説明

表面実装型コンデンサ

【課題】 表面実装型コンデンサを構成するコンデンサ素子において、陽極部と陰極部を絶縁するために、容易に均一な絶縁樹脂層を形成し、ショートの発生がなく、漏れ電流が小さく、かつ高容量の表面実装型コンデンサを提供する。
【解決手段】 陽極部11と陰極部12を絶縁するために絶縁樹脂層15で覆い形成された絶縁部13の金属芯部14の短手方向断面の厚み端面が、金属芯部14の外周方向に凸形状であるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線基板に表面実装する表面実装型コンデンサに関し、特に母材として金属を用いる電解コンデンサ素子で構成された表面実装型コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電解コンデンサ素子(以下、「コンデンサ素子」という。)は、タンタル、アルミニウム、または、ニオブ等の弁作用金属を母材として用いている。アルミニウムを用いた場合には金属芯部の一部をエッチングにより拡面化して、電気化学的処理により誘電体層が形成される。
【0003】
従来のコンデンサ素子の長手方向の片端に陽極部を設けた形状の表面実装型コンデンサについて説明する。図3は、従来の表面実装型コンデンサを構成するコンデンサ素子を示す図である。図3(a)は、平面図、図3(b)は、A−A断面図、図3(c)は、B−B断面図である。
【0004】
図3の示す、従来の表面実装型コンデンサを構成するコンデンサ素子10は、陽極部11としての金属芯部14と、陰極部12としての金属芯部14の表面を拡面化したエッチング層16の上に酸化被膜である誘電体層(図示せず)と固体電解質である導電性高分子層17とグラファイト層18と銀ペースト層19で構成されている。
【0005】
陽極部11である金属芯部14と陰極部12の境界には絶縁のために、スクリーン印刷により陽極部11の一部を覆うに絶縁樹脂層15からなる絶縁部13が形成されている。また、エッチング層16の上に形成された誘電体層の表面には、導電性高分子層17を備えている。この導電性高分子層17の表面にグラファイト層18及び銀ペースト層19を順次形成して陰極部12が形成される。このコンデンサ素子10の陽極部11の金属芯部14に陽極リード(図示せず)を、陰極部12の銀ペースト層19に陰極リード(図示せず)を接続後、外装樹脂でモールドすることにより表面実装型コンデンサが作製される。
【0006】
上述した構成は、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1では、陽極と陰極の境界に形成されたレジスト樹脂の少なくとも一部を絶縁樹脂で覆う構成になっている。これにより、導電性ペーストの所定位置からのはみ出しによる短絡、もしくは、コンデンサ素子の積層体形成時の素子ずれによる短絡を防ぐ効果を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−129936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の技術では、表面実装型コンデンサを構成するコンデンサ素子10において、高静電容量の表面実装型コンデンサを得るための手段として、金属芯部の表面を拡面化したエッチング層の上に形成する誘電体層の表面積を大きくするために適する、厚いアルミニウム材の使用が挙げられている。この場合、図3(c)に示すように、金属芯部14に使用するアルミニウム材が厚くなり、コンデンサ素子10の陽極部11と陰極部12の境界部に絶縁樹脂層15を形成する際に、金属芯部14の側面部分(図3(c)の点線で囲んだ部分)に均一に形成することが難しいという課題があった。
【0009】
コンデンサ素子10の絶縁部13において、陽極部11の側面部分に形成する絶縁樹脂層15の樹脂量が不足し、十分に形成できない場合には、導電性高分子層17や銀ペースト層19を形成する際に陽極部11表面にも形成され、陽極部11と陰極部12間のショートの発生、または漏れ電流が大きくなっていた。また、ショートの発生や漏れ電流の増大を防止するために絶縁樹脂層15の樹脂量を多くして形成した場合、陽極部11と陰極部12を構成部分が狭くなり、有効面積が減少することにより、コンデンサ素子10の容量を低下させるという課題があった。
【0010】
よって、上述したコンデンサ素子10を備えた表面実装型コンデンサにおいても、ショートの発生、漏れ電流が大きいという課題があった。
【0011】
また、特許文献1で述べられている従来技術では、工数が増える上に、コンデンサ素子を複数積層する場合に絶縁樹脂の厚み分について、導電性ペーストを用いることにより陰極部を接続する必要があった。
【0012】
そこで本発明は、コンデンサ素子の陽極部と陰極部を絶縁するために、容易に均一な絶縁樹脂層を形成し、ショートの発生がなく、漏れ電流が小さく、かつ高容量の表面実装型コンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明は、陽極部と陰極部を絶縁するために絶縁樹脂層で覆い形成された絶縁部の金属芯部の短手方向断面の厚み端面が、金属芯部の外周方向に凸形状であるようにしたものである。
【0014】
すなわち、本発明によれば、矩形形状を有する金属芯部の長手方向の両端部の少なくとも一方に形成された陽極部と、前記金属芯部の表面を拡面化したエッチング層の上に酸化被膜である誘電体層、固体電解質である導電性高分子層、グラファイト層、銀ペースト層が順次覆うように形成された陰極部からなるコンデンサ素子を備える表面実装型コンデンサであって、前記金属芯部と前記陰極部の境界に前記陽極部の一部を絶縁樹脂層で覆う絶縁部が形成され、前記絶縁部を形成する前記金属芯部の短手方向断面の厚み端面が、前記金属芯部の外周方向に凸形状であることを特徴とする表面実装型コンデンサが得られる。
【0015】
また、本発明によれば前記凸形状が、階段状または弓形状であることを特徴とする上記の表面実装型コンデンサが得られる。
【0016】
また、本発明によれば、前記絶縁樹脂層が、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、シリコーン系樹脂の中から選択される少なくとも1種であることを特徴とする上記の表面実装型コンデンサが得られる。
【0017】
また、本発明によれば、前記絶縁樹脂層は、スクリーン印刷またはパット印刷により形成されたことを特徴とする上記の表面実装型コンデンサが得られる。
【0018】
また、本発明によれば、前記コンデンサ素子の長手方向の片端に陽極部を設けたことを特徴とする上記の表面実装型コンデンサが得られる。
【0019】
また、本発明によれば、前記コンデンサ素子を複数積層して構成されたことを特徴とする上記の表面実装型コンデンサが得られる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、絶縁樹脂層を少ない工程で、精度良く、均一な層として形成することが出来るので、工数及びコストを下げ、容易に製造することが出来る。
【0021】
よって、絶縁樹脂層により陽極部と陰極部を確実に絶縁できるため、ショートの発生と漏れ電流が小さく、高容量の表面実装型コンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の絶縁部における金属芯部を階段状にした表面実装型コンデンサを構成するコンデンサ素子を示す図である。図1(a)は、平面図、図1(b)は、A−A断面図、図1(c)は、B−B断面図である。
【図2】本発明の絶縁部における金属芯部を弓形状にした表面実装型コンデンサを構成するコンデンサ素子を示す図である。図2(a)は、平面図、図2(b)は、A−A断面図、図2(c)は、B−B断面図である。
【図3】従来の表面実装型コンデンサを構成するコンデンサ素子を示す図である。図3(a)は、平面図、図3(b)は、A−A断面図、図3(c)は、B−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の絶縁部における金属芯部を階段状にした表面実装型コンデンサを構成するコンデンサ素子を示す図である。図1(a)は、平面図、図1(b)は、A−A断面図、図1(c)は、B−B断面図である。
【0025】
図1に示すように、表面実装型コンデンサを構成するコンデンサ素子10の陽極部11と陰極部12を絶縁すべく絶縁部13を、絶縁樹脂層15により形成する。金属芯部14の母材としては、アルミニウム、チタン、タンタル、ニオブ等の弁作用金属が用いられる。絶縁部13の形成前に、絶縁樹脂層15が形成される金属芯部14の短手方向断面の厚み端面を、金属芯部の外周方向に階段状または弓形状等の外周方向に凸形状である。この加工は、均一な絶縁樹脂層を形成しやすいように金属芯部14の短手方向断面の厚み端面が、金属芯部の外周方向に凸形状であれば良い。この形成には、レーザによる形成方法が最も適してはいるが、他の方法により成し遂げられるものであれば、特に手段を限定しない。
【0026】
金属芯部14の短手方向断面の厚み端面が、金属芯部の外周方向に凸形状である部分を覆う様に、スクリーン印刷またはパット印刷により、陽極部11及び陰極部12の境界に陽極部11の一部がエポキシ樹脂で絶縁樹脂層15を形成する。それにより、図1(c)に示すように側面部が十分に絶縁樹脂層15に覆われて、陰極部12が陽極部11に接触することを防ぐことができる。絶縁樹脂層15の樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、シリコーン系樹脂の中から選択して用いられている。
【0027】
次に本発明の表面実装型コンデンサの製造方法について説明する。金属芯部14をエッチング等により拡面化し、電気化学的方法により電圧を印加して化成処理してエッチング層16の上に酸化被膜である誘電体層を形成する。誘電体層を形成後、金属芯部14の陽極部11が形成される部分の誘電体層をレーザにより除去する。次に、陰極部12のエッチング層16の上に形成された誘電体層上に3,4ジオキシチオフェンを化学重合により固体電解質である導電性高分子層17を形成する。
【0028】
導電性高分子層17を形成後、導電性高分子層17上にグラファイト層18、銀ペースト層19を順次形成してコンデンサ素子10を得る。このコンデンサ素子10の陽極部11に陽極リード(図示せず)を、陰極部12の銀ペースト層19に陰極リード(図示せず)を接続後、外装樹脂でモールドすることにより表面実装型コンデンサを作製する。
【0029】
本実施の形態では、コンデンサ素子の長手方向の片端に陽極部を設けた形状の表面実装型コンデンサを構成するコンデンサ素子の例を用いて説明したが、両端に陽極部を設けた形状の表面実装型コンデンサにも適用することができる。また、前記のコンデンサ素子を複数積層した表面実装型コンデンサにも適用することができるのは、明らかである。
【実施例】
【0030】
(実施例1)
図1に示す、コンデンサ素子の長手方向の片端に陽極部を設けた形状で陽極部の金属芯部の絶縁樹脂層が形成される、金属芯部の短手方向断面の厚み端面が、金属芯部の外周方向に階段状である表面実装型コンデンサを構成するコンデンサ素子を作製した。コンデンサ素子10の製品寸法は、6.5mm(長辺)×3.5mm(短辺)×0.35mm(厚さ)である。金属芯部14には0.4mmのアルミニウム材を用い、図1(c)に示すように、レーザにより金属芯部14の絶縁樹脂層15が形成される断面の厚み端面が、金属芯部の外周方向に階段状に形成して金属芯部14の絶縁樹脂層15が、金属芯部の外周方向に凸形状に形成した。スクリーン印刷手法により凸形状部分を含め陽極部と陰極部の境界部にエポキシ樹脂による絶縁樹脂層15を形成し絶縁部13とした。
【0031】
次に、金属芯部14のアルミニウム材をエッチング等により拡面化し、電気化学的方法により電圧6Vを印加して化成処理してエッチング層16の上に誘電体層を形成した。誘電体層を形成後、陽極部11の金属芯部14の部分をレーザにより陽極部11を除き、金属芯部14の両面に形成された誘電体層を除去した。その後、エッチング層16の上に形成された誘電体層上に3,4ジオキシチオフェンを化学重合により形成した導電性高分子層17を形成した。
【0032】
さらに、導電性高分子層17上にグラファイト層18、銀ペースト層19を順次形成して陰極部12を形成しコンデンサ素子10を得た。このコンデンサ素子10の陽極体に陽極リードを、銀ペースト層19に陰極リードを接続後、外装樹脂でモールドすることにより表面実装型コンデンサを得た。
【0033】
(実施例2)
図2に示す、コンデンサ素子の長手方向の片端に陽極部を設けた形状で陽極部の金属芯部の絶縁樹脂層が形成される、金属芯部の短手方向断面の厚み端面が、金属芯部の外周方向に弓形状である表面実装型コンデンサを構成するコンデンサ素子を作製した。図2は、本発明の絶縁部における金属芯部を弓形状にした表面実装型コンデンサを構成するコンデンサ素子を示す図である。図2(a)は、平面図、図2(b)は、A−A断面図、図2(c)は、B−B断面図である。コンデンサ素子10の製品寸法は、6.5mm(長辺)×3.5mm(短辺)×0.35mm(厚さ)である。
【0034】
実施例2は、実施例1記載の陽極部11の金属芯部14の絶縁樹脂層15が形成される金属芯部の短手方向断面の厚み端面が、金属芯部の外周方向に弓形状に加工した以外は同様として表面実装型コンデンサを得た。
【0035】
(比較例)
本発明の実施例1、2との比較例として、陽極部の金属芯部の絶縁樹脂層が形成される金属芯部の短手方向断面の一対の端面を直線とし、加工処理していない図3に示す従来の表面実装型コンデンサを作製した。その他製造方法は、金属芯部の短手方向断面の厚み端面を直線に加工した以外は、実施例1と同様として表面実装型コンデンサを得た。
【0036】
本発明の実施例1、2のコンデンサ素子を用いた表面実装型コンデンサと従来技術である比較例のコンデンサ素子を用いた表面実装型コンデンサを各100個ずつ製作してショート不良の比較を行った。各表面実装型コンデンサの陽極リードと陰極リード間に60秒2.0Vの電圧を印加した後、エレクトロメータ R8240(アドバンテスト製)にて、電流値を読み取り、1mA以上の電流が流れている場合をショート不良と判定した。その結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
表1により、本発明の実施例が比較例に対してショート不良が低減していることが明らかになり、本発明のショートの発生と漏れ電流が小さく高容量の表面実装型コンデンサの効果を、確認することが出来た。
【0039】
以上、実施例を用いて、この発明の実施の形態を説明したが、この発明は、これらの実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても本発明に含まれる。すなわち、当業者であれば、当然なしえるであろう各種変形、修正もまた本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係る表面実装型コンデンサは、電子部品や電気機器のプリント配線基板等に表面実装されるタイプの固体電解コンデンサに適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
10 コンデンサ素子
11 陽極部
12 陰極部
13 絶縁部
14 金属芯部
15 絶縁樹脂層
16 エッチング層
17 導電性高分子層
18 グラファイト層
19 銀ペースト層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形形状を有する金属芯部の長手方向の両端部の少なくとも一方に形成された陽極部と、前記金属芯部の表面を拡面化したエッチング層の上に酸化被膜である誘電体層、固体電解質である導電性高分子層、グラファイト層、銀ペースト層が順次覆うように形成された陰極部からなるコンデンサ素子を備える表面実装型コンデンサであって、前記金属芯部と前記陰極部の境界に前記陽極部の一部を絶縁樹脂層で覆う絶縁部が形成され、前記絶縁部を形成する前記金属芯部の短手方向断面の厚み端面が、前記金属芯部の外周方向に凸形状であることを特徴とする表面実装型コンデンサ。
【請求項2】
前記凸形状が、階段状または弓形状であることを特徴とする請求項1に記載の表面実装型コンデンサ。
【請求項3】
前記絶縁樹脂層が、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、シリコーン系樹脂の中から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表面実装型コンデンサ。
【請求項4】
前記絶縁樹脂層は、スクリーン印刷またはパット印刷により形成されたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の表面実装型コンデンサ。
【請求項5】
前記金属芯部の長手方向の片端に陽極部を設けたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の表面実装型コンデンサ。
【請求項6】
前記コンデンサ素子を複数積層して構成されたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の表面実装型コンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−204642(P2012−204642A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68357(P2011−68357)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)