説明

表面処理不織布及びその製造方法

【課題】 多数の繊維から構成される不織布からなる多孔性の基材に関し、特に構成繊維の繊維表面で変性処理されてなるアルミニウムを有した不織布に関し、親水性不織布としての加湿用基材、結露防止材、除湿機用基材などの用途、又は非親水性の不織布の親水化処理基材としての用途、又は撥水性成分などの含浸用基材としての用途、又は接着性を向上させた不織布としての用途、或いは導電性不織布としての用途などに好適な表面処理不織布及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 構成繊維の表面に付着したアルミニウム又はアルミニウム化合物が熱水変性処理されてなる表面処理不織布。及び、構成繊維の表面にアルミニウム又はアルミニウム化合物を付着した後、熱水変性処理する表面処理不織布の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布の繊維表面に付着したアルミニウム又はアルミニウム化合物が熱水変性処理された不織布に関し、親水性不織布が用いられる、加湿用基材、結露防止材、除湿機用基材などの用途、又は非親水性の不織布の親水化処理基材としての用途、又は撥水性成分などの含浸用基材としての用途、又は接着性を向上させた不織布としての用途、或いは導電性不織布としての用途などに好適な表面処理不織布及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車輌用、船舶用、航空機用あるいは建築用等のウインドウガラスなどに用いられる防曇機能を有する親水膜が提案されている。例えば、特許文献1には、基体上に、アルミニウムアルコキシドと安定化剤からなる塗布液を塗布し、乾燥、焼成をしてアモルフアスアルミナ膜を成膜し、次いで該アモルフアスアルミナ膜に熱水処理をし、乾燥、焼成して花弁状透明アルミナ膜を形成した後、その上に、RSiX4−a−b−c〔R,R,R:脂肪族炭化水素基および/あるいは芳香族炭化水素基。a,b,c:0〜3。a+b+c:0〜3。 X:水酸基または加水分解性官能基〕を主成分としてなる塗布溶液を塗布し、加熱処理して親水膜を被覆形成したことを特徴とする親水性被膜の形成法が記載されている。しかし、この方法によれば、焼成により消失しない基体にしか親水膜が形成できないという問題があった。
【0003】
また、この問題を解決する方法として、特許文献2には、アルミニウム化合物を含む溶液を基体に塗布して、皮膜を形成し、これを特に熱処理することなく温水に浸漬する表面微細凹凸組織の低温形成法が記載されている。また、使用される基体としては、各種の金属基材、無機質基材、プラスチック基材、紙、木質系基材などが挙げられ、プラスチック基材としては、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂から得られるフィルムや成形品が適用されることが記載されている。しかし、特許文献2では、フィルムや成形品などの外表面に親水皮膜を形成することが提案されており、多数の繊維から構成される布帛のような多孔性の基材については技術課題の対象外であった。
【0004】
また、樹脂板に親水性被膜を形成する別の方法として、特許文献3には、親水性を有するポリエチレンテレフタレート樹脂板にアルミ膜を蒸着し、このアルミ蒸着膜をベーマイト法により親水化させることを特徴とした版材用樹脂板の親水化処理方法が記載されている。しかし、特許文献3では、樹脂板の外表面に親水化皮膜を形成することが提案されており、多数の繊維から構成される布帛のような多孔性の基材については技術課題の対象外であった。
【0005】
また、特許文献4には、布地にバインダーを含むベーマイトゾルを塗布してベーマイト多孔質層を形成する布地の処理方法であって、布地にバインダーのゲル化剤を担持させた後でベーマイトゾルの塗布を行う布地の処理方法が記載されている。しかし、特許文献4では、ベーマイトの層にバインダーが含まれるため、ベーマイトの親水性などの特性が十分に働かず、原料としてのベーマイトの粒子が多量に必要となり効率が悪いという問題があった。また、布帛を構成する繊維表面に均一に且つ薄くベーマイトの層を形成することができないという問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開H09−202651号公報
【特許文献2】特開2001−17907号公報
【特許文献3】特開H05−193282号公報
【特許文献4】特開H07−238467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題を解決し、多数の繊維から構成される不織布からなる多孔性の基材に関し、特に構成繊維の繊維表面で変性処理されてなるアルミニウムを有した不織布に関し、親水性不織布としての加湿用基材、結露防止材、除湿機用基材などの用途、又は非親水性の不織布の親水化処理基材としての用途、又は撥水性成分などの含浸用基材としての用途、又は接着性を向上させた不織布としての用途、或いは導電性不織布としての用途などに好適な表面処理不織布及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の課題を解決するための手段は、構成繊維の表面に付着したアルミニウム又はアルミニウム化合物が熱水変性処理されてなることを特徴とする表面処理不織布である。また、本発明の課題を解決するための手段は、構成繊維の表面にアルミニウム又はアルミニウム化合物を付着した後、熱水変性処理することを特徴とする表面処理不織布の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によって、多数の繊維から構成される不織布からなる多孔性の基材に関し、特に構成繊維の繊維表面で変性処理されてなるアルミニウムを有した不織布に関し、親水性不織布としての加湿用基材、結露防止材、除湿機用基材などの用途、又は非親水性の不織布の親水化処理基材としての用途、又は撥水性成分などの含浸用基材としての用途、又は接着性を向上させた不織布としての用途、或いは導電性不織布としての用途などに好適な表面処理不織布及びその製造方法を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の表面処理不織布の形態としては、合成繊維、天然繊維、半合成繊維、再生繊維および無機繊維などからなる不織布であれば特に限定されることはなく、例えば繊維長15〜100mmの、捲縮数5〜30個/インチを有する通常ステープル繊維と呼ばれる繊維をカード機などを使用して、繊維ウエブに形成した後、繊維同士を接着や交絡などによって結合する、一般的に乾式法と呼ばれる製法によって得られる不織布がある。また、乾式法に限らずに任意の不織布製法により、例えば湿式法、スパンボンド法、メルトブロー法、静電紡糸法又はフラッシュ紡糸法などによって形成される不織布を適用することができる。
【0011】
前記不織布を構成する繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系繊維、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系繊維、ポリアクリロニトリルなどのアクリル系繊維、ポリビニルアルコール繊維および合成パルプなどの合成繊維に限らず、レーヨンなどの半合成繊維、あるいは綿およびパルプ繊維などの天然繊維をあげることができる。また、金属繊維または鉱物繊維などの無機繊維をあげることができる。
【0012】
前記繊維の断面形状も特に限定されることなく、円形、楕円形、偏平形状に限らず、三角、Y型、T型、U型、星型、ドッグボーン型等いわゆる異型断面形状をとるものであってもよい。
【0013】
前記繊維の繊維径も特に限定されることなく、一般的な用途としては、0.1〜200μmが好ましく、0.3〜100μmがより好ましく、0.5〜70μmが更に好ましい。また、5μm以下の極細繊維としては、直接紡糸法により得られる極細繊維、海島型の複合繊維の海部分を溶解除去して得られる極細繊維、複合繊維を機械的にまたは水流により、あるいは水中に分散することにより各樹脂成分に離解させて得られる極細繊維、あるいはフィブリル化して得られる極細繊維などがある。
【0014】
前記不織布は、具体的には、例えば熱可塑性合成繊維のみからなる繊維ウエブを部分的に熱接着して得ることも可能であり、また、熱可塑性合成繊維と熱接着性繊維とを含む繊維ウエブか、或いは熱接着性繊維のみの繊維ウエブを加熱処理して繊維同士を接着することによって得ることができる。このような熱接着性繊維としては、例えば他の繊維よりも融点が低く他の繊維を熱接着することのできる単一樹脂成分からなる繊維や、他の繊維よりも融点が低く他の繊維を熱接着することのできる低融点成分を繊維表面に有する複合繊維がある。このような複合繊維には、その横断面形状が例えば、低融点成分を繊維表面に有する芯鞘型やサイドバイサイド型などの複合繊維があり、またその材質は例えば、共重合ポリエステル/ポリエステル、ポリブチレン/ポリエステル、共重合ポリブチレン/ポリエステル、共重合ポリプロピレン/ポリプロピレン、ポリプロピレン/ポリアミド、ポリエチレン/ポリプロピレン、ポリプロピレン/ポリエステル、ポリエチレン/ポリエステルなどの繊維形成性重合体の組み合わせからなる複合繊維がある。また、該熱接着性繊維の全体の繊維に占める割合は好ましくは10重量%以上であり、更に好ましくは20重量%以上である。
【0015】
また、前記不織布は嵩高な形態のものも適用可能であり、例えば乾式法によって得られる繊維ウエブを積層するか、あるいはスパンボンド法によって得られる長繊維ウエブにニードルパンチなどの処理を施して絡合させて得られる不織布が可能である。また、繊維ウエブに接着材を含浸またはスプレーして得る不織布も可能である。また、乾式法または湿式法で得られる繊維ウエブまたは抄紙シートに高圧柱状水流を噴射して水流絡合させて得られる不織布も可能である。これら何れの不織布も紙または織編物と比較して、繊維一本一本が束なることなく離間して積層されているため、多孔性に富む構造を有しており、繊維表面の面積が有効に活用できる構造となっており、アルミニウム又はアルミニウム化合物が熱水変性処理されていることによる効果を顕著に発揮することができる。
【0016】
また、前記不織布は極細繊維からなる不織布も適用可能である。このような不織布としては、例えば二成分以上の繊維形成性樹脂成分が繊維の長手方向に積層されることにより形成されてなる繊維であって、断面形状が例えば菊花形状を有する繊維であって、水流により各成分に分割可能な繊維を用いて、乾式法によって繊維ウエブを形成した後、高圧柱状水流を噴射して分割と同時に水流絡合により得られる不織布がある。極細繊維からなる不織布は、繊維表面の面積が格段に広くなっていることから、繊維表面の特性が更に有効に活用できる構造となっており、アルミニウム又はアルミニウム化合物が熱水変性処理されていることによる効果を一層顕著に発揮することができる。
【0017】
前記不織布は、以上述べたように様々な形態をとり得るが、これらの中で、構成繊維が熱接着性繊維によって結合した不織布、あるいはニードルパンチや水流絡合により絡合して結合した不織布であれば、構成繊維が接着剤によって結合した不織布と比較して、繊維表面の特性が有効に活用できる構造となっており、アルミニウム又はアルミニウム化合物が熱水変性処理されていることによる効果を顕著に発揮することができるので好ましい。構成繊維が接着剤によって結合した不織布の場合、構成繊維を結合する目的のためだけに構成繊維に対して20〜40質量%もの接着剤が必要となり、その分コスト高となるばかりか、接着剤によって繊維表面全体の面積も少なくなることとなる。さらに、接着剤が劣化する場合もあることを考慮すると、前記不織布の構成繊維が熱接着性繊維または絡合により結合していることが好ましい。
【0018】
本発明の表面処理不織布では、前記不織布の構成繊維の表面に付着したアルミニウム又はアルミニウム化合物が熱水変性処理されている。構成繊維の表面に付着したアルミニウム又はアルミニウム化合物が熱水変性処理されている形態としては、例えば、構成繊維の表面に真空蒸着やスパッタリングなどの方法でアルミニウムを付着させた後、熱水変成処理を行って得られる形態がある。なお付着条件を適宜設定することにより、アルミニウムの付着量を変えることが可能であり、またアルミニウムの付着の形態として、前記不織布の構成繊維全体に付着させることも、前記不織布の表面部分に有する構成繊維に付着させることも、あるいは前記不織布に部分的に付着させることも可能である。
【0019】
また、アルミニウムを付着させた後の熱水変成処理について説明すると、処理に使用する水としては、水道水、イオン交換水、蒸留水、純水、またはイオン交換後に蒸留した蒸留水などの液体状の水、或いはこれらの水を使った気体状の水蒸気など、いずれも使用可能であるが、特に、蒸留水が好ましく、例えば電気伝導度10μS/cm以下、好ましくは電気伝導度1.0μS/cm以下の水を用いることが可能である。また、処理に使用する水の温度としては、水和酸化物としてベーマイトが形成される条件が好ましく、常圧下では60〜100℃が好ましく、80〜100℃がより好ましく、90〜100℃の範囲であることが更に好ましい。このようにして、構成繊維の表面に蒸着により付着したアルミニウムが熱水変性処理された後の繊維表面の状態の一例を図1の電子顕微鏡写真に示す。図1によれば、構成繊維の周囲を取り巻くように繊維表面全体に微細な凹凸組織が形成されていることが分かる。
【0020】
構成繊維の表面に付着したアルミニウム又はアルミニウム化合物が熱水変性処理されている別の形態としては、例えば、アルミニウム化合物を含む溶液を基体に塗布して、皮膜を形成した後、熱水変成処理を行って得られる形態がある。ここで、アルミニウム化合物としては、例えば、アルミニウムアルコキシド、アルミニウム錯体、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウムがあげられる。なかでもアルミニウムアルコキシドが好ましい。アルコキシドとしては、例えば、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウム-n-ブトキシド、アルミニウム-sec-ブトキシド、アルミニウム-tert-ブトキシド、アルミニウムアセチルアセトナートなどがあげられる。
【0021】
また、塗布溶液がアルミニウム化合物としてアルミニウムアルコキシドとさらにその安定化剤を含むことが好ましく、安定化剤としては、例えば、アセチルアセトン、ジピロバイルメタン、トリフルオロアセチルアセトン、などのβ−ジケトン化合物類、あるいはアセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸アリル、アセト酢酸ベンジル、などのβ−ケトエステル化合物類、さらには、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの、アルカノールアミン類等をあげることができる。
【0022】
また、塗布溶液には必要に応じて希釈溶媒を用いることができる。希釈溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、ブタノール、エチレングリコールなどのアルコール類、またはn−ヘキサン、n−オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロオクタンのような各種の脂肪族系ないしは脂環族系の炭化水素類、またはトルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの各種の芳香族炭化水素類、またはギ酸エチル、酢酸エチルなどの各種のエステル類、またはアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどの各種のケトン類、またはジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンのような各種のエーテル類、またはクロロホルム、メチレンクロライド、四塩化炭素、テトラクロロエタンのような、各種の塩素化炭化水素類等があげられる。本発明では、溶液の安定性の点から以上の各種溶剤類のうちアルコール類を使用することが好ましい。
【0023】
また、塗布溶液には必要に応じて、アルコキシ基の加水分解を促進したり、脱水縮合反応を促進するための触媒を添加することができる。このような触媒としては、例えば硝酸、塩酸、硫酸、燐酸、酢酸、アンモニアなどがあげられる。
【0024】
また、溶液を塗布する方法としては、例えば含浸法、コーティング法、スプレー法、印刷法、フローコート法など、不織布において使用される塗布方法を採用することができる。さらに、溶液塗布の条件を適宜設定することにより、アルミニウム化合物の付着量を変えることが可能であり、また付着の形態として、前記不織布の構成繊維全体に付着させることも、前記不織布の表面部分に有する構成繊維に付着させることも、あるいは前記不織布に部分的に付着させることも可能である。
【0025】
本発明の表面処理不織布は親水性を有しており、親水性の程度は接触角を測定することによって評価することができる。この評価方法によれば、本発明の表面処理不織布の接触角は熱水変性処理前に較べ小さくなり親水性が向上していることを確認することができる。なお、接触角の測定方法は、次に示す「接触角の測定方法」による。また、本発明では接触角が90°以下のものに対して親水性があると評価している。また、不織布内部へ毛細管現象などにより浸透することによって、接触角が測定できない場合は、親水性があると評価している。また、処理前で接触角が90°以下の不織布でも本発明の表面処理不織布とすることで、接触角をさらに低下させることが可能である。
【0026】
(接触角の測定方法)
表面処理不織布などの試験片を、平坦な表面を有するサンプル支持具の平面上に載置して、試験片の両端を粘着テープで止める。次いで、この試験片の平面の純水との接触角を協和界面科学株式会社製の接触角計CA−SミクロII型を用いて測定する。また、純水を滴下してから3分間経過後に接触角の測定を行う。
【0027】
本発明の表面処理不織布は、構成繊維の表面に付着したアルミニウム又はアルミニウム化合物が熱水変性処理されているので、多孔性を有すると共に親水性に優れている。したがって、このような特性を有効に利用して、加湿用基材、結露防止材、除湿機用基材などの用途、または非親水性の不織布の親水化処理基材としての用途、または撥水性成分などの含浸用基材としての用途、または接着性を向上させた不織布としての用途、あるいは導電性不織布としての用途などに好適である。
【0028】
以下、本発明の実施例につき説明するが、これは発明の理解を容易とするための好適例に過ぎず、本願発明はこれら実施例の内容に限定されるものではない。
【実施例】
【0029】
(実施例1)
海島型の複合繊維の海部分を溶解除去して得られる極細繊維であるポリプロピレン繊維(繊度0.03デシテックスまたは繊維径2μm、繊維長2mm)20質量%と、芯成分がポリプロピレン樹脂で鞘成分が融点138℃の高密度ポリエチレン樹脂からなる熱接着性の複合繊維(繊度0.8デシテックス、繊維長5mm)80質量%とを、分散剤を含む水中に分散させてスラリーを形成した。次いで、このスラリーを手漉き装置で抄紙して繊維シートとした後145℃で乾燥させると共に構成繊維を熱接着性繊維により結合した湿式不織布を得た。この湿式不織布の接触角は約145°であった。
次いで、この湿式不織布の両面にアルミニウムを蒸着させて、構成繊維の表面にアルミニウムを付着させた。次いで、このアルミニウムが付着した湿式不織布を、電気伝導度1.0μS/cm以下の水温95℃の蒸留水の中に浸漬させることによって、付着したアルミニウムを熱水変性処理し、その後乾燥させることにより、面密度50g/mの表面処理不織布を得た。この表面処理不織布の接触角は約23°であり、処理前の湿式不織布と較べ親水化されていた。また、この表面処理不織布の表面電子顕微鏡写真を図1に示す。図1から明らかなように、構成繊維である繊維径2μmの繊維の周囲を取り巻くように繊維表面全体に微細な凹凸組織が形成されていた。
【0030】
(比較例1)
熱水変性処理を行わないこと以外は実施例1と同様にして、アルミニウムが付着した湿式不織布を得た。このアルミニウムが付着した湿式不織布は面密度50g/mであった。このアルミニウムが付着した湿式不織布の接触角は約128°であり、アルミニウム付着処理前の湿式不織布と較べ、接触角の低下は見られたが、親水性にはなっていなかった。また、このアルミニウムが付着した湿式不織布の表面電子顕微鏡写真を図2に示す。図2では、構成繊維である繊維径2μmの繊維の周囲には微細な凹凸組織が形成されていなかった。
【0031】
(実施例2)
芯成分がポリプロピレン樹脂で鞘成分が融点138℃の高密度ポリエチレン樹脂からなる捲縮を有する熱接着性の複合繊維(繊度1.7デシテックス、繊維長55mm)70質量%と、芯成分がポリプロピレン樹脂で鞘成分が融点138℃の高密度ポリエチレン樹脂からなる捲縮を有する熱接着性の複合繊維(繊度1.4デシテックス、繊維長35mm)30質量%とを混綿して、次いでカード機により繊維フリースを形成して、この繊維フリースをクロスレイにより積層させて繊維ウェブを得た。次いで、この繊維ウェブを通気性の支持体上に載置して145℃熱風を繊維ウェブに通過させて、構成繊維を熱接着性繊維により結合した乾式不織布を得た。この乾式不織布の接触角は約148°であった。
次いで、この乾式不織布の片面にアルミニウムを蒸着させて、構成繊維の表面にアルミニウムを付着させた。次いで、このアルミニウムが付着した乾式不織布を、電気伝導度1.0μS/cm以下の水温90℃の蒸留水の中に浸漬させることによって、付着したアルミニウムを熱水変性処理し、その後乾燥させることにより、面密度80g/mの表面処理不織布を得た。この表面処理不織布の接触角は約36°であり、処理前の乾式不織布と較べ親水化されていた。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明による表面処理不織布の表面電子顕微鏡写真である。
【図2】不織布構成繊維の表面にアルミニウムを付着させたのみの表面電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成繊維の表面に付着したアルミニウム又はアルミニウム化合物が熱水変性処理されてなることを特徴とする表面処理不織布。
【請求項2】
前記付着が蒸着によるものである請求項1に記載の表面処理不織布。
【請求項3】
前記アルミニウム化合物がアルミニウムアルコキシドである請求項1に記載の表面処理不織布。
【請求項4】
構成繊維が熱接着性繊維または絡合により結合している請求項1〜3の何れかに記載の表面処理不織布。
【請求項5】
構成繊維の表面にアルミニウム又はアルミニウム化合物を付着した後、熱水変性処理することを特徴とする表面処理不織布の製造方法。

【図1】
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【図2】
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