表面プラズモン型光変調器
ブロッホ表面プラズモン(BSP)効果を利用する光変調器が開示される。BSP光(BSPO)変調器(10)は、一次元または二次元とすることができる誘電率変調(P-M)格子(20)を備える。電気光学(EO)基板(30)がP-M格子を挟み込む。EO基板はその上に配置された電極(64)を有し、変調器をスイッチングする変調電圧信号(SM)を介して印加電圧(V30)を供給するために、電極に接続された電圧源(60)が用いられる。有害な反射効果を軽減するために屈折率整合層(40)を用いることができる。BSPO変調器により、表面プラズモンを励起するために入力光(100I)に斜め入射角を生じさせる必要なしに、垂直入射入力光を直接に変調することが可能になる。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は2008年8月15日に出願された、名称を「表面プラズモン型光変調器(Surface-Plasmon-Based Optical Modulator)」とする、米国仮特許出願第61/189100号の恩典と、その優先権を主張する。この特許出願の明細書の内容はその全体が本明細書に参照として含まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、全般的には光変調器に関し、特に表面プラズモン効果に基づく光変調器に関する。
【背景技術】
【0003】
光変調器は、通常は搬送光信号上に情報を載せる高速態様で、光ビームの強度を変えるために様々な光システムにおいて用いられる。光ファイバを用いる光遠距離通信システムのような、導波路ベースの光システムにおいて、光変調器は導波路によって導かれる光に情報をエンコードするために用いられる。光変調器の他の応用には、論理動作を行うため及び、光ビームに情報を載せる必要なしに光を選択的に遮断するかまたは透過させる、光ゲートとしてはたらくための、高速スイッチとしての用法がある。
【0004】
現在技術的に最も優れている光変調器は一般に電気光学(EO)型または電気吸収(EA)型の光変調器である。EO変調器は1次電気光学(ポッケルス)効果に基づき、EA変調器ではフランツ・ケルディッシュ効果または多重量子井戸ヘテロ構造における量子閉込めシュタルク効果が利用される。EO変調器では一般に、集積光デバイス及びシステムを作成する標準方法(例えば、Tiインディフュージョン、プロトン交換、等)を用いてEO材料(通常はニオブ酸リチウム)につくり込まれたマッハ・ツェンダー干渉計(MZI)が用いられる。残念ながら、MZIは光ファイバの外部にあるから、MZIと導波路の結合により望ましくない光信号減衰がおこる。また、減衰プロセスには、光ビームを2本の光ビームに分割して、光ビームに相対位相を与え、次いで光ビームを妨害する過程が関わる。これはかえってシステム及びプロセスを複雑にする。
【0005】
EA変調器は、逆に、1チップ上でレーザと集積することができる。しかし、EA変調器の消光比(すなわち論理‘1’及び‘0’に対応するパワーレベルの比)は一般に〜10dBと比較的低い。現在用いられているEAM(EA変調器)は嵩が大きく、材料が異なるシステム及び/またはデバイスとの集積化は簡単なことではない。
【0006】
表面プラズモンの使用に依存しようとしているファイバ光変調器がある。表面プラズモン(SP)は、いくつかの条件が満たされた場合に、金属層と(空気とすることができる)誘電体層の間の界面で進行する電磁波である。SP光変調器は誘導光波で搬送されるパワーを選択的にSPに変換する構造を利用する。SPに変換されるパワーの量を選択的に変えることにより、誘導光波が選択的に減衰されて所要のアナログ変調またはデジタル変調が達成される。
【0007】
今日まで、SPファイバ光変調器は、特定の金属-誘電体構造への横方向での(すなわちファイバ軸に平行な)光結合に依存して、SPを励起するに必要な条件を達成している。例えば、一例において、導波路の伝搬モードと導波路外部の金属-誘電体界面によってサポートされるプラズモンモードのエバネッセント波結合によって、光強度変調が達成される。他の手法では、プリズムまたは格子を用いてSPを励起するための斜め入射角を得ている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、中心光軸を有し、印加電圧がかけられているときに動作波長におけるブロッホ表面プラズモン(BSP)効果を用いて入力光を変調する、光変調器である。光変調器は、表面及び、表面に垂直で光軸に実質的に合わせられた、中心軸を有する誘電率変調(P-M)格子を備える。P-M格子は、格子面を定め、変調誘電率を定める、金属区画及び/または金属区画と誘電体区画の周期配列を有する。光変調器は、それぞれの屈折率が印加電圧に応答して変わり得る、第1及び第2のEO基板も備える。第1及び第2のEO基板は、P-M格子を挟み込み、EO基板の少なくとも1つの上に動作可能な態様で配置された電極を介してEO基板の少なくとも1つに印加電圧がかけられたときにBSPをサポートする構成を形成するように、光軸に沿って配置される。
【0009】
本発明の第2の態様は、中心軸を有し、印加電圧がかけられているときに動作波長におけるBSP効果を用いて入力光を変調する、光変調器である。光変調器は、実質的に平行な第1及び第2の表面を有し、屈折率が印加電圧に応答して変わり得る、EO基板を備える。光変調器は、EO基板を挟み込んで、EO基板上に動作可能な態様で配置された電極を介してEO基板に印加電圧がかけられたときに第1及び第2のBSPのそれぞれをサポートする第1及び第2の基板-格子インターフェースを形成するように配置された、第1及び第2のP-M格子も備える。光変調器は、それぞれがEO基板とは逆の側で第1及び第2のP-M格子に直に接して配置された、第1及び第2の誘電体基板も備える。
【0010】
本発明の第3の態様は、変調出力光を形成するためにBSP効果を用いて入力光を変調する方法である。方法は動作波長を定める少なくとも1つのP-M格子を提供する工程を含む。方法は少なくとも1つのP-M格子を、少なくとも1つのBSPをサポートできる少なくとも1つの格子-基板インターフェースを形成するように、印加電圧がかけられたときに屈折率が変わり得る少なくとも1つのEO基板とインターフェースさせる工程も含む。方法はさらに、動作波長において少なくとも1つのBSPをサポートできる少なくとも1つの格子-基板界面の能力を変え、よって入力光を選択的に減衰させて変調出力光を形成するように、少なくとも1つのEO基板への印加電圧を変えながら、入力光に少なくとも1つの格子-基板界面を通過させる工程を含む。
【0011】
本発明のさらなる特徴及び利点は以下の詳細な説明に述べられ、ある程度は、当業者にはその説明から容易に明らかであろうし、あるいは、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲を、また添付図面も、含む本明細書に説明されるように本発明を実施することで認められるであろう。
【0012】
上記の全般的説明及び以下の詳細な説明がいずれも、本発明の実施形態を提示し、特許請求されるような本発明の本質及び特質を理解するための概要または枠組みの提供が目的とされていることは当然である。添付図面は本発明のさらに深い理解を提供するために含められ、本明細書に組み入れられて、本明細書の一部をなす。図面は本発明の様々な実施形態を示し、既述とともに本発明の原理及び動作の説明に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、一次元P-M格子を用いる、ブロッホ表面プラズモン型光変調器(BSPO変調器)の第1の実施形態例の簡略な斜視図である。
【図2】図2は、図1のBSPO変調器に用いるための、一次元P-M格子の一実施形態例の拡大斜視図である。
【図3】図3は、導波路のBSPO変調器とのインターフェースまたはそうではなくとも動作可能な態様での接続を容易にするように構成されたハウジング内にBSPO変調器が保持される、一実施形態例の簡略な破断側面図である。
【図4】図4は、図3のハウジングを示し、ハウジングのコネクタ端面に接続されるコネクタ付光ファイバを示す。
【図5A】図5Aは、相異なる2つの屈折率n=2.1及び2.2を生じさせる相異なる2つの印加電圧(V30)の値に対する、図1のBPSO変調器についての波長λ(nm)の関数としての入力光の透過率T(dB)の「スイッチング曲線」のグラフである。
【図5B】図5Bは、図5Aと同様であるが、金属ストリップでの損失がより大きく、EO基板の屈折率nの変化がより小さい、現実的な場合の、スイッチング曲線のグラフである(中間スイッチング曲線CIも示される)。
【図6A】図6Aは、薄膜金属-誘電体構造上のBSPの励起に関する解析モデルを用いる多重パラメータ最適化計算に基づく、図1のBSPO変調器例についてのシミュレーションによる格子厚TG(Y軸)及び格子周期Λ(X軸)に対する透過率T(dB)のグレイスケール表示のグラフである。
【図6B】図6Bは、薄膜金属-誘電体構造上のBSPの励起に関する解析モデルを用いる多重パラメータ最適化計算に基づく、図1のBSPO変調器例についてのシミュレーションによる格子厚TG(Y軸)及び格子周期Λ(X軸)に対する透過率T(dB)のグレイスケール表示のグラフである。
【図7A】図7Aは、図1と同様であるがEO基板によって隔てられた2つの一次元P-M格子を用いる、BSPO変調器の別の実施形態例の簡略な側面図である。
【図7B】図7Bは、図7Aと同様であるがEO基板の側面に不透明電極が配置されている、実施形態例を示す。
【図8A】図8Aは、相異なる(シミュレーションによる)印加電圧によって生じさせた多くの相異なる屈折率nに対する、図7A及び7Bの2格子BSPO変調器の実施形態例についての透過率T(dB)対波長λ(nm)のシミュレーションによるスイッチング曲線を示す。
【図8B】図8Bは、厚さT30が相異なる(T30=50nm,100nm及び150nm)EO基板が2つの格子の間にあることを除き、図8Aと同様である。
【図9】図9は、金属区画及び誘電体区画で構成され、偏光不感BSPO変調器を形成するために用いられる、二次元P-M格子の上面図である。
【図10】図10は、図5Aのグラフと同様であるが、図9の二次元格子を備える図1のBSPO変調器についての、透過率T(dB)対波長λ(nm)のグラフのスイッチング曲線C1及びC2を示す。
【図11】図11は本発明のBSPO変調器を用いてレーザ源からの光を変調する光システムの一実施形態例の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のさらなる特徴及び利点は以下の詳細な説明に述べられ、当業者にはその説明から明らかであろうし、特許請求の範囲及び添付図面を含め、以下の記述で説明されるように本発明を実施することで認められるであろう。
【0015】
その例が添付図面に示される本発明の現在好ましい実施形態をここで詳細に参照する。図面は必ずしも比例尺で描かれてはいない。可能であれば必ず、全図面を通して、同じかまたは同様の参照数字が同じかまたは同様の要素を指して用いられる。本明細書に開示される実施形態が例に過ぎず、それぞれに本発明のいくつかの利点が組み込まれていることは当然である。
【0016】
本発明の範囲内において様々な改変及び変更を以下の例になすことができ、様々な例の態様を様々な形で混ぜ合わせてまた別の例を得ることができる。したがって、本発明の真の範囲は、本明細書に説明される実施形態の観点において、ただしそれには限定されずに、本開示の全体から理解されるべきである。
【0017】
本発明は、Journal of the Optical Society of America (JOSA) B,2008年,第25巻(刊行物)に発表され、http://josab.osa.org/upcoming.cfmから入手できる、エイ・コビヤコフ(A. Kobyakov)等の、名称を「シリコン基板及びガラス基板上のプレーナ型2金属格子における基本及び高次ブロッホ表面プラズモン(Fundamental and higher-order Bloch surface Plasmon in planar bi-metallic gratings on silicon and glass substrates)」とする論文、及び、エイ・コビヤコフ等の、名称を「光の一次元ナノプラズモン構造との相互作用に対する半解析的方法(Semi-analytical method for light interaction with 1D nano-plasmonic structures)」とする、Optics Express,2008年6月9日,第16巻,第12号,p.8938〜57の論文に説明されるような、BSPの励起の効果を利用する。上記論文はいずれも本明細書に参照として含まれる。
【0018】
定義
「水平(横)」、「垂直(縦)」、「前」、「後」、「入力」、「出力」、「内」、「外」、等のような語句及びデカルト座標の使用は、図面を参照するため及び説明を容易にするために用いられ、説明または特許請求の範囲において絶対的な方位及び/または方向として厳密に限定することは目的とされていない。用語「導波路」は「光導波路」を意味し、光ファイバには限定されないが、本発明は光ファイバの形態の光導波路に特に良く適する。記号「〜」は「ほぼ」を意味する略号として以下で用いられる。
【0019】
一次元P-M格子を1つ備えるBSPO変調器
図1は、中心光軸A1,入力側12I及び出力側12Oを有するブロッホ表面プラズモン型光変調器(BPSO変調器)10の一実施形態例の簡略な斜視図である。参照のためにデカルト座標が示されている。末端72及びコア領域(コア)73を有する導波路70とインターフェースされたBPSO変調器10が示されている。説明のため、導波路70は以下で詳細に説明されるようにそれぞれが出力光100I及び(変調された)出力光100Oを伝送する入力導波路70I及び出力導波路70Oとして識別され、いくつかの場合にはそのように称される。図1において、コア73を囲むクラッド領域(クラッド)74は、クラッドを囲むバッファ層(図3を見よ)と同様に、図示を容易にするため、省かれている。
【0020】
BSPO変調器10は、上面22及び下面24を有する、誘電率変調周期平面格子(P-M格子)20を備える。P-M格子20は、それぞれが実質的に平行な表面32を有する2枚の電気光学(EO)基板30により、光軸A1に沿って、挟み込まれる。一実施形態例において、表面32は波形を付けることができるが、波形の大きさはEO基板30の寸法よりかなり小さいから、表面はそれでも全体として実質的に平坦であり、互いに平行である。EO基板30は、BSPO変調器内で光軸A1に実質的に垂直に配置される。EO基板30は以下で非常に詳細に説明される。
【0021】
図2を参照すれば、一実施形態例において、P-M格子20は、X方向に配向され、Y方向で周期的に変化するように示される、それぞれの幅がWM及びWDの金属区画(ストライプ)26M及び誘電体区画(ストライプ)26Dの周期的配列を有する金属-誘電体格子の形態にある。この構成は、「一次元」格子または1D格子と称される。P-M格子20は、厚さTG,長さLG及び幅WGを有する。一実施形態例において、LG=WGである。P-M格子20は表面22及び表面22に垂直な中心軸A2を有する。
【0022】
一実施形態例において、格子厚TGは50nmから250nmの範囲にある。また一実施形態例において、LG=WG〜10μm及びTG〜100nmである。したがって、BSPO変調器10は一般的な導波路コア73の程度、例えば〜10μm×10μm、の断面寸法(例えば直径)を有することができる。そのような寸法により、光導波路、特に光ファイバとの結合及びパッケージ封入に対して利点を提供する、小フォームファクターをBSPO変調器10が有することが可能になる。より大きなP-M格子20を形成して、大有効面積を有する光ファイバ(すなわち、いわゆる「大有効面積ファイバ」)70I及び70Oのような、より大きなファイバコアとともに使用するための、より大きなBSPO変調器10を作成するために用いることができる。
【0023】
動作波長λOにおいて、金属ストリップ26Mは低損失を有し、BSPの励起に適するように、有限で負の誘電率εを有することが好ましい。金属ストリップ26Mの形成に最も適する金属の例には、それぞれが低損失であることから、金、銀及び銅が含まれる。誘電体ストリップ26Dの屈折率nDは大きく変わることができる。例えば、誘電体ストリップ26DはEO基板30の作成に用いられるEO材料と同じ材料で形成することができるが、別の例において、誘電体ストリップは空気とすることができる。
【0024】
別の実施形態例において、格子20の誘電体ストリップ26Dが金属ストリップ26Mの誘電率(ε1)とは異なる誘電率(ε2)を有する金属ストリップ26M'で置き換えられた、2金属P-M格子20の使用によって、nDが負にされる。例えば、可視波長における金及び銀のような、いくらかの波長範囲において光学的に異なる2つの金属の交互するストリップ26M及び26M'によって、必要な誘電率変調が達成される。ストリップ26M及び26M'のための金属の例には、例えば、金及び銀がある。2金属P-M格子20の作成のための別の選択肢には、金属ストリップの実効誘電率を改変するための幾何学的構造形成及び規定された実効誘電率を有する合金または金属-誘電体複合材料の使用がある。誘電率の周期変調は、一方または両方の金属区画表面に波形を付けることによっても達成することができる。
【0025】
P-M格子20はBSPO変調器10の所望の動作波長λOを定める(選択する)周期Λを有する。一実施形態例において、動作波長λOは1550nmのCバンド遠距離通信波長またはその近傍に選ばれる。別の実施形態例において、動作波長λOは1300nmまたはその近傍に、あるいは850nmまたはその近傍に、選ばれる。BSPO変調器10は、光周波数が高くなるほど金属における損失が低くなるため、後者の波長においてさらに高効率で動作するであろうと考えられる。
【0026】
一実施形態例において、格子厚TGは約100nmであり、それぞれのEO基板に対するEO基板厚T30(図3)は、BSPの適切な局在化を保証するため、約400nmより厚い。
【0027】
一実施形態において、デューティサイクルD=WD/Λ<1/2である。一実施形態において、発明者等によるコンピュータシミュレーションで決定されたように、Dは約0.2であることが好ましい。しかし、デューティサイクルDのさらなる最適化がBSPO変調器10についての特定の用途及び関連設計パラメータに基づいてなされ得ることが当業者には当然であろう。
【0028】
好ましい実施形態において、P-M格子20は通常の被着手法を用いてEO基板の一方の表面32上に直接形成される。例えば、特定のEO基板表面32が初めに金属層で被覆される。次いでフォトレジストが金属層に重ねて被着され、誘電体領域の場所を定めるため、(例えばフォトリソグラフィ露光を用いて)パターニングされる。露光されたフォトレジストは次いで現像され、構造がエッチングされて露出した金属が除去される。空気または別の誘電体材料(例えばシリカ)を金属ストリップ26Mの間に選択的に配するかまたは被着して誘電体ストリップ26Dを形成することができる。金属ストリップ26Mを覆う残りのフォトレジストが次いで除去される。EO基板表面32に波形を付け、次いで波形表面上に(1つまたは複数の)金属膜を形成することによって、波形が付けられた金属区画26M及び/または26M'を形成することができる。
【0029】
図1を再び参照すれば、EO基板30はEO材料でつくられる。EO基板30のためのEO材料の例には、ニオブ酸リチウム、チタン酸バリウム及びニオブ酸ストロンチウムバリウムがある。EO基板30は、用いられる特定の材料に対してそれぞれの結晶方位が最大のEO係数を与えるように、形成されることが好ましい。
【0030】
EO基板30は電気配線62によって電圧源60に電気的に接続される。電極64(図3及び図7も見よ)が基板上に形成され、必要な電気接続を与えるためにはたらく。図7Aに示される一実施形態例において、A1軸に沿いEO基板30にかけて印加電圧V30を与えるために透明電極64が用いられる。この例において、電極64間のEO材料の厚さT30が薄いことから、用いられるべき電圧を小さく(例えば5Vから10Vに)することができ、この結果、高速スイッチングが可能になる。透明電極64は、例えば、スズドープ酸化インジウム、フッ素ドープ酸化スズまたはドープト酸化亜鉛のような、多くの透明導電膜のいずれかで形成することができる。これらの金属酸化物でつくられた透明導電膜は通常、ガラスまたはセラミックの基板上に形成される。透明導電膜を形成する既知の方法には、化学的気相成長(CVD)法(例えば、プラズマCVD法及び光CVD法)、物理的気相成長(PVD)法(例えば、真空蒸着法、イオンプレーティング法及びスパッタリング法)及び様々なコーティング法がある。
【0031】
図1及び図3に示されるような実施形態例とは別の実施形態例において、電極64は、電圧V30が光軸A1にかかるように、EO基板30の側面に設けられる。この場合、さらに高い電圧(例えば50Vから70V,一般に<100V)が必要になり、このためスイッチング速度が若干遅くなる。スイッチングの速度及び効率を最適化するため、印加電圧V30はいずれのEO基板30にも与えられる。EO係数がニオブ酸リチウム(r33=31pm/V)より大きいチタン酸バリウムBaTiO3(r33=97pm/V,r42=1640pm/V)またはニオブ酸ストロンチウムバリウム(r33=224pm/V)のような材料を用いれば、必要な印加電圧V30を低くすることができる。さらにP-M格子20を最適化することで、印加電圧V30のさらなる低減を達成することができる。
【0032】
一実施形態例において、P-M格子20と逆の側でEO基板表面32の一方または両方に接して1つないし2つの屈折率整合層40が設けられる。屈折率性放送40はそれぞれ隣接EO基板30とは逆側の(すなわち、BSPO変調器10の入力端12I及び出力端12Oのそれぞれにおける)表面42を有する。屈折率整合層40は、図1に示されるようにBSPO変調器10が1つないしさらに多くの導波路70とインターフェースされたときに、反射を低減するように構成される。一実施形態例において、一方または両方の屈折率整合層40は導波路70の材料(例えば、シリカ、ドープトシリカ、等)とEO基板30のEO材料の屈折率が等しくないことによる構造からの光の反射を防止するように構成された1枚ないしさらに多くの薄い誘電体板(図示せず)を含む。一実施形態例において、一方または両方の屈折率整合層40はEO基板30の一方または両方の外表面上に施された1つないしさらに多くの薄膜反射防止コーティング(図示せず)を含む。
【0033】
一実施形態例において、一方または両方の導波路70は光ファイバである。好ましい実施形態において、導波路70は、P-M格子20上に入射する電磁(EM)波がTM EM波であることを保証するため、偏波保存導波路である。導波路70は偏波非保存とすることもできるが、P-M格子20は、以下でさらに詳細に論じられるように、2次元対称(すなわち、誘電体区画で隔てられた正方形または長方形の金属のモザイク格子配列)であることが好ましい。
【0034】
一実施形態例において、BSPO変調器10は、様々なフォトニクス、集積光学及び半導体用途のためのミクロンサイズ及びナノサイズの構造及びデバイスの作成に用いられることが多い、標準フォトリソグラフィプロセス及び手法を用いて極めて容易に作成される。同様に、提案される変調器は、フォトニック集積回路の光導波路70とも、光ファイバ導波路とも、集積することができる。BSPO変調器10の構成は、ニオブ酸リチウムまたはヒ化ガリウムのような特定の材料または材料群に束縛されない。P-M格子20を賢明に設計することでBSPO変調器10を広範な材料プラットフォームに適合させ得ることが当業者には当然であろう。
【0035】
一実施形態例において、BSPO変調器10の総厚T10は、屈折率整合層を用いないで約1μmから2μmの範囲に、また屈折率整合層を用いて約5μmから7μmの範囲に入るようにすることができる。
【0036】
BSPO変調器10は、「透過」または「オフ」モードにあるときは動作波長λOの光を極めて低い減衰(例えば〜2dB以下)で透過させ、「遮断」または「オン」モードにあるときは極めて高い減衰(例えば〜20dB以降)を有するように構成されることが好ましい。BSPO変調器10は、「オン」モードが印加電圧を必要とするかあるいは「オフ」モードが印加電圧を必要とするように構成することができる。以下の議論においては、説明のために、「オフ」モードが「無印加電圧モード」として選択される。
【0037】
その固有周波数が入力光100Iの動作波長λOと一致する、BSPモードの選択的励起により、垂直入射における広い減衰範囲(したがって大きな消光比)が可能になる。これは、斜め入射角を必要とする、他のSP型光変調器と対照的である。BSPは、与えられた方向に進行するSP波ではなく、定在波を形成する一括励起であることに注意されたい。この定在波BSPは、P-M格子表面22上の電荷分布(+,−)によって、図2に簡略に表されている。
【0038】
導波光システムの一部としてBSPO変調器10が用いられる場合、変調器を1つないしさらに多くの導波路70とインターフェースさせる工程が第1の工程に一般に含まれるであろう。一実施形態例において、光ファイバの形態の導波路70がBSPO変調器10と入力側12I及び出力側12Oにおいてインターフェースされる。
【0039】
図3は、導波路70の変調器へのインターフェースまたはそうではなくとも動作可能な態様での接続を容易にするように構成されたハウジング150内にBSPO変調器10が保持されている、一実施形態例の簡略な破断側面図である。ハウジング150は、BSPO変調器10を収めるように構成された内部構造154を有する、中央区画152を備える。ハウジング150はハウジング150の両側に、オープンエンド158を有し、それぞれの導波路70を収容する寸法につくられたそれぞれのチャネル160を定める、チャネル区画156も備える。一実施形態例において、チャネル160は2つの同等な導波路70を収容するために同じ寸法を有し、別の実施形態例において、チャネル160は異なる導波路70を収容するような寸法(及び/または形状)につくられる。一実施形態例において、電極に接続される電気配線62は電圧源60との接続を容易にするための電気コンタクト63を含む。
【0040】
ハウジング150は2本の光ファイバ70を互いに結合させるために特に有用である。図3は、「裸の」ファイバ70(すなわち、コア73とクラッド74)がチャネル160に挿入され得るようにバッファ層75が部分的に剥ぎ取られている、一実施形態例を示す。別の実施形態例において、チャネル区画156は標準光ファイバコネクタ(例えば、STP型コネクタ)を収容するように形成することができ、ファイバ70の末端部分は、図4に示されるように、標準光ファイバコネクタ80によるコネクタ付とすることができる。
【0041】
図1をまた参照すれば、BSPO変調器10の動作において、入力光100Iは入力導波路70I内を光軸A1に沿って進行し、BSPO変調器10に入力側12Iで入射する。導波路端72に形成される界面による有害な反射を軽減するために屈折率整合層40が用いられていれば、入力光100Iは初めにこの屈折率整合層に入射し、最小限の反射しか受けない。ここでBSPO変調器10は一方または両方の屈折率整合層40がなくとも機能し得ることをはっきりさせておく必要がある。しかし、ほとんどの場合において、反射を低減して透過(オフ)状態にある変調器を透過できる光の量を最大化することが有益であることが当業者には当然であろう。
【0042】
したがって、入力光100Iのほとんどが第1のEO基板30に進む。印加電圧V30=0とすれば、EO基板の屈折率nの値は比較的低く(例えばn=2.1)、よって、入力光100Iは格子-EO基板界面で与えられるBSP効果による減衰を実質的に受けない。したがって、V30=0の場合に、入力光100Iは実質的に、P-M格子20,第2のEO基板30及び第2の屈折率整合層40を実質的に無減衰で透過して、出力光100Oを形成する。
【0043】
他方で、電圧源60による一方または両方のEO基板30への電圧V30の印加は、基板30の屈折率を変え、したがってBSPの固有周数をシフトさせるようにはたらく。オフ状態において、システムのパラメータは、BSPが励起され、膜の高透過率を媒介するような値にある。印加電圧は入力(入射)光100Iの強度を実質的に抑制するようにはたらき、よって実質的に光が透過しないギャップ100Gを出力光100Oに形成する。印加電圧V30のオン/オフを選択的に切り換える(あるいは、アナログ変調器の場合は印加電圧を選択的に変える)ことで、透過光100Tの部分部分の間の、ギャップ100Gの発生及び大きさが制御され、よって出力光100Oが変調される。一実施形態例において、変調信号SMが印加電圧V30を、変調情報及び、必要であれば、バイアス電圧を含む態様で、BSPO変調器10に(特に電極64を介してEO基板30に)供給する。
【0044】
BSPO変調器10は、論理動作、レーザモードロック動作、等のような多くの用途のためのデジタルEOスイッチとして用いられ得ることにも注意されたい。印加電圧V30はEO基板30の一方または両方に印加され得ることにも注意されたい。単一のEO基板30への印加電圧の印加では、良好な変調性能は得られないが、大きな減衰(すなわち高消光比)を必要としないいくつかの用途では許容され得る。
【0045】
図5Aは、2つの相異なる屈折率n=2.1及び2.2を生じさせる2つの相異なる印加電圧V30の値に対する、一例のBSPO変調器10についての波長λ(nm)の関数としての入力光100Iの透過率T(dB)の「スイッチング曲線」のグラフである。2つのスイッチング曲線はC1及びC2で表示される。図5Aは完全数値時間領域差分(FTDT)シミュレーションを用いて、低損失材料及び高印加電圧V30という理想的な場合について作成した。シミュレートしたBSPO変調器10は、格子厚TG=116nm及び格子周期Λ=688nmであった。
【0046】
図5Bは、図5Aと同様であるが、金属ストリップ26Mにおけるより現実的な損失及びEO基板30の屈折率nのより小さな変化に対する、スイッチング曲線のグラフである。そのような変更は、透明(透過)状態におけるより大きな損失及びより低い消光比をもたらす。シミュレートしたBSPO変調器10は、格子厚TG=100nm及び格子周期Λ=694nmであった。3本の曲線C1,CI及びC2が示される。曲線C1は、屈折率がn=2.1になる、V30=0(すなわち「オフ」状態)を示す。曲線CIは、印加電圧V30が非ゼロであり(すなわち、「オン」状態にあるが最大電圧V最大ではない)、屈折率がn=2.13になる「中間」曲線である。曲線C2は、屈折率がn=2.16になる、V30=V最大(すなわち完全「オン」状態)に対する曲線である。図5Aに比較して、図5Bの曲線C1,CI及びC2を生成するに必要な印加電圧V30は小さくなった。許容できる消光比を約25dBとすれば、許容できる動作波長帯域幅ΔλO(すなわち、動作波長λOの範囲)は、曲線C1及びC2から、約20nmと推定される。
【0047】
図6A及び6Bは、薄型構造P-M膜上のBSPの励起に関する解析的モデルを用いる多重パラメータ最適化計算に基づく、一例のBSPO変調器10についてのシミュレーションによる格子厚TG(Y軸)及び格子周期Λ(X軸)に対する透過率T(dB)のグレイスケール表示のグラフである。そのような計算はBSPO変調器10の最も効率の高い動作に対するパラメータ空間の同定に役立つ。図6Aはn=2.1(「オフ」状態)に対するグラフであり、図6Bはn=2.2(「オン」状態)に対するグラフである。
【0048】
図6A及び6Bの結果は解析的モデルに基づくシミュレーションを用いて得られているから、ピーク透過率値は若干低く推定されている。それにもかかわらず、モデルに基づくそのような最適化により、P-M格子20に適切な格子厚TG及び格子周期Λの決定が可能になる。
【0049】
BSPO変調器10のスイッチング速度は一般に用いられる特定のEO基板材料に支配され、よって一般に他のEO型変調器と同じである。例えば、約40Gb/秒のスイッチング速度がニオブ酸リチウムEO基板30で可能である。そのようなスイッチング速度は、特定の電極構成及び、非軸性電極構成についてスイッチングを実施するに必要な(例えば約70Vまでの)、比較的高い電圧によって、ある程度低下し得る。
【0050】
一次元P-M格子を2つ備えるBSPO変調器
図7A及び7Bは、図1と同様であるが、EO基板30で隔てられた2つのP-M格子20を用い、2つの誘電体基板110が光軸A1に沿って2つのP-M格子20を挟み込んでいる、BSPO変調器10の実施形態例の簡略な側面図である。EO基板表面32及び2つのP-M格子20が、BSPO変調器10が「オン」状態にあるときにBSPをそれぞれがサポートする、2つの対応する格子-基板界面GSIを形成する。
【0051】
図7Aに示されるように、それぞれのEO基板表面32上の2つの透明導電膜が、それらの間に配置された単EO基板30に対する透明電極としてはたらくことができる。この構成にはEO基板表面32にわたる一様電圧分布が容易になるという利点がある。透明電極64の厚さは、結合損失を最小限に抑えるため、可能な限り小さく(例えば100nm程度に)保たれることが好ましい。
【0052】
別の実施形態例において、自体が電極としてはたらく、2金属P-M格子20が用いられる。また、格子20がP-M格子である場合、誘電体ストリップ26Dを導電材料で作成し、透明電極64としてはたらかせることができる。
【0053】
図7BはEO基板30の側面上に電極64が配置されている実施形態例を示す。
【0054】
図7A及び7Bの単EO基板実施形態により、EO基板厚T30を約50nmまで薄くすることが可能になる。軸上透明電極64を用いる図7Aの実施形態においては、これによって、上述した第1の実施形態例に比較して、スイッチングに必要な印加電圧V30の大きさを実質的に低減することが可能になる。図7Bの実施形態に必要な印加電圧V30の低減も同様に有意であるが、図7Aの軸上電極実施形態に対するほど大きくはない。この場合、2つのP-M格子20のそれぞれの厚さは上で論じた第1の実施形態例で考察したP-M格子20の厚さの1/2に薄くすることができ、よって透過(「オフ」)モードにおけるBSPO変調器10の透過率は影響を受けない。
【0055】
図8Aは、相異なる(シミュレーションによる)印加電圧V30によって生じさせた多くの相異なる屈折率nに対する、図7Aに示したBSPO変調器10の実施形態例についての透過率T(dB)対波長λ(nm)のシミュレーションによるスイッチング曲線を示す。他のシミュレーションパラメータは、それぞれのP-M格子20についてTG=50nm及びΛ=696nmとし、両誘電体基板110についてn110=2.1とした。図8Aにおいて、EO基板厚はT30=100nmとした。
【0056】
図8Bは、T30=50nm,100nm及び150nmの、厚さT30が相異なるEO基板が含まれることを除いて、図8Aと同様である。図8A及び8Bのスイッチング曲線は、図5A及び5Bのスイッチング曲線と比較して、同様の性能を示す。
【0057】
図7A及び7BのBSPO変調器10の図1の単格子実施形態に優る利点は、特定の用途のための変調器の設計に利用できる最適化パラメータの数(すなわち自由度)が大きくなることである。例えば、この場合は2つのP-M格子20を使用するから、2つの格子厚TGを利用できる。また、EO基板厚T30を変えることもできる。さらに、(電気光学材料である必要はない)誘電体基板110の屈折率n110は変えることができ、同じである必要はない。例えば、図8Bからわかるように、EO基板厚T30を50nmずつ大きくする毎に、BSPO変調器10のスイッチング性能は有意に変化する。
【0058】
二次元P-M格子を備えるBSPO変調器
図9は、誘電体区画26Dで隔てられた金属区画26Mのモザイク格子配列を有する、二次元P-M格子20の実施形態例の上面図である。一般に金属区画26Mと誘電体区画26Dの大きさは異なる。このP-M格子20の二次元実施形態例は図2の一次元版と類似しているが、この場合、格子はX方向の周期ΛX及びY方向の周期ΛYを有する。図9の二次元P-M格子20は上で論じたBSPO変調器10の実施形態のいずれにも用いることができる。P-M格子20に対するこの幾何学的構造によってBSPO変調器10は実質的に偏光不感になり、これは非偏波保存導波路70が用いられ得ることを意味する。
【0059】
図10は、図5Aのグラフと同様であるが、図1のBSPO変調器10に図9の二次元P-M格子20を用いたときの、透過率T(dB)対波長λ(nm)のグラフのスイッチング曲線C1及びC2を示す。曲線C1及びC2を形成するためにシミュレーションに用いた二次元P-M格子20は、X軸及びY軸のいずれにも沿って、周期ΛX=ΛY=696nm及びデューティサイクルD=0.2を有する。金属区画26Mは金膜に基づいてモデル化し、格子厚TG=100nmとした。入力光100Iの入射平面波の偏光はY軸に沿わせた。グラフの屈折率「n」は、数値シミュレーションにおいて等しいとおいた、屈折率整合層40及び誘電体区画26Dの誘電屈折率を指す。動作波長λO=1557nmにおいて、Δn=0.03の屈折率変化に対し、約10dBのコントラストが達成される。
【0060】
BSPO変調器を備える光システム
図11は、本発明のBSPO変調器10を(光源の直接変調とは対照的に)外部変調器として用いる、光システム200の略図である。光システム200は、入力導波路70Iの区画に光結合されたレーザ源210を備える。入力導波路70I及び出力導波路70Oはハウジング150に収められたBSPO変調器10の入力側12I及び出力側12O(図3)に光結合される。変調器10は電気配線62を介して電圧源60に電気的に接続される。電圧源60は続いて、レーザ源210にも接続され、光システム200の動作を制御するように構成された、コントローラ/プロセッサ230に電気的に接続される。光システム200は電圧源60の駆動に用いられる電圧コントローラ信号S60のソース250も備えることができ、あるいはそのようなソース250に接続することができる。あるいは、電圧コントローラ信号S60はコントローラ/プロセッサ230によって内部で発生させることもできる。
【0061】
動作において、コントローラ/プロセッサ230は、レーザ源210にレーザ制御信号SLを送ってレーザ源の動作を開始させる。応答して、レーザ源210は、変調されるべき連続波搬送信号のような、入力光100Iを発生する。
【0062】
コントローラ/プロセッサ230は電圧コントローラ信号S60も生成するか、電圧コントローラ信号S60を電圧源60に振り向ける。電圧コントローラ信号S60は、例えば、バイアス電圧および、変調情報を含む、RF印加電圧V30を含む、変調電圧信号SMを形成するために電圧源60によって用いられるべき、変調情報を有する。電圧源60は変調電圧信号SM(すなわち電圧V30)をBSPO変調器10に供給し、BSPO変調器10は、変調電圧信号SMに応答し、上述したように入力光100Iを変調して変調出力光100Oを形成する(図1も見よ)。
【0063】
利点
本発明のBSPO変調器10は多くの重要な利点を有し得る。第1の利点は、変調器の断面寸法が光ファイバのような一般的な導波路のコア73の寸法とほぼ同じであるように変調器を非常にコンパクトに作成し得ることである。BSPO変調器10は屈折率整合層40の使用により低結合損失を有するように作成することもできる。さらに、BSPO変調器10は、位相変調に続いて強度変調への変換が必要な干渉計型変調器とは対照的に、光の直接変調を提供する。さらに、BSPO変調器10は、斜め入射角を与える必要がなく、垂直入射光を変調する。
【0064】
BSPO変調器10は、上で論じた様々な変調器パラメータの選択によって調整することができる、動作波長λOも有する。1550nm、1300nm及び850nmのような様々な波長ウインドウに設計を拡張することができる。
【0065】
動作波長帯域幅ΔλOは20nm程度にすることができる。さらに、非常に高い消光比(約20dB以上)を達成することができる。しかし、EO係数が比較的高いEO材料を用いない限り、あるいは透明電極64を光軸A1に沿って用いることができれば、比較的高い印加電圧V30が必要になり得る。P-M格子20が一次元であるかまたは二次元であるかに依存して、PM実施形態または非PM実施形態のいずれのBSPO変調器10も形成することができる。
【0066】
上記説明が本発明の例示に過ぎず、特許請求の範囲で定められるような本発明の本質及び特質の理解のための概要の提供が目的とされていることは当然である。添付図面は本発明のさらに深い理解を提供するために含められ、本明細書に組み入れられて本明細書の一部をなす。図面は、記述とともに、本発明の原理及び動作の説明に役立つ、本発明の様々な特徴及び実施形態を示す。本明細書に説明されるような本発明の好ましい実施形態に、添付される特許請求の範囲に定められるような本発明の精神または範囲を逸脱することなく、様々な改変がなされ得ることが当業者には明らかになるであろう。
【符号の説明】
【0067】
10 ブロッホ表面プラズモン光(BSPO)変調器
20 誘電率変調(P-M)格子
30 電気光学(EO)基板
40 屈折率整合層
60 電圧源
64 電極
100I 入力光
100O 出力光
SM 変調電圧信号
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は2008年8月15日に出願された、名称を「表面プラズモン型光変調器(Surface-Plasmon-Based Optical Modulator)」とする、米国仮特許出願第61/189100号の恩典と、その優先権を主張する。この特許出願の明細書の内容はその全体が本明細書に参照として含まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、全般的には光変調器に関し、特に表面プラズモン効果に基づく光変調器に関する。
【背景技術】
【0003】
光変調器は、通常は搬送光信号上に情報を載せる高速態様で、光ビームの強度を変えるために様々な光システムにおいて用いられる。光ファイバを用いる光遠距離通信システムのような、導波路ベースの光システムにおいて、光変調器は導波路によって導かれる光に情報をエンコードするために用いられる。光変調器の他の応用には、論理動作を行うため及び、光ビームに情報を載せる必要なしに光を選択的に遮断するかまたは透過させる、光ゲートとしてはたらくための、高速スイッチとしての用法がある。
【0004】
現在技術的に最も優れている光変調器は一般に電気光学(EO)型または電気吸収(EA)型の光変調器である。EO変調器は1次電気光学(ポッケルス)効果に基づき、EA変調器ではフランツ・ケルディッシュ効果または多重量子井戸ヘテロ構造における量子閉込めシュタルク効果が利用される。EO変調器では一般に、集積光デバイス及びシステムを作成する標準方法(例えば、Tiインディフュージョン、プロトン交換、等)を用いてEO材料(通常はニオブ酸リチウム)につくり込まれたマッハ・ツェンダー干渉計(MZI)が用いられる。残念ながら、MZIは光ファイバの外部にあるから、MZIと導波路の結合により望ましくない光信号減衰がおこる。また、減衰プロセスには、光ビームを2本の光ビームに分割して、光ビームに相対位相を与え、次いで光ビームを妨害する過程が関わる。これはかえってシステム及びプロセスを複雑にする。
【0005】
EA変調器は、逆に、1チップ上でレーザと集積することができる。しかし、EA変調器の消光比(すなわち論理‘1’及び‘0’に対応するパワーレベルの比)は一般に〜10dBと比較的低い。現在用いられているEAM(EA変調器)は嵩が大きく、材料が異なるシステム及び/またはデバイスとの集積化は簡単なことではない。
【0006】
表面プラズモンの使用に依存しようとしているファイバ光変調器がある。表面プラズモン(SP)は、いくつかの条件が満たされた場合に、金属層と(空気とすることができる)誘電体層の間の界面で進行する電磁波である。SP光変調器は誘導光波で搬送されるパワーを選択的にSPに変換する構造を利用する。SPに変換されるパワーの量を選択的に変えることにより、誘導光波が選択的に減衰されて所要のアナログ変調またはデジタル変調が達成される。
【0007】
今日まで、SPファイバ光変調器は、特定の金属-誘電体構造への横方向での(すなわちファイバ軸に平行な)光結合に依存して、SPを励起するに必要な条件を達成している。例えば、一例において、導波路の伝搬モードと導波路外部の金属-誘電体界面によってサポートされるプラズモンモードのエバネッセント波結合によって、光強度変調が達成される。他の手法では、プリズムまたは格子を用いてSPを励起するための斜め入射角を得ている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、中心光軸を有し、印加電圧がかけられているときに動作波長におけるブロッホ表面プラズモン(BSP)効果を用いて入力光を変調する、光変調器である。光変調器は、表面及び、表面に垂直で光軸に実質的に合わせられた、中心軸を有する誘電率変調(P-M)格子を備える。P-M格子は、格子面を定め、変調誘電率を定める、金属区画及び/または金属区画と誘電体区画の周期配列を有する。光変調器は、それぞれの屈折率が印加電圧に応答して変わり得る、第1及び第2のEO基板も備える。第1及び第2のEO基板は、P-M格子を挟み込み、EO基板の少なくとも1つの上に動作可能な態様で配置された電極を介してEO基板の少なくとも1つに印加電圧がかけられたときにBSPをサポートする構成を形成するように、光軸に沿って配置される。
【0009】
本発明の第2の態様は、中心軸を有し、印加電圧がかけられているときに動作波長におけるBSP効果を用いて入力光を変調する、光変調器である。光変調器は、実質的に平行な第1及び第2の表面を有し、屈折率が印加電圧に応答して変わり得る、EO基板を備える。光変調器は、EO基板を挟み込んで、EO基板上に動作可能な態様で配置された電極を介してEO基板に印加電圧がかけられたときに第1及び第2のBSPのそれぞれをサポートする第1及び第2の基板-格子インターフェースを形成するように配置された、第1及び第2のP-M格子も備える。光変調器は、それぞれがEO基板とは逆の側で第1及び第2のP-M格子に直に接して配置された、第1及び第2の誘電体基板も備える。
【0010】
本発明の第3の態様は、変調出力光を形成するためにBSP効果を用いて入力光を変調する方法である。方法は動作波長を定める少なくとも1つのP-M格子を提供する工程を含む。方法は少なくとも1つのP-M格子を、少なくとも1つのBSPをサポートできる少なくとも1つの格子-基板インターフェースを形成するように、印加電圧がかけられたときに屈折率が変わり得る少なくとも1つのEO基板とインターフェースさせる工程も含む。方法はさらに、動作波長において少なくとも1つのBSPをサポートできる少なくとも1つの格子-基板界面の能力を変え、よって入力光を選択的に減衰させて変調出力光を形成するように、少なくとも1つのEO基板への印加電圧を変えながら、入力光に少なくとも1つの格子-基板界面を通過させる工程を含む。
【0011】
本発明のさらなる特徴及び利点は以下の詳細な説明に述べられ、ある程度は、当業者にはその説明から容易に明らかであろうし、あるいは、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲を、また添付図面も、含む本明細書に説明されるように本発明を実施することで認められるであろう。
【0012】
上記の全般的説明及び以下の詳細な説明がいずれも、本発明の実施形態を提示し、特許請求されるような本発明の本質及び特質を理解するための概要または枠組みの提供が目的とされていることは当然である。添付図面は本発明のさらに深い理解を提供するために含められ、本明細書に組み入れられて、本明細書の一部をなす。図面は本発明の様々な実施形態を示し、既述とともに本発明の原理及び動作の説明に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、一次元P-M格子を用いる、ブロッホ表面プラズモン型光変調器(BSPO変調器)の第1の実施形態例の簡略な斜視図である。
【図2】図2は、図1のBSPO変調器に用いるための、一次元P-M格子の一実施形態例の拡大斜視図である。
【図3】図3は、導波路のBSPO変調器とのインターフェースまたはそうではなくとも動作可能な態様での接続を容易にするように構成されたハウジング内にBSPO変調器が保持される、一実施形態例の簡略な破断側面図である。
【図4】図4は、図3のハウジングを示し、ハウジングのコネクタ端面に接続されるコネクタ付光ファイバを示す。
【図5A】図5Aは、相異なる2つの屈折率n=2.1及び2.2を生じさせる相異なる2つの印加電圧(V30)の値に対する、図1のBPSO変調器についての波長λ(nm)の関数としての入力光の透過率T(dB)の「スイッチング曲線」のグラフである。
【図5B】図5Bは、図5Aと同様であるが、金属ストリップでの損失がより大きく、EO基板の屈折率nの変化がより小さい、現実的な場合の、スイッチング曲線のグラフである(中間スイッチング曲線CIも示される)。
【図6A】図6Aは、薄膜金属-誘電体構造上のBSPの励起に関する解析モデルを用いる多重パラメータ最適化計算に基づく、図1のBSPO変調器例についてのシミュレーションによる格子厚TG(Y軸)及び格子周期Λ(X軸)に対する透過率T(dB)のグレイスケール表示のグラフである。
【図6B】図6Bは、薄膜金属-誘電体構造上のBSPの励起に関する解析モデルを用いる多重パラメータ最適化計算に基づく、図1のBSPO変調器例についてのシミュレーションによる格子厚TG(Y軸)及び格子周期Λ(X軸)に対する透過率T(dB)のグレイスケール表示のグラフである。
【図7A】図7Aは、図1と同様であるがEO基板によって隔てられた2つの一次元P-M格子を用いる、BSPO変調器の別の実施形態例の簡略な側面図である。
【図7B】図7Bは、図7Aと同様であるがEO基板の側面に不透明電極が配置されている、実施形態例を示す。
【図8A】図8Aは、相異なる(シミュレーションによる)印加電圧によって生じさせた多くの相異なる屈折率nに対する、図7A及び7Bの2格子BSPO変調器の実施形態例についての透過率T(dB)対波長λ(nm)のシミュレーションによるスイッチング曲線を示す。
【図8B】図8Bは、厚さT30が相異なる(T30=50nm,100nm及び150nm)EO基板が2つの格子の間にあることを除き、図8Aと同様である。
【図9】図9は、金属区画及び誘電体区画で構成され、偏光不感BSPO変調器を形成するために用いられる、二次元P-M格子の上面図である。
【図10】図10は、図5Aのグラフと同様であるが、図9の二次元格子を備える図1のBSPO変調器についての、透過率T(dB)対波長λ(nm)のグラフのスイッチング曲線C1及びC2を示す。
【図11】図11は本発明のBSPO変調器を用いてレーザ源からの光を変調する光システムの一実施形態例の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のさらなる特徴及び利点は以下の詳細な説明に述べられ、当業者にはその説明から明らかであろうし、特許請求の範囲及び添付図面を含め、以下の記述で説明されるように本発明を実施することで認められるであろう。
【0015】
その例が添付図面に示される本発明の現在好ましい実施形態をここで詳細に参照する。図面は必ずしも比例尺で描かれてはいない。可能であれば必ず、全図面を通して、同じかまたは同様の参照数字が同じかまたは同様の要素を指して用いられる。本明細書に開示される実施形態が例に過ぎず、それぞれに本発明のいくつかの利点が組み込まれていることは当然である。
【0016】
本発明の範囲内において様々な改変及び変更を以下の例になすことができ、様々な例の態様を様々な形で混ぜ合わせてまた別の例を得ることができる。したがって、本発明の真の範囲は、本明細書に説明される実施形態の観点において、ただしそれには限定されずに、本開示の全体から理解されるべきである。
【0017】
本発明は、Journal of the Optical Society of America (JOSA) B,2008年,第25巻(刊行物)に発表され、http://josab.osa.org/upcoming.cfmから入手できる、エイ・コビヤコフ(A. Kobyakov)等の、名称を「シリコン基板及びガラス基板上のプレーナ型2金属格子における基本及び高次ブロッホ表面プラズモン(Fundamental and higher-order Bloch surface Plasmon in planar bi-metallic gratings on silicon and glass substrates)」とする論文、及び、エイ・コビヤコフ等の、名称を「光の一次元ナノプラズモン構造との相互作用に対する半解析的方法(Semi-analytical method for light interaction with 1D nano-plasmonic structures)」とする、Optics Express,2008年6月9日,第16巻,第12号,p.8938〜57の論文に説明されるような、BSPの励起の効果を利用する。上記論文はいずれも本明細書に参照として含まれる。
【0018】
定義
「水平(横)」、「垂直(縦)」、「前」、「後」、「入力」、「出力」、「内」、「外」、等のような語句及びデカルト座標の使用は、図面を参照するため及び説明を容易にするために用いられ、説明または特許請求の範囲において絶対的な方位及び/または方向として厳密に限定することは目的とされていない。用語「導波路」は「光導波路」を意味し、光ファイバには限定されないが、本発明は光ファイバの形態の光導波路に特に良く適する。記号「〜」は「ほぼ」を意味する略号として以下で用いられる。
【0019】
一次元P-M格子を1つ備えるBSPO変調器
図1は、中心光軸A1,入力側12I及び出力側12Oを有するブロッホ表面プラズモン型光変調器(BPSO変調器)10の一実施形態例の簡略な斜視図である。参照のためにデカルト座標が示されている。末端72及びコア領域(コア)73を有する導波路70とインターフェースされたBPSO変調器10が示されている。説明のため、導波路70は以下で詳細に説明されるようにそれぞれが出力光100I及び(変調された)出力光100Oを伝送する入力導波路70I及び出力導波路70Oとして識別され、いくつかの場合にはそのように称される。図1において、コア73を囲むクラッド領域(クラッド)74は、クラッドを囲むバッファ層(図3を見よ)と同様に、図示を容易にするため、省かれている。
【0020】
BSPO変調器10は、上面22及び下面24を有する、誘電率変調周期平面格子(P-M格子)20を備える。P-M格子20は、それぞれが実質的に平行な表面32を有する2枚の電気光学(EO)基板30により、光軸A1に沿って、挟み込まれる。一実施形態例において、表面32は波形を付けることができるが、波形の大きさはEO基板30の寸法よりかなり小さいから、表面はそれでも全体として実質的に平坦であり、互いに平行である。EO基板30は、BSPO変調器内で光軸A1に実質的に垂直に配置される。EO基板30は以下で非常に詳細に説明される。
【0021】
図2を参照すれば、一実施形態例において、P-M格子20は、X方向に配向され、Y方向で周期的に変化するように示される、それぞれの幅がWM及びWDの金属区画(ストライプ)26M及び誘電体区画(ストライプ)26Dの周期的配列を有する金属-誘電体格子の形態にある。この構成は、「一次元」格子または1D格子と称される。P-M格子20は、厚さTG,長さLG及び幅WGを有する。一実施形態例において、LG=WGである。P-M格子20は表面22及び表面22に垂直な中心軸A2を有する。
【0022】
一実施形態例において、格子厚TGは50nmから250nmの範囲にある。また一実施形態例において、LG=WG〜10μm及びTG〜100nmである。したがって、BSPO変調器10は一般的な導波路コア73の程度、例えば〜10μm×10μm、の断面寸法(例えば直径)を有することができる。そのような寸法により、光導波路、特に光ファイバとの結合及びパッケージ封入に対して利点を提供する、小フォームファクターをBSPO変調器10が有することが可能になる。より大きなP-M格子20を形成して、大有効面積を有する光ファイバ(すなわち、いわゆる「大有効面積ファイバ」)70I及び70Oのような、より大きなファイバコアとともに使用するための、より大きなBSPO変調器10を作成するために用いることができる。
【0023】
動作波長λOにおいて、金属ストリップ26Mは低損失を有し、BSPの励起に適するように、有限で負の誘電率εを有することが好ましい。金属ストリップ26Mの形成に最も適する金属の例には、それぞれが低損失であることから、金、銀及び銅が含まれる。誘電体ストリップ26Dの屈折率nDは大きく変わることができる。例えば、誘電体ストリップ26DはEO基板30の作成に用いられるEO材料と同じ材料で形成することができるが、別の例において、誘電体ストリップは空気とすることができる。
【0024】
別の実施形態例において、格子20の誘電体ストリップ26Dが金属ストリップ26Mの誘電率(ε1)とは異なる誘電率(ε2)を有する金属ストリップ26M'で置き換えられた、2金属P-M格子20の使用によって、nDが負にされる。例えば、可視波長における金及び銀のような、いくらかの波長範囲において光学的に異なる2つの金属の交互するストリップ26M及び26M'によって、必要な誘電率変調が達成される。ストリップ26M及び26M'のための金属の例には、例えば、金及び銀がある。2金属P-M格子20の作成のための別の選択肢には、金属ストリップの実効誘電率を改変するための幾何学的構造形成及び規定された実効誘電率を有する合金または金属-誘電体複合材料の使用がある。誘電率の周期変調は、一方または両方の金属区画表面に波形を付けることによっても達成することができる。
【0025】
P-M格子20はBSPO変調器10の所望の動作波長λOを定める(選択する)周期Λを有する。一実施形態例において、動作波長λOは1550nmのCバンド遠距離通信波長またはその近傍に選ばれる。別の実施形態例において、動作波長λOは1300nmまたはその近傍に、あるいは850nmまたはその近傍に、選ばれる。BSPO変調器10は、光周波数が高くなるほど金属における損失が低くなるため、後者の波長においてさらに高効率で動作するであろうと考えられる。
【0026】
一実施形態例において、格子厚TGは約100nmであり、それぞれのEO基板に対するEO基板厚T30(図3)は、BSPの適切な局在化を保証するため、約400nmより厚い。
【0027】
一実施形態において、デューティサイクルD=WD/Λ<1/2である。一実施形態において、発明者等によるコンピュータシミュレーションで決定されたように、Dは約0.2であることが好ましい。しかし、デューティサイクルDのさらなる最適化がBSPO変調器10についての特定の用途及び関連設計パラメータに基づいてなされ得ることが当業者には当然であろう。
【0028】
好ましい実施形態において、P-M格子20は通常の被着手法を用いてEO基板の一方の表面32上に直接形成される。例えば、特定のEO基板表面32が初めに金属層で被覆される。次いでフォトレジストが金属層に重ねて被着され、誘電体領域の場所を定めるため、(例えばフォトリソグラフィ露光を用いて)パターニングされる。露光されたフォトレジストは次いで現像され、構造がエッチングされて露出した金属が除去される。空気または別の誘電体材料(例えばシリカ)を金属ストリップ26Mの間に選択的に配するかまたは被着して誘電体ストリップ26Dを形成することができる。金属ストリップ26Mを覆う残りのフォトレジストが次いで除去される。EO基板表面32に波形を付け、次いで波形表面上に(1つまたは複数の)金属膜を形成することによって、波形が付けられた金属区画26M及び/または26M'を形成することができる。
【0029】
図1を再び参照すれば、EO基板30はEO材料でつくられる。EO基板30のためのEO材料の例には、ニオブ酸リチウム、チタン酸バリウム及びニオブ酸ストロンチウムバリウムがある。EO基板30は、用いられる特定の材料に対してそれぞれの結晶方位が最大のEO係数を与えるように、形成されることが好ましい。
【0030】
EO基板30は電気配線62によって電圧源60に電気的に接続される。電極64(図3及び図7も見よ)が基板上に形成され、必要な電気接続を与えるためにはたらく。図7Aに示される一実施形態例において、A1軸に沿いEO基板30にかけて印加電圧V30を与えるために透明電極64が用いられる。この例において、電極64間のEO材料の厚さT30が薄いことから、用いられるべき電圧を小さく(例えば5Vから10Vに)することができ、この結果、高速スイッチングが可能になる。透明電極64は、例えば、スズドープ酸化インジウム、フッ素ドープ酸化スズまたはドープト酸化亜鉛のような、多くの透明導電膜のいずれかで形成することができる。これらの金属酸化物でつくられた透明導電膜は通常、ガラスまたはセラミックの基板上に形成される。透明導電膜を形成する既知の方法には、化学的気相成長(CVD)法(例えば、プラズマCVD法及び光CVD法)、物理的気相成長(PVD)法(例えば、真空蒸着法、イオンプレーティング法及びスパッタリング法)及び様々なコーティング法がある。
【0031】
図1及び図3に示されるような実施形態例とは別の実施形態例において、電極64は、電圧V30が光軸A1にかかるように、EO基板30の側面に設けられる。この場合、さらに高い電圧(例えば50Vから70V,一般に<100V)が必要になり、このためスイッチング速度が若干遅くなる。スイッチングの速度及び効率を最適化するため、印加電圧V30はいずれのEO基板30にも与えられる。EO係数がニオブ酸リチウム(r33=31pm/V)より大きいチタン酸バリウムBaTiO3(r33=97pm/V,r42=1640pm/V)またはニオブ酸ストロンチウムバリウム(r33=224pm/V)のような材料を用いれば、必要な印加電圧V30を低くすることができる。さらにP-M格子20を最適化することで、印加電圧V30のさらなる低減を達成することができる。
【0032】
一実施形態例において、P-M格子20と逆の側でEO基板表面32の一方または両方に接して1つないし2つの屈折率整合層40が設けられる。屈折率性放送40はそれぞれ隣接EO基板30とは逆側の(すなわち、BSPO変調器10の入力端12I及び出力端12Oのそれぞれにおける)表面42を有する。屈折率整合層40は、図1に示されるようにBSPO変調器10が1つないしさらに多くの導波路70とインターフェースされたときに、反射を低減するように構成される。一実施形態例において、一方または両方の屈折率整合層40は導波路70の材料(例えば、シリカ、ドープトシリカ、等)とEO基板30のEO材料の屈折率が等しくないことによる構造からの光の反射を防止するように構成された1枚ないしさらに多くの薄い誘電体板(図示せず)を含む。一実施形態例において、一方または両方の屈折率整合層40はEO基板30の一方または両方の外表面上に施された1つないしさらに多くの薄膜反射防止コーティング(図示せず)を含む。
【0033】
一実施形態例において、一方または両方の導波路70は光ファイバである。好ましい実施形態において、導波路70は、P-M格子20上に入射する電磁(EM)波がTM EM波であることを保証するため、偏波保存導波路である。導波路70は偏波非保存とすることもできるが、P-M格子20は、以下でさらに詳細に論じられるように、2次元対称(すなわち、誘電体区画で隔てられた正方形または長方形の金属のモザイク格子配列)であることが好ましい。
【0034】
一実施形態例において、BSPO変調器10は、様々なフォトニクス、集積光学及び半導体用途のためのミクロンサイズ及びナノサイズの構造及びデバイスの作成に用いられることが多い、標準フォトリソグラフィプロセス及び手法を用いて極めて容易に作成される。同様に、提案される変調器は、フォトニック集積回路の光導波路70とも、光ファイバ導波路とも、集積することができる。BSPO変調器10の構成は、ニオブ酸リチウムまたはヒ化ガリウムのような特定の材料または材料群に束縛されない。P-M格子20を賢明に設計することでBSPO変調器10を広範な材料プラットフォームに適合させ得ることが当業者には当然であろう。
【0035】
一実施形態例において、BSPO変調器10の総厚T10は、屈折率整合層を用いないで約1μmから2μmの範囲に、また屈折率整合層を用いて約5μmから7μmの範囲に入るようにすることができる。
【0036】
BSPO変調器10は、「透過」または「オフ」モードにあるときは動作波長λOの光を極めて低い減衰(例えば〜2dB以下)で透過させ、「遮断」または「オン」モードにあるときは極めて高い減衰(例えば〜20dB以降)を有するように構成されることが好ましい。BSPO変調器10は、「オン」モードが印加電圧を必要とするかあるいは「オフ」モードが印加電圧を必要とするように構成することができる。以下の議論においては、説明のために、「オフ」モードが「無印加電圧モード」として選択される。
【0037】
その固有周波数が入力光100Iの動作波長λOと一致する、BSPモードの選択的励起により、垂直入射における広い減衰範囲(したがって大きな消光比)が可能になる。これは、斜め入射角を必要とする、他のSP型光変調器と対照的である。BSPは、与えられた方向に進行するSP波ではなく、定在波を形成する一括励起であることに注意されたい。この定在波BSPは、P-M格子表面22上の電荷分布(+,−)によって、図2に簡略に表されている。
【0038】
導波光システムの一部としてBSPO変調器10が用いられる場合、変調器を1つないしさらに多くの導波路70とインターフェースさせる工程が第1の工程に一般に含まれるであろう。一実施形態例において、光ファイバの形態の導波路70がBSPO変調器10と入力側12I及び出力側12Oにおいてインターフェースされる。
【0039】
図3は、導波路70の変調器へのインターフェースまたはそうではなくとも動作可能な態様での接続を容易にするように構成されたハウジング150内にBSPO変調器10が保持されている、一実施形態例の簡略な破断側面図である。ハウジング150は、BSPO変調器10を収めるように構成された内部構造154を有する、中央区画152を備える。ハウジング150はハウジング150の両側に、オープンエンド158を有し、それぞれの導波路70を収容する寸法につくられたそれぞれのチャネル160を定める、チャネル区画156も備える。一実施形態例において、チャネル160は2つの同等な導波路70を収容するために同じ寸法を有し、別の実施形態例において、チャネル160は異なる導波路70を収容するような寸法(及び/または形状)につくられる。一実施形態例において、電極に接続される電気配線62は電圧源60との接続を容易にするための電気コンタクト63を含む。
【0040】
ハウジング150は2本の光ファイバ70を互いに結合させるために特に有用である。図3は、「裸の」ファイバ70(すなわち、コア73とクラッド74)がチャネル160に挿入され得るようにバッファ層75が部分的に剥ぎ取られている、一実施形態例を示す。別の実施形態例において、チャネル区画156は標準光ファイバコネクタ(例えば、STP型コネクタ)を収容するように形成することができ、ファイバ70の末端部分は、図4に示されるように、標準光ファイバコネクタ80によるコネクタ付とすることができる。
【0041】
図1をまた参照すれば、BSPO変調器10の動作において、入力光100Iは入力導波路70I内を光軸A1に沿って進行し、BSPO変調器10に入力側12Iで入射する。導波路端72に形成される界面による有害な反射を軽減するために屈折率整合層40が用いられていれば、入力光100Iは初めにこの屈折率整合層に入射し、最小限の反射しか受けない。ここでBSPO変調器10は一方または両方の屈折率整合層40がなくとも機能し得ることをはっきりさせておく必要がある。しかし、ほとんどの場合において、反射を低減して透過(オフ)状態にある変調器を透過できる光の量を最大化することが有益であることが当業者には当然であろう。
【0042】
したがって、入力光100Iのほとんどが第1のEO基板30に進む。印加電圧V30=0とすれば、EO基板の屈折率nの値は比較的低く(例えばn=2.1)、よって、入力光100Iは格子-EO基板界面で与えられるBSP効果による減衰を実質的に受けない。したがって、V30=0の場合に、入力光100Iは実質的に、P-M格子20,第2のEO基板30及び第2の屈折率整合層40を実質的に無減衰で透過して、出力光100Oを形成する。
【0043】
他方で、電圧源60による一方または両方のEO基板30への電圧V30の印加は、基板30の屈折率を変え、したがってBSPの固有周数をシフトさせるようにはたらく。オフ状態において、システムのパラメータは、BSPが励起され、膜の高透過率を媒介するような値にある。印加電圧は入力(入射)光100Iの強度を実質的に抑制するようにはたらき、よって実質的に光が透過しないギャップ100Gを出力光100Oに形成する。印加電圧V30のオン/オフを選択的に切り換える(あるいは、アナログ変調器の場合は印加電圧を選択的に変える)ことで、透過光100Tの部分部分の間の、ギャップ100Gの発生及び大きさが制御され、よって出力光100Oが変調される。一実施形態例において、変調信号SMが印加電圧V30を、変調情報及び、必要であれば、バイアス電圧を含む態様で、BSPO変調器10に(特に電極64を介してEO基板30に)供給する。
【0044】
BSPO変調器10は、論理動作、レーザモードロック動作、等のような多くの用途のためのデジタルEOスイッチとして用いられ得ることにも注意されたい。印加電圧V30はEO基板30の一方または両方に印加され得ることにも注意されたい。単一のEO基板30への印加電圧の印加では、良好な変調性能は得られないが、大きな減衰(すなわち高消光比)を必要としないいくつかの用途では許容され得る。
【0045】
図5Aは、2つの相異なる屈折率n=2.1及び2.2を生じさせる2つの相異なる印加電圧V30の値に対する、一例のBSPO変調器10についての波長λ(nm)の関数としての入力光100Iの透過率T(dB)の「スイッチング曲線」のグラフである。2つのスイッチング曲線はC1及びC2で表示される。図5Aは完全数値時間領域差分(FTDT)シミュレーションを用いて、低損失材料及び高印加電圧V30という理想的な場合について作成した。シミュレートしたBSPO変調器10は、格子厚TG=116nm及び格子周期Λ=688nmであった。
【0046】
図5Bは、図5Aと同様であるが、金属ストリップ26Mにおけるより現実的な損失及びEO基板30の屈折率nのより小さな変化に対する、スイッチング曲線のグラフである。そのような変更は、透明(透過)状態におけるより大きな損失及びより低い消光比をもたらす。シミュレートしたBSPO変調器10は、格子厚TG=100nm及び格子周期Λ=694nmであった。3本の曲線C1,CI及びC2が示される。曲線C1は、屈折率がn=2.1になる、V30=0(すなわち「オフ」状態)を示す。曲線CIは、印加電圧V30が非ゼロであり(すなわち、「オン」状態にあるが最大電圧V最大ではない)、屈折率がn=2.13になる「中間」曲線である。曲線C2は、屈折率がn=2.16になる、V30=V最大(すなわち完全「オン」状態)に対する曲線である。図5Aに比較して、図5Bの曲線C1,CI及びC2を生成するに必要な印加電圧V30は小さくなった。許容できる消光比を約25dBとすれば、許容できる動作波長帯域幅ΔλO(すなわち、動作波長λOの範囲)は、曲線C1及びC2から、約20nmと推定される。
【0047】
図6A及び6Bは、薄型構造P-M膜上のBSPの励起に関する解析的モデルを用いる多重パラメータ最適化計算に基づく、一例のBSPO変調器10についてのシミュレーションによる格子厚TG(Y軸)及び格子周期Λ(X軸)に対する透過率T(dB)のグレイスケール表示のグラフである。そのような計算はBSPO変調器10の最も効率の高い動作に対するパラメータ空間の同定に役立つ。図6Aはn=2.1(「オフ」状態)に対するグラフであり、図6Bはn=2.2(「オン」状態)に対するグラフである。
【0048】
図6A及び6Bの結果は解析的モデルに基づくシミュレーションを用いて得られているから、ピーク透過率値は若干低く推定されている。それにもかかわらず、モデルに基づくそのような最適化により、P-M格子20に適切な格子厚TG及び格子周期Λの決定が可能になる。
【0049】
BSPO変調器10のスイッチング速度は一般に用いられる特定のEO基板材料に支配され、よって一般に他のEO型変調器と同じである。例えば、約40Gb/秒のスイッチング速度がニオブ酸リチウムEO基板30で可能である。そのようなスイッチング速度は、特定の電極構成及び、非軸性電極構成についてスイッチングを実施するに必要な(例えば約70Vまでの)、比較的高い電圧によって、ある程度低下し得る。
【0050】
一次元P-M格子を2つ備えるBSPO変調器
図7A及び7Bは、図1と同様であるが、EO基板30で隔てられた2つのP-M格子20を用い、2つの誘電体基板110が光軸A1に沿って2つのP-M格子20を挟み込んでいる、BSPO変調器10の実施形態例の簡略な側面図である。EO基板表面32及び2つのP-M格子20が、BSPO変調器10が「オン」状態にあるときにBSPをそれぞれがサポートする、2つの対応する格子-基板界面GSIを形成する。
【0051】
図7Aに示されるように、それぞれのEO基板表面32上の2つの透明導電膜が、それらの間に配置された単EO基板30に対する透明電極としてはたらくことができる。この構成にはEO基板表面32にわたる一様電圧分布が容易になるという利点がある。透明電極64の厚さは、結合損失を最小限に抑えるため、可能な限り小さく(例えば100nm程度に)保たれることが好ましい。
【0052】
別の実施形態例において、自体が電極としてはたらく、2金属P-M格子20が用いられる。また、格子20がP-M格子である場合、誘電体ストリップ26Dを導電材料で作成し、透明電極64としてはたらかせることができる。
【0053】
図7BはEO基板30の側面上に電極64が配置されている実施形態例を示す。
【0054】
図7A及び7Bの単EO基板実施形態により、EO基板厚T30を約50nmまで薄くすることが可能になる。軸上透明電極64を用いる図7Aの実施形態においては、これによって、上述した第1の実施形態例に比較して、スイッチングに必要な印加電圧V30の大きさを実質的に低減することが可能になる。図7Bの実施形態に必要な印加電圧V30の低減も同様に有意であるが、図7Aの軸上電極実施形態に対するほど大きくはない。この場合、2つのP-M格子20のそれぞれの厚さは上で論じた第1の実施形態例で考察したP-M格子20の厚さの1/2に薄くすることができ、よって透過(「オフ」)モードにおけるBSPO変調器10の透過率は影響を受けない。
【0055】
図8Aは、相異なる(シミュレーションによる)印加電圧V30によって生じさせた多くの相異なる屈折率nに対する、図7Aに示したBSPO変調器10の実施形態例についての透過率T(dB)対波長λ(nm)のシミュレーションによるスイッチング曲線を示す。他のシミュレーションパラメータは、それぞれのP-M格子20についてTG=50nm及びΛ=696nmとし、両誘電体基板110についてn110=2.1とした。図8Aにおいて、EO基板厚はT30=100nmとした。
【0056】
図8Bは、T30=50nm,100nm及び150nmの、厚さT30が相異なるEO基板が含まれることを除いて、図8Aと同様である。図8A及び8Bのスイッチング曲線は、図5A及び5Bのスイッチング曲線と比較して、同様の性能を示す。
【0057】
図7A及び7BのBSPO変調器10の図1の単格子実施形態に優る利点は、特定の用途のための変調器の設計に利用できる最適化パラメータの数(すなわち自由度)が大きくなることである。例えば、この場合は2つのP-M格子20を使用するから、2つの格子厚TGを利用できる。また、EO基板厚T30を変えることもできる。さらに、(電気光学材料である必要はない)誘電体基板110の屈折率n110は変えることができ、同じである必要はない。例えば、図8Bからわかるように、EO基板厚T30を50nmずつ大きくする毎に、BSPO変調器10のスイッチング性能は有意に変化する。
【0058】
二次元P-M格子を備えるBSPO変調器
図9は、誘電体区画26Dで隔てられた金属区画26Mのモザイク格子配列を有する、二次元P-M格子20の実施形態例の上面図である。一般に金属区画26Mと誘電体区画26Dの大きさは異なる。このP-M格子20の二次元実施形態例は図2の一次元版と類似しているが、この場合、格子はX方向の周期ΛX及びY方向の周期ΛYを有する。図9の二次元P-M格子20は上で論じたBSPO変調器10の実施形態のいずれにも用いることができる。P-M格子20に対するこの幾何学的構造によってBSPO変調器10は実質的に偏光不感になり、これは非偏波保存導波路70が用いられ得ることを意味する。
【0059】
図10は、図5Aのグラフと同様であるが、図1のBSPO変調器10に図9の二次元P-M格子20を用いたときの、透過率T(dB)対波長λ(nm)のグラフのスイッチング曲線C1及びC2を示す。曲線C1及びC2を形成するためにシミュレーションに用いた二次元P-M格子20は、X軸及びY軸のいずれにも沿って、周期ΛX=ΛY=696nm及びデューティサイクルD=0.2を有する。金属区画26Mは金膜に基づいてモデル化し、格子厚TG=100nmとした。入力光100Iの入射平面波の偏光はY軸に沿わせた。グラフの屈折率「n」は、数値シミュレーションにおいて等しいとおいた、屈折率整合層40及び誘電体区画26Dの誘電屈折率を指す。動作波長λO=1557nmにおいて、Δn=0.03の屈折率変化に対し、約10dBのコントラストが達成される。
【0060】
BSPO変調器を備える光システム
図11は、本発明のBSPO変調器10を(光源の直接変調とは対照的に)外部変調器として用いる、光システム200の略図である。光システム200は、入力導波路70Iの区画に光結合されたレーザ源210を備える。入力導波路70I及び出力導波路70Oはハウジング150に収められたBSPO変調器10の入力側12I及び出力側12O(図3)に光結合される。変調器10は電気配線62を介して電圧源60に電気的に接続される。電圧源60は続いて、レーザ源210にも接続され、光システム200の動作を制御するように構成された、コントローラ/プロセッサ230に電気的に接続される。光システム200は電圧源60の駆動に用いられる電圧コントローラ信号S60のソース250も備えることができ、あるいはそのようなソース250に接続することができる。あるいは、電圧コントローラ信号S60はコントローラ/プロセッサ230によって内部で発生させることもできる。
【0061】
動作において、コントローラ/プロセッサ230は、レーザ源210にレーザ制御信号SLを送ってレーザ源の動作を開始させる。応答して、レーザ源210は、変調されるべき連続波搬送信号のような、入力光100Iを発生する。
【0062】
コントローラ/プロセッサ230は電圧コントローラ信号S60も生成するか、電圧コントローラ信号S60を電圧源60に振り向ける。電圧コントローラ信号S60は、例えば、バイアス電圧および、変調情報を含む、RF印加電圧V30を含む、変調電圧信号SMを形成するために電圧源60によって用いられるべき、変調情報を有する。電圧源60は変調電圧信号SM(すなわち電圧V30)をBSPO変調器10に供給し、BSPO変調器10は、変調電圧信号SMに応答し、上述したように入力光100Iを変調して変調出力光100Oを形成する(図1も見よ)。
【0063】
利点
本発明のBSPO変調器10は多くの重要な利点を有し得る。第1の利点は、変調器の断面寸法が光ファイバのような一般的な導波路のコア73の寸法とほぼ同じであるように変調器を非常にコンパクトに作成し得ることである。BSPO変調器10は屈折率整合層40の使用により低結合損失を有するように作成することもできる。さらに、BSPO変調器10は、位相変調に続いて強度変調への変換が必要な干渉計型変調器とは対照的に、光の直接変調を提供する。さらに、BSPO変調器10は、斜め入射角を与える必要がなく、垂直入射光を変調する。
【0064】
BSPO変調器10は、上で論じた様々な変調器パラメータの選択によって調整することができる、動作波長λOも有する。1550nm、1300nm及び850nmのような様々な波長ウインドウに設計を拡張することができる。
【0065】
動作波長帯域幅ΔλOは20nm程度にすることができる。さらに、非常に高い消光比(約20dB以上)を達成することができる。しかし、EO係数が比較的高いEO材料を用いない限り、あるいは透明電極64を光軸A1に沿って用いることができれば、比較的高い印加電圧V30が必要になり得る。P-M格子20が一次元であるかまたは二次元であるかに依存して、PM実施形態または非PM実施形態のいずれのBSPO変調器10も形成することができる。
【0066】
上記説明が本発明の例示に過ぎず、特許請求の範囲で定められるような本発明の本質及び特質の理解のための概要の提供が目的とされていることは当然である。添付図面は本発明のさらに深い理解を提供するために含められ、本明細書に組み入れられて本明細書の一部をなす。図面は、記述とともに、本発明の原理及び動作の説明に役立つ、本発明の様々な特徴及び実施形態を示す。本明細書に説明されるような本発明の好ましい実施形態に、添付される特許請求の範囲に定められるような本発明の精神または範囲を逸脱することなく、様々な改変がなされ得ることが当業者には明らかになるであろう。
【符号の説明】
【0067】
10 ブロッホ表面プラズモン光(BSPO)変調器
20 誘電率変調(P-M)格子
30 電気光学(EO)基板
40 屈折率整合層
60 電圧源
64 電極
100I 入力光
100O 出力光
SM 変調電圧信号
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心光軸を有し、印加電圧がかけられたときに入力光を変調するために動作波長においてブロッホ表面プラズモン(BSP)効果を用いる、光変調器において、
表面及び、前記表面に垂直で前記光軸に実質的に合わせられた、中心軸を有する誘電率変調(P-M)格子であって、前記格子の表面を定め、変調された誘電率を定める、金属区画及び/または金属区画と誘電体区画の周期配列を有する、P-M格子、及び
第1及び第2の電気光学(EO)基板であって、それぞれが前記印加電圧に応答して変化し得る屈折率を有し、前記P-M格子を挟み込んで前記EO基板の少なくとも一方に前記印加電圧がかけられたときに前記BSPをサポートする構成を形成するように、前記光軸に沿って配置される、第1及び第2のEO基板、
を備えることを特徴とする光変調器。
【請求項2】
前記P-M格子が、
(a)前記周期配列が一次元であるように配向されたストリップの形態にある、交互する金属区画及び誘電体区画、
(b)前記周期配列が二次元であるように構成された金属区画及び誘電体区画、
(c)相異なる誘電率を有する第1及び第2の金属を含み、前記周期配列が一次元であるように配向された、第1及び第2の金属ストリップ、及び
(d)相異なる誘電率を有する第1及び第2の金属を含み、前記周期配列が二次元であるような、第1及び第2の金属区画、
の内の1つを有することを特徴とする請求項1に記載の光変調器。
【請求項3】
前記印加電圧を発生するように適合され、前記第1及び第2のEO基板の少なくとも1つの上に動作可能な態様で配置された電極を介して前記EO基板の少なくとも1つに電気的に結合された、電圧源をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の光変調器。
【請求項4】
前記第1及び第2のEO基板が前記光軸に実質的に垂直な表面を有し、前記P-M格子が前記第1及び第2のEO基板表面の1つの上に形成されることを特徴とする請求項1に記載の光変調器。
【請求項5】
前記光軸に沿って前記第1及び第2のEO基板の少なくとも1つに光結合された少なくとも1つの導波路をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の光変調器。
【請求項1】
中心光軸を有し、印加電圧がかけられたときに入力光を変調するために動作波長においてブロッホ表面プラズモン(BSP)効果を用いる、光変調器において、
表面及び、前記表面に垂直で前記光軸に実質的に合わせられた、中心軸を有する誘電率変調(P-M)格子であって、前記格子の表面を定め、変調された誘電率を定める、金属区画及び/または金属区画と誘電体区画の周期配列を有する、P-M格子、及び
第1及び第2の電気光学(EO)基板であって、それぞれが前記印加電圧に応答して変化し得る屈折率を有し、前記P-M格子を挟み込んで前記EO基板の少なくとも一方に前記印加電圧がかけられたときに前記BSPをサポートする構成を形成するように、前記光軸に沿って配置される、第1及び第2のEO基板、
を備えることを特徴とする光変調器。
【請求項2】
前記P-M格子が、
(a)前記周期配列が一次元であるように配向されたストリップの形態にある、交互する金属区画及び誘電体区画、
(b)前記周期配列が二次元であるように構成された金属区画及び誘電体区画、
(c)相異なる誘電率を有する第1及び第2の金属を含み、前記周期配列が一次元であるように配向された、第1及び第2の金属ストリップ、及び
(d)相異なる誘電率を有する第1及び第2の金属を含み、前記周期配列が二次元であるような、第1及び第2の金属区画、
の内の1つを有することを特徴とする請求項1に記載の光変調器。
【請求項3】
前記印加電圧を発生するように適合され、前記第1及び第2のEO基板の少なくとも1つの上に動作可能な態様で配置された電極を介して前記EO基板の少なくとも1つに電気的に結合された、電圧源をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の光変調器。
【請求項4】
前記第1及び第2のEO基板が前記光軸に実質的に垂直な表面を有し、前記P-M格子が前記第1及び第2のEO基板表面の1つの上に形成されることを特徴とする請求項1に記載の光変調器。
【請求項5】
前記光軸に沿って前記第1及び第2のEO基板の少なくとも1つに光結合された少なくとも1つの導波路をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の光変調器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2012−500409(P2012−500409A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522998(P2011−522998)
【出願日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/004648
【国際公開番号】WO2010/019253
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/004648
【国際公開番号】WO2010/019253
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】
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