説明

表面プラズモン励起増強蛍光測定装置およびこれに用いられるセンサ構造体

【課題】簡単に金属薄膜の膜厚のばらつきを補正することが可能なセンサ構造体およびこれを備えた表面プラズモン励起増強蛍光測定装置を提供すること。
【解決手段】光伝搬領域となるコア層と、コア層の上面または下面の少なくともいずれか一方に積層されるクラッド層と、を備え、コア層の表面には、少なくとも、金属薄膜を介することなく蛍光色素層が形成された全反射蛍光リファレンス領域(P)と、金属薄膜を介して、領域(P)に形成された蛍光色素層と同一の蛍光色素からなる蛍光色素層が形成された電場増強蛍光リファレンス領域(Q)と、が形成されている表面プラズモン励起増強蛍光測定装置に用いられるセンサ構造体において、領域(P)で全反射した励起光が、全反射条件となる所定の入射角(θq)で領域(Q)を照射するように、領域(P)で全反射した励起光の入射角度を調整する入射角調整手段を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療、バイオテクノロジー等の分野で利用されるSPFS(Surface Plasmon-field enhanced Fluorescence Spectroscopy:表面プラズモン励起増強蛍光分光法)の測定装置(表面プラズモン励起増強蛍光測定装置)、およびこれに用いられるセンサ構造体に関する。
【0002】
SPFSは、誘電体部材上に形成された金属薄膜に全反射減衰(ATR)が生じる角度で励起光を照射したときに、金属薄膜を透過したエバネッセント波が表面プラズモンとの共鳴により数十倍〜数百倍に増強されることを利用して、金属薄膜近傍に捕捉されたアナライト(分析対象物)を標識する蛍光色素を効率的に励起させ、その蛍光シグナルを測定する方法である。このようなSPFSは、一般的な蛍光標識法などに比べて極めて感度が高いため、サンプル中にアナライトがごく微量しか存在しない場合であってもそれを定量することができる。SPFSの測定装置(表面プラズモン励起増強蛍光測定装置)の基本的な態様は、たとえば特許文献1および2に開示されている。
【0003】
ところで、SPFS等を臨床検査に応用するにあたり、蛍光シグナルの測定値についての信頼性を担保する必要があり、そのためには、測定値のばらつき(CV)を通常は10%以内、場合によっては1〜2%以内に抑える必要がある。特に、抗体を固定化させたセンサ構造体に検体由来のアナライトを介して蛍光修飾抗体を固定化するサンドイッチ系など、アナライト濃度に応じてシグナルの絶対値が増加する系では、一般にアナライト濃度が低下するとCVが悪化し、検出感度および定量感度の低下につながる。そこで、蛍光シグナルの測定値におけるばらつきを減らすためには、表面プラズモン励起増強蛍光測定装置のセンサ構造体間での電場増強のばらつきを減らす必要がある。
【0004】
ここで、電場増強のばらつきによる蛍光シグナルへの影響を考えるにあたって、センサ構造体に形成されている金属薄膜の膜厚のばらつきが問題となる。ところが、すべてのセンサ構造体において金属薄膜の膜厚が寸分の違いもなく完全に同一となるようにセンサ構造体を製造することは現実的ではないことから、電場増強度のばらつきによる蛍光シグナルへの影響を最小限とするために、センサ構造体で生じる電場増強度を正規化し、これに基づいて測定値を補正することが考えられる。その一方で、臨床検査に用いるセンサ構造体には安価に製造できることも要求される。したがって、センサ構造体に複雑な構造を形成することなく電場増強度を正規化でき、これに基づいて測定値を補正することによって測定データのばらつきを最小限に抑えることが、SPFS等を臨床検査に応用するうえで重要となる。
【0005】
このような背景のもと、センサ構造体に複雑な構造を導入することなく、センサ構造体を構成する金属薄膜の厚さのばらつきに由来する電場増強度のばらつきの影響を排除し、これによりSPFS等の測定精度や信頼性を高めることが可能となる、測定データの補正方法、およびこれを用いたアッセイ方法に関する発明を、本出願人は先に出願した(特許文献3。特願2010−181364号。以下「先願」という。)。
【0006】
この先願に記載した測定データの補正方法は、誘電体部材表面の一部に金属薄膜を形成させた基板に蛍光色素層を形成してなる基板の裏側から全反射条件で励起光を照射したときの、金属薄膜を形成していない領域での蛍光強度と金属薄膜を形成した領域での蛍光強度との関係に基づいて、この金属薄膜の膜厚のばらつきによる電場増強への影響を見積もるというものであり、その具体的な補正方法を、図10を参照しながら説明する。
【0007】
図10は、先願のセンサ構造体を示した断面図である。
このセンサ構造体100は、図10に示したように、蛍光色素層116pだけが形成された全反射蛍光リファレンス領域(P)と、金属薄膜118を介して蛍光色素層116qが形成された電場増強蛍光リファレンス領域(Q)と、金属薄膜118を介して固定化リガンド含有層120が形成されたSPFSアッセイ領域(A)とが、それぞれ同一の透明誘電体部材112の上に形成されている。この領域(P)における蛍光色素層116pと、領域(Q)における蛍光色素層116qとは、同一の蛍光色素から形成されている。また、透明誘電体部材112の上方には、CCDカメラなどの光検出手段130が配置されているとともに、透明誘電体部材112の下面側には、不図示のプリズムが配置されている。
【0008】
また、領域(A)の固定化リガンド含有層120には、第1のリガンド122が固定されている。この第1のリガンド122は、アナライト128と特異的に結合する性質を有しており、固定化リガンド含有層120にアナライト128を含む検体溶液を接触させることで、図10に示したように、第1のリガンド122にアナライト128を結合させることができる。また、このアナライト128に、第2のリガンド124と、この第2のリガンド124に結合した蛍光分子126とからなる装飾リガンド125を接触させることで、図10に示したように、アナライト128に第2のリガンド124を介して蛍光分子126を結合させることができる。したがって、この領域(A)に対して、透明誘電体部材112の下面側から、全反射条件となる所定の入射角θaで励起光142aを照射すると、アナライト128と結合した蛍光分子126が発光するとともに、その蛍光が表面プラズモン現象によって増強される。そして、この増強された蛍光の量を蛍光シグナルSaとして光検出手段130にて測定することで、検体溶液中に含まれるアナライト128を定量化することができる。
【0009】
このようにして得られる蛍光シグナルSaについて、異なるセンサ間における金属薄膜の膜厚のばらつきに起因する電場増強への影響を補正するため、先願では、以下のような方法を採っている。
【0010】
先ず、領域(P)に対して、透明誘電体部材112の下面側から、全反射条件となる所定の入射角θpで、励起光142pを照射する。そして、蛍光色素層116pから発光した蛍光の量を全反射蛍光シグナルSpとして、光検出手段130にて測定する。
【0011】
同様に、領域(Q)に対して、透明誘電体部材112の下面側から、全反射条件となる所定の入射角θqで、励起光142qを照射する。そして、蛍光色素層116qから発光し、表面プラズモン現象によって増強された蛍光の量を電場増強蛍光シグナルSqとして、光検出手段130にて測定する。ここで、この励起光142qは、上述した励起光142pと同一光源から発せられた光であり、励起光142pと同一波長の光である。
【0012】
そして、上述の方法で得られた全反射蛍光シグナルSpと、電場増強蛍光シグナルSqとを用いて、下記式(1)から、センサ構造体100の電場増強度Rを算出する。
R=Sq/Sp (1)
また、図10に示したセンサ構造体100と同様の構成を有する、正規化の基準となるセンサ構造体100´(不図示)において、上述したセンサ構造体100の場合と同一波長の励起光を用いて、全反射蛍光シグナルSp´と、電場増強蛍光シグナルSq´とを測定し、上述した式(1)より、電場増強度R´を算出する。
【0013】
そして、下記式(2)によって、上述した蛍光シグナルSaを補正蛍光シグナルSに変換することで、図10に示したセンサ構造体100と、正規化の基準となるセンサ構造体100´との金属薄膜の膜厚の違いに起因する蛍光シグナルの量を補正する。
【0014】
S=Sa×(R´/R) (2)
なお、図10に示したセンサ構造体100では、領域(P)、領域(Q)および領域(A)が、同一の透明誘電体部材112上に一体的に形成されていたが、先願のセンサ構造体100はこれに限定されない。領域(A)に形成されている金属薄膜118と、領域(Q)に形成されている金属薄膜118とが、同一の金属で同一の膜厚であり、且つ、両者とも同一の材質からなる透明誘電体部材112上に形成されていれば、領域(P)と領域(Q)だけが形成されているセンサ構造体と、領域(A)だけが形成されているセンサ構造体とを別々に製造し、これらを用いて上記補正を行っても良いものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特許第3294605号公報
【特許文献2】特開2006−218169号公報
【特許文献3】特願2010−181364号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところで、上述した先願の補正方法では、全反射蛍光リファレンス領域(P)および電場増強蛍光リファレンス領域(Q)に対して、それぞれ異なる入射角θp,θqで励起光142p,142qを照射する必要がある。このため、例えば同一の光源から領域(P)および領域(Q)に対して励起光142p,142qを照射する場合には、光源となる投光器において、励起光の照射方向を調整する必要がある。
【0017】
しかしながら、投光器には偏光フィルターやビームエキスパンダーなどの各種光学装置が取り付けられており、複雑な構成となっている。このような投光器において励起光の照射方向を調整しようとすると、投光器にモーター等の駆動手段を付加する必要があり、投光器の構成がさらに複雑になるとともに、サイズも大きくなってしまう。また、励起光の照射方向の調整には高い精度が要求されるため、照射方向を制御するセンサ等も投光器に組み込む必要があり、投光器の構成がさらに複雑になるととともに、コスト高を招いてしまうという問題も考えられる。
【0018】
本発明はこのような現状に鑑みなされた発明であって、金属薄膜の膜厚のばらつきに起因する電場増強度への影響を簡便な構造で簡単に補正することができ、これにより所望のアナライトの検出を高精度で行なうことのできる表面プラズモン励起増強蛍光測定装置およびこれに用いられるセンサ構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、上述したような課題を解決するために発明されたものであって、
本発明のセンサ構造体は、
光伝搬領域となるコア層と、該コア層の上面または下面の少なくともいずれか一方に積層されるクラッド層と、を備え、
前記コア層の表面には、少なくとも、金属薄膜を介することなく蛍光色素層が形成された全反射蛍光リファレンス領域(P)と、金属薄膜を介して、前記領域(P)に形成された蛍光色素層と同一の蛍光色素からなる蛍光色素層が形成された電場増強蛍光リファレンス領域(Q)と、が形成されており、
前記コア層を伝搬する励起光が、全反射条件となる所定の入射角(θp)で前記領域(P)を照射した場合に、前記領域(P)で全反射した励起光が、全反射条件となる所定の入射角(θq)で前記領域(Q)を照射するように構成された表面プラズモン励起増強蛍光測定装置に用いられるセンサ構造体であって、
前記領域(P)を照射する際の励起光の入射角(θp)と、前記領域(Q)を照射する際の励起光の入射角(θq)とが異なる角度であり、
前記領域(P)で全反射した励起光が、全反射条件となる所定の入射角(θq)で前記領域(Q)を照射するように、前記領域(P)で全反射した励起光の入射角度を調整する入射角調整手段を備えることを特徴とする。
【0020】
このように構成することによって、本発明のセンサ構造体は、領域(P)で全反射した励起光が領域(Q)を照射する際の入射角度を調整する入射角調整手段を備えるため、投光器において励起光の照射方向の調整を行なう必要がない。また、励起光を1回照射するだけで、領域(P)の全反射蛍光シグナルSpと、領域(Q)の電場増強蛍光シグナルSqとを測定することができる。これにより、簡便なセンサ構造で、金属薄膜の膜厚のばらつきに起因する電場増強度への影響を簡単に補正することができ、所望のアナライトの検出を高精度で行なうことが可能となる。
【0021】
上記発明において、本発明のセンサ構造体は、
前記入射角調整手段が、
前記コア層の表面に形成された傾斜面であることが望ましい。
【0022】
このような構成であれば、コア層の表面に設けられた傾斜面によって領域(P)で全反射した励起光が領域(Q)を照射する際の入射角度が調整されるため、投光器において励起光の照射方向の調整を行なう必要がなく、本発明のセンサ構造体を極めて簡便なセンサ構造とすることができる。
【0023】
また、上記発明において、本発明のセンサ構造体は、
前記コア層が、所定の屈折率を有する第1のコアと、該第1のコアとは異なる屈折率を有する第2のコアとが接合されて構成されたものであり、
前記第1のコアと第2のコアとの接合面が、前記入射角調整手段を構成することが望ましい。
【0024】
このような構成であれば、第1のコアと第2のコアとの接合面によって領域(P)で全反射した励起光が領域(Q)を照射する際の入射角度が調整されるため、投光器において励起光の照射方向の調整を行なう必要がなく、本発明のセンサ構造体を極めて簡便なセンサ構造とすることができる。
【0025】
また、上記発明において、
前記コア層の表面には、蛍光色素層を介することなく、前記領域(Q)に形成された金属薄膜と同一の金属で、同一の膜厚を有する金属薄膜を介して、リガンドを含有する固定化リガンド含有層が形成されたSPFSアッセイ領域(A)が形成されていることが望ましい。
【0026】
このように構成することで、コア層の表面に固定化リガンド含有層が形成されたSPFSアッセイ領域(A)が形成されているため、本発明のセンサ構造体を、金属薄膜の膜厚のばらつきに起因する電場増強度への影響を補正するためだけでなく、実際にアナライトの定量にも用いることができるセンサ構造体とすることができる。
【0027】
また、本発明の表面プラズモン励起増強蛍光測定装置は、上述したセンサ構造体を備えている。
このように構成することによって、本発明の表面プラズモン励起増強蛍光測定装置は、領域(P)で全反射した励起光が領域(Q)を照射する際の入射角度を調整する入射角調整手段を有するセンサ構造体を備えるため、投光器において励起光の照射方向の調整を行なう必要がない。また、励起光を1回照射するだけで、領域(P)の全反射蛍光シグナルSpと、領域(Q)の電場増強蛍光シグナルSqとを測定することができる。これにより、本発明の表面プラズモン励起増強蛍光測定装置では、金属薄膜の膜厚のばらつきに起因する電場増強度への影響を簡単に補正することができ、所望のアナライトの検出を高精度で行なうことが可能となる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、金属薄膜の膜厚のばらつきに起因する電場増強度への影響を簡便なセンサ構造によって簡単に補正することができ、これにより所望のアナライトの検出を高精度で行なうことのできる表面プラズモン励起増強蛍光測定装置およびこれに用いられるセンサ構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態のセンサ構造体を説明するための斜視図である。
【図2】図2は、本発明の表面プラズモン励起増強蛍光測定装置および第1の実施形態のセンサ構造体を説明するための断面図である。
【図3A】図3Aは、本発明の第2の実施形態のセンサ構造体を説明するための斜視図である。
【図3B】図3Bは、本発明の第2の実施形態のセンサ構造体を説明するための斜視図であって、励起光を幅広の光とした場合について説明するための図である。
【図4】図4の(a)は、図3Aのb―b線における断面図、図4の(b)は、図3Aのc−c線における断面図である。
【図5】図5は、本発明の第2の実施形態のセンサ構造体の変形例を説明するための斜視図である。
【図6】図6の(a)は、図5のd―d線における断面図、図6の(b)は、図5のe−e線における断面図である。
【図7】図7は、本発明のセンサ構造体の変形例を説明するための断面図である。
【図8】図8は、本発明のセンサ構造体の変形例を説明するための断面図である。
【図9】図9は、本発明の第3の実施形態のセンサ構造体を説明するための断面図である。
【図10】図10は、先願のセンサ構造体を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について図面などを基に詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態のセンサ構造体を説明するための斜視図である。図2は、本発明の表面プラズモン励起増強蛍光測定装置および第1の実施形態のセンサ構造体を説明するための断面図である。なお、図2に示すセンサ構造体10は、図1のa−a線における断面図となっている。なお、本明細書においては、図示したコア層の上側の面を「上面」と称し、同様に、図示したコア層の下側の面を「下面」と称する。
【0031】
図1および図2に示したように、第1の実施形態のセンサ構造体10は、コア層12と、コア層12の下面12lに積層されたクラッド層14とを備えている。コア層12の上面12uには、金属薄膜18を介することなく蛍光色素層16pが形成された全反射蛍光リファレンス領域(P)(以下、単に「領域(P)」と称する場合がある)と、金属薄膜18を介して蛍光色素層16qが形成された電場増強蛍光リファレンス領域(Q)(以下、単に「領域(Q)」と称する場合がある)と、が形成されている。
【0032】
また、本発明の表面プラズモン励起増強蛍光測定装置1は、図2に示したように、上述したセンサ構造体10に加えて、少なくとも、励起光42の光源となる投光器40と、全反射蛍光シグナルSpおよび電場増強蛍光シグナルSqとを測定する光検出手段30と、を備えている。
【0033】
本発明においてコア層12は、コア層12の入射面12iから入射した励起光42を領域(P)および領域(Q)まで導く光伝搬領域となる層である。本実施形態のコア層12は、水平な面である上面12uと、入射面12iから遠ざかる方向に向かって下るように傾斜している下面12lと、を備えた略平板状に形成されている。
【0034】
また、コア層12は透明誘電体部材から構成されている。ここで、コア層12を構成する透明誘電体部材の材質としては、光学的に透明な各種の無機物、天然ポリマー、合成ポリマーを用いることができ、光学的安定性、製造安定性および光学的透明性の観点から、二酸化ケイ素(SiO2)または二酸化チタン(TiO2)であることが望ましい。
【0035】
本発明においてクラッド層14は、コア層12の上面または下面の少なくともいずれか一方に積層される。本実施形態のクラッド層14は、上述したように、コア層12の下面12lに積層されている。また、クラッド層14は、コア層12の内部を伝搬する励起光42が、コア層12とクラッド層14との境界面(本実施形態では、コア層12の下面12l)で全反射するように、誘電体部材よりも屈折率の低い材質から構成される。
【0036】
ここで、クラッド層14に用いられる材質としては、コア層12を構成する誘電体部材よりも屈折率が低いこと以外は、基本的に誘電体部材と同じ材質を用いることができる。プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、環状オレフィン系樹脂などのポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)などを用いることができる。また、無機材料としては、二酸化ケイ素(SiO2)または二酸化チタン(TiO2)等を用いることができる。なお、化学的安定性,製造安定性および光学的透明性の観点から、二酸化ケイ素(SiO2)または二酸化チタン(TiO2)が好ましく、取り扱い易さおよびコストの点から、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂、トリアセチルセルロースであることが好ましい。
【0037】
金属薄膜18は、一般的な表面プラズモン励起増強蛍光測定装置に用いられるセンサ構造体を構成する金属薄膜と同様の金属を用いることができる。すなわち、金、銀、アルミニウム、銅、および白金からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属からなることが好ましく、その中でも金からなることがより好ましい。これらの金属については、その合金の形態であっても良く、金属を積層したものであってもよい。このような金属種は、酸化に対して安定であり、かつ表面プラズモンによる電場増強が大きいことから、金属薄膜18の金属として好適である。金属薄膜18をコア層12の表面に形成する方法としては、例えば、スパッタリング法、蒸着法(抵抗加熱蒸着法、電子線蒸着法等)、電解メッキ、無電解メッキ法などが挙げられる。
【0038】
蛍光色素層16p,16qは、所定の励起光を照射することによって蛍光を発光する蛍光色素から構成される層である。本発明のセンサ構造体10では、上述した領域(P)における蛍光色素層16pと、領域(Q)における蛍光色素層16qとは、同一の蛍光色素から形成されている。
【0039】
このような蛍光色素としては、本発明の目的を達せられるものであれば特に限定されないが、例えば、フルオレセイン・ファミリーの蛍光色素(Integrated DNA Technologies社製)、ポリハロフルオレセイン・ファミリーの蛍光色素(アプライドバイオシステムズジャパン(株)製)、ヘキサクロロフルオレセイン・ファミリーの蛍光色素(アプライドバイオシステムズジャパン(株)製)、クマリン・ファミリーの蛍光色素(インビトロジェン(株)製)、ローダミン・ファミリーの蛍光色素(GEヘルスケア バイオサイエンス(株)製)、シアニン・ファミリーの蛍光色素、インドカルボシアニン・ファミリーの蛍光色素、オキサジン・ファミリーの蛍光色素、チアジン・ファミリーの蛍光色素、スクアライン・ファミリーの蛍光色素、キレート化ランタニド・ファミリーの蛍光色素、BODIPY(登録商標)・ファミリーの蛍光色素(インビトロジェン(株)製)、ナフタレンスルホン酸・ファミリーの蛍光色素、ピレン・ファミリーの蛍光色素、トリフェニルメタン・ファミリーの蛍光色素、Alexa Fluor(登録商標)色素シリーズ(インビトロジェン(株)製)などが挙げられ、さらに米国特許番号第6,406,297号、同第6,221,604号、同第5,994,063号、同第5,808,044号、同第5,880,287号、同第5,556,959号および同第5,135,717号に記載の蛍光色素も本発明で用いることができる。
【0040】
全反射蛍光リファレンス領域(P)は、上述したように、コア層12の上面12uに蛍光色素層16pが形成されることで構成される領域である。そして図2に示したように、この領域(P)に対して、コア層12の内部を伝搬した励起光42が、全反射条件となる所定の入射角θpでコア層12の内部から照射されると、蛍光色素層16pが発光して全反射蛍光シグナルSpが発せられるようになっている。
【0041】
また、電場増強蛍光リファレンス領域(Q)は、上述したように、コア層12の上面に蛍光色素層16pが、金属薄膜18を介して形成されることで構成される領域である。そして、この領域(Q)に対して、コア層12の内部を伝搬した励起光42が、全反射条件となる所定の入射角θqでコア層12の内部から照射されると、蛍光色素層16qが発光するとともに、この蛍光が表面プラズモン現象によって増強されて、電場増強蛍光シグナルSqが発せられる。ここで、領域(Q)に対する所定の入射角θqと、前述した領域(P)に対する入射角θpとは、異なる入射角度である。
【0042】
このように、領域(P)には、領域(Q)のように金属薄膜18が形成されていないため、全反射蛍光シグナルSpは、表面プラズモン現象による電場増強の影響がない状態における蛍光シグナルとなっている。また、領域(Q)から発せられる電場増強蛍光シグナルSqは、表面プラズモン現象によって増強された蛍光シグナルとなっている。したがって、この全反射蛍光シグナルSpと、電場増強蛍光シグナルSqとを、前述した光検出手段30によって測定することで、前述した式(1)により、金属薄膜18による蛍光シグナルの電場増強度Rを算定することができる。
【0043】
したがって、上述した電場増強度Rを用いることにより、この領域(Q)の金属薄膜18と同一金属で同一の膜厚を有する金属薄膜が形成された、後述するSPFSアッセイ領域(A)を備えるセンサ構造体において、金属薄膜の膜厚のばらつきによる電場増強度への影響を見積もることが可能となる。
【0044】
また、本発明のセンサ構造体10は、図2に示したように、投光器40から発せられた励起光42が、コア層12の入射面12iからコア層12の内部に入射し、先ず、領域(P)を全反射条件となる所定の入射角θpで照射するように構成されている。なお、本実施形態では、入射面12iから入射した励起光42が、直接領域(P)を照射しているが、本発明のセンサ構造体10はこれに限定されず、例えば、入射面12iから入射した励起光42を、コア層12とクラッド層14との境界面で全反射させ、その全反射した励起光42が領域(P)を照射するように構成してもよい。
【0045】
また、本発明のセンサ構造体10は、図2に示したように、領域(P)で全反射した励起光42が、コア層12の下面12lで全反射して、全反射条件となる所定の入射角θqで、領域(Q)を照射するように構成されている。この際、上述したように、領域(P)に対する入射角θpと、領域(Q)に対する入射角θqとは異なる入射角度となっており、本実施形態では、入射角θqがθpよりも2θiだけ大きい角度となっている。そして、本実施形態のセンサ構造体10では、これに対応して、コア層12の下面12lが角度θiだけ傾斜している。
【0046】
したがって、領域Pで全反射した励起光42は、上面12uに対してθiだけ傾斜しているコア層12の下面12lを入射角(θp+θi)で照射する。そして、下面12lで全反射した励起光42は、上面12uに形成されている領域(Q)を入射角(θp+2θi)、すなわち、θqで照射する。
【0047】
このように、本実施形態のセンサ構造体10では、領域(P)で全反射した励起光42が全反射条件となる所定の入射角θqで領域(Q)を照射するように、領域(P)で全反射した励起光42の入射角調整手段として、コア層12の下面12lがθiだけ傾斜している。すなわち、コア層12の表面に傾斜面を設けるとの、極めて簡便なセンサ構造で、領域(P)で全反射した励起光42が領域(Q)を照射する際の入射角度を調整することができるようになっている。
【0048】
また、本実施形態のセンサ構造体10では、センサ構造体10に励起光42を1回照射するだけで、領域(P)の全反射蛍光シグナルSpと、領域(Q)の電場増強蛍光シグナルSqとを測定することができるため、金属薄膜の膜厚のばらつきに起因する電場増強度の影響を簡単に補正することができるようになっている。
【0049】
<第2の実施形態>
図3Aは、本発明の第2の実施形態のセンサ構造体を説明するための斜視図である。図4の(a)は、図3Aのb―b線における断面図、図4の(b)は、図3Aのc−c線における断面図である。なお、この第2の実施形態のセンサ構造体10は、上述した第1の実施形態のセンサ構造体10と基本的に同様の構成となっており、同一部材には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0050】
この第2の実施形態のセンサ構造体10では、図3Aおよび図4に示したように、コア層12の上面12uに、上述した領域(P)、領域(Q)に加えて、領域(Q)と同一の金属で同一の膜厚である同一の金属薄膜18を介して固定化リガンド含有層20が形成されたSPFSアッセイ領域(A)(以下、「領域(A)」と称する場合がある)が形成されている点が、上述した第1の実施形態と異なっている。
【0051】
この領域Aの固定化リガンド含有層20は、アナライト28と特異的に結合する性質を有する第1のリガンド22を含んでいる。したがって、この固定化リガンド含有層20にアナライト28を含む検体溶液を接触させることで、図4に示したように、第1のリガンド22にアナライト28を結合させることができる。また、このアナライト28に、第2のリガンド24と、この第2のリガンド24に結合した蛍光分子26とからなる装飾リガンド25を接触させることで、図4に示したように、アナライト28に第2のリガンド24を介して蛍光分子26を結合させることができる。なお、蛍光分子26としては、上述した蛍光色素層16p,16qを構成する蛍光色素と、同様の蛍光色素を用いることができるが、必ずしも同一の蛍光色素である必要はない。
【0052】
この領域(A)に対して、コア層12の内部から、全反射条件となる所定の入射角θaで励起光42を照射すると、アナライト28と結合した蛍光分子26が発光し、その蛍光が表面プラズモン現象によって増強される。そして、この増強された蛍光の量を蛍光シグナルSaとして光検出手段30にて測定することで、検体溶液中に含まれるアナライト28を定量化することができる。なお、領域(A)に対する所定の入射角θaと、上述した領域(Q)に対する所定の入射角θqとは、同一の角度である。
【0053】
このように、本発明のセンサ構造体10が、領域(P)および領域(Q)に加えて領域(A)を備えていれば、本発明のセンサ構造体10を、金属薄膜の膜厚のばらつきに起因する電場増強度への影響を補正するためだけでなく、実際にアナライトの定量にも用いることができるセンサ構造体10とすることができる。
【0054】
また、この第2の実施形態のセンサ構造体10では、図3Aに示したように、コア層12の手前側(入射面12i側)に領域(P)が形成されるとともに、その奥側に、領域(Q)と領域(A)とが並列的に形成されている。
【0055】
したがって、図3Aの矢印Xに示したように、光源である不図示の投光器をコア層12の入射面12iに対して平行に移動させることで、図4に示したように、領域(P)の全反射蛍光シグナルSpと、領域(Q)の電場増強蛍光シグナルSqと、領域(A)の蛍光シグナルSaとを簡単に測定することができる。
【0056】
また、図3Bに示したように励起光42を幅広の励起光42wとすれば、図4の(a),(b)に示したように、領域(P)で全反射した励起光42が、全反射条件となる所定の入射角θqおよびθa(本実施形態ではθq=θa)で、領域(Q)および領域(A)を同時に照射するため、励起光42wをセンサ構造体10に1回照射するだけで、領域(P)の全反射蛍光シグナルSpと、領域(Q)の電場増強蛍光シグナルSqと、領域(A)の蛍光シグナルSaとを簡単に測定することができる。
【0057】
なお、領域(P)、領域(Q)および領域(A)の形成位置は、上述した実施形態の形成位置に限定されない。例えば、コア層12の手前側(入射面12i側)に領域(P)と領域(A)とを並列的に形成し、その奥側に領域(Q)を形成することも可能である。しかしながら、領域(Q)および領域(A)を照射した励起光は、全反射減衰により光量が著しく減少するため、コア層12の手前側に領域(Q)および/または領域(A)を形成し、その奥側に領域(P)を形成することはできない。
【0058】
また、本発明のセンサ構造体10は、上述した領域(A)に加えて、例えば図5および図6に示したように、金属薄膜を介することなく、固定化リガンド含有層20が形成された全反射アッセイ領域(A´)(以下、「領域(A´)」と称する場合がある)を形成することもできる。ここで、図5は、本発明の第2の実施形態のセンサ構造体の変形例を説明するための斜視図、図6の(a)は、図5のd―d線における断面図、図6の(b)は、図5のe−e線における断面図である。
【0059】
この領域(A´)に対して、コア層12の内部から、全反射条件となる所定の入射角θa´で励起光42を照射すると、アナライト28と結合した蛍光分子26が発光する。そして、この増強された蛍光の量を蛍光シグナルSa´として不図示の光検出手段30にて測定することで、検体溶液中に含まれるアナライト28を定量化することができる。なお、領域(A´)に対する入射角θa´と、上述した領域(P)に対する所定の入射角θpとは、同一の角度である。
【0060】
このように、コア層12の表面に、上述した領域(A)に加えて領域(A´)が形成されていれば、本発明のセンサ構造体10を、上述したSPFSによるアナライト28の定量だけではなく、全反射蛍光法によるアナライト28の定量にも用いることが可能となる。
【0061】
またこの際、図5に示したように励起光42を幅広の励起光42wとすれば、図6に示したように、領域(P)および領域(A´)で全反射した励起光42が、全反射条件となる所定の入射角θqおよびθa(本実施形態ではθq=θa)で、領域(Q)および領域(A)を同時に照射するため、励起光42wをセンサ構造体10に1回照射するだけで、領域(P)の全反射蛍光シグナルSp、領域(Q)の電場増強蛍光シグナルSq、領域(A)の蛍光シグナルSa、および領域(A´)の蛍光シグナルSa´とを測定することができる。
【0062】
また、上述した第1の実施形態および第2の実施形態では、そのコア層12の下面12lは、その全体が傾斜する傾斜面であったが、本発明のセンサ構造体10はこれに限定されない。例えば、図7に示したように、下面12lの一部に角度θiだけ傾斜している傾斜部12l´が形成され、これにより、上述した領域(P)で全反射した励起光42が、全反射条件となる所定の入射角θqで領域(Q)を照射するように構成することも可能である。
【0063】
また、上述した第1の実施形態および第2の実施形態では、領域(P)、領域(Q)が、いずれもコア層12の上面12uに形成されていたが、本発明のセンサ構造体10はこれに限定されない。例えば、図8に示したように、上面12uの手前側に領域(P)を形成し、この領域(P)よりも奥側の下面12lに領域(Q)を形成することも可能である。またこの際、上述した第2の実施形態と同様に、領域(A)を領域(Q)に対して並列的に形成することも可能である。
【0064】
しかしながら、領域(P)、領域(Q)および領域(A)は、コア層12の上面12uまたは下面12lのいずれか同じ側の面に形成される方が、全反射蛍光シグナルSp、電場増強蛍光シグナルSq、および蛍光シグナルSaを一つの光検出手段30で容易に測定することができるため、好ましい。
【0065】
<第3の実施形態>
図9は、本発明の第3の実施形態のセンサ構造体を説明するための断面図である。この第3の実施形態のセンサ構造体10は、上述した第1の実施形態および第2の実施形態のセンサ構造体10と基本的に同様の構成となっており、同一部材には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0066】
この第3の実施形態のセンサ構造体10では、コア層12の下面12lが傾斜しておらず水平に形成されている点、およびコア層12が、第1のコア層12aと第2のコア層12bとが接合面13において接合されて形成されている点が、上述した第1の実施形態および第2の実施形態と異なっている。
【0067】
第1コア層12aおよび第2のコア層12bは、各々異なる屈折率を有する透明誘電体部材から構成される。このように屈折率が異なる2つの透明誘電体部材の接合面13に励起光42が入射すると、その接合面13において励起光42が屈折する。
【0068】
したがって、所定の屈折率を有する第1のコア層12aと、第1のコア層12bとは異なる適当な屈折率を有する第2のコア層12bとを、接合面13において接合したコア層12を用いることで、図9に示したように、領域(P)で全反射した励起光42を接合面13において屈折させて、励起光42が全反射条件となる所定の入射角θqで領域(Q)を照射するように構成することが可能となる。
【0069】
このように、本実施形態のセンサ構造体10では、領域(P)で全反射した励起光42が接合面13において屈折し、全反射条件となる所定の入射角θqで領域(Q)を照射するように、第1のコア層12aと第2のコア層12bとの接合面13が、センサ構造体10における入射角調整手段を構成している。すなわち、所定の屈折率を有する第1のコア層12aと、この第1のコア層とは異なる屈折率を有する第2のコア層12bとが接合面13において接合されるとの、極めて簡便なセンサ構造で、領域(P)で全反射した励起光42が領域(Q)を照射する際の入射角度を調整することができるようになっている。
【0070】
また、上述した実施形態と同様に、センサ構造体10に励起光42を1回照射するだけで、領域(P)の全反射蛍光シグナルSpと、領域(Q)の電場増強蛍光シグナルSqとを測定することができるため、金属薄膜の膜厚のばらつきに起因する電場増強度の影響を簡単に補正することができるようになっている。
【0071】
なお、以上の説明において、励起光の1回照射で各種蛍光シグナルを測定する際には、例えば、各領域にそれぞれの蛍光シグナル(蛍光光)を集光するための集光部材を配置し、CCDカメラなど光検出手段の受光面を各領域に対応するように分割して利用して、各分割領域から蛍光シグナルを測定するようにすることができる。また、各領域用にそれぞれ光検出手段を設けることも可能である。
【0072】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されない。本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 表面プラズモン励起増強蛍光測定装置
10 センサ構造体(センサ構造体)
12 コア層
12a 第1のコア層
12b 第2のコア層
12i 入射面
12u 上面
12l 下面
12l´ 傾斜部
13 接合面
14 クラッド層
16p,16q 蛍光色素層
18 金属薄膜
20 固定化リガンド含有層
22 第1のリガンド
24 第2のリガンド
25 装飾リガンド
26 蛍光分子
28 アナライト
30 光検出手段
40 投光器
42 励起光
100 センサ構造体
112 透明誘電体部材
116p,116q 蛍光色素層
118 金属薄膜
120 固定化リガンド含有層
122 第1のリガンド
124 第2のリガンド
125 装飾リガンド
126 蛍光分子
128 アナライト
130 光検出手段
142 励起光
A SPFSアッセイ領域
A´ 全反射アッセイ領域
P 全反射蛍光リファレンス領域
Q 電場増強蛍光リファレンス領域
Sa 蛍光シグナル
Sp 全反射蛍光シグナル
Sq 電場増強蛍光シグナル
θa,θp,θq 入射角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光伝搬領域となるコア層と、該コア層の上面または下面の少なくともいずれか一方に積層されるクラッド層と、を備え、
前記コア層の表面には、少なくとも、金属薄膜を介することなく蛍光色素層が形成された全反射蛍光リファレンス領域(P)と、金属薄膜を介して、前記領域(P)に形成された蛍光色素層と同一の蛍光色素からなる蛍光色素層が形成された電場増強蛍光リファレンス領域(Q)と、が形成されており、
前記コア層を伝搬する励起光が、全反射条件となる所定の入射角(θp)で前記領域(P)を照射した場合に、前記領域(P)で全反射した励起光が、全反射条件となる所定の入射角(θq)で前記領域(Q)を照射するように構成された表面プラズモン励起増強蛍光測定装置に用いられるセンサ構造体であって、
前記領域(P)を照射する際の励起光の入射角(θp)と、前記領域(Q)を照射する際の励起光の入射角(θq)とが異なる角度であり、
前記領域(P)で全反射した励起光が、全反射条件となる所定の入射角(θq)で前記領域(Q)を照射するように、前記領域(P)で全反射した励起光の入射角度を調整する入射角調整手段を備えることを特徴とするセンサ構造体。
【請求項2】
前記入射角調整手段が、
前記コア層の表面に形成された傾斜面であることを特徴とする請求項1に記載のセンサ構造体。
【請求項3】
前記コア層が、所定の屈折率を有する第1のコアと、該第1のコアとは異なる屈折率を有する第2のコアとが接合されて構成されたものであり、
前記第1のコアと第2のコアとの接合面が、前記入射角調整手段を構成することを特徴とする請求項1に記載のセンサ構造体。
【請求項4】
前記コア層の表面には、蛍光色素層を介することなく、前記領域(Q)に形成された金属薄膜と同一の金属で、同一の膜厚を有する金属薄膜を介して、リガンドを含有する固定化リガンド含有層が形成されたSPFSアッセイ領域(A)が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のセンサ構造体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のセンサ構造体を備えることを特徴とする表面プラズモン励起増強蛍光測定装置。

【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図1】
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【図3A】
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【図3B】
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【図5】
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