)−2−ピロリジノン、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,Nジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ブチロニトリル、プロピオニトリル、アセトニトリル、アセチルアセトン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ブタノール、1−ブタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、エタノール、メタノール、無水酢酸、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、ジメトキシエタン、ジエトキシフラン、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、水等が挙げられる。これらの溶媒の内、凝固点が−20℃以下、かつ沸点が120℃以上の溶媒を少なくとも1種含むことが好ましい。
【0087】
さらに本発明で用いることのできる溶媒としては、J.A.Riddick,W.B.Bunger,T.K.Sakano,“Organic Solvents”,4th ed.,John Wiley & Sons(1986)、Y.Marcus,“Ion Solvation”,John Wiley & Sons(1985)、C.Reichardt,“Solvents and Solvent Effects in Chemistry”,2nd ed.,VCH(1988)、G.J.Janz,R.P.T.Tomkins,“Nonaqueous Electorlytes Handbook”,Vol.1,Academic Press(1972)に記載の化合物を挙げることができる。
【0088】
本発明において、電解質溶媒は単一種であっても、溶媒の混合物であってもよいが、エチレンカーボネートを含む混合溶媒が好ましい。エチレンカーボネートの添加量は、全電解質溶媒質量の10質量%以上、90質量%以下が好ましい。特に好ましい電解質溶媒は、プロピレンカーボネート/エチレンカーボネートの質量比が7/3〜3/7の混合溶媒である。プロピレンカーボネート比が7/3より大きいとイオン伝導性が劣り応答速度が低下し、3/7より小さいと低温時に電解質が析出しやすくなる。
【0089】
本発明の表示素子において、電解質が液体である場合には、以下の化合物を電解質中に含むことができる。カリウム化合物としてKCl、KI、KBr等、リチウム化合物としてLiBF4、LiClO4、LiPF6、LiCF3SO3等、テトラアルキルアンモニウム化合物として過塩素酸テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、ホウフッ化テトラエチルアンモニウム、ホウフッ化テトラブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムハライド等が挙げられる。また、特開2003−187881号公報の段落番号〔0062〕〜〔0081〕に記載の溶融塩電解質組成物も好ましく用いることができる。さらに、I-/I3-、Br-/Br3-、キノン/ハイドロキノン等の酸化還元対になる化合物を用いることができる。
【0090】
また、支持電解質が固体である場合には、電子伝導性やイオン伝導性を示す以下の化合物を電解質中に含むことができる。
【0091】
パーフルオロスルフォン酸を含むフッ化ビニル系高分子、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、トリフェニルアミン類、ポリビニルカルバゾール類、ポリメチルフェニルシラン類、Cu2S、Ag2S、Cu2Se、AgCrSe2等のカルコゲニド、CaF2、PbF2、SrF2、LaF3、TlSn25、CeF3等の含F化合物、Li2SO4、Li4SiO4、Li3PO4等のLi塩、ZrO2、CaO、Cd23、HfO2、Y23、Nb25、WO3、Bi23、AgBr、AgI、CuCl、CuBr、CuBr、CuI、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl4、LiAlF4、AgSBr、C55NHAg56、Rb4Cu167Cl13、Rb3Cu7Cl10、LiN、Li5NI2、Li6NBr3等の化合物が挙げられる。
【0092】
また、支持電解質としてゲル状電解質を用いることもできる。電解質が非水系の場合、特開平11−185836号公報の段落番号〔0057〕〜〔0059〕に記載のオイルゲル化剤を用いことができる。
【0093】
(電解質添加の増粘剤)
本発明の表示素子においては、電解質層に増粘剤を用いることができ、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アルキレングリコール)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類、疎水性透明バインダーとして、ポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸、ポリウレタン等が挙げられる。
【0094】
これらの増粘剤は2種以上を併用して用いてもよい。また、特開昭64−13546号公報の71〜75頁に記載の化合物を挙げることができる。これらの中で好ましく用いられる化合物は、各種添加剤との相溶性と白色粒子の分散安定性向上の観点から、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ヒドロキシプロピルセルロース類、ポリアルキレングリコール類である。
【0095】
(電解質層のその他の添加剤)
本発明の表示素子の構成層には、保護層、フィルター層、ハレーション防止層、クロスオーバー光カット層、バッキング層等の補助層を挙げることができ、これらの補助層中には、各種の化学増感剤、貴金属増感剤、感光色素、強色増感剤、カプラー、高沸点溶剤、カブリ防止剤、安定剤、現像抑制剤、漂白促進剤、定着促進剤、混色防止剤、ホルマリンスカベンジャー、色調剤、硬膜剤、界面活性剤、増粘剤、可塑剤、スベリ剤、紫外線吸収剤、イラジエーション防止染料、フィルター光吸収染料、防ばい剤、ポリマーラテックス、重金属、帯電防止剤、マット剤等を、必要に応じて含有させることができる。
【0096】
上述したこれらの添加剤は、より詳しくは、リサーチディスクロージャー(以下、RDと略す)第176巻Item/17643(1978年12月)、同184巻Item/18431(1979年8月)、同187巻Item/18716(1979年11月)及び同308巻Item/308119(1989年12月)に記載されている。
【0097】
これら三つのリサーチ・ディスクロージャーに示されている化合物種類と記載箇所を以下に掲載した。
【0098】
添加剤 RD17643 RD18716 RD308119
頁 分類 頁 分類 頁 分類
化学増感剤 23 III 648右上 96 III
増感色素 23 IV 648〜649 996〜8 IV
減感色素 23 IV 998 IV
染料 25〜26 VIII 649〜650 1003 VIII
現像促進剤 29 XXI 648右上
カブリ抑制剤・安定剤
24 IV 649右上 1006〜7 VI
増白剤 24 V 998 V
硬膜剤 26 X 651左 1004〜5 X
界面活性剤 26〜7 XI 650右 1005〜6 XI
帯電防止剤 27 XII 650右 1006〜7 XIII
可塑剤 27 XII 650右 1006 XII
スベリ剤 27 XII
マット剤 28 XVI 650右 1008〜9 XVI
バインダー 26 XXII 1003〜4 IX
支持体 28 XVII 1009 XVII
〔多孔質白色散乱層〕
本発明における多孔質白色散乱層とは、実質的に白色を呈する層であり、層構造中に、電解質液が浸透することのできる孔を多数保有する層である。
【0099】
本発明における多孔質白色散乱層は、表面が少なくともシリカ及びアルミナにより表面処理された酸化チタン粒子により形成されていることが好ましい。
【0100】
また、より好ましくは、まず高密度シリカ層でコーティングされ、その上にアルミナ層が形成されている酸化チタン粒子により形成されている。
【0101】
さらに、酸化チタン粒子の酸化チタン含有比率(質量比)が85%以上92%以下であることが好ましい。
【0102】
酸化チタン粒子の各種表面処理については、例えば、「酸化チタン 物性と応用技術」(清野学著、技報堂出版発行、1991年)第2章などにその例が示されているが、本発明の酸化チタンの表面処理も、一般的な方法に準じて行うことができる。
【0103】
酸化チタン粒子中の酸化チタン含有比率は、JIS K5116−1995の6.4項に示されている方法を用いて測定する。
【0104】
本発明の多孔質白色散乱層は、厚みが5μm〜50μmであることが好ましく、更に10〜40μmであることがより好ましい。
【0105】
このような多孔質白色散乱層は、少なくとも酸化チタン粒子を分散溶媒中に分散した分散液を所定の基板上に塗布、乾燥させることで得ることが効果的である。
所定の基板へ分散液を付与する方法としては、例えば、塗布方式、液噴霧方式、気相を介する噴霧方式として、圧電素子の振動を利用して液滴を飛翔させる方式、例えば、ピエゾ方式のインクジェットヘッドや、突沸を利用したサーマルヘッドを用いて液滴を飛翔させるバブルジェット(登録商標)方式のインクジェットヘッド、また空気圧や液圧により液を噴霧するスプレー方式等が挙げられる。
【0106】
塗布方式としては、公知の塗布方式より適宜選択することができ、例えば、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースローラーコーター、トランスファーローラーコーター、カーテンコーター、ダブルローラーコーター、スライドホッパーコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、ビードコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カレンダーコーター、押し出しコーター等が挙げられる。
【0107】
本発明に係る基板上に付与した酸化チタン粒子分散液の乾燥は、溶媒を蒸発できる方法であればいかなる方法であってもよい。例えば、熱源からの加熱、赤外光を用いた加熱法、電磁誘導による加熱法等が挙げられる。また、蒸発は減圧下で行ってもよい。
【0108】
本発明においては、酸化チタン粒子を用いて多孔性白色散乱層を形成するために、電解質に実質的に溶解しない水溶性高分子を塗布用バインダとして用いることができる。
【0109】
本発明でいう電解質溶媒に実質的に溶解しないとは、−20℃から120℃の温度において、電解質溶媒1kgあたりの溶解量が0g以上、10g以下である状態と定義し、質量測定法、液体クロマトグラムやガスクロマトグラムによる成分定量法等の公知の方法により溶解量を求めることができる。
【0110】
本発明に係る電解質溶媒に実質的に溶解しない水溶性高分子としては、ゼラチン、ゼラチン誘導体等の蛋白質またはセルロース誘導体、澱粉、アラビアゴム、デキストラン、プルラン、カラギーナン等の多糖類のような天然化合物や、ポリビニールアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド重合体やそれらの誘導体等の合成高分子化合物が挙げられる。ゼラチン誘導体としては、アセチル化ゼラチン、フタル化ゼラチン、ポリビニルアルコール誘導体としては、末端アルキル器変性ポリビニルアルコール、末端メルカプト基変性ポリビニルアルコール、セルロース誘導体としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。更に、リサーチ・ディスクロージャー及び特開昭64−13546号の(71)頁〜(75)頁に記載されたもの、また、米国特許第4,960,681号、特開昭62−245260号等に記載の高吸水性ポリマー、すなわち−COOMまたは−SO3M(Mは水素原子またはアルカリ金属)を有するビニルモノマーの単独重合体またはこのビニルモノマー同士もしくは他のビニルモノマー(例えばメタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸アンモニウム、アクリル酸カリウム等)との共重合体も使用される。これらのバインダーは2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0111】
本発明においては、ゼラチン及びゼラチン誘導体、または、ポリビニルアルコールもしくはその誘導体を好ましく用いることができる。
【0112】
本発明でいう電解質溶媒に実質的に溶解しないとは、−20℃から120℃の温度において、電解質溶媒1kgあたりの溶解量が0g以上、10g以下である状態と定義し、質量測定法、液体クロマトグラムやガスクロマトグラムによる成分定量法等の公知の方法により溶解量を求めることができる。
【0113】
このような水溶性高分子は、酸化チタン粒子同士を結着させる一方で、量が多すぎると多孔質白色散乱層の孔を塞いでしまうため、酸化チタン粒子に対し、0.1質量%〜5質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0114】
また、本発明の表示素子では、上記説明した酸化チタン粒子分散液を塗布乾燥中または乾燥後に、硬膜剤により水溶性高分子の硬化反応を行うことができる。
【0115】
本発明で用いられる硬膜剤の例としては、例えば、米国特許第4,678,739号の第41欄、同第4,791,042号、特開昭59−116655号、同62−245261号、同61−18942号、同61−249054号、同61−245153号、特開平4−218044号等に記載の硬膜剤が挙げられる。より具体的には、アルデヒド系硬膜剤(ホルムアルデヒド等)、アジリジン系硬膜剤、エポキシ系硬膜剤、ビニルスルホン系硬膜剤(N,N′−エチレン−ビス(ビニルスルホニルアセタミド)エタン等)、N−メチロール系硬膜剤(ジメチロール尿素等)、ほう酸、メタほう酸あるいは高分子硬膜剤(特開昭62−234157号等に記載の化合物)が挙げられる。水溶性高分子としてゼラチンを用いる場合は、硬膜剤の中で、ビニルスルホン型硬膜剤やクロロトリアジン型硬膜剤を単独または併用して使用することが好ましい。また、ポリビニルアルコールを用いる場合はホウ酸やメタホウ酸等の含ホウ素化合物の使用が好ましい。
【0116】
これらの硬膜剤は、水溶性高分子1g当たり0.001〜1g、好ましくは0.005〜0.5gが用いられる。また、膜強度を上げるため熱処理や、硬化反応時の湿度調整を行うことも可能である。
【0117】
本発明の多孔質白色散乱層に用いられる酸化チタン粒子は、粒径分布が、少なくとも0.1〜0.4μmに極大値を有することが好ましく、更には酸化チタンの粒径が0.15μm〜0.35μmであることがより好ましい。
【0118】
さらには、酸化チタンの粒径分布が、少なくとも2つの極大値を有することがより好ましい。
【0119】
このように少なくとも2つの粒径分布の極大値を有する酸化チタンにおいては、少なくとも一つの極大値が、0.1μm以上、0.4μm未満の範囲であることが好ましく、さらに、小さい方の粒径極大値(図2(b)においてはR2)が0.1μm以上、0.4μm未満の範囲であることがより好ましい。
【0120】
また、本発明に係る多孔質白色散乱層においては、含有する酸化チタンの粒径分布で示される極大値のうち、粒径の大きい極大値が示す粒径R1と粒径の小さい極大値が示す粒径R2とが、R1/R2=1.5〜4.5の関係にあることが好ましい。
【0121】
また、本発明に係る多孔質白色散乱層においては、大きい粒径極大値を構成する酸化チタンを、全酸化チタンの5質量%以上、50質量%以下含有することが好ましい。
【0122】
また、多孔質白色散乱層を透明電極上に設けた場合に特に、粒径の違いによる2層以上の積層構造を形成し、透明電極に接する層に含有される酸化チタンの平均粒径を、それより上部に配置される層に含有される酸化チタンの平均粒径より大きい構成とすることが好ましい。
【0123】
図3は、このような酸化チタン粒子により形成される多孔質白色散乱層の例である。図3のa)は、粒径分布の極大値が一つであるような酸化チタンにより構成された場合の断面を示している。図3のb)は、粒径分布の極大値が2つであるような酸化チタンにより構成された場合の一つの例を、図3のc)にはその別の例を示している。図3のc)のような構造とするためには、始めに粒径の大きな酸化チタンによる多孔質白色散乱層を形成し、その後粒径の小さな酸化チタンによる多孔質白色散乱層を形成することで得ることができる。このような層構成をとるほうが、反応速度と白地の点で、有利である。
【0124】
本発明に係る酸化チタンの粒径分布及び粒径の極大値の測定は、例えば、「酸化チタン 物性と応用技術」(清野学著、技報堂出版発行、1991年)の5.5.1章(p.82〜86)に記載の方法に準じて求めることができる。
【0125】
また、具体的には、測定対象の2種以上の酸化チタン混合物を、酸化チタン不溶性の溶媒中に分散させた後、例えば、レーザー散乱式粒径分布測定器(例えば、SALD2200(島津製作所製)やマルバーン社製ゼータサイザー1000等)などを用いて測定しても良いし、あるいは表面処理済酸化チタン混合物を直接、透過型電子顕微鏡あるいは走査型電子顕微鏡で観察し、得られた粒子画像から、粒径を求める方法等を用いることができる。この時、球換算の体積粒子径を、その済酸化チタンの直径と定義する。
【0126】
このように測定した粒径データについて、横軸に酸化チタンの粒径値を、縦軸に各粒径値における酸化チタンの個数をプロットして、酸化チタンの粒径分布曲線を作成する。
【0127】
図4は、上記の方法に従って求めた粒径分布データを基に、横軸に酸化チタンの粒径値を、縦軸に各粒径値における酸化チタン個数をプロットしたグラフであり、図4のa)では、粒径の異なる小粒径の酸化チタンA1と、大粒径の酸化チタンB1のそれぞれの粒径分布が完全に分離された状態の例を示しており、図4のb)では、小粒径と大粒径の酸化チタンの粒径分布が完全には分離できない様態の例を示してある。本発明においては、いずれの場合も、それぞれの極大値の粒径を、各粒子群の平均粒径とし、この粒径極大値を構成する粒子とは、両極大値の間に生じる極小値の部分までとする。すなわち、図4のb)では、極小値の粒径であるR3を境に、分離する。
【0128】
(層構成)
本発明の表示素子の構成層について、さらに説明する。
【0129】
本発明の表示素子に係る構成層として、正孔輸送材料を含む構成層を設けることができる。正孔輸送材料として、例えば、芳香族アミン類、トリフェニレン誘導体類、オリゴチオフェン化合物、ポリピロール類、ポリアセチレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリチエニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリトルイジン誘導体、CuI、CuSCN、CuInSe2、Cu(In,Ga)Se、CuGaSe2、Cu2O、CuS、CuGaS2、CuInS2、CuAlSe2、GaP、NiO、CoO、FeO、Bi23、MoO2、Cr23等を挙げることができる。
【0130】
(基板)
本発明で用いることのできる基板としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリカーボネート類、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンジナフタレンジカルボキシラート、ポリエチレンナフタレート類、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアセタール類、ポリスチレン等の合成プラスチックフィルムも好ましく使用できる。また、シンジオタクチック構造ポリスチレン類も好ましい。これらは、例えば、特開昭62−117708号、特開平1−46912、同1−178505号の各公報に記載されている方法により得ることができる。更に、ステンレス等の金属製基盤や、バライタ紙、及びレジンコート紙等の紙支持体ならびに上記プラスチックフィルムに反射層を設けた支持体、特開昭62−253195号(29〜31頁)に支持体として記載されたものが挙げられる。RDNo.17643の28頁、同No.18716の647頁右欄から648頁左欄及び同No.307105の879頁に記載されたものも好ましく使用できる。これらの支持体には、米国特許第4,141,735号のようにTg以下の熱処理を施すことで、巻き癖をつきにくくしたものを用いることができる。また、これらの支持体表面を支持体と他の構成層との接着の向上を目的に表面処理を行っても良い。本発明では、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理を表面処理として用いることができる。更に公知技術第5号(1991年3月22日アズテック有限会社発行)の44〜149頁に記載の支持体を用いることもできる。更にRDNo.308119の1009頁やプロダクト・ライセシング・インデックス、第92巻P108の「Supports」の項に記載されているものが挙げられる。その他に、ガラス基板や、ガラスを練りこんだエポキシ樹脂を用いることができる。
【0131】
(電極)
本発明の表示素子においては、対向電極の少なくとも1種が金属電極であることが好ましい。金属電極としては、例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、チタン、ビスマス、及びそれらの合金等の公知の金属種を用いることができる。金属電極は、電解質中の銀の酸化還元電位に近い仕事関数を有する金属が好ましく、中でも銀または銀含有率80%以上の銀電極が、銀の還元状態維持の為に有利であり、また電極汚れ防止にも優れる。電極の作製方法は、蒸着法、印刷法、インクジェット法、スピンコート法、CVD法等の既存の方法を用いることができる。
【0132】
また、本発明の表示素子は、対向電極の少なくとも1種が透明電極であることが好ましい。透明電極としては、透明で電気を通じるものであれば特に制限はない。例えば、Indium Tin Oxide(ITO:インジウム錫酸化物)、Indium Zinc Oxide(IZO:インジウム亜鉛酸化物)、酸化スズ(FTO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、白金、金、銀、ロジウム、銅、クロム、炭素、アルミニウム、シリコン、アモルファスシリコン、BSO(Bismuth Silicon Oxide)等が挙げられる。電極をこのように形成するには、例えば、基板上にITO膜をスパッタリング法等でマスク蒸着するか、ITO膜を全面形成した後、フォトリソグラフィ法でパターニングすればよい。表面抵抗値としては、100Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以下がより好ましい。透明電極の厚みは特に制限はないが、0.1〜20μmであるのが一般的である。
【0133】
(表示素子のその他の構成要素)
本発明の表示素子には、必要に応じて、シール剤、柱状構造物、スペーサー粒子を用いることができる。
【0134】
シール剤は外に漏れないように封入するためのものであり封止剤とも呼ばれ、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エン−チオール系樹脂、シリコーン系樹脂、変性ポリマー樹脂等の、熱硬化型、光硬化型、湿気硬化型、嫌気硬化型等の硬化タイプを用いることができる。
【0135】
柱状構造物は、基板間の強い自己保持性(強度)を付与し、例えば、格子配列等の所定のパターンに一定の間隔で配列された、円柱状体、四角柱状体、楕円柱状体、台形柱状体等の柱状構造物を挙げることができる。また、所定間隔で配置されたストライプ状のものでもよい。この柱状構造物はランダムな配列ではなく、等間隔な配列、間隔が徐々に変化する配列、所定の配置パターンが一定の周期で繰り返される配列等、基板の間隔を適切に保持でき、且つ、画像表示を妨げないように考慮された配列であることが好ましい。柱状構造物は表示素子の表示領域に占める面積の割合が1〜40%であれば、表示素子として実用上十分な強度が得られる。
【0136】
一対の基板間には、該基板間のギャップを均一に保持するためのスペーサーが設けられていてもよい。このスペーサーとしては、樹脂製または無機酸化物製の球体を例示できる。また、表面に熱可塑性の樹脂がコーティングしてある固着スペーサーも好適に用いられる。基板間のギャップを均一に保持するために柱状構造物のみを設けてもよいが、スペーサー及び柱状構造物をいずれも設けてもよいし、柱状構造物に代えて、スペーサーのみをスペース保持部材として使用してもよい。スペーサーの直径は柱状構造物を形成する場合はその高さ以下、好ましくは当該高さに等しい。柱状構造物を形成しない場合はスペーサーの直径がセルギャップの厚みに相当する。
【0137】
(スクリーン印刷)
本発明においては、シール剤、柱状構造物、電極パターン等をスクリーン印刷法で形成することもできる。スクリーン印刷法は、所定のパターンが形成されたスクリーンを基板の電極面上に被せ、スクリーン上に印刷材料(柱状構造物形成のための組成物、例えば、光硬化性樹脂など)を載せる。そして、スキージを所定の圧力、角度、速度で移動させる。これによって、印刷材料がスクリーンのパターンを介して該基板上に転写される。次に、転写された材料を加熱硬化、乾燥させる。スクリーン印刷法で柱状構造物を形成する場合、樹脂材料は光硬化性樹脂に限られず、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂も使用できる。熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリビニールエーテル樹脂、ポリビニールケトン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニールピロリドン樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩素化ポリエーテル樹脂等が挙げられる。樹脂材料は樹脂を適当な溶剤に溶解するなどしてペースト状にして用いることが望ましい。
【0138】
以上のようにして柱状構造物等を基板上に形成した後は、所望によりスペーサーを少なくとも一方の基板上に付与し、一対の基板を電極形成面を対向させて重ね合わせ、空セルを形成する。重ね合わせた一対の基板を両側から加圧しながら加熱することにより、貼り合わせて、表示セルが得られる。表示素子とするには、基板間に電解質組成物を真空注入法等によって注入すればよい。あるいは、基板を貼り合わせる際に、一方の基板に電解質組成物を滴下しておき、基板の貼り合わせと同時に液晶組成物を封入するようにしてもよい。
【0139】
(表示素子駆動方法)
本発明の表示素子においては、析出過電圧以上の電圧印加で黒化銀を析出させ、析出過電圧以下の電圧印加で黒化銀の析出を継続させる駆動操作を行なうことが好ましい。この駆動操作を行なうことにより、書き込みエネルギーの低下や、駆動回路負荷の低減や、画面としての書き込み速度を向上させることができる。一般に電気化学分野の電極反応において過電圧が存在することは公知である。例えば、過電圧については「電子移動の化学−電気化学入門」(1996年 朝倉書店刊)の121ページに詳しい解説がある。本発明の表示素子も電極と電解質中の銀との電極反応と見なすことができるので、銀溶解析出においても過電圧が存在することは容易に理解できる。過電圧の大きさは交換電流密度が支配するので、本発明のように黒化銀が生成した後に析出過電圧以下の電圧印加で黒化銀の析出を継続できるということは、黒化銀表面の方が余分な電気エネルギーが少なく容易に電子注入が行なえると推定される。
【0140】
本発明の表示素子の駆動操作は、単純マトリックス駆動であっても、アクティブマトリック駆動であってもよい。本発明でいう単純マトリックス駆動とは、複数の正極を含む正極ラインと複数の負極を含む負極ラインとが対向する形で互いのラインが垂直方向に交差した回路に、順次電流を印加する駆動方法のことを言う。単純マトリックス駆動を用いることにより、回路構成や駆動ICを簡略化でき安価に製造できるメリットがある。アクティブマトリックス駆動は、走査線、データライン、電流供給ラインが碁盤目状に形成され、各碁盤目に設けられたTFT回路により駆動させる方式である。画素毎にスイッチングが行えるので、諧調やメモリー機能などのメリットがあり、例えば、特開2004−29327号の図5に記載されている回路を用いることができる。
【0141】
本発明のカラーフィルターは、RGBあるいはYMCの三原色を呈するサブピクセルと、実質的に透明なサブピクセルとから選ばれた複数のサブピクセルにより1画素が形成されている。更に、RGBあるいはYMCのサブピクセル各1と実質的に透明なサブピクセル1との4つのサブピクセルにより1画素が形成されていることがより好ましい。そして、色純度が高くコントラストが良好な表示を行うために、各画素は、画像信号に応じて、サブピクセル単位で駆動されるように構成される。
【0142】
ここで、RGBの三原色とは、加色混法の理論による三原色で、主にディスプレイやテレビなどの発光型の色表示に用いられるが、反射型で用いることもできる。YMCの三原色とは、減色混法の理論による三原色で、主に写真や印刷物などの反射型の色表示に適用される。
【0143】
いずれの三原色を用いた場合でも、3色のカラーフィルターのみでは、白地の表現が不十分になる。また、カラーフィルターのRGBまたはYMCのサブピクセルは、可視光領域に光吸収を持つため、白黒のコントラストが低下してしまう。
【0144】
そこで、本発明のように実質的に透明なサブピクセルを併用することで、可視光領域の光利用効率が向上し、画素の白反射率が向上するために白黒のコントラストが向上する。
【0145】
(商品適用)
本発明の表示素子は、電子書籍分野、IDカード関連分野、公共関連分野、交通関連分野、放送関連分野、決済関連分野、流通物流関連分野等の用いることができる。具体的には、ドア用のキー、学生証、社員証、各種会員カード、コンビニストアー用カード、デパート用カード、自動販売機用カード、ガソリンステーション用カード、地下鉄や鉄道用のカード、バスカード、キャッシュカード、クレジットカード、ハイウェーカード、運転免許証、病院の診察カード、健康保険証、住民基本台帳、パスポート、電子ブック等が挙げられる。
【実施例】
【0146】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0147】
(4色フィルターの作製)
カーボンブラックからなる黒色顔料、ポリアミック酸、溶剤を攪拌混合し、黒色カラーペーストを得た。このようにして得られた黒色カラーペーストを無アルカリガラス(日本電気硝子(株)製、OA−10)からなる長さ400mm、幅500mm、厚さ0.5mmの透明基板上にスピンコートした後、110℃で15分間加熱乾燥し、膜厚1.5μmのポリイミド前駆体膜を得た。この膜上にポジ型フォトレジスト(東京応化株式会社製、OFP−800)をスピンコートし、80℃で20分加熱乾燥して膜厚1.0μmのレジスト膜を得た。次いで、フォトマスクを介して紫外線露光した後テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド2.4質量%の水溶液からなる現像液を用いて不要部分のフォトレジストおよびポリイミド前駆体膜をエッチング除去した後、残ったフォトレジストをメチルセロソルブアセテートにより除去した。これを300℃で30分加熱し、所定形状の遮光層を形成した。
【0148】
前記遮光層を形成したガラス基板上にポリアミック酸(3.4%)、赤顔料(1.3%)、溶剤(95.3%)からなる非感光性赤色カラーペーストをスピンコートした後、110℃で15分間加熱乾燥し、膜厚1.5μmのポリイミド前駆体膜を得た。
【0149】
この膜上にポジ型フォトレジストをスピンコートし、80℃で20分加熱乾燥して膜厚1.0μmのレジスト膜を得た。次いで、フォトマスクを介して紫外線露光した後、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド2.4質量%の水溶液からなる現像液を用いて不要部分のフォトレジストおよびポリイミド前駆体膜をエッチング除去した後、残ったフォトレジストをメチルセロソルブアセテートにより除去した。これを300℃で30分加熱し、所定形状の赤色着色パターンニング層を得た。同様にして、緑色カラーペースト(ポリアミック酸:3.7%、緑顔料:3.7%、溶剤:92.6%)をスピンコートした。該塗膜を、赤画素と同様に乾燥し、フォトリソ加工を行い、パターンニング層を得た。同様にして、青色カラーペースト(ポリアミック酸:5.1%、青顔料:2.1%、溶剤:92.8%)をスピンコートした。該塗膜を、赤画素と同様に乾燥し、フォトリソ加工を行い、パターンニング層を得た。最後に、透明ペースト(ポリアミック酸:5.5%、溶剤:94.5%)をスピンコートした。該塗膜を、赤画素と同様に乾燥し、フォトリソ加工を行い、パターンニング層を得た。
【0150】
《表示素子の作製》
(電極1の作製)
厚さ1.5mmで4cm×4cmのガラス基板上にピッチ145μm、電極幅130μmのストライプ状ITO膜を公知の方法に従って形成し透明電極(電極1)を得た。
【0151】
(電極2の作製)
厚さ1.5mmで4cm×4cmのガラス基板に、公知の方法を用いて、電極厚み0.1μm、ピッチ145μm、電極間隔130μmのストライプ状銀−パラジウム電極(電極2)を得た。
【0152】
(電解質液1の調整)
溶媒2.5g中に、ヨウ化ナトリウム90mg、ヨウ化銀75mgを加えて完全に溶解させた後、平均粒径0.031μmの酸化亜鉛粒子(関東化学 ナノテックZnO)を0。5g加えて、超音波分散機にて分散した。ポリビニルアルコールを150mg加えて120℃に加熱しながら1時間撹拌し、電解質液1を得た。
【0153】
(電解質液2〜13の調整)
溶媒2.5g中に、ヨウ化ナトリウムを90mg、ヨウ化銀を75mg加えて完全に溶解させた後に、添加剤を所定量加え撹拌した。これにポリビニルアルコールを150mg加えて120℃に加熱しながら1時間撹拌し、電解質液2〜13を得た。
各電解質液の溶媒や添加剤の種類と量は、表1に示す通りである。
【0154】
(白色粒子分散液1の調製)
水12g、エタノール5gを混合し、これにポリビニルアルコール0.15gを溶解した。さらに平均粒径0.031μmの酸化亜鉛粒子(関東化学 ナノテックZnO)を8g加え、超音波分散機により分散した。
【0155】
(白色粒子分散液2の調整)
水12g、エタノール5gを混合し、これにポリビニルアルコール0.15gを溶解した。さらに酸化チタン粒子(石原産業 タイペークA−100 平均粒径0.15μm、表面処理なし)を8g加え、超音波分散機により分散した。
【0156】
(白色粒子分散液3の調整)
タイペークA−100に変えて、高密度シリカおよびアルミナにより表面処理を施した酸化チタン粒子(石原産業 タイペークCR−90 平均粒径0.25μm)を用いて酸化チタン粒子分散液1と同様にして調整した。
【0157】
(白色粒子分散液4の調整)
平均粒径が0.03μmの酸化チタン粒子(関東化学 ナノテックTiO2)に、高密度シリカ及びアルミナにより表面処理を施し、上記酸化チタン粒子分散液1および2と同様にして、酸化チタン粒子分散液3を調製した。
【0158】
(白色粒子分散液5の調製)
平均粒径が0.45μmの酸化チタン粒子に高密度シリカ及びアルミナにより表面処理を施した酸化チタン粒子2gに、上記タイペークCR−90を6g加え、よく混合した。これを水12g、エタノール5gを混合し、これにポリビニルアルコール0.15gを溶解した液に加え、超音波分散機により分散した。
【0159】
(多孔質白色散乱層1〜5の形成)
パターン化処理した電極2の上に、スクリーン印刷法により、白色粒子分散液1〜5をそれぞれ塗付し、15℃30分乾燥させた後、45℃30分乾燥させ、膜厚35μmの多孔質白色散乱層1〜5を得た。
【0160】
〔表示素子1の作製〕
パターン化した電極2の周囲に平均粒径が40μmのガラス製球形ビーズを体積分率で10%含むオレフィン系封止剤で縁取りした。封止剤の壁で囲まれた内部に電解質液1を封止壁の高さまで注入し、これに電極1を、電極面が内側になり、かつ、電極1と電極2のストライプパターンが直行するように被せ、加熱圧着して封止した。この上に、カラーフィルターを、画素位置を合わせて接着し、表示素子1を得た。
【0161】
〔表示素子2〜15の作製〕
各多孔質白色散乱層を設けた電極2の周辺に、平均粒径が40μmのガラス製球形ビーズを体積分率で10%含むオレフィン系封止剤で縁取りし、封止剤の壁で囲まれた内部に電解質液を満たし、放置して、多孔質白色散乱層に各電解質液が十分浸透するようにした。さらに封止壁の高さまで電解質液を注入し、これに電極1を、電極面が内側になり、かつ、電極1と電極2のストライプパターンが直行するように被せ、加熱圧着して封止した。この上に、カラーフィルターを、画素位置を合わせて接着し、表示素子2〜4を得た。
表示素子2〜4を構成する電解質と多孔質白色散乱層との組み合わせは、表1に示されるとおりである。
【0162】
《各特性値の測定及び評価》
(酸化亜鉛、酸化チタンの微粒子の平均粒径の測定)
酸化亜鉛、酸化チタンの微粒子を透過型電子顕微鏡(JEM−200FX、日本電子社製)を用いて撮影し、得られた微粒子画像から、画像処理ソフトにプラネトロン社製Image−Proを用い、500個の粒子画像を処理して各粒径を求め統計処理を行って平均粒径を算出した。
【0163】
(駆動評価)
ブルー発色となる駆動を行った。駆動前後の450nmの反射率(%)をコニカミノルタセンシング社製の分光測色計CM−3700dを用いて測定し、その差を計算し、色再現の指標とした。
【0164】
結果を表1に示す。
【0165】
【表1】

【0166】
一般的な電解析出方式の表示素子(本実施例の比較例)では、図5のa)に示すように、銀画像7がブロードに析出するため、色再現性を低下させてしまう。
本発明に係る表示素子は、図5のb)に示すように、銀画像のにじみが少ないため、色再現の低下がなく、良好な画像が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】本発明の表示素子の基本的な構成を示す概略断面図である。
【図2】カラーフィルターの配列の例を示す。
【図3】酸化チタン粒子より構成された多孔質白色散乱層を有する表示素子の一例を示す概略断面図である。
【図4】白色微粒子の粒径分布を示すグラフである。
【図5】本発明と比較表示素子の表示状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0168】
1 カラーフィルター
2 白黒表示を行う表示部
3 透明電極
4 対向電極
5 電解質層
6 多孔質白色散乱層
6A 大粒径白色粒子
6B 小粒径白色粒子
7 封止壁
8 銀画像
9 遮光層
B ブルー
G グリーン
R レッド
W 透明

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラーフィルターと、白黒表示を行う表示部とを有する表示素子において、前記カラーフィルターが、1画素が複数のサブピクセルの組み合わせから形成され、該サブピクセルがBGRあるいはYMCの三原色を呈するサブピクセルと、実質的に透明なサブピクセルとから選ばれるカラーフィルターであり、前記白黒表示を行う表示部が、銀、または銀を化学構造中に含む化合物を含有する電解質と、多孔質白色散乱層とを有し、銀の溶解析出を生じさせるように対向電極の駆動操作を行う表示部であることを特徴とする表示素子。
【請求項2】
前記電解質に、下記一般式(1)または(2)で表される化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1に記載の表示素子。
【化1】

〔式中、R1〜R3は各々水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルカルボンアミド基、アリールカルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、スルホニル基、アミノ基、ヒドロキシ基または複素環基を表す。〕
【化2】

〔式中、Mは水素原子、金属原子または4級アンモニウムを表す。Zはイミダゾール環類を除く含窒素複素環を表す。nは0〜5の整数を表し、R4は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルカルボンアミド基、アリールカルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、スルホニル基、アミノ基、ヒドロキシ基または複素環基を表し、nが2以上の場合、それぞれのR4は同じであってもよく、異なってもよく、お互いに連結して縮合環を形成してもよい。〕
【請求項3】
前記電解質に含有される、前記一般式(1)あるいは(2)で表される化合物のメルカプト基の総モル数を[−SH](モル/kg)とし、該銀を化学構造中に含む化合物の銀の総モル数を[Ag](モル/kg)とした時に、下式(1)の条件を満たすことを特徴とする請求項2に記載の表示素子。
式(1) 2≦[−SH]/[Ag]≦10
【請求項4】
該電解質に、下記一般式(3)で表される化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の表示素子。
一般式(3)
5−S−R6
〔式中、R5、R6は各々アルキル基、アリール基または複素環基を表し、それぞれ同じであってもよく、異なってもよく、お互いに連結して環を形成してもよい。〕
【請求項5】
前記電解質に含有される、一般式(3)で表される化合物または該一般式(3)で表される化合物より生成する化合物のチオエーテル基のモル濃度を[−S−](モル/kg)、該銀を化学構造中に含む化合物の銀の総モル数を[Ag](モル/kg)とした時に、下式(2)の条件を満たすことを特徴とする請求項4に記載の表示素子。
式(2) 2≦[−S−]/[Ag]≦10
【請求項6】
前記電解質が、下記一般式(4)または(5)で表される化合物の少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の表示素子。
【化3】

〔式中、Lは酸素原子またはCH2を表し、R7〜R10は各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基またはアルコキシ基を表す。〕
【化4】

〔式中、R11、R12は各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基またはアルコキシ基を表す。〕
【請求項7】
前記多孔質白色散乱層が、酸化チタン粒子により構成されることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項記載の表示素子。
【請求項8】
前記酸化チタン粒子の表面が、シリカ及びアルミナで処理されていることを特徴とする請求項7に記載の表示素子。
【請求項9】
前記酸化チタン粒子の粒径分布が、少なくとも0.1μm以上、0.4μm以下の部分に極大値を有することを特徴とする請求項7または8項に記載の表示素子。
【請求項10】
前記カラーフィルターの1画素が、BGRあるいはYMCのサブピクセル各1と実質的に透明なサブピクセル1との4つのサブピクセルの組み合わせで構成されていることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の表示素子。
【請求項11】
前記カラーフィルターの各サブピクセルが実質的に同じ面積であることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の表示素子。
【請求項12】
前記表示部が、前記カラーフィルターのサブピクセル単位で駆動されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の表示素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−256545(P2007−256545A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−79917(P2006−79917)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】