説明

表示装置

【課題】この発明は、電磁波の発生を抑えることができ信頼性の高い表示装置を提供することを課題とする。
【解決手段】表示パネル10は、マトリックス状の配線を有する。配線を電流が流れると、ある特性を有する磁界が発生し、電磁波が発生する。コイル20は、表示パネル10の長手方向に沿って2つのコイル21、22を並設し、表示パネル10から発生する電磁波を少なくとも部分的に抑制するための磁界M2を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マトリックス状の配線を介して複数の画像表示素子に給電して駆動することで画像を表示する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、偏平な平面パネル構造の真空外囲器を有する表示装置として、液晶ディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイ(PDP)等が知られている。
【0003】
FEDは、所定の隙間を置いて対向配置された前面基板および背面基板を有する。これらの基板は、矩形枠状の側壁を介して周縁部を互いに接合され、内部を真空にされて偏平な平面パネル構造の真空外囲器を構成している。
【0004】
前面基板の内面には3色の蛍光体層に重ねてメタルバックを有する蛍光体スクリーンが形成され、背面基板の内面には蛍光体層を励起発光させる電子を放出する多数の電子放出素子が整列配置されている。また、背面基板の内面上には、電子放出素子を駆動するための多数本の配線がマトリックス状に設けられ、その端部は真空外囲器の外部に引き出されている。
【0005】
このFEDを動作させる場合、基板間に高電圧を与え、配線に接続した駆動回路を介して各電子放出素子に選択的に駆動電圧を印加する。これにより、各電子放出素子から選択的に電子ビームが放出され、これら電子ビームが、対応する蛍光体層に照射され、蛍光体層が励起発光されてカラー画像が表示されるようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
しかし、上述したFEDにおいて、配線を流れる電流により電磁波が発生することが知られている。この電磁波は、近くにある機器間における干渉の問題や、人体に対する悪影響の問題を引き起こす。
【特許文献1】特開2003−242913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明の目的は、電磁波の発生を抑えることができ信頼性の高い表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、この発明の表示装置は、前面基板と、この前面基板に対向配置されているとともに、その周縁部同士が封着された背面基板と、複数の画像表示素子と、これら複数の画像表示素子を駆動するための電圧を与えるマトリックス状の複数本の配線と、これら複数本の配線を流れる電流により発生する電磁波を少なくとも部分的に打ち消す方向の磁界を発生させるコイルと、を有する。
【0009】
また、この発明の表示装置は、互いに絶縁状態でマトリックス状に形成された複数本の配線およびその交点にそれぞれ設けられた複数の電子放出素子を有する背面基板と、この背面基板に離間対向して配置されその周縁部同士が封着されて内部が真空にされているとともに上記複数の電子放出素子に対応する複数の蛍光体層を有する前面基板と、上記複数本の配線を流れる電流により発生する電磁波を少なくとも部分的に打ち消す方向の磁界を発生させるコイルと、を有する。
【0010】
上記発明によると、マトリックス状の配線を流れる電流の向きに応じて特定のコイルを設け、マトリックス状の配線を流れる電流による電磁波を少なくとも部分的に打ち消すようにした。
【発明の効果】
【0011】
この発明の表示装置は、上記のような構成および作用を有しているので、電磁波の発生を抑えることができ信頼性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
始めに、図1乃至図3を参照して、本発明の実施の形態に係る表示装置の一例として、SED(Surface-conduction Electron-emitter Display)について説明する。図1は、前面基板2を部分的に切り欠いた状態のSEDの真空外囲器10(以下、表示パネル10と称する場合もある)を示す斜視図であり、図2は、図1の真空外囲器10を線II-IIで切断した断面図であり、図3は、図2の断面を部分的に拡大した部分拡大断面図である。
【0013】
図1乃至図3に示すように、表示パネル10は、それぞれ矩形のガラス板からなる前面基板2および背面基板4を備え、これらの基板は約1.0〜2.0mmの隙間をおいて互いに平行に対向配置されている。背面基板4は、前面基板2より1回り大きいサイズを有する。また、前面基板2および背面基板4は、ガラスからなる矩形枠状の側壁6を介して周縁部同士が接合され、内部が真空の扁平な平面パネル構造の真空外囲器を構成している。
【0014】
前面基板2の内面には画像表示面として機能する蛍光体スクリーン12が形成されている。この蛍光体スクリーン12は、赤、青、緑の蛍光体層R、G、B、および遮光層11を並べて構成され、重ねてアルミニウム等からなるメタルバック14を有する。蛍光体層R、G、Bは、ストライプ状あるいはドット状に形成されている。
【0015】
背面基板4の内面には、蛍光体スクリーン12の蛍光体層R、G、Bを励起発光させるための電子ビームを放出する多数の表面伝導型の電子放出素子16が設けられている。これらの電子放出素子16は、画素毎、すなわち蛍光体層R、G、B毎に対応して複数列および複数行に配列されている。各電子放出素子16は、図示しない電子放出部、この電子放出部に電圧を印加する一対の素子電極等で構成されている。なお、各電子放出素子16は、対応する蛍光体層とともにこの発明の画像表示素子として機能する。
【0016】
また、背面基板4の内面上には、各電子放出素子16に駆動電圧を与えるための多数本の配線18がマトリックス状に設けられ、その端部は真空外囲器10の外部に引き出されている。配線18は、図4に模式的に示すように、互いに絶縁状態でマトリックス状に交差した、背面基板4の長手方向に沿って互いに平行に延設された複数本の走査配線18a、および背面基板4の短手方向に沿って互いに平行に延設された複数本の信号配線18bを有する。そして、各配線18a、18bの交点に電子放出素子16がそれぞれ設けられている。また、各走査配線18aの両端には、YドライバIC13が接続され、各信号配線18bの一端(図中上端)には、XドライバIC15が接続されている。
【0017】
接合部材として機能する側壁6は、例えば、低融点ガラス、低融点金属等の封着材19により、前面基板2の周縁部および背面基板4の周縁部に封着され、これらの基板同士を接合している。本実施の形態では、背面基板4と側壁6をフリットガラス19aを用いて接合し、前面基板2と側壁6をインジウム19bを用いて接合した。
【0018】
また、表示パネル10は、前面基板2と背面基板4の間にガラスからなる複数の細長い板状のスペーサ8を備えている。本実施の形態において、スペーサ8は、複数の細長いガラス板としたが、多数の柱状のスペーサでも良い。
【0019】
各スペーサ8は、上述した蛍光体スクリーン12のメタルバック14および遮光層11を介して前面基板2の内面に当接する上端8a、および背面基板4の内面上に設けられた配線18上に当接する下端8bを有する。しかして、これら複数のスペーサ8は、前面基板2および背面基板4の外側から作用する大気圧荷重を支持し、基板間の間隔を所定値に維持している。
【0020】
さらに、SEDは、前面基板2のメタルバック14にアノード電圧を印加する図示しない電圧供給部を備えている。電圧供給部は、例えば、メタルバック14に10[kV]程度の高電圧を印加することにより、蛍光体スクリーンの電位を高くする。これにより、接地された背面基板4と前面基板2との間に10[kV]程度の電位差が形成される。
【0021】
そして、上記SEDにおいて、画像を表示する場合、走査配線18aに接続したYドライバIC13および信号配線18bに接続したXドライバIC15を介して電子放出素子16の素子電極間に電圧を与え、任意の電子放出素子16の電子放出部から電子ビームを放出させるとともに、メタルバック14にアノード電圧を印加する。電子放出部から放出された電子ビームは、アノード電圧により加速され、蛍光体スクリーン12に照射される。これにより、蛍光体スクリーン12の蛍光体層R、G、Bが励起されて発光し、カラー画像を表示する。
【0022】
また、上記構造の表示パネル10を製造する場合、予め、蛍光体スクリーン12およびメタルバック14の設けられた前面基板2を用意し、電子放出素子16および配線18が設けられているとともに側壁6およびスペーサ8が接合された背面基板4を用意しておく。そして、前面基板2、および背面基板4を図示しない真空チャンバ内に配置し、真空チャンバ内を真空排気した後、側壁6を介して前面基板2を背面基板4に接合する。これにより、複数のスペーサ8を備えた表示パネル10が製造される。
【0023】
ところで、上述したSEDの駆動時において、複数本の走査配線18aおよび複数本の信号配線18bを流れる電流により不所望な電磁波が発生することが知られている。この電磁波は、近くにある機器間における干渉の問題や人体に対する悪影響の問題を引き起こす。本実施の形態では、この不所望な電磁波の発生を抑制するため、背面基板4の裏面側にコイル20を設けた。
【0024】
つまり、図4に示すように、複数個のYドライバIC13を背面基板4の両短辺に沿って並設し且つ複数個のXドライバIC15を背面基板4の一方の長辺に沿って並設したタイプのSEDでは、XドライバIC15から信号配線18bを通って図5中下方(第1の方向)に流れた電流が、各走査配線18aとの交点にある電子放出素子16を通って当該走査配線18aに流れ、当該走査配線18aの両側にあるYドライバIC13に流れる(図5中矢印I)。この際、走査配線18aの配線抵抗により、電子放出素子16を流れた電流は、左右近い方のYドライバIC13に流れる。
【0025】
このため、全ての電子放出素子16を平均的に駆動した場合を想定すると、図6に示す向きの電流のループR1、R2が形成され、表示パネル10を貫く磁界M1が形成される。言い換えると、SEDの駆動時には、このような特性を有する磁界M1に起因した電磁波が発生する。
【0026】
このような不所望な電磁波を抑制するため、コイル20は、図7に示すように、背面基板4の長手方向に沿って並んだ2つのループを形成したコイル21、22を有し、各コイル21、22を直列に接続してそれぞれ逆向きの電流を流すようにした。この際、コイル21、22に流す電流の向きは、背面基板4の長手方向略中央で、上述した信号配線18bを流れる電流と逆向き、すなわち図中上方(第2の方向)となり、背面基板4の長手方向両端近くで図中下方(第1の方向)となるように設定した。また、コイル21、22に流す電流の周波数は、配線18を流れる電流の周波数と同じ周波数にした。これにより、配線18を流れる電流に起因した電磁波を少なくとも部分的に抑制することができる磁界M2を形成でき、電磁波の発生を抑制できる。
【0027】
図8には、コイル20の取付構造を示してある。コイル20は、表示パネル10の裏面、すなわち背面基板4の裏面に取り付けられるアルミニウム板からなる補強板30に取り付けられる。特に、コイル20は、補強板30の背面基板4から離間した側に取り付けられる。具体的には、補強板30のリブ32にコイル20を収容可能な凹所34を形成し、この凹所34にコイル20を収容配置するようにした。
【0028】
このように補強板30にコイル20を取り付けることにより、アルミニウム板を通過する電磁波により生じる渦電流によって電磁波を減衰させることができるとともに、コイル20を流れる電流によって形成される磁界M2によって、補強板30を通過して漏洩した電磁波をさらに抑制することができる。
【0029】
以上のように、本実施の形態によると、不所望な電磁波を発生させる表示パネル10裏面に電磁波を部分的に抑制するためのコイル20を設けたため、漏洩電磁波を効果的に抑制でき、機器間の干渉の問題や人体に対する悪影響を無くすことができ、信頼性の高い表示装置を提供できる。
【0030】
なお、この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。
【0031】
例えば、上述した実施の形態では、電磁波を抑制するためのコイル20を表示パネル10の補強板30に取り付けた場合について説明したが、これに限らず、表示パネル10にコイル20を直接取り付けても良い。この場合、例えば、樹脂フィルムにコイル20をプリントしたものを表示パネル10の裏面に貼り付けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の実施の形態に係るSEDの表示パネルを示す外観斜視図。
【図2】図1の表示パネルを線分II−IIに沿って切断した断面斜視図。
【図3】図2の断面を部分的に拡大して示す部分拡大断面図。
【図4】図1の表示パネルの背面基板の配線構造を説明するための模式図。
【図5】図4の配線を流れる電流の方向を説明するための動作説明図。
【図6】図5の電流に起因した磁界の状態を説明するための図。
【図7】図6の磁界を打ち消すための本発明の実施の形態に係るコイルを示す図。
【図8】表示パネルに対するコイルの取付構造を説明するための図。
【符号の説明】
【0033】
2…前面基板、4…背面基板、6…側壁、8…スペーサ、10…真空外囲器(表示パネル)、12…蛍光体スクリーン、13…YドライバIC、14…メタルバック、15…XドライバIC、16…電子放出素子、18…配線、18a…走査配線、18b…信号配線、20…コイル、21、22…コイル、30…補強板、32…リブ、34…凹所、I…電流、M1、M2…磁界。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面基板と、
この前面基板に対向配置されているとともに、その周縁部同士が封着された背面基板と、
複数の画像表示素子と、
これら複数の画像表示素子を駆動するための電圧を与えるマトリックス状の複数本の配線と、
これら複数本の配線を流れる電流により発生する電磁波を少なくとも部分的に打ち消す方向の磁界を発生させるコイルと、
を有することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
上記コイルに流す電流の周波数は、上記配線を流れる電流の周波数と同じ周波数に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
上記コイルは、上記背面基板の裏面に取り付けられる補強板に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
上記コイルは、上記補強板の上記背面基板から離間した側に取り付けられることを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
上記補強板は、アルミニウム板であることを特徴とする請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
互いに絶縁状態でマトリックス状に形成された複数本の配線およびその交点にそれぞれ設けられた複数の電子放出素子を有する背面基板と、
この背面基板に離間対向して配置されその周縁部同士が封着されて内部が真空にされているとともに上記複数の電子放出素子に対応する複数の蛍光体層を有する前面基板と、
上記複数本の配線を流れる電流により発生する電磁波を少なくとも部分的に打ち消す方向の磁界を発生させるコイルと、
を有することを特徴とする表示装置。
【請求項7】
上記複数本の配線は、上記背面基板の長手方向に沿って互いに平行に延設された複数本の走査配線、および上記背面基板の短手方向に沿って互いに平行に延設された複数本の信号配線を有し、
上記各電子放出素子に流れる電流は、上記信号配線を第1の方向に流れて当該電子放出素子を通って上記走査配線に流れ、
上記コイルは、上記背面基板と略平行な面に沿って該背面基板の長手方向に並設され、該背面基板の長手方向略中央で上記第1の方向と逆の第2の方向に電流を流し且つ該背面基板の長手方向両端辺近くで上記第1の方向に電流を流す2つのコイルを有することを特徴とする請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】
上記コイルに流す電流の周波数は、上記配線を流れる電流の周波数と同じ周波数に設定されていることを特徴とする請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
上記コイルは、上記背面基板の裏面に取り付けられる補強板に取り付けられることを特徴とする請求項7に記載の表示装置。
【請求項10】
上記コイルは、上記補強板の上記背面基板から離間した側に取り付けられることを特徴とする請求項9に記載の表示装置。
【請求項11】
上記補強板は、アルミニウム板であることを特徴とする請求項10に記載の表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate