説明

表面処理装置

【課題】表面処理液が、処理を所望しない裏面側へ回り込むことを防止しつつ、被処理面の端部領域も高精度に処理を施すことが可能な表面処理装置を提供する。
【解決手段】表面処理装置1は、処理液Xをシート材10の被処理面16に沿って流下させて表面処理を施す表面処理装置1であって、端部領域処理面17cを有する端部領域処理部3を備えている。端部領域処理面17cは、シート材10の被処理面16に対して、微小隙間を介して対向して設けられている。そして、端部領域処理部3の下端部17aは、供給ガイド面13上を流れる処理液Xの一部に対して接するように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理液を被処理物の被処理面に流下させて表面処理を施す表面処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シート材などの長尺の薄体に対し、メッキなどの表面処理を施す場合には、その薄体を長尺方向に沿って走行させ、表面処理装置の中を順に通過させていく。そして、この表面処理装置の中で、連続的に、薄体の表面処理を行う。このような表面処理装置では、薄体の一方の面のみに選択的に表面処理を施す場合には、薄体の面方向を垂直に保持した状態で、その薄体の一方の面(被処理面)のみに表面処理液を流下させて表面処理を施す。しかし、このとき、表面処理液の一部が、処理を所望しない裏面側へ回り込んでしまうという問題がある。そこで、この問題に対し、薄体の上端部に近接して板材を設ける構成がある。これは、この板材を、表面処理液の回り込みを防止するための壁として用いる手法である(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭61−127895号公報(昭和61年6月16日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような構成の表面処理装置においても、被処理物(薄体)の直線性やスティフネス性により、板材と被処理物との間に隙間が生じ、非処理面側に処理液の回り込み(乗り越え)が起きてしまう恐れがある。
【0004】
そこで、本発明は、表面処理液が、処理を所望しない裏面側へ回り込むことを防止しつつ、被処理面の端部領域も高精度に処理を施すことが可能な表面処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明に係る表面処理装置は、表面処理液を被処理物の被処理面に沿って流下させて表面処理を施すための表面処理装置であって、第1ガイド面を有する第1部材を備えている。第1ガイド面は、被処理物の被処理面における端部領域に対して、微小隙間を介して対向して設けられている。そして、第1部材の端部は、表面処理液の一部に対して接するように配置されている。
【0006】
ここでは、被処理物(例えば、シート材)の表面に、メッキなどの、表面処理を施す表面処理装置において、被処理物の一方の面を選択的に表面処理しつつ、被処理面の端部領域にまで表面処理を施すことを可能にするための構成を採用している。
【0007】
ここで、微小隙間とは、被処理物の被処理面と側壁部の面との間で、表面処理液が毛細管力によって液面が入り込む程度の隙間である。これは、液体の種類や密度などによって変化するが、例えば、0.3mm程度である。また、第1部材の端部が接する表面処理液は、被処理物の被処理面に沿って流下している表面処理液であってもよいし、他の部材の表面を流れる表面処理液であってもよい。
【0008】
このような構成によると、第1部材の端部に接触した表面処理液の一部が、毛細管力(表面張力)によって、被処理物の被処理面と第1ガイド面との間の隙間に入り込む。また、被処理面が存在しなくなる領域では、第1ガイド面と対向する面が存在しなくなる。このため、被処理面の端部より外側の領域では毛細管現象が発生せず、必然的に、表面処理液が被処理面の端部で止まることになる。この結果、被処理面の端部領域にも表面処理液を行き届かせること、および被処理物の他の面(処理を所望しない面)への処理液の回りこみを防ぐことが可能になり、被処理面のみへの表面処理を高精度で実施することが可能になる。
【0009】
第2の発明に係る表面処理装置は、第1の発明に係る表面処理装置であって、第2ガイド面を有する第2部材を備えている。第2ガイド面は、被処理面における第1部材が配置された領域以外の領域に対し、微小隙間を介して対向して設けられている。
【0010】
ここでは、被処理面の端部領域を除いた領域に対し、微小隙間を介して対向して設けられた第2ガイド面を備えている。
これにより、表面処理液を、第2ガイド面に沿って流下させると同時に、被処理物の被処理面にも沿って流下させることができる。これは、第2ガイド面と被処理面との間が微小隙間であるため、表面処理液が毛細管力(表面張力)によって第2ガイド面と被処理面との両面に吸着するからである。この結果、毛細管力の働きによって、第2ガイド面と被処理面との対向面の間に表面処理液が行きわたり、ムラの少ない表面処理を行うことが可能になる。
【0011】
第3の発明に係る表面処理装置は、第1または第2の発明に係る表面処理装置であって、第3ガイド面を有する第3部材と堰とを備えている。第3ガイド面は、第2ガイド面の一方の端部から略水平に設けられている。堰は、第3ガイド面の第2ガイド面とは反対側の端部に第3ガイド面から突出して設けられている。
【0012】
ここでは、第3ガイド面を有する第3部材と、第3ガイド面から突出して設けられた堰と、を備えている。
ここで、表面処理液は、堰の第3ガイド面側とは反対側に供給される。
【0013】
これにより、供給された表面処理液は、堰の高さを超えるまで一時的に堰き止められる。その後、堰から溢れた表面処理液が第3ガイド面へ流れ出す。すなわち、堰から溢れる表面処理液のみが、表面処理が行われる第1ガイド面側に供給される。この結果、例えば、シャワー形式などにより、直接的に表面処理液が第3ガイド面に供給される場合に比べ、表面処理液の流れの勢いを抑え、流量を一定に保つことが可能になり、第3ガイド面上における整流性も向上させることが可能になる。したがって、表面処理のムラを軽減することが可能になる。
【0014】
第4の発明に係る表面処理装置は、第1から第3の発明のいずれか1つに係る表面処理装置であって、第1部材が、板状の部材である。
これにより、第1部材の端部は、板形状における側面を含み、第1ガイド面は、板形状における一方の面とすることができる。つまり、板形状部材の側面が、表面処理液の液面に接する。そして、この端部から第1ガイド面と被処理物の被処理面との間の微小隙間へ、毛細管力によって表面処理液が入り込む。この結果、表面処理液が、被処理面の端部領域に行き届くことが、簡易な部材によって可能になる。また、装置にかかる費用を抑えつつ、被処理物の非処理領域を減少させ、資材の利用効率を上昇させることが可能になる。
【0015】
第5の発明に係る表面処理装置は、第1から4の発明のいずれか1つに係る表面処理装置であって、第1部材の端部が、曲面を含むように形成されている。
ここでは、第1部材の端部が、曲面を含んでいる。
ここで、曲面とは、例えば、円周面形状であってもよい。
【0016】
そして、第1部材の端部における、被処理面の端部領域に対向する側に、この曲面が設けられていてもよい。つまり、第1ガイド面の端部を含むように曲面形状が形成されていることが好ましい。なお、この曲面は複数個設けられていてもよい。
【0017】
これにより、第1部材の端部における被処理面に対向する部分(第1ガイド面の端部を含む部分)が、曲面になるため、例え被処理物に自由度があり、この自由度によって第1ガイド面と被処理面とが接触した状態になっても、第1ガイド面と被処理面との接触面積が微小面積に抑えられる。したがって、その接触している微小面積部分以外の部分は、第1ガイド面と被処理面との間に微小隙間が存在することになる。この結果、被処理物の自由度によらず、表面処理液が毛細管力によって入り込みやすい微小隙間を、第1ガイド面と被処理面との間に設けることが可能になる。
【0018】
また、曲面形状は、第1ガイド面を含まなくてもよい。
また、第1部材の下端が曲面形状を成している形状であってもよい。
これにより、第1部材の下端において、この第1部材と表面処理液とが接する面積を大きく設けることができる。このため、表面処理液の毛細管力による入り込みが確実かつ容易になる。またさらに、被処理面の中央側から端部側方向に向けて、第1部材と被処理面との間隔が狭くなる形状であるため、毛細管力によって表面処理液が入り込みやすい。
この結果、表面処理にムラができることを抑えつつ、端部領域も高精度に表面処理することが可能になる。
【0019】
第6の発明に係る表面処理装置は、第1から4のいずれか1つの発明に係る表面処理装置であって、第1部材の端部は、被処理面の端部側に近づくにつれて被処理面との間隔が狭くなるように形成されたテーパ形状である。
【0020】
ここでは、第1部材の端部がテーパ形状を成している。
これにより、第1部材の表面処理液に接触している部分から第1ガイド面側に向けて、第1部材と被処理物との隙間が徐々に狭くなっているので、毛細管現象が発生しやすくなる。この結果、安定して表面処理液を被処理面の端部領域に供給することが可能になり、ムラのない表面処理が可能になる。
【0021】
第7の発明に係る表面処理装置は、第1から第6の発明のいずれか1つに係る表面処理装置であって、第1部材が、被処理物の被処理面と略平行な方向に移動可能である。
ここでは、第1部材は、被処理面に対し平行に移動させることが可能である。
【0022】
これにより、表面処理液の流量が変化することなどによって、液面の位置が変化した場合でも、表面処理液と第1部材の端部とが接触している状態にさせることが可能になる。この結果、表面処理液の流量によらず、第1部材の端部が液面に接するように調整することができるため、確実に毛細管現象を発生させ、被処理面の端部領域を表面処理することが可能になる。
【0023】
第8の発明に係る表面処理装置は、第1から第7の発明のいずれか1つに係る表面処理装置であって、第1部材の第1ガイド面と被処理物の被処理面との距離は調整可能である。
【0024】
ここでは、第1ガイド面と被処理面との距離は、調整することが可能である。
これにより、毛細管力を調整することが可能になる。すなわち、第1ガイド面と被処理面との微小隙間に、表面処理液が入り込む度合いを調整することが可能になる。この結果、被処理物の端部領域における処理領域を調整することが可能になる。また、毛細管力は、固液界面における固体表面と液体との親和性や、液体の密度などによって異なる。このため、本発明の構成によって、さまざまな表面処理液に対応することが可能になる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る表面処理装置によれば、表面処理液が、被処理物の処理を所望しない面へ回り込むことを防止しつつ、被処理面の端部領域にも高精度に処理を施すことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の一実施形態に係る表面処理装置1について、図1から図5を用いて説明すれば以下の通りである。
本実施形態の表面処理装置1は、幅30cm、厚さ38μmの長尺のポリイミド膜を含むシート材10に対して、メッキ処理等の表面処理するための装置である。なお、このシート材10は、表面処理を施される前段階では、長尺方向に沿ってロール状に巻かれた状態で保持されているものとする。
【0027】
[表面処理装置1の構成]
本実施形態に係る表面処理装置1は、図1に示すように、主として、筐体部2と、ガイドローラ対9a,9b(図3参照)と、処理液供給部Sと、処理部Pとを備えている。
【0028】
(筐体部2)
筐体部2は、内側に空間を有する直方体形状の部材である。この筐体部2は、側面部18a,18bと底面部19とを有している。
【0029】
側面部18aには、シート材10の入り口である搬入口20が形成されている。一方、側面部18bには、シート材10の出口である搬出口21が形成されている。これらの搬入口20および搬出口21は、矩形状の開口部である。
【0030】
底面部19は、矩形の面である。そして、底面部19とこの底面部19に連接する側面の一部とが、シート材10の被処理面16に対して表面処理を施し終えた後の処理液X(廃液)を一時的に溜める廃液溜め19aを形成している。
【0031】
また、筐体部2は、塩化ビニル製の筐体であって、上部に開口部(図示しない)を有している。この開口部には、蓋部材(図示しない)が、気密性が高く、かつ開閉可能に開口部を塞ぐように配置されている。
【0032】
(処理液供給部S)
次に、表面処理に用いる処理液Xを処理部Pに供給するための部材群である処理液供給部Sについて説明する。処理液供給部Sは、処理液Xを筐体部2内に流入させるための供給管7と、流入された処理液を一時的に溜めるための貯留部(第3部材)5とを備えている。
【0033】
供給管7は、図2に示すように、処理液Xを筐体部2内に供給するために、筐体部2の上部に、外部から連結して設けられている。また、供給管7は、内部が空洞になっている円筒形状の塩化ビニル製の部材である。そして、円筒形状の外周面(円周面)に相当する部分には、複数の微小穴7aが、シート材10の搬送方向に沿って一列に形成されている。また、この微小穴7aは、後述する縦壁11に対向する方向に設けられている。
【0034】
貯留部5は、筐体部2に固定されている平板状の基板部5aを備えている。また、貯留部5は、基板部5aの上面側に、縦壁11と堰6と供給ガイド面(第3ガイド面)13(図5参照)とを有している。また、基板部5aの上面と縦壁11と堰6とによって、液溜め12が形成されている。
【0035】
また、基板部5aは、一方の端部が筐体部2に固定されて略水平に設けられている。そして、この基板部5aのシート材10の搬入口20側から搬出口21側方向への長さは、当該表面処理装置1における処理区間Y(図3参照)の長さと同じ程度の長さである。
【0036】
縦壁11は、基板部5a上に上方向に向けて略垂直に形成された板状の部材である。この縦壁11は、基板部5aと一体的に形成された部材であってもよい。そして、縦壁11は、供給管7の微小穴7aから流出する処理液を受け止める役割を果たしている。つまり、処理液Xは、この縦壁11に当たった後、縦壁11に沿って流下することになる。
【0037】
堰6は、基板部5aの上面から上方向に突出するように形成された直方体形状の部材であり、縦壁11よりシート材10側に設けられている。この堰6は、長手方向において、縦壁11と略平行である。また、堰6は、縦壁11と同様に、基板部5aと一体的に形成された部材であってもよい。そして、堰6の基板部5aからの高さは、縦壁11より低い高さである。
【0038】
このように形成された堰6は、上述のように、縦壁11と基板部5aとともに、液溜め12を形成する役割を果たす。すなわち、縦壁11に沿って流下した処理液Xは、堰6の高さを超えるまでは、液溜め12に溜まることになる。
【0039】
供給ガイド面13は、基板部5aの上面の一部であり、堰6の下端からシート材10側の端部までの略平面状の面である。この供給ガイド面13は、上述の液溜め12から堰6の上面の高さを超えて溢れ出した処理液Xを、シート材10の被処理面16と、後述する処理部Pの中央領域処理面14との間の隙間へと導く役割を果たしている。
【0040】
(処理部P)
次に、処理液供給部Sによって供給された処理液Xによって、シート材10の被処理面16を高精度に処理する処理部Pについて説明する。
【0041】
処理部Pは、図5に示すように、シート材10の被処理面16の中央領域16b(本実施形態では、被処理面16の上部の端部領域を除いた領域)を処理するための中央領域処理部(第2部材)4と、端部領域16a(本実施形態では、上部の端部領域)を処理するための端部領域処理部(第1部材)3とを備えている。
【0042】
中央領域処理部4は、基板部5aにおけるシート材10側の端部から、下方に向けて略垂直に設けられている平板状の部材である。この中央領域処理部4は、基板部5aと一体的に形成された部材であってもよい。そして、この中央領域処理部4は、シート材10の被処理面16に対し、微小隙間を介して対向して設けられた中央領域処理面(第2ガイド面)14を有している。
【0043】
中央領域処理面14は、中央領域処理部4における一方の面である。この中央領域処理面14は、供給ガイド面13に連接して形成されている。また、中央領域処理面14とシート材10の被処理面16との間の微小隙間は、処理液Xがこの微小隙間を流下する際に毛細管力が働く程度の大きさとなっている。そして、中央領域処理面14は、供給ガイド面13との連接部から、筐体部2の底面から所定の高さ位置まで設けられている。
【0044】
このような構成によると、供給ガイド面13上を流れてきた処理液Xは、中央領域処理面14とシート材10の被処理面16との間の隙間において流下する。
また、中央領域処理面14と供給ガイド面13との連接部分は、滑らかな曲面形状であることが好ましい。これにより、供給ガイド面13上を流れてきた処理液Xがシート材10の方向に飛散したり、脈動したりすることを抑えることができる。
【0045】
また、図4に示すように、供給ガイド面13と中央領域処理面14との連接部分付近には、処理液Xが流れる方向に対して垂直方向(シート材10の搬送方向に対し平行方向に)に沿った条を有する微小凹凸22が形成されている。これにより、処理液Xが、シート材10の搬送方向に沿って均一に広がり易くなり、よりムラのない表面処理を施すことができる。
【0046】
端部領域処理部3は、図1および図2に示すように、中央領域処理部4の上方向に、略垂直に配設された板形状の部材である。この端部領域処理部3は、上端部17bと下端部17aと端部領域処理面(第1ガイド面)17cとを有している。
【0047】
上端部17bは、図2に示すように、筐体部2に固定されている。このため、上端部17bの固定位置が決定されれば、端部領域処理部3の配設位置が決定される。ただし、端部領域処理部3の固定方法は、これに限定されるものではない。例えば、端部領域処理部3は、例えば、基板部5aの一部分や縦壁11の一部分などに固定される構成であってもよい。
【0048】
下端部17aは、図5に示すように、被処理面16の端部領域16aに対向する領域(端部処理領域面17cの下端部)は、曲面形状を成している。具体的には、板形状の部材に半円柱形状の部材が密着して組み合わされた形状になっている。そして、半円柱形状の部材の条の部分が被処理面16の端部領域16aに近接するように設けられている。また、本実施形態においては、この半円柱状の部材は、端部処理領域面17cに沿って上下に2つ設けられている。なお、板状の部材と半円球状の部材とは、個々に形成された後に接着剤などで接着されたものであってもよいし、あるいは、射出成型などによる一体形成物であってもよい。
【0049】
また、この下端部17aは、供給ガイド面13と中央領域処理面14との連接部分付近において、供給ガイド面13から中央領域処理面14に流れる処理液Xに接するように設けられている。この下端部17aは、処理液Xを、被処理面16と、後述する端部領域処理面17cと、の間の微小隙間へ吸い上げるために、最初に表面張力によって端部領域処理部3に吸着させる役割を果たしている。
【0050】
なお、この処理液Xと下端部17aとが接する度合いは、処理液Xの流量によって変化するので、必要に応じて流量を調節すれば、下端部17aと処理液Xとの接する度合いを調節することができる。
【0051】
端部領域処理面17cは、端部領域処理部3におけるシート材10の被処理面16に対向する面である。そして、端部領域処理面17cと被処理面16の端部領域16aとの間には、最も近接する部分(半円柱形状の条の部分と被処理面16aと)では、約0.3mmの微小隙間が設けられている。また、最も離れている部分(平面部分と被処理面16aとの距離)では、約1.5mmの微小隙間が設けられている。これらの距離は、本実施形態において使用する処理液Xが、毛細管力によって入り込む大きさの隙間である。なお、本実施形態におけるシート材10のように、被処理物が非剛体物(剛体物ではない物体)である場合は、処理液Xを流していない状態において、端部領域処理面17cの半円柱形状の条の部分と被処理面16aとが接している状態であってもよい。これは、シート材10が端部領域処理面17cに対して垂直方向に、非剛体物であることによる自由度を有するため、処理液Xが入り込むことによって、自然に微小隙間が形成されるためである。
【0052】
以上の構成により、端部領域処理面17cと端部領域16aとの微小隙間は、毛細管力が働きやすくなるため、処理液Xを効果的に入り込ませることが可能になる。また、上下に並べられた半円柱状の部材同士の間にも毛細管力が働き、処理液Xを保持しやすい形状となっている。この結果、端部領域16aと端部領域処理部3との間の隙間に処理液Xを効果的に入り込ませて保持することができる。
【0053】
(ガイドローラ対9a,9b)
ガイドローラ対9a,9bは、図3に示すように、筐体部2の内部に設けられている。ガイドローラ対9aは、搬入口20近傍に設けられている。ガイドローラ対9bは、搬出口21近傍に設けられている。また、ガイドローラ対9aとガイドローラ対9bとの間には、シート材10の被処理面16に表面処理を施す処理区間Yが位置している。このガイドローラ対9a,9bは、略円柱状の部材であり、円周面である外周面23にシート材10を密着させた状態で回転する。
【0054】
ここで、本実施形態におけるシート材10は、筐体部2の外部にロール状に巻かれた状態で保持されている。このシート材10は、筐体部2の外部に設けられた図示しない搬送ローラ対によって、ロール状態から引き出される。そして、上記搬送ローラ対に対して筐体部2を挟んで反対側に設けられている図示しない搬送ローラ対によって、搬入口20から筐体部2の内部へと搬送される。
【0055】
このとき、ガイドローラ対9aおよびガイドローラ対9bは、処理区間Yにおいて、シート材10の被処理面16が、中央領域処理面14および端部領域処理面17cに対し、微小隙間を介して対向して搬送されるように誘導する。また、ガイドローラ対9bは、処理後のシート材10を、筐体部2の外部に設けられている図示しない搬送ローラ対へ、搬出口21を通って搬送されるように誘導する。そして、筐体部2内で表面処理を施された後、搬出口21から搬出される。ただし、本実施形態では、長尺のシート材10を搬送方向に連続的に表面処理を施す構成であるため、シート材10の搬入出は連続的に行われる。
【0056】
なお、本実施形態におけるガイドローラ対9a,9bは、回転自在に設けられており、シート材10を搬送するための動力を有していない。しかし、このガイドローラ対9a,9bは、モータなどによって動力を持たせた搬送ローラ対としての機能を併せ持つものであってもよい。この場合、ガイドローラ対9a,bは、比較的、半径が大きいものであることが好ましい。これは、側面とシート材10との密着面積が広くなり、摩擦力が高くなるためである。すなわち、ガイドローラ対9a,9bの側面とシート材10との摩擦力が、シート材10を搬送するために十分であればよい。
【0057】
また、ガイドローラ対9a,9bは、図12(a)に示すようにシート材10の上端または(及び)下端をガイドする(例えば、段付き円柱)構造であってもよいし、シート材10を圧着する構造であってもよい。あるいはまた、図12(b)に示すように、3つのガイドローラによって、シート材10を交互に挟む構成であってもよい。
【0058】
<表面処理装置1における表面処理液Xの流路>
次に、本実施形態に係る表面処理装置1における表面処理液Xの流路を、図5を用いて、以下で説明する。
【0059】
先ず、供給管7の内部を流れてきた処理液Xは、供給管7の微小穴7aから流出する。流出した処理液Xは、縦壁11に当たり、この縦壁11に沿って流下する。このようにすると、供給される処理液Xが飛散することを抑えることができる。そして、縦壁11に沿って流下した処理液Xは、堰6によって堰き止められ、堰6の高さに至るまで、液溜め12に溜まる。このように、処理液Xが、一旦、液溜め12に溜まることによって、処理液Xの勢いが抑制される。
【0060】
次に、供給管7から供給され続け、堰6の高さを超えた処理液Xは、堰6側から溢れ出し、供給ガイド面13上を流れ出す。供給ガイド面13上を流れる処理液Xは、この供給ガイド面13と中央領域処理面14との接続部およびその近傍に設けられた微小凹凸22(図4参照)によって、シート材10の搬送方向に広がりつつ、下流方向に流れていく。
【0061】
このとき、供給ガイド面13上を流れる処理液Xの一部は、端部領域処理部3の下端部17aに接触する。この下端部17aに接触した処理液Xの一部は、表面張力によって端部領域処理部3の表面に吸着する。そしてさらに、この吸着した処理液Xは、毛細管力によって、端部領域処理面17cとシート材10の被処理面16における端部領域16aとの微小隙間に入り込む。すなわち、端部領域処理面17cと被処理面16の端部領域16aとの隙間で毛細管現象が発生し、その隙間に処理液Xが広がって保持される。
【0062】
ここで、処理液Xの上昇は、シート材10の上端付近で止まる。これは、毛細管現象の原理に基づく結果である。つまり、毛細管力は、液体の表面張力によって、物体間の微小隙間を液面が上昇する現象であるため、端部領域処理面17cに対し微小隙間を介して対向する物体(シート材10の被処理面16)が存在しない領域(シート材10の上端部より上の領域)では、毛細管力が働かないからである。
【0063】
一方、毛細管力によって端部領域処理面17c方向に入り込まなかった処理液Xは、中央領域処理面14と、シート材10の被処理面16との間の微小隙間に沿って流下する。このとき、シート材10に、中央領域処理面14に近づく方向に若干の自由度を持たせておけば、処理液Xと被処理面16との表面張力によって、シート材10の被処理面16が中央領域処理面14方向に吸い寄せられる。
【0064】
このように、中央領域処理面14と被処理面16との微小隙間を、中央領域処理面14と被処理面16との両方に接触しながら流下した処理液Xは、中央領域処理面14の下端26に到達して筐体部2の底部に滴下する。
【0065】
なお、筐体部2の底部に滴下した処理液Xは、図示しない循環ポンプによって、再び、供給管7に循環される。ただし、この循環の間には、処理液Xの濾過や濃度、温度などの条件を調整するための図示しない調整槽を介していてもよい。
【0066】
[表面処理装置1の特徴]
(1)
本実施形態に係る表面処理装置1は、図1および図5に示すように、処理液Xをシート材10の被処理面16に沿って流下させて表面処理を施す表面処理装置1であって、端部領域処理面17cを有する端部領域処理部3を備えている。端部領域処理面17cは、シート材10の被処理面16に対して、微小隙間を介して対向して設けられている。そして、端部領域処理部3の下端部17aは、供給ガイド面13上を流れる処理液Xの一部に対して接するように配置されている。
【0067】
これにより、端部領域処理部3の下端部17aに接触した処理液Xの一部が、毛細管力(表面張力)によって、シート材10の被処理面16と端部領域処理面17cとの間の隙間に入り込ませることができる。そして、被処理面16が存在しなくなる領域では、端部領域処理面17cと対向する面が存在しなくなる。このため、被処理面16の上端部25より上側の領域では毛細管現象が発生せず、必然的に、処理液Xが被処理面16の上端部25でとどめることができる。
【0068】
この結果、被処理面16の端部領域16aにも処理液Xを行き届かせること、およびシート材10の裏面27等の意図しない部分への処理液Xの回りこみを防ぐことが可能になり、被処理面16のみへの表面処理を高精度で実施することが可能になる。
【0069】
(2)
本実施形態に係る表面処理装置1では、図2に示すように、中央領域処理面14を有する中央領域処理部4を備えている。中央領域処理面14は、被処理面16における端部領域処理部3が対向して配置された端部領域16a以外の中央領域16bに対し、微小隙間を介して対向して設けられている。
【0070】
これにより、処理液Xを、中央領域処理面14とシート材10の被処理面16との間の隙間に沿って流下させることができる。また、このとき、中央領域処理面14と被処理面16との間が微小隙間であるため、処理液Xが毛細管力(表面張力)によって中央領域処理面14と被処理面16との両面に吸着させることができる。
【0071】
この結果、毛細管力の働きによって、中央領域処理面14と被処理面16との隙間に処理液Xが行きわたり、被処理面16における端部領域16aだけでなく中央領域に対してもムラの少ない表面処理を行うことが可能になる。
【0072】
(3)
本実施形態に係る表面処理装置1では、図2に示すように、供給ガイド面13を有する貯留部5と堰6とを備えている。供給ガイド面13は、中央領域処理面14の上端部から略水平に設けられている。堰6は、供給ガイド面13の中央領域処理面14とは反対側の端部に供給ガイド面13から上方向に突出して設けられている。そして、処理液Xは、供給管7から、堰6の供給ガイド面13側とは反対側の液溜め12に供給される。
【0073】
これにより、供給管7から供給された処理液Xを、堰6の高さを超えるまで一時的に堰き止めた後、堰6から溢れた処理液Xを供給ガイド面13へ流出させることができる。すなわち、堰6から溢れる処理液Xのみが、表面処理が行われる端部領域処理面17cおよび中央領域処理面14側に供給される。
【0074】
この結果、処理液Xが、供給管7から直接的に供給ガイド面13に供給される場合に比べ、処理液Xの流れの勢いを抑え、供給ガイド面13上から安定して処理液Xを下流側へと供給することができる。よって、端部領域処理面17cおよび中央領域処理面14に供給される流量を安定化させ、表面処理のムラを軽減することが可能になる。
【0075】
(4)
本実施形態に係る表面処理装置1は、図1に示すように、端部領域処理部3として、板状の部材を用いている。
【0076】
これにより、端部領域処理部3の下端部17aは、板形状における側面を含み、端部領域処理面17cは、板形状における一方の面とすることができる。つまり、板形状部材の側面が、処理液Xの液面に接する。そして、この下端部17aから端部領域処理面17cとシート材10の被処理面16との間の微小隙間へ、毛細管力によって処理液Xが入り込む。この結果、簡易な部材を用いることで、処理液Xを被処理面16の端部領域16aに行き届かせることができる。また、装置にかかる費用を抑えつつ、シート材10の非処理領域を減少させ、資材の利用効率を上昇させることが可能になる。
【0077】
(5)
本実施形態に係る表面処理装置1は、図2に示すように、シート材10の被処理面16における端部領域16aに対向する側(端部処理面17c側)に半円柱形状部分を、端部領域処理面17cに沿って上下に二つ備えている。
【0078】
これにより、端部領域処理部3の下端部17aにおけるシート材10の端部領域16に対向する部分(端部領域処理面17cの端部を含む部分)が、曲面形状になるため、処理液Xが流れていない初期状態においてシート材10自身の自由度によって端部領域処理面17cと端部領域16aとが接触した状態になっていても、端部領域処理部17cと端部領域16aとの接触面積が微小面積に抑えられる。したがって、処理液Xは、毛細管力によって端部領域処理面17cと端部領域16aとの間の微小隙間に入り込みやすくなる。また、上下に並べられた半円柱状の部材同士の間にも毛細管力が働き、端部領域処理部17cと端部領域16aとの微小隙間に処理液Xを保持しやすい形状となっている。
【0079】
<実施例>
本実施形態に係る表面処理装置1を備えた表面処理システムによる表面処理の実施例について以下で述べる。
【0080】
本実施例は、ポリイミド膜の表面にニッケルメッキ処理を行ったものである。以下に、実施条件を示す。
本実施例において用いた表面処理システムは、複数の処理槽を備えている。詳細には、第1槽から第4槽までを備え、このうち第1槽と第2槽とにおいては、本実施形態に係る表面処理装置1が採用され、第3槽と第4槽とにおいては、従来の全浸漬法にて用いられる表面処理装置が採用されている。
【0081】
被処理物として用いた長尺のシート材10は、幅30cm、厚さ38μmの、ポリイミド膜を表面に有するシート材10である。このシート材10の搬送速度は、0.3m/分とした。また、中央領域処理面14におけるシート材10の搬送方向の長さは30cmである。また、端部領域処理面17cと対向しているシート材10の端部領域16aの高さ方向の長さは、5.0mmである。また、端部領域処理面17cの半円柱形状の条部分とシート材10の端部領域16aとの距離は、0.3mmである。また、中央領域処理面14とシート材10との距離は0.5mmである。ただし、この端部領域処理面17cとシート材10との距離は、シート材10に若干の自由度を持たせているため、処理液Xの表面張力によって変化する。
【0082】
ここで、上記の条件の下で、ニッケルメッキ処理を施すための前処理として、以下の処理を実施した。
先ず、第1槽において、シート材10の被処理面16に、脱脂処理を行なった。ここで用いた処理液Xは、モノエタトルアミン44%、ポリオキシエチレンアルキルエーテル1.7%と若干のキレート剤を含む水溶液である。
【0083】
次に、第2槽において、シート材10の被処理面16に、アルカリ加水分解を行った。ここで用いた処理液Xは、KOH3mol/lの水溶液である。
そして、第3槽において、シート材10の被処理面16およびその裏面27の両面に、パラジウム付与処理を行った。
【0084】
最後に、第4槽において、シート材10の被処理面16およびその裏面27の両面に、ニッケル処理を行った。ここで用いた処理液Xは、35℃、pH8.8に調整された、無電解ニッケルメッキ液ENILEX NI−5(荏原ユージライト株式会社製)である。
【0085】
なお、これらの各処理の前後には、それぞれ、超純水による水洗処理や乾燥処理を行った。
以上の処理の後に、被処理面16およびその裏面27の確認を行った。被処理面16の上端部25から500μmまでの領域を除く領域に、ニッケルメッキが施されていることが確認された。また、裏面27には、ニッケルの付着は確認されなかった。
【0086】
この結果は、第1槽および第2槽において、被処理面16の上端部25付近まで、高精度に表面処理されており、かつ、処理液Xが裏面27側に乗り越えていないことを、十分に示している。
【0087】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0088】
(A)
上記実施形態では、図1に示すように、表面処理装置1におけるシート材31の搬送方向として、シート材31の長手方向を水平方向に沿って搬送させる例を挙げて説明した。しかし本発明はこれに限定されるものではない。
【0089】
例えば、シート材31の長手方向を、水平方向に対し垂直に沿って搬送させる構成を用いてもよい。この構成について、図6および図7を用いて以下で説明する。
表面処理装置100は、図6に示すように、シート材31が、ガイドローラ対38によって誘導され、上から下へと搬送される構成を有している。そして、処理液Xは、上記の実施形態と同様に、供給管7から液溜め12へ供給され、堰6から溢れ出す。続けて、処理液Xは、供給ガイド面13上を流れた後に、被処理面32に沿って流下する。
【0090】
そして、シート材31の両端部領域33,33に対しそれぞれ対向して設けられている端部領域処理面34,34を有する端部領域処理部35,35が備えられている。すなわち、端部領域処理面34,34が、被処理面32の端部領域33,33に対し、それぞれ微小隙間を介して設けられている。そして、端部領域処理部35,35の端部36,36は、被処理面32に沿って流下する処理液Xに接するように形成されている。
【0091】
これにより、端部領域処理面34,34とシート材31の端部領域33,33との隙間に、毛細管力によって処理液Xが入り込ませることができる。したがって、端部領域33,33に対して、高精度な表面処理を施すことが可能になる。また、この構成は、被処理面32と処理液Xとが親和性を有しない場合には、その処理液Xが表面張力により被処理面32の中央領域37に集中して流れてしまう恐れがあるため、特に有効である。
【0092】
(B)
上記実施形態では、図2に示すように、シート材10の一方の面のみを表面処理するための構成を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0093】
例えば、シート材40の両面が被処理面41,42である場合は、図8に示すように、端部領域処理部43,43、中央領域処理部44,44、貯留部45,45、堰46,46および供給管47,47を、シート材40を中心として、それぞれ、鏡面対称になるように配設する。
【0094】
これにより、シート材40の両面を、端部領域48,49まで高精度に表面処理することが可能になる。また、この構成は、それぞれの被処理面41,42において、異なる処理液Xを用いることも可能である。したがって、それぞれの処理面に対し、異なる表面処理を施す場合において、特に有効である。
【0095】
(C)
上記実施形態では、図2に示すように、一枚のシート材10の一方の面のみを処理するための構成を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0096】
例えば、図9に示すように、2枚のシート材50,50におけるそれぞれの被処理面56,56を同時に処理する構成であってもよい。
詳細には、図9に示すように、中央に設けられた縦壁51を中心とし、線対称にそれぞれ供給管54,54、堰53,53、端部領域処理部57,57、および中央領域処理部62,62が配設されている。そして、シート材50は、中央領域処理部62,62および端部領域処理部57,57と微小隙間を介して被処理面56,56が位置するように搬送されている。換言すると、図2で示した、上記実施形態における筐体部2内部の構成が、縦壁11を中心に線対称に設けられた構成である。
【0097】
このような構成によると、供給された処理液Xは、堰53,53から溢れ出て、供給ガイド面60,60上を流れる。そして、処理液Xは、中央領域処理部62の上端部64に到達する。次に、処理液Xは、この上端部64から中央領域処理面65,65と被処理面56,56との両方に沿って流下するとともに、端部領域処理部57,57の下端部63,63に接する処理液Xは、この下端部63,63に対する表面張力と端部領域処理面61,61および被処理面56,56の端部領域55,55の微小隙間への毛細管力とによって、この微小隙間に入り込む。
この結果、2枚のシート材50,50のそれぞれの一方の面に対し、同時に表面処理を施すことができる。したがって、単位時間当たりの作業効率が向上する。
【0098】
(D)
上記実施形態では、図2に示すように、端部領域処理部3の下端部17aは、端部領域処理部17c側に円周面形状を有する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0099】
例えば、下端部17aは、図13に示すように、先端部分において下方向に凸の曲面形状であってもよい。また、この下端部17aは、供給ガイド面13と中央領域処理面14との連接部分付近において、供給ガイド面13から中央領域処理面14に流れる処理液Xに接するように設けられている。この下端部17aは、処理液Xを、被処理面16と、後述する端部領域処理面17cと、の間の微小隙間へ吸い上げるために、最初に表面張力によって端部領域処理部3に吸着させる役割を果たしている。
【0100】
ここで、下端部17aが処理液Xに接する度合いは、下端部17aの曲面の全てが接する程度であってもよいし、曲面の一部分(例えば、先端部分)が接する程度であってもよい。なお、この処理液Xと下端部17aとが接する程度は、処理液Xの流量によって変化するので、必要に応じて流量を調節すれば、下端部17aと処理液Xとの接する度合いを調節することができる。
【0101】
このような構成によると、下端部17a先端の曲面形状によって、端部領域処理部3と被処理面16の端部領域16aとの間の隙間は、処理液Xと接触する下方から上方に向かって徐々に狭まる。これにより、処理液Xに対して毛細管力が働き易くなるため、被処理面16の端部領域16aと端部領域処理部3との間の隙間に処理液Xを効果的に入り込ませて保持することができる。
【0102】
また、端部領域処理部3の下端部17aにおいて、処理液Xと接する面積を大きく設けることができる。このため、表面張力による、処理液Xの下端部17aへの吸着が容易かつ確実になる。
【0103】
(E)
上記実施形態では、図2に示すように、端部領域処理部3の下端部17aは、端部領域処理面17c側に円周面形状を有する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0104】
例えば、下端部17aは、図10に示すように、処理液Xに接触する部分(下先端部分17d)から端部領域処理面17c方向にかけて、被処理面16との隙間が狭くなるように形成されたテーパ形状であってもよい。
これにより、毛細管現象が発生しやすい形状となり、端部領域処理面17cと被処理面16の端部領域16aとの隙間へ、処理液Xが入り込みやすくなる。
【0105】
(F)
上記実施形態では、図2に示すように、端部領域処理部3は、筐体部2に固定されている例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0106】
例えば、図11に示すように、シート材10の被処理面16に対して平行な方向において上下方向に移動させることが可能な構成であってもよい。具体的には、端部領域処理部3は、筐体部2の上面部71に係り合う鋸歯部72を有している。そして、当該表面処理装置200は、取り外し自在のL字型の固定部材73をさらに備えている。
【0107】
これにより、固定部材73を取り外し、端部領域処理部3が所望の高さになるように、上面部71に係り合う鋸歯部72の位置を調整し、固定部材73をはめ込んで固定することができる。したがって、下端部17aを処理液Xの液面に確実に接触させることが可能になる。
【0108】
(G)
上記実施形態では、図3に示すように、ガイドローラ対9a,9bが固定されており、被処理面16と端部領域処理面17cの距離は、シート材10が有する若干の自由度のみに依存している例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0109】
例えば、外径が異なるガイドローラ対9a,9bを取替え自在にすることによって、端部領域処理面17cおよび中央領域処理面14と被処理面16との距離を調整することができる。
これにより、処理液Xの流量に応じた距離を保つことが可能になり、高精度な表面処理を実施することが可能になる。
【0110】
(H)
上記実施形態では、処理液Xが循環ポンプによって循環する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、一度使用した処理液Xは廃棄し、常に新しく調整された処理液Xを用いる構成であってもよい。
【0111】
(I)
上記実施形態では、端部領域処理面17cと被処理面16との微小隙間は、0.5mmである例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0112】
この微小隙間、すなわち端部領域処理面17cと被処理面16との距離は、上述の毛細管現象の観点から0.1mmから10mm程度が好適である。したがって、処理液Xの種類や条件、または、処理液Xと端部領域処理面17cおよび被処理面16との親和性によって、適宜調整することが好適である。
【0113】
(J)
上記実施形態では、表面処理装置1を形成する材料として、塩化ビニル製の部材を用いる例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0114】
表面処理装置1に用いられる処理液Xは、目的に応じて、種々の酸、アルカリ、有機溶媒溶液が用いられるため、それぞれの溶液に対し、反応性の低い材料を用いることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明の表面処理装置は、表面張力(毛細管力)を用いて、被処理物の一方の面のみを高精度に表面処理することができるという効果を奏することから、液体による各種加工装置に対して広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の一実施形態に係る表面処理装置の構成を示す斜視透過図。
【図2】図1の表面処理装置の側面視断面図。
【図3】図2の表面処理装置のA−A断面図。
【図4】図1の中央領域処理部および貯留部の一部を拡大した斜視図。
【図5】図1の主要部分を拡大した側面視断面図。
【図6】本発明の他の実施形態に係る表面処理装置の構成を示す側面視断面図。
【図7】図6の表面処理装置における端部領域処理部とシート材との位置関係を示す側面視図。
【図8】本発明の他の実施形態に係る表面処理装置における主要部分を示す側面視断面図。
【図9】本発明の他の実施形態に係る表面処理装置における主要部分を示す側面視断面図。
【図10】本発明の他の実施形態に係る表面処理装置における端部領域処理部の端部形状を示す側面視断面図。
【図11】本発明の他の実施形態に係る表面処理装置における主要部分を示す側面視断面図。
【図12】(a)は、本発明の実施形態に係る表面処理装置におけるガイドローラの一例を示す斜視図である。(b)は、本発明の実施形態に係る表面処理装置におけるガイドローラの一例を示す上面視平面図である。
【図13】本発明の他の実施形態に係る表面処理装置における端部領域処理部の下端部の端部形状を示す側面視断面図である。
【符号の説明】
【0117】
1 表面処理装置
2 筐体部
3 端部領域処理部(第1部材)
4 中央領域処理部(第2部材)
5 貯留部(第3部材)
5a 基板部
6 堰
7 供給管
7a 微小穴
9a ガイドローラ対
9b ガイドローラ対
10 シート材(被処理物)
11 縦壁
12 液溜め
13 供給ガイド面(第3ガイド面)
14 中央領域処理面(第2ガイド面)
16 被処理面
16a 端部領域
16b 中央領域
17a 下端部
17b 上端部
17c 端部領域処理面(第1ガイド面)
17d 下先端部分
18a 側面部
18b 側面部
19 底面部
19a 廃液溜め
20 搬入口
21 搬出口
22 微小凹凸
23 側面
25 上端部
26 下端
27 裏面
31 シート材(被処理物)
32 被処理面
33 端部領域
34 端部領域処理面(第1ガイド面)
35 端部領域処理部(第1部材)
36 端部
37 中央領域
38 ガイドローラ対
40 シート材(被処理物)
41 被処理面
42 被処理面
43 端部領域処理部(第1部材)
44 中央領域処理部(第2部材)
45 貯留部(第3部材)
46 堰
47 供給管
48 端部領域
49 端部領域
50 シート材(被処理物)
51 縦壁
53 堰
54 供給管
55 端部領域
56 被処理面
57 端部領域処理部(第1部材)
60 供給ガイド面(第3ガイド面)
61 端部領域処理面(第1ガイド面)
62 中央領域処理部(第2部材)
63 下端部
64 上端部
65 中央領域処理面(第2ガイド面)
71 上面部
72 鋸歯部
73 固定部材
100 表面処理装置
200 表面処理装置
X 処理液(表面処理液)
Y 処理区間



【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面処理液を被処理物の被処理面に沿って流下させて表面処理を施す表面処理装置であって、
前記被処理面の端部領域に対し微小空間を介して対向する第1ガイド面を有し、前記表面処理液の一部に端部が接するように配置された第1部材を備える表面処理装置。
【請求項2】
前記被処理面における、前記第1部材が配置された前記端部領域を除く領域に対し、微小隙間を介して対向して設けられている第2ガイド面を有する第2部材を備える、
請求項1に記載の表面処理装置。
【請求項3】
前記第2ガイド面の一方の端部から略水平に設けられ、供給された前記表面処理液を前記第2ガイド面に流すための第3ガイド面を有する第3部材と、
前記第3ガイド面の第2ガイド面とは反対側の端部に設けられ、前記第3ガイド面から突出する堰と、
を備える、
請求項1または2に記載の表面処理装置。
【請求項4】
前記第1部材は、板状の部材である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の表面処理装置。
【請求項5】
前記第1部材の前記端部は、曲面を含むように形成されている、
請求項1から4のいずれか1項に記載の表面処理装置。
【請求項6】
前記第1部材の前記端部は、前記被処理面の前記端部側に近づくにつれて前記被処理面との間隔が狭くなるように形成されたテーパ形状である、
請求項1から4のいずれか1項に記載の表面処理装置。
【請求項7】
前記第1部材は、前記被処理面と略平行な方向に移動可能である、
請求項1から7のいずれか1項に記載の表面処理装置。
【請求項8】
前記第1ガイド面と前記被処理物の前記被処理面との距離は、調整可能である、
請求項1から7のいずれか1項に記載の表面処理装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−6715(P2011−6715A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−279510(P2007−279510)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】