説明

表面処理金属材料および金属塗装物の製造方法

【課題】表面処理した金属基材に対してカチオン電着塗装を行った場合、充分なつきまわり性の発現が可能であり、防食性に優れている表面処理を提供すること。
【解決手段】錫イオンを10〜10000ppm含有し、pHが1.0以上である処理液(1)により金属材料を表面処理すること、および前記処理液(1)による前記表面処理後の金属材料を、さらにジルコニウムイオンおよび/またはチタンイオンを含有する処理液(2)により化成処理すること、を含む表面処理金属材料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理金属材料の製造方法、および、得られた表面処理金属材料にカチオン電着塗装を行うことを含む金属塗装物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の金属基材に対して防食性を付与するため、従来から表面処理が行われている。特に自動車を構成する金属基材に対しては、リン酸亜鉛処理が一般的に用いられてきた。しかし、このリン酸亜鉛処理は、副生成物としてスラッジが発生する問題を有している。このため、リン酸亜鉛を使用しない、次世代の表面処理が求められており、その一つがジルコニウムイオンによる表面処理である(特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−218070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
高い防食性が必要とされる、自動車を構成する金属基材に対しては、表面処理後にカチオン電着塗装が施される。カチオン電着塗装が施される理由として、カチオン電着塗装で得られる塗膜が防食性に優れていることに加え、複雑な形状を有する自動車ボディに対して、隅々まで塗装することができるという性質、いわゆる「つきまわり性」を有していることが大きい。
【0004】
ところが、最近になって、上記ジルコニウムイオンによる表面処理を行った金属基材にカチオン電着塗装を行った場合、上記つきまわり性において充分な効果が得られにくい場合があり、たとえば冷延鋼板に対するつきまわり性が充分でない場合があることがわかってきた。このように、カチオン電着塗装を行った場合につきまわり性が充分でないと、充分な防食性を得ることはできない。
【0005】
本発明は、リン酸亜鉛を使用しない表面処理を行った金属基材に対してカチオン電着塗装を行った場合に、充分なつきまわり性の発現が可能であり、防食性に優れている表面処理を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によれば、錫イオンを10〜10000ppm含有し、pHが1.0以上である処理液(1)により金属材料を表面処理すること、および前記処理液(1)による前記表面処理後の金属材料を、さらにジルコニウムイオンおよび/またはチタンイオンを含有する処理液(2)により化成処理すること、を含む表面処理金属材料の製造方法が提供される。
【0007】
本発明の別の一側面によれば、錫イオンを10〜10000ppm含有し、pHが1.0以上である処理液(1)により金属材料を表面処理すること、前記処理液(1)による前記表面処理後の金属材料を、さらにジルコニウムイオンおよび/またはチタンイオンを含有する処理液(2)により化成処理すること、および前記処理液(2)により化成処理された金属材料に、カチオン電着塗装により塗膜を形成すること、を含む金属塗装物の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、ジルコニウムイオンおよび/またはチタンイオンを含む処理液(2)による処理に先立ち、錫イオンを含む処理液(1)による処理が行われる。このように、処理液(1)による表面処理と処理液(2)による化成処理を行うことにより、金属材料表面が露出箇所を残さずに、均一に表面処理膜で覆われるようになる。その結果、カチオン電着塗装を行った際の電流の流れ方が均一となって電着が均一に行われ、充分なつきまわり性が得られるようになると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係る表面処理金属材料の製造方法は、錫イオンを10〜10000ppm含有し、pHが1.0以上である処理液(1)により金属材料を表面処理すること、および前記処理液(1)による前記表面処理後の金属材料を、さらにジルコニウムイオンおよび/またはチタンイオンを含有する処理液(2)により化成処理することを含んでいる。
本発明の製造方法によれば、処理液(1)で表面処理することにより金属材料表面にまず処理液(1)によって形成された層(1)が形成される。次いで、この層(1)が形成された金属材料上に、処理液(2)によって層(2)が形成される。
【0010】
ここで、処理液(2)のように、ジルコニウムイオンおよび/またはチタンイオンを用いた表面処理剤で金属基材を化成処理すると、ジルコニウムおよび/またはチタンの酸化物による化成皮膜が形成されるが、この化成皮膜の形成は、酸性雰囲気下で金属基材がエッチングされると同時に行われるものと考えられる。
ところが、金属材料が鉄系基材、特に冷延鋼板等の場合、基材表面にシリカ、ケイ素、炭素などの偏析物が存在することがあり、そのような部分にはエッチングが行われにくい。このため、前工程なしに処理液(2)で処理すると、ジルコニウムおよび/またはチタンの酸化物析出による化成皮膜の均一な形成が行われにくく、化成処理後も化成皮膜が形成されずに金属材料が一部露出している部分が残存することがある。その結果、当該皮膜が形成された部分と形成されなかった部分とでは電流の流れ方が異なることから電着塗装が均一でなくなり、つきまわり性が十分に発現しないという問題があった。ここで、「つきまわり性」とは、電着塗装において、被塗物である金属材料の塗膜未析出部位に、絶縁性の塗膜が順次形成される性質をいう。
【0011】
これに対し、錫イオンを含む処理液(1)でまず処理し、その処理による層(1)をあらかじめ形成することにより、処理液(2)で処理した後に金属材料の一部が未処理のまま露出することを防止することができる。これは、錫イオンは、ジルコニウムイオンおよびチタンイオンに比べて、基材表面の偏析物の影響を受けにくいため、まず金属材料表面を処理液(1)による層(1)で均一に覆うことができるためと考えられる。このため、層(1)が均一に形成された金属材料に対し、処理液(2)によるジルコニウムおよび/またはチタンの酸化物を含む層(2)を均一に形成することができる。
【0012】
このようにして、処理液(2)による化成処理に先立って処理液(1)による表面処理を行う本発明によれば、つきまわり性よく電着塗膜を形成することができるので、本発明の方法は、複雑な形状を有する金属材料の化成処理方法として適している。処理対象金属に関しては、従来、密着性や耐食性に優れた均一な化成皮膜の形成が困難であった鉄板等の鉄系基材にも適している点が特徴的である。
【0013】
処理液(1)に含まれる錫イオンは、目的とする効果を充分に奏させる観点から、2価のカチオンであることが好ましい。
錫イオンを供給する化合物としては、たとえば、硫酸錫、酢酸錫、フッ化錫、塩化錫、および硝酸錫を挙げることができる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0014】
錫イオンの処理液(1)中の濃度は、10〜10000ppmであり、20〜2000ppmであることが好ましく、30〜500ppmであることがより好ましい。この錫イオンの濃度が10ppm未満では、目的とする効果が得られず、10000ppmを超えると処理液(2)中の化成皮膜成分であるジルコニウムおよび/またはチタンが析出しにくくなる恐れがある。
【0015】
さらに、処理液(1)中の錫イオンの濃度は、上記同様の理由から、後述する処理液(2)中のジルコニウムおよび/またはチタンイオンの濃度に対して(つまり、ジルコニウムイオンおよび/またはチタンイオン濃度に対する錫イオンの濃度比)は、0.005〜1であることが好ましく、0.02〜0.2であることがより好ましい。
【0016】
本明細書における金属イオンの濃度についての表記は、錯体や酸化物を形成している場合において、その錯体や酸化物中の金属原子のみに着目した、金属元素換算濃度で表すものとする。たとえば、錯イオンZrF2−(分子量205)100ppmのジルコニウム(分子量91)の金属元素換算濃度は100×(91/205)の計算により44ppmと算出される。なお、処理液(1)および処理液(2)において、金属化合物(錫化合物、ジルコニウム化合物、チタン化合物等)は、一部が酸化物など非イオンの状態で存在しているとしてもその割合はごくわずかであり、ほぼ全量が金属イオンとして存在すると考えられる。したがって、本明細書における金属イオン濃度は、一部が非イオンとして存在しているか否かにかかわらず、100%解離して金属イオンとして存在する場合の金属イオン濃度をいう。
また、本明細書において濃度は、特に断りのない限り、質量換算で示す。
【0017】
処理液(1)は、さらに界面活性剤を含むことが好ましい。それにより、金属材料をあらかじめ脱脂処理して清浄化しておかなくても、良好な化成皮膜を形成させることができる点で好ましい。界面活性剤としては、従来公知のものが使用され、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤のいずれでもよく、複数種を組み合わせて使用してもよい。
処理液(1)中の界面活性剤の濃度は、100〜10000ppmであることが好ましく、500〜5000ppmであることがより好ましい。
【0018】
処理液(1)は、化成皮膜の耐食性をさらに高めるために、防錆剤を含むことも好ましい。防錆剤としては、窒素、硫黄および/またはフェノール系防錆剤を用いることが好ましい。これらの防錆剤は、金属表面に防食皮膜を形成して腐食を抑制しうるものである。窒素、硫黄、フェノール系防錆剤としては、ヒドロキノン、エチレン尿素、キノリノール、チオ尿素、ベンゾトリアゾール等、およびこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種を用いることができる。
防錆剤の含有量は、0.1〜10000ppmが好ましく、1〜1000ppmがより好ましい。当該含有量が0.1ppm未満であると、効果が得られにくく、10000ppmを超えるとジルコニウムおよび/またはチタンの析出を阻害する可能性がある。
【0019】
処理液(2)は、ジルコニウムイオンおよび/またはチタンイオンを含み、金属材料の表面を化成処理することのできる処理液である。
ジルコニウムイオンを供給する化合物として、たとえば、フッ化ジルコン酸、フッ化ジルコン酸カリウムおよびフッ化ジルコン酸アンモニウム等のフッ化ジルコン酸の塩、フッ化ジルコニウム、酸化ジルコニウム、酸化ジルコニウムコロイド、硝酸ジルコニル、ならびに炭酸ジルコニウム等を挙げることができる。これらはそれぞれ単独で、または複数種を組み合わせて使用することができる。
【0020】
チタンイオンを供給する化合物としては、たとえば、アルカリ金属フルオロチタネート、(NHTiF等のフルオロチタネート、HTiF等のフルオロチタネート酸等の可溶性フルオロチタネート、フッ化チタン、酸化チタン等を挙げることができる。これらはそれぞれ単独で、または複数種を組み合わせて使用することができる。
【0021】
処理液(2)におけるジルコニウムイオンおよび/またはチタンイオンの濃度は10〜10000ppmであることが好ましく、50〜2000ppmであることがより好ましく、100〜500ppmであることが一層好ましい。これらのイオン濃度が10ppm未満であると充分な防食性が得られない恐れがあり、10000ppmを超えても、それに見合うだけの効果が得られにくい。
【0022】
処理液(2)はオルガノシランを含有することができる。すなわち、本発明の一実施形態に係る表面処理金属材料の製造方法は、錫イオンを10〜10000ppm含有し、pHが1.0以上である処理液(1)により金属材料を表面処理すること、および前記処理液(1)による前記表面処理後の金属材料を、さらにジルコニウムイオンおよび/またはチタンイオンと、オルガノシランとを含有する処理液(2)により化成処理すること、を含む。
【0023】
処理液(2)のオルガノシランは、有機ケイ素化合物であり、特に限定はされないが、たとえば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1、3−ジメチル−ブチリデン)−プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等を好ましく使用することができる。これらは単独で、または複数種を組み合わせて使用できる。
【0024】
市販されているシランカップリング剤である、「KBM−403」、「KBM−602」、「KBM−603」、「KBE−603」、「KBM−903」、「KBE−903」、「KBE−9103」、「KBM−573」、「KBP−90」(いずれも商品名、信越化学工業(株)製)、「XS1003」(商品名、チッソ(株)製)等を使用することもできる。
【0025】
オルガノシランは、処理液(2)において、少なくともその一部が、当該オルガノシランの加水分解により縮合したオルガノシロキサンとして存在することが好ましい。またこの場合の縮合度は高いほうが、ジルコニウムおよび/またはチタンが酸化物として析出する際にその中に取り込まれやすい傾向にあるため好ましく、3以上のオルガノシランが重縮合したポリオルガノシロキサンであることがより好ましい。なお、オルガノシロキサンの重縮合率は、29Si−NMRにより測定される。
オルガノシランは、少なくともその一部重縮合させてオルガノシロキサンとした後、処理液(2)の調製に用いることが好ましい。
【0026】
処理液(2)は、化成処理後に形成されるカチオン電着塗膜と化成皮膜との密着性を高めるために、ポリアミン化合物を含むことが好ましい。ポリアミン化合物としては、前記オルガノシランのうちアミノ基を含有するアミノ基含有シラン(アミノシラン)の加水分解縮合体(アミノ基含有オルガノシロキサン)、ポリビニルアミン、ポリアリルアミンなどが挙げられる。特に、自由にアミン量の調整が可能なことから、加水分解性基を含むアミノ基含有シランの加水分解縮合体(すなわちオルガノシロキサン)であることが好ましい。
【0027】
アミノ基含有シランの加水分解縮合は、当業者によく知られた方法により行うことができる。具体的には、少なくとも1種のアミノ基含有シランに、アルコキシシリル基等の加水分解性基が加水分解するのに必要な水を加え、必要に応じて加熱撹拌することにより行うことができる。ここで、用いる水の量を調節することにより、縮合度を制御することができる。
【0028】
得られるアミノ基含有オルガノシロキサンの縮合度は高いほうが、ジルコニウムおよび/またはチタンが酸化物として析出する際に、その中に取り込まれやすい傾向にあり、またカチオン電着塗膜との密着性を向上させるためにも好ましい。このため、アミノ基含有シランを加水分解縮合反応で反応させる際には、溶媒としてアルコールおよび酢酸等の触媒を含む水性溶媒を用いる等の、アミノ基含有シランがより加水分解しやすく、縮合しやすい条件下で反応させることが好ましい。また、アミノ基含有シラン濃度が比較的高い条件で反応させることによって、縮合度の高い加水分解縮合体が得られる。具体的にはアミノ基含有シラン濃度が5質量%以上50質量%以下の範囲で加水分解縮合させることが好ましい。
縮合度は、29Si−NMR測定により求めることができる。
【0029】
上記ポリビニルアミンおよびポリアリルアミンとしては、ホモポリマー、コポリマーのいずれでも使用することができ、市販されているものを使用することができる。ポリビニルアミンの例として、「PVAM−0595B」(商品名、三菱化学(株)製)等を、ポリアリルアミンの例として、「PAA−01」、「PAA−10C」、「PAA−H−10C」、「PAA−D−41HCl」(いずれも商品名、日東紡績(株)製)等をそれぞれ挙げることができる。
【0030】
上記アミノ基含有シランを重縮合させてなるオルガノシロキサン等のポリアミン化合物の分子量は、得られる化成皮膜の密着性および皮膜形成性の観点から、150〜500000であることが好ましく、5000〜70000であることがさらに好ましい。
さらに、ポリアミン化合物において、アミノ基の量が多すぎるとアミノ基同士が結合するなどしてカチオン電着塗膜との密着性を低下させたり、皮膜に悪影響を及ぼしたりするおそれがあり、少なすぎるとアミノ基による皮膜との密着性向上の効果が得られにくいため、ポリアミンの固形分1gあたり0.1ミリモル以上17ミリモル以下の1級および/または2級アミノ基を有することが好ましく、固形分1gあたり3ミリモル以上15ミリモル以下の1級および/または2級アミノ基を有することが好ましい。
【0031】
ポリアミン化合物の固形分1gあたりの1級および/または2級アミノ基のモル数は、下記数式(1)により求めることができる。
アミノ基量=(mX−nY)/(m+n) 数式(1)
【0032】
数式(1)中、ポリアミン化合物と、官能基Aおよび/または官能基Bを有する化合物との固形分質量比を、m:nとすると、官能基Aおよび/または官能基Bを有する化合物1gあたりの官能基Aおよび/または官能基Bのミリモル数をYとし、上記官能基Aおよび/または官能基Bを有する化合物が処理液(2)に含有されていない場合のポリアミン化合物1gあたりに含まれる1級および/または2級アミノ基のミリモル数をXとした。
【0033】
処理液(2)中のオルガノシランの含有量は、処理液(2)中に含まれるジルコニウムおよび/またはチタンの金属換算質量に対して、目的とする効果と充分な皮膜形成の観点から、1〜200%とすることができる。
【0034】
処理液(2)は、さらに錫イオンを含むことが好ましい。それにより、塗膜の密着性、耐食性、防錆性をさらに向上させることができる。
錫イオンを供給する化合物は、上記処理液(1)において使用できる化合物と同じである。処理液(2)中の錫イオンの濃度は、1ppm〜1000ppmであることが好ましく、5ppm〜200ppmであることがより好ましい。
【0035】
処理液(2)中の錫イオンの濃度は、上記ジルコニウムイオンとチタンイオンの合計濃度に対して、0.005〜1であることが好ましく、0.02〜0.2であることがより好ましい。さらに、本発明の効果を充分に得るために、処理液(2)中のジルコニウムイオンとチタンイオンと錫イオンの合計量は15ppm以上であることが好ましい。
【0036】
処理液(2)は、ジルコニウムおよび/またはチタン以外の金属を多量に含む場合、キレート化合物を含むことにより、安定してジルコニウム酸化物および/またはチタン酸化物皮膜を形成することができる。これは、キレート化合物が、ジルコニウムおよび/またはチタンよりも析出しやすい金属イオンを捕捉しているためであると考えられる。
【0037】
好ましいキレート化合物としては、アミノ酸、アミノカルボン酸、フェノール化合物、芳香族カルボン酸、スルホン酸、アスコルビン酸等を挙げることができ、これらをそれぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、従来からキレート剤として知られているクエン酸やグルコン酸等の水酸基を有するカルボン酸は、本発明ではその機能を充分に発現することができない。
【0038】
上記アミノ酸としては、各種天然アミノ酸および合成アミノ酸の他、1分子中に少なくとも1つのアミノ基および少なくとも1つの酸基(カルボキシル基やスルホン酸基等)を有するアミノ酸を広く利用することができる。このなかでも、アラニン、グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、ヒスチジン、フェニルアラニン、アスパラギン、アルギニン、グルタミン、システイン、ロイシン、リジン、プロリン、セリン、トリプトファン、バリン、および、チロシン、ならびに、これらの塩からなる群から選択される少なくとも一種を好ましく使用することができる。また、アミノ酸に光学異性体が存在する場合、L体、D体、ラセミ体を問わず、いずれも好適に使用することができる。
【0039】
上記アミノカルボン酸としては、上記アミノ酸以外で、1分子中にアミノ基とカルボキシル基との両方の官能基を有する化合物を広く利用できる。このなかでも、ジエチレントリアミン5酢酸(DTPA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン3酢酸(HEDTA)、トリエチレンテトラアミン6酢酸(TTHA)、1,3−プロパンジアミン4酢酸(PDTA)、1,3−ジアミノ−6−ヒドロキシプロパン4酢酸(DPTA−OH)、ヒドロキシエチルイミノ2酢酸(HIDA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、グリコールエーテルジアミン4酢酸(GEDTA)、ジカルボキシメチルグルタミン酸(CMGA)、(S,S)−エチレンジアミンジコハク酸(EDDS)、エチレンジアミン4酢酸(EDTA)、ニトリロ3酢酸(NTA)および、これらの塩からなる群から選択される少なくとも一種を好ましく使用することができる。
【0040】
上記フェノール化合物としては、2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物、これらを基本骨格とするフェノール系化合物を挙げることができる。前者の例として、カテコール、没食子酸、ピロガロール、タンニン酸等が挙げられる。一方、後者の例として、フラボン、イソフラボン、フラボノール、フラバノン、フラバノール、アントシアニジン、オーロン、カルコン、エピガロカテキンガレート、ガロカテキン、テアフラビン、ダイズイン、ゲニスチン、ルチン、ミリシトリン等のフラボノイド、タンニン、カテキン等を包含するポリフェノール系化合物、ポリビニルフェノールや水溶性レゾール、ノボラック樹脂等、リグニン等を挙げることができる。なかでも、タンニン、没食子酸、カテキンおよびピロガロールが特に好ましい。
【0041】
上記スルホン酸としては、メタスルホン酸、イセチオン酸、タウリン、ナフタレンジスルホン酸、アミノナフタレンジスルホン酸、スルホサリチル酸、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸等、および、これらの塩からなる群から選択される少なくとも一種を好ましく使用することができる。
【0042】
スルホン酸を用いると、化成処理後の被処理物の塗装性・耐食性が向上する。そのメカニズムは明らかではないが、次の2つの理由が考えられる。まず一つは、鋼板等の被処理物の表面にはシリカ偏析物などがあり表面組成が不均一であるため、化成処理においてエッチングされにくい部分があるが、スルホン酸を添加することによりそのようなエッチングされにくい部分を特にエッチングすることができ、その結果、被処理物表面に均一な金属酸化膜が形成されやすくなるものと推測される。すなわち、スルホン酸は、エッチング促進剤として作用するものと推測される。もう一つは、化成処理時においては化成反応により発生する水素ガスが、界面の反応を妨げている可能性があるところ、スルホン酸は復極作用として水素ガスを取り除き、反応を促進しているものと推測される。
【0043】
なかでもタウリンは、アミノ基とスルホン基の双方を備えている点で好ましい。
スルホン酸の含有量としては、0.1〜10000ppmが好ましく、1〜1000ppmがより好ましい。当該含有量が0.1ppm未満であると、効果が得られにくく、10000ppmを超えるとジルコニウムおよび/またはチタンの析出を阻害する可能性がある。
【0044】
キレート剤としてアスコルビン酸を用いると、化成処理によって被処理物表面にジルコニウム酸化物および/またはチタン酸化物、錫酸化物等の金属酸化膜が均一に形成されやすくなり、塗装性、耐食性がさらに向上しうる。そのメカニズムは明らかではないが、化成処理におけるエッチング作用が鋼板等の被処理物に対して均一に行われ、その結果、当該エッチングされた部分にジルコニウム酸化物および/またはチタン酸化物、ならびに錫酸化物が析出して全体として均一な金属酸化膜が形成されるものと推測される。また、錫が何らかの影響により金属界面において錫金属として析出し易くなる結果、当該錫金属の析出部位にジルコニウム酸化物および/またはチタン酸化物が析出し、全体として被処理物に対する表面被覆性が向上するものと推測される。
【0045】
処理液(2)中のアスコルビン酸の含有量は、5〜5000ppmが好ましく、20〜200ppmがより好ましい。当該含有量が5ppm未満であると、効果が得られにくく、5000ppmを超えるとジルコニウムおよび/またはチタンの析出を阻害する可能性がある。
【0046】
処理液(2)が以上のようなキレート剤を含む場合、その含有量は、ジルコニウムおよびチタン以外のカチオンの合計濃度に対して、0.5〜10倍の濃度であることが好ましい。0.5倍未満では、目的とする効果が得られず、10倍を超えると皮膜形成に悪影
響を及ぼすおそれがある。
【0047】
好ましい実施形態において、処理液(2)は、さらにアルミニウムイオンおよび/またはインジウムイオンを含有することができる。これらのカチオンは、上述した錫イオンと同様の機能を有している。上記アルミニウムイオンおよび/またはインジウムイオンの量は、ジルコニウムイオンおよび/またはチタンイオンの濃度に対して、たとえば、2〜1000%に相当する濃度とすることができる。
【0048】
アルミニウムイオンを供給する化合物としては、硝酸アルミニウム、フッ化アルミニウム等を好ましく使用できる。インジウムイオンを供給する化合物としては、硝酸インジウム、塩化インジウム等を好ましく使用できる。これらはそれぞれ単独で用いられる他、複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0049】
好ましい実施形態において、処理液(1)および処理液(2)の少なくとも一方は、銅イオンを含むことができる。少なくとも一方の処理液に銅イオンが含まれることによって、化成皮膜の防食性をさらに向上させることができる。その理由は明確ではないが、皮膜形成時に銅と、ジルコニウムおよび/またはチタンとの間に何らかの相互作用が働いているのではないかと考えられる。
【0050】
銅イオンの量は、処理液(1)の場合および錫イオンを含む処理液(2)の場合は、上記錫イオンの濃度に対して、10〜100%となる濃度であることが好ましい。10%未満では目的とする効果が得られないおそれがあり、錫イオンの濃度を超えると、錫イオンの場合と同様にジルコニウムおよび/またはチタンが析出しにくくなるおそれがある。錫イオンを含まない処理液(2)に含まれる銅イオン濃度は、上記同様の理由から、0.1ppm〜1000ppmが好ましく、1ppm〜200ppmがより好ましい。
銅イオンを供給する化合物としては、酢酸銅、硝酸銅、硫酸銅、塩化銅等を好ましく使用することができ、これらの複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0051】
処理液(1)および処理液(2)の少なくとも一方は、上記成分以外に、種々のカチオンを含有していてもよい。上記カチオンの例として、マグネシウム、亜鉛、カルシウム、ガリウム、鉄、マンガン、ニッケル、コバルト、銀などが挙げられる。これら以外にも、pH調整の目的で加えられる、塩基や酸から由来したり、上記成分のカウンターイオンとして含まれたりするカチオンやアニオンが存在する。
【0052】
処理液(1)および処理液(2)の少なくとも一方は、酸化剤を含んでいてもよい。酸化剤としては硝酸、亜硝酸、硫酸、亜硫酸、過硫酸、リン酸、カルボン酸基含有化合物、スルホン酸基含有化合物、塩酸、臭素酸、塩素酸、過酸化水素、HMnO、HVO、HWO、およびHMoO、ならびにこれらの酸素酸の塩類が挙げられる。これらの酸化剤は、単独で、あるいは複数種を組み合わせて配合することができる。なかでも、硝酸、亜硝酸、過酸化水素、臭素酸等およびこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。この酸化剤は、被処理物の表面に金属酸化膜を均一に形成させ、被処理物の塗装性、耐食性を向上させることができる。
【0053】
そのメカニズムは明らかではないが、酸化剤を所定量用いることにより、化成処理におけるエッチング作用が鋼板等の被処理物に対して均一に行われ、エッチングされた部分にジルコニウム酸化物および/またはチタン酸化物、ならびに錫酸化物が析出して全体として均一な金属酸化膜が形成されるものと推測される。また、所定量の酸化剤により、錫が金属界面において錫金属として析出し易くなり、錫金属の析出部位にジルコニウム酸化物および/またはチタン酸化物が析出し、全体として被処理物に対する表面被覆性が向上するものと推測される。
【0054】
このような作用を奏させるためには、各酸化剤の処理液(1)または(2)中の含有量は次のとおりである。すなわち、硝酸の含有量としては100〜100000ppmが好ましく、1000〜20000ppmがより好ましく、2000〜10000ppmがさらに好ましい。亜硝酸、臭素酸の含有量としては、それぞれ5〜5000ppmが好ましく、20〜200ppmがより好ましい。過酸化水素の含有量としては1〜1000ppmが好ましく、5〜100ppmがより好ましい。各含有量が下限値未満であると、上記効果が得られにくく、上限値を超えるとジルコニウムおよび/またはチタンの析出を阻害する可能性がある。
【0055】
処理液(1)および処理液(2)の少なくとも一方は、フッ素イオンを含むことが好ましい。フッ素イオンは、金属材料のエッチング剤としての役割の他、ジルコニウム及び/又はチタンの錯化剤としての役割を果たすものである。
フッ素イオンの濃度はpHによって変化するので、特定のpHにおけるフリーな(遊離状態にある)フッ素イオン量を規定することとする。たとえば、処理液のpHが3.0である場合のフリーなフッ素イオン量(遊離フッ素元素の含有量)は、適切なエッチング量の確保や処理液の安定性、皮膜の付着量等の観点から、0.1〜50ppmであることが好ましく、0.5〜10ppmであることがより好ましい。この遊離フッ素元素の含有量は、フッ素イオン電極を有するメーターで測定することにより求められる。
【0056】
フッ素イオンを供給する化合物としては、たとえば、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム、フッ化ホウ素酸、フッ化水素アンモニウム、フッ化ナトリウム、フッ化水素ナトリウム等のフッ化物を好ましく用いることができる。これらは単独で、または複数種を組み合わせて使用することができる。錯フッ化物を供給源とすることも可能であり、たとえば、ヘキサフルオロケイ酸塩、具体的にはケイフッ化水素酸、ケイフッ化水素酸亜鉛、ケイフッ化水素酸マンガン、ケイフッ化水素酸マグネシウム、ケイフッ化水素酸ニッケル、ケイフッ化水素酸鉄、ケイフッ化水素酸カルシウム等を挙げることができる。また、ジルコニウムイオンを供給する化合物として、錯フッ化物を用いてもよい。
【0057】
処理液(1)および(2)は、上記各成分そのもの、および/または、これを含有する化合物を水に投入して混合することで、それぞれ製造することができる。
処理液(1)のpHは、エッチング過多による錫の析出性の観点から1.0以上である。さらに、処理液(1)のpHは、エッチング不足による錫の析出性の観点から、5.5以下であることが好ましい。
【0058】
処理液(2)のpHは、1.5〜6.5であることが好ましく、2.0〜5.5であることがより好ましく、2.5〜5.0であることが一層好ましい。処理液(2)のpHは、処理液の安定性の観点から1.5以上であることが好ましく、また6.5を超えると、金属基材のエッチングが充分に行われないため皮膜量が少なくなり、充分な防食性を得ることができなくなる恐れがある。一方、処理液(2)のpHが1.5未満であると、エッチングが過剰となって充分な皮膜形成ができなくなる場合や、皮膜の付着量および膜厚が不均一となって、塗装外観等に悪影響を与えたりする恐れがある。
【0059】
各処理液のpHは、硝酸、硫酸等の酸性化合物、および、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の塩基性化合物を使用して、適宜調整することができる。
【0060】
上記処理液(1)および(2)により表面処理される金属材料としては、特に限定されるものではないが、たとえば、鉄系金属基材、アルミニウム系金属基材、亜鉛系金属基材、マグネシウム系金属基材等を挙げることができる。
ここで、鉄系金属基材とは鉄および/またはその合金からなる基材(金属材料)、アルミニウム系金属基材とはアルミニウムおよび/またはその合金からなる基材(金属材料)、亜鉛系金属基材とは亜鉛および/またはその合金からなる基材(金属材料)、マグネシウム系金属基材とはマグネシウムおよび/またはその合金からなる基材(金属材料)をそれぞれ意味する。
【0061】
鉄系金属基材としては、たとえば、冷延鋼板、熱延鋼板、軟鋼板、高張力鋼板等を挙げることができる。
アルミニウム系金属基材としては、たとえば、5000番系アルミニウム合金、6000番系アルミニウム合金、アルミニウム系の電気めっき、溶融めっき、蒸着めっき等のアルミニウムめっき鋼板等を挙げることができる。
亜鉛系金属基材としては、たとえば、亜鉛めっき鋼板、亜鉛−ニッケルめっき鋼板、亜鉛−チタンめっき鋼板、亜鉛−マグネシウムめっき鋼板、亜鉛−マンガンめっき鋼板等の亜鉛系の電気めっき、溶融めっき、蒸着めっき鋼板等の亜鉛または亜鉛系合金めっき鋼板等を挙げることができる。
マグネシウム系金属基材としては、たとえば、Mg−Al系合金AM100A、Mg−Al−Zn系合金A291D、Mg−Zn系合金ZK51A等が挙げられる。
【0062】
上記高張力鋼板としては、強度や製法により多種多様なグレードが存在し、たとえば、JSC400J、JSC440P、JSC440W、JSC590R、JSC590T、JSC590Y、JSC780T、JSC780Y、JSC980Y、JSC1180Y等を挙げることができる。
【0063】
さらに、上記金属材料として、鉄系、アルミニウム系、亜鉛系等の複数種類の金属の組み合わせ(異種金属同士の接合部および接触部を含む)からなる金属材料に対しても、同時に適用することができる。特に、自動車車体や自動車用部品等は、鉄、亜鉛、アルミニウム等の種々の金属材料により構成されているが、上記処理液(1)および(2)を用いることにより、つきまわり性の良好な化成皮膜を形成することができ、良好な耐食性を付与することができる。
【0064】
さらに、処理される金属材料の形状は、特に限定されないが、上記処理液(1)による表面処理の後に、処理液(2)による化成処理を行うことにより、複数の曲部や袋部を有する複雑形状の金属材料に対しても、つきまわり性の良好な化成皮膜を形成することができる。
【0065】
処理液(1)および(2)による金属材料の表面処理の仕方としては、処理液を金属材料に接触させることができる方法であれば、特に限定されない。具体的には、浸漬法、スプレー法、ロールコート法、流しかけ処理法等を挙げることができる。
あるいは、金属材料を陰極として電解処理することによっても、処理液(1)による表面処理、および処理液(2)による化成処理を行うことができる。この場合、陰極である金属材料界面で水素の還元反応が起こり、pHが上昇する。pHの上昇に伴い、陰極界面でのジルコニウムおよび/またはチタン元素を含む化合物の安定性が低下し、酸化物(または水を含む水酸化物)として化成皮膜が析出する。
【0066】
より詳細には、処理液(2)により金属材料の化成処理を行うと、金属材料を構成する金属の溶解反応が起こる。金属の溶解反応が起こると、ジルコニウムおよび/またはチタンのフッ化物を含む場合は、当該化成処理用組成物中に溶出した金属イオンがZrF2−および/またはTiF2−のフッ素を引き抜くことにより、また、界面のpHが上昇することにより、ジルコニウムおよび/またはチタンの酸化物が生成する。そして、このジルコニウムおよび/またはチタンの酸化物が金属材料の表面に析出する。
【0067】
表面処理における処理液(1)および(2)の温度は、20℃以上70℃以下の範囲内であることが好ましく、30℃以上50℃以下の範囲であることがより好ましい。20℃未満では、十分な皮膜形成が行われない可能性があり、一方、70℃を超えても、特にそれ以上の効果は得られない。
【0068】
表面処理時間は、2秒以上1100秒以下の範囲内であることが好ましく、30秒以上120秒以下の範囲であることがより好ましい。2秒未満では、十分な皮膜量が得られにくく、1100秒を超えても、それ以上の効果は得られにくいことがある。
【0069】
処理液(1)により処理された金属材料を、処理液(2)による処理の前に、いったん乾燥することもできる。
【0070】
金属材料は、表面処理に先立ち、脱脂処理により清浄化されることが好ましい。さらには、脱脂処理をした後、水洗処理が行われることが好ましい。これら脱脂処理や水洗処理は、金属材料の表面に付着している油分や汚れを除去するために行われるものであり、無リン・無窒素脱脂洗浄液等の脱脂剤により、通常30℃〜55℃において数分間程度の浸漬処理がなされる。所望により、脱脂処理の前に、予備脱脂処理を行うことも可能である。脱脂処理後の水洗処理は、脱脂剤を水洗するために、大量の水洗水によって少なくとも1回以上、スプレー処理により行われる。
【0071】
上述したように、処理液(1)が任意の界面活性剤を含有する場合は、金属材料をあらかじめ脱脂処理し、清浄化しておかなくても、良好な皮膜を形成させることができる。すなわち、この場合には、処理液(1)による表面処理(接触)工程において、金属材料の脱脂処理が同時に行われる。
【0072】
冷延鋼板、熱延鋼板、鋳鉄、焼結材等の鉄系金属材料の耐食性を高め、均一な表面処理皮膜を形成し、良好な密着性を得るためには、鉄系金属材料表面に形成される表面処理皮膜層は、金属元素換算で、ジルコニウムおよび/またはチタン元素を10mg/m以上含有し、ケイ素元素を0.5mg/m以上含有するのが好ましい。ジルコニウムおよび/またはチタン元素を20mg/m以上含有し、ケイ素元素を1mg/m以上含有する表面処理皮膜層を有することがより好ましく、ジルコニウムおよび/またはチタン元素を30mg/m以上含有し、ケイ素元素を1.5mg/m以上含有する表面処理皮膜層を有することがさらに好ましい。
【0073】
亜鉛または亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板等の亜鉛系金属材料に良好な耐食性を付与する目的で、均一な化成皮膜を形成して良好な密着性を得るためには、亜鉛系金属材料表面に形成される表面処理皮膜層の皮膜量は、ジルコニウムおよび/またはチタン元素を10mg/m以上含有し、ケイ素元素を0.5mg/m以上含有するのが好ましい。ジルコニウムおよび/またはチタン元素を20mg/m以上含有し、ケイ素元素を1mg/m以上含有する表面処理皮膜層を有することがより好ましく、さらには、ジルコニウムおよび/またはチタン元素を30mg/m以上含有し、ケイ素元素を1.5mg/m以上含有する表面処理皮膜層を有することがさらに好ましい。
【0074】
アルミニウム鋳物、アルミニウム合金板等のアルミニウム系金属材料に良好な耐食性を付与する目的で、均一な化成皮膜を形成して良好な密着性を得るためには、アルミニウム系金属材料表面に形成される表面処理皮膜層の皮膜量は、ジルコニウムおよび/またはチタン元素を5mg/m以上含有し、ケイ素元素を0.5mg/m以上含有するのが好ましい。ジルコニウムおよび/またはチタン元素を10mg/m以上含有し、ケイ素元素を1mg/m以上含有する表面処理皮膜層を有することがより好ましい。
【0075】
さらに、マグネシウム合金板、マグネシウム鋳物等のマグネシウム系金属材料に良好な耐食性を付与する目的で、均一な化成皮膜を形成して良好な密着性を得るためには、マグネシウム系金属材料表面に形成される表面処理皮膜層の皮膜量は、ジルコニウムおよび/またはチタン元素を5mg/m以上含有し、ケイ素元素を0.5mg/m以上含有するのが好ましい。ジルコニウムおよび/またはチタン元素を10mg/m以上含有し、ケイ素元素を1mg/m以上含有する表面処理皮膜層を有することがより好ましい。
【0076】
いずれの金属材料においても、表面処理皮膜層の皮膜量の上限は特にないが、皮膜量が多すぎると、表面処理皮膜層にクラックが発生し易くなり、良好な皮膜を得ることが困難となる。この点で、表面処理皮膜の皮膜量は、ジルコニウムおよび/またはチタンを金属元素換算で1g/m以下含むことが好ましく、800mg/m以下含むことがより好ましい。
【0077】
また、いずれの金属材料においても、表面処理皮膜のケイ素元素に対するジルコニウムおよび/またはチタン元素質量比は、耐食性、密着性を確保し、クラックのない均一な皮膜を形成する観点から0.5以上50以下であることが好ましい。
【0078】
さらに、得られた化成皮膜におけるジルコニウムおよび/またはチタンと錫との元素比率は1/10〜10/1であることが好ましい。
また、化成皮膜が、銅イオンを含む処理液を用いて形成された場合、皮膜中の銅の含有量は、目的とする効果を得るために、0.5mg/m以上であることが好ましい。
【0079】
表面被覆後に、さらに金属材料を、コバルト、ニッケル、スズ、銅、チタニウムおよびジルコニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する酸性水溶液と接触させてもよい。この酸接触工程を含むことにより、化成皮膜の耐食性をさらに高めることができる。
金属元素であるコバルト、ニッケル、スズ、銅、チタニウムおよびジルコニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の供給源は、特に限定されないが、入手が容易である、前記金属元素の酸化物、水酸化物、塩化物、硝酸塩、オキシ硝酸塩、硫酸塩、オキシ硫酸塩、炭酸塩、オキシ炭酸塩、リン酸塩、オキシリン酸塩、シュウ酸塩、オキシシュウ酸塩、有機金属化合物等を好適に用いることができる。
【0080】
上記金属元素を含有する酸性水溶液のpHは、2〜6であるのが好ましい。酸性水溶液のpHは、リン酸、硝酸、硫酸、フッ化水素酸、塩酸、有機酸等の酸や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アルカリ金属塩、アンモニア、アンモニウム塩、アミン類等のアルカリで調整することができる。
【0081】
あるいは、表面処理後の金属材料を、水溶性高分子化合物および水分散性高分子化合物のうち少なくとも一方を含有する高分子含有液と接触させてもよい。この高分子含有液接触工程を含むことにより、化成皮膜の耐食性をさらに高めることができる。
水溶性高分子化合物および水分散性高分子化合物としては、特に限定されないが、たとえば、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体、エチレンと(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルレート等のアクリル系単量体との共重合体、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体、ポリウレタン、アミノ変性フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、タンニン、タンニン酸およびその塩、フィチン酸が挙げられる。
【0082】
以上のようにして化成処理を施した表面被覆材料に、続いて塗装を行って、金属塗装物を製造することができる。
塗膜としては、その他にも、溶剤塗料、水性塗料、粉体塗料等の従来公知の塗料により形成される塗膜を挙げることができるが、電着塗装により形成することが好ましい。
【0083】
そこで、本発明に係る金属塗装物の製造方法は、上記表面処理金属材料の製造方法にしたがって製造された表面処理金属材料に、さらにカチオン電着塗装により塗膜を形成することを含むものである。
カチオン電着塗装は、被塗物である金属材料を陰極として電圧を印加することにより行われる。電圧の印加により、電着塗料中の塗膜形成成分(カチオン成分)が電気泳動により金属材料表面に移動し、塗膜を析出させる。析出した塗膜は絶縁性を有するので、塗膜の析出が進行すると塗膜の電気抵抗が大きくなって、塗膜析出箇所への更なる塗膜の析出は減少し、代わって未析出部位への塗膜の析出が始まる。こうして、金属材料全体への塗膜の形成が行われる。
【0084】
カチオン電着塗装を行う前に、化成皮膜が形成された金属材料を水洗して、金属材料表面に付着した処理液(2)を洗い流すことが好ましい。
化成処理後の水洗処理は複数回行うことができ、その場合の最終の水洗は、純水で実施されることが好ましい。この化成処理後の水洗処理においては、スプレー水洗または浸漬水洗のいずれであってもよく、これらの方法を組み合わせて水洗することもできる。
【0085】
化成処理後に水洗処理を実施した後には、必要に応じて、公知の方法に従って乾燥してもよいが、本発明の製造方法によれば、水洗処理後に乾燥処理を行わずに塗装することができる。つまり、ウェットオンウェット塗装方法を採用することができる。したがって、電着塗装前の金属材料、特に、電着塗装前の自動車車体、二輪車車体等の乗物外板、各種部品等の表面処理工程を短縮することができる。
【0086】
カチオン電着塗料は、特に限定されず、一般的によく知られたものが使用できる。具体的には、塗膜形成成分である樹脂と、電着された樹脂を硬化させる硬化剤とを含み、さらに必要に応じて任意に顔料、溶剤、添加剤を含むものを使用することができる。
樹脂は、プラス電荷を有し、陰極である被塗物へ泳動して析出するものであれば特に限定されないが、なかでも、変性エポキシ樹脂を使用することが好ましい。
【0087】
変性エポキシ樹脂とは、エポキシ樹脂のエポキシ基にアミンやスルフィド等を付加し、酢酸などの酸で中和することによりカチオン化した樹脂をいう。エポキシ樹脂とは、1分子中に少なくとも1つのエポキシ基を有する樹脂をいう。具体的には、アミノ化エポキシ樹脂、スルホニウム化エポキシ樹脂などが挙げられる。
変性エポキシ樹脂の硬化剤としては、ブロックイソシアネートを使用することが好ましい。
さらに、顔料として、防錆性を有する顔料を使用することが好ましく、たとえば任意の樹脂で分散した顔料分散ペーストとして添加することができる。
【0088】
電着塗装は、たとえば、50〜450Vの電圧を所定時間印加して行うことができる。電圧の印加時間は、電着条件により異なるが、一般には2〜4分である。
カチオン電着塗装工程終了後、そのまま、または水洗した後、所定温度で焼き付けることにより硬化塗膜が得られる。焼き付け条件は、用いたカチオン電着塗料の種類により異なるが、通常120〜260℃であり、140〜220℃であることが好ましい。焼き付け時間は10〜30分とすることができる。
【実施例】
【0089】
次に、本発明を実施例および比較例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量部を、「%」は質量%を表す。
【0090】
<金属材料>
市販の冷延鋼板(SPC、日本テストパネル(株)製、70mm×150mm×0.8mm)、および亜鉛メッキ鋼板(GA、日本テストパネル(株)製、70mm×150mm×0.8mm)を金属材料として用意した。この亜鉛メッキ鋼板は、後述する塗装電圧差の評価のために使用し、それ以外の評価は冷延鋼板に対して行われた。
金属材料には、前処理として、アルカリ脱脂処理剤「サーフクリーナーEC92」(日本ペイント(株)製)を使用して、40℃で2分間、金属材料の脱脂処理を行った。
脱脂処理後、水洗槽で浸漬洗浄した後、水道水で約30秒間スプレー洗浄を行った。
【0091】
<処理液(1)による表面処理>
表に示す各組成の処理液(1)を調整した。すなわち、錫イオン供給源である各錫化合物を所定錫濃度となるように脱イオン水に溶解し、硝酸と水酸化ナトリウムとを用いて所定のpHとなるように調整した。
得られた処理液(1)を40℃に加温し、その中に、上記脱脂処理後の金属基材を90秒間浸漬することにより、処理液(1)による表面処理を行った。
【0092】
実施例10および23では、上記アルカリ脱脂処理剤による前処理を行わない金属材料を用い、界面活性剤として第一工業製薬(株)製「ノイゲンXL−40」(ポリオキシアルキレンデシルエーテル)を添加した処理液(1)にこれを浸漬して、表面処理を行った。
表中、硫酸第二鉄および硝酸ナトリウムは防錆剤であり、グルコン酸ナトリウムおよびメタンスルホン酸はキレート剤である。また、硫酸第二鉄の濃度は、鉄イオン(Fe3+)濃度で示した。
【0093】
<処理液(2)による化成処理>
製造例1として、ジルコニウムイオン供給源として40%ジルコンフッ酸水溶液を用い、Zrイオン濃度が500ppmとなるように脱イオン水で希釈し、ここにγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(APS)を濃度200ppmとなるように添加した後、硝酸と水酸化ナトリウムとを用いてpH3.5となるように調整し、処理液(2)Iを製造した。
【0094】
製造例2として、ジルコニウムイオン供給源として40%ジルコンフッ酸水溶液を用い、Zrイオン濃度が500ppmとなるように脱イオン水で希釈し、ここに濃度200ppmとなる量のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(APS)、および、濃度30ppmとなる量の硫酸錫を添加した後、硝酸と水酸化ナトリウムとを用いてpH3.5となるように調整し、処理液(2)IIを製造した。
【0095】
製造例3として、ジルコニウムイオン供給源として40%ジルコンフッ酸水溶液を用い、Zrイオン濃度が500ppmとなるように脱イオン水で希釈し、ここにポリアリルアミン(日東紡株式会社製 PAA−10C)を濃度100ppmとなるように添加した後、硝酸と水酸化ナトリウムとを用いてpH3.5となるように調整し、処理液(2)IIIを製造した。
【0096】
製造例4として、ジルコニウムイオン供給源として40%ジルコンフッ酸水溶液を用い、アルミニウムイオン供給源として硝酸アルミニウムを混合し、Zrイオン濃度が500ppm、Alイオン濃度100ppmとなるように脱イオン水で希釈した後、硝酸と水酸化ナトリウムとを用いてpH3.5となるように調整し、処理液(2)IVを製造した。
【0097】
製造例5として、ジルコニウムイオン供給源として40%ジルコンフッ酸水溶液を用い、Mgイオン供給源として硝酸マグネシウムを用い、Zrイオン濃度が500ppm、Mgイオン濃度が500ppmとなるように脱イオン水で希釈し、ここにポリアリルアミン(日東紡株式会社製 PAA−10C)を濃度が100ppmとなるように添加した後、硝酸と水酸化ナトリウムとを用いてpH3.5となるように調整し、処理液(2)Vを製造した。
【0098】
上記処理液(1)による処理後の金属基材を、水洗した後、処理液(2)を40℃に加温し、その中に金属基材を90秒間浸漬することにより、処理液(2)による化成処理を行った。
【0099】
<皮膜中のSn元素含有量の測定>
処理液(1)により形成された皮膜中に含まれるSn元素の含有量(mg/m)は、島津製作所製蛍光X線分析装置「XRF1700」を用いて測定した。
【0100】
上記のようにして処理液(1)および(2)により処理した後、水道水、イオン交換水により水洗した金属材料(以下、「試験板」という。)に対し、以下の試験を行い、各性能を評価した
<一次防錆性能>
試験板を25℃の純水に5時間浸漬した後の錆の発生状態を目視観察で観察し、以下の基準に従って評価した。
A:錆の発生が全く認められない。
B:ごくわずかに錆の発生が認められる。
C:錆の発生がはっきりと確認できる。
【0101】
<つきまわり性>
つきまわり性は、「4枚ボックス法」により評価した。すなわち、図1に示すように、試験板1〜4を立てた状態で、間隔20mmで平行に配置し、両側面下部および底面を布粘着テープ等の絶縁体で密閉したボックス10を調整した。なお、金属材料4を除く金属材料1、2、3には下部に直径8mmの貫通穴5を設けた。
このボックス10を、カチオン電着塗料「パワーニクス110」(商品名、日本ペイント(株)製)で満たした電着塗装容器20内に浸漬した。この場合、各貫通穴5のみからカチオン電着塗料がボックス10の内部に浸入する。
【0102】
マグネチックスターラーでカチオン電着塗料を攪拌しながら、各試験板1〜4を電気的に接続し、試験板1との距離が150mmとなるように対極21を配置した。各試験板1〜4を陰極、対極21を陽極として電圧を印加し、カチオン電着塗装を行った。塗装は、印加開始から30秒かけて目的とする電圧(210Vおよび160V)まで昇圧し、その後150秒間、その電圧を維持することにより行った。このときの浴温は30℃に調製した。
【0103】
塗装後の各試験板1〜4を水洗し、170℃で25分間焼き付けを行った後、空冷し、対極21に最も近い試験板1のA面に形成された塗膜の膜厚と、対極21から最も遠い試験板4のG面に形成された塗膜の膜厚とを測定し、膜厚(G面)/膜厚(A面)の比を求めることにより、つきまわり性を評価した。この値が大きいほど、つきまわり性がよいと評価できる。合格レベルは40%以上である。
【0104】
<塗装電圧差>
試験板に対して、上記カチオン電着塗料「パワーニクス110」を用いて20μmの電着塗膜を得るために必要な電圧を求めた。金属基材が亜鉛メッキ鋼板の場合と冷延鋼板の場合とにおける、上記20μmの電着塗膜を得るために必要な塗装電圧の差を求めた。その差が小さいほど、化成処理皮膜として優れていることを示している。40V以下が合格である。
【0105】
20μmの電着塗膜を得るために必要な電圧は以下のようにして求めた。すなわち、電着条件として、30秒で所定電圧に昇圧し、その後、150秒保持し、得られた膜厚を測定する。これを150V、200V、250Vについて行い、得られた電圧と膜厚との関係式から、20μmの膜厚が得られる電圧を求める。
【0106】
<塗装外観>
試験板に上記「パワーニクス110」を用いたカチオン電着塗装を行い、得られた電着塗膜の外観を下記基準により評価した。
AA:均一な塗膜が得られた。
A:ほぼ均一な塗膜が得られた。
B:塗膜にややムラがある。
C:塗膜にムラが認められる。
【0107】
<二次密着試験(SDT)>
上記同様に、試験板に対して20μmの電着塗膜を形成した後に、金属素地まで達する縦平行のカットを2本入れ、55℃で240時間、5%塩化ナトリウム水溶液に浸漬した。次いで、水洗および風乾を行った後、カット部に密着テープ「エルパックLP−24」(商品名、ニチバン(株)製)を密着させてから、密着テープを急激に剥離した。剥離した密着テープに付着した塗料の最大幅(カット部からの幅)の大きさを測定した。
AA:0mm
A:2mm未満
B:2mm〜5mm未満
C:5mm以上
【0108】
<サイクル腐食試験(CCT)>
上記同様に、試験板に対して20μmの電着塗膜を形成した後に、エッジおよび裏面をテープシールし、金属素地まで達するクロスカット疵を入れた。これに、35℃、湿度95%に保たれた塩水噴霧試験器中で、35℃に保温した5%塩化ナトリウム水溶液を2時間連続噴霧した。次いで60℃、湿度20〜30%の条件下で4時間乾燥した。これを24時間の間に3回繰り返したものを1サイクルとし、200サイクルの後に塗膜の膨れ幅(カット部を中心とする膨れ幅)を測定した。
AA:6mm未満
A:6mm〜8mm未満
B:8mm〜10mm未満
C:10mm以上
【0109】
<塩水噴霧試験(SST)>
上記同様に、試験板に対して20μmの電着塗膜を形成した後に、エッジおよび裏面をテープシールし、金属素地まで達するクロスカット疵を入れた。これに、35℃、湿度95%に保たれた塩水噴霧試験器中で、35℃に保温した5%塩化ナトリウム水溶液を840時間連続噴霧した。次いで、水洗および風乾を行った後、カット部に密着テープ「エルパックLP−24」(商品名、ニチバン(株)製)を密着させてから、密着テープを急激に剥離した。剥離した密着テープに付着した塗料の最大幅(カット部からの幅)の大きさを測定した。
A:2mm未満
B:2mm〜5mm未満
C:5mm以上
評価結果を、表1および表2に示す。
【0110】
【表1】

【0111】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】つきまわり性を評価する際に用いるボックスの一例を示す斜視図である。
【図2】つきまわり性の評価を模式的に示す側断面図である。
【符号の説明】
【0113】
1、2、3、4…試験板、5…貫通穴、10…ボックス、20…電着塗装容器、21…
対極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
錫イオンを10〜10000ppm含有し、pHが1.0以上である処理液(1)により金属材料を表面処理すること、および
前記処理液(1)による前記表面処理後の金属材料を、さらにジルコニウムイオンおよび/またはチタンイオンを含有する処理液(2)により化成処理すること、
を含む表面処理金属材料の製造方法。
【請求項2】
前記処理液(1)のpHが1.0〜5.5である、請求項1記載の表面処理金属材料の製造方法。
【請求項3】
前記処理液(1)が、さらに界面活性剤および防錆剤のうちの少なくとも一方を含む、請求項1または2記載の表面処理金属材料の製造方法。
【請求項4】
前記処理液(2)が、さらにポリアミン化合物を含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の表面処理金属材料の製造方法。
【請求項5】
前記処理液(2)が、さらに錫イオンを含む、請求項1〜4のいずれか1項記載の表面処理金属材料の製造方法。
【請求項6】
前記処理液(2)に含まれるポリアミン化合物が、アミノ基含有オルガノシランを重縮合させてなるオルガノシロキサンである、請求項4または5記載の表面処理金属材料の製造方法。
【請求項7】
錫イオンを10〜10000ppm含有し、pHが1.0以上である処理液(1)により金属材料を表面処理すること、
前記処理液(1)による前記表面処理後の金属材料を、さらにジルコニウムイオンおよび/またはチタンイオンを含有する処理液(2)により化成処理すること、および
前記処理液(2)により化成処理された金属材料に、カチオン電着塗装により塗膜を形成すること、
を含む金属塗装物の製造方法。
【請求項8】
前記処理液(2)が、さらにポリアミン化合物を含む、請求項7記載の金属塗装物の製造方法。
【請求項9】
前記処理液(2)が、さらに錫イオンを含む、請求項7または8記載の金属塗装物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−97093(P2009−97093A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−248918(P2008−248918)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【Fターム(参考)】