説明

表面のゾル−ゲルプロセス被覆のためのゾルおよびこれを使用するゾル−ゲルプロセスによる被覆方法

本発明は、表面のゾル-ゲル被覆のためのゾルに関し、前記ゾルは重量パーセントで、a)3〜30%、好ましくは5〜20%、より好ましくは7〜15%、さらにより好ましくは8〜15%、さらにより好ましくは10〜13%、例えば10.8%または12%の少なくとも1つのジルコニウム、アルミニウム、またはチタンの有機金属化合物;b)5〜50%、好ましくは5〜40%、より好ましくは10〜40%、さらにより好ましくは15または20〜30%、例えば22%または23%の少なくとも1つの有機シラン化合物;c)1〜15%、好ましくは2〜10%、より好ましくは2〜8%、例えば5%の酸、塩基、グリコールおよびエトキシエタノールから選択される、少なくとも1つの化合物;d)100%までの残りの部分の脱イオン水または蒸留水を含み、a)およびb)の合計量が30%超、好ましくは31.2、31.5、32または33%超であり、より好ましくは35%超、さらにより好ましくは40%超、とりわけさらに好ましくは50%超である。また本発明は、液体形態でゾルの成分a)、c)およびd)を含む第1パートAを保持する第1容器と、液体形態でゾルの成分b)を含む第2パートBを保持する第2容器とを含むキットに関する。本発明はさらに、前記ゾルを使用するゾル-ゲル被覆の調製方法および得られた被覆、ならびに少なくとも1つのかかるゾル-ゲルを用いて被覆した基材に関する。また本発明は、基材の表面上に幾つかの層を含み、前記層の少なくとも1つが、本発明の方法によって調製したゾル-ゲル被覆である、被覆の調製方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面のゾル-ゲル被覆、より詳細には、金属または金属合金を含む表面、好ましくは金属または金属合金から構成される表面のゾル-ゲル被覆のためのゾルに関する。
【0002】
本発明は、前記ゾルを使用した表面、より具体的には金属または金属合金を含む表面のゾル-ゲル被覆方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
本発明の技術分野は、一般に言えば、金属または金属合金で作製された表面の処理、例えば、特に航空産業において使用される、チタン、アルミニウム、これらの合金などの金属または金属合金で作製された特に表面の被覆の分野であると定義することもできる。
【0004】
より具体的に、本発明は、例えば金属または金属合金で作製された基材の表面に、この表面に耐食性、耐磨耗性などの化学的および/または機械的耐性を与えること、および/または、例えば金属または金属合金で作製された基材へのプライマー、塗料、マスチック、付着もしくは樹脂層などの有機被覆層の付着を促進することを目的とした、ゾル-ゲル表面被覆として知られている表面被覆を調製する分野に位置し、この場合、ゾル-ゲル被覆の機能は、従来の転換処理または付着促進剤の機能と類似している。
【0005】
転換処理は、金属基材(アルミニウム、チタンおよび他の金属の合金)の(表面の)構造的改良を、陽極酸化処理(例えば、クロム、硫黄またはリンの陽極酸化などの電気分解の操作)または単純な化学的転換処理(例えば、クロム酸塩処理またはリン酸塩処理)によってもたらす。
【0006】
陽極酸化は、高度に密着した酸化物(または水酸化物)の層成長を、基礎金属を消耗することによって可能にし、この層は陽極の位置におかれる。特に、アルミニウム合金についてはクロム酸浴によって細かな(数ミクロンの)層の形成をもたらし、この層は多孔質であり有機被覆の付着結合に良好な能力を示す。
【0007】
化学的転換処理のなかで、クロム酸塩処理は、処理する構成材(一般にアルミニウム、亜鉛または鉄鋼の合金)の表面を、重クロム酸塩およびフッ素含有活性剤をベースとする酸性溶液と接触させることによって、高度に付着性の金属クロム酸塩の薄い被覆物の形成を可能にする。この処理は、基材の耐食性を向上させ、塗料の結合素地としても使用される。
【0008】
上述の表面処理方法は、これらが強い酸または塩基および浸漬容器中のクロム酸塩などの毒性材料を使用するという理由によって、特に環境への有害な影響により、多くの不利点を示す。
【0009】
これは、上述の方法が、処理した構成材からの過剰処理溶液の洗浄のためにかなりの量の水を必要とすること、洗浄水および廃棄処理溶液は、溶解した金属を処分または再使用する前に、金属を除去するために処理しなければならないこと、金属の除去は、精製したり処分したりすることが困難なさらなる毒性廃棄物を生成すること、が原因である。
【0010】
これら処理の全体は、方法の実施の後で行われるので、従来の湿式化学処理を使用するコストを増加させる。
【0011】
同様に、使用寿命の終わり、または改修段階における処理済みの構成材は、使用者にとって不利益な有毒廃棄物を増加させる。
【0012】
その結果、上述の湿式-化学処理方法の不利点を克服するために、ゾル-ゲル被覆技術を使用した方法が提案されている。かかる方法は、特に、文献US-A-5,814,137、US-A-5,849,110、US-A-5,789,085、US-A-5,869,141、US-A-5,958,578、US-A-5,869,140、US-A-5,939,197およびUS-A-6,037,060に記載されている。
【0013】
特に文献US-B1-6,605,365は、酢酸などの有機酸触媒を用いる、テトラ-n-プロポキシジルコニウム(TPOZ)などのアルコキシジルコニウム化合物および3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(GTMS)などの有機シランを含むゾルの使用について記述している。
【0014】
これらのゾルは、例えば3%〜5%程度の固定含有量を有する非常に希薄なゾルであり、濃度を増加させるとフィルムの付着に問題があることが述べられている。
【0015】
これら希釈ゾルは、表面と長時間接触させても、乾燥厚さで、例えば200〜500mmまでの微細な層またはフィルムしか付着できない。得られたフィルムは支持体に実に良く付着し、その後のプライマーまたは塗料の付着を可能にするが、腐食に対する耐性の固有の性質は有していない。
【0016】
換言すれば、この文献は根本的に付着促進フィルムに関するものであって、濃縮生成物の噴霧の適用と並行して、ゾル-ゲルフィルムと本質的におよび先天的に結合している耐食性の性質について言及するものではない。
【0017】
最終的に、塗料、プライマー、接着剤またはマスチックを適用する場合、その適用は、フィルムの乾燥後極めて短時間内に行わなければならない。
【0018】
文献US-A-5,814,137は、特にチタンまたはアルミニウムの合金で構成される金属表面の表面処理について記述しており、これは、金属と有機樹脂または接着剤との間の付着を向上させるために、ゾル-ゲルフィルムを使用して、インターフェースとして使用する、表面被覆を形成する。
【0019】
ゾル-ゲルフィルムは、それだけ適用したのでは耐食性が殆どまたは全く無く、金属表面の有機金属カップリング剤を介して付着性が向上する。
【0020】
金属基材の表面上にゾル-ゲルフィルムを調製するためにゾルが使用される。このゾルは、テトライソプロポキシジルコニウムまたはテトラ-n-プロポキシジルコニウム(TPOZ)などの安定化された有機金属アルコキシジルコニウム塩、エポキシまたはポリウレタン系のための3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(GTMS)などの有機シランカップリング剤、あるいはポリイミド組成物のための対応する1級アミン、および水性配合物のための酢酸などの触媒の希薄溶液である。アルコールベースの配合物も記述されている。
【0021】
ゾルは、液浸、噴霧または浸漬し、次いで乾燥してゾル-ゲルフィルムを形成することによって金属表面に適用される。
【0022】
ゾル中の反応物質の濃度が、容積で2%のGTMSおよび容積で1%のTPOZという意味で、ゾルは希薄溶液であるが、若干高い反応物質の濃度、すなわちTPOZとGTMSの合計濃度4.4%が、より良い結果を与えることもある。
【0023】
基本的に加水分解のための触媒として機能する酢酸の量は、0.091モルの有機シランに対して0.13モルの氷酢酸であり、酢酸の濃度を0.26モルに倍増すると付着性が改良されるが、0.39モルに上げると付着性は悪くなる。
【0024】
最終的には、酢酸の量を最小化することが好ましいと示されている。
【0025】
この文献のカラム13は、イソプロパノール中の、2%のGTMS、1%のTPOZおよび1%の80% 強酢酸の溶液であるゾルについて言及している。
【0026】
最大数十ミクロンになるゾル-ゲル被覆を得るためには、上記の文献に記載の方法および溶液は、層当たりの付着厚さが薄いため、2層以上の重ね合わせ層の連続的付着および/または散液あるいは長期のトリックリングが必要である。
【0027】
適切な厚さの被覆を堆積させるためにかなりの数のステップが必要なため、これらの文献に記載されたゾル-ゲル処理は工業規模での使用は困難であり、これらはかなりの手段をかけて、かなりの生産性低下の犠牲の下においてのみ、金属表面処理の化学的シーケンスに取り入れることができる。
【0028】
さらに、上記で引用した文献において得られたゾル-ゲルフィルムは、それだけを使用した場合、すなわちプライマー無しで使用した場合、耐塩噴霧性または糸状耐食性試験に規定する耐食性保護に関しては、未だ不十分な可能性しか有さない。
【0029】
ゾル-ゲル被覆の調製に関する他のゾル組成物は、文献US-A-4,814,017およびUS-A-4,754,012に記載されている。これらのゾルは、高水準の有機溶媒を含んでいるという不利点を有する。
【0030】
さらに、ゾル-ゲル被覆の調製のための組成物に関する他の文献は、文献US-A-6,008,285、US-B1-6,228,921、US-B1-6,482,525およびUS-B1-6,361,868である。これらの文献、特に引用した最初の3つの文献は、再度高水準の有機溶媒を有する組成物について記述している。さらに、得られた被覆の基本的目標は、ポリカーボネート基材に引っかき抵抗性を与えるものであって、必然的にシランを用いたポリカーボネートの前処理を意味する。
【0031】
要約すると、前記文献の結果は、従来技術のゾルおよびゾル-ゲル方法の不利点は、基本的に高水準の溶媒の存在および/または複雑な実施態様および/またはゾル-ゲルフィルム単独での低い耐食性能に由来する。
【特許文献1】US-A-5,814,137
【特許文献2】US-A-5,849,110
【特許文献3】US-A-5,789,085
【特許文献4】US-A-5,869,141
【特許文献5】US-A-5,958,578
【特許文献6】US-A-5,869,140
【特許文献7】US-A-5,939,197
【特許文献8】US-A-6,037,060
【特許文献9】US-B1-6,605,365
【特許文献10】US-A-4,814,017
【特許文献11】US-A-4,754,012
【特許文献12】US-A-6,008,285
【特許文献13】US-B1-6,228,921
【特許文献14】US-B1-6,482,525
【特許文献15】US-B1-6,361,868
【特許文献16】EP-A-0 195 493
【特許文献17】DE-A-4118184
【特許文献18】EP-A-587 067
【特許文献19】US-A-5,806,562
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
したがって、上記に照らし、要件および検討している事例に従って、限られた数のステップにおいて、相対的にかなりの乾燥厚さを有するゾル-ゲル被覆を調製することを可能にする必要性が、ゾルまたは溶液に関して、例えば金属表面などの表面処理のための方法に関して存在する。
【0033】
同様に、ゾルまたは溶液、および、特に塩-噴霧処理試験で規定する向上した耐食性を有するゾル-ゲル被覆を得ることも可能にする、例えば金属で作製された表面を処理する方法が求められている。
【0034】
この保護に対する向上は、特に上記で引用した文献に記述されているゾル-ゲル被覆の他の性質に害を及ぼすことなく達成されなければならず、例えば金属支持体などの支持体に対する付着性、柔軟性、糸状耐腐食性、プライマーおよび塗料のゾル-ゲル被覆に対する付着性、および引っかき抵抗性、耐化学薬品性および耐磨耗性を含む。
【0035】
同様に、特に有害なまたは毒性の溶媒に関して、および環境に有害な影響をもたらす可能性のある他の化合物に関して、溶媒の含有量が低いかあるいはゼロであるゾルに関する必要性も存在する。
【0036】
最終的に、例えば金属表面などの表面上に、簡単で、信頼性があり、実施が容易で、ステップの数が限られ、例えば金属表面処理など、表面処理の既存の方法に、これら方法を実質的に変更する理由を与えることなく、低い水準の投資費用で容易に統合することができる、ゾル-ゲル被覆を調製する方法に関する必要性が存在する。
【0037】
本発明の目的は、例えば金属を含む表面などの表面のゾル-ゲル被覆を意図したゾル、および前記ゾルを使用した、例えば金属または金属合金を含む表面などの表面上に、上記で示した必要性に合致し、特に上で以前に述べた基準および要件を満足させるゾル-ゲル被覆を調製する方法を提供することである。
【0038】
本発明のさらなる目的は、従来技術のゾルおよび方法の不利益、欠陥、制限および障害を示さない、ゾルおよび例えば金属または金属合金を含む表面などの表面上にゾル-ゲル被覆を調製する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0039】
この目的および他のさらなる目的は、本発明による表面のゾル-ゲル被覆のためのゾルによって達成され、前記ゾルは重量パーセントで、
a)3%〜30%、好ましくは5%〜20%、より好ましくは7%〜15%、特に8%〜14%、とりわけ10%〜13%、例えば10.8%または12%の、ジルコニウム、アルミニウムまたはチタンの少なくとも1つの有機金属化合物;
b)5%〜50%、好ましくは5%〜40%、より好ましくは10%〜40%、特に15%または20%〜30%、例えば22%または23%の、少なくとも1つの有機シラン化合物;
c)1%〜15%、好ましくは2%〜10%、より好ましくは3%〜8%、例えば5%の、酸、塩基、グリコールおよびエトキシエタノールから選択される、少なくとも1つの化合物;
d)100%までの残りの部分の脱イオン水または蒸留水
を含み、a)およびb)の合計量が30%超、好ましくは31.2%;31.5%;32%;または33%超であり、より好ましくは35%超、特に40%超、とりわけ50%超である。
【0040】
上記の重量パーセントは、一般に容積パーセントと同等である。
【0041】
前記ゾルは、イソプロパノールなど、1から10Cの非毒性または非有害性の脂肪族アルコールなどのアルコールから好ましくは選択される、5重量%未満、好ましくは3重量%未満、より好ましくは1重量%未満の非毒性または非有害性の有機溶媒を含んでいることが好ましい。
【0042】
本発明によるゾルは、上記において以前に述べた文献に記述されているような従来技術のゾルとは、成分a)、b)およびc)の濃度、すなわち、有機金属化合物、有機シランおよび触媒(例えば酸)の濃度が、これらの文献において使用されている濃度より著しく高いという意味合いにおいて、基本的に異なっている。さらに、高濃度のa)およびb)の合計量は30%超であり、これは従来技術におけるa)およびb)の合計濃度より著しく高い。
【0043】
この濃度の増加は、蒸留水または脱イオン水を減らすことによってなされる。したがって、TPOZなどの有機金属化合物の濃度は、3重量%〜30重量%であり、一方従来技術においては、1.25重量%以下;同様に、GLYMOなどの有機シラン化合物の濃度は、5重量%〜50重量%であり、一方従来技術においては、2.50重量%以下;最後に、例えば酢酸など酸触媒の触媒c)の濃度は、1重量%〜15重量%であり、一方従来技術においては、0.60重量%以下である。
【0044】
各成分の量の著しい増加は、本発明のゾルに対して、固形分重量の値が、従来技術のゾルの2%〜4%から4%超、恐らくは例えば37%までの値、好ましくは4%〜37%の値、より好ましくは18%〜37%の値、特に20%〜30%の値に変化する増加によって、同様に示される。
【0045】
ゾル-ゲル被覆の前駆物質化合物と定義できる化合物、すなわち、有機金属化合および有機シラン化合物の濃度の増加は、具体的には、例えば酢酸などの酸である成分c)のパーセントの増加によって得られ、これはかかる濃縮された混合物の相容性と溶解性を得ることを可能にし、一方では有機金属化合物a)の量と有機シラン化合物b)の量との間の比率を、上で以前に引用した文献と実質的同じ比率にとどめる。
【0046】
有機シラン化合物の有機金属化合物に対する比は、一般に1.5または1.6〜6、好ましくは1.8〜2.5である。
【0047】
従来技術の文献に照らして、この種の濃縮されたゾルが調製できたことは全く明らかではなかった。実際には、これら文献の全ては実施者に高濃度の成分a)およびb)ならびに酢酸などの成分c)をむしろ使用しないように思い止まらせる傾向にある。特に、US-B1-6,605,365は、濃縮ゾル(例えば、4%または5%超の固体含有量を有するゾル)を使用した場合に付着上の問題を示している。
【0048】
したがって、これらの成分a)、b)およびc)の濃度を増加することによって、追加の有機溶媒もしくは補助溶媒を使用せずに、またはそれらの非常に低い割合を使用して、a)およびb)の合計量または濃度が30%超、好ましくは31.2%;31.5%;32%;または33%超であることを確実にすることによって、発明者らは、当技術分野において広く保持されてきた意見に逆らい、驚くべきことに、成分a)およびb)の濃度、成分c)の濃度、例えば酸c)を、蒸留水または脱イオン水を使うことで同時に増加させることによって、安定で使用が容易なゾルを、高濃度においても調製できることを実証している。
【0049】
本発明によるゾルは、驚くべきことに、具体的にはその高濃度によって、配合に応じて、一般に500nmから20μmにわたるまたはそれ以上の、好ましくは1または2〜10μmの、より好ましくは4〜5μmの相対的に厚い厚さを有する乾燥ゾル-ゲルフィルムを得ることを可能にする。この厚さは、浸漬、散液または噴霧などの技術により、塗布(または通過)の単一の操作で、単一層として得られる。この種のフィルムは、従来技術のゾルでは、2層以上の連続的堆積および複数回の塗布操作によってのみ調製することができる。
【0050】
さらに、本発明による濃縮されたゾルから調製されたフィルムは、優れた品質を有し、特にたるみの無い正規の厚さを有している。
【0051】
本発明によるゾルの濃度の増加は、有機溶媒含有量の増加無しで実現する。これは、本発明によるゾルが、多くの従来技術のゾルとは異なり、5重量%未満、好ましくは3重量%未満、より好ましくは1重量%未満の有機溶媒を含んでいることによる。
【0052】
さらに、この種の有機溶媒が本発明の組成物中にこれらの非常に低い濃度で含まれている場合、当該溶媒は、アルコール、好ましくは1〜10Cの、特にイソプロパノールなどの、1〜4Cの脂肪族アルコールなど、非毒性または非有害性の溶媒である。
【0053】
一般に従来技術の数百ナノメートルに代わって、例えば0.5から2、3、4、5または20μm以上に及ぶ、特に層当たりの堆積した乾燥厚さの増加により、本発明によるゾルから得られたゾル-ゲルフィルムの固有の腐食防護性能は、従来技術のゾルから得られたゾル-ゲルフィルムの性能と比較して著しく改善されている。
【0054】
したがって、例証として、アルミニウムの等級または当該支持体の金属に応じ、そして0〜500℃、好ましくは80〜150℃、より好ましくは110〜130℃に及び、さらにセラミック溶融処理の場合は2500℃までのこともある、ゾル-ゲルフィルムの乾燥温度に従って、本発明によるゾルによって調製したゾル-ゲルフィルムは、数十から数百、さらには千時間の塩-噴霧防護水準(ASTM B117試験)を達成することができる。従来技術のゾル-ゲル被覆との比較として、ゾル-ゲルフィルムだけの塩-噴霧抵抗性は、予め脱酸素処理した2024T3アルミニウム支持体について24時間未満である。
【0055】
糸状腐食に関しても、同じく優れた結果が得られている。
【0056】
換言すれば、本発明によるフィルムは、本発明によるフィルムに耐食剤が含まれていないという事実にもかかわらず、フィルムだけによるバリア層効果によってもたらされる腐食防護が達成されることを実証している。
【0057】
ゾル-ゲルフィルム単独で得られたこの優れた防護水準は、その乾燥厚さが一般に500nm〜20μm、例えば1、2、3または4μmのフィルムを用いて、ゾル-ゲルフィルムによって伝統的に示されている性質、特に上述の従来技術の文献に記述されている性質を損なうことなく達成される。この性質は、すなわち、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、複合材料、プラスチック、ガラスなど多種多様な支持体(これらは前処理されていてもよい)に対する付着性;柔軟性;ゾル-ゲルフィルムに対するプライマーおよび塗料の付着性;同様に引っかき抵抗性;耐化学薬品性、耐磨耗性などである。
【0058】
本発明による「濃縮」ゾルのさらなる利点の1つは、特に上記の文献において以前に記述した従来技術の希薄ゾルよりも、より広範囲な分野において使用されることである。
【0059】
これは、本発明によるゾルが、上記文献で既に示したように、クロム酸塩転換生成物、または塗料、マスチックおよび接着剤の接着促進剤の代わりになるゾル-ゲル被覆の調製に使用できるだけでなく、ゾル-ゲルプライマー、ゾル-ゲル塗料、および特定の用途のためのゾル-ゲル被覆の調製にも使用できることによる。
【0060】
本発明は、同様に基材の表面にゾル-ゲル層を調製する方法を提供し、ここで、
上述のゾルは、表面に堆積して基材の表面上にゾル層を与え;
前記ゾル層は乾燥して基材の表面にゾル-ゲル層を与える。
【0061】
ゾルは、例えば噴霧、散液または浸漬など、任意の既知の堆積方法によっても堆積させることができる。
【0062】
ゾルは、噴霧など、塗料やニスの塗布と類似の非常に単純な方法によって適用することが好ましい。
【0063】
本発明による方法は、上記において以前に説明したように、本発明によるゾルの使用の結果もたらされる全ての利点を示す。特に、本発明による方法は、厚い乾燥厚さ、すなわち、一般に500nm〜20μmの厚さを有する層を、希薄ゾルを使用する従来の方法の2回以上のステップに代えて単一ステップで、単一操作(単一の通過)で、調製することを可能にする。この結果、かなりの時間の節約となる。例として挙げれば、2〜10μmの厚さのフィルムは、ニスや塗料の塗布と類似の方法により数秒間で適用することができる。
【0064】
同じく、本発明の方法は、同じ厚さの層の堆積を得るために、ある従来技術の文献に記述されているやり方のトリックリングまたは長時間の散液は必要でない。
【0065】
堆積層の所望の乾燥厚さは、例えば、ガンの設定、ガンの種類、これらガンの数、適用距離などを変更することにより、容易に得ることができる。厚い層が、長い時間の接触やトリックリング無しで急速に得ることができる。得られた厚い層は、優れた品質であり、均一で、たるみが無い。
【0066】
したがって、本発明による方法は、単純で、信頼性があり、従来技術の方法より費用がかからない。本発明によるこのゾル-ゲル層調製方法は、ゾル-ゲル層の調製の前または後に、他の基材処理を含む、従来の現存する系統に容易に、低コストで、実質的な変更または生産性の損失無しで、統合することができる。
【0067】
最終的に、本発明による方法は、ゾルが、一般には5重量%未満、好ましくは3重量%未満、より好ましくは1重量%未満という非常に低い有機溶媒含有量を有し、これら溶媒が、アルコールなど、毒性でも有害でもない溶媒であるという事実により、環境的に適合性があり、環境保護に関する最近の通達に合致する。
【0068】
これは、より高い水準の溶媒(毒性、有害性あるいは可燃性であることがある)を使用する従来技術の方法に対する本発明によるゾルおよび方法の違いと付加的な利点を表している。
【0069】
ゾルは、堆積の前および/または堆積中に有利に加熱することもできる。かかる加熱が、特に、ゾル中で起こる反応に触媒作用を及ぼし、加水分解、乾燥および塗布を加速し、得られたフィルムの品質、均一性-均等性の改善を可能にすることが見出された。
【0070】
かかる加熱は、加熱が熟成時間を大幅に短縮するので、現存するゾル-ゲルフィルムに手を加えるあるいは修理する場合に、特に有利であることもある。さらに、塗布する側のゾルを加熱する方が、寸法および形状によって加熱することが困難なこともあるゾルが塗布される側の基材を加熱するよりもより容易で好ましい。
【0071】
かかる加熱は、以下において理解されるように、有機シラン化合物が、加水分解反応によってメタノールの生成がもたらされない化合物から選択される場合に特に有利である。これは、これら化合物の加水分解が遅いので、加熱がこれを加速することができること、さらに、制御した加熱が、ゾルから得られたフィルムの品質を向上させることもあることによる。
【0072】
この結果、ゾルを0〜80℃、好ましくは20〜60℃の温度で適用することが可能となる。
【0073】
ゾルは、適用する前に有利にろ過することもできる。このろ過は、例えば散液もしくは噴霧ノズル、または他の塗布システムの前にフィルターを設置することによって実施することもできる。
【0074】
このろ過は、従来のろ過、または限外ろ過もしくはナノろ過など、他の微細ろ過でよく、当業者に知られている任意の装置で実施することもできる。
【0075】
このろ過の目的は、一般に数ナノメートル〜20μmの寸法のあらゆる不純物を保留することである。
【0076】
これは、このろ過操作が、形成されたフィルムの品質を大幅に向上させることが判明したことによる。実際、形成されたネットワークの品質は、ろ過操作によってゾル中に存在するいかなる不純物も除去されることによって、利益を得る。
【0077】
耐食特性の観点からは、形成されたネットワークの品質が最高であるので、これらの特性はしたがってろ過によって向上している。
【0078】
本発明による方法の好ましい、特に有利な一実施形態において、基材の表面に堆積される(塗布される)ゾルは、上で以前に定義した条件の下で、場合によっては加熱して、パートAおよびパートBと呼ばれるたった2種類の濃縮液体構成物を単純に混合することによって調製される(得られる)が、一方従来技術においては、例えば上述の文献の殆どに定義されているように、ゾルは、4種類またはそれ以上の生成物または構成物を混合することによって調製される。
【0079】
パートAは液体形態であり、既に説明したゾルの成分a)、c)およびd)を含み、一方パートBも液体形態であり、既に説明したゾルの成分b)を含む。
【0080】
これら2つの液体構成物(パートAおよびパートB)は、従来の撹拌システムを用いて、少量の場合には手動によっても、混合するのが非常に容易である。
【0081】
撹拌は、一般に5分から1時間継続する。撹拌は、一般に所望の加水分解速度に応じて、20℃〜80℃の温度において実施することができる。
【0082】
2つのパート、AおよびBは、貯蔵中安定であり、使用する前に可能な簡単な均質化を必要とするだけで、それぞれが適切な包装または容器中に、一般に数カ月から2年間に及ぶ期間置かれる。2つのパート、AおよびBの混合物も同様に安定である。
【0083】
上述のパートAおよびBの混合の後、作製されたゾルは、一般には0分〜24カ月、好ましくは0分〜12カ月、より好ましくは30分〜8時間、例えば混合開始から1時間以内、の時間内で適用することができる。
【0084】
本発明は、さらに
液体形態で、成分a)、c)およびd)を含む第1パートAを含有する第1容器または包装、
液体形態で、成分b)を含む第2パートBを含有する第2容器または包装、
を含むキットを提供する。
【0085】
例えば、パートBは純粋な液体シランで構成してもよい。
【0086】
パートAは、一般に、得られたゾル最終生成物の50重量%〜90重量%、好ましくは60重量%〜90重量%に相当し、パートBは、一般に、得られたゾル最終生成物の10重量%〜50重量%、好ましくは10重量%〜40重量%に相当する。この種類のキットは、貯蔵および使用が容易である。
【0087】
また本発明は、上記方法で調製可能なゾル-ゲル層、および少なくとも1つのかかるゾル-ゲル層で被覆した少なくとも1つの表面を有する基材または物品を提供する。これら基材または物品の例は、例えば航空機である。
【0088】
さらに本発明は、基材の表面、特に金属、金属合金、および金属または金属合金を含む複合材料から選択される材料で作製された表面に対して耐食特性を付与するために、本発明による方法で調製した前記ゾル-ゲル層の使用に関する。
【0089】
有利なことに、前記表面は前記ゾル-ゲル層だけで被覆される、換言すれば、前記ゾル-ゲル層だけが表面に使用される。
【0090】
この理由は、本発明によるまたは本発明の方法により調整されたゾル-ゲル層が、驚くべきことにいかなる他の塗料の被覆、プライマーまたは他の被覆を使用すること無く、それだけで前記表面に耐食特性を付与することが可能であることが見出されたことによる。これは、他の層の堆積無しで済ませることを可能にし、金銭的に、時間的に、および例えば航空機の分野で特別の関心事である重量面で節約をもたらす。
【0091】
さらに本発明は、基材の表面上に2つ以上の層を含み、これら層の少なくとも1つが上で説明した方法によって調製されたゾル-ゲル層である、被覆の調製に関する方法を提供する。
【0092】
特に、本発明はさらに基材の表面上に2つ以上の層を含む被覆の調製方法を提供し、ここで、
ゾル-ゲル層が前記表面上に調製され、次いで
1つまたは複数の他の層が、前記ゾル-ゲル層に塗布され、前記他の層が、例えば塗料、プライマー、マスチック、接着剤または樹脂層から選択される。
【0093】
前記ゾル-ゲル層以外の層は、調製直後、すなわち乾燥後にゾル-ゲル層に適用することもできるし、または前記層は、その調製後のある時間以内、例えば1カ月から10年以内に適用することもできる。
【0094】
この理由は、ゾル-ゲル層がそれ自体耐食特性を有しているので、他の層をすぐに備える必要がないからである。かかる層は、ライトクリーニング後、適切ならば修繕または検査時に後に調製することができる。
【0095】
被覆は、例えば、以下に説明する特定の性質を有するゾル-ゲル層から選択される、2つ以上の同一のまたは異なるゾル-ゲル層、および場合によっては、例えば、塗料、プライマー、マスチック、接着剤または樹脂層から選択される1つまたは複数の層を含むこともできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0096】
本発明は、基本的に基材の表面上にゾル-ゲル層を調製する方法に関して与えられる以下の詳細な説明を読むことによって、より良く理解されるであろう。
【0097】
この方法は、第1に、基材の表面にゾル層を得ることを目的としたゾルの前記表面上への堆積を含む。
【0098】
本発明による基材は、ゾル-ゲル層を受け入れることのできる、どの材料でもよい。本発明による方法は、極めて多種多様な材料に適用され、結果として得られた層の性質は優れている。
【0099】
基材は、金属;金属合金;有機物または鉱物、無機ガラス;プラスチックなどの有機材料;木材;紙;セラミックス;織物;コンクリート;石;およびこれらの材料を2つ以上含む複合材料から選択される材料で一般に作製される。これらの材料は、場合によっては、メッキを施し、かつ/または表面処理し、かつ/または被覆する、例えばペンキを塗ることもできる。
【0100】
基材の材料は、特に、アルミニウム;チタン;銅;鉄;および鋼鉄、例えばステンレス鋼、インコネル、などこれらの合金から選択することもできる。
【0101】
アルミニウム合金には、等級6056、2024および7075が含まれる。
【0102】
チタン合金には、Ti-6-4、Ti-15-3-3-3、Ti-6-2-2-2-2およびTi-3-2.5合金が含まれる。
【0103】
基材は、どのような形態を取ることもできるが、一般にはプレート、シートまたはフォイルの形態を取る。しかしながら、本発明による方法は、非常に複雑な形状の表面であっても層を堆積させることができる。層が堆積する表面は、基材の全表面の一部のみであることができ、前記表面の全体であることもできる。例えば、本発明による方法を用いて、フォイル基材の両面に層を堆積させることもできる。
【0104】
表面へのゾルの堆積の前に、例えば化学的および/または物理的および/または機械的処理によって、表面を清浄化および/または活性化および/または酸洗いすることが、一般に好ましい。
【0105】
これは、かかる清浄化が、堆積する層の有効な付着性を得るために重要であるからである。これら清浄化方法は当業者に知られており、これらは、例えば酸性または塩基性溶液による湿式方法での清浄化、あるいはアルカリまたは溶媒脱脂、またはその他の、例えばショットブラストおよび/またはサンドブラストおよび/または火焔吹付(フレーム処理)による乾式方法での清浄化を含むこともできる。
【0106】
ある支持体に関しては、密着性促進式の特別な処理を加えることもできる。
【0107】
この種の清浄化および/または活性化処理は当業者に知られており、従来技術において、より具体的には、この記載を参照として使用することのできるUS-A-5,869,141など、上で以前に引用されている従来技術の文献において説明されている。
【0108】
表面は、場合によっては単純なクロム酸塩転換層、陽極酸化層、または他の層(これは、特に既存の材料の修繕に関連する場合に使用される)から選択される表面処理層を用いて被覆することもできる。したがって、この後者の層の表面は、その上にゾルが堆積された表面である。
【0109】
好ましくは清浄化および活性化した表面上に、以下の化合物(化合物の量は重量パーセントで表される)を含む本発明による濃縮されたゾルを堆積させる。
a)3%〜30%、好ましくは5%〜20%、より好ましくは7%〜15%、特に8%〜14%、とりわけ10%〜13%、例えば10.8%または12%の、ジルコニウム、アルミニウムまたはチタンの少なくとも1つの有機金属化合物;
b)5%〜50%、好ましくは5%〜40%、より好ましくは10%〜40%、特に15%または20%〜30%、例えば22%または23%の、少なくとも1つの有機シラン化合物;
c)1%〜15%、好ましくは2%〜10%、より好ましくは3%〜8%、例えば5%の、酸、塩基、グリコールおよびエトキシエタノールから選択される少なくとも1つの化合物;
d)100%までの残りの部分の脱イオン水または蒸留水;
a)およびb)の合計量は30%超、好ましくは31.2%;31.5%;32%;または33%超、より好ましくは35%超、特に40%超、とりわけ50%超である。
【0110】
本発明によるゾルは、重量固体含有量が一般に2%〜4%である従来技術のゾルと比較して濃縮されたゾルである。本発明によるゾルは、一般に4%超の重量固体含有量を有しており、場合により、例えば37%まであるいはそれ以上であり;好ましくは固体含有量が4%〜37%、より好ましくは固体含有量が18%〜37%、より好ましくは20%〜30%である。
【0111】
従来技術のゾルと比較して、異なる成分のa)、b)およびc)は、著しく増加した濃度を有している。特に、例えば酸の成分c)の全配合物中におけるパーセントの増加によって、より高い濃度の成分a)およびb)のこれら混合物において相容性と溶解性を得ることを可能にする。
【0112】
しかしながら、TPOZなどの有機金属化合物a)と、GLYMOなどの有機シラン化合物との間の比率は、従来技術と同じ比率のままに止まっている。一般に言えば、GLYMOなどの有機シラン化合物のTPOZなどの有機金属化合物に対する比率は、1.5または1.6〜6、好ましくは1.8〜2.5である。
【0113】
希釈の程度、すなわち、例えば水などの溶媒a)を本発明によるゾルへ組み込む量は、所望する性能および厚さに応じて調節することもできることは明らかである。同様に、TPOZなどの有機金属化合物と、GLYMOなどの有機シラン化合物との間の比率は、要求される優先的性能パラメータに従って修正することができる。この比率を増加させた結果、得られるフィルムの硬度および耐食性能が、塩噴霧試験および糸状腐食の両方に関して一般に向上する。
【0114】
有機金属化合物a)は、その金属がジルコニウム、チタンおよびアルミニウムから選択される化合物から選択される。かかる化合物は、例えば、上で以前に既に引用した文献、およびその記述を参考として使用することのできる、US-B1-6,361,868において説明されている。
【0115】
化合物a)は、一般に以下の式(I)または式(II)である。
RxM4+R'4-x (I)、
RxAl3+R'3-x (II)、
ここにおいて、MはZrまたはTiを表し、Rは分離可能な、除去可能な、例えば加水分解可能な基を表し、R'は分離不可能な、除去不可能な、例えば加水分解不可能な基を表し、xは式(I)の場合には1〜4であり式(II)の場合には1〜3であり、式(I)または式(II)の化合物中に、2つ以上の基Rおよび/またはR'が存在する場合、これらはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0116】
分離可能な、除去可能な、例えば加水分解可能な基は、化合物が水などの溶媒と接触(加水分解)した場合に、金属原子M(Zr、TiまたはAl)から分離されまたは除去されて、金属原子に付着して残ることはない基である。
【0117】
分離不可能な、除去不可能な、例えば加水分解不可能な基は、化合物が水などの溶媒d)と接触(加水分解)した場合に、金属原子Mから分離または除去されずに、金属原子Mに付着して残る基である。
【0118】
除去可能な、分離可能な、加水分解可能な基Rは、一般に、F、Cl、Br、およびIなどのハロゲン、特にClおよびBr;アルコキシ基、好ましくはC1〜C10、より好ましくはC1〜C5、特にC2〜C4の直鎖または枝分かれしたアルコキシ基であって、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペンチルオキシおよびn-ヘキシルオキシ基など;シクロアルキルオキシ基、好ましくはC3〜C10のシクロアルキルオキシ基であって、例えば、シクロプロピルオキシ基およびシクロヘキシルオキシ基など;アリールオキシ基、好ましくはC6〜C10のアリールオキシ基であって、例えば、フェノキシ基など;アシルオキシ基、好ましくはC1〜C4アシルオキシ基であって、例えば、アセトキシおよびプロピオニルオキシ基など;アルキルカルボニル基、例えばアセチル基など;(C1〜C6)アルコキシ-(C2〜C3)-アルキル基(具体的には、C1〜C6アルキル-エチレングリコールまたはプロピレングリコールから誘導された基)から選択される。アルコキシ基、特にメトキシ基、とりわけエトキシ基は、好ましい加水分解可能な基である。
【0119】
R基は、場合によってはさらに、一般にハロゲンおよびアルコキシ基から選択される1つまたは複数の置換基を含むこともできる。
【0120】
除去不可能な、分離不可能な、例えば加水分解不可能な基R'は、一般に水素;ヒドロキシル基;アルキル基、好ましくはC1〜C10、より好ましくはC1〜C4の直鎖または枝分かれしたアルキル基であって、例えばメチル、エチル、プロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチル基など;アルケニル基、好ましくはC2〜C4のアルケニル基であって、例えば、ビニル、1-プロペニル、2-プロペニルおよびブテニル基など;アルキニル基、好ましくはC2〜C4のアルキニル基であって、例えば、アセチレニルおよびプロパルギル基など;アリール基、好ましくはC6〜C10アリール基であって、例えばフェニルおよびナフチル基など;メタアクリロイルおよびメタアクリロイルオキシプロピル基から選択される。R'基は、場合によっては、一般にハロゲンおよびアルコキシ基から選択される1つまたは複数の置換基をさらに含むことが可能である。
【0121】
好ましい有機金属化合物は、式 MR4 (M=ZrまたはTi)あるいはAlR3の化合物であり、ここでRは既に上記で定義してある。
【0122】
これらの化合物のなかで、さらに好ましい化合物は、3つまたは4つの基 R が同じであって、アルコキシ、アリールオキシまたはシクロアルキルオキシ基などの同じ基を表す化合物である。
【0123】
最も好ましい化合物は、チタンまたはジルコニウムテトラ(アルコキシド)、およびアルミニウムトリ(アルコキシド)であり、より特別にはジルコニウムテトラ(アルコキシド)である。さらにより好ましい化合物は、テトラ-n-プロポキシジルコニウム(「TPOZ」)およびテトライソプロポキシジルコニウムである。
【0124】
ゾルは、アルミニウム、チタンまたはジルコニウムアルコキシド、例えばテトラ-n-プロポキシジルコニウム(TPOZ)など、1つだけの有機金属化合物を含むこともできる。
【0125】
別な方法として、ゾルは、例えば、上述の金属アルコキシドからおよび他の化合物から選択される2つ以上の有機金属化合物を含むこともできる。
【0126】
成分a)の有機金属化合物の例は、
Al(OCH3)3、Al(OC2H5)3、Al(O-n-C3H7)3、Al(O-i-C3H7)3、Al(OC4H9)3、Al(O-i-C4H9)3、Al(O-sec-C4H9)3、AlCl3、AlCl(OH)2、Al(OC2H4OC4H9)3、TiCl4、Ti(OC2H5)4、Ti(OC3H7)4、Ti(O-i-C3H7)4、Ti(OC4H9)4、Ti(2-エチルへキシオキシ)4、ZrCl4、Zr(OC2H5)4、Zr(OC3H7)4、Zr(O-i-C3H7)4、Zr(OC4H9) 4、ZrOCl2、Zr(2-エチルへキシオキシ)4である。
【0127】
本発明によるゾルは、TPOZなどのジルコニウムアルコキシドから選択される単一有機金属化合物を含むことが好ましい。
【0128】
本発明によるゾル中で使用することのできる有機金属化合物は、上述の文献、特にそれらの記述を参照として使用することのできる、US-A-6,008,285、US-B1-6,228,921、US-B1-6,482,525、US-B1-6,361,868に記載されている。
【0129】
有機シラン化合物は、例えば文献US-A-5,814,137など、数多くの従来技術の文献においてシランカップリング剤として参照されていることもある化合物である。
【0130】
有機シラン化合物b)は、シリコンに付着している少なくとも1つの除去不可能な、分離不可能な、好ましくは加水分解不可能な基、好ましくは特定の性質を提供することができる基を有し、シリコンに付着している少なくとも1つの除去可能な、分離可能な、加水分解可能な基を有する化合物が好ましい。「除去可能なおよび除去不可能な」という用語は、上で既に定義した。
【0131】
有機シラン化合物は、2つまたは3つの、特に3つの除去可能、分離可能、例えば加水分解可能な基、および1つまたは2つの、特に1つの除去不可能、分離不可能、例えば加水分解不可能な基を含んでいることが好ましい。
【0132】
前記の分離可能な、除去可能な、例えば加水分解可能な基は、一般に、F、Cl、Br、およびIなどのハロゲン、特にClおよびBr;アルコキシ基、好ましくはC1〜C10、好ましくはC1〜C5、特にC2〜C4の直鎖または枝分かれしたアルコキシ基であって、例えばメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペンチルオキシおよびn-ヘキシルオキシ基など;シクロアルキルオキシ基、好ましくはC3〜C10のシクロアルキルオキシ基であって、例えば、シクロプロピルオキシ基およびシクロヘキシルオキシ基など;アリールオキシ基、好ましくはC6〜C10のアリールオキシ基であって、例えばフェノキシ基など;アシルオキシ基、好ましくはC1〜C4アシルオキシ基であって、例えば、アセトキシおよびプロピオニルオキシ基など;ならびにアルキルカルボニル基、例えばアセチル基から選択される。好ましい分離可能な、除去可能な、例えば加水分解可能な基は、アルコキシ基であり、特にエトキシ基である。
【0133】
前記の分離不可能な、除去不可能な、例えば加水分解不可能な基は、一般に、水素;ヒドロキシル基;メルカプト基;シアノ基;アルキル基、好ましくはC1〜C10、より好ましくはC1〜C4の直鎖または枝分かれしたアルキル基であって、例えばメチル、エチル、プロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチル基など;アルケニル基、好ましくはC2〜C4のアルケニル基であって、例えばビニル、1-プロペニル、2-プロペニルおよびブテニル基など;アルキニル基、好ましくはC2〜C4のアルキニル基であって、例えばアセチレニルおよびプロパルギル基など;アリール基、好ましくは、C6〜C10のアリール基であって、例えばフェニルおよびナフチル基など;アルキルアリール基;アリールアルキル基;(メタ)アクリルおよび(メタ)アクリルオキシプロピル基;グリシジルおよびグリシジルオキシ基;ならびに第1級、第2級または第3級アミノ基-この場合は、例えば、アミノアリールまたはアミノアルキル基などの加水分解不可能な基-アミド、アルキルカルボニル、置換または非置換のアニリン、アルデヒド、ケトン、カルボキシル、無水物、ヒドロキシル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、メルカプト、シアノ、ヒドロキシフェニル、アルキルカルボキシレート、スルホン酸、リン酸、(メタ)アクリルオキシルオキシ基、グリシジルおよびグリシジルオキシ、アリルおよびビニル基などのエポキシド環を含む基から選択される少なくとも1つの基を含むアルキル、アルケニル、アルキニル、アルキルアリールおよびアリールアルキル基などの基から選択される。
【0134】
前記の分離可能な、除去可能な、加水分解可能な基および分離不可能な、除去不可能な、加水分解不可能な基は、場合によっては、さらに一般にアルコキシ基およびハロゲン原子から選択される、1つまたは複数の置換基によって置換されることもできる。
【0135】
特に好ましい有機シラン化合物は、以下の式を有する。
Si(R1')(R1)3(III)、
ここで、基R1は互いに同じかまたは異なっており、同じであることが好ましく、上で定義した分離可能な、除去可能な、例えば加水分解可能な基、好ましくはC1〜C4アルコキシ基、より好ましくはエトキシまたはメトキシ基を表し;R1'は上で定義した分離不可能な、除去不可能な、例えば加水分解不可能な基、好ましくはグリシジルまたはグリシジルオキシ-C1〜C20、好ましくはC1〜C6、アルキレン基、例えばγ-グリシジルオキシプロピル基、β-グリシジルオキシエチル基、τ-グリシジルオキシブチル基、ε-グリシジルオキシペンチル基、ω-グリシジルオキシヘキシル基および2-(3,4-エポキシシクロへキシル)エチル基;または3-アミノプロピル、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルおよびN-[N'-(2'-アミノエチル)-2-アミノエチル]-3-アミノプロピル基から選択されることが好ましい少なくとも1つの第一、第二または第三アミノ基を含む基である。
【0136】
有機シラン化合物は、以下の化合物から選択されるのが有利である。
アリルトリメトキシシラン、
N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、
N-[N'-(2'-アミノエチル)-2-アミノエチル]-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、
3-アミノプロピルトリメトキシシラン、
3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO)、
3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、
3-メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、
3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、
N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、
ビニルトリメトキシシラン。
【0137】
上記に列挙された化合物のなかで、好ましい化合物はGLYMOである。
【0138】
本発明の特に好ましくて有利な一実施形態により、有機シラン化合物は、その加水分解反応がメタノールの生成をもたらさない化合物から選択される。この理由は、メタノールが非常に毒性の化合物であるからで、メタノールの生成は避けねばならない。
【0139】
従来技術の文献の大部分、特に上で引用した米国特許は、ゾルの堆積を実施する人間の安全に関して非常に重要であるこの基準を全く考慮しておらず、これらはメタノールの生成をもたらすことができる数多くの化合物を含むシランのリストを掲載している。シラン濃度が従来技術におけるよりも高い、本発明によるゾルを用いることで、かかるシランの使用の有利な特性は一層明瞭に示される。
【0140】
加水分解時にメタノールの生成をもたらさないこの種の有機シランは、一般にメトキシ基などの基を含まない化合物であり、これらは以下の化合物から選択することもできる。
3-アミノプロピルトリエトキシシラン、
p-アミノフェニルシラン、
3-グリシジルオキシプロピルジイソプロピルエトキシシラン、
3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、
(3-グリシジルオキシプロピル)メチルジエトキシシラン、
3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、
3-メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、
ビニルメチルジエトキシシラン、
ビニルトリエトキシシラン、
N-[(3-(トリエトキシシリル)プロピル]-4,5-ジヒドロキシイミダゾール。
【0141】
したがって、より具体的にGLYMO は、メトキシ基を含まないGLYEO、すなわち3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランによって置換されることもできる。実験室での試験では、普通なら同じ成分を含んでいるゾル中でGLYMO をGLYEO と置換した場合、フィルムの品質および耐食性性能の両方に関して、同じ性能特性を有するフィルムが得られることが示されている。
【0142】
本発明の方法に使用することのできるシラン化合物は、特に上述の文献およびその記述を参照として使用することのできる文献EP-A-0 195 493に記載されている。
【0143】
触媒と呼ぶこともできる成分c)は、酸、塩基、グリコール、およびエトキシエタノールなど他の化合物から選択することもできる。
【0144】
成分c)が酸の場合、好ましくは、有機酸、無機酸およびこれらの混合物から選択することもできる。
【0145】
有機酸は、特に、例えば酢酸の脂肪族モノカルボン酸、例えばクエン酸のジカルボン酸およびトリカルボン酸などのポリカルボン酸などのカルボン酸、ならびにこれらの混合物から選択することもできる。
【0146】
使用する無機酸は、硝酸または塩酸製およびこれらの混合物製とすることもできる。
【0147】
化合物c)が塩基の場合は、エタノールアミン、トリエチルアミンおよびこれらの混合物などのアミンから選択することもできる。塩基は、使用する基材またはシランの性質によって、酸が禁止されている場合、特に使用される。
【0148】
成分c)として使用することのできる他の化合物は、上述の文献において記述されている。
【0149】
溶媒d)は、脱イオン水または蒸留水である。アルコールなど、1つまたは複数の非毒性または非有害な溶媒、好ましくは1〜10個、特に1〜4個の炭素原子を含む、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノールおよびn-ブタノールなどの脂肪族アルコールを、溶媒d)にさらに含めることができる。
【0150】
好ましい溶媒は、蒸留水または脱イオン水である。
【0151】
成分a)、b)、c)およびd)が、本発明によるゾルの基本的化合物であり、塩基性組成物を生成し、これに対して要件および所望の性質に応じて、以下に記述する1つまたは複数の付加的な、任意選択の成分を加えることができる。
【0152】
ゾルは、種々の基材の湿潤性および分散性を向上させ、同時に形成されるネットワークの品質およびゾル-ゲルフィルムの固有の耐食性を向上させるために、少なくとも1つの界面活性剤をさらに含むこともできる。
【0153】
これらの界面活性剤には、例えば、30%濃度水溶液の形態のナトリウムラウロイルサルコシナートなどのサルコシナートを含むイオン性界面活性剤;およびエトキシル化脂肪族アルコールなどの非イオン性界面活性剤が含まれる。
【0154】
界面活性剤は、一般にゾルの0.05重量%〜2重量%または3重量%までの割合で存在する。
【0155】
適切な界面活性剤の添加による湿潤性の改良は、正しく調製された表面において、ポッピング現象、または乾燥時の縮みの現象無しの均一なフィルムの取得を可能にする。したがって、界面活性剤の起こり得る耐食性は、防護の品質を強化することもある。
【0156】
ゾルは、少なくとも1つの有機結合剤をさらに含むこともでき、これは一般に、例えば、エポキシ結合剤、ポリウレタン結合剤、ビニル結合剤、ポリエステル結合剤、ジオール結合剤、アクリレート結合剤、およびUVの下で反応もしくは架橋する結合剤、または光重合結合剤、ならびにグリセロフタレート樹脂から選択される樹脂またはポリマーである。特に、結合剤は、本発明によるゾル中で使用されることもある、高度に酸性の混合物と相容性のある結合剤から選択される。
【0157】
特に適した樹脂の例は、アルキド樹脂の油乳剤の形態で、DSM ResinsからURADIL AZ554の名称の下で販売されている製品、およびビスフェノールAエポキシ樹脂で、Industrial Copolymer LimitedからIncorez 170の名称の下で販売されている製品である。
【0158】
有機結合剤、特に上述の好ましいアルキッド樹脂結合剤または好ましいエポキシ結合剤は、一般にゾルの全重量に対して0%〜30%の量が使用される。
【0159】
有機結合剤は、柔軟性、耐衝撃性、および低温での引っ張り強さなど、応力下での耐性特性を最適化するためのフィルムの曲げ特性改良を可能にする。
【0160】
有機結合剤は、塗料膜により近い厚いフィルムを得ることを可能にするので、ゾルから得られたフィルムの耐食性の改良を可能にすることもある。
【0161】
ゾルは、雲母および滑石から選択される充填剤をさらに含むこともでき、これらの層状構造によって、ゾル-ゲルフィルの耐食性および引っかき抵抗性などのある種の性質を最適化することもできる。
【0162】
滑石および/または雲母は、1重量%〜20重量%、好ましくは3重量%〜10重量%の割合で組み入れることもできる。
【0163】
ゾルは、カオリンから選択される充填剤をさらに含むこともでき、これはアルコキシドと反応すると考えられるかまたはネットワーク形成に密接に入り込み、これはより厚いフィルムを得ることを可能にし、その上製品コストを低下させる。
【0164】
この種の充填剤は、存在する場合は、一般にゾルの重量の3%〜15%、好ましくは5%〜10%になる。
【0165】
本発明によるゾルは、上述の有機金属化合物および有機シラン化合物a)およびb)以外の有機金属化合物および有機シラン化合物から選択される、少なくとも1つの付加的化合物をさらに含むこともできる。これらは存在する場合、付加的有機金属化合物に関しては1重量%〜10重量%の割合で、付加的有機シラン化合物に関しては2重量%〜5重量%の割合で存在する。
【0166】
化合物a)以外の付加的有機金化合物は、ジルコニウム、アルミニウムおよびチタン以外の金属、例えばセリウム、イットリウム、ランタン、鉛、スズ、アンチモン、ホウ素、バナジウム、インジウム、ニオブ、ビスマスおよびハフニウムなどを含む全ての有機金属化合物を含むことができる。
【0167】
例えば、ジルコニウム、アルミニウムおよびチタン以外の金属の全てのアルコキシド/アルコラート、ならびに酢酸イットリウム三水和物、他の水和物などの化合物;硝酸イットリウム;酢酸セリウム水和物;アセチルアセトナトナトリウム水和物;ステアリン酸セリウム;硝酸ランタン六水和物;酢酸ランタン水和物;およびランタンアセチルアセトナトなどが挙げられる。
【0168】
有機シラン化合物b)以外の付加的有機シラン化合物のなかで、式(IV)の化合物を挙げることもできる。
Si(R1)4 (IV)、
ここで、
R1は、上で既に定義した、除去可能な、分離可能な、加水分解可能な基を表し;R1は、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、sec-ブトキシ、またはtert-ブトキシなど、1〜4個の炭素原子のアルコキシ基であることが好ましい。
【0169】
有機シラン化合物b)以外の付加的有機シラン化合物は、フルオロシランから選択することもできる。かかるフルオロシランは、例えば、これらの記載を参照として使用することのできる、文献DE-A-4118184および文献US-B1-6,361,868において記載されている。これらフルオロシランの例は以下の通りである。
C2F5CH2-CH2-SiY3
n-C6F13CH2CH2-SiY3
n-C8F17CH2CH2-SiY3
n-C10F21CH2CH2-SiY3
(Y=OCH3、OC2H5またはCl)
i-C3F7O-(CH2)3-SiCl2(CH3)
n-C6F13CH2CH2SiCl2(CH3)
n-C6F13CH2CH2SiCl(CH3)2
【0170】
他のフルオロシランが、文献US-B1-6,482,525および文献EP-A-587 067に記載されており、これらの記載はまた参照として使用することができる。
【0171】
本発明によるゾルは、例えば1つまたは複数の希土類金属塩などの、1つまたは複数の金属塩をさらに含むこともできる。希土類塩は、セリウムの酢酸塩およびシュウ酸塩、ランタンおよびセリウムの塩化物などの希土類金属エステルから選択することもできる。メタバナジウム酸ナトリウムおよびメタバナジウム酸カルシウムなどのアルカリおよびアルカリ土類金属バナジウム酸塩。他の金属塩は、メタホウ酸バリウムなどのアルカリおよびアルカリ土類金属ホウ酸塩である。本発明によるゾルは、これら金属塩の任意の組合せを含むこともできる。これらの塩に関しては文献US-A-5,806,562を参照することもできる。
【0172】
金属塩は、存在する場合、一般にゾル中に0.5重量%〜5重量%の量が存在する。
【0173】
本発明によるゾルは、例えば、塩、電解質物質、レドックス対、ポリアニリン型の導電性ポリマー、フェロセン、含硫ポリスチレン、カーボンブラック、およびその他の電荷を通す性質を有する相容性のある製品全てから選択される、さらに1つまたは複数の導電材料を含むこともできる。
【0174】
本発明によるゾルは、染料、顔料および真珠層から選択される着色剤マトリックスをさらに含むこともできる。
【0175】
顔料は、装飾用顔料およびフィルムの導電性および/または反射性を向上させるために使用される顔料から選択することもできる。
【0176】
本発明による特に好ましい1つのゾルは、重量パーセントで、
a)3%〜30%、好ましくは5%〜20%、より好ましくは7%〜15%、特に8%〜14%、とりわけ10%〜13%、例えば10.8%または12%、のテトラ-n-プロポキシジルコニウム(TPOZ)、アルミニウムまたはチタン;
b)5%〜50%、好ましくは5%〜40%、より好ましくは10%〜40%、特に15%または20%〜30%、例えば22%または23%の、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO);
c)1%〜15%、好ましくは2%〜10%、より好ましくは3%〜8%、例えば5%の、酸、塩基、グリコールおよびエトキシエタノールから選択される少なくとも1つの化合物;
d)100%までの残りの部分の脱イオン水または蒸留水
を含み、a)およびb)の合計重量が30%超、好ましくは31.2%;31.5%;32%;または33%超であり、より好ましくは35%超、特に40%超、とりわけ50%超である。
【0177】
GLYMOは、GLYEOによって置換されることが有利なこともある。
【0178】
ゾルは、基材に堆積するある時間前に、上で定義した主要な4つの成分a)、b)、c)およびd)を混合することによって調製することができる。しかしながら、本発明による好ましい一実施形態において、ゾルは2つのパート、AおよびBから調製することもできる。
【0179】
液体形態の第1パートAは、上に記載したゾルの成分a)、c)およびd)を含み、液体形態の第2パートBは、上に記載したゾルの成分b)を含む。第1パートAは、通常、酢酸、場合によっては1つまたは複数の添加剤も含む、蒸留水中で加水分解したジルコニウムアルコキシド(例えばTPOZ)を含み、パートBはシラン(GTMSなど)または純シランの混合物を含む。
【0180】
基材上に堆積するのに使用されるゾルは、従来技術における、4つ以上の製品(その内のあるものは固体である)に代えて、パートAおよびBで形成される2つの液体製品を混合するだけで得る。2つの液体構成要素(パートAおよびB)は、従来の撹拌システムを使用して、少量の場合は手動によっても、非常に容易に混合される。2つのパート、AおよびBは、適切な包装または容器中において、例えば、使用する前に簡単な均質化をする場合は1カ月から2年間に及ぶ期間安定に貯蔵される。
【0181】
パートAは、一般に調製されるゾルの重量の50%〜90%に相当し、したがってパートBは、一般に調製されるゾルの10重量%〜50重量%に相当する。
【0182】
全ての成分あるいは2つのパートAおよびBを混合した後に得られるゾルは、0分〜24カ月、好ましくは0分〜12カ月、より好ましくは0分〜6カ月、特に30分〜8時間以内に適用することができる。
【0183】
ゾルが、4成分または2つのパートAおよびBを混合することで調製される点の間を経過する時間は、ゾルが熟成するのを可能にする。この時間は、例えばジルコニウムアルコキシドなどの有機金属化合物、および有機シランの加水分解の速度に依存する。
【0184】
最適な熟成時間は、一般に、シリコンおよびジルコニウムが、例えば基材の金属表面などの表面と反応するために、ジルコニウムの化合物およびシランが十分に加水分解される時間である。
【0185】
ジルコニウム化合物は、蒸留水を含むパートAにおいては、既に加水分解した形態であることに留意されたい。
【0186】
好ましくは予め清浄化および/または活性化した表面へのゾルの堆積は、噴霧、散液または浸漬など、当業者にとって既知の任意の技法でなし遂げることもでき、ここにおいて好ましい技法は、噴霧の技法である。
【0187】
表面にゾルを堆積-適用-する操作は、一般に0〜80℃、好ましくは20〜60℃、例えば50℃の温度で行われる。
【0188】
堆積の後、その表面がゾルの層で被覆された基材が得られる。
【0189】
このゾル層は、その後当該技術分野で知られている方法で乾燥する。乾燥は、一般に0℃〜500℃、好ましくは50〜150℃、より好ましくは80℃〜130℃の温度で行われ、時間は使用する乾燥様式に応じて、例えば1秒〜2 時間、好ましくは5分〜1時間、より好ましくは20〜30分である。
【0190】
乾燥は、野外でまたは炉中で基材を加熱することによって、あるいは市販されていて当業者に知られている高速加熱手段を使用して行われる。乾燥は、さらにUV架橋と相まって行われることもある。
【0191】
乾燥を、US-A-5,814,137のカラム11、15〜23行に記載されているような乾燥サイクルで行うことが可能である。
【0192】
別の方法として、セラミック溶融処理を、おそらく2500℃までの温度、例えば800〜1500℃において行うことが可能である。
【0193】
ゾル層は、特に既存の装置または密閉したチャンバー内で焼成するのが難しい装置の修理などの状況において、パルスエア熱ストリッパー(塗料バーナー)、赤外線加熱手段など、移動式加熱手段によって乾燥することが有利なこともある。
【0194】
本発明による方法によって、単一のゾル-ゲル層だけを堆積させることが可能である。このゾル-ゲル層は、一般に0.5〜20μmの乾燥厚さを有している。本発明によるゾル成分の高い濃度により、本発明による単一ゾル-ゲル層を用いて、耐食性に関して優れた結果が達成されることがわかった。この層は、一般に、薄いゾルから調製された従来技術のゾル-ゲル層よりも高い厚さ、すなわち、0.1〜0.4μm、好ましくは0.2〜0.3μmの乾燥厚さを有している。
【0195】
各層が、前の層および次の層と異なる組成を有し、各堆積層が、以下に説明する性質から選択される異なる性質を示す多層被覆を形成するために、2層以上のゾル-ゲル層を堆積させることも可能である。一般にいえば、1〜5層、好ましくは2〜3層を堆積させることが可能である。
【0196】
ゾル中に組み込まれるさまざまな添加剤により、堆積したゾル-ゲル層はさまざまな性質を有することが可能である。
【0197】
当業者は、必要に応じて、以下の性質を有するゾル-ゲル層を得るために、上で説明した成分a)、b)、c)およびd)を必須で含む本発明によるゾルに、どんな添加剤を加えるべきかを容易に決定することができる。したがって、耐引っかき性;磨耗防止性;耐摩擦性;曇り止め;耐静電性;耐反射性;エレクトロルミネッセント性;フォト変動性;電導性(高および低K);超電導性;強誘電性(圧電性および焦電気性);バリア(ガス、塩基、酸、ストリッパー、「Skydrol」などの作動液を含むさまざまな化学製品に対する);防汚染性;サーモクロミック性;ルミネッセント;非線形光学;難燃性;複合体のためのゾル-ゲル被覆;耐接着性(付着抵抗性);絶縁性;耐汚染性;プライマー;塗料;疎水性;親水性;多孔質;殺菌性;防臭性;および耐磨耗性のゾル-ゲル層などを調製することが可能である。
【0198】
本発明によれば、上で説明した性質のなかから任意の組合せを示す多層被覆を調製することも可能である。
【0199】
ここで、本発明を、例示であって制限するものではない、以下の実施例を参照して説明する。
【0200】
(実施例)
(実施例1)
この実施例において、本発明によるゾルは、第1パートすなわち成分Aおよび第2パートすなわち成分Bから調製し、前記ゾルを、アルミニウム試験片に適用し、調製されたゾル-ゲル層の性質を評価する。
【0201】
1.1.混合物Aの調製
・完全に清浄化した1リットルビーカー中に、正確に108gの1-プロパノール中70%のTPOZを秤量する;
・ゆっくりと撹拌しながら、正確に50gの96%酢酸を加える;
・均質化した後、正確に622gの蒸留水を撹拌しながら加える;
・撹拌を、透明な、均質な液体が得られるまで続ける(約1時間);
・加水分解反応を促進するため、約60℃まで加熱することができる;
・混合物を、濾紙を通してろ過し、次いで完全に気密性のフラスコ中に保管する。
【0202】
1.2.ゾルの調製
・完全に清浄化した2リットルビーカー中に、正確に680gの混合物A(成分AまたはパートA)を注ぎ、次いで撹拌しながら、正確に220gのGLYMO(98%グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン)(成分BまたはパートB)を注ぐ;
・撹拌を、透明な、均質な相が得られるまで続ける(約1時間);
・加水分解反応を促進するため、約60℃まで加熱することができる;
・混合物を、実験室用濾紙を通してろ過し、次いで完全に密閉したフラスコ中に保管する。
注:かかる混合物の重量固体含有量は、20%程度である。
【0203】
1.3.ゾルの適用
・2024 T3アルミニウム試験片を、以下に記述する手順に従って調製する:
水で希釈したアルカリ洗剤を用いて、60℃の温度において10分間撹拌しながら脱脂する;
水道水および蒸留水ですすぐ;
硫硝酸混合物を用いて、例えば、20〜50℃において10分間脱酸素する;
水道水および蒸留水を用いてすすぐ;
試験片を、パルス熱空気で乾燥する;
・試験片を、スプレーブース中の支持体上に置く;
・数時間以内に、予め調製した溶液(1.2.)をGraco Delta-スプレー空気式ガンなどの空気式ガンによって、空気圧を約5〜6バールに設定して適用する;
・表面は、プライマーまたは塗料の適用と全く同じ方法で、効果的に被覆され、次いで数分から1時間の時間内で、試験片を、例えば110℃に設定した炉中に置く。
・数分から1時間後に、試験片を取り出して冷却する。
【0204】
1.4.試験片の検査
冷却後、得られたゾル-ゲル層は以下の特性を有する:
・アルミニウム支持体への付着性;
・ゾル-ゲル層に適用した塗料およびプライマーの極めて良好な付着性;
・支持体の極めて良好な腐食防護(塩-噴霧および糸状腐食);
・1〜10ミクロン(Elcometer 355装置で測定)の、選択した適用パラメータによる堆積厚さ。
【0205】
塩-噴霧試験として知られている試験のために、試験片を、Q-Panel製気候室のQ-FOGサイクル腐食試験装置に設置する。本発明によるゾルで処理した試験片は、168時間後においても腐食は認められない。
【0206】
(実施例2)
この実施例において、従来技術によるゾルを成分A、B、CおよびDから調製する。前記ゾルをアルミニウム試験片に適用し、調製したゾル-ゲル層の性質を評価する。
【0207】
2.1. ゾルの調製
数グラムの酢酸からなる成分Aを、数グラムのn-プロパノール中70%のジルコニウムアルコキシドからなる成分Bと混合する;
数グラムのGLYMOシランからなる成分Cを、約950グラムの蒸留水からなる成分Dと混合する;
化合物(A+B)を化合物(C+D)と混合する;
この混合物を、約30分間そのまま作用させる。
注:かかる混合物の固体含有量は、5重量%未満である。
【0208】
2.2.ゾルの適用
アルミニウム試験片を、実施例1と同様の方法で調製し、上の実施例1で説明したのと同じ設備を使用して同じ条件で、ゾルを噴霧により適用する。
【0209】
2.3.試験片の検査
・アルミニウム支持体への付着性;
・ゾル-ゲル層に適用した塗料およびプライマーの極めて良好な付着性;
・非常に実質的なたるみあり、全表面を均質に湿潤化することが困難(乾燥の過程で特に観察される);
・乾燥後に測定した厚さ:最大200〜400ナノメートル;
・実施例1と同様に行った塩-噴霧試験は、従来技術のゾルを用いて調製したゾル-ゲル層の保護は、24時間未満であることを示している。金属上の腐食点は、数時間後においても観察される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量パーセントで、
a)3%〜30%、好ましくは5%〜20%、より好ましくは7%〜15%、特に8%〜14%、とりわけ10%〜13%、例えば10.8%または12%の、ジルコニウム、アルミニウムまたはチタンの少なくとも1つの有機金属化合物;
b)5%〜50%、好ましくは5%〜40%、より好ましくは10%〜40%、特に15%または20%〜30%、例えば22%または23%の、少なくとも1つの有機シラン化合物;
c)1%〜15%、好ましくは2%〜10%、より好ましくは3%〜8%、例えば5%の、酸、塩基、グリコールおよびエトキシエタノールから選択される、少なくとも1つの化合物;
d)100%までの残りの部分の脱イオン水または蒸留水
を含み、a)およびb)の合計量が30%超、好ましくは31.2%;31.5%;32%;または33%超であり、より好ましくは35%超、特に40%超、とりわけ50%超である、表面のゾル-ゲル被覆のためのゾル。
【請求項2】
1から10Cの非毒性または非有害性の脂肪族アルコールなどのアルコールから好ましくは選択される、5重量%未満、好ましくは3重量%未満、より好ましくは1重量%未満の非毒性または非有害性の有機溶媒を含む、請求項1に記載のゾル。
【請求項3】
4%超、好ましくは4%〜37%、より好ましくは18%〜37%、特に20%〜30%の重量固体含有量を有する、請求項1に記載のゾル。
【請求項4】
前記有機シラン化合物の前記有機金属化合物に対する比が、1.5または1.6〜6、好ましくは1.8〜2.5である、請求項1から3のいずれか一項に記載のゾル。
【請求項5】
前記有機金属化合物が、以下の式(I)または式(II):
RxM4+R'4-x (I)、
RxAl3+R'3-x (II)
[式中、MはZrまたはTiを表し、Rは分離可能な、除去可能な、例えば加水分解可能な基を表し、R'は分離不可能な、除去不可能な、例えば加水分解不可能な基を表し、xは式(I)の場合には1〜4、または式(II)の場合には1〜3であり、式(I)または(II)の化合物中に2つ以上の基Rおよび/またはR'が存在する場合、これらはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい]
を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のゾル。
【請求項6】
前記除去可能な、分離可能な、例えば加水分解可能な基Rが、一般に、F、Cl、Br、およびIなどのハロゲン、特にClおよびBr;アルコキシ基、好ましくはC1〜C10、より好ましくはC1〜C5、特にC2〜C4の直鎖または枝分かれしたアルコキシ基であって、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペンチルオキシ、n-ヘキシルオキシ基など;シクロアルキルオキシ基、好ましくはC3〜C10のシクロアルキルオキシ基であって、例えば、シクロプロピルオキシ基およびシクロヘキシルオキシ基など;アリールオキシ基、好ましくはC6〜C10のアリールオキシ基であって、例えば、フェノキシ基など;アシルオキシ基、好ましくはC1〜C4アシルオキシ基であって、例えば、アセトキシおよびプロピオニル基など;アルキルカルボニル基、例えばアセチル基など;(C1〜C6)アルコキシ-(C2〜C3)-アルキル基(具体的には、C1〜C6アルキル-エチレングリコールまたはプロピレングリコールから誘導された基)から選択され、前記R基は場合によっては、さらに、ハロゲンおよびアルコキシ基から選択される1つまたは複数の置換基を含むことができる、請求項5に記載のゾル。
【請求項7】
前記除去不可能な、分離不可能な、例えば加水分解不可能な基R'が、一般に水素;ヒドロキシル基;アルキル基、好ましくはC1〜C10、より好ましくはC1〜C4の直鎖または枝分かれしたアルキル基であって、例えばメチル、エチル、プロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチル基など;アルケニル基、好ましくはC2〜C4のアルケニル基であって、例えば、ビニル、1-プロペニル、2-プロペニルおよびブテニル基など;アルキニル基、好ましくはC2〜C4のアルキニル基であって、例えば、アセチレニルおよびプロパルギル基など;アリール基、好ましくはC6〜C10のアリール基であって、フェニルおよびナフチル基など;メタクリルおよびメタクリルオキシプロピニル基から選択され、前記R'基は場合によってはさらに、一般にハロゲンおよびアルコキシ基から選択される1つまたは複数の置換基を含むことができる、請求項5または6のいずれかに記載のゾル。
【請求項8】
前記有機金属化合物が、式MR4またはAlR3を有し、ここでMおよびRが請求項5で定義した通りである、請求項5から7のいずれか一項に記載のゾル。
【請求項9】
前記4つまたは3つの基Rが全て同一であり、アルコキシ、アリールオキシまたはシクロアルキルオキシ基などの同じ基を表す、請求項8に記載のゾル。
【請求項10】
前記有機金属化合物が、テトラ-n-プロポキシジルコニウム(「TPOZ」)またはテトライソプロポキシジルコニウムである、請求項9に記載のゾル。
【請求項11】
前記有機シラン化合物が、シリコンに付着した、少なくとも1つの除去不可能な、分離不可能な、好ましくは加水分解不可能な基と、少なくとも1つの除去可能な、分離可能な、好ましくは加水分解可能な基とを有する化合物である、請求項1から10のいずれか一項に記載のゾル。
【請求項12】
前記有機シラン化合物が、2つまたは3つ、特に3つの、除去可能な、分離可能な、例えば加水分解可能な基および1つまたは2つ、特に1つの、除去不可能な、分離不可能な、例えば加水分解不可能な基を含む、請求項11に記載のゾル。
【請求項13】
前記分離可能な、除去可能な、例えば加水分解可能な基が、F、Cl、Br、およびIなどのハロゲン、特にClおよびBr;アルコキシ基、好ましくはC1〜C10、好ましくはC1〜C5、特にC2〜C4の直鎖または枝分かれしたアルコキシ基であって、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペンチルオキシおよびn-ヘキシルオキシ基など;シクロアルキルオキシ基、好ましくはC3〜C10のシクロアルキルオキシ基であって、例えば、シクロプロピルオキシ基およびシクロヘキシルオキシ基など;アリールオキシ基、好ましくはC6〜C10のアリールオキシ基であって、フェノキシ基など;アシルオキシ基、好ましくはC1〜C4のアシルオキシ基であって、例えば、アセトキシおよびプロピオニルオキシ基など;ならびに、アセチル基などのアルキルカルボニル基から選択される、請求項12に記載のゾル。
【請求項14】
前記分離不可能な、除去不可能な、例えば加水分解不可能な基が、水素;ヒドロキシル基;メルカプト基;シアノ基;アルキル基、好ましくはC1〜C10、より好ましくはC1〜C4の直鎖または枝分かれしたアルキル基であって、メチル、エチル、プロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチル基など;アルケニル基、好ましくはC2〜C4のアルケニル基であって、例えばビニル、1-プロペニル、2-プロペニルおよびブテニル基など;アルキニル基、好ましくはC2〜C4のアルキニル基であって、アセチレニルおよびプロパルギル基など;アリール基、好ましくは、C6〜C10のアリール基であって、フェニルおよびナフチル基など;アルキルアリール基;アリールアルキル基;(メタ)アクリルおよび(メタ)アクリルオキシプロピル基;グリシジルおよびグリシジルオキシ基;ならびに第1級、第2級または第3級アミノ基-この場合は、例えば、アミノアリールまたはアミノアルキル基である加水分解不可能な基-アミド、アルキルカルボニル、置換または非置換のアニリン、アルデヒド、ケトン、カルボキシル、無水物、ヒドロキシル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、メルカプト、シアノ、ヒドロキシフェニル、アルキルカルボキシレート、スルホン酸、リン酸、(メタ)アクリロイルオキシ基、グリシジルおよびグリシジルオキシ、アリル、ビニル基などのエポキシド環を含む基から選択される少なくとも1つの基を含むアルキル、アルケニル、アルキニル、アルキルアリールおよびアリールアルキル基などの基から選択される、請求項11または12のいずれかに記載のゾル。
【請求項15】
前記分離可能なおよび分離不可能な基が、場合によっては一般にアルコキシ基およびハロゲン原子から選択される1つまたは複数の置換基によってさらに置換される、請求項11から14のいずれか一項に記載のゾル。
【請求項16】
前記有機シラン化合物が、以下の式(III)
Si(R1')(R1)3
[式中、基R1は互いに同じかまたは異なっており、同じであることが好ましく、請求項13で定義した分離可能な、除去可能な、例えば加水分解可能な基、好ましくはC1〜C4アルコキシ基、より好ましくはエトキシまたはメトキシ基を表し;R1'は上で定義した除去不可能な、分離不可能な、例えば加水分解不可能な基、好ましくはグリシジルまたはグリシジルオキシ-C1〜C20、好ましくはC1〜C6アルキレン基、例えばγ-グリシジルオキシプロピル基、β-グリシジルオキシエチル基、τ-グリシジルオキシブチル基、ε-グリシジルオキシペンチル基、ω-グリシジルオキシヘキシル基および2-(3,4-エポキシシクロへキシル)エチル基;3-アミノプロピル、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルおよびN-[N'-(2'-アミノエチル)-2-アミノエチル]-3-アミノプロピル基から選択されることが好ましい少なくとも1つの第1級、第2級または第3級アミノ基を含む基である]
を有する、請求項11から15のいずれか一項に記載のゾル。
【請求項17】
前記有機シラン化合物が、
アリルトリメトキシシラン、
N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、
N-[N'-(2'-アミノエチル)-2-アミノエチル]-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、
3-アミノプロピルトリメトキシシラン、
3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、
3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、
3-メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、
3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、
N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、
ビニルトリメトキシシラン
の化合物から選択される、請求項11から16のいずれか一項に記載のゾル。
【請求項18】
前記有機シラン化合物が、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO)である、請求項17に記載のゾル。
【請求項19】
前記有機シラン化合物が、その加水分解反応がメタノールの生成をもたらさない化合物から選択される、請求項1から16のいずれか一項に記載のゾル。
【請求項20】
前記有機シラン化合物が、
3-アミノプロピルトリエトキシシラン、
p-アミノフェニルシラン、
3-グリシジルオキシプロピルジイソプロピルエトキシシラン、
3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、
(3-グリシジルオキシプロピル)メチルジエトキシシラン、
3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、
3-メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、
ビニルメチルジエトキシシラン、
ビニルトリエトキシシラン
の化合物から選択される、請求項19に記載のゾル。
【請求項21】
前記有機シラン化合物が、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン(GLYEO)である、請求項20に記載のゾル。
【請求項22】
成分c)が、例えば、酢酸などの脂肪族モノカルボン酸、クエン酸などのジカルボン酸およびトリカルボン酸、ならびにこれらの混合物のカルボン酸などの有機酸;ならびに塩酸、硝酸およびこれらの混合物などの鉱物性無機酸から選択される酸である、請求項1から21のいずれか一項に記載のゾル。
【請求項23】
成分c)が、エタノールアミン、トリエチルアミンおよびこれらの混合物などのアミンから選択される塩基である、請求項1から22のいずれか一項に記載のゾル。
【請求項24】
サルコシナートなどのイオン性界面活性剤およびエトキシル化脂肪族アルコールなどの非イオン性界面活性剤から選択される少なくとも1つの界面活性剤をさらに含む、請求項1から23のいずれか一項に記載のゾル。
【請求項25】
少なくとも1つの有機結合剤をさらに含む、請求項1から24のいずれか一項に記載のゾル。
【請求項26】
雲母および滑石から選択される充填剤をさらに含む、請求項1から25のいずれか一項に記載のゾル。
【請求項27】
前記充填剤が、配合物の重量パーセントで、1%〜20%、好ましくは3%〜10%の割合で存在する、請求項26に記載のゾル。
【請求項28】
カオリンから選択される充填剤をさらに含む、請求項1から27のいずれか一項に記載のゾル。
【請求項29】
前記有機金属化合物a)および有機シラン化合物b)以外の有機金属化合物および有機シラン化合物から選択される少なくとも1つの付加的化合物をさらに含む、請求項1から28のいずれか一項に記載のゾル。
【請求項30】
前記化合物a)以外の前記付加的有機金属化合物が、ジルコニウム、アルミニウムおよびチタン以外の金属、例えばセリウム、イットリウム、ランタン、鉛、スズ、アンチモン、ホウ素、バナジウム、インジウム、ニオブ、ビスマスおよびハフニウムなどを含む有機金属化合物から選択される、請求項29に記載のゾル。
【請求項31】
前記化合物a)以外の前記付加的有機金属化合物が、ジルコニウム以外の金属のアルコキシド/アルコラート、および酢酸イットリウム三水和物、または他の水和物;硝酸イットリウム;酢酸セリウム水和物;アセチルアセトナトセリウム水和物;ステアリン酸セリウム;硝酸ランタン六水和物;酢酸ランタン水和物;およびランタンアセチルアセトナトなどの化合物から選択される、請求項30に記載のゾル。
【請求項32】
前記付加的有機シラン化合物が、式(IV):
Si(R1)4 (IV)
[式中、R1は、請求項16で定義した、除去可能な、分離可能な、加水分解可能な基を表し;R1は、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、sec-ブトキシ、またはtert-ブトキシなど、1〜4個の炭素原子のアルコキシ基であることが好ましい]
の化合物である、請求項29から31のいずれか一項に記載のゾル。
【請求項33】
前記付加的有機シラン化合物がフルオロシランである、請求項29から31のいずれか一項に記載のゾル。
【請求項34】
前記フルオロシランが、
C2F5CH2-CH2-SiY3
n-C6F13CH2CH2-SiY3
n-C8F17CH2CH2-SiY3
n-C10F21CH2CH2-SiY3
(Y=OCH3、OC2H5またはCl)
i-C3F7O-(CH2)3-SiCl2(CH3)
n-C6F13CH2CH2SiCl2(CH3)
n-C6F13CH2CH2SiCl(CH3)2
の化合物から選択される、請求項33に記載のゾル。
【請求項35】
1つまたは複数の金属塩、例えば1つまたは複数の希土類金属塩をさらに含む、請求項1から34のいずれか一項に記載のゾル。
【請求項36】
少なくとも1つの導電性材料をさらに含む、請求項1から35のいずれか一項に記載のゾル。
【請求項37】
染料、顔料および真珠層から選択される着色剤をさらに含む、請求項1から36のいずれか一項に記載のゾル。
【請求項38】
重量パーセントで、
a)3%〜30%、好ましくは5%〜20%、より好ましくは7%〜15%、特に8%〜14%、とりわけ10%〜13%、例えば10.8%または12%の、テトラ-n-プロポキシジルコニウム(TPOZ)、アルミニウムまたはチタン;
b)5%〜50%、好ましくは5%〜40%、より好ましくは10%〜40%、特に15%または20%〜30%、例えば22%または23%の、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO);
c)1%〜15%、好ましくは2%〜10%、より好ましくは3%〜8%、例えば5%の、酸塩基、グリコールおよびエトキシエタノールから選択される少なくとも1つの化合物;
d)100%までの残りの部分の脱イオン水または蒸留水
を含み、a)およびb)の合計重量が30%超、好ましくは31.2%;31.5%;32%;または33%超であり、より好ましくは35%超、特に40%超、とりわけ50%超である、請求項1から37のいずれか一項に記載のゾル。
【請求項39】
液体形態で、請求項1から38のいずれか一項で定義したゾルの成分a)、c)およびd)を含む第1パートAを含有する第1容器と、
液体形態で、請求項1から38のいずれか一項で規定したゾルの成分b)を含む第2パートBを含有する第2容器と
を含むキット。
【請求項40】
調製するゾルの、パートAが50重量%〜90重量%、好ましくは60重量%〜90重量%を表し、パートBが10重量%〜50重量%、好ましくは10重量%〜40重量%を表す、請求項39に記載のキット。
【請求項41】
請求項1から38のいずれか一項に記載のゾルを表面上に堆積させて基材の表面上にゾル層を得、
前記ゾル層を乾燥して前記基材の前記表面上にゾル-ゲル層を得る、基材の表面上にゾル-ゲル層を調製する方法。
【請求項42】
単一の操作で、500nm〜20μm、好ましくは1または2〜10μm、より好ましくは4〜5μmの乾燥厚さを有するゾル-ゲル層を堆積させる、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記ゾルを、予めおよび/または堆積中に加熱する、請求項41または42に記載の方法。
【請求項44】
前記ゾルを、堆積の前にろ過する、請求項41から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記ゾルを、噴霧、散液または浸漬によって堆積させる、請求項41から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記基材が、金属;金属合金;有機または鉱物性、無機ガラス;プラスチックなどの有機材料;木材;セラミックス;織物;コンクリート;紙;石;およびこれらの材料の2つ以上を含む複合材料から選択される材料から作製され、これら材料が、場合によっては、メッキされ、および/または表面処理され、および/または被覆され、例えばペンキを塗られる、請求項41および45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記基材が、アルミニウム;チタン;銅;鉄;および鋼鉄などこれらの合金、例えばステンレス鋼、およびインコネルから選択される材料で作製され、場合によっては、メッキされ、および/または表面処理され、および/または被覆され、例えばペンキを塗られる、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記表面処理が、単純なクロム酸塩転換層、陽極酸化層、または他の層から選択される、請求項46または47に記載の方法。
【請求項49】
前記ゾルの堆積の前に、前記表面を、化学的および/または物理的および/または機械的処理によって、清浄化および/または活性化および/または酸洗いする、請求項41から48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記ゾルが、請求項39で定義したパートAおよびBの混合、または成分a)、b)、c)およびd)の混合によって調製される、請求項41から49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記ゾルを、パートAおよびB、または成分a)、b)、c)およびd)を混合した後、0分〜24カ月、好ましくは0分〜12カ月、より好ましくは0分〜6カ月、特に30分〜8時間以内の時間において前記基材の前記表面に適用する、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記ゾル層の乾燥を、0〜500℃、好ましくは50〜150℃、より好ましくは80〜130℃の温度において、1秒〜2時間、好ましくは5分〜1時間、より好ましくは10〜30分の時間行う、請求項41から51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記ゾル層の乾燥が、パルスエア熱ストリッパー(塗料バーナー)、赤外線加熱手段などの移動式加熱手段によって行われる請求項41から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記堆積したゾル-ゲル層が、0.5〜20μm、好ましくは1または2〜10μmの乾燥厚さを有する、請求項41から53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記ゾル-ゲル層が、耐引っかき性;磨耗防止性;耐摩擦性;曇り止め;耐静電性;耐反射性;エレクトロルミネッセント性;フォト変動性;電導性(高および低K);超電導性;強誘電性(圧電性および焦電気性);バリア(ガス、塩基、酸、ストリッパー、「Skydrol」などの作動液を含むさまざまな化学製品に対する);防汚染性;サーモクロミック性;ルミネッセント;非線形光学;難燃性;複合体のためのゾル-ゲル被覆;耐接着性(付着抵抗性);絶縁性;耐汚染性;プライマー;塗料;疎水性;親水性;多孔質;殺菌性;防臭性;および耐磨耗性ゾル-ゲル層などから選択される層である、請求項41から54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
請求項41から55のいずれか一項に記載の方法によって調製できるゾル-ゲル層。
【請求項57】
請求項56に記載の少なくとも1つのゾル-ゲル層を用いて被覆した少なくとも1つの表面を含む基材。
【請求項58】
基材の表面、特に金属、金属合金、金属または金属合金を含む複合材料から選択される材料で作製されている表面に対して耐食特性を付与するための、請求項56に記載のゾル-ゲル層の使用。
【請求項59】
前記表面が、前記ゾル-ゲル層だけで被覆されている、請求項58に記載の使用。
【請求項60】
基材の表面上に2つ以上の層を含む被覆の調製方法であって、これらの層の少なくとも1つが、請求項41から55のいずれか一項に記載の方法により調製されたゾル-ゲル層である方法。
【請求項61】
基材の表面上に2層以上の層を含む被覆を調製するための請求項60に記載の方法であって、ここで、
ゾル-ゲル層を前記表面上に調製し;次いで、
1つまたは複数の他の層を前記ゾル-ゲル層に適用し、前記他の層が、例えば、塗料、プライマー、マスチック、接着剤または樹脂層から選択される方法。
【請求項62】
前記層が、前記ゾル-ゲル層に、その調製の直後に適用される、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記層が、前記ゾル-ゲル層に、前記ゾル-ゲル層調製後1カ月〜10年の期間内に適用される、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記被覆が2つ以上の同一のまたは異なるゾル-ゲル層、および場合によっては1つまたは複数の他の層を含む、請求項60から63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記ゾル-ゲル層が、請求項55に記載のゾル-ゲル層から選択される、請求項64に記載の方法。

【公表番号】特表2008−542179(P2008−542179A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514169(P2008−514169)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【国際出願番号】PCT/FR2006/050493
【国際公開番号】WO2007/003828
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(501446228)エアバス・フランス (93)
【Fターム(参考)】