説明

表示装置及びその製造方法

【課題】 枠体開口部の外側の透光性基板と、枠体開口部の内側の表示パネルとを透光性接着剤を充填して一体的に接着する際に、枠体開口端部の近傍に空隙が発生することを防止する。
【解決手段】 表示パネル8の上ガラス基板の外面に貼り付けられる上偏光板5の四隅をR形状とする。そして、透光性基板15に接着剤14を塗布し、その塗布面を下方に向けて接着層が形成された表示パネルの上面に貼り合わせ、枠体開口端部の近傍に空隙を混入することなく接着剤を充填し、接着剤を硬化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置の表示面に透光性接着剤により透光性基板を貼り付けた表示装置やその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示パネルの表示面には表示面保護用や耐衝撃用のカバーガラスが設置されている。また、カバーガラスに代えてタッチパネルが設置された表示装置も知られている。しかし、表示パネルとカバーガラスやタッチパネルとの間に空気層が介在すると、表示パネルの表面やカバーガラス又はタッチパネルの下側表面で光が反射し、この反射損により表示面が暗くなる不具合が生じた。
【0003】
これを解決する方法として、液晶パネルとカバーガラス又はタッチパネルの間に、ガラスの屈折率に近い屈折率を有する透明接着剤を充填する方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。この構造によれば、表示パネルの表示側表面やカバーガラスの表示パネル側表面での反射損失を低減させることができる。更に、カバーガラスと表示パネルが接着剤により一体化するために、耐衝撃性が向上する利点がある。
【0004】
特許文献1には、タッチパネルと表示パネルの間に透明接着剤を充填したタッチパネル付き表示装置が記載されている。タッチパネルと表示パネルの間に透明接着剤を充填する方法は次のとおりである。まず、タッチパネルの裏面を上方に向けて透明接着剤を塗布する。次に、これを反転して、透明接着剤の液だれを形成する。次に、液だれが形成されたタッチパネルを表示パネルの上方からゆっくり降下させて貼り合わせる。透光性基板を降下させると、透明接着剤からなる液だれの先端が表示パネルの表面に接触し、接触面が次第に周辺へ広がる。このように充填すると、透明接着剤に気泡が混入することを防止できることが知られている。
【0005】
以下、図5と図6を用いて従来の表示装置の製造方法について詳しく説明する。図5(a)はこの表示装置の断面を示す図である。液晶パネル58と保護用ガラス基板65の間に接着剤64が充填されている。図5(b)はこの表示装置の偏光板の形状を説明する上面図である。図示するように、液晶パネル58に設けられた上偏光板55の四隅は直角形状となっている。
【0006】
図6(a)は、液晶パネル58上に保護用ガラス基板65を貼り付ける従来の製造方法を表す断面図である。液晶パネル58は、上ガラス基板51と、シール材54により間隙を形成するように貼り付けられた下ガラス基板52と、その間隙に封入された液晶53と、上ガラス基板51の端部下面に実装されたIC57と、上ガラス基板51の外面に貼り付けられた上偏光板55と、下ガラス基板52の外面に貼り付けられた下偏光板56とから構成されている。上偏光板55は、上述のように四隅が直角形状である。液晶パネル58の下部にはバックライト59が設置されている。液晶パネル58の周囲には枠体60が設置され、枠体60の上部には開口部61が形成され、液晶パネル58の表示面が見えるように構成されている。
【0007】
この構造体の表示面側に接着する保護用ガラス基板65の表面に、液体の透明接着剤64を塗布する。透明接着剤64としてUV硬化型の透明接着剤を使用する。保護用ガラス基板65は、枠体60の上部の開口部61よりもやや大きい形状を有し、開口部61の開口端部62に重なる。透明接着剤64は1000〜6000mPa・sの粘度を有し、反転したときに液だれが形成される。この保護用ガラス基板65を矢印方向にゆっくり降下させて、保護用ガラス基板65、枠体60の開口端部62及び液晶パネル58を一体的に接着する。接着の際には紫外線を照射する。
【0008】
図5(b)は、保護用ガラス基板65、枠体60の開口端部62及び液晶パネル58を接着した状態を表す断面図である。図5(c)は接着剤硬化工程後の表示装置の上面図を表す。枠体60の内側に透光性基板65が接着され、開口部61から表示パネルの表示面が見えている。図5(b)や図5(c)に示すように、開口端部62の近傍、すなわち、開口部61の四隅には空隙63が生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−274536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の表示装置の製造方法によると、上偏光板の四隅が直角形状のため、枠体の開口端部と上偏光板又は上ガラス基板との間に隙間ができない。そのため、保護ガラス基板などの透光性基板と液晶パネルの間に接着剤を充填した場合に、表示装置の開口部のコーナー部に空隙が形成され、コーナー部で透明接着剤が充填されなかった。また、保護用ガラス基板と液晶パネルの間に気泡や空隙が発生し、液晶パネルの反りや液晶層の厚みむらを生じさせるため、色むらが発生する、という不具合があった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の製造方法は、表示パネルの上ガラス基板の外面に、四隅がR形状の上偏光板を貼り付ける。そして、透光性基板に接着剤を塗布し、その塗布面を下方に向けて接着層が形成された表示パネルの上面に貼り合わせ、接着剤を硬化する。
【0012】
また、上偏光板の四隅のR形状はそれぞれR1mm〜2mmとする。これにより、透光性基板を表示パネルの上面に貼り合わせる際に、表示パネルを構成する枠体の開口部の端部近傍で透明接着剤を流れ易くし、気泡や空隙を混入することなく接着剤を充填することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法によれば、表示パネルの上面と透光性基板の下面との間に気泡や空隙を混入することなく接着剤を充填することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る表示装置の偏光板形状を示した説明図である。
【図2】本発明に係る表示装置の製造方法を工程順に示した説明図である。
【図3】本発明の製造方法により製造された表示装置の上面図である。
【図4】本発明に係る表示装置の製造方法を工程順に示した説明図である。
【図5】従来の表示装置の偏光板形状を示した説明図である。
【図6】従来の表示装置の製造方法を工程順に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の表示装置の製造方法は、表示パネルと透光性基板との貼り合わせにおいて、表示パネルの上ガラス基板に、四隅がR形状の上偏光板が設けられる。そして、透光性基板に接着剤を塗布し、その塗布面を下方に向けて接着層が形成された表示パネルの上面に貼り合わせ接着剤を硬化する。
【0016】
以下、本発明の表示装置の製造方法について図面を用いて具体的に説明する。
【0017】
図1(a)は本発明の製造方法によって製造された表示装置の断面を模式的に示す図である。表示パネル8と透光性基板5との間に接着剤4が充填されている。図1(b)はこの表示装置の表示パネルに用いられる光学フィルムである上偏光板の形状を説明する上面図である。図示するように、上偏光板5の四隅はR形状となっている。
【0018】
次に、図2を用いて本発明の製造方法の工程を説明する。図2(a)は配置工程を表す模式図である。表示装置の枠体10は上部に開口部11を備えている。図示されないが、表示パネル8は一対の対向する上ガラス基板と下ガラス基板の間に液晶が封入された構造で、各ガラス基板の表面にはそれぞれ上偏光板と下偏光板が設けられている。ここで、上偏光板は、四隅がR形状となっている。この表示パネル8を枠体10の内側の開口部11に近接して設置する。枠体10の開口部の開口端部12と表示パネル8の上面との間に間隙を設けても、接触させてもよい。
【0019】
図2(b)は接着剤塗布工程を表す模式図である。透光性基板15の表面に透光性の接着剤14を塗布する。接着剤14は、透光性基板15の表面に点状に塗布する。例えば透光性基板15の表面中央部に1点、あるいは、更に隅部に4点塗布する。接着剤14の塗布量は、表示パネル8側全面に0.05〜0.3mm程度の厚さに塗布することができる量とする。
【0020】
図2(c)は貼り合せ工程を表す模式図である。上下を反転させた透光性基板15を表示パネル8の上方に配置する。配置の際には透光性基板15と表示パネル8及び枠体10との間の位置合わせを行う。接着剤14は重力の作用により液だれが形成される。この状態で、透光性基板15をゆっくり降下する。透光性基板15の降下は、液だれの表面に波紋が生じない程度の速度とする。例えば、5〜100μm/secの速度で降下させる。例えば、使用する接着剤14の粘度が2000〜3000mPa・sである場合には、降下速度を約20μm/secとする。そして、接着剤14と表示パネル8との間の接触面積を拡大させて透光性基板15の下面全体に接着剤14を充填する。このとき、接着剤14は、上偏光板の四隅がR形状であるため、枠体10の開口端部12の近傍に流れやすくなり、開口部11の四隅に気泡や空隙を混入することなく充填される。
【0021】
図2(d)は、接着剤硬化工程を表す。接着剤14として熱硬化型接着剤を使用した場合には加熱し、UV硬化型接着剤の場合には紫外線を照射し、可視光硬化型接着剤のときは可視光を照射して硬化する。
【0022】
図3は、接着剤硬化工程後の表示装置の上面図を表す。枠体10の内側に透光性基板15が接着され、開口部11から表示パネルの表示面が見えている。上偏光板の四隅をR形状とすることで、各コーナー部での接着剤の充填がスムーズになり、コーナー部に空隙を混入することなく接着剤を充填することができる。
【0023】
なお、本発明の表示装置の製造方法で用いる表示パネルとして、液晶パネル、プラズマディスプレイパネル、有機ELパネル等の平面型表示パネルが例示できる。また、透光性基板15として、表示面保護用のガラス基板、ポリカーボネートやアクリルなどの透明プラスチック基板、入力用タッチパネル等の平板透明基板を使用することができる。接着剤14として熱硬化型接着剤、UV硬化型接着剤、可視光硬化型接着剤等の透明接着剤を使用することができる。枠体10として、金属、プラスチック、セラミック等を使用することができる。
【実施例1】
【0024】
本実施例による表示装置の製造方法を図4に基づき説明する。図4(a)は、表示パネル8及び枠体10の断面構造を示し、配置工程を表している。表示パネル8は、ガラスからなる上基板1と下基板2がシール材4を介して対向して貼り合わされ、その間隙に液晶層3が形成されている。上基板1の内面にはTFTマトリックスアレイが形成され、下基板2の内面にはカラーフィルターが形成されている。上基板1の右辺は突出し、突出部の下面にはTFTアレイを駆動するためのドライバIC7がCOGにより実装されている。上基板1の外面に上偏光板5が、下基板2の外面に下偏光板6が貼り付けられている。図示されないが、本実施例の上偏光板5は、四隅がR形状となっている。表示パネル8の下部にはバックライト9が設置されている。表示パネル8及びバックライト9は、例えば図示しない筐体に設置されている。表示パネル8は数インチから15インチの表示画面を有している。
【0025】
枠体10は金属板で形成され、上端には開口部11を有し、下部は図示しない筐体に固定されている。開口部11は開口部の上端部12により仕切られている。表示パネル8を枠体10の開口端部12に近接して設置する。開口端部12の端部板厚は約0.3〜0.6mmである。開口端部12の先端は、上偏光板5の外周部が平面的に重なる部位まで延在する。開口端部12の下面と上偏光板5の上面との隙間は0mmより大きく約0.3mm程度までである。
【0026】
図4(b)は、透光性基板15の上面に接着剤14を塗布した状態を示す断面図であり、接着剤塗布工程を表している。透光性基板15としてガラス基板を使用した。接着剤14は、透光性のUV硬化型接着剤を使用した。接着剤14の粘度は1000〜6000mPa・sである。接着剤14の粘度を高くすると、次の貼り合せ工程で透光性基板15を反転したときに液だれが形成し難くなり、粘度を低くすると、液だれ量が減少して、表示パネル8と透光性基板15間に充填する接着剤14の量が不足する。
【0027】
図4(c)は、表示パネル8の上方に接着剤14を塗布した面を下面にした透光性基板15の断面構造を示し、貼り合せ工程を表している。透光性基板25の上下を反転して接着剤14を下側にする。すると、重力により接着剤14は液だれの形状となる。この液だれが形成された状態で、透光性基板15を表示パネル8の露出面に降下させる。すると、液だれの先端が表示パネル8の表面に点接触する。その後、透光性基板15を更に降下させることにより、接着剤14と表示パネル8との接触面は次第に拡大する。この場合に、接着剤14からなる液だれが表示パネル8に点接触したときに、液だれの表面に波紋が生じない降下速度で透光性基板15を降下させる。波紋が生ずると、接着剤14に気泡が混入するからである。接着剤14は透光性基板15の下面表面全面に拡散させる。このとき、液晶パネル2の上ガラス基板の外面に貼り付けられた上偏光板3の四隅をR形状とすることにより、開口端部12の近傍に接着剤をスムーズに充填でき、液晶パネル2に貼り付けられた上偏光板3と透光性基板1との間に、気泡や空隙を混入することなく接着剤を充填することができる。
【0028】
なお、表示パネル8と透光性基板15間に充填した接着剤に許容される気泡の直径は約100μmまでである。従って、直径が100μmより小さい気泡は問題としていない。
【0029】
図4(d)は、透光性基板15を表示パネル8の上部に接着した断面構造を示し、接着剤硬化工程を表す。接着剤14が透光性基板15の下面全面に拡散した後に、紫外線を照射して接着剤14を硬化させる。紫外線は、3000〜10000mJ/cm2照射する。硬化後の接着剤14の硬度は、タイプA硬度1〜10である。従って、硬化後の硬度はゴム弾性の性質を有する。硬度が高すぎると、熱膨張等による変形に対して上偏光板5の剥がれや損傷を生じ、硬度が低すぎると、表示パネル8の耐衝撃性が低下する。
【産業上の利用可能性】
【0030】
表示装置の表示面に透光性接着剤により透光性基板を貼り付けた表示装置の製造方法を使用することで、安定した表示品位を確保した製品提供を実現できる。
【符号の説明】
【0031】
1 上基板
2 下基板
3 液晶層
4 シール材
5 上偏光板
6 下偏光板
7 ドライバIC
8 表示パネル
9 バックライト
10 枠体
11 開口部
12 開口端部
13 空隙
14 接着剤
15 透光性基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パネルを、上部に開口部を有する枠体の内側であって前記枠体の前記開口部を仕切る開口端部に近接して配置する配置工程と、
透光性基板の表面に接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
前記接着剤が塗布された前記透光性基板を、前記接着剤の塗布面を下面にして、前記表示パネルの上面に貼り合わせる貼り合せ工程と、
前記接着剤を硬化する接着剤硬化工程と、を備え、
前記表示パネルの上表面には、四隅がR形状の偏光板が設けられることを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項2】
光学フィルムが表面に貼り付けられた表示パネルと、透光性基板との間に接着剤が充填された表示装置において、
前記接着剤は前記光学フィルムと前記透光性基板との間に設けられており、前記光学フィルムの四隅がR形状であることを特徴とする表示装置。
【請求項3】
前記偏光板のR形状は、R1〜2mmであることを特徴とする請求項2に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−75718(P2011−75718A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225474(P2009−225474)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】