説明

表示装置

【課題】嵩張らずに低コストで奥行き感のあるハーフミラーを利用した表示像を結像させることのできる表示装置を提供すること。
【解決手段】可視光を透過する基板16の表裏にそれぞれ第1及び第2のハーフミラー層17,18を成膜させて三層構造のディスプレイプレート15を構成する。ディスプレイプレート15の背後に白抜きで文字を書いた印刷紙19を配置し押さえ板20によって挟み込み、これらをホルダーフレーム12に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えばネームプレート、広告ディスプレイ、案内プレート、掲示板若しくは携帯電話、PDA(Personal Digital Assistants)のような電子機器又はラジオ等の表示画面等に広く使用可能な奥行き感のある表示像を結像させることのできる表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
絵画技法的に文字や図形に装飾を加えてあたかも奥行きのあるように擬似的に表現することは可能であり、従来から例えばポスターの文字等で広く行われている。しかし、そのような平坦な印刷物に絵画技法的に奥行き感のある文字等を使用して作成されたネームプレートや広告ディスプレイ等は実際にホログラムや液晶表示によって複雑な立体感が得られるようになっている現状ではあまりに高級感がなく感じられてしまう。
ホログラムや液晶表示による奥行き感のある表示を実現する技術は既に周知で数多くあるが例えば特許文献1や特許文献2を挙げる。また、ハーフミラーを利用して奥行き感のある表示を実現する技術として例えば特許文献3が挙げる。
【特許文献1】特開平6−67591号公報
【特許文献2】特開平10−340060号公報
【特許文献3】特開2004−151034号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の各先行技術では電気的、機械的に複雑な機構を構築しなければならず、実際に多くの用途、例えばネームプレート、広告ディスプレイ、案内プレート、掲示板若しくは携帯電話、PDAのような電子機器又はラジオ等の表示画面等に広く使用するためにはスペース的な制限やコストの点で課題がある。そのため、構造が簡単であって嵩張らず、なおかつ低コストで提供可能な表示装置が求められていた。
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、嵩張らずに低コストで奥行き感のあるハーフミラーを利用した表示像を結像させることのできる表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するための第1の手段として、可視光を透過する基材の表裏にそれぞれ第1及び第2のハーフミラー層を成膜させた三層構造の板状体の背後に背景に対して相対的に明度の高い像パターン又は背景に対して相対的に明度の低い像パターンによって構成されたパターン面を配置してなることをその要旨とする。
【0005】
この表示装置の構成について説明を容易にするためにその構造の一例を図示する。図6に示すように、第1のハーフミラー層に達した可視光は一部が反射されるものの透過してさらに基材も通過し、第2のハーフミラー層に達する。第2のハーフミラー層に達した可視光も一部が反射されるものの透過してパターン面に達する。そして、パターン面は第2のハーフミラー層と第1のハーフミラー層を通して目視されて背景に対して明度の高い像パターン又は背景に対して相対的に明度の低い像パターンとして認識されることとなる。ここに、像パターンとは文字や図形等から構成された使用する者の意思伝達のための一種の記号である。この時目視される像を正像Aとする。
一方、パターン面の像は第1及び第2のハーフミラー層で一部反射されることとなる。このうち、図6の破線で示すように第1のハーフミラー層で反射された像パターンは更に第2のハーフミラー層に反射して虚像Bを映し出すこととなる。虚像Bの光路長は同図に示すように基材間を往復して基材の厚みの倍の距離となるため虚像Bは実際のパターン面よりも奥まった位置に見えることとなる。また、虚像Bも同様の反射をして二次的な虚像をその奥位置に映し出すこととなる。つまり、虚像Bを多重化して映し出すこととなる。光量が大きく減衰する場合には二次的な虚像はあまり明瞭には目視されない。ハーフミラー層の反射率を調整することで多重化を変更することが可能である。例えば十分な光量があり反射率が大きければ多くの虚像Bを写し出すことが可能となる。
図6で示すように、このような光学系においては第1のハーフミラー層側から表示装置を目視した観察者は正像Aと虚像Bの2つの像パターンを目視することとなる。正像Aはそれほど減衰しないため明度が大きく、第1及び第2のハーフミラー層での反射の際に透過する光もあるため減衰量が多く相対的に明度は小さい。そのため、正像Aの後方にそれよりも明るさの少ない虚像Bが寄り添うように目視され、虚像Bの存在で像パターンにあたかも奥行きがあるかのように感じられることとなる。基材が厚くなるほど正像Aと虚像Bは離間することとなり奥行きが出る。
【0006】
ここに、ハーフミラー層は可視光を反射光と透過光に二分することのできる板状の面積を有する膜層であって、一般には反射と透過は1:1であるが、本発明では必ずしもその比率に限定されるものではない。また、すべての入射光が二分されるわけではなく、一部が吸収されるような場合であってもよい。ハーフミラー層の反射率は10〜90%の範囲であり透過率も10〜90%の範囲であればよい。
ハーフミラー層は金属や誘電体多層膜等から構成されており、成膜方法に特に限定的な意味はないが一般的には蒸着法やスパッタリング法で成膜されることが膜の滑らかさや密着性から好ましい。
ハーフミラー層が成膜される基材は必ずしも平板である必要はない。
また、パターン面における像パターンは背景よりも明度の高いパターンあるいは背景よりも明度の低いパターンとされた部分であって、例えば背景が黒色で像パターンが白色である場合が典型的であるが、白色以外でもよく、背景も黒以外を使用することは可能である。また、像パターン部分に併せて蛍光色を配するようにしてもよい。像パターンは印刷でも背景に貼り絵状に貼付されるような構成でもよい。
パターン面は板状体側に第2のハーフミラー層に密着するように取り付けてもよく、板状体とは別体の他のベース体に取り付けた状態で第2のハーフミラー層に密着あるいは近接させるようにしてもよい。
【0007】
また、第2の手段では第1の手段に加え、前記パターン面の背後には光源が配置され、同光源から入射した光を前記パターン面において前記像パターンから前記板状体側に透過させるようにしたことをその要旨とする。
このような構成では、いわゆるバックライトとなる光源の光によってパターン面の裏面側から像パターン位置から光が板状体側に透過することとなり、パターン面の明度が大きくなって、より明瞭に正像及び虚像を視認することができる。
【0008】
また、第3の手段では第1又は第2の手段に加え、前記第1又は第2のハーフミラー層は可視光域における反射特性が平坦ではないことをその要旨とする。
つまり、可視光域における反射特性がある波長で大きかったり逆に小さかったりすることがあるということである。これによって像パターンの正像及び虚像及び背景の色が単純な銀色の反射色ではなく、色を伴ったものとすることが可能となる。
【0009】
また、第4の手段では第1〜第3のいずれか手段に加え、前記板状体の表面側に成膜された前記第1のハーフミラー層の上層には保護層が成膜されていることをその要旨とする。
これによって表示装置が外部に設置されるような劣悪な環境下に配置される場合に特に外側となる第1のハーフミラー層の劣化が防止できる。
保護層は、ハードコートなどによる硬質化のほか、撥水コートなどのように防汚性と滑り性を合わせ持つものをスプレー法、浸漬法、スパッタリング法、真空蒸着法などで成膜することができる。
【発明の効果】
【0010】
上記各請求項の発明では、表裏にそれぞれハーフミラー層を成膜させた三層構造の板状体の背後にパターン面を配置するようにしたため、パターン面の像パターンの正像に奥行きのあるように虚像が目視されることとなり高級感のある立体パターンが非常に簡単な構成でかつ薄型化されて実現できることとなる。また、板状体とパターン面が切り離されているため、パターン面を交換することが簡単であるため、パターン面を交換することが望まれる用途には最適であり用途の幅が広い表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の表示装置の実施例について図面に従って説明をする。
(実施例1)
図1は表示装置11を使用した案内プレートの一例である。実施例1の表示装置11は長方形の外形を有するホルダーフレーム12に保持されている。図2に示すように、ホルダーフレーム12は前フレーム12aと後フレーム12bとに分割可能とされ、ネジ13によって両者は連結されている。ホルダーフレーム12は組み立てられた状態で内周にチャンネル状に溝14が形成され、表示装置11は同溝14内に嵌合されている。表示装置11は板状体としてのディスプレイプレート15を備えている。ディスプレイプレート15はアクリル製の透明な長方形形状の基板16と、基板16の表裏に蒸着によって成膜された誘電体多層膜よりなる第1及び第2のハーフミラー層17,18から構成されている。本実施例1での第1及び第2のハーフミラー層17,18は図5のような反射率特性を示している。
ディスプレイプレート15の背面にはパターン面としての印刷紙19が配設されている。本実施例1では印刷紙19は黒色の背景に白抜きで像パターンとして「TOKAI OPUTICAL」と記載されている。つまり、像パターン部分が紙そのものの地の色で背景を黒く印刷したものである。
印刷紙19の背面にはアクリル製の透明な長方形形状の押さえプレート20は配設されている。ホルダーフレーム12は組み立てられた状態で印刷紙19はディスプレイプレート15と押さえプレート20に挟持されることとなる。
本実施例における基板16の厚みは20mm、押さえプレート20の厚みは15mmとされる。また、第1及び第2のハーフミラー層17,18はそれぞれ50nm、印刷紙19は200μmとした。但し、上記各図では作図上の制限からこれらの厚みは実際の厚みとは異なって表現されている。
【0012】
このような構成の表示装置11は図3に示すように、ディスプレイプレート15の前面側斜め方向からの目視では、上記の理論によって第1及び第2のハーフミラー層17,18を透過した可視光によって印刷紙19の像パターンそのものが正像21として実際にディスプレイプレート15の奥位置に目視される。一方、正像21が第1のハーフミラー層17で反射して第2のハーフミラー層18に映った虚像22が正像21とはずれて尚かつ正像21よりも更に奥位置に目視されることとなる。看者の見る位置によって正像21と虚像22との距離は変化し、看者の目がディスプレイプレート15と正対する位置にあれば虚像22は正像21と一致する。正対位置からずれるほどに虚像22は正像21から離れた位置に目視されることとなる。尚、図示の関係で図4では正像21を黒で、虚像22を白抜きで表している。
また、第2のハーフミラー層18はその反射率(透過率)を適宜調整することで以下のような作用を奏する。第2のハーフミラー層18の反射率を上げると、多重反射による反射像が鮮明となり、生じる影は単数から複数になり合わせ鏡の像となる。ここで、影(虚像B)の繰り返しが多く文字などの判読性を損なったり、煩雑な印象を伴う場合は、主として第2のハーフミラー18の反射率を制御することで調整することが可能である。
【0013】
このような構成とすることで実施例1では次のような効果を奏する。
(1)簡単な構成でありホログラムを使わずにホログラムのような奥行きのある画面を構成することができ、高級感のある表示装置11を低コストで供給することが可能となる。(2)非常に薄く構成できるため、嵩張ることがない。一方、実際の厚さの主体をなす透明板状体の2倍の奥行き感を付与することが可能である。
(3)見る位置によって正像21と虚像22との位置関係が変化し、なおかつ実際よりも奥行きがあるように感じられるため、意匠的な効果が大きい。
(4)印刷紙19を簡単に交換できるため、ディスプレイしたい像パターンを所望によって容易に変更できる。
(5)第1及び第2のハーフミラー層17,18の反射率特性を図5のように青の波長帯で大きく反射させるような設定としたため、背景全体として青みがかった色調を与えることが可能となっている。
【0014】
(実施例2)
図4は表示装置11を使用した広告ディスプレイの一例である。実施例1と共通する構成については同じ符号を付すことで詳しい説明は省略する。
実施例2では表示装置11の背後に光源としての白色LED24が搭載されたLED発光基板25が配設されている。LED発光基板25と表示装置11の間にはLED発光基板25を包囲するように反射器26が配設されている。反射器26は表示装置11側ほど拡開されたアルミ合金製の筒状体である。
このような構成とすることで、実施例2では実施例1の効果に加え、印刷紙19の像パターンが白色LED24によって照らしだされ(乱反射して)明るくなるため、正像21及び虚像22がより鮮明に表示され、暗い場所に設置されても像パターンを目視することが可能となる。また、図3において虚像22の奥に更に明瞭に二次的な虚像を映し出すことも可能である。また、第1のハーフミラー層17の反射率を上げることで、通常の外光が強い状態では無地のミラー状の外観とすることができる。そして、背面から照光することでパターンが浮かび上がるようにすることが可能である。
【0015】
尚、この発明は、次のように変更して具体化することも可能である。
・上記実施例では印刷紙19はディスプレイプレート15と押さえプレート20に挟持されるようになっていたが、上記のようなホルダーフレーム12を備えていない場合もありうるため、印刷紙19を押さえプレート20のようなプレートに貼着するようにしてもよい。
・ディスプレイプレート15の前面、つまり第1のハーフミラー層17の上に保護層として例えばハードコート層を成膜するようにしてもよい。
・上記表示装置11の外形形状は一例であり、他の形状を採用することは自由である。
・上記第1及び第2のハーフミラー層17,18の光学特性の設定は一例であって、他の特性であっても構わない。第1及び第2のハーフミラー層17,18の光学特性が異なっても構わない。
・印刷紙19の白黒パターンは逆でもよい。
その他本発明の趣旨を逸脱しない態様で実施することは自由である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1の表示装置の応用例を説明する部分断面図。
【図2】実施例1の構成を分解して説明する説明図。
【図3】実施例の示装置の応用例の斜視図。
【図4】実施例1の表示装置の応用例を説明する部分断面図。
【図5】第1及び第2のハーフミラー層の反射及び透過特性を説明するグラフ。
【図6】本発明の理論を説明する説明図。
【符号の説明】
【0017】
11…表示装置、16…基材としての基板、17…第1のハーフミラー層、18…第2のハーフミラー層、19…パターン面としての印刷紙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光を透過する基材の表裏にそれぞれ第1及び第2のハーフミラー層を成膜させた三層構造の板状体の背後に背景に対して相対的に明度の高い像パターン又は背景に対して相対的に明度の低い像パターンによって構成されたパターン面を配置してなることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記パターン面の背後には光源が配置され、同光源から入射した光を前記パターン面において前記像パターンから前記板状体側に透過させるようにしたことを特徴とする請求項1の記載の表示装置。
【請求項3】
前記第1又は第2のハーフミラー層は可視光域における反射特性が平坦ではないことを特徴とする請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記板状体の表面側に成膜された前記第1のハーフミラー層の上層には保護層が成膜されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−44291(P2010−44291A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−209450(P2008−209450)
【出願日】平成20年8月18日(2008.8.18)
【出願人】(000219738)東海光学株式会社 (112)
【Fターム(参考)】