説明

表示装置の保持構造

【課題】 本発明は、表示パネルと表示保護板との間に、薄型な光錯乱防止兼衝撃吸収素材を配置することにより、視認性の良い表示装置を実現するとともに、外力や衝撃力に対する緩衝特性や耐衝撃性についても低下する事なく、かつ表示パネル自体の取り付け位置も安定した状態を維持することが可能な表示装置の保持構造を提供する。
【解決手段】 表示パネルの表示面側を保護する透光性を有する表示保護板と、表示パネルと表示保護板の間に設けた間隙に密着状態で配置した弾性力を備えた光錯乱防止部材と、表示パネルを外装カバーに対して保持するための保持部材とを備え、保持部材と表示パネルの裏面との間隙及び側面との間隙には、弾性保持力の異なる弾性保持部材を各々に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の画像や各種の情報を表示する表示装置の視認性向上構造およびその構造を有する電子機器、またはその構造に使用される透明部材に関するものであり、より詳細には、デジタルカメラ、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、携帯用ゲーム機などの電子機器の表示装置の視認性を向上する構造およびその構造を有する電子機器、またはその構造に使用される透明部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器に搭載される表示装置を太陽光等が入射する明るい場所などで使用すると表示情報のコントラストが低下し画像が見難くなる。これは、太陽光等の外部光が、ディスプレイ前面の表示保護板の表面と裏面、また内部の表示パネル(表示素子)の表面等で乱反射し、この反射光が表示画像と共に眼に入ることによるものである。これらの現象が発生する主要因としては、従来から表示パネルと、この表示パネルを保護する表示保護板との間には一定厚みの空気層が挙げられる。
【0003】
しかしながらこの空気層は、表示保護板の表面からの外力もしくは衝撃力が表示パネルに伝わることで発生しうる表示パネル上の表示のムラ発生の防止や、また場合によっては表示パネル自体の破損等を防止するための緩衝効果を目的として設けられるものである。
【0004】
したがって通常、表示パネルと表示保護板との間に形成される空気層の距離は、機器の使用目的や用途、機器の重さや表示保護板の材質や厚み、表示パネルの大きさや構造等によっても色々ではあるが、外力や衝撃力に対し十分な緩衝特性を得るためには、約1.0mm程度の空気層は必要となってくる。
【0005】
一方、表示パネルと表示保護板との間に形成される空気層の距離をより広く設定した場合には一般的な表示保護板の材料であるアクリルやガラスとの屈折率の相違等に起因して生ずる光の錯乱が著しくなり、良好な光学特性が得られなくなる。
【0006】
上記説明からも明らかなように上述した空気層に対して表示保護板の素材の屈折率と同等の屈折率を有する別素材を充填すれば更に光学特性が向上し、表示装置画面に現れる文字や図形がより一層明瞭になることが想起され、更には衝撃吸収作用を有する素材であれば緩衝特性も兼ね備えることともなる。
【0007】
そこで、これらの点を解決するものとして、光学的な透過率が高く、衝撃吸収に優れたシリコーンゲル等を光錯乱防止素材としてを介在させた表示装置等も知られている。(特許文献1、特許文献2)。
【特許文献1】特開平6−337411号公報(図1)
【特許文献2】特開2004−272059号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来デジタルカメラなどの場合では、表示パネルと表示保護板との間に形成される空気層としては、通常1.2〜1.5mm程度の間隙が設けられている。これは、光学特性よりも耐衝撃特性を重視しているためであり、そのため前記した光錯乱防止兼衝撃吸収素材を実際のデジタルカメラ等への応用を考えた場合に、その素材の厚みの増加に比例して光学特性が低下する事も十分考慮しなくてはならない事から、前記光錯乱防止兼衝撃吸収素材がはさみ込まれる、表示パネルと表示保護板との間隙距離は、従来の製品のように空気層であった場合より更に遠ざけることは難しく、光学特性の低下を留意すれば、むしろ従来よりも近づくこととなってくる。つまり、外力や衝撃力に対する緩衝特性や耐衝撃性に関しては、従来よりも性能の低下が問題となってくる。
【0009】
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、その目的とするところは、表示パネルと表示保護板との間に、薄型な光錯乱防止兼衝撃吸収素材を配置することにより、視認性の良い表示装置を実現するとともに、外力や衝撃力に対する緩衝特性や耐衝撃性についても低下する事のなく、かつ表示パネル自体の取り付け位置も安定した状態を維持することが可能な表示装置の保持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明による表示装置の保持構造は、表示パネルと、前記表示パネルの表示面側を保護する透光性を有する表示保護板と、表示パネルと表示保護板の間に設けた間隙に密着状態で配置した弾性力を備えた光錯乱防止部材と、前記表示保護板の透光部の大きさと同一の開口窓を有した外装カバーと、表示パネルを前記外装カバーに対して保持するための保持部材とを備え、前記保持部材と前記表示パネルの裏面との間隙及び側面との間隙には、弾性保持力の異なる弾性保持部材を各々に配置したことを特徴とする。
【0011】
更には、前記表示パネルには、バックライト照明装置が一体的に組み込まれている事を特徴とする。
【0012】
更には、前記保持部材と前記表示パネルの裏面との間隔と側面との間隔を各々異ならせることにより、前記弾性保持部材を同一の部材にて弾性保持力を異ならせる構成としたことを特徴とする。
【0013】
更には、前記表示パネルの裏面及び側面で当接する前記弾性保持部材のうち、少なくともいずれかの弾性保持部材を前記保持部材と一体で構成したことを特徴とする。
【0014】
更には、前記表示パネルの裏面にて当接する方向へ発生する前記弾性保持部材の弾性保持力と、表示パネルの側面にて当接する方向へ発生する前記弾性保持部材の弾性保持力とは、表示パネルの裏面と当接する方向へ発生する弾性保持力の方が、表示パネルの側面と当接する方向へ発生する弾性保持力よりも低く設定するを特徴とする。
【0015】
更には、前記表示パネルは、液晶表示装置、プラズマ表示装置、有機エレクトロルミネセンス表示装置、またはフィールドエミッション表示装置よりなる群から選ばれる1つの表示パネルである事を特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、表示パネルと表示保護板との間に、薄型な光錯乱防止部材を配置しているので、表示パネルと表示保護板との間に空気層がある従来の表示装置等に比べ、太陽光や室内照明等の外部光の影響による表示パネルの表面での反射や表示保護板の背面側での反射を抑制するので、視認性の良い表示装置を実現することが出来るとともに、表示パネルと表示保護板との間に配置された光錯乱防止部材が緩衝材を兼ねているので、これにより、表示装置前面に加わる局部的な外部応力を表示パネルへ伝わり難くする。
【0017】
更には、外装カバーに対して表示パネルを保持する保持部材と表示パネルの裏面と側面との間隙に、弾性保持力の異なる弾性保持部材を各々に配置したことにより、表示パネルと表示保護板との間にだけ、緩衝材を兼ねた光錯乱防止部材を配置した従来の表示装置等に比べ、表示装置前面に加わる全体的な外部応力及び表示装置の全方向からの衝撃力を表示パネルへ伝わり難くするので、表示パネルを保護することができる。
【0018】
また、表示パネルの裏面にて当接する方向へ発生する前記弾性保持部材の弾性保持力を、表示パネルの側面と当接する方向へ発生する弾性保持力よりも低く設定することで、特に表示保護板側からの外力に対しては、表示パネル全体が撓み易い構造となるので、表示パネルを更に保護することができると同時に、表示装置内における表示パネルの取り付け位置を安定した状態に維持する事が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明の詳細を実施例の記述に従って説明する。
【実施例1】
【0020】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明を実施した表示装置の保持構造の斜視図、図2はその断面図である。
【0022】
図1および図2において、11は表示保護板であり、透光性を有するアクリル製またはポリカーボネート製もしくは改質処理等がなされた高強度ガラス製等であってもよい。12は外装カバーはであり、前記の表示保護板11を図中上部の外観面側からはめ込むように固定している。固定方法については、例えば円環状の両面テープや接着材等によって成される。13は光錯乱防止部材であり無色透明でかつ弾性力を有したゲル状またはゴム状の部材であり、表示保護板11と後述する表示パネル14との間に隙間なく密着状態で配置される。またこの部材については、組立製造上を考慮するとシート状の素材をものを使うのが簡便ではあるが、他にも液状の充填材等を封止したり、また、熱や紫外線光による硬化剤等を用いても良い。
【0023】
14は表示パネルであり、液晶等をガラス基板で挟み込むようにして封止し、さらにガラス基板の外側に偏光板を配置して構成されている。15はバックライト照明装置であり、表示パネル14とその背面にバックライトとが一体にユニット化された形態である。
【0024】
16aは側面用弾性保持部材であり、弾性力を有したゲル状またはゴム状等の部材であり、前記の表示パネル14及びバックライト照明装置15の外周側面と後述する保持部材17との間の隙間に略密着状態で配置される。
【0025】
16bは底面用弾性保持部材であり、弾性力を有したゲル状またはゴム状等の部材であり、前記の表示パネル14と一体的に構成されたバックライト照明装置15の裏面と後述する保持部材17との間の隙間に略密着状態で配置される。
【0026】
17は保持部材であり、外装カバー12の裏面側から表示パネル14及びバックライト照明装置15、側面用弾性保持部材16a、底面用弾性保持部材16b等を覆うように、保持する為の部材であり、本実施例の保持部材17は金属板を曲げ加工で構成した形状としているが、他には樹脂材料やダイキャスト材料等によって形成するものであっても構わない。18は固定ビスであり、前記保持部材17を外装カバー13に対して固定するための固定具の一例である。
【0027】
本実施例では、前記した側面用弾性保持部材16aと底面用弾性保持部材16bを別々の部材として構成している。これは表示パネル14と一体的に構成されたバックライト照明装置15の底面部で当接する底面用弾性保持部材16bは、主に表示装置の前面方向、つまり表示保護板面またはバックライト照明装置15の裏面方向からの外力を吸収および緩和する方向に作用するものであるのに対し、表示パネル14と一体的に構成されたバックライト照明装置15の外周側面部で当接する側面用弾性保持部材16aは、主に表示装置の外周方向、からの外力を吸収および緩和する方向に作用するものである。これは、通常本実施例のような表示装置を備えた機器の場合、表示パネル14の保護や破損に留意するならば表示保護板11の表面からの外力を考慮した構成をとることが必要であることは再度言うまでもないが、携帯機器などの様に使用場所が特定されない様な場合を考えれば、外力が加わる方向も特定することは出来ない。特に小型の機器などでは、装置を誤って落下することは十分に考慮する必要があるため、色々な方向からの外力を吸収していかねばならないからである。
【0028】
以上、本発明を実施の形態により具体的に説明したが、本発明は前記実施形態にのみ限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。すなわち本発明は、デジタルスチルカメラ、デジタルムービーカメラ、PDA、ポケットTV、携帯型のPC、携帯電話等に適用してもよい。また、本実施形態における表示パネルとしては、バックライトが内蔵された透過型の液晶表示装置について説明したが、バックライトの代わりに反射板を内蔵した、いわゆる反射型の液晶表示装置としてもよく、更にはプラズマ表示装置、有機エレクトロルミネセンス表示装置、またはフィールドエミッション表示装置についても本発明を適用した場合でも勿論同様の効果を得ることができる。
【0029】
上記の実施の形態によれば、外装カバーに対して表示パネルを保持する保持部材と表示パネルの裏面と側面との間隙に、弾性保持力の異なる弾性保持部材を各々に配置したことにより、表示装置前面に加わる全体的な外部応力だけでなく、表示装置の全ての方向からの衝撃力を表示パネルへ伝わり難くするので、表示パネルを保護することができると同時に、表示装置内における表示パネルの取り付け位置を安定した状態に維持する事が可能となる。
【実施例2】
【0030】
図3は、本発明の第2の実施形態を示した表示装置の保持構造を説明する斜視図、図4はその断面図であり、第1の実施の形態と同一部分には同じ符号を付して説明する。また、同一の構成部分については、説明についても省略する。
【0031】
図3および図4において、16は弾性保持部材であり、弾性力を有したゲル状またはゴム状等の部材であり、前記の表示パネル14及びバックライト照明装置15の外周側面および底面と、保持部材17との間の隙間に略密着状態で配置される。17は保持部材であり、外装カバー12の裏面側から表示パネル14及びバックライト照明装置15、弾性保持部材16等を覆うように、保持する為の部材である。
【0032】
本実施例では、表示パネル14と一体的に構成されたバックライト照明装置15の底面部で当接する弾性保持部材と、外周側面部で当接する弾性保持部材とが同一の部品にて構成されている。但し、弾性保持部材16は図4の断面図にて示したように、弾性保持部材16の底面方向の厚みと側面方向の厚みを異なる様に構成している。この様な構成により、表示保護板面またはバックライト照明装置15の裏面方向からの外力を吸収および緩和する方向に作用する弾性保持力と、表示装置の外周方向、からの外力を吸収および緩和する方向に作用する弾性保持力を異なることが可能となる。
【0033】
上記の実施の形態によれば、外装カバーに対して表示パネルを保持する保持部材と表示パネルの裏面と側面との間隙に、弾性保持力の異なる一つの弾性保持部材によって構成したことにより、簡便に表示装置前面に加わる全体的な外部応力だけでなく、表示装置の全方向からの衝撃力を表示パネルへ伝わり難くするので、表示パネルを保護することができると同時に、表示装置内における表示パネルの取り付け位置を安定した状態に維持する事が可能となる。
【実施例3】
【0034】
図5は、本発明の第3の実施形態を示した表示装置の保持構造を説明する斜視図、図6はその断面図であり、第1及び第2の実施の形態と同一部分には同じ符号を付して説明する。また、同一の構成部分については、説明についても省略する。
【0035】
図5および図6において、16は弾性保持部材であり、弾性力を有したゲル状またはゴム状等の部材であり、前記の表示パネル14及びバックライト照明装置15の外周側面と、保持部材17との間の隙間に略密着状態で配置される。17は保持部材であり、外装カバー12の裏面側から表示パネル14及びバックライト照明装置15、弾性保持部材16等を覆うように、保持する為の部材である。
【0036】
本実施例では、表示パネル14と一体的に構成されたバックライト照明装置15の底面部で当接する弾性保持部材として、保持部材17から一体的に形成した弾性保持バネ17aを備える。
【0037】
また、本実施形態では、表示パネル14と一体的に構成されたバックライト照明装置15の側面外周部と当接する部材としては、弾性保持部材16があるものの、前記した保持部材17から更に、側面外周部についても一体的に弾性保持バネを形成する事も可能であり、その場合は弾性保持部材16は不要となるので、更に簡便となる効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態である第1の実施形態を示した表示装置の保持構造の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態である第1の実施形態を示した表示装置の保持構造の断面図である。
【図3】本発明の実施形態である第2の実施形態を示した表示装置の保持構造の斜視図である。
【図4】本発明の実施形態である第2の実施形態を示した表示装置の保持構造の断面図である。
【図5】本発明の実施形態である第3の実施形態を示した表示装置の保持構造の斜視図である。
【図6】本発明の実施形態である第3の実施形態を示した表示装置の保持構造の断面図である。
【符号の説明】
【0039】
11 表示保護板
12 外装カバー
13 光錯乱防止部材
14 表示パネル
15 バックライト照明装置
16a 側面用弾性保持部材
16b 底面用弾性保持部材
17 保持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パネルと、前記表示パネルの表示面側を保護する透光性を有する表示保護板と、表示パネルと表示保護板の間に設けた間隙に密着状態で配置した弾性力を備えた光錯乱防止部材と、前記表示保護板の透光部の大きさと同一の開口窓を有した外装カバーと、表示パネルを前記外装カバーに対して保持するための保持部材とを備え、
前記保持部材と前記表示パネルの裏面との間隙及び側面との間隙には、弾性保持力の異なる弾性保持部材を各々に配置したことを特徴とする表示装置の保持構造。
【請求項2】
前記表示パネルには、バックライト照明装置が一体的に組み込まれている事を特徴とする請求項1に記載の表示装置の保持構造。
【請求項3】
前記保持部材と前記表示パネルの裏面との間隔と側面との間隔を各々異ならせることにより、前記弾性保持部材を同一の部材にて弾性保持力を異ならせる構成としたことを特徴とする請求項1、又は請求項2に記載の表示装置の保持構造。
【請求項4】
前記表示パネルの裏面及び側面で当接する前記弾性保持部材のうち、少なくともいずれかの弾性保持部材を前記保持部材と一体で構成したことを特徴とする請求項1、又は請求項2に記載の表示装置の保持構造。
【請求項5】
前記表示パネルの裏面にて当接する方向へ発生する前記弾性保持部材の弾性保持力と、表示パネルの側面にて当接する方向へ発生する前記弾性保持部材の弾性保持力とは、表示パネルの裏面と当接する方向へ発生する弾性保持力の方が、表示パネルの側面と当接する方向へ発生する弾性保持力よりも低く設定することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の表示装置の保持構造。
【請求項6】
前記表示パネルは、液晶表示装置、プラズマ表示装置、有機エレクトロルミネセンス表示装置、またはフィールドエミッション表示装置よりなる群から選ばれる1つの表示パネルである事を特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の表示装置の保持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−145669(P2009−145669A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323390(P2007−323390)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】