説明

表示素子

【課題】明るい白表示、高コントラストの白黒表示及びフルカラー表示を、簡便な部材構成で実現することができ、かつ酸化還元の繰り返し耐久性及び経時耐久性の高い新規な電気化学的な表示素子を提供することにある。
【解決手段】対向電極間に、電解質、導電性ポリマー材料、金属塩化合物及び白色散乱物を含有し、対向電極の駆動操作により、前記導電性ポリマー材料のエレクトロクロミック反応による色変化、及び、前記対向電極の少なくとも1方への前記金属塩化合物が含有する金属元素の還元析出及び酸化溶解による色変化を用いて、黒表示、白表示及び黒以外の着色表示により3色以上の多色表示を行うことを特徴とする表示素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1層で多色表示を可能とした新規な電気化学的な表示素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの動作速度の向上、ネットワークインフラの普及、データストレージの大容量化と低価格化に伴い、従来紙への印刷物で提供されたドキュメントや画像等の情報を、より簡便な電子情報として入手、電子情報を閲覧する機会がますます増大している。
【0003】
このような電子情報の閲覧手段として、従来の液晶ディスプレイやCRT、また近年では、有機ELディスプレイ等の発光型が主として用いられているが、特に、電子情報がドキュメント情報の場合、比較的長時間にわたってこの閲覧手段を注視する必要があり、これらの行為は必ずしも人間に優しい手段とは言い難く、一般に発光型のディスプレイの欠点として、フリッカーで目が疲労する、持ち運びに不便、読む姿勢が制限され、静止画面に視線を合わせる必要が生じる、長時間読むと消費電力が嵩む等が知られている。
【0004】
これらの欠点を補う表示手段として、外光を利用し、像保持のために電力を消費しない(メモリー性)反射型ディスプレイが知られているが、下記の理由で十分な性能を有しているとは言い難い。
【0005】
すなわち、反射型液晶等の偏光板を用いる方式は、反射率が約40%と低く白表示に難があり、また構成部材の作製に用いる製法の多くは簡便とは言い難い。また、ポリマー分散型液晶は高い電圧を必要とし、また有機物同士の屈折率差を利用しているため得られる画像のコントラストが十分でない。また、ポリマーネットワーク型液晶は電圧が高いことと、メモリー性を向上させるために複雑なTFT回路が必要である等の課題を抱えている。また、電気泳動法による表示素子は、10V以上の高い電圧が必要となり、電気泳動性粒子凝集による耐久性に懸念がある。これらの方法で、カラー表示を行う方法として、カラーフィルターを用いる方法や、パターンカラーを用いる方法が知られている。原理的に、前者は、カラーフィルターの着色のため明るい白表示が得られない、後者は、パターンカラーのために濃い黒が得られない。
【0006】
フルカラー表示が可能な方式として、エレクトロクロミック方式が知られており、3V以下の低電圧で駆動が可能であるが、明るい白で、十分な白黒コントラスト、さらにカラーを表示しようとした場合、異なる色を3層積層する必要があり、複雑な素子構成によるコスト高が懸念される。また、平地混合によるフルカラーエレクトロクロミック素子(例えば、特許文献1参照)が知られているが、この方式では、平地混合のため濃い黒が得られないため、白黒コントラストが十分ではない。また、ポリピリジン系化合物をエレクトロクロミック素子に用いること(例えば、特許文献2参照)が知られているが、この構成では、表示色として2色しか表示できず、特に黒表示が得られない。
【0007】
導電性高分子を用いたエレクトロクロミック表示素子関しても、これまでに種々の提案がなされており、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオェン等を使用することが提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、充分な白黒コントラストが得られないと言う課題は残されている。
【0008】
また導電性ポリマーは、一般に酸化還元(ドーピング・脱ドーピング)に対しての繰り返し安定性に優れるとは言われているものの、実用レベルに達しているものは少なく、特にエレクトロクロミック表示素子に用いようとする場合、酸化還元の繰り返し耐久性及び経時で耐久性の点で改善が望まれている。
【特許文献1】特開2003−270670号公報
【特許文献2】特許第2930860号公報
【特許文献3】特開昭61−238028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、明るい白表示、高コントラストの白黒表示及びフルカラー表示を、簡便な部材構成で実現することができ、かつ酸化還元の繰り返し耐久性及び経時耐久性の高い新規な電気化学的な表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成される。
【0011】
1.対向電極間に、電解質、導電性ポリマー材料、金属塩化合物及び白色散乱物を含有し、対向電極の駆動操作により、前記導電性ポリマー材料のエレクトロクロミック反応による色変化、及び、前記対向電極の少なくとも1方への前記金属塩化合物が含有する金属元素の還元析出及び酸化溶解による色変化を用いて、黒表示、白表示及び黒以外の着色表示により3色以上の多色表示を行うことを特徴とする表示素子。
【0012】
2.前記導電性ポリマー材料が、ポリカルバゾール誘導体、ポリフェニレンオキサイド誘導体またはポリアニリン誘導体であることを特徴とする前記1に記載の表示素子。
【0013】
3.前記導電性ポリマー材料が、金属−カチオンラジカル及びジカチオン−吸着水の三者の間の化学反応により、金属が酸化された状態でポリマー鎖間に埋め込まれた複合材料であり、かつ前記金属の仕事関数が導電性ポリマーの仕事関数よりも小さいことを特徴とする前記1または2に記載の表示素子。
【0014】
4.前記複合材料の金属が、アルミニウム、チタン、インジウム、カドミウム、マンガン、鉄、銅、銀、スズ、アンチモン、鉛、ナトリウムまたはカルシウムから選ばれた一種であることを特徴とする前記3に記載の表示素子。
【0015】
5.前記金属塩化合物が、銀塩化合物であることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の表示素子。
【0016】
6.黒以外の着色表示領域を、互いに異なる色相となるように平面配置することで、カラー表示と白黒表示を行うことを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載の表示素子。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、明るい白表示、高コントラストの白黒表示及びフルカラー表示を、簡便な部材構成で実現することができ、かつ酸化還元の繰り返し耐久性及び経時耐久性の高い新規な電気化学的な表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、対向電極間に、電解質、導電性ポリマー材料、金属塩化合物及び白色散乱物を含有し、対向電極の駆動操作により、前記導電性ポリマー材料のエレクトロクロミック反応による色変化、及び、前記対向電極の少なくとも1方への前記金属塩化合物が含有する金属元素の還元析出及び酸化溶解による色変化を用いて、黒表示、白表示及び黒以外の着色表示により3色以上の多色表示を行う表示素子により、明るい白表示、高コントラストの白黒表示及びフルカラー表示を、簡便な部材構成で実現し、かつ酸化還元の繰り返し耐久性及び経時耐久性の高い表示素子が得られることを見出し、本発明に至った次第である。
【0019】
以下、本発明の表示素子の詳細について説明する。
【0020】
〔表示素子の基本構成〕
本発明の表示素子において、表示部には、対応する1つの対向電極が設けられている。表示部に近い対向電極の1つである電極1にはITO電極等の透明電極、他方の電極2には銀電極等の金属電極が設けられている。電極1と電極2との間には金属塩化合物を有する電解質、エレクトロクロミズムを示す導電性ポリマー材料が保持されており、対向電極間に正負両極性の電圧を印加することにより、電極1または電極2上で金属塩化合物に含まれる金属の酸化還元反応、及び導電性ポリマー材料の酸化還元反応が行なわれ、還元状態の黒い黒化金属画像と、導電性ポリマー材料の酸化状態の着色像を可逆的に切り替えることができる。
【0021】
〔電解質〕
電解質とは、一般に、水等の溶媒に溶けて溶液がイオン伝導性を示す物質(以下、「狭義の電解質」という。)をいうが、本発明においては、狭義の電解質に電解質、非電解質を問わず他の金属、化合物等を含有させた混合物を電解質(「広義の電解質」)という。
【0022】
〔金属塩化合物〕
本発明に用いられる金属塩化合物は、対向電極上の少なくとも1方の電極上で、対向電極の駆動操作で、溶解・析出を行うことができる金属種を含む塩であれば、如何なる化合物であってもよい。好ましい金属塩化合物は、銀、ビスマス、銅、ニッケル、鉄、クロム、亜鉛等の塩化合物であり、銀、ビスマスの塩化合物がより好ましく、特に好ましいのは銀塩化合物である。
【0023】
本発明に特に好ましく用いられる銀塩化合物とは、銀または銀を化学構造中に含む化合物、例えば、酸化銀、硫化銀、金属銀、銀コロイド粒子、ハロゲン化銀、銀錯体化合物、銀イオン等の化合物の総称であり、固体状態や液体への可溶化状態や気体状態等の相の状態種、中性、アニオン性、カチオン性等の荷電状態種は、特に問わない。
【0024】
〔導電性ポリマー材料〕
本発明の表示素子は、エレクトロクロミック化合物が導電性ポリマー材料であることが特徴である。
【0025】
本発明に用いられる導電性ポリマーとしては、特に限定されず、ポリピロール誘導体、ポリインドール誘導体、ポリカルバゾール誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリフラン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリアズレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンサルファイド誘導体、ポリフェニレンオキサイド誘導体、ポリイソチアナフテン誘導体、ポリチアジル誘導体等の導電性ポリマーも利用することができる。
【0026】
ただし、例えばポリチオフェンでは、ドーピング状態で青色を呈し、脱ドーピング状態で赤色となる等、いずれも着色状態にあり、一方を無着色状態とすることはできない。本発明の表示素子として用いる場合、脱ドーピング状態が実質的に無色状態であり、ドープ状態で着色状態となるポリマー材料が好ましく、ポリカルバゾール誘導体、ポリフェニレンオキサイド誘導体、ポリアニリン誘導体が好ましく、下記一般式(1)または(2)で表される繰り返し単位を有するポリマーが好ましい。
【0027】
【化1】

【0028】
一般式(1)において、R1〜R7は、互いに同一であっても、異なっていてもよく、水素原子または置換基を表す。また、互いに連結して環を形成してもよい。
【0029】
1〜R7で表される置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、複素環オキシ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、ウレイド基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、カルバモイル基、アルカンスルフィニル基またはアリールスルフィニル基、アルカンスルホニル基またはアリールスルホニル基、アミノ基、シリルオキシ基、アミノカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、メルカプト基、アリールアゾ基、複素環アゾ基、イミノ基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、スルホ基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0030】
1〜R6としては、水素原子及びアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基が好ましい。R7としては、水素原子及びアルキル基、シクロアルキル基、アリール基が好ましい。
【0031】
【化2】

【0032】
一般式(2)において、R1〜R8は、互いに同一であっても、異なっていてもよく、水素原子または置換基を表す。また、互いに連結して環を形成してもよい。
【0033】
1〜R8で示される置換基としては、前記一般式(1)のR1〜R7と同様な基が挙げられる。R1〜R8としては、水素原子及びアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基が好ましい。
【0034】
一般式(2)において、n及びmは各々独立に2または4を表す。
【0035】
また本発明においては、ドープ状態の導電性ポリマーに、酸化されやすい金属を接触させることで、金属が酸化された状態でポリマー鎖間に埋め込まれた複合材料として用いることが好ましい。
【0036】
このような複合材料は、導電性ポリマーの仕事関数よりも小さな仕事関数をもつ金属と、導電性ポリマーとを接触させ、かつ吸着水の存在する状態に保持することにより金属−カチオンラジカル及びジカチオン−吸着水の三者が共存する状態を作り出すことによって製造できる。
【0037】
金属−カチオンラジカル及びジカチオン−吸着水の三者が共存する状態を作り出すための一つの方法としては、基板上に導電性ポリマーフイルムを形成し、該導電性ポリマーフイルム表面に導電性ポリマーの仕事関数よりも小さな仕事関数をもつ金属を蒸着する方法がある。
【0038】
導電性ポリマーと比べて仕事関数の小さな金属、例えば、アルミニウム、チタン、インジウム、カドミウム、マンガン、鉄、銅、銀、スズ、アンチモン、鉛、ナトリウム、またはカルシウムを蒸着し、吸着水が存在する状態に保持すると、蒸着した金属は酸化(一部水酸化物化)されながら、ポリマーフイルム内に吸蔵される。
【0039】
真空下でない限り、通常、物質は吸着水で覆われる状態になるので、吸着水が存在する状態に保持するためには、該導電性ポリマーよりも小さな仕事関数をもつ金属と導電性ポリマーとを接触させた状態で日常の大気中(例えば、温度20℃、相対湿度50%程度)に保持するか、水に少しでも濡れるような操作をするだけでよい。
【0040】
このような蒸着法を用いると、蒸着直後に吸着水が存在する日常の周囲雰囲気に置くだけでも、改質された導電性ポリマー材料を得ることができる。なお、金属を堆積する方法としては、蒸着法だけではなく、スパッタ法、メッキ法、電着法、電子ビーム法等、様々な堆積法を用いることができる。
【0041】
〔白色散乱物〕
本発明においては、表示コントラスト及び白表示反射率を高める観点から、白色散乱物を含有することを特徴とするが、多孔質白色散乱層を形成させて存在させてもよい。
【0042】
本発明に適用可能な多孔質白色散乱層は、電解質溶媒に実質的に溶解しない水系高分子と白色顔料との水混和物を塗布乾燥して形成することができる。
【0043】
本発明で適用可能な白色顔料としては、例えば、二酸化チタン(アナターゼ型あるいはルチル型)、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム及び水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、アルカリ土類金属塩、タルク、カオリン、ゼオライト、酸性白土、ガラス、有機化合物としてポリエチレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、ポリアミド樹脂等が単体または複合混合で、または粒子中に屈折率を変化させるボイドを有する状態で使用されてもよい。
【0044】
本発明では、上記白色粒子の中でも、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛が好ましく用いられる。また、無機酸化物(Al23、AlO(OH)、SiO2等)で表面処理した二酸化チタン、これらの表面処理に加えて、トリメチロールエタン、トリエタノールアミン酢酸塩、トリメチルシクロシラン等の有機物処理を施した二酸化チタンを用いることができる。
【0045】
これらの白色粒子のうち、高温時の着色防止、屈折率に起因する素子の反射率の観点から、酸化チタンまたは酸化亜鉛を用いることがより好ましい。
【0046】
本発明において、電解質溶媒に実質的に溶解しない水系高分子としては、水溶性高分子、水系溶媒に分散した高分子を挙げることができる。
【0047】
水溶性化合物としては、ゼラチン、ゼラチン誘導体等の蛋白質またはセルロース誘導体、澱粉、アラビアゴム、デキストラン、プルラン、カラギーナン等の多糖類のような天然化合物や、ポリビニールアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド重合体やそれらの誘導体等の合成高分子化合物が挙げられる。ゼラチン誘導体としては、アセチル化ゼラチン、フタル化ゼラチン、ポリビニルアルコール誘導体としては、末端アルキル基変性ポリビニルアルコール、末端メルカプト基変性ポリビニルアルコール、セルロース誘導体としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。さらに、リサーチ・ディスクロージャー及び特開昭64−13546号の(71)頁〜(75)頁に記載されたもの、また、米国特許第4,960,681号、特開昭62−245260号等に記載の高吸水性ポリマー、すなわち−COOMまたは−SO3M(Mは水素原子またはアルカリ金属)を有するビニルモノマーの単独重合体またはこのビニルモノマー同士もしくは他のビニルモノマー(例えば、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸アンモニウム、アクリル酸カリウム等)との共重合体も使用される。これらのバインダーは2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0048】
本発明においては、ゼラチン及びゼラチン誘導体、または、ポリビニルアルコールもしくはその誘導体を好ましく用いることができる。
【0049】
水系溶媒に分散した高分子としては、天然ゴムラテックス、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム等のラテックス類、ポリイソシアネート系、エポキシ系、アクリル系、シリコーン系、ポリウレタン系、尿素系、フェノール系、ホルムアルデヒド系、エポキシ−ポリアミド系、メラミン系、アルキド系樹脂、ビニル系樹脂等を水系溶媒に分散した熱硬化性樹脂を挙げることができる。これらの高分子のうち、特開平10−76621号に記載の水系ポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。
【0050】
本発明でいう電解質溶媒に実質的に溶解しないとは、−20℃から120℃の温度において、電解質溶媒1kg当たりの溶解量が0〜10gである状態と定義し、質量測定法、液体クロマトグラムやガスクロマトグラムによる成分定量法等の公知の方法により溶解量を求めることができる。
【0051】
本発明において、水系化合物と白色顔料との水混和物は、公知の分散方法に従って白色顔料が水中分散された形態が好ましい。水系化合物/白色顔料の混合比は、容積比で1〜0.01が好ましく、より好ましくは、0.3〜0.05の範囲である。
【0052】
本発明において、水系化合物と白色顔料との水混和物を塗布する媒体は、表示素子の対向電極間の構成要素上であればいずれの位置でもよいが、対向電極の少なくとも1方の電極面上に付与することが好ましい。媒体への付与の方法としては、例えば、塗布方式、液噴霧方式、気相を介する噴霧方式として、圧電素子の振動を利用して液滴を飛翔させる方式、例えば、ピエゾ方式のインクジェットヘッドや、突沸を利用したサーマルヘッドを用いて液滴を飛翔させるバブルジェット(登録商標)方式のインクジェットヘッド、また空気圧や液圧により液を噴霧するスプレー方式等が挙げられる。
【0053】
塗布方式としては、公知の塗布方式より適宜選択することができ、例えば、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースローラーコーター、トランスファーローラーコーター、カーテンコーター、ダブルローラーコーター、スライドホッパーコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、ビードコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カレンダーコーター、押し出しコーター等が挙げられる。
【0054】
媒体上に付与した水系化合物と白色顔料との水混和物の乾燥は、水を蒸発できる方法であればいかなる方法であってもよい。例えば、熱源からの加熱、赤外光を用いた加熱法、電磁誘導による加熱法等が挙げられる。また、水蒸発は減圧下で行ってもよい。
【0055】
本発明でいう多孔質とは、前記水系化合物と白色顔料との水混和物を電極上に塗布乾燥して多孔質の白色散乱物を形成した後、該散乱物上に、金属塩化合物を含有する電解質液を与えた後に対向電極で挟み込み、対向電極間に電位差を与え、金属塩化合物に含まれる金属の溶解析出反応を生じさせることが可能で、イオン種が電極間で移動可能な貫通状態のことをいう。
【0056】
本発明の表示素子では、上記説明した水混和物を塗布乾燥中または乾燥後に、硬化剤により水系化合物の硬化反応を行うことが望ましい。
【0057】
本発明で用いられる硬膜剤の例としては、例えば、米国特許第4,678,739号の第41欄、同第4,791,042号、特開昭59−116655号、同62−245261号、同61−18942号、同61−249054号、同61−245153号、特開平4−218044号等に記載の硬膜剤が挙げられる。より具体的には、アルデヒド系硬膜剤(ホルムアルデヒド等)、アジリジン系硬膜剤、エポキシ系硬膜剤、ビニルスルホン系硬膜剤(N,N′−エチレン−ビス(ビニルスルホニルアセタミド)エタン等)、N−メチロール系硬膜剤(ジメチロール尿素等)、ほう酸、メタほう酸あるいは高分子硬膜剤(特開昭62−234157号等に記載の化合物)が挙げられる。水系化合物としてゼラチンを用いる場合は、硬膜剤の中で、ビニルスルホン型硬膜剤やクロロトリアジン型硬膜剤を単独または併用して使用することが好ましい。また、ポリビニルアルコールを用いる場合はホウ酸やメタホウ酸等の含ホウ素化合物の使用が好ましい。
【0058】
これらの硬膜剤は、水系化合物1g当たり0.001〜1g、好ましくは0.005〜0.5gが用いられる。また、膜強度を上げるため熱処理や、硬化反応時の湿度調整を行うことも可能である。
【0059】
〔一般式(3)、(4)で表される化合物〕
本発明の表示素子においては、電解質が、下記一般式(3)または(4)で表される化合物を含有してもよい。
【0060】
【化3】

【0061】
上記一般式(3)において、Lは酸素原子またはCH2を表し、R1〜R4は各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基またはアルコキシ基を表す。
【0062】
【化4】

【0063】
上記一般式(4)において、R5、R6は各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基またはアルコキシ基を表す。
【0064】
はじめに、一般式(3)で表される化合物について説明する。
【0065】
前記一般式(3)において、Lは酸素原子またはCH2を表し、R1〜R4は各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基またはアルコキシ基を表す。
【0066】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等、アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等、シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等、アルコキシアルキル基として、例えば、β−メトキシエチル基、γ−メトキシプロピル基等、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等を挙げることができる。
【0067】
以下、一般式(3)で表される化合物の具体例を示す。
【0068】
【化5】

【0069】
次いで、一般式(4)で表される化合物について説明する。
【0070】
前記一般式(4)において、R5、R6は各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基またはアルコキシ基を表す。
【0071】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等、アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等、シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等、アルコキシアルキル基として、例えば、β−メトキシエチル基、γ−メトキシプロピル基等、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等を挙げることができる。
【0072】
以下、一般式(4)で表される化合物の具体例を示す。
【0073】
【化6】

【0074】
上記例示した一般式(3)及び一般式(4)で表される化合物の中でも、特に、例示化合物(3−1)、(3−2)、(4−3)が好ましい。
【0075】
一般式(3)、(4)で表される化合物は電解質溶媒の1種であるが、本発明の表示素子においては、本発明の目的効果を損なわない範囲で、さらに別の溶媒を併せて用いることができる。具体的には、テトラメチル尿素、スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−(N−メチル)−2−ピロリジノン、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,Nジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ブチロニトリル、プロピオニトリル、アセトニトリル、アセチルアセトン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ブタノール、1−ブタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、エタノール、メタノール、無水酢酸、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、ジメトキシエタン、ジエトキシフラン、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、水等が挙げられる。これらの溶媒の内、凝固点が−20℃以下、かつ沸点が120℃以上の溶媒を少なくとも1種含むことが好ましい。
【0076】
さらに本発明で用いることのできる溶媒としては、J.A.Riddick,W.B.Bunger,T.K.Sakano,“Organic Solvents”,4th ed.,John Wiley & Sons(1986)、Y.Marcus,“Ion Solvation”,John Wiley & Sons(1985)、C.Reichardt,“Solvents and Solvent Effects in Chemistry”,2nd ed.,VCH(1988)、G.J.Janz,R.P.T.Tomkins,“Nonaqueous Electorlytes Handbook”,Vol.1,Academic Press(1972)に記載の化合物を挙げることができる。
【0077】
本発明において、電解質溶媒は単一種であっても、溶媒の混合物であってもよいが、エチレンカーボネートを含む混合溶媒が好ましい。エチレンカーボネートの添加量は、全電解質溶媒質量の10〜90質量%が好ましい。特に好ましい電解質溶媒は、プロピレンカーボネート/エチレンカーボネートの質量比が7/3〜3/7の混合溶媒である。プロピレンカーボネート比が7/3より大きいとイオン伝導性が劣り応答速度が低下し、3/7より小さいと低温時に電解質が析出しやすくなる。
【0078】
〔ハロゲンイオン、銀イオン濃度比〕
本発明の表示素子においては、電解質に含まれるハロゲンイオンまたはハロゲン原子のモル濃度を[X](モル/kg)とし、前記電解質に含まれる金属塩化合物の金属の総モル濃度を[M](モル/kg)としたとき、下式(1)で規定する条件を満たすことが好ましい。
【0079】
式(1):0≦[X]/[M]≦0.01
本発明でいうハロゲン原子とは、ヨウ素原子、塩素原子、臭素原子、フッ素原子のことをいう。[X]/[M]が0.01よりも大きい場合は、金属塩化合物に含まれる金属の酸化還元反応時に、2X-→X2が生じ、X2は黒化した金属と容易にクロス酸化して黒化した金属を溶解させ、メモリー性を低下させる要因の1つになるので、ハロゲン原子のモル濃度は金属のモル濃度に対してできるだけ低い方が好ましい。本発明においては、0≦[X]/[M]≦0.001がより好ましい。ハロゲンイオンを添加する場合、ハロゲン種については、メモリー性向上の観点から、各ハロゲン種モル濃度総和が[I]<[Br]<[Cl]<[F]であることが好ましい。
【0080】
本発明の表示素子においては、金属塩化合物を溶解させるためのハロゲン以外の金属溶剤を用いることができる。好ましい金属化合物溶剤としては、特開2005−266652号の一般式(1)〜(7)に記載の化合物を挙げることができる。これらの中で、特に好ましい化合物は、一般式(2)、(6)で表される化合物である。
【0081】
〔電解質−金属塩化合物〕
本発明の表示素子においては、金属塩化合物として銀塩化合物を用いることが好ましい。銀塩化合物としては、ヨウ化銀、塩化銀、臭化銀、酸化銀、硫化銀、クエン酸銀、酢酸銀、ベヘン酸銀、p−トルエンスルホン酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀、メルカプト類との銀塩、イミノジ酢酸類との銀錯体、等の公知の銀塩化合物を用いることができる。これらの中でハロゲンやカルボン酸や銀との配位性を有する窒素原子を有しない化合物を銀塩として用いるのが好ましく、例えば、p−トルエンスルホン酸銀が好ましい。
【0082】
本発明に係る電解質に含まれる銀イオン濃度は、0.2モル/kg≦[Ag]≦2.0モル/kgが好ましい。銀イオン濃度が0.2モル/kgより少ないと希薄な銀溶液となり駆動速度が遅延し、2モル/kgよりも大きいと溶解性が劣化し、低温保存時に析出が起きやすくなる傾向にあり不利である。
【0083】
本発明の表示素子においては、上記説明した構成要素の他、必要に応じて種々の構成層を設けることができる。
【0084】
〔金属酸化物を含む多孔質電極〕
また、本発明の表示素子においては、金属酸化物を含む多孔質電極を用いることもできる。
【0085】
本発明の表示素子で、対向電極のうち、画像観察側でない面の電極面を、金属酸化物を含む多孔質電極により保護することで、画像観察側でない面での金属塩化合物の酸化還元反応が、金属酸化物を含む多孔質電極上または多孔質電極中で行なわれことを見出したことにより、画像観察側でない電極の種類選択肢の拡大及び耐久性を向上させることができる。
【0086】
本発明に係る多孔質電極を構成する金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化スズ、Snドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛等、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0087】
多孔質電極は、上記金属酸化物の複数個の微粒子を結着または接触させることにより形成される。金属酸化物微粒子の平均粒子径は5nm〜10μmが好ましく、より好ましくは20nm〜1μmである。また、金属酸化物微粒子の比表面積は、簡易BET法で1×10-3〜1×1022/gであることが好ましく、より好ましくは1×10-2〜10m2/gである。また、金属酸化物微粒子の形状は、不定形、針状、球形等任意の形状のものが用いられる。
【0088】
金属酸化物微粒子の形成または結着法としては、公知のゾルゲル法や焼結法を採用することができ、例えば、1)Journal of the Ceramic Society of Japan,102,2,p200(1994)、2)窯業協会誌90,4,p157、3)J.of Non−Cryst.Solids,82,400(1986)等に記載の方法が挙げられる。また、気相法により作製した酸化チタンデンドリマー粒子を溶液上に分散して基体上に塗布し、120〜150℃程度の温度で乾燥して溶媒を除去して多孔質電極を得る方法を用いることもできる。金属酸化物微粒子は結着させた状態が好ましく、連続加重式表面性測定機(例えば、スクラッチ試験器)で0.1g以上、好ましくは1g以上の耐性を有する状態が好ましい。
【0089】
本発明でいう多孔質とは、多孔質電極を配置し、対向電極間に電位差を与え、銀の溶解析出反応を生じさせることが可能で、イオン種が多孔質電極内を移動可能な貫通状態を言う。
【0090】
〔電子絶縁層〕
本発明の表示素子においては、電気絶縁層を設けることができる。
【0091】
本発明に適用可能な電子絶縁層は、イオン電導性、電子絶縁性を合わせて有する層であればよく、例えば、極性基を有する高分子や塩をフィルム状にした固体電解質膜、電子絶縁性の高い多孔質膜とその空隙に電解質を担持する擬固体電解質膜、空隙を有する高分子多孔質膜、含ケイ素化合物のような比誘電率が低い無機材料の多孔質体、等が挙げられる。
【0092】
多孔質膜の形成方法としては、燒結法(融着法、高分子微粒子や無機粒子をバインダ等を添加して部分的に融着させ粒子間に生じた孔を利用する)、抽出法(溶剤に可溶な有機物または無機物類と溶剤に溶解しないバインダ等で構成層を形成した後に、溶剤で有機物または無機物類を溶解させ細孔を得る)、高分子重合体等を加熱や脱気する等して発泡させる発泡法、良溶媒と貧溶媒を操作して高分子類の混合物を相分離させる相転換法、各種放射線を輻射して細孔を形成させる放射線照射法等の公知の形成方法を用いることができる。具体的には、特開平10−30181号、特開2003−107626号、特公平7−95403号、特許第2635715号、同第2849523号、同第2987474号、同第3066426号、同第3464513号、同第3483644号、同第3535942号、同第3062203号等に記載の電子絶縁層を挙げることができる。
【0093】
〔電解質材料〕
本発明の表示素子において、電解質が液体である場合には、以下の化合物を電解質中に含むことができる。カリウム化合物としてKCl、KI、KBr等、リチウム化合物としてLiBF4、LiClO4、LiPF6、LiCF3SO3等、テトラアルキルアンモニウム化合物として過塩素酸テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、ホウフッ化テトラエチルアンモニウム、ホウフッ化テトラブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムハライド等が挙げられる。また、特開2003−187881号公報の段落番号〔0062〕〜〔0081〕に記載の溶融塩電解質組成物も好ましく用いることができる。さらに、I-/I3-、Br-/Br3-、キノン/ハイドロキノン等の酸化還元対になる化合物を用いることができる。
【0094】
また、支持電解質が固体である場合には、電子伝導性やイオン伝導性を示す以下の化合物を電解質中に含むことができる。
【0095】
パーフルオロスルフォン酸を含むフッ化ビニル系高分子、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、トリフェニルアミン類、ポリビニルカルバゾール類、ポリメチルフェニルシラン類、Cu2S、Ag2S、Cu2Se、AgCrSe2等のカルコゲニド、CaF2、PbF2、SrF2、LaF3、TlSn25、CeF3等の含F化合物、Li2SO4、Li4SiO4、Li3PO4等のLi塩、ZrO2、CaO、Cd23、HfO2、Y23、Nb25、WO3、Bi23、AgBr、AgI、CuCl、CuBr、CuBr、CuI、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl4、LiAlF4、AgSBr、C55NHAg56、Rb4Cu167Cl13、Rb3Cu7Cl10、LiN、Li5NI2、Li6NBr3等の化合物が挙げられる。
【0096】
また、支持電解質としてゲル状電解質を用いることもできる。電解質が非水系の場合、特開平11−185836号公報の段落番号〔0057〕〜〔0059〕に記載のオイルゲル化剤を用いことができる。
【0097】
〔電解質添加の増粘剤〕
本発明の表示素子においては、電解質に増粘剤を使用することができ、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アルキレングリコール)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類、疎水性透明バインダーとして、ポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸、ポリウレタン等が挙げられる。
【0098】
これらの増粘剤は2種以上を併用して用いてもよい。また、特開昭64−13546号公報の71〜75頁に記載の化合物を挙げることができる。これらの中で好ましく用いられる化合物は、各種添加剤との相溶性と白色粒子の分散安定性向上の観点から、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ヒドロキシプロピルセルロース類、ポリアルキレングリコール類である。
【0099】
〔その他の添加剤〕
本発明の表示素子の構成層には、保護層、フィルター層、ハレーション防止層、クロスオーバー光カット層、バッキング層等の補助層を挙げることができ、これらの補助層中には、各種の化学増感剤、貴金属増感剤、感光色素、強色増感剤、カプラー、高沸点溶剤、カブリ防止剤、安定剤、現像抑制剤、漂白促進剤、定着促進剤、混色防止剤、ホルマリンスカベンジャー、色調剤、硬膜剤、界面活性剤、増粘剤、可塑剤、スベリ剤、紫外線吸収剤、イラジエーション防止染料、フィルター光吸収染料、防ばい剤、ポリマーラテックス、重金属、帯電防止剤、マット剤等を、必要に応じて含有させることができる。
【0100】
上述したこれらの添加剤は、より詳しくは、リサーチ・ディスクロージャー(以下、RDと略す)第176巻Item/17643(1978年12月)、同184巻Item/18431(1979年8月)、同187巻Item/18716(1979年11月)及び同308巻Item/308119(1989年12月)に記載されている。
【0101】
これら三つのリサーチ・ディスクロージャーに示されている化合物種類と記載箇所を以下に掲載した。
【0102】
添加剤 RD17643 RD18716 RD308119
頁 分類 頁 分類 頁 分類
化学増感剤 23 III 648右上 96 III
増感色素 23 IV 648〜649 996〜8 IV
減感色素 23 IV 998 IV
染料 25〜26 VIII 649〜650 1003 VIII
現像促進剤 29 XXI 648右上
カブリ抑制剤・安定剤
24 IV 649右上 1006〜7 VI
増白剤 24 V 998 V
硬膜剤 26 X 651左 1004〜5 X
界面活性剤 26〜7 XI 650右 1005〜6 XI
帯電防止剤 27 XII 650右 1006〜7 XIII
可塑剤 27 XII 650右 1006 XII
スベリ剤 27 XII
マット剤 28 XVI 650右 1008〜9 XVI
バインダー 26 XXII 1003〜4 IX
支持体 28 XVII 1009 XVII
〔メタロセン化合物〕
本発明の電解質にはメタロセン誘導体を用いることができる。メタロセン誘導体としてはフェロセン誘導体を用いることが好ましい。フェロセン誘導体の例としては、フェロセン、メチルフェロセン、ジメチルフェロセン、エチルフェロセン、プロピルフェロセン、n−ブチルフェロセン、t−ブチルフェロセン、1,1−ジカルボキシフェロセン等が挙げられる。メタロセン化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種類以上を混合して用いることができる。
【0103】
〔フルカラー素子構成〕
本発明の表示素子の対向電極間の構成層について、さらに説明する。
【0104】
本発明の表示素子においては、対向電極の駆動操作により、実質的に黒表示、白表示及び黒以外の着色表示の3色以上の多色表示を行うことを特徴とする。
【0105】
また、黒以外の着色表示が、実質的に互いに異なる色相となる表示領域を平面配置することで、カラー表示と白黒表示とを行うことが好ましい。異なる色相となる表示領域を平面配置する方法としては、フォトリソグラフィーや、印刷、インクジェットにより異なる種類のエレクトロクロミック化合物を塗り分ける方法等が挙げられる。また、表示領域の間を隔壁で区切りることにより、塗り分けの位置精度を軽減させる方法を用いることもできる。
【0106】
〔基板〕
本発明で用いることのできる基板としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリカーボネート類、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンジナフタレンジカルボキシラート、ポリエチレンナフタレート類、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアセタール類、ポリスチレン等の合成プラスチックフィルムも好ましく使用できる。また、シンジオタクチック構造ポリスチレン類も好ましい。これらは、例えば、特開昭62−117708号、特開平1−46912、同1−178505号の各公報に記載されている方法により得ることができる。さらに、ステンレス等の金属製基盤や、バライタ紙、及びレジンコート紙等の紙支持体ならびに上記プラスチックフィルムに反射層を設けた支持体、特開昭62−253195号(29〜31頁)に支持体として記載されたものが挙げられる。RDNo.17643の28頁、同No.18716の647頁右欄から648頁左欄及び同No.307105の879頁に記載されたものも好ましく使用できる。これらの支持体には、米国特許第4,141,735号のようにTg以下の熱処理を施すことで、巻き癖をつきにくくしたものを用いることができる。また、これらの支持体表面を支持体と他の構成層との接着の向上を目的に表面処理を行ってもよい。本発明では、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理を表面処理として用いることができる。さらに公知技術第5号(1991年3月22日アズテック有限会社発行)の44〜149頁に記載の支持体を用いることもできる。さらにRDNo.308119の1009頁やプロダクト・ライセシング・インデックス、第92巻P108の「Supports」の項に記載されているものが挙げられる。その他に、ガラス基板や、ガラスを練りこんだエポキシ樹脂を用いることができる。
【0107】
〔電極〕
本発明の表示素子においては、対向電極の少なくとも1種が金属電極であることが好ましい。金属電極としては、例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、チタン、ビスマス、及びそれらの合金等の公知の金属種を用いることができる。金属電極は、電解質中の金属塩化合物に含まれる金属の酸化還元電位に近い仕事関数を有する金属が好ましく、中でも銀または銀含有率80%以上の銀電極が、銀の還元状態維持のために有利であり、また電極汚れ防止にも優れる。電極の作製方法は、蒸着法、印刷法、インクジェット法、スピンコート法、CVD法等の既存の方法を用いることができる。
【0108】
また、本発明の表示素子は、対向電極の少なくとも1種が透明電極であることが好ましい。透明電極としては、透明で電気を通じるものであれば特に制限はない。例えば、Indium Tin Oxide(ITO:インジウム錫酸化物)、Indium Zinc Oxide(IZO:インジウム亜鉛酸化物)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、白金、金、銀、ロジウム、銅、クロム、炭素、アルミニウム、シリコン、アモルファスシリコン、BSO(Bismuth Silicon Oxide)等が挙げられる。電極をこのように形成するには、例えば、基板上にITO膜をスパッタリング法等でマスク蒸着するか、ITO膜を全面形成した後、フォトリソグラフィ法でパターニングすればよい。表面抵抗値としては、100Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以下がより好ましい。透明電極の厚みは特に制限はないが、0.1〜20μmであるのが一般的である。
【0109】
〔表示素子のその他の構成要素〕
本発明の表示素子には、必要に応じて、シール剤、柱状構造物、スペーサー粒子を用いることができる。
【0110】
シール剤は電解質が外に漏れないように封入するためのものであり、封止剤とも呼ばれ、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エン−チオール系樹脂、シリコーン系樹脂、変性ポリマー樹脂等の、熱硬化型、光硬化型、湿気硬化型、嫌気硬化型等の硬化タイプを用いることができる。
【0111】
柱状構造物は、基板間の強い自己保持性(強度)を付与し、例えば、格子配列等の所定のパターンに一定の間隔で配列された、円柱状体、四角柱状体、楕円柱状体、台形柱状体等の柱状構造物を挙げることができる。また、所定間隔で配置されたストライプ状のものでもよい。この柱状構造物はランダムな配列ではなく、等間隔な配列、間隔が徐々に変化する配列、所定の配置パターンが一定の周期で繰り返される配列等、基板の間隔を適切に保持でき、且つ、画像表示を妨げないように考慮された配列であることが好ましい。柱状構造物は表示素子の表示領域に占める面積の割合が1〜40%であれば、表示素子として実用上十分な強度が得られる。
【0112】
一対の基板間には、該基板間のギャップを均一に保持するためのスペーサーが設けられていてもよい。このスペーサーとしては、樹脂製または無機酸化物製の球体を例示できる。また、表面に熱可塑性の樹脂がコーティングしてある固着スペーサーも好適に用いられる。基板間のギャップを均一に保持するために柱状構造物のみを設けてもよいが、スペーサー及び柱状構造物をいずれも設けてもよいし、柱状構造物に代えて、スペーサーのみをスペース保持部材として使用してもよい。スペーサーの直径は柱状構造物を形成する場合はその高さ以下、好ましくは当該高さに等しい。柱状構造物を形成しない場合はスペーサーの直径がセルギャップの厚みに相当する。
【0113】
〔スクリーン印刷〕
本発明においては、シール剤、柱状構造物、電極パターン等をスクリーン印刷法で形成することもできる。スクリーン印刷法は、所定のパターンが形成されたスクリーンを基板の電極面上に被せ、スクリーン上に印刷材料(柱状構造物形成のための組成物、例えば、光硬化性樹脂等)を載せる。そして、スキージを所定の圧力、角度、速度で移動させる。これによって、印刷材料がスクリーンのパターンを介して該基板上に転写される。次に、転写された材料を加熱硬化、乾燥させる。スクリーン印刷法で柱状構造物を形成する場合、樹脂材料は光硬化性樹脂に限られず、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂も使用できる。熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリビニールエーテル樹脂、ポリビニールケトン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニールピロリドン樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩素化ポリエーテル樹脂等が挙げられる。樹脂材料は樹脂を適当な溶剤に溶解する等してペースト状にして用いることが望ましい。
【0114】
以上のようにして柱状構造物等を基板上に形成した後は、所望によりスペーサーを少なくとも一方の基板上に付与し、一対の基板を電極形成面を対向させて重ね合わせ、空セルを形成する。重ね合わせた一対の基板を両側から加圧しながら加熱することにより、貼り合わせて、表示セルが得られる。表示素子とするには、基板間に電解質組成物を真空注入法等によって注入すればよい。あるいは、基板を貼り合わせる際に、一方の基板に電解質組成物を滴下しておき、基板の貼り合わせと同時に液晶組成物を封入するようにしてもよい。
【0115】
〔表示素子の駆動方法〕
本発明の表示素子においては、析出過電圧以上の電圧印加で金属塩化合物に含まれる金属の黒化金属を析出させ、析出過電圧以下の電圧印加で黒化金属の析出を継続させる駆動操作を行なうことが好ましい。この駆動操作を行なうことにより、書き込みエネルギーの低下や、駆動回路負荷の低減や、画面としての書き込み速度を向上させることができる。一般に電気化学分野の電極反応において過電圧が存在することは公知である。例えば、過電圧については「電子移動の化学−電気化学入門」(1996年 朝倉書店刊)の121ページに詳しい解説がある。本発明の表示素子も電極と電解質中の金属塩化合物に含まれる金属との電極反応と見なすことができるので、金属塩化合物に含まれる金属の溶解析出においても過電圧が存在することは容易に理解できる。過電圧の大きさは交換電流密度が支配するので、本発明のように黒化金属が生成した後に析出過電圧以下の電圧印加で黒化金属の析出を継続できるということは、黒化金属表面の方が余分な電気エネルギーが少なく容易に電子注入が行なえると推定される。
【0116】
本発明の表示素子の駆動操作は、単純マトリックス駆動であっても、アクティブマトリック駆動であってもよい。本発明でいう単純マトリックス駆動とは、複数の正極を含む正極ラインと複数の負極を含む負極ラインとが対向する形で互いのラインが垂直方向に交差した回路に、順次電流を印加する駆動方法のことを言う。単純マトリックス駆動を用いることにより、回路構成や駆動ICを簡略化でき安価に製造できるメリットがある。アクティブマトリックス駆動は、走査線、データライン、電流供給ラインが碁盤目状に形成され、各碁盤目に設けられたTFT回路により駆動させる方式である。画素毎にスイッチングが行えるので、階調やメモリー機能等のメリットがあり、例えば、特開2004−29327号の図5に記載されている回路を用いることができる。
【0117】
本発明の表示素子の1対の対向電極間で複数色を表示させる駆動方法としては、1)各酸化還元化合物間で、酸化時及び還元時の過電圧を変えて、過電圧の上下間をまたぐように電圧の大きさの操作を行う方法、2)各酸化還元化合物の酸化還元速度を変えて、電圧印加時間の操作を行う方法、3)対向電極間の表示部を除く回路部分の抵抗値操作を行い、例えば、着色状態から両極短絡で消色する特性、消色しない特性との区別を利用して操作を行う方法、等が挙げられる。
【0118】
本発明の表示素子の駆動方法においては、エレクトクロミック色素の着色過電圧(VECW)及び消色過電圧(VECE)、金属塩化合物に含まれる金属の析出過電圧(VMW)及び溶解過電圧(VME)が、下記関係式(X)で規定する全てを満たす条件で駆動することが好ましい。
【0119】
関係式(X)
VECWの絶対値>VECEの絶対値
VECWの絶対値>VMEの絶対値
VMWの絶対値>VECEの絶対値
VMWの絶対値>VMEの絶対値
本発明の表示素子は、観察側電極がアノードとして作用する場合にカラー着色状態、カソードとして作用する場合に黒色状態、その中間状態が白色表示を示す。カラー着色状態から白表示、黒色状態から白表示に戻すには、カラー、黒のそれぞれの着色度合いに応じた量の消色操作を行うことで可能である。
【0120】
その際に、それぞれの着色度合いの情報を表示素子とし保持しておく必要があり、本発明の表示素子の駆動方法では、白表示駆動操作時の対向電極間の電圧(VW)を、下記関係式(Y)で規定する全ての条件を満たす条件で駆動させることが好ましい。
【0121】
関係式(Y)
VECWの絶対値>VW>VECEの絶対値
VECWの絶対値>VW>VMEの絶対値
VMWの絶対値>VW>VECEの絶対値
VMWの絶対値>VW>VMEの絶対値
関係式(Y)において、VECW、VECE、VME、VMWは、前記関係式(X)のそれぞれと同義である。
【0122】
本発明の表示素子の駆動方法として、上記関係式(Y)で規定する全ての条件を満たすように駆動すれば、着色度合いの情報を保持しておく必要がなく、どのような着色状態でも、一義的に表示素子を白表示に戻すことが可能で有利である。
【0123】
〔商品適用〕
本発明の表示素子は、電子書籍分野、IDカード関連分野、公共関連分野、交通関連分野、放送関連分野、決済関連分野、流通物流関連分野等の用いることができる。具体的には、ドア用のキー、学生証、社員証、各種会員カード、コンビニストアー用カード、デパート用カード、自動販売機用カード、ガソリンステーション用カード、地下鉄や鉄道用のカード、バスカード、キャッシュカード、クレジットカード、ハイウェーカード、運転免許証、病院の診察カード、電子カルテ、健康保険証、住民基本台帳、パスポート、電子ブック等が挙げられる。
【実施例】
【0124】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0125】
実施例1
(電極11の作製)
厚さ1.5mmで2cm×4cmのガラス基板上に、ピッチ145μm、電極幅130μmのITO(Indium Tin Oxide、インジウム錫酸化物)膜を公知の方法に従って形成して、透明電極を得た。
【0126】
次いでカルバゾール(5mM)と過塩素酸テトラブチルアンモニウム(0.1M)を溶解したジクロロメタン溶液を電解液とし、上記透明電極を動作電極として定電位電解重合を行った。
【0127】
電解重合条件は、重合電位1.2V(飽和カロメル参照電極に対する電位で示される)、重合温度10℃、通電電気量70mC/cm2とした。この操作により、過塩素酸イオン(ClO4-)でドーピングされたポリピロールフイルムが形成された透明電極を得た。これを電解液から取り出し、ジクロロメタンで洗浄、乾燥し電極11とした。
【0128】
(電極12の作製)
厚さ1.5mmで2cm×4cmのガラス基板上に、公知の方法を用いて、電極厚み0.8μm、ピッチ145μm、電極間隔130μmの銀−パラジウム電極を形成し、これを電極12とした。
【0129】
(電極13の作製)
周辺部を、平均粒子径が40μmのガラス製球形ビーズを体積分率として10%含むオレフィン系封止剤で縁取りした電極12の上に、ポリビニルアルコール(平均重合度3500、けん化度87%)2質量%を含むイソプロパノール溶液中に、酸化チタン20質量%を超音波分散機で分散した混和液を100μm塗布し、その後15℃で30分間乾燥して溶媒を蒸発した後、45℃の雰囲気中で1時間乾燥して、電極13を得た。
【0130】
(電解液1の作製)
ジメチルスルホキシド2.5g中に、ヨウ化銀0.1g、ヨウ化ナトリウム0.15g、ポリエチレングリコール(平均分子量50万)0.05gを溶解し、電解液1を得た。
【0131】
(表示素子1の作製)
電極11と電極13を、それぞれストライプ状の電極が直交するようにして貼り合わせた後、加熱押圧して空セルを作製した。該空セルに電解液1を真空注入し、注入口をエポキシ系の紫外線硬化樹脂にて封止し、表示素子1を作製した。
【0132】
(表示素子1の評価)
定電圧電源の両端子に表示素子1の両電極を接続し、±1.5Vの印加を与え、表示素子の着色状況を観察し、コニカミノルタセンシング社製の分光測色計CM−3700dのD65光源における反射率を測定した。
【0133】
表示素子1は、透明電極側を−1.5Vとすることで銀の還元状態に由来する黒表示となり、次いで電圧無印加時には脱ドープされたポリカルバゾールと銀の酸化状態により、実質白色表示と言える状態となり、さらに+1.5V印加時にポリカルバゾールのドープ状態に由来する緑色表示となり、3色の多色表示が行えることが分った。
【0134】
実施例2
(電極21の作製)
実施例1と同様にして作製した電極11に対し、マスクを介してカルバゾール膜上に20nmの厚みでアルミニウムを蒸着した。アルミ蒸着した電極を25℃、湿度50%の雰囲気下で24時間放置することにより、金属アルミニウムとポリカルバゾールの間でガルバニ腐食反応が進行し、透明なハイブリッド材料となり、透明電極21が得られた。
【0135】
(表示素子2の作製、評価)
電極11の代わりに、電極21を用いた以外は実施例1と同様にして、表示素子2を作製した。
【0136】
表示素子2について、表示素子1と同様の評価を行なった結果、電圧無印加時は白色表示、+1.5V印加時に緑色表示、−1.5V印加字に黒色表示となり、1対向電極間の1種の電解質で3色の多色表示が行えることが分った。
【0137】
実施例3
(電極31の作製)
実施例1と同様にしてITO電極を作製し、次いで、ジ(4−ビフェニル)エ−テル(5mM)とテトラフルオロホウ酸テトラ−n−ブチルアンモニウム(0.1M)を溶解したニトロベンゼン溶液を電解液とし、上記透明電極を動作電極として定電位電解重合を行った。この操作により、テトラフルオロホウ酸イオン(BF4-)でドーピングされたフイルムが形成された透明電極を得た。これを電解液から取り出し、ジクロロメタンで洗浄、乾燥し電極31とした。
【0138】
(表示素子3の作製、評価)
電極11の代わりに、電極31を用いた以外は実施例1と同様にして、表示素子3を作製した。
【0139】
表示素子3について、表示素子1と同様の評価を行なった結果、表示素子3は、透明電極側を−1.5Vとすることで銀の還元状態に由来する黒表示となり、次いで電圧無印加時には脱ドープされたポリマーと銀の酸化状態により、実質白色表示と言える状態となり、さらに+1.5V印加時にポリマーのドープ状態に由来する緑色表示となり、3色の多色表示が行えることが分った。
【0140】
実施例4
(電極4の作製)
実施例3と同様にして作製した電極31に対して、実施例2と同様な処理を行うことで、透明電極41を得た。
【0141】
(表示素子4の作製、評価)
電極11の代わりに、電極41を用いた以外は実施例1と同様にして、表示素子4を作製した。
【0142】
表示素子4について、表示素子1と同様の評価を行なった結果、電圧無印加時は白色表示、+1.5V印加時に緑色表示、−1.5V印加字に黒色表示となり、1対向電極間の1種の電解質で3色の多色表示が行えることが分った。
【0143】
実施例5
(表示素子5の作製、評価)
表示素子4のヨウ化銀を等モルの塩化ビスマスに変更した以外は表示素子4と同様にして表示素子5を作製した。
【0144】
表示素子5について、表示素子1と同様の評価を行なった結果、電圧無印加時は白色表示、+1.5V印加時に緑色表示、−1.5V印加字にビスマス由来の黒色表示となり、1対向電極間の1種の電解質で3色の多色表示が行えることが分った。
【0145】
実施例6
(表示素子6の作製、評価)
厚さ1.5mmで2cm×4cmのガラス基板上に、ピッチ145μm、電極幅130μmのITO(Indium Tin Oxide、インジウム錫酸化物)膜を公知の方法に従って形成して、さらに、ITO膜が形成されているストライブ上に、ピッチ145μm、120μm角の窓を開けた隔壁をフォトリソグラフ法で形成した。
【0146】
各窓に対して、実施例1に記載の定電位電解重合法を用いて、ドーピングされたポリピロールをITO上に形成した部位、特開平7−133317号の実施例1に記載の側鎖にポリフェニレン基を有する導電性ポリマーをITO上に形成した部位、ドーピングされたポリアニリンをITO上に形成した部位を形成して、導電性ポリマー材料がパターン化された電極61を作製した。
【0147】
実施例1の電極11をこの電極61に変更した以外は実施例1と同様にして表示素子6を作製した。
【0148】
表示素子6を、各画素の印加電圧、印加時間を変化させた単純マトリックス駆動を行い、色調を観察したところ、白、黒、イエロー、マゼンタ、シアン、ブルー、グリーン、レッドの各色が表示でき、本発明の表示素子でフルカラー表示が行えることを確認した。
【0149】
比較例1
(表示素子7の作製、評価)
電解液1の組成からヨウ化銀を除いた以外は、実施例2と同様にして表示素子7を作製した。
【0150】
表示素子7について、表示素子1と同様の評価を行なった結果、電圧無印加時は白色表示、+1.5V印加時に緑色表示を示したが、−1.5Vに印加しても黒表示は得られず、3色の多色表示はできなかった。
【0151】
〔初期発色試験〕
定電圧電源の両端子に表示素子の両電極を接続し、±1.5Vの印加を与え、表示素子の発色状況を観察し、コニカミノルタセンシング社製の分光測色計CM−3700dのD65光源における反射率を測定し、着色状態の最大吸収波長における反射率と、白表示状態との該波長における反射率との比(コントラスト)が2となるような電圧印加時間(駆動条件1)を求めた。この条件で表示素子の発色状況を観察し、下記基準で評価した。
【0152】
◎:+1.5Vの印加で均一に緑発色し、無印加で実質無色となっている
○:若干の濃度ムラが認められるが、許容できるレベル
△:無印加時の着色及び+1.5Vの印加での濃度低下が大きい
×:発色がほとんど認められない
〔耐久性試験1〕
駆動条件1で、表示電極と対向電極の間に、−1.5Vと+1.5Vを交互に1000回繰り返し印加して、コントラストの変化状況を求め、繰り返し耐久性を上記初期発色試験と同じ基準で評価した。
【0153】
〔耐久性試験2〕
表示素子を65℃、50%RH、2週間放置した後、再び駆動条件1で駆動し、放置前とのコントラストの変化状況を求め、経時での耐久性を上記初期発色試験と同じ基準で評価した。
【0154】
評価の結果を表1に示す。
【0155】
【表1】

【0156】
表から明らかなように、本発明の表示素子1〜6は耐久試験1、2共に良好な結果を示している。特に繰り返し耐久性の点でアルミニウムとの複合材料である表示素子2、4が優れた耐久性を示していた。これに対して比較の表示素子7は、経時耐久性の点で著しく劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向電極間に、電解質、導電性ポリマー材料、金属塩化合物及び白色散乱物を含有し、対向電極の駆動操作により、前記導電性ポリマー材料のエレクトロクロミック反応による色変化、及び、前記対向電極の少なくとも1方への前記金属塩化合物が含有する金属元素の還元析出及び酸化溶解による色変化を用いて、黒表示、白表示及び黒以外の着色表示により3色以上の多色表示を行うことを特徴とする表示素子。
【請求項2】
前記導電性ポリマー材料が、ポリカルバゾール誘導体、ポリフェニレンオキサイド誘導体またはポリアニリン誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の表示素子。
【請求項3】
前記導電性ポリマー材料が、金属−カチオンラジカル及びジカチオン−吸着水の三者の間の化学反応により、金属が酸化された状態でポリマー鎖間に埋め込まれた複合材料であり、かつ前記金属の仕事関数が導電性ポリマーの仕事関数よりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載の表示素子。
【請求項4】
前記複合材料の金属が、アルミニウム、チタン、インジウム、カドミウム、マンガン、鉄、銅、銀、スズ、アンチモン、鉛、ナトリウムまたはカルシウムから選ばれた一種であることを特徴とする請求項3に記載の表示素子。
【請求項5】
前記金属塩化合物が、銀塩化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の表示素子。
【請求項6】
黒以外の着色表示領域を、互いに異なる色相となるように平面配置することで、カラー表示と白黒表示を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の表示素子。

【公開番号】特開2009−63707(P2009−63707A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−229941(P2007−229941)
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】