説明

表示装置および表示装置を有する電子機器、表示装置の製造方法

【課題】タッチパネルの強度の向上を図ることができ、かつ表示装置の薄型化を図ることができる表示装置および表示装置を有する電子機器を提供すること。
【解決手段】画像を表示するための表示装置14であり、画像を表示する液晶表示パネル60と、液晶表示パネル60に対して間隔80を設けて配置されて使用者が触れて指令を入力するためのタッチパネル64と、液晶表示パネル60とタッチパネル64の間に設けられている間隔80の領域内に充填されてタッチパネル64を通じて加わる力を緩衝するための樹脂充填材90とを備え、樹脂充填材90は重合性樹脂組成物からなり、樹脂充填材90の波長430nm〜700nmの範囲における光透過率が、樹脂充填材90の膜厚が500μmとした場合に95%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を表示するための表示装置および表示装置を有する電子機器、表示装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネルは、文字情報や静止画や動画等を表示するために用いられている。この液晶表示パネルの表面には、使用者がたとえば指で触れて入力をできるようにするためのタッチパネルが設けられたものがある。図9(A)、(B)はそのようなタイプの液晶表示パネルの一例の概略構成を示すもので、(A)は分解斜視図、(B)は断面図である。
【0003】
同図において、202はLCD(液晶デバイス)フレーム、204は該LCDフレーム202上に配置されるLCD(液晶デバイス)、206は次に述べるタッチパネル(208)を該LCD204の上方にて稍離間(例えば0.1mm〜1.2mm)して位置した状態で保持するLCDフレーム、208は該LCDフレーム206により上記LCD204の上方にそれと例えば0.1mm〜1.2mm程度の間隔を置いて配置されたタッチパネル、210はそのLCD204とタッチパネル208との間に設けられた空間である。図10はそのタッチパネル208と、LCD204と、その間の空間210とをより詳しく示す断面図である。
【0004】
ところで、上記LCD204とタッチパネル208との間に上記空間210を設けるのは、第1に、ユーザーが入力のためにタッチパネル208に加えた圧力によりLCD204に滲みが生じないようにするためである。
即ち、LCD204とタッチパネル208とをその間に空間210を設けることなく直接接触させる構造だと、図9(B)に示すように入力用ペンPを用いてタッチパネル208を加圧すると、その圧力がもろにLCD204に加わる。すると、LCD208内の液晶が圧力を受けて加圧点からそのまわりに逃げ、それが強い滲みとなって現れるという現象が生じるのである。
【0005】
そこで、空間210を設けると、入力用ペンPを用いてタッチパネル208を加圧したときにLCD208に加わる圧力を顕著に軽減することができ、延いては滲みを軽減することができる。これが空間210を設ける第1の理由なのである。
【0006】
空間210を設ける第2の理由は、タッチパネル208とLCD204との界面にニュートンリング(モアレ縞)が生じないようにするためである。即ち、タッチパネル208とLCD204を直接接しさせることは、図10に示すタッチパネル208のガラス板208gとLCDのガラス板208gが直接接触させることに他ならない。そして、ガラス板208gとLCDのガラス板208gは共に表面がより平面度の高い平面になるように仕上げられているとはいえ、完全な平面ではないので、その界面に微小とはいえ、空気の入った空間がランダムに散在し、その結果、ニュートンリングが生じてしまうのである。
これは表示部から視えるので、表示画像の品位を低下させ、当然のことながら好ましくない。そこで、その間に完全に空間210を介在させるのである。すると、ニュートンリングは生じない。
【0007】
尚、このような問題は、タッチパネル208のガラス板208gとLCDのガラス板208gを一つのガラス板で兼用することができれば、空間210を設けるという手段を講じことなく解決する筈である。しかし、それには、タッチパネル208とLCD204を一体に形成することが必要であり、それは、少なくとも現時点では事実上不可能なのである。というのは、LCD204をつくる工程と、タッチパネル208をつくる工程とは、製造条件、特に温度条件が顕著に異なり、一体化してつくることが難しい乃至不可能であるからである。
従って、少なくとも現在の技術では、タッチパネル208のガラス板208gとLCDのガラス板204gを一つのガラス板で兼用することは不可能であり、従って、その間に空間210を設けることが必要なのである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、このように、タッチパネル208とLCD204との間にエアーのギャップ210を設けると、タッチパネル208・LCD204間にエアーのギャップ210が存在することから、タッチパネル208を強く、激しく押した場合には、タッチパネルに割れが生じ易くなり、故障する虞れがある。
【0009】
また、タッチパネル208とLCD204との間にエアーのギャップ210を設けると、タッチパネル208・LCD204の界面での無視できない光の反射が生じ、視認性が悪くなるという問題もある。というのは、タッチパネル208のガラス板とエアーとの屈折率の差が大きいので、タッチパネル208の下部を成すガラス板208g、LCD204の上部を成すガラス板204gと、エアーとの屈折率の差が大きく、ガラス板208gとエアーとの界面、ガラス板204gとエアーとの界面にて反射が生じるからである。
【0010】
そこで本発明は、上記課題を解消し、タッチパネルの強度の向上を図ることができ、かつ表示装置の薄型化を図ることができ、更には、タッチパネルと液晶表示パネルとの間における光の反射を低減することができる表示装置および表示装置を有する電子機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の表示装置は、画像を表示するための表示装置であり、画像を表示する液晶表示パネルと、液晶表示パネルに対して間隔を設けて配置されて使用者が触れて指令を入力するためのタッチパネルとを備える。そして、液晶表示パネルとタッチパネルの間に設けられている間隔の領域内に設けられ、タッチパネルを通じて加わる力を緩衝するとともに、タッチパネルを介して重合性樹脂組成物に紫外線を照射して硬化させた透明樹脂充填材を備える。
また、重合性樹脂組成物は、樹脂成分としてポリブタジエン系(メタ)アクリレートを含有する。そして、光開始剤として、可視光を吸収する開始剤を含有するとともに、紫外線を照射して硬化させた透明樹脂充填材が、透明樹脂充填材の膜厚を500μmとした場合に、波長430nm〜700nmの範囲における光透過率が95%以上である。
【0012】
本発明の表示装置の製造方法は、液晶表示パネルの一方側と他方側とを、第1保持フレーム及び第2保持フレームに挟み込む工程とを有する。また、液晶表示パネルの表示パネルから間隔を設けて、タッチパネルを第1保持フレームに固定する工程と、表示パネルとタッチパネルとの間隔に、液状の重合性樹脂組成物を充填する工程とを有する。さらに、重合性樹脂組成物にタッチパネルを介して紫外線を照射し、重合性樹脂組成物を硬化させて樹脂充填剤を形成する工程とを有する。
【0013】
また、本発明の表示装置の製造方法は、画像を表示する液晶表示パネルの表示パネル側と、前記液晶表示パネルと対向するタッチパネルの一方面との間に重合性樹脂組成物を介在させて、前記液晶表示パネルと前記タッチパネルを組み合わせる工程と、表示パネルとタッチパネルとの間隔に、樹脂成分としてポリブタジエン系(メタ)アクリレート、又は、イソプレン系(メタ)アクリレートのいずれかを含有する液状の重合性樹脂組成物を充填する工程と、前記重合性樹脂組成物に前記タッチパネルを介して紫外線を照射し、前記重合性樹脂組成物を硬化させる工程とを有する。
【0014】
本発明の表示装置及び本発明の製造方法に係る表示装置では、液晶表示パネルは画像を表示する。タッチパネルは、液晶表示パネルに対して間隔を設けて配置されており、使用者が触れて指令を入力するためのものである。
該透明樹脂充填材は、液晶表示パネルとタッチパネルの間に設けられている間隔の領域内に設けられる。この樹脂充填材は、基本的には、タッチパネルを通じて液晶表示パネル側に加わる力を緩衝するためのものである。
【0015】
該樹脂充填材は液晶表示パネルの画像表示のにじみを起こさずに光透過率を落とすことなく、タッチパネルの割れを防いでタッチパネルの強度を向上することができるといえる。また、液晶表示パネルとタッチパネルの間の間隔は僅かで済むので、表示装置の薄型化にも有効である。更に、樹脂充填材は、液晶表示パネルとタッチパネルの間にでの光の反射による視認性の低下を低減する役割を果たす。というのは、樹脂充填材は一般にその屈折率がエアーとガラスの屈折率の中間の値を持つので、エアーを介在させず、液晶表示パネルやタッチパネルを成すガラス板と樹脂充填材を直接接するようにした場合の方が従来におけるようにガラス板間にエアーが介在する場合よりもパネル間での光反射をより小さくでき、延いては視認性の低下を軽減することができる。
【0016】
また、本発明の表示装置によれば、樹脂充填材の波長430nm乃至700nmの範囲では光透過率が、樹脂充填材の膜厚が500μmとした場合には95%以上であるので、樹脂充填材は液晶表示パネルの画像表示のにじみを起こさずに光透過率を落とすことなく、タッチパネルの割れを防いでタッチパネルの強度を向上することができる。また、液晶表示パネルとタッチパネルの間の間隔は僅かで済むので、表示装置の薄型化にも有効である。
【0017】
本発明の電子機器は、画像を表示するための表示装置を有する電子機器である。表示装置は、画像を表示する液晶表示パネルと、液晶表示パネルに対して間隔を設けて配置されて使用者が触れて指令を入力するためのタッチパネルとを備える。そして、液晶表示パネルとタッチパネルの間に設けられている間隔の領域内に設けられ、タッチパネルを通じて加わる力を緩衝するとともに、タッチパネルを介して重合性樹脂組成物に紫外線を照射して硬化させた透明樹脂充填材を備える。
また、重合性樹脂組成物は、樹脂成分としてポリブタジエン系(メタ)アクリレートを含有する。そして、光開始剤として、可視光を吸収する開始剤を含有するとともに、紫外線を照射して硬化させた透明樹脂充填材が、透明樹脂充填材の膜厚を500μmとした場合に、波長430nm〜700nmの範囲における光透過率が95%以上に調製されている。
【0018】
本発明の電子機器では、液晶表示パネルは画像を表示する。タッチパネルは、液晶表示パネルに対して間隔を設けて配置されており、使用者が触れて指令を入力するためのものである。
樹脂充填材は、液晶表示パネルとタッチパネルの間に設けられている間隔の領域内に充填される。この樹脂充填材は、タッチパネルを通じて液晶表示パネル側に加わる力を緩衝するためのものである。
【0019】
また、請求項2では、この樹脂充填材は重合性樹脂組成物からなり、前記樹脂充填材の波長430nm〜700nmの範囲における光透過率が、前記樹脂充填材の膜厚が500μmとした場合に95%以上である。
これにより、樹脂充填材の波長430nm乃至700nmの範囲では光透過率は、樹脂充填材の膜厚が500μmとした場合には95%以上であるので、樹脂充填材は液晶表示パネルの画像表示のにじみを起こさずに光透過率を落とすことなく、タッチパネルの割れを防いでタッチパネルの強度を向上することができる。また、液晶表示パネルとタッチパネルの間の間隔は僅かで済むので、表示装置の薄型化にも有功である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、透明性を確保しながらタッチパネルの強度の向上を図ることができ、かつ表示装置の薄型化を図ることができ、更には、タッチパネルと液晶表示パネルとの間における光の反射を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0022】
図1は、本発明の表示装置の第1の実施の形態を有する電子機器の好ましい第1の実施の形態を示している。
図1に示す電子機器10は、一例としていわゆる携帯情報端末(PDA)である。この電子機器10は、筐体12と表示装置14を有している。
図2は、図1の電子機器10をさらに詳しく示している。
図1の電子機器10は、筐体12、表示装置14、入力装置20、およびパワーキー22、音声のボリューム調整部24、外部のイヤーホンをつなぐためのジャック27、他の機能を発揮させるためのキー26,28等を有している。
【0023】
図1の入力装置20は、操作者(使用者)の部位、たとえば手Hの指Fにより操作することでポインタPの座標データを与えるためのものである。指Fは図1の例では人差指を用いているが、これに限らず他の指であっても勿論構わない。
図2では、図1の表示画面30に表示した情報40の一例を表示している。図1と図2に示すように表示画面30にはポインタPを表示している。このポインタPは矢印形のポインタである。
図2に示すように表示装置14の表示画面30には、ポインタPの他に、情報40や、各種機能を実施するためのキー44,46,48等が表示されている。キー42はキーボードを表示画面30に表示させるためのキーである。キー44は情報の検索に用いるキーである。キー46はメニューを表示画面30に表示するためのキーである。キー48はたとえば表示を英語表示か日本語表示に切り換えることができるキーである。これらのキー42,44,46,48の操作は指Fでタッチすることで行える。
【0024】
図2の筐体12は、第1部分12Aと第2部分12Bを有している。第1部分12Aは上筐体部分とも呼び、第2部分12Bは下筐体部分とも呼ぶ。第1部分12Aと第2部分12Bは重ねることにより、その中に空間を形成している。この空間には表示装置14や回路基板等が収容されている。
筐体12は、たとえばプラスチックであるABS(アクルロニトリルブタジエンスチレン)、PC(ポリカーボネート)、PC+ABS(ポリカーボネート+アクリロニトリルブタジエンスチレン)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、変性PPE(ポリフェチレンエーテル)等により作られている。
【0025】
図3は、図1と図2に示す筐体12の中に収容されている表示装置14の構造例を示している。
表示装置14は、液晶表示装置とも呼んでおり、概略的には液晶表示パネル60、第1保持フレーム61、第2保持フレーム62、バックライトユニット63およびタッチパネル64を有している。
液晶表示パネル60は、たとえば液晶層の前後を配向膜および透明電極膜で挟み、さらに透明板および偏光板を積層した一般的な構造のものであり、各種の形式のものを採用できる。この液晶表示パネル60とバックライトユニット63は、駆動回路等が実装された基板(図示せず)に対して電気的に接続されている。
第1保持フレーム61と第2保持フレーム62は、液晶表示パネル60を一方側と他方側から挟み込む状態で保持するためのフレームである。第1保持フレーム61と第2保持フレーム62は、プラスチックや金属で作られており、たとえばステンレスや鉄等のプレス加工品である。
【0026】
図4は、液晶表示装置14を含む筐体12の断面図であり、液晶表示パネル60は、上述した第1保持フレーム61と第2保持フレーム62により挟まれて保持されている。
図3に示すように、第1保持フレーム61はたとえば長方形の開口部70を有している。この開口部70は、液晶表示パネル60の表示面積に対応する大きさを有している。
【0027】
第2保持フレーム62は、液晶表示パネル60と同じような大きさの開口部71を有している。従って液晶表示パネル60は、バックライトユニット63に対して接している。
第1保持フレーム61の複数個の凹部73に対して、第2保持フレーム62の複数個の突起74をはめ込むことにより、第1保持フレーム61と第2保持フレーム62は、液晶表示パネル60を挟み込んだ形で保持することができる。
【0028】
バックライトユニット63は、たとえば蛍光管の光源を有しており、この光源からの光を樹脂製等の導光板によって液晶表示パネル60の背面側に導く。この導かれた光は、拡散シートによって拡散してプリズムシートを透過させて、液晶表示パネル60の背面側から光を照射するものである。このようなバックライトユニット63を用いることにより、使用者は液晶表示パネル60に表示している画像表示をより鮮明に見ることができる。
【0029】
図3のタッチパネル64は、たとえばガラスの板やポリエステルフィルムなどの貼りあわせにて作られている。このタッチパネル64は液晶表示パネル60の表示画面30に対応した長方形状を有している。図5に示すようにタッチパネル64と表示画面30の間には、間隔が設けられている。
【0030】
図5は、図4の部分Aを拡大して示している。
図5に示す部分Aは、タッチパネル64と液晶表示パネル60の一部を示しており、タッチパネル64と液晶表示パネル60の表示パネル30の間には、間隔80が設けられている。この間隔80は、たとえば0.8mmであるが、これよりも小さくても勿論構わない。間隔80は、外枠材である図4の第1保持フレーム61により設けられている。つまり、タッチパネル64は第1保持フレーム61に固定されていて、タッチパネル64の内面と液晶表示パネル60の表示画面30の間に間隔80が形成されている。
【0031】
この間隔80の空間領域内には、図4と図5に示すように樹脂充填材90が充填されている。この樹脂充填材90は、光硬化性接着剤ともいい、たとえば可視光硬化性透明接着剤を用いることができる。
この樹脂充填材90としては、たとえばソニーケミカル株式会社製のSOA1000シリーズのものを採用できる。この樹脂充填材90は、間隔80がエアギャップである時にこの間隔80に対して充填される光硬化性樹脂である。すなわち樹脂充填材90は、外枠材である図3に示す第1保持フレーム61と第2保持フレーム62により間隔80が設定されたタッチパネル64と液晶表示パネル60の表示画面30の間に充填される充填材であり、タッチパネル64のタッチ面64Tに加わるたとえば指Fの力を緩衝する作用を有している。
この樹脂充填材90は重合性樹脂組成物からなり、図6に示すように樹脂充填材90の波長430nm〜700nmの範囲における光透過率が、樹脂充填材90の膜厚が500μmとした場合に95%以上である。
【0032】
この重合性樹脂組成物は、樹脂成分として、ポリブタジエン系(メタ)アクリレート、およびイソプレン系(メタ)アクリレートと、光開始剤とを含有する。
この樹脂成分は、ウレタン系(メタ)アクリレート、ポリブタジエン系(メタ)アクリレート、およびイソプレン系(メタ)アクリレートを含有する。
光開始剤は、可視領域に吸収のある光開始剤を含む。
光開始剤は、たとえばフォスフィンオキサイド系開始剤である。このフォスフィンオキサイド系開始剤は、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、またはビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドである。
また、光開始剤は、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1であってもよい。
【0033】
上述した樹脂充填材90は、緩衝充填材あるいは樹脂緩衝材とも呼んでいる。樹脂充填材は、視認性の観点から高い透明性を有することと、落下や押圧に対する衝撃を緩和する観点から柔軟性を有することと、および離間された領域内に充填するために製造時には液状であることが必要であり、これら多数の要求を満たすには、要求特性に合わせて配合処方が可能となる、モノマー、オリゴマーを含む樹脂成分と光開始剤を含む重合性樹脂組成物が好ましい。
【0034】
重合性樹脂組成物の樹脂成分は、具体例を挙げると、高い透明性を維持する観点から、脂環構造を有し、柔軟性を付与する観点からゴム成分を有する(メタ)アクリレートが挙げられ、これらの中でも比較的高い透明性と柔軟性を併せ持つ、ポリブタジエン骨格をもつポリブタジエン系(メタ)アクリレート、およびイソプレン骨格を持つイソプレン系(メタ)アクリレートを好ましく挙げることができる。
【0035】
光開始剤は、本発明に係る表示装置14の製造工程を考慮して選択することができる。
すなわち、樹脂緩衝材の母材であるアクリレート等に紫外線等を照射して重合が開始された後、速やかにタッチパネル64を外枠材に載置することが可能である場合には、特に、光開始剤は制限なく使用することができる。
但しこのような方法は、オペレータに熟練を要するため、タッチパネル64を外枠材に載置した後にタッチパネルを介して紫外線等を照射することが製造工程が安定になる。
この場合、タッチパネル64自身は不透明ではないものの、ある程度の厚みを有するため、紫外線等の光強度を高めないと重合率が十分でない場合がある。
【0036】
そこで、本発明においては、可視領域に吸収があり可視領域波長で重合が開始する、いわゆる可視光開始剤を好ましく使用することができる。この可視光開始剤の具体例を挙げると、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のフォスフィンオキサイド系光開始剤、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1等が挙げられる。
【0037】
次に、上記の重合性樹脂組成物からなる樹脂緩衝材90は、波長430nm〜700nmにおける光透過率が、樹脂緩衝材90の膜厚を500μmとした場合に、95%以上となるように配合する。
このように樹脂緩衝材90の波長が430nm乃至700nmにおける光透過率が、樹脂緩衝材90の膜厚を500μmとした場合に95%以上になるようにすると、液晶表示パネルにおける画像表示のにじみが起こらず、光透過率を落とさずに、タッチパネル64の割れを防いでタッチパネルの強度アップを図ることができる。しかもこの隙間80の大きさはたとえば0.8mmあるいはそれよりも小さくすることができるので、表示装置14自体の薄型化にも貢献できる。
樹脂緩衝材90は、図5に示す間隔80に充填し、タッチパネル64のR側からたとえば紫外線を照射することで硬化させる。
【0038】
本発明者の実験結果では、従来のエアギャップの間隔を有している表示装置と、本発明の実施の形態のように間隔80に樹脂充填材90が充填された表示装置について、タッチパネルの静荷重での強度比較をしたところ、約2倍の効果が得られた。そして光透過率について従来の表示装置と本発明の実施の形態の表示装置とを比較した場合でも、両者には全く差が見られなかった。
【0039】
液晶表示パネル60の表示画面30における画像表示のにじみについても、樹脂充填材90が存在していてもこのにじみが発生しないことが確認できた。
タッチパネル64が割れるのには、ある一定以上タッチパネル64に対して変異が生じる場合であるが、光硬化性樹脂である樹脂充填材90の存在により、タッチパネル64のR方向からの押圧時の強度をアップさせることができる。
【0040】
当然のことながら、樹脂充填材90の層を薄くすることにより、従来よりも間隔80の大きさを小さくして、かつある程度のタッチパネル64の強度を得ることも可能である。従って表示装置14の全体の厚みの薄型化が可能になる。
本発明の実施の形態の樹脂充填材90は、たとえばガラス製の表示画面30から簡単に離すことも可能であり、この樹脂充填材90は、表示装置14をリサイクルする際に単品で回収できる。このことから、環境にも配慮されている。
【0041】
このように、本発明の表示装置および表示装置を有する電子機器では、タッチパネル64と液晶表示パネル60の表示画面30との間に、たとえば紫外線硬化型の樹脂充填材90を充填することにより、光透過率を落とさずに衝撃等によるタッチパネル64の割れを防いでタッチパネル64の強度をアップすることができる。
そして電子機器および表示装置14をリサイクルもしくは解体する場合には、樹脂充填材90はガラス製の表示画面30およびタッチパネル64から離すことができるので、樹脂充填材90を単品で回収することが可能であり環境に対して配慮されている。
【0042】
図7(A)、(B)は本発明の第2の実施の形態の概略構成を示すもので、(A)は分解斜視図、(B)は断面図であり、図8はタッチパネルと、LCDと、その間に介在する樹脂充填材をより詳しく示す断面図である。
【0043】
図7、図8において、102はLCD(液晶デバイス)フレーム、104は該LCDフレーム102上に配置されるLCD、106は次に述べるタッチパネル(108)を該LCD104の上方にて稍離間(例えば0.1mm〜1.2mm)して位置した状態で保持するLCDフレーム、108は該LCDフレーム106により上記LCD102の上方にそれと例えば1.0mm程度の厚さの樹脂充填材110を介して配置されたタッチパネルである。
【0044】
上記樹脂充填材110は、例えば特殊合成ゴム透明塗料バイクリア(商品名。ハイビーコート株式会社製)からなる。
この例えば特殊合成ゴム透明塗料バイクリアからなる樹脂充填材110は、高い透明性を有するので、表示装置に必要なLCD画面の視認性の低下が低い。また、ゴム弾性を有するので、タッチパネル108にペンPで文字等の入力のため圧力を加えたときのLCD104に加わる荷重を緩和することができ、延いては、実質的に機械的強度を向上させることができるといえる。
【0045】
そして、樹脂充填材110の屈折率は、空気のそれよりも大きくガラス104g、108gのそれに近いので、図9、図10に示すようにタッチパネル(208)・LCD(204)間に空間(210)、換言すれば空気(エアー)を介在させた場合に比較して界面で生じる屈折も小さくできる。その点でも視認性が向上する。
【0046】
ところで本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
本発明の表示装置は、図示の実施の形態では携帯情報端末に搭載される場合が多いかもしれないが、しかし、これに限らずこの本発明の表示装置は、携帯情報端末の他の種類の電子機器、たとえば携帯電話、携帯型のテレビジョン受像機、無線機、カーナビゲーションのような車両案内装置、その他の液晶表示パネルを有する機器に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1の実施の形態の表示装置を有する電子機器を示す斜視図。
【図2】図1の電子機器をより詳しく示す斜視図。
【図3】図1と図2に示す電子機器に搭載されている表示装置を示す分解斜視図。
【図4】図3の表示装置の断面図。
【図5】図4の表示装置の部分Aを示す拡大図。
【図6】樹脂緩衝材の透過率のデータの一例を示す図。
【図7】(A)、(B)は本発明の第2の実施の形態の表示装置を示すもので、(A)は分解斜視図、(B)は断面図。
【図8】上記第2の実施の形態の表示装置の要部を示す断面図である。
【図9】(A)、(B)は従来例の表示装置を示すもので、(A)は分解斜視図、(B)は断面図。
【図10】上記従来例の要部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0048】
10・・・電子機器、14・・・表示装置、60・・・液晶表示パネル、61・・・第1保持フレーム、62・・・第2保持フレーム、63・・・バックライトユニット、64・・・タッチパネル、80・・・間隔、90・・・樹脂充填材、102…LCDフレーム、104…液晶表示パネル(LCD)、106…タッチパネルフレーム、108…タッチパネル、110…樹脂充填材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示するための表示装置であり、
前記画像を表示する液晶表示パネルと、
前記液晶表示パネルに対して間隔を設けて配置されて使用者が触れて指令を入力するためのタッチパネルと、
前記液晶表示パネルと前記タッチパネルの間に設けられている前記間隔の領域内に設けられ、前記タッチパネルを通じて加わる力を緩衝するとともに、タッチパネルを介して重合性樹脂組成物に紫外線を照射して硬化させた透明樹脂充填材と、を備え、
前記重合性樹脂組成物は、樹脂成分としてポリブタジエン系(メタ)アクリレートを含有し、
光開始剤として、可視光を吸収する開始剤を含有するとともに、
紫外線を照射して硬化させた前記透明樹脂充填材が、前記透明樹脂充填材の膜厚を500μmとした場合に、波長430nm〜700nmの範囲における光透過率が95%以上である
表示装置。
【請求項2】
前記光開始剤が、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1から選ばれる少なくとも1種類以上である請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
画像を表示するための表示装置を有する電子機器であり、
前記表示装置は、
前記画像を表示する液晶表示パネルと、
前記液晶表示パネルに対して間隔を設けて配置されて使用者が触れて指令を入力するためのタッチパネルと、
前記液晶表示パネルと前記タッチパネルの間に設けられている前記間隔の領域内に設けられ、前記タッチパネルを通じて加わる力を緩衝するとともに、タッチパネルを介して重合性樹脂組成物に紫外線を照射して硬化させた透明樹脂充填材と、を備え、
前記重合性樹脂組成物は、樹脂成分としてポリブタジエン系(メタ)アクリレートを含有し、
光開始剤として、可視光を吸収する開始剤を含有するとともに、
紫外線を照射して硬化させた前記透明樹脂充填材が、前記透明樹脂充填材の膜厚を500μmとした場合に、波長430nm〜700nmの範囲における光透過率が95%以上である
電子機器。
【請求項4】
液晶表示パネルの一方側と他方側とを、第1保持フレーム及び第2保持フレームに挟み込む工程と、
前記液晶表示パネルの表示パネルから間隔を設けて、タッチパネルを前記第1保持フレームに固定する工程と、
前記表示パネルと前記タッチパネルとの間隔に、樹脂成分としてポリブタジエン系(メタ)アクリレートを含有する液状の重合性樹脂組成物を充填する工程と、
前記重合性樹脂組成物に前記タッチパネルを介して紫外線を照射し、前記重合性樹脂組成物を硬化させて樹脂充填剤を形成する工程と、
を有する表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記重合性樹脂組成物を硬化した前記樹脂充填剤の膜厚が500μmである場合に、波長430nm〜700nmの範囲における光透過率が95%以上である前記重合性樹脂組成物を使用する請求項4に記載の表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記重合性樹脂組成物が可視光を吸収する光開始材を含有する請求項5に記載の表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−20258(P2013−20258A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−179162(P2012−179162)
【出願日】平成24年8月13日(2012.8.13)
【分割の表示】特願2008−334540(P2008−334540)の分割
【原出願日】平成14年8月20日(2002.8.20)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【出願人】(000108410)デクセリアルズ株式会社 (595)
【Fターム(参考)】