説明

表示装置

【課題】装置本体に対して起立可能な表示部の位置を無段階に調整可能な表示装置を提供する。
【解決手段】表示装置は、本体と、表示部と、摩擦部と、規制手段と、を備える。表示部は、第1回動部を支軸として本体に対して回動可能に取り付けられる。摩擦部は、表示部に、第1回動部から離隔した位置に形成される。規制手段は、摩擦部と擦動することで、第1回動部の回動を規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示部が本体に対して任意の角度で起立可能な表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電話機などにおいて、液晶パネルなどの表示部が本体に対し起立可能な電子機器が存在する。例えば特許文献1には、操作パネルに対し起伏可能な液晶表示部と、液晶表示部の起伏に従動して装置筺体に設けられた案内溝を往復動する従属部材と、案内溝に沿って設けられ、従動部材の往復動に所望の摩擦力を付与する摩擦摺動部材とを備える電子機器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−086585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
摩擦摺動部材が装置筺体に設けられる場合、摩擦摺動部材の従動部材と摺動する面が上を向いているため、液晶表示部が操作パネルに対して起伏状態を維持した場合に埃が付着しやすい。従って、経年に伴い摩擦摺動部材に埃が堆積した場合、摩擦力が低下し、液晶表示部を任意の位置に固定できなくなる可能性がある。さらに、特許文献1に開示されている電子機器のように、操作キーを構成する弾性変形可能なキー部材と摩擦摺動部材とが一体に形成された場合、液晶表示部の角度調整によって、上述の操作キーが動いてしまう可能性がある。上記の問題については、特許文献1には、何ら開示及び示唆がない。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、装置本体に対して起立可能な表示部の位置を使用者が無段階に調整可能な表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、表示装置は、本体と、第1回動部を支軸として前記本体に対して回動可能に取り付けられた表示部と、前記表示部に、前記第1回動部から離隔した位置に形成された摩擦部と、前記摩擦部と擦動することで、前記第1回動部の回動を規制する規制手段と、を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例に係る電話機の背面斜視図の一例である。
【図2】実施例に係る電話機の背面図の一例である。
【図3】実施例に係る電話機の断面図の一例である。
【図4】実施例に係る電話機の断面図の一例である。
【図5】変形例に係る電話機の断面図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の1つの観点では、本体と、第1回動部を支軸として前記本体に対して回動可能に取り付けられた表示部と、前記表示部に、前記第1回動部から離隔した位置に形成された摩擦部と、前記摩擦部と擦動することで、前記第1回動部の回動を規制する規制手段と、を有する。
【0009】
上記の表示装置は、本体と、表示部と、摩擦部と、規制手段と、を備える。表示部は、第1回動部を有し、当該第1回動部を支軸として本体に対して回動可能に取り付けられる。摩擦部は、表示部に、第1回動部から離隔した位置に形成される。規制手段は、摩擦部と擦動することで、第1回動部の回動を規制する。このように、表示装置は、第1回動部を軸として回動する表示部を、規制手段と摩擦部との摩擦力によって規制することで、表示部を本体に対し任意の角度で保持することができる。また、摩擦部は、表示部に設けられているため、経年よる埃が付着しにくい。従って、表示装置は、経年による規制手段と摩擦部との摩擦力の低下を抑制することができる。
【0010】
上記の表示装置の一態様では、前記表示部は、前記摩擦部に沿ってガイドが形成されており、前記規制手段の一部である被擦動部が、前記摩擦部と擦動しながら前記ガイドに沿って移動することで、前記第1回動部の回動を規制する。この態様では、規制手段の一部である被擦動部が、摩擦部と擦動しながらガイドに沿って移動する。これにより、表示装置は、表示部を本体に対し任意の角度で保持することができる。
【0011】
上記の表示装置の他の一態様では、前記規制手段は第2回動部を有し、当該第2回動部を支軸として前記本体に対して回動可能に取り付けられており、前記被擦動部は、前記表示部の回動に伴って、前記ガイドに沿って移動し、前記被擦動部の移動に伴って、前記規制手段が前記本体に対して回動する。この態様では、規制手段は、被擦動部の移動に伴って、第2回動部を支軸として本体に対して回動する。このようにすることで、表示装置は、表示部を本体に対し任意の角度で保持することができる。
【0012】
上記の表示装置の他の一態様では、前記規制手段は、前記摩擦部との摩擦力によって、前記表示部が回動することを規制する。このようにすることで、表示装置は、表示部を本体に対し任意の角度で保持することができる。
【0013】
上記の表示装置の他の一態様では、前記摩擦部は、ゴムにより形成されている。これにより、規制手段と摩擦部との間に摩擦力が生じ、表示部の回動が規制される。従って、この態様では、表示装置は、表示部を本体に対し任意の角度で保持することができる。
【0014】
上記の表示装置の他の一態様では、前記摩擦部は、前記表示部の背面位置に設けられる。この態様では、摩擦部は、表示部の背面、即ち、表示面と逆側の面に設けられているため、経年よる埃が付着しにくい。従って、表示装置は、経年による規制手段と摩擦部との摩擦力の低下を抑制することができる。
【実施例】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る表示装置の一例である電話機100の背面斜視図の一例を示す。図2は、図1の電話機100を矢印Y1の方向から図示した電話機100の背面図の一例である。図1、図2に示すように、電話機100は、主に、本体1と、表示部2と、レバー3と、を備える。電話機100は、表示部2を回転節、レバー3を揺動節、本体1を連接節とした4節リンクのスライダ・クランク機構を備え、表示部2が本体1に対して保持される角度を無段階に使用者が調整可能なチルト機能を有する。図1、図2では、表示部2は、本体1の表面10に対し起立した状態(以後、「起立状態」とも呼ぶ。)に保持されている。なお、起立状態とは、表示部2が本体1に対して任意の角度で固定された状態をいい、垂直に起立している状態には限らない。
【0017】
本体1は、電話機100の外装を形成する筺体であり、電話番号の入力やファクシミリの送受信その他の機能を使用者が指示するための図示しない操作ボタンを表面10に備える。本体1は、表面10に凹状に形成された収納部11を備える。収納部11は、表示部2が倒れた状態で、表示部2を収納する。この時、表示部2の表示面20Aと本体1の表面10とが略同一面となるようにしても良いし、表示部2が収納部11に完全に収納されていなくても良い。以下、表示部2が倒れて収納部11内に収納された状態を「収納状態」と呼ぶ。
【0018】
また、収納部11の底面は、表示部2が収納状態の場合に表示部2の背面20Bと当接する。収納部11には、その底面からさらに凹状に形成された第1凹陥部12及び第2凹陥部13が設けられている。第1凹陥部12は、表示部2が収納状態の場合にレバー3を収納する。第2凹陥部13は、表示部2が収納状態の場合に支持部23を収納する。
【0019】
表示部2は、表示面20Aに図示しない液晶パネルを有し、使用者が入力した電話番号、電話機100の状態、時刻、その他の情報を表示する。表示部2は、後述するように、本体1に対し回動可能に軸支されている。従って、使用者は、表示部2を指などで押して表示部2を任意の位置へ回動させることで、使用者の視点に応じて、液晶パネルの位置を見やすい角度に適宜調整することができる。表示部2は、2本のガイド21と、摩擦板22と、二箇所の支持部23とを備える。2本のガイド21は、表示部2の背面20B上の中央付近において相互に平行して延在し、その延在方向に形成された溝が互いに対向するように形成されている。レバー3の一方の端部であるレバー端31は、その両端がガイド21の溝に嵌め込まれ、ガイド21の延在方向にスライド可能となっている。レバー端31は本発明における「被擦動部」の一例である。
【0020】
摩擦板22は、ウレタン系のゴムシートを打ち抜いて略長方形に形成された摩擦弾性部材であり、表示部2の背面20B上の中央付近の、2本のガイド21の間に設けられている。即ち、2本のガイド21は摩擦板22の相対向する2辺に沿って設けられている。摩擦板22は、本発明に係る「摩擦部」の一例である。
【0021】
支持部23は、後述する第1回動部24を支軸として、本体1に対し表示部2を回動可能に支持している。支持部23は、表示部2の1つの角の近傍に設けられている。即ち、支持部23は摩擦板22とは離隔した位置に設けられている。
【0022】
レバー3は、本発明における「規制手段」の一例であり、摩擦板22と接触し、擦動することで、その摩擦力により表示部2の回動を規制する。レバー3は、摩擦板22上をガイド21の溝に沿って往復移動するレバー端31と、レバー端31と反対側の端部であって、本体1に取り付けられた第2回動部32とを備える。
【0023】
レバー端31は、ガイド21に形成された溝にその両端が嵌め込まれる。また、第2回動部32は、収納部11に設けられた第1凹陥部12内で回動可能に支持されている。詳細には、第2回動部32の両端が第1凹陥部12に設けられた図示しない穴にはめ込まれることにより、レバー3は第1凹陥部12に対して第2回動部32を支軸として回動可能に取り付けられている。
【0024】
レバー端31と摩擦板22とが接触することにより生じる摩擦力(以下、「摩擦板22の摩擦力」と呼ぶ。)により表示部2の重力の一部がレバー3へ伝達される。摩擦板22の摩擦力により、表示部2及びレバー3の姿勢が保持される。また、使用者の表示部2への指圧等が加わった場合には、摩擦板22の摩擦力が使用者の表示部2への指圧力を下回り、レバー端31がガイド21の延在方向に摩擦板22上を移動すると共に第2回動部32が回動する。レバー端31は、上述のスライダ・クランク機構におけるすべり対偶として機能する。第2回動部32は、レバー3の回動の支軸となり、上述のスライダ・クランク機構における回り対偶として機能する。
【0025】
図3(a)は、図2に示す線A−A′に沿った電話機100の断面図を示す。なお、図3、図4の断面図では、説明の便宜上、本体1及び表示部2の内部に存在する電子部品等の内部構造については図示していない。図3(a)では、レバー端31は、ガイド21の第1端部210に位置する。従って、この場合、収納状態を0度とした場合における表示部2の表示面20A又は背面20Bと本体1の表面10とがなす角度(以後、「起立角度Θ」と呼ぶ。)が最大となっている。そして、起立角度Θが小さくなるほど、レバー端31は、第1端部210から第2端部211へ向かってガイド21の延在方向にスライドする。
【0026】
また、図3(a)に示すように、摩擦板22は、表示部2の背面20B上に設けられ、任意の起立角度Θにおいて収納部11と対向している。通常の使用状態における表示部2の起立角度Θが90度に近づくことはほとんどなく、図3(a)から理解されるように構造上最大でも45度程度となるように構成されている。よって、摩擦板22が表示部2側、特に表示部2の背面20B上に設けられることで、通常の使用状態において表示部2は摩擦板22を覆うカバーの如き機能を有する。これにより、電話機100は、摩擦板22に埃が堆積しにくい構造となり、経年に伴う摩擦板22への埃の付着に起因したレバー3と摩擦板22との間に生じる摩擦力の低下を抑制することができる。
【0027】
図3(b)は、表示部2が収納状態の場合での図2の線A−A′に沿った電話機100の断面図を示す。図3(b)に示すように、表示部2は、表示面20Aと本体1の表面10とが略同一面になるように、収納部11に収納されている。また、レバー端31は、ガイド21の第2端部211に位置しており、起立角度Θは最小(約0度)となっている。このように、表示部2の起立状態における起立角度Θが小さくなるほど、レバー端31は、第1端部210から第2端部211へ向かってスライドし、表示部2が収納状態の場合には、第2端部211に到達する。また、任意の起立角度Θにおいて、レバー端31が摩擦板22と接触することにより生じる摩擦力によりレバー3の姿勢が保持される。
【0028】
図4(a)は、図2に示す線B−B′に沿った電話機100の断面図を示す。図4(a)に示すように、第1回動部24を支軸として表示部2が回動可能に構成されている。詳細には、第1回動部24の両端が第2凹陥部13に設けられた図示しない穴にはめ込まれることにより、表示部2の支持部23が第2凹陥部13に対して第1回動部24を支軸として回動可能に取り付けられている。また、第1回動部24の回動は、図4(a)において図示しないレバー3により規制されている。また、任意の起立角度Θにおいて、表示部2の重力の一部が、第1回動部24に生じる静止摩擦力とつり合い、表示部2の姿勢が保持される。このとき、表示部2は、任意の起立角度Θにおいて、上述したように、レバー3によってもその姿勢が保持されるため、第1回動部24は、表示部2の回転に対して生じる静止摩擦力のみによって表示部2の質量を支える必要がない。従って、電話機100は、第1回動部24周りに、表示部2の質量に耐える摩擦力を生じさせるように大きなブレーキ構造を設ける必要がない。
【0029】
図4(b)は、表示部2を収納状態にした場合の線B−B′に沿った電話機100の断面図を示す。図4(b)に示すように、表示部2が収納状態に遷移したのに伴い支持部23が第2凹陥部13に収納されている。
【0030】
次に、図1乃至図4に示す電話機100の変形例について図5を用いて説明する。図5(a)は、変形例に係る電話機100の起立状態における断面図の一例である。図5(b)は、変形例に係る電話機100の収納状態における断面図の一例である。なお、図5(a)に示す断面図は、図3(a)に示す断面図に対応し、図5(b)に示す断面図は、図3(b)に示す断面図に対応する。
【0031】
図5(a)、(b)に示すように、変形例に係る電話機100は、図1乃至図4に示す電話機100と比較して、起立角度Θを変化させた場合のレバー3の擦動方向が逆になると共に、第2回動部32の位置が異なっている。具体的には、変形例では、起立角度Θが小さくなるほど、レバー端31は、第2端部211から第1端部210へ向かってガイド21の延在方向にスライドする。また、変形例における第2回動部32は、図1乃至図4に示す電話機100の第2回動部32が配置されていた第1凹陥部12の壁部120と対向する第1凹陥部12の壁部121に配置されている。このように構成されることで、変形例では、通常の使用状態において、表示部2に加えてレバー3が摩擦板22を覆うカバーの如き機能を有する。これにより、変形例に係る電話機100は、摩擦板22に埃がさらに堆積しにくい構造となり、経年に伴う摩擦板22への埃の付着に起因したレバー3と摩擦板22との間に生じる摩擦力の低下をさらに抑制することができる。
【0032】
また、好適には、変形例に係る電話機100は、レバー3と、表示部2の背面20Bとがなす角度(以後、「角度γ」と呼ぶ。)が、常に90度以下になるように構成される。このように構成することで、変形例に係る電話機100は、使用者が表示部2へ指圧力を加えて表示部2を収納状態にする場合に、レバー3が突っかかることなく、レバー端31を第1端部210へ円滑に移動させることができる。
【0033】
以上説明したように、本実施例に係る電話機100は、本体1と、第1回動部24を支軸として本体1に対して回動可能に取り付けられた表示部2と、表示部2の背面20B上、かつ、第1回動部24から離隔した位置に形成された摩擦板22と、摩擦板22と擦動することで、第1回動部24の回動を規制するレバー3と、を有する。これにより、電話機100は、任意の起立角度Θで表示部2を固定することが可能となる。また、摩擦板22が表示部2の背面20B上に設けられることで、電話機100は、摩擦板22に埃が堆積しにくい構造となり、経年に伴う摩擦板22への埃の付着に起因したレバー3と摩擦板22との間に生じる摩擦力の低下を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、電話機、プリンタなどの表示部にチルト機能を有する電子機器に好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 本体
2 表示部
3 レバー
11 収納部
12 第1凹陥部
13 第2凹陥部
21 ガイド
22 摩擦板
23 支持部
24 回動部
100 電話機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
第1回動部を支軸として前記本体に対して回動可能に取り付けられた表示部と、
前記表示部に、前記第1回動部から離隔した位置に形成された摩擦部と、
前記摩擦部と擦動することで、前記第1回動部の回動を規制する規制手段と、
を有することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記表示部は、前記摩擦部に沿ってガイドが形成されており、
前記規制手段の一部である被擦動部が、前記摩擦部と擦動しながら前記ガイドに沿って移動することで、前記第1回動部の回動を規制することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記規制手段は第2回動部を有し、当該第2回動部を支軸として前記本体に対して回動可能に取り付けられており、
前記被擦動部は、前記表示部の回動に伴って、前記ガイドに沿って移動し、
前記被擦動部の移動に伴って、前記規制手段が前記本体に対して回動することを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記規制手段は、前記摩擦部との摩擦力によって、前記表示部が回動することを規制することを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記摩擦部は、ゴムにより形成されていることを特徴とする請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記摩擦部は、前記表示部の背面位置に設けられることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−253037(P2011−253037A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126629(P2010−126629)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(000111878)パイオニアコミュニケーションズ株式会社 (44)
【Fターム(参考)】