説明

表面変性カーボンブラックとその分散体および製造方法

【課題】非極性溶媒または低極性溶媒中で優れた分散性能を有するとともに安定して大きな正帯電性を有する表面変性カーボンブラックと分散体、製造方法を提供すること。
【解決手段】粒子表面に正帯電制御材を付着および樹脂被覆したカーボンブラック粒子表面の反応性官能基と、両末端にイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物またはイソ構造の3末端にイソシアネート基を有するトリイソシアネート化合物の1つの末端イソシアネート基が結合し、未結合のジイソシアネート化合物の他端あるいはトリイソシアネート化合物の2つの他端イソシアネート基がヒドロキシル変性ポリマーのヒドロキシル基と結合した表面変性カーボンブラックとその分散体、および粒子表面に正帯電制御材を付着し、樹脂被覆したカーボンブラックを非反応性溶媒中でイソシアネート化合物、ヒドロキシル変性ポリマーと反応させるその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーンオイルなどの非極性溶媒あるいはイソ構造をもつ炭化水素溶媒やプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA )などの低極性溶媒に対する分散性に優れ、かつ安定した正帯電性を有し、電気的特性に優れた樹脂組成物や低電圧で駆動可能な電子装置に使用される表面変性カーボンブラックとその分散体および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンブラック粒子表面は一般的に親油性であって、水などの極性溶媒への分散は極めて小さい。そこで、粒子表面を化学修飾することでインクジェットプリンター用インキなどの用途を中心として水分散性の優れたカーボンブラックの研究、開発が近年盛んに行われている。
【0003】
また、非極性溶媒や低極性溶媒への分散性の改善、向上に対する要望も強く、例えば、インク、塗料などの組成物、カラーフィルター用ブラックマトリックス、ディスプレイデバイス、電子ペーパー用黒色顔料、複写機用トナーなどに好適に使用されるカーボンブラックの開発が望まれている。
【0004】
また、電子ペーパー用黒色顔料や複写機用トナーに使用する場合には印加する電圧に対してカーボンブラック粒子が泳動することや静電気の発生が必要なため、カーボンブラック粒子表面を正に帯電させることが必要となる。特に、電子ペーパー用途ではカーボンブラック粒子表面を主に正に帯電させることが必要であるとともに分散溶媒に対する分散性能に優れていることも必要である。
【0005】
そこで、特許文献1にはインキ、複写機用トナー、塗料、樹脂着色剤などに用いられる各種媒体中への分散性に優れたカーボンブラックグラフトポリマーとして、シリコーン成分を含有する重合体部分とカーボンブラック部分を含み、シリコーンオイル中に分散させたときの破壊電圧が0.5kV/mm以上であるカーボンブラックグラフトポリマーが提案されている。これは、カーボンブラックグラフトポリマーの重合体部分にシリコーン成分のポリマー鎖を含有させることにより、極性の低い溶媒中でも十分な分散性を付与しようとするものである。
【0006】
また、特許文献2にはセグメント(A)及びセグメント(A)と異なる鎖構造のセグメント(B)とからなり、セグメント(A)がカーボンブラック表面の官能基と反応性を有する基(1)を有する重合体を、カーボンブラック表面の官能基との反応により得られるカーボンブラックグラフトポリマーであって、セグメント(A)、(B)が目的媒体のマトリックスと反応性を有する基(2)を有する反応性カーボンブラックグラフトポリマーが提案されている。
【0007】
また、特許文献3〜5にはカーボンブラックと帯電制御材がコアセルベーション法により樹脂被覆された泳動粒子が提案されている。これは顔料と帯電制御材を樹脂中に混在させることにより、泳動粒子に帯電性を付与し、電位の変化に対して応答性高く泳動することができるとするものである。
【特許文献1】特開平8−337624号公報
【特許文献2】特開平9−272706号公報
【特許文献3】特開2003−255404号公報
【特許文献4】特開2004−004469号公報
【特許文献5】特開2004−279732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のグラフトポリマーではエポキシ基をポリマーとの反応性基として用いることから、ポリマーを結合するためにエポキシ基の三員環を開環する金属系やアミン系の触媒が使用されるので、分散体中にこれらのイオン化可能な触媒が残留してカーボンブラック粒子の電気泳動を妨げるという問題がある。
【0009】
また、粒子表面に帯電性を付与したカーボンブラックは、電子ペーパー用や複写機用として有効であるが、特許文献3〜5はコアセルベーション法により樹脂被覆したものであり、帯電制御したカーボンブラック粒子を反応性ポリマーと化学結合した分散性に優れた泳動粒子は具体的には開示されていない。
【0010】
そこで、本発明者らは非極性溶媒や低極性溶媒中で良好な分散性を示すカーボンブラックの表面改質について鋭意研究を行った結果、カーボンブラック粒子表面を正に帯電させて粒子表面を電気的に有効機能させ、その表面に反応性ポリマーを結合させることにより分散性や耐久性に優れ、例えば電子ペーパー用黒色顔料や複写機用トナーなどに好適に使用し得ることを確認した。
【0011】
例えば、カーボンブラック粒子表面に正帯電制御材を付着させることにより正に帯電させることができる。しかし、正帯電制御材が強固に付着していないと、機械的外力が掛かったり経時的変化によって正帯電制御材が剥離することがある。そして、例えば電子ペーパー用黒色顔料として使用する場合には剥離した正帯電制御材は誘電損失の増大を引き起こすという問題が生じる。
【0012】
そこで、本発明者は、更に研究を進めた結果、カーボンブラック粒子表面に正帯電制御材を物理的に付着させた後、樹脂被膜を薄く被着すると上記の問題が解決できることを見出した。
【0013】
すなわち、本発明は上記の知見に基づいて完成したもので、その目的はカーボンブラック粒子表面に正帯電制御材が安定、強固に付着され、非極性溶媒や低極性溶媒中で優れた分散性能を有するとともに大きな正帯電性を示し、例えば電子ペーパー用カーボンブラック顔料や複写機用トナーをはじめ、電気的特性に優れた樹脂組成物や低電圧で駆動可能な各種電子装置に好適に使用される表面変性カーボンブラックとその分散体および製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するための本発明による表面変性カーボンブラックは、粒子表面に正帯電制御材を付着および樹脂被覆したカーボンブラック粒子表面の反応性官能基と、両末端にイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物またはイソ構造の3末端にイソシアネート基を有するトリイソシアネート化合物の1つの末端イソシアネート基が結合し、未結合のジイソシアネート化合物の他端あるいはトリイソシアネート化合物の2つの他端イソシアネート基がヒドロキシル変性ポリマーのヒドロキシル基と結合したことを構成上の特徴とする。
【0015】
また、本発明の表面変性カーボンブラック分散体は、上記の表面変性カーボンブラックが1〜20重量%の濃度で非極性溶媒または低極性溶媒に分散したことを特徴とする。
【0016】
この表面変性カーボンブラックを製造する本発明の請求項3に係る第1の製造方法は、カーボンブラックを正帯電制御材とともに精製水に混合し、混練、乾燥、粉砕してカーボンブラック粒子表面に正帯電制御材を付着させた後、熱硬化性樹脂液と混練し、乾燥、粉砕して樹脂被覆し、次いで、非反応性溶媒に該カーボンブラックと両末端にイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物またはイソ構造の3末端にイソシアネート基を有するトリイソシアネート化合物を混合して、カーボンブラック粒子表面の反応性官能基と、ジイソシアネート化合物の末端イソシアネート基またはトリイソシアネート化合物の1つの末端イソシアネート基と結合させ、その後ヒドロキシル変性ポリマーを加えて混合し、シアネート化合物の未結合のイソシアネート基とヒドロキシル基とをウレタン結合させることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の請求項4に係る第2の製造方法は、カーボンブラックを正帯電制御材とともに精製水に混合し、混練、乾燥、粉砕してカーボンブラック粒子表面に正帯電制御材を付着させた後、熱硬化性樹脂液と混練し、乾燥、粉砕して樹脂被覆し、次いで、非反応性溶媒に該カーボンブラックと両末端にイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物またはイソ構造の3末端にイソシアネート基を有するトリイソシアネート化合物およびヒドロキシル変性ポリマーを加えて混合し、カーボンブラック粒子表面の反応性官能基と、ジイソシアネート化合物の末端イソシアネート基またはトリイソシアネート化合物の1つの末端イソシアネート基と結合させ、同時にシアネート化合物の未結合のイソシアネート基とヒドロキシル基とをウレタン結合させることを特徴とする。
【0018】
更に、本発明の請求項5に係る第3の製造方法は、カーボンブラックを正帯電制御材および熱硬化性樹脂とともに精製水に混合し、混練、乾燥、粉砕してカーボンブラック粒子表面に正帯電制御材の付着と樹脂被覆を同時に行って、次いで、非反応性溶媒に該カーボンブラックと両末端にイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物またはイソ構造の3末端にイソシアネート基を有するトリイソシアネート化合物を混合して、カーボンブラック粒子表面の反応性官能基と、ジイソシアネート化合物の末端イソシアネート基またはトリイソシアネート化合物の1つの末端イソシアネート基と結合させ、その後ヒドロキシル変性ポリマーを加えて混合し、シアネート化合物の未結合のイソシアネート基とヒドロキシル基とをウレタン結合させることを特徴とする。
【0019】
そして、本発明の請求項6に係る第4の製造方法は、カーボンブラックを正帯電制御材および熱硬化性樹脂とともに精製水に混合し、混練、乾燥、粉砕してカーボンブラック粒子表面に正帯電制御材の付着と樹脂被覆を同時に行って、次いで、非反応性溶媒に該カーボンブラックと両末端にイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物またはイソ構造の3末端にイソシアネート基を有するトリイソシアネート化合物およびヒドロキシル変性ポリマーを加えて混合し、カーボンブラック粒子表面の反応性官能基と、ジイソシアネート化合物の末端イソシアネート基またはトリイソシアネート化合物の1つの末端イソシアネート基と結合させ、同時にシアネート化合物の未結合のイソシアネート基とヒドロキシル基とをウレタン結合させることを特徴とする。
【0020】
なお、上記の各発明において、カーボンブラック粒子表面の反応性官能基は、ヒドロキシル基又は/及びカルボキシル基の官能基量が0.14μeq/m以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、カーボンブラック粒子表面に正帯電制御材が強固、安定に付着し、非極性溶媒または低極性溶媒中で優れた分散性能を有し、電気的特性に優れた樹脂組成物や低電圧で駆動可能な各種電子装置に好適に使用することができ、例えば、電子ペーパー用カーボンブラック顔料や複写機用トナーをはじめ、インク、塗料などの組成物、カラーフィルター用ブラックマトリックス、ディスプレイデバイスなどとして極めて有用な表面変性カーボンブラックとその分散体およびその製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明で用いるカーボンブラックの種類には特に制限はなく、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャンネルブラックなどいずれも使用することができるが、好ましくは電子顕微鏡観察により測定される一次粒子径が0.01〜0.3μm、より好ましくは、0.01〜0.07μmのカーボンブラックが用いられる。一次粒子径が0.01μm未満のカーボンブラックでは粒子間に作用する凝集力が大きく凝集し易くなり、逆に0.3μmを越える場合には表面変性した状態での自重が大きくなり、溶媒中で沈降し易くなるからである。
【0023】
本発明の表面変性カーボンブラックは、粒子表面に正帯電制御材が付着され、更に樹脂被覆したカーボンブラック粒子の反応性官能基と、両末端にイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物、またはイソ構造の3末端にイソシアネート基を有するトリイソシアネート化合物の、1つの末端イソシアネート基が結合し、未結合のジイソシアネート化合物の他端あるいはトリイソシアネート化合物の2つの他端イソシアネート基がヒドロキシル変性ポリマーのヒドロキシル基と結合したものである。
【0024】
カーボンブラック粒子表面を正に帯電させる正帯電制御材は、負の対イオンを伴ったものであれば特に制限なく使用でき、対イオンは塩化物イオン、臭化物イオンなどのハロゲンイオン、有機物構造の陰イオンでもよく、その一般的な構造式を化1に示した。
【0025】
【化1】

【0026】
化1において、R、R、R、Rは炭素原子数約10個以下の芳香族または脂肪族炭化水素、Xは陰イオンを表す。
【0027】
この正帯電制御材としては、ニグロシン染料系物質や4級アンモニウム塩などが例示され、正帯電制御材は分子内あるいは対イオンとの組み合わせで電気的に大きく分極し、静電的作用でイオン結合するものと考えられ、応力を掛けて接触させることによりカーボンブラック粒子表面に付着させることができる。
【0028】
具体的には、ニグロシン染料系物質としてはニグロシンベース、ニグロシンベースを樹脂酸変性した混合物、ニグロシンベースをステアリン酸変性した混合物などが、また、4級アンモニウム塩としてはトリブチルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフタレンスルホン酸塩、トリブチルベンジルアンモニウム−2−ヒドロキシ−8−ナフタレンスルホン酸塩、トリエチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフタレンスルホン酸塩、トリプロピルベンジルアンモニウム−2−ヒドロキシ−6−ナフタレンスルホン酸塩、トリヘキシルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフタレンスルホン酸塩、テトラブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフタレンスルホン酸塩、テトラオクチルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフタレンスルホン酸塩などが例示される。その他、トリフェニルメタン系化合物およびそのレーキ顔料、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体、有機錫オキサイド、アミノ基を有するポリマーなどの電子供与性物質を単独あるいは2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0029】
正帯電制御材の付着量はカーボンブラックに対して0.5〜40wt%であることが好ましく、更に好ましくは1〜30wt%である。正帯電制御材の付着量が0.5wt%未満では帯電性が弱く、40wt%を超えるとカーボンブラック粒子に付着されずに存在する正帯電制御材がカーボンブラックの凝集を促す可能性があり、分散体中においてカーボンブラック粒子の沈殿が起こり易くなる。
【0030】
正帯電制御材は、カーボンブラック粒子表面にイオン結合によって付着しているとはいえ、その付着力は大きくないため、機械的外力が掛かったり、経時的変化によりカーボンブラック粒子表面から剥離することがある。そこで、正帯電制御材の剥離を防ぐために樹脂が被覆される。被覆する樹脂としてはフェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂などの熱硬化性樹脂が例示される。
【0031】
本発明の表面変性カーボンブラックは、その粒子表面に正帯電制御材を付着し、樹脂被覆したカーボンブラック粒子表面の反応性官能基と、両末端にイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物またはイソ構造の3末端にイソシアネート基を有するトリイソシアネート化合物の1つの末端イソシアネート基が結合し、未結合のジイソシアネート化合物の他端あるいはトリイソシアネート化合物の2つの他端イソシアネート基がヒドロキシル変性ポリマーのヒドロキシル基と結合したものである。
【0032】
カーボンブラックの粒子表面には、その生成プロセスあるいは酸化などの後処理により種々の表面官能基が存在し、これらの反応性官能基としてはヒドロキシル基、カルボキシル基、キノン基、アミノ基、スルホン基、エポキシ基などがあり、これらの反応性官能基量は、例えば下記の方法により後処理的に調整することができる。
【0033】
(1)ヒドロキシル基、カルボキシル基、キノン基;空気、オゾン、酸素、NOx 、SOx などの酸化性ガス雰囲気に曝す方法、低温酸素プラズマ処理する方法、過酸化水素水、ペルオキソ2酸あるいはその塩類、次亜ハロゲン酸塩、重クロム酸塩、過マンガン酸塩、硝酸などの酸化剤水溶液中で撹拌する方法、など気相酸化や液相酸化で処理する方法。
(2)アミノ基;硝酸/硫酸混合液で酸化、ニトロ化し、ホルムアルデヒドなどで還元する方法。
(3)スルホン基;濃硫酸でスルホン化する方法。
(4)エポキシ基;ヒドロキシル基、カルボキシル基にエポキシ基を有するハロゲン化物を反応させる方法。
【0034】
これらの反応性官能基のうち、イソシアネート基と化学結合する官能基としてはヒドロキシル基およびカルボキシル基の酸性官能基が有効に機能する。そのため、カーボンブラックの反応性官能基としてはヒドロキシル基やカルボキシル基が好ましく、その量はイソシアネート基と均一に結合するためにはヒドロキシル基、カルボキシル基、あるいは両官能基の和が0.14μeq/m以上であることが好ましい。
【0035】
本発明の表面変性カーボンブラックとして、正帯電制御材の付着および樹脂被覆したカーボンブラック粒子表面の反応性官能基としてヒドロキシル基に、イソシアネート化合物として、3末端にイソシアネート基を有するイソ構造のトリイソシアネート化合物であるトリイソシアネートヘキサメチレンイソシアヌレート(三井武田ケミカル社製D−177N)を使用し、その1つの末端イソシアネート基を結合させ、未結合の2つの末端イソシアネート基がヒドロキシル変性ポリマーとしてプロペン1、2−ジオールポリ(2−エチルヘキシルカルボニルエテン)スルフィド(綜合化学社製UT−1001)と結合した場合を化2として例示した。
【0036】
【化2】

【0037】
化2から分かるように、イソシアネート化合物はカーボンブラックとヒドロキシル変性ポリマーとを結合させる中間物質として機能している。
【0038】
本発明の表面変性カーボンブラック分散体は、正帯電制御材を付着および樹脂被覆したカーボンブラック粒子を、非極性溶媒中や低極性溶媒中で、イソシアネート化合物及びヒドロキシル変性ポリマーを結合することで濃度1〜20重量%のものを得るか、もしくは表面変性カーボンブラックを超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、プロセスホモジナイザーなどの分散装置を用いて非極性溶媒や低極性溶媒に表面変性カーボンブラック濃度1〜20重量%に分散させたものである。
【0039】
この場合、溶媒中に分散させる表面変性カーボンブラックはカーボンブラック粒子表面にポリマーが結合しているため、一旦乾燥するとポリマー鎖同士がカーボンブラック粒子表面近傍で絡まり、溶媒中に再分散させることが困難となる場合があるので、目的とする溶媒中に分散させた分散体として得ることが望ましい場合がある。但し、一度乾燥しても高圧ホモジナイザーや超音波式ホモジナイザーなどの均質機で機械的に分散処理することで、再分散させることは可能である。
【0040】
この表面変性カーボンブラックを製造する本発明の請求項3に係る第1の製造方法は、カーボンブラックを正帯電制御材とともに精製水に混合し、混練、乾燥、粉砕してカーボンブラック粒子表面に正帯電制御材を付着させた後、熱硬化性樹脂液と混練し、乾燥、粉砕して樹脂被覆し、次いで、非反応性溶媒に該カーボンブラックと両末端にイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物またはイソ構造の3末端にイソシアネート基を有するトリイソシアネート化合物を混合して、カーボンブラック粒子表面の反応性官能基と、ジイソシアネート化合物の末端イソシアネート基またはトリイソシアネート化合物の1つの末端イソシアネート基と結合させ、その後ヒドロキシル変性ポリマーを加えて混合し、シアネート化合物の未結合のイソシアネート基とヒドロキシル基とをウレタン結合させることを特徴とする。
【0041】
この第1の製造方法は、カーボンブラック粒子表面にまず正帯電制御材を付着した後、樹脂被覆するものであり、正帯電制御材を付着させる方法は、カーボンブラックを精製水に分散させ、次いで正帯電制御材を添加して混合、混練してスラリー化する。混練は三本ロールミル、二本ロールミル、ボールミル、ビーズミル、ラボプラストミルなどを用いて機械的に強力に混練することが好ましい。混練したスラリーは110℃程度の温度で水分が除去されるまで乾燥した後、粉砕し、更に必要により大粒を除去するために分級して粒度調整する。このようにして、正帯電制御材をカーボンブラック粒子表面に付着させることができる。
【0042】
正帯電制御材を付着させたカーボンブラックは熱硬化性樹脂と混合され、混練、乾燥、粉砕することにより樹脂被覆して正帯電制御材がカーボンブラック粒子表面に固定化される。被覆する熱硬化性樹脂としてはフェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂などが例示される。この中でも、カーボンブラック粒子表面の反応性官能基が全て被覆された場合でも、フェノール樹脂骨格中のヒドロキシル基を用いてイソシアネート化合物及びヒドロキシル変性ポリマーを結合させることが可能となるため、フェノール樹脂を用いることが好ましい。また、カーボンブラック粒子表面に樹脂を均一にコートして樹脂被覆するためには水溶性の熱硬化性樹脂、例えば水溶性フェノール樹脂が好適に使用される。
【0043】
水溶性フェノール樹脂としては特に制限はなく、ノボラック型でもレゾール型でも使用可能であり、カーボンブラックに対して0.5〜40重量%で使用することが好ましい。樹脂量が0.5重量%未満ではカーボンブラック粒子表面に均一に被覆することが困難であり、一方、40重量%を超えると樹脂被覆層が厚くなって、カーボンブラック粒子表面の反応性官能基が全て被覆されてしまうからである。更に、樹脂硬化物が多くなるので固くなって、乾燥後の粉砕が困難となる。
【0044】
正帯電制御材を付着した後、樹脂被覆したカーボンブラックは非反応性溶媒中でジイソシアネート化合物またはトリイソシアネート化合物と反応させて、ジイソシアネート化合物の末端あるいはトリイソシアネート化合物の1つの末端イソシアネート基とカーボンブラック粒子表面の反応性官能基とをウレタン結合させ、次いで、未反応のイソシアネート基をヒドロキシル変性ポリマーのヒドロキシル基とウレタン結合させる。
【0045】
カーボンブラック粒子表面の反応性官能基としてはヒドロキシル基やカルボキシル基などの水素含有官能基が好ましく、例えばヒドロキシル基、カルボキシル基、または両官能基の和が0.14μeq/m以上となるように適宜酸化処理などを施して、これらの官能基量を調整しておくことが好ましい。
【0046】
なお、これらの官能基量は下記の方法により測定される。
(1)カーボンブラック窒素吸着比表面積(N2SA ;m/g);
ASTM D3037−88 Method B
(2)ヒドロキシル基量;
2、2′-Diphenyl-1-picrylhydrazyl(DPPH)を四塩化炭素中に溶解して濃度5×10−4mol/lの溶液を作製し、該溶液にカーボンブラックを0.1〜0.6g添加し、60℃の恒温槽中で6時間攪拌する。その後、反応液からカーボンブラックを濾別し、濾液を紫外線吸光光度計によりヒドロキシル基を測定する。このようにして測定した値をカーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA ; m/g)で除した値を、カーボンブラックの単位表面積当たりに形成されたヒドロキシル基量(μeq/m)とする。
(3)カルボキシル基量;
0.976N炭酸水素ナトリウム50ml中にカーボンブラック2〜5gを添加して6時間振盪した後、カーボンブラックを反応液から濾別し、濾液に0.05N塩酸水溶液を加えたのち、pHが7.0になるまで0.05N水酸化ナトリウム水溶液にて中和滴定試験を行ってカルボキシル基を測定する。この測定値をカーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA ; m/g)で除した値を、カーボンブラックの単位表面積当たりに形成されたカルボキシル基量(μeq/m)とする。
【0047】
このようにして正帯電制御材を付着および樹脂被覆したカーボンブラックは、エステルやケトンなどの非反応性の溶媒中で両末端にイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物またはイソ構造の3末端にイソシアネート基を有するトリイソシアネート化合物を加えて撹拌脱泡機で撹拌混合し、更にボールミルなどのメディアミルを用いて十分に混合分散させることにより、カーボンブラック粒子表面の反応性官能基とイソシアネート基とを反応させてウレタン結合させる。
【0048】
両末端にイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物としては、構造両末端にイソシアネート基を有するものであれば特に制限はなく、メタンジフェニルジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサンジイソシアネート(HDI)などが例示できる。なお、これらのジイソシアネート化合物の中で反応性が高いMDIが好適であるが、反応溶媒によって使い分けることが好ましい。
【0049】
また、3末端にイソシアネート基を有するイソ構造のトリイソシアネート化合物としては、イソシアヌレート構造、ビウレット構造、アダクト構造など、3末端全てにイソシアネート基を有するものであれば特に制限なく使用でき、例えばトリイソシアネートヘキサメチレンイソシアヌレート(三井武田ケミカル社製D−177N)が例示できる。
【0050】
この反応を、正帯電制御材を付着し、樹脂被覆したカーボンブラック粒子表面の反応性官能基としてヒドロキシル基に、3末端全てにイソシアネート基を有するトリイソシアネート化合物としてイソシアヌレート構造をもつヘキサンイソシアネート化合物を反応させて、トリイソシアネート化合物の1つの末端イソシアネート基がヒドロキシル基とウレタン結合した場合の反応式を化3として例示した。
【0051】
【化3】

【0052】
このように、カーボンブラック粒子表面の反応性官能基とイソシアネート基とをウレタン結合させた後、ヒドロキシル変性ポリマーを加えて撹拌脱泡機で撹拌脱泡し、溶媒を加えて、三本ロールミル、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、プロセスホモジナイザー、ボールミル、ビーズミルなどの分散装置を用いて分散混合させ、20〜100℃の温度で適宜時間熱処理する。ボールミルを用いる場合には、回転スピードにも拠るが、概ね10分〜6時間攪拌する。好ましくは、30分から4時間処理することが好適である。6時間以上の攪拌では、カーボンブラックの凝集が起きるので分散体とする場合には不都合である。
【0053】
なお、反応温度としては20〜100℃に保持して行なう。20℃を下まわる場合には反応の進行が極端に遅くなり、100℃を越える場合にはカーボンブラックの凝集が起こり易くなる。このようにして、ジイソシアネート化合物あるいはトリイソシアネート化合物のイソシアネート基とカーボンブラック粒子表面の反応性官能基とウレタン結合させるとともに、他端のイソシアネート基とヒドロキシル変性ポリマーのヒドロキシル基とをウレタン結合させることにより製造される。
【0054】
この際、付加反応促進触媒や脱水縮合剤を少量添加するとウレタン反応が進行し易くなるので好適である。付加反応促進触媒としてはジブチルチンジラウレートなどが、脱水縮合剤としては特に制限はなく使用でき、濃硫酸、N,N-ジシクロヘキシルカルボジイミドなどが挙げられる。
【0055】
ヒドロキシル変性ポリマーの変性部位は側鎖でも末端でも、あるいはその両方であっても使用できるが、好ましくは反応性の高い片末端変性のものを使用するが好ましい。ヒドロキシル変性ポリマーの骨格は目的とする分散媒の構造に近いものが好ましく、例えば、シリコーンオイルに分散させる場合にはジメチルポリシロキサン骨格をもつポリマーが好ましく、イソパラフィン系炭化水素溶媒やプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA )などの炭化水素溶媒に分散させる場合にはアクリルエステル骨格をもつポリマーが好ましい。但し、これらのポリマーに制限されるものではなく、それぞれの目的とする分散溶媒に溶解し、かつ反応性官能基であるヒドロキシル基を有しているものであれば適用することができる。
【0056】
なお、本発明の表面改質カーボンブラックは、カーボンブラック粒子表面にウレタン結合により結合したヒドロキシル変性ポリマーのポリマー鎖により非極性溶媒や低極性溶媒中に立体障害を伴って分散することから、ポリマーの分子量は500〜30000であることが好ましい。分子量が500未満ではポリマー鎖による立体障害が小さく、分散性が低下し、一方分子量が30000を越えるとカーボンブラックの自重により分散体において沈降し易く、さらに粘度が増大することになる。
【0057】
このようにして本発明の表面改質カーボンブラックを製造することができるが、この反応を、正帯電制御材を付着させたカーボンブラックの反応性官能基としてヒドロキシル基に、3末端にイソシアネート基を有するイソ構造のトリイソシアネート化合物としてトリイソシアネートヘキサメチレンイソシアヌレート(三井武田ケミカル社製D−177N)を反応させてその1つの末端イソシアネート基を結合させ、ヒドロキシル変性ポリマーとしてプロペン1、2−ジオールポリ(2−エチルヘキシルカルボニルエテン)スルフィド(綜合化学社製UT−1001)のヒドロキシル基と未結合の2つの末端イソシアネート基をウレタン結合させた場合の反応式を化4として例示した。
【0058】
【化4】

【0059】
次に、本発明の表面変性カーボンブラックを製造する、請求項4に係る第2の製造方法の発明は、上記第1の製造方法と同じ方法によりカーボンブラック粒子表面に正帯電制御材の付着および樹脂被覆を行い、次いで、非反応性溶媒に該カーボンブラックと両末端にイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物またはイソ構造の3末端にイソシアネート基を有するトリイソシアネート化合物およびヒドロキシル変性ポリマーを加えて混合し、カーボンブラック粒子表面の反応性官能基と、ジイソシアネート化合物の末端イソシアネート基またはトリイソシアネート化合物の1つの末端イソシアネート基と結合させ、同時にシアネート化合物の未結合のイソシアネート基とヒドロキシル基とを反応させてウレタン結合させることを特徴とする。
【0060】
請求項4に係る発明は、第1の製造方法において、カーボンブラック粒子表面の反応性官能基と、両末端にイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物またはイソ構造の3末端にイソシアネート基を有するトリイソシアネート化合物、およびヒドロキシル変性ポリマーを加えて混合し、カーボンブラック粒子表面の反応性官能基と1つの末端イソシアネート基との反応、および、未結合のイソシアネート基とヒドロキシル変性ポリマーのヒドロキシル基との反応、を同時に行ってウレタン結合させるものである。
【0061】
すなわち、第2の製造方法は、例示した化3の反応と化4の反応とを同時に行って、化2に例示した表面変性カーボンブラックを製造するものである。
【0062】
また、本発明の表面変性カーボンブラックを製造する、請求項5に係る第3の製造方法の発明は、カーボンブラックを正帯電制御材および熱硬化性樹脂とともに精製水に混合し、混練、乾燥、粉砕してカーボンブラック粒子表面に正帯電制御材の付着と樹脂被覆を同時に行って、次いで、第1の製造方法と同じ方法により、非反応性溶媒に該カーボンブラックと両末端にイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物またはイソ構造の3末端にイソシアネート基を有するトリイソシアネート化合物を混合して、カーボンブラック粒子表面の反応性官能基と、ジイソシアネート化合物の末端イソシアネート基またはトリイソシアネート化合物の1つの末端イソシアネート基とを結合させ、その後ヒドロキシル変性ポリマーを加えて混合し、シアネート化合物の未結合のイソシアネート基とヒドロキシル基とをウレタン結合させるものである。
【0063】
すなわち、この第3の製造方法の発明は、カーボンブラック粒子表面に正帯電制御材を付着した後、樹脂被覆する第1の製造方法に対して、カーボンブラック粒子表面への正帯電制御材の付着と樹脂被覆とを同時に行う点を特徴とする。
【0064】
次に、本発明の表面変性カーボンブラックを製造する、請求項6に係る第4の製造方法の発明は、上記の第3の製造方法と同じ方法により、カーボンブラックを正帯電制御材および熱硬化性樹脂とともに精製水に混合し、混練、乾燥、粉砕してカーボンブラック粒子表面に正帯電制御材の付着と樹脂被覆を同時に行い、次いで、第2の製造方法と同じ方法により、非反応性溶媒に該カーボンブラックと両末端にイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物またはイソ構造の3末端にイソシアネート基を有するトリイソシアネート化合物およびヒドロキシル変性ポリマーを加えて混合し、カーボンブラック粒子表面の反応性官能基と、ジイソシアネート化合物の末端イソシアネート基またはトリイソシアネート化合物の1つの末端イソシアネート基と結合させ、同時にシアネート化合物の未結合のイソシアネート基とヒドロキシル基とを反応させてウレタン結合させることを特徴とする。
【実施例】
【0065】
以下、本発明の実施例を比較例と対比して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により制約されるものではない。
【0066】
実施例1
東海カーボン(株)製TB#7550F(比表面積135m/g)をオゾンにより気相酸化して、反応性官能基としてヒドロキシル基1.03μeq/m、カルボキシル基3.22μeq/mのカーボンブラックを試料とした。
【0067】
この酸化カーボンブラックを精製水で湿潤し、次いで正帯電制御材としてジメチルアミノエチルメタクリレート4級化物(共栄社化学製、ライトエステルDQ−100)をカーボンブラックに対して10wt%になるように加えて溶解した。このスラリーを三本ロールミル(井上製作所製、SR−4、3/4×11)で30分間混練し、110℃で乾燥して水分を除去後、粉砕、分級して正帯電制御材を付着させたカーボンブラックを得た。
【0068】
この正帯電制御材を付着させたカーボンブラックを再度精製水で湿潤し、次いで水溶性フェノール樹脂(住友ベークライト社製、スミライトレジンPR−50781)をカーボンブラックに対して樹脂固形分で10重量%になるように添加、溶解した。このスラリーを三本ロールで30分間混練し、140℃で十分に乾燥、粉砕、分級して粒子表面に正帯電制御材が樹脂被覆されたカーボンブラック試料を作製した。
【0069】
このカーボンブラック試料14.4gにイソパラフィン系炭化水素溶媒(エクソンモービル社製、アイソパーG)を32.4g添加して湿潤し、トリイソシアネートヘキサメチレンイソシアヌレート(三井武田ケミカル社製、D−177N)を2.268g、ヒドロキシル変性ポリマーとしてプロパン1、2−ジオールポリ(2−エチルヘキシルカルボニルエテン)スルフィド(綜研化学社製、UT−101;分子量3500)を8.4g、ジブチルチンジラウレートを10重量%の濃度に溶解したアイソパーG溶液2.507gをφ1mmのジルコニアボール70mlと共に250mlの窒化珪素ポッドに入れ、遊星型ボールミル(独FRITSCH社製、P−5)で3時間処理した。
【0070】
この処理物とボールをイソパラフィン系炭化水素溶媒60.0gで希釈しながら、300mlガラスセパラブルフラスコに洗い入れ、70℃で6時間十分に撹拌しながら加熱処理した。加熱処理後、アドバンテック東洋社製、濾紙No.5Aを1回通過させて分散体からボールを分離すると同時に大粒成分を除去し、10重量%イソパラフィン系炭化水素溶媒に分散した表面変性カーボンブラック分散体1を製造した。
【0071】
実施例2
実施例1において、正帯電制御材の付着および樹脂被覆を同時に行った他は、実施例1と同じ方法により表面変性カーボンブラック分散体2を製造した。
【0072】
実施例3
実施例2において、水溶性フェノール樹脂をカーボンブラックに対して30重量%になるように樹脂被覆した他は、実施例2と同じ方法により表面変性カーボンブラック分散体3を製造した。
【0073】
比較例1
実施例1において、正帯電制御材を付着せず、また樹脂被覆もしないカーボンブラックをそのまま用いた他は、実施例1と同じ方法により表面変性カーボンブラック分散体4を製造した。
【0074】
比較例2
実施例1において、正帯電制御材を付着したが、樹脂被覆はしないカーボンブラックを用いた他は、実施例1と同じ方法により表面変性カーボンブラック分散体5を製造した。
【0075】
これらの分散体を70℃の温度で4週間に亘って静置し、1週間経過毎にMicrotrac法粒度分析計(Honeywell社製、9340−UPA150)を用いてカーボンブラック凝集体の平均粒子径を測定し、また振動式粘度計(山一電機社製、VM−100A−L)により分散体の粘度を測定して、その結果を表1に示した。
【0076】
【表1】

【0077】
次に、製造直後の各分散体について、ゼータ電位測定計(マイクロテックニチオン社製ZEECOM)を用いて分散体中のカーボンブラック帯電量を測定し、またLCRメータ(NF回路設計ブロック社製、ZM2353)を用いて分散体中のカーボンブラックの誘電損失を測定した。得られた結果を表2に示した。
【0078】
【表2】

【0079】
表1、2から、分散体1〜5は全て分散性に優れていたが、正帯電制御材を付着させたが樹脂被覆しなかった分散体5は経時的に若干凝集が認められた。
【0080】
フェノール樹脂をカーボンブラックに対して30重量%使用した分散体3は、樹脂の被覆が厚いために、ボールミルで粉砕され難く、平均粒子径が大きかった。また、樹脂被覆が厚かったことから、誘電損失は低くなった。
【0081】
カーボンブラックに正帯電制御材を付着していない分散体4は、カーボンブラック粒子表面の酸性官能基由来の負電荷が確認され、誘電損失も小さかった。また、正帯電制御材を付着したが樹脂被覆しなかった分散体5は誘電損失の増大が大きかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子表面に正帯電制御材を付着および樹脂被覆したカーボンブラック粒子表面の反応性官能基と、両末端にイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物またはイソ構造の3末端にイソシアネート基を有するトリイソシアネート化合物の1つの末端イソシアネート基が結合し、未結合のジイソシアネート化合物の他端あるいはトリイソシアネート化合物の2つの他端イソシアネート基がヒドロキシル変性ポリマーのヒドロキシル基と結合したことを特徴とする表面変性カーボンブラック。
【請求項2】
請求項1の表面変性カーボンブラックが1〜20重量%の濃度で非極性溶媒または低極性溶媒に分散した表面変性カーボンブラック分散体。
【請求項3】
カーボンブラックを正帯電制御材とともに精製水に混合し、混練、乾燥、粉砕してカーボンブラック粒子表面に正帯電制御材を付着させた後、熱硬化性樹脂液と混練し、乾燥、粉砕して樹脂被覆し、次いで、非反応性溶媒に該カーボンブラックと両末端にイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物またはイソ構造の3末端にイソシアネート基を有するトリイソシアネート化合物を混合して、カーボンブラック粒子表面の反応性官能基と、ジイソシアネート化合物の末端イソシアネート基またはトリイソシアネート化合物の1つの末端イソシアネート基と結合させ、その後ヒドロキシル変性ポリマーを加えて混合し、シアネート化合物の未結合のイソシアネート基とヒドロキシル基とをウレタン結合させることを特徴とする表面変性カーボンブラックの製造方法。
【請求項4】
カーボンブラックを正帯電制御材とともに精製水に混合し、混練、乾燥、粉砕してカーボンブラック粒子表面に正帯電制御材を付着させた後、熱硬化性樹脂液と混練し、乾燥、粉砕して樹脂被覆し、次いで、非反応性溶媒に該カーボンブラックと両末端にイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物またはイソ構造の3末端にイソシアネート基を有するトリイソシアネート化合物およびヒドロキシル変性ポリマーを加えて混合し、カーボンブラック粒子表面の反応性官能基と、ジイソシアネート化合物の末端イソシアネート基またはトリイソシアネート化合物の1つの末端イソシアネート基と結合させ、同時にシアネート化合物の未結合のイソシアネート基とヒドロキシル基とをウレタン結合させることを特徴とする表面変性カーボンブラックの製造方法。
【請求項5】
カーボンブラックを正帯電制御材および熱硬化性樹脂とともに精製水に混合し、混練、乾燥、粉砕してカーボンブラック粒子表面に正帯電制御材の付着と樹脂被覆を同時に行って、次いで、非反応性溶媒に該カーボンブラックと両末端にイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物またはイソ構造の3末端にイソシアネート基を有するトリイソシアネート化合物を混合して、カーボンブラック粒子表面の反応性官能基と、ジイソシアネート化合物の末端イソシアネート基またはトリイソシアネート化合物の1つの末端イソシアネート基と結合させ、その後ヒドロキシル変性ポリマーを加えて混合し、シアネート化合物の未結合のイソシアネート基とヒドロキシル基とをウレタン結合させることを特徴とする表面変性カーボンブラックの製造方法。
【請求項6】
カーボンブラックを正帯電制御材および熱硬化性樹脂とともに精製水に混合し、混練、乾燥、粉砕してカーボンブラック粒子表面に正帯電制御材の付着と樹脂被覆を同時に行って、次いで、非反応性溶媒に該カーボンブラックと両末端にイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物またはイソ構造の3末端にイソシアネート基を有するトリイソシアネート化合物およびヒドロキシル変性ポリマーを加えて混合し、カーボンブラック粒子表面の反応性官能基と、ジイソシアネート化合物の末端イソシアネート基またはトリイソシアネート化合物の1つの末端イソシアネート基と結合させ、同時にシアネート化合物の未結合のイソシアネート基とヒドロキシル基とをウレタン結合させることを特徴とする表面変性カーボンブラックの製造方法。
【請求項7】
カーボンブラック粒子表面の反応性官能基として、ヒドロキシル基又は/及びカルボキシル基の官能基量が0.14μeq/m以上である、請求項1〜6の表面変性カーボンブラックとその分散体および製造方法。

【公開番号】特開2007−297436(P2007−297436A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−124701(P2006−124701)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000219576)東海カーボン株式会社 (155)
【Fターム(参考)】