説明

表示装置

【課題】メモリに記憶された累積輝度低下量が消失した場合でも、入力画像データを適切に補正することができる信頼性の高い表示装置を提供する。
【解決手段】自発光素子102を備える画素が複数配置された画像表示部101と、画素毎に単位時間当たりの輝度低下量を累積していくことにより、累積後の画素毎の輝度低下量を算出する第一の輝度低下量演算部106と、画素毎に発光時の電流値又は電圧値を検出し、検出した電流値又は電圧値を用いることにより、検出時の画素毎の輝度低下量を算出する第二の輝度低下量演算部108と、第一の輝度低下量演算部106による算出値、又は第二の輝度低下量演算部108による算出値に基づいて、入力画像データを補正する補正部105と、を有することを特徴とする表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自発光素子を備える画素に画像を表示する表示装置に関し、特に輝度の低下量に基づいて画像を補正して表示する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(以下、「有機EL」という。)素子等の自発光素子を用いた自発光型の表示装置が現在盛んに研究開発されている。有機EL素子を備える画素が複数配置された構成の有機ELディスプレイは、自発光ゆえの高速応答性、広視野角等の優れた特性を持ち、従来の液晶ディスプレイに代わる次世代ディスプレイとして期待されている。
【0003】
しかしながら、有機EL素子等の自発光素子は駆動に伴い劣化するという特徴がある。特に自発光素子をディスプレイに使用する場合には、固定画像を表示し続けると固定画像を表示した画素が他の画素に比べて早く劣化し、輝度や色度の低下が認識されてしまう、所謂「焼き付き」現象が発生する。
【0004】
この対策として、特許文献1に記載の技術が提案されている。この技術では、画像表示用の画素とは別にダミー画素を設け、そのダミー画素の劣化情報を取得し、そのディスプレイの代表的な輝度低下−点灯時間の関係を導出する。これと並行して、画像表示用の画素に表示された画像情報から各画素の劣化量を算出し、輝度低下−点灯時間の関係と逐次対応させることで各画素の累積劣化量を算出する。そして、累積劣化量をゼロに戻すために入力画像データに対して適当な補正を行うというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−139836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術では、各画素の累積劣化量を算出後、算出した累積劣化量をメモリに記憶している。そして、入力画像データに対して補正を行うときには、記憶した累積劣化量に基づいて補正量を算出し、算出した補正量を入力画像データに適用して補正を行う。しかし、この技術では、メモリに記憶された累積劣化量が消失した場合の対策が採られておらず、メモリに記憶された累積劣化量が消失した場合には入力画像データの補正が全く行われなくなるため、表示装置の信頼性が低いという課題があった。
【0007】
そこで、本発明は、メモリに記憶された累積劣化量(累積輝度低下量)が消失した場合でも、入力画像データを適切に補正することができる信頼性の高い表示装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、自発光素子を備える画素が複数配置された画像表示部と、
前記画素毎に単位時間当たりの輝度低下量を累積していくことにより、累積後の前記画素毎の輝度低下量を算出する第一の輝度低下量演算部と、
前記画素毎に発光時の電流値又は電圧値を検出し、検出した電流値又は電圧値を用いることにより、該検出時の前記画素毎の輝度低下量を算出する第二の輝度低下量演算部と、
前記第一の輝度低下量演算部による前記算出値、又は前記第二の輝度低下量演算部による前記算出値に基づいて、入力画像データを補正する補正部と、
を有することを特徴とする表示装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、画素毎の輝度低下量を累積していくことにより累積後の画素毎の輝度低下量を算出する第一の輝度低下量演算部と、画素毎の輝度低下量を累積することなく第一の輝度低下量演算部と同等の輝度低下量を算出する第二の輝度低下量演算部を有する。このため、これらの算出値のどちらを用いても入力画像データを適切に補正することができる。よって、第一の輝度低下量演算部に設けられた累積輝度低下量記憶部のデータが消失した場合でも、第二の輝度低下量演算部による算出値に基づいて入力画像データを適切に補正することができる。また、第二の輝度低下量演算部による算出処理において、第一の輝度低下量演算部の累積輝度低下量記憶部を更新することによりデータの復旧も行うことができる。これにより、メモリに記憶された累積輝度低下量が消失した場合でも、入力画像データを適切に補正することができる信頼性の高い表示装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の表示装置の一実施形態を示す構成図である。
【図2】有機EL素子を定電圧駆動した際の劣化特性曲線の一例を示す図である。
【図3】実施例1における入力画像データの補正について説明するフローチャートである。
【図4】実施例2における第一の輝度低下量演算部を用いた入力画像データの補正について説明するフローチャートである。
【図5】実施例2における第二の輝度低下量演算部を用いた入力画像データの補正について説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。尚、本実施形態では、有機EL素子を備える表示装置を例に挙げて説明するが、本発明の表示装置に適用可能な自発光素子は有機EL素子に限定されるわけではない。
【0012】
図1は、本発明の表示装置の一実施形態を示す構成図である。
【0013】
画像表示部101は、有機EL素子102及びこれを駆動する画素回路103を備える画素が、マトリクス状に複数配置された構成をとり、これらの画素に画像データを表示する。有機EL素子102はアノード電極とカソード電極の間に有機発光層が挟まれた構成をしており、両電極間に電圧を印加することで有機発光層が発光する。本実施形態では、有機EL素子102の駆動を、両電極間に印加する電圧を画素回路103により一定に制御する定電圧駆動で行う。各有機EL素子102のカソード電極は、カソード配線110に接続され、全て同電位に設定されている。尚、有機EL素子102の駆動を、アノード電極に流れ込む電流を画素回路103により一定に制御する定電流駆動で行うこともできる。
【0014】
画像ソース部112は、画像データを、補正切替部111で選択された第一の輝度低下量演算部106又は第二の輝度低下量演算部108に供給する。以下、この画像データを「入力画像データ」という。
【0015】
補正切替部111は、スイッチ等の切替回路で構成され、第一の輝度低下量演算部106による算出値に基づく補正と、第二の輝度低下量演算部108による算出値に基づく補正を切り替える。この補正の切り替えは、製品の出荷時にいずれかを選択するようにしても良いし、ユーザ自身が使用状況を踏まえて選択するようにしても良い。各々の状況に適した補正方法を選択する余地を残すことで、より好適な輝度低下の補正効果を得ることができ、焼き付き現象を抑制することができる。尚、補正切替部111はなくても良い。
【0016】
第一の輝度低下量演算部106は、演算回路で構成され、画素毎に単位時間(例えば1フレーム)当たりの輝度低下量を累積していくことにより、累積後の画素毎の輝度低下量を算出し、この算出値を補正部105に送る。第一の輝度低下量演算部106による算出処理については、実施例1で詳細に説明する。本実施形態では、第一の輝度低下量演算部106内に、累積後の画素毎の輝度低下量を記憶する累積輝度低下量記憶部107が設けられているが、累積輝度低下量記憶部107はなくても良い。累積輝度低下量記憶部107を設けた場合、第一の輝度低下量演算部106による算出値で、累積輝度低下量記憶部107を更新しても良い。このようにすると、次回の第一の輝度低下量演算部106による算出処理では、画素毎に算出した単位時間当たりの輝度低下量と更新前の累積輝度低下量記憶部107の値を加算することにより、累積後の画素毎の輝度低下量を算出することができる。
【0017】
また、第一の輝度低下量演算部106内には、画素毎の単位時間当たりの輝度低下量を記憶する記憶部、単位時間当たりの輝度低下量の算出処理に用いるデータ(輝度低下曲線、階調−輝度低下量テーブル等)を記憶する記憶部が設けられていても良い。これらの記憶部は第一の輝度低下量演算部106内でなくても表示装置内に設けられていれば良い。これらの記憶部を設ける場合、画素毎の単位時間当たりの輝度低下量を記憶する記憶部としては、例えば揮発性メモリを用いることができる。累積輝度低下量記憶部107、単位時間当たりの輝度低下量の算出処理に用いるデータを記憶する記憶部としては、例えば不揮発性メモリを用いることができる。
【0018】
第二の輝度低下量演算部108は、演算回路で構成される。有機EL素子102の駆動を電圧で行う場合、画素毎に発光時の有機EL素子に流れる電流値を検出し、検出した電流値を用いることにより、検出時の画素毎の輝度低下量を算出し、この算出値を補正部105に送る。有機EL素子102の駆動を電流で行う場合、第二の輝度低下量演算部108は、画素毎に発光時の有機EL素子にかかる電圧値を検出し、検出した電圧値を用いることにより、検出時の画素毎の輝度低下量を算出し、この算出値を補正部105に送る。本実施形態では、第二の輝度低下量演算部108内に、各有機EL素子102に流れる電流値を検出する電流値検出部109(電流計)が、カソード配線110に対して直列に設けられている。電流駆動の場合、電流計の代わりに画素毎の駆動電圧を検出できる回路を設ける。第二の輝度低下量演算部108による算出処理は、電流値又は電圧値を検出するため、処理に時間がかかる。このため、第二の輝度低下量演算部108による算出処理は、第一の輝度低下量演算部106による算出処理よりも処理時間が長くなる。
【0019】
また、第二の輝度低下量演算部108内には、電流値検出時の画素毎の輝度低下量の算出処理に用いるデータ(電流−電圧特性曲線、電流減少量−輝度低下量テーブル等)を記憶する記憶部が設けられていても良い。この記憶部は第二の輝度低下量演算部108内でなくても表示装置内に設けられていれば良い。この記憶部を設ける場合、例えば不揮発性メモリを用いることができる。
【0020】
ここで、図2を用いて第二の輝度低下量演算部108による算出処理について詳細に説明する。尚、以下に示すのは、電流値検出部109で検出した電流値に基づく輝度低下量の算出処理の一例である。本発明の表示装置に用いられる第二の輝度低下量演算部108としては、検出した電流値に基づいて算出される値が、第一の輝度低下量演算部106で算出される値と同等の値になれば、以下の例でなくても良い。
【0021】
図2は有機EL素子を定電圧駆動した場合における有機EL素子の一般的な劣化特性曲線を表しており、横軸は駆動時間t、縦軸は有機EL素子に流れる電流Iと有機EL素子の輝度Lの相対変化量である。有機EL素子は劣化すると、アノード電極とカソード電極の間に一定の電圧を印加しても、劣化前と比べて有機EL素子に流れる電流が減少し、輝度も低下する。また、輝度の低下量は、電流の減少量と発光効率(一定の電流に対する輝度の比)の低下量の合算値で表すことができる。これらの関係から、輝度低下量を見積もる方法を説明する。
【0022】
輝度低下量を見積もるためには、有機EL素子の電流−電圧特性曲線、電流減少量−輝度低下量テーブルを記憶部に予め記憶しておく必要がある。電流−電圧特性曲線とは、製品出荷時など、劣化していないときの有機EL素子の電流Iと電圧Vの関係を表す曲線である。電流減少量−輝度低下量テーブルとは、電流減少量と輝度低下量を要素とするデータテーブルである。具体的には、例えばデューティ比=100%で白表示した場合の駆動時間tと電流Iの関係を表す曲線、駆動時間tと輝度Lの関係を表す曲線から、単位時間毎の電流減少量と輝度低下量を予め取得し、レコードとして格納している。
【0023】
まず、画像データを入力して発光させるときのアノード電極とカソード電極の間に印加した電圧値、電流値検出部109で検出した電流値、電流−電圧特性曲線から電流減少量を算出する。次に、算出した電流減少量、入力画像データのデューティ比及び階調、電流減少量−輝度低下量テーブルから輝度低下量を見積もる。このとき、入力画像データのデューティ比及び階調が、電流減少量−輝度低下量テーブルの基準としたデューティ比及び階調と同じ場合には、算出した電流減少量をそのまま電流減少量−輝度低下量テーブルに対応させれば良い。但し、電流減少量−輝度低下量テーブルの基準としたデューティ比及び階調と異なる場合には、算出した電流減少量を、入力画像データのデューティ比及び階調を考慮した電流減少量に換算した上で、電流減少量−輝度低下量テーブルに対応させる必要がある。
【0024】
上記方法で見積もった輝度低下量は、電流値検出時における累積輝度低下量とみなすことができる。このため、第二の輝度低下量演算部108による算出値に基づく補正は、画素毎の輝度低下量を累積することなく、第一の輝度低下量演算部106による算出値に基づく補正と同等の補正を行うことができる。よって、第一の輝度低下量演算部106の累積輝度低下量記憶部107のデータが消失した場合でも、第二の輝度低下量演算部108による算出値に基づく補正は適切に行うことができる。
【0025】
また、第二の輝度低下量演算部108による算出値で、第一の輝度低下量演算部106の累積輝度低下量記憶部107を更新しても良い。このようにすると、第一の輝度低下量演算部106の累積輝度低下量記憶部107のデータが消失した場合でも、第二の輝度低下量演算部108により、第一の輝度低下量演算部106の累積輝度低下量記憶部107のデータを復旧することができる。よって、次回以降、第一の輝度低下量演算部106による算出値に基づく補正を再び適切に行うことができる。
【0026】
補正部105は、補正回路で構成され、第一の輝度低下量演算部106又は第二の輝度低下量演算部108による算出値に基づいて、補正量を算出し、算出した補正量を入力画像データに適用することで入力画像データを補正する。そして、補正後の入力画像データを駆動回路104に送る。本実施形態では、補正部105を1つだけ設けているが、補正部を2つ設け、第一の輝度低下量演算部106による算出値に基づく補正と、第二の輝度低下量演算部108による算出値に基づく補正を別々の補正部105で行っても良い。補正切替部111を設けない場合、第一の輝度低下量演算部106と第二の輝度低下量演算部108のどちらによる算出値を用いるかを、補正部105で選択しても良い。また、補正部105内には、補正量を記憶する記憶部が設けられていても良い。この記憶部は補正部105内でなくても表示装置内に設けられていれば良い。この記憶部を設ける場合、例えば不揮発性メモリを用いることができる。
【0027】
駆動回路104は、画像表示部101を駆動し、補正後の入力画像データを画像表示部101に送る。
【0028】
本実施形態によれば、上記構成をとるため、累積輝度低下量記憶部107のデータが消失した場合でも、入力画像データを適切に補正することができる。これにより、信頼性の高い表示装置を実現できる。
【0029】
以上のように、本発明の表示装置は、二つの輝度低下量演算部のうちの一方で輝度低下量の算出処理(以下、単に「輝度低下量演算部による算出処理」ということもある。)を行い、この算出値に基づいて補正部105で入力画像データに対する補正処理を行う。
【0030】
ここで、輝度低下量演算部による算出処理、補正部105による補正処理を行うタイミングについて説明する。入力画像データに対する補正の精度をより高める観点からすると、1フレーム毎に、輝度低下量演算部による算出処理、及び補正部105による補正処理を行うのが好ましいが、この方法では画像を表示するのに時間がかかる。このため、複数フレーム毎、或いは表示装置の起動後の最初のフレーム毎に、輝度低下量演算部による算出処理、及び補正部105による補正処理を行い、これらの両方の処理を行うフレーム以外では補正部105による補正処理のみを行うようにしても良い。表示装置内に補正量を記憶する記憶部を設けることにより、上記両方の処理を行うフレームでは、算出した補正量をこの記憶部に記憶し、上記両方の処理を行うフレーム以外では、補正部105はこの記憶部に記憶された補正量を用いて補正処理を行えば良い。
【0031】
[実施例1]
本実施例では、図1の表示装置を用い、第一の輝度低下量演算部106による算出値、又は第二の輝度低下量演算部108による算出値に基づく入力画像データの補正が、1つの補正部105で行われることを特徴とする。また、第一の輝度低下量演算部106による算出処理においては、算出した値で累積輝度低下量記憶部107を更新し、第二の輝度低下量演算部108による算出処理においても、算出した値で累積輝度低下量記憶部107を更新することを特徴とする。
【0032】
図3は、本実施例の表示装置における入力画像データの補正について説明するフローチャートである。本実施例では、輝度低下量演算部による算出処理、及び補正部105による補正処理の両方の処理を行うタイミングを、表示装置の起動後の最初のフレーム毎とする。
【0033】
以下、補正切替部111によって、第一の輝度低下量演算部106が選択された場合、第二の輝度低下量演算部108が選択された場合のそれぞれの算出処理、及び補正部105による補正処理について説明する。
【0034】
<第一の輝度低下量演算部106による算出処理>
〔輝度低下量算出ステップ〕
本ステップでは、輝度低下曲線、階調−輝度低下量テーブルを、表示装置内に設けられた記憶部に予め記憶しておき、これらのデータを用いる。輝度低下曲線とは、駆動時間tと輝度Lの関係を表す曲線のことである。本実施例では、デューティ比=100%で白表示した場合の輝度低下曲線を用いることとする。尚、表示領域外にダミー画素を設け、フォトダイオード等でその輝度を取得し、それを輝度低下曲線として用いても良い。階調−輝度低下量テーブルとは、駆動時間、入力画像データの階調、単位時間(本実施例では1フレームとする)当たりの輝度低下量を要素とするデータテーブルである。具体的には、輝度低下曲線上のある時点(駆動時間)において、ある階調を単位時間表示した場合の輝度低下量を予め取得し、レコードとして格納している。
【0035】
まず、累積輝度低下量記憶部107を参照し、更新前の累積輝度低下量記憶部107の値に対応する輝度低下曲線上の点から駆動時間t1を特定する。次に、t1時点において、デューティ比=100%で入力画像データの階調を単位時間表示した場合の輝度低下量を、階調−輝度低下量テーブルから取得する。このとき、入力画像データのデューティ比が100%の場合には、入力画像データの階調を階調−輝度低下量テーブルに対応させれば良い。但し、入力画像データのデューティ比が100%以外の場合には、入力画像データの階調を階調−輝度低下量テーブルに対応させた後、入力画像データのデューティ比を考慮した輝度低下量に換算する必要がある。
【0036】
〔累積輝度低下量算出ステップ〕
本ステップでは、上記輝度低下量算出ステップで算出した単位時間当たりの輝度低下量に、更新前の累積輝度低下量記憶部107の値を加算することにより累積輝度低下量を算出する。その後、算出した値で累積輝度低下量記憶部107を更新し、算出した値を補正部105に送る。
【0037】
<第二の輝度低下量演算部108による算出処理>
〔電流値検出ステップ〕
本ステップでは、画像データを入力し、アノード電極とカソード電極の間に電圧を印加して発光させるときに、有機EL素子に流れる電流値を電流値検出部109で検出する。
【0038】
〔輝度低下量算出ステップ〕
本ステップでは、上述した電流減少量−輝度低下量テーブルを、表示装置内に設けられた記憶部に予め記憶しておく。このデータと上記電流値検出ステップで検出した電流値を用い、上述のようにして輝度低下量を算出する。本実施例では、デューティ比=100%で白表示した場合の駆動時間tと電流Iの関係を表す曲線、駆動時間tと輝度Lの関係を表す曲線を用いて電流減少量−輝度低下量テーブルを作成する。その後、算出した値で累積輝度低下量記憶部107を更新し、算出した値を補正部105に送る。
【0039】
<補正部105による補正処理>
第一の輝度低下量演算部106又は第二の輝度低下量演算部108による算出値に基づいて、上述のようにして入力画像データを補正する。その後、補正後の入力画像データを駆動回路104に送る。輝度低下量演算部による算出処理、及び補正部105による補正処理の両方の処理を行うフレームでは、算出した補正量をこの記憶部に記憶し、上記両方の処理を行うフレーム以外では、補正部105はこの記憶部に記憶された補正量を用いて補正処理を行う。尚、この記憶部は表示装置内に設けられている。
【0040】
ここで、n回目(nは1以上の自然数)の輝度低下量の算出処理が第二の輝度低下量演算部108で行なわれ、n+1回目の輝度低下量の算出処理が第一の輝度低下量演算部106で行われるときの動作について説明する。n+1回目の輝度低下量の算出処理における上記累積輝度低下量算出ステップでは、n回目の輝度低下量の算出処理で第二の輝度低下量演算部108により更新された累積輝度低下量記憶部107の値に、上記輝度低下量算出ステップで算出した値を加算する。
【0041】
本実施例では、第一の輝度低下量演算部106の累積輝度低下量記憶部107のデータが消失した場合でも、第二の輝度低下量演算部108で算出した値で新たに累積輝度低下量記憶部107を更新することによりデータを復旧することができる。よって、次回以降、第一の輝度低下量演算部106による算出値に基づく補正を再び適切に行うことができる。
【0042】
[実施例2]
本実施例では、図1の表示装置を用い、第一の輝度低下量演算部106による算出値、又は第二の輝度低下量演算部108による算出値に基づく入力画像データの補正が、別々の補正部105で行われる点が実施例1と異なる。また、第一の輝度低下量演算部106による算出処理においては、算出した値で累積輝度低下量記憶部107を更新するが、第二の輝度低下量演算部108による算出処理においては、算出した値で累積輝度低下量記憶部107を更新しない点が実施例1と異なる。
【0043】
図4は、本実施例の表示装置における第一の輝度低下量演算部106を用いた補正処理を説明するフローチャート、図5は、本実施例の表示装置における第二の輝度低下量演算部108を用いた補正処理を説明するフローチャートである。本実施例においても、実施例1と同様に、輝度低下量演算部による算出処理、及び補正部105による補正処理の両方の処理を行うタイミングを、表示装置の起動後の最初のフレーム毎とする。
【0044】
補正切替部111によって、第一の輝度低下量演算部106が選択された場合、第二の輝度低下量演算部108が選択された場合のそれぞれの算出処理、及び各々の補正部105による補正処理については、上記相違点を除いては実施例1と同じである。
【0045】
本実施例では、第一の輝度低下量演算部106の累積輝度低下量記憶部107のデータが消失した場合でも、第二の輝度低下量演算部108による算出値に基づく補正は適切に行うことができる。
【0046】
尚、実施例1及び2において、第一の輝度低下量演算部106及び第二の輝度低下量演算部108の制御ステップは図示したものに限定する必要はない。例えば、更に表示装置の信頼性を高めるために、累積輝度低下量のデータを別の不揮発性メモリへも保持しておくミラーリングのステップがあっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、有機EL表示装置のような自発光型の表示装置に好適に利用される。本発明が適用される表示装置は、放送波を受信し表示するテレビジョン受像機等のようにそれ単体で動作する表示装置であっても良いし、デジタルカメラ等のように別の装置の内部に組み込まれる表示装置であっても良い。
【符号の説明】
【0048】
101:画像表示部、102:有機EL素子、103:画素回路、104:駆動回路、105:補正部、106:第一の輝度低下量演算部、107:累積輝度低下量記憶部、108:第二の輝度低下量演算部、109:電流値検出部、110:カソード配線、111:補正切替部、112:画像ソース部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自発光素子を備える画素が複数配置された画像表示部と、
前記画素毎に単位時間当たりの輝度低下量を累積していくことにより、累積後の前記画素毎の輝度低下量を算出する第一の輝度低下量演算部と、
前記画素毎に発光時の電流値又は電圧値を検出し、検出した電流値又は電圧値を用いることにより、該検出時の前記画素毎の輝度低下量を算出する第二の輝度低下量演算部と、
前記第一の輝度低下量演算部による前記算出値、又は前記第二の輝度低下量演算部による前記算出値に基づいて、入力画像データを補正する補正部と、
を有することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記第一の輝度低下量演算部による前記算出値に基づく入力画像データの補正と、前記第二の輝度低下量演算部による前記算出値に基づく入力画像データの補正と、を切り替える補正切替部を有することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第一の輝度低下量演算部は、累積後の前記画素毎の輝度低下量を記憶する累積輝度低下量記憶部を備え、前記第一の輝度低下量演算部による前記算出値で、該累積輝度低下量記憶部を更新することを特徴とする請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記第二の輝度低下量演算部は、前記第二の輝度低下量演算部による前記算出値で、前記第一の輝度低下量演算部の前記累積輝度低下量記憶部を更新することを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記自発光素子は定電圧駆動され、
前記第二の輝度低下量演算部は、前記画素毎に電流値を検出し、検出した電流値を用いることにより、該検出時の前記画素毎の輝度低下量を算出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記第二の輝度低下量演算部による前記算出処理は、前記第一の輝度低下量演算部による前記算出処理よりも、処理時間が長いことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記第一の輝度低下量演算部による前記算出値は、前記画素毎に算出した単位時間当たりの輝度低下量と前記更新前の前記累積輝度低下量記憶部の値を加算することにより算出した値であることを特徴とする請求項3乃至6のいずれか1項に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−54260(P2013−54260A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193533(P2011−193533)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】