説明

表面実装型電解コンデンサ

【課題】樹脂ケースを破壊することなく、外部から導電性ペーストの接続状態を容易に確認することができる表面実装型電解コンデンサを提供する。
【解決手段】電極を備える電解コンデンサ素子と、前記電極に接続される端子を備え、前記電解コンデンサ素子を収容する樹脂ケースとを含む表面実装型コンデンサにおいて、前記樹脂ケースに用いられる樹脂を透明又は半透明とすることによって、前記電極と前記端子との接続状態を視認できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面実装型電解コンデンサに関し、特にその樹脂ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ等のCPU(中央処理装置)には、その電源ラインに重畳されるノイズの発生を防止するために、主にコンデンサから構成されるデカップリング素子を接続する必要がある。その必要性は、CPUの高速化(クロック周波数の増加)に伴いますます高くなっている。同様に、パーソナルコンピュータやサーバ以外のデジタル家電機器や通信機器においても、CPU、信号処理LSIの高速化に伴い、その電源ラインにデカップリング素子を接続する必要性が増している。
【0003】
デカップリング素子には、伝送線路型素子あるいは伝送線路型ノイズフィルタと呼ばれるものがある。例えば、三端子コンデンサは、伝送線路型のデカップリング素子として用いることができる。三端子コンデンサとして、数100μFの容量を持ち、100MHzの周波数帯域におけるESR(等価直列抵抗)が5mΩ以下であり、さらにESL(等価直列インダクタンス)が1pH程度である表面実装型電解コンデンサが既に開発され、実用化されている。
【0004】
表面実装型電解コンデンサは、一般に電解コンデンサ素子を複数層積層して構成される。各電解コンデンサ素子は、箔状もしくは板状をなす弁作用金属からなる陽極部の両端を除く表面上に誘電体皮膜を形成して陽極体とし、さらにその表面上に固体電解質層及び導電性物質層を形成して陰極部としたものである。積層された複数の電解コンデンサ素子は、上下に隣接する電解コンデンサ素子の陽極部同士の間及び陰極部同士の間がそれぞれ導電性ペーストを用いて接続される。また、最下層に位置する電解コンデンサ素子の陽極部及び陰極部は、それぞれ導電性ペーストを介して陽極端子及び陰極端子に接続される。
【0005】
従来の表面実装型電解コンデンサとして、上述した複数の電解コンデンサ素子を積層した積層体を樹脂ケースに収容したものがある(例えば、特許文献1参照)。図2(a)はその分解斜視図、図2(b)は外装ケース(上部カバー)を取り外した状態の外観斜視図、図2(c)は外装ケースを取り付けた状態の外観斜視図、及び図2(d)は底面図である。
【0006】
詳述すると、図2(a)乃至(d)に示す表面実装型電解コンデンサは、外装ケース21と、電解コンデンサ素子積層体(又は電解コンデンサ素子単体)22と、樹脂ケース25とを有している。
【0007】
外装ケース21は、例えば樹脂製で、下部が開放された箱型(直方体)である。外装ケース21の縦横サイズは、樹脂ケース25よりも若干大きく作られている。
【0008】
電解コンデンサ素子積層体22は、上述したように構成されており、その外周面には、陽極部23と陰極部24とが露出している。図では陽極部23と陰極部24とが互いに接しているように描かれているが、これらの間は互いに絶縁されている。
【0009】
樹脂ケース25は、上部が開放された箱型(直方体)であって、モールド成形により、金属板からなる陽極端子26及び陰極端子27と一体に形成されている。陽極端子26及び陰極端子27は、その上面の大部分が樹脂ケース25の内部底面に露出し、下面の全部が樹脂ケース25の外部底面に露出している。つまり、樹脂ケース25は、陽極端子26及び陰極端子27とその間を埋める樹脂からなる底板部と、底板部の周縁に略垂直に形成された樹脂からなる側壁部とを有している。陽極端子26及び陰極端子27の一部(両端部)は、側壁部から外部へ突出している。
【0010】
電解コンデンサ素子積層体22は、樹脂ケース25内に収容される。このとき、電解コンデンサ素子積層体22の下面と樹脂ケース25の内部底面との間に導電ペーストが配され、陽極部23は陽極端子26に、陰極部24は陰極端子27にそれぞれ接続固定される。
【0011】
また、外装ケース21が樹脂ケース25の上部側から被せられ、接着剤等により、電解コンデンサ素子積層体22及び樹脂ケース25に固定される。
【0012】
【特許文献1】特開2006−128247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
電解コンデンサ素子又はその積層体が樹脂ケースに収容される従来の表面実装型電解コンデンサでは、樹脂ケースに収容された電解コンデンサ素子又はその積層体の陽極部及び陰極部と樹脂ケースの陽極端子及び陰極端子とがそれぞれ導電性ペーストを用いて接続される。このとき、導電性ペーストの量が多すぎると、対向電極へブリッジすることによりショート不良が発生する。逆に導電性ペーストが少ない場合には、通過抵抗不良やESR不良が発生する。それゆえ、表面実装型電解コンデンサの製造時に、導電性ペーストの接続状態を検査する必要がある。
【0014】
しかしながら、従来の表面実装型電解コンデンサは、導電性ペーストの接続状態を外部から視認することができず、導電性ペーストの接続状態を知るには、樹脂ケースを破壊しなければならない。それゆえ、実際の製品については、導電性ペーストの接続状態を知ることができないという問題点がある。
【0015】
そこで、本発明は、樹脂ケースを破壊することなく、外部から導電性ペーストの接続状態を容易に確認することができる表面実装型電解コンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明は、電極を備える電解コンデンサ素子と、前記電極に接続される端子を備え、前記電解コンデンサ素子を収容する樹脂ケースとを含む表面実装型コンデンサにおいて、前記樹脂ケースに用いられる樹脂を透明又は半透明とし、前記電極と前記端子との接続状態を視認できるようにしたことを特徴とする。
【0017】
又、本発明は、端部に陽極部、中央部に陰極部を有する板状の電解コンデンサ素子、もしくは前記電解コンデンサ素子を積層してなる電解コンデンサ素子積層体と、ともに平板状であって、前記陽極部に接続される陽極端子及び前記陰極部に接続される陰極端子と、前記陽極端子及び前記陰極端子を機械的に固定するとともに、前記陽極端子と前記陰極端子との間を埋め、前記陽極端子及び前記陰極端子の上面及び下面の一部をそれぞれ外部露出させる底板、及び該底板に対して略垂直に形成された側壁とを有する樹脂ケースと、前記樹脂ケースの上部及び前記側壁の一部を覆う、箱形の外装ケースを備えることを特徴とする、表面実装型電解コンデンサであって、前記樹脂ケースを透明又は半透明の樹脂にて形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電解コンデンサ素子とそれを収容する樹脂ケースとを備えた表面実装型電解コンデンサにおいて、樹脂ケースを透明又は半透明にしたことにより、樹脂ケースを破壊することなく、電解コンデンサ素子の電極と樹脂ケースに設けられた端子とを接続する導電性ペーストの接続状態を外部から視認することができる。これにより、全数検査が可能となる。また、破壊検査に比べ検査に要する時間を大幅に短縮することができるので、多数の製品を連続的に製造する場合に、導電性ペースの塗布量の変動を迅速に検出することができ、導電性ペースの塗布量を適時調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の表面実装型電解コンデンサについて詳細に説明する。
【0020】
図1(a)乃至(d)に、本発明の一実施の形態に係る表面実装型電解コンデンサを示す。図1(a)は樹脂ケース15と電解コンデンサ素子積層体(あるいは電解コンデンサ素子単体)12と外装ケース(上部カバー)11とが分離した場合を示す分解図、図1(b)は電解コンデンサ素子積層体12を樹脂ケース15へ収容した後の外観斜視図、図1(c)は外装ケースを蓋付けした後の外観斜視図、図1(d)はその底面図である。
【0021】
本実施の形態に係る表面実装型電解コンデンサは、図2(a)乃至(d)に示した従来の表面実装型電解コンデンサと、略同一構成であり、後述のように、樹脂ケース15に用いられる樹脂が透明又は不透明である点で異なっている。以下、本実施の形態に係る表面実装型電解コンデンサについて詳述する。
【0022】
本実施の形態に係る表面実装型電解コンデンサは、外装ケース11と、電解コンデンサ素子積層体12と、樹脂ケース15とを有している。
【0023】
外装ケース11は、不透明な樹脂製で、下部が開放された箱型(直方体)である。外装ケース11の縦横サイズは、樹脂ケース15よりも若干大きく作られている。
【0024】
電解コンデンサ素子積層体12は、電解コンデンサ素子を複数層積層して構成されている。各電解コンデンサ素子は、箔状もしくは板状をなす弁作用金属からなる陽極部の両端を除く表面上に誘電体皮膜を形成して陽極体とし、さらにその表面上に固体電解質層及び導電性物質層を形成して陰極部としたものである。つまり、電解コンデンサ素子は両端部に設けられた一対の陽極部と、その間に設けられた陰極部を有している。積層された複数の電解コンデンサ素子は、上下に隣接する電解コンデンサ素子の陽極部同士の間及び陰極部同士の間がそれぞれ導電性ペーストを用いて接続されている。電解コンデンサ素子積層体12の外周面には、陽極部13と陰極部14とが露出している。図では陽極部13と陰極部14とが互いに接しているように描かれているが、これらの間は互いに絶縁されている。
【0025】
樹脂ケース15は、上部が開放された箱型(直方体)であって、モールド成形により、平板状金属板からなる一対の陽極端子16及び陰極端子17と一体に形成されている。一対の陽極端子16と陰極端子17とは、電解コンデンサ積層体12の陽極部13と陰極部14とに対応するように配置されている。陽極端子16及び陰極端子17は、その上面の大部分が樹脂ケース15の内部底面に露出し、下面の略全部が樹脂ケース15の外部底面に露出している。つまり、樹脂ケース15は、陽極端子16及び陰極端子17を機械的に固定するとともにその間を埋める樹脂からなる底板部と、底板部の周縁に略垂直に形成された樹脂からなる四方の側壁部とを有している。陽極端子16及び陰極端子17の一部(両端部)は、側壁部から外部へ突出している。
【0026】
電解コンデンサ素子積層体12は、樹脂ケース15内に収容される。このとき、電解コンデンサ素子積層体12の下面と樹脂ケース15の内部底面との間の陽極部13及び陰極部14に対応する位置に導電ペーストが配され、電解コンデンサ素子積層体の下面に露出している陽極部13は陽極端子16に、陰極部14は陰極端子17にそれぞれ接続固定される。
【0027】
また、外装ケース11が樹脂ケース15の上部側から被せられ、接着剤等により、電解コンデンサ素子積層体12及び樹脂ケース15に固定される。外像ケース11は、樹脂ケースの上面を塞ぐとともに、側壁部外側側面の略全面を覆う。
【0028】
本実施の形態では、従来の表面実装型電解コンデンサとは異なり、樹脂ケース15の材料として透明又は半透明の樹脂を用いる。透明又は半透明の樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0029】
樹脂ケース15に用いる樹脂を透明又は半透明としたことにより、電解コンデンサ素子積層体12を樹脂ケース15へ挿入した後も、図1(b)に示すように電解コンデンサ素子積層体12の側面に塗布している導電性ペースト18の塗布量を容易に視認することができる。また、図1(d)に示すように、樹脂ケース15の外側底面側から陽極端子16と陰極端子17との間を通して電解コンデンサ素子積層体12の底面が見える。これにより、陽極接続用導電性ペースト19の陰極へのブリッジ、あるいは陰極接続用導電性ペースト20の陽極へのブリッジを容易に視認することができる。また、陽極接続用導電性ペースト19及び陰極接続用導電性ペースト20が全く視認できない場合には、塗布量が不足していると判断することもできる。
【0030】
以上のように、本実施の形態に係る表面実装型電解コンデンサでは、電解コンデンサ素子積層体12の側面に塗布される導電性ペースト18の塗布量、及び電解コンデンサ素子積層体12の陽極部13及び陰極部14と樹脂ケース15に設けられた陽極端子16及び陰極端子17との接続に用いられる導電ペースト19,20の塗布量を、樹脂ケース15を破壊することなく視認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施の形態に係る表面実装型電解コンデンサを示す図であって、(a)は分解図、(b)は電解コンデンサ素子を樹脂ケースへ収容した状態の外観斜視図、(c)は外装ケースを蓋付けした後の状態を示す外観斜視図、及び(d)は底面図である。
【図2】従来の表面実装型電解コンデンサを示す図であって、(a)は分解図、(b)は電解コンデンサ素子を樹脂ケースへ収容した状態を示す外観斜視図、(c)は外装ケースを蓋付けした後の状態を示す外観斜視図、及び(d)は底面図である。
【符号の説明】
【0032】
11,21 外装ケース
12,22 電解コンデンサ素子積層体
13,23 陽極部
14,24 陰極部
15,25 樹脂ケース
16,26 陽極端子
17,27 陰極端子
18 電解コンデンサ素子側面塗布用導電性ペースト
19 陽極接続用導電性ペースト
20 陰極接続用導電性ペースト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極を備える電解コンデンサ素子と、前記電極に接続される端子を備え、前記電解コンデンサ素子を収容する樹脂ケースとを含む表面実装型コンデンサにおいて、
前記樹脂ケースに用いられる樹脂を透明又は半透明とし、前記電極と前記端子との接続状態を視認できるようにしたことを特徴とする表面実装型コンデンサ。
【請求項2】
前記電解コンデンサ素子は、単一の平板状電解コンデンサ素子又は複数の平板状電解コンデンサ素子を積層した積層体であって、前記電極の少なくとも一部が露出する下面を有し、
前記樹脂ケースは、上部が開放された箱型形状を有するとともに、前記端子の少なくとも一部が露出する内部底面を有し、
前記下面を前記内部底面に対向させて前記電解コンデンサ素子を前記樹脂ケースに収容し、前記下面に露出する前記電極と前記内部底面に露出する前記端子との間を導電性ペーストにより接続するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の表面実装型コンデンサ。
【請求項3】
前記電極は、両端部に設けられた一対の陽極部と、これら一対の陽極部の間に設けられた陰極部とを有し、
前記端子は、前記一対の陽極部と陰極部とにそれぞれ対応して設けられた一対の陽極端子と陰極端子とを有していることを特徴とする請求項2に記載の表面実装型コンデンサ。
【請求項4】
前記端子は、少なくとも一部が前記樹脂ケースの下面に露出していることを特徴とする請求項2又は3に記載の表面実装型コンデンサ。
【請求項5】
前記樹脂ケースの上部及び外側面を覆うカバーをさらに有することを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一つに記載の表面実装型コンデンサ。
【請求項6】
端部に陽極部、中央部に陰極部を有する板状の電解コンデンサ素子、もしくは前記電解コンデンサ素子を積層してなる電解コンデンサ素子積層体と、
ともに平板状であって、前記陽極部に接続される陽極端子及び前記陰極部に接続される陰極端子と、
前記陽極端子及び前記陰極端子を機械的に固定するとともに、前記陽極端子と前記陰極端子との間を埋め、前記陽極端子及び前記陰極端子の上面及び下面の一部をそれぞれ外部露出させる底板、及び該底板に対して略垂直に形成された側壁とを有する樹脂ケースと、
前記樹脂ケースの上部及び前記側壁の一部を覆う、箱形の外装ケースを備えることを特徴とする、表面実装型電解コンデンサであって、
前記樹脂ケースを透明又は半透明の樹脂にて形成したことを特徴とする表面実装型電解コンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−54827(P2009−54827A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−220658(P2007−220658)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)