説明

表面性改質シートカートリッジおよび画像形成カートリッジ

【課題】画像形成装置を小型化するとともにメンテナンス性を向上することが可能な表面性改質シートカートリッジを提供する。
【解決手段】本発明の表面性改質シートカートリッジは、所定の間隔を有して平行に配置された2つのリールと、2つのリールに端部がそれぞれ固定されており、2つのリールに巻回されて2つのリールの間で張設される表面性改質シートと、2つのリールおよび表面性改質シートを収容する筐体部と、を備える。筐体部は、2つのリールの間に位置する表面性改質シートの一部を露出する貫通部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写シートを用いて被記録媒体に画像を形成するとともにその画像の表面を保護する保護層を形成する画像形成装置における表面性改質シートカートリッジおよび画像形成カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置の1つとして、熱転写シートの染料層を被記録媒体に転写させて画像を形成する昇華型画像形成装置がある。昇華型画像形成装置では、被記録媒体に形成された画像の表面を保護するために、透明な保護層が画像上に形成される、保護層は、具体的には、画像劣化の原因となるガスから画像を遮断したり、紫外線を吸収して画像の変色、退色を防止したり、画像を形成する染料等が可塑性のある物品に移行するのを防止したり、画像の摩耗を防止したり、画像を皮脂から保護したりする。保護層は、例えば、リボン状の基材シートに積層して設けられており、サーマルヘッドによって画像上に熱転写される。この画像上に熱転写されることによって、画像の保護の他に、被記録媒体がカールすることを防止できる。
【0003】
また、保護層がサーマルヘッドを用いて熱転写される際、被記録媒体の画像上に形成された保護層の表面状態を改質して、光沢性、マット調または絹目調等を与えることもできる。保護層の表面状態を改質する方法としては、所望の表面性を有する表面性改質シートを画像上に重ねてサーマルヘッドで加熱押圧することで保護層を軟化させ、表面性改質シートの表面性を保護層表面に写し取る方法が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、1つのリボンカートリッジにYMCおよび表面改質部が繰り返し連なるシートを備える技術が開示されている。このように、インクおよび表面改質部を単一のカートリッジに備えることで、1つのカートリッジで画像形成および表面性改質を行うことが可能となる。また、特許文献2には、YMCの熱溶融インクをそれぞれ異なるインクリボンカートリッジに収納し、画像形成に必要な色のカートリッジをヘッドに交換装着して画像形成する技術が開示されている。特許文献2に記載の方法では、画像形成後に表面性改質シートを収納したリボンカートリッジを画像形成後にヘッドに装着して、表面性を改質する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−315515号公報
【特許文献2】特開平10−305601号公報
【特許文献3】特開2009−166373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、本来表面性改質部は消耗しないため、表面性改質のためには1画像分のみ備えていればよいが、特許文献1に記載のリボンカートリッジの構成では、YMCの領域と同数の表面性改質部が必要となり、資源の無駄とコストの上昇が避けられない。また、特許文献2の方法では、資源の無駄は生じないが、カートリッジを交換するための機構が複雑で、コストも上昇するという問題がある。
【0007】
そこで、本願出願人らは上記の課題を解決すべく、表面性改質シートを少なくとも1面分の改質領域と印刷用の開口を有して双方向に搬送可能なリボンとして構成し、インクリボンに重ねてサーマルヘッドによる加熱押圧を行うことを提案した(特許文献3)。これにより、資源の無駄およびコストを抑えることが可能となったが、画像形成装置に対するユーザの要望から、装置の小型化、メンテナンス性の向上がさらに望まれている。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、画像形成装置を小型化するとともにメンテナンス性を向上することが可能な、新規かつ改良された表面性改質シートカートリッジおよび画像形成カートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、所定の間隔を有して平行に配置された2つのリールと、2つのリールに端部がそれぞれ固定されており、2つのリールに巻回されて2つのリールの間で張設される表面性改質シートと、2つのリールおよび表面性改質シートを収容する筐体部と、を備え、筐体部は、2つのリールの間に位置する表面性改質シートの一部を露出する貫通部を有する、表面性改質シートカートリッジが提供される。
【0010】
表面性改質シートは、表面性改質処理時にサーマルヘッドにより加熱押圧される表面性改質部と、一方のリールに固定された端部と表面改質部の一端とを接続する第1の中間部および他方のリールに固定された端部と表面改質部の他端とを接続する第2の中間部と、を備えてもよい。記第1の中間部または第2の中間部のうちいずれか一方に、印刷時にサーマルヘッドを通過させる矩形状の開口部が形成され、開口部の、表面性改質シートの走行方向に対して略直交する辺のうち少なくとも一方は、開口部の外部に向かって走行方向に突出する形状を有するように形成してもよい。
【0011】
また、第1の中間部および第2の中間部には、表面性改質シートの搬送状態を検知する検知穴をそれぞれ形成してもよい。
【0012】
各検知穴は、表面性改質シートの走行方向に突出する形状を有するようにしてもよい。
【0013】
開口部が形成されている第1の中間部または第2の中間部は、いずれの走行状態においても、少なくともリールの周長以上の長さがリールに巻回されるようにしてもよい。
【0014】
表面性改質部と第1の中間部および第2の中間部とは、異なる材質で形成してもよい。
【0015】
表面性改質部は、ポリイミドからなり、第1の中間部および第2の中間部は、ポリエチレンテレフタレートからなるように構成してもよい。
【0016】
表面性改質部と第1の中間部および第2の中間部とは、略同一厚みとしてもよい。
【0017】
表面性改質部と第1の中間部および第2の中間部とが接合されている接合部の厚みは、表面性改質部、第1の中間部および第2の中間部の接合部以外の厚みと同一となるようにしてもよい。
【0018】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、所定の間隔を有して平行に配置された2つのリールと、2つのリールに端部がそれぞれ固定されており、2つのリールに巻回されて2つのリールの間で張設される、複数の染料層領域と保護材層領域とを有する熱転写シートと、2つのリールおよび熱転写シートを収容する筐体部と、を備える熱転写シートカートリッジと、所定の間隔を有して平行に配置された2つのリールと、2つのリールに端部がそれぞれ固定されており、2つのリールに巻回されて2つのリールの間で張設される表面性改質シートと、2つのリールおよび表面性改質シートを収容する筐体部と、を備える表面性改質シートカートリッジと、からなり、熱転写シートカートリッジと表面性改質シートカートリッジとは互いに着脱可能に設けられる、画像形成カートリッジが提供される。
【0019】
熱転写シートカートリッジの2つのリールと、表面性改質シートカートリッジの2つのリールとは、略平行に設けられ、表面性改質シートカートリッジは、熱転写シートカートリッジの2つのリールを、表面性改質シートカートリッジの2つのリール間に挟み込むように、熱転写シートカートリッジに設けられるようにしてもよい。
【0020】
また、表面性改質シートカートリッジの筐体部には、熱転写シートカートリッジが設けられた印画機構部に表面性改質シートカートリッジを取り付けたとき、印画機構部に設けられた突起部に係合する係合部を設けてもよい。
【0021】
さらに、表面性改質シートカートリッジの筐体部には、熱転写シートカートリッジが設けられた印画機構部に表面性改質シートカートリッジを取り付けたとき、印画機構部に設けられた嵌合部に嵌合する位置出し部を設けてもよい。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように本発明によれば、画像形成装置を小型化するとともにメンテナンス性を向上することが可能な表面性改質シートカートリッジおよび画像形成カートリッジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】同実施形態に係る熱転写シートの構成を示す説明図である。
【図3】同実施形態に係る表面性改質シートの構成を示す説明図である。
【図4】センサアクチュエータによる位置検出を示す説明図である。
【図5A】同実施形態の画像形成装置による画像形成処理を示すフローチャートである。
【図5B】同実施形態の画像形成装置による画像形成処理を示すフローチャートである。
【図6】熱転写シートおよび表面性改質シートカートリッジに収容された表面性改質シートの走行時の状態を示す説明図である。
【図7】熱転写シートおよび表面性改質シートカートリッジに収容された表面性改質シートの表面性改質処理時の状態を示す説明図である。
【図8】同実施形態に係る表面性改質シートカートリッジとリボントレーとの配置関係を示す概略斜視図である。
【図9】同実施形態に係る表面性改質シートカートリッジの構成を示す概略斜視図である。
【図10】同実施形態に係る表面性改質シートカートリッジの構成を示す概略断面図である。
【図11】同実施形態に係る表面性改質シートカートリッジの構成を示す概略平面図である。
【図12】図11の領域Bの部分拡大図である。
【図13】図7の領域Cを示す部分拡大図である。
【図14】図7の領域Dを示す部分拡大図である。
【図15】同実施形態に係る表面性改質シートカートリッジとリボントレーとの接続関係を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0025】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.画像形成装置の概略構成
2.画像形成処理
3.表面性改質シートカートリッジの構成
【0026】
<1.画像形成装置の概略構成>
まず、図1を参照して、本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成について説明する。なお、図1は、本実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す説明図である。本実施形態に係る画像形成装置は、インクフィルムの染料を昇華させて被記録媒体に転写するサーマルプリンタ100であり、熱転写シートを用いて被記録媒体に画像を形成するとともに、その画像の表面を保護する保護層を形成する。
【0027】
サーマルプリンタ100は、図1に示すように、サーマルヘッド110と、被記録媒体である記録紙200を保持するプラテンローラ120と、ピンチローラ132と、キャプスタンローラ134と、熱転写シート150の供給リール142および巻取りリール144と、表面性改質シート170の巻取りリール162および供給リール164と、を備える。
【0028】
記録紙200は、サーマルプリンタ100において画像を形成する被記録媒体であって、例えば昇華転写用印画用紙等を用いることができる。また、プラテンローラ120は、印画時に記録紙200を保持し、サーマルヘッド110と対向して設けられる。ピンチローラ132とキャプスタンローラ134とは、記録紙200を挿通可能に接触して設けられている。ピンチローラ132とキャプスタンローラ134とは、互いに反対方向に同期回転して記録紙200を所定方向へ搬送し、また、回転方向を反転して当該所定方向とは反対方向に記録紙200を搬送する搬送部130を構成する。プラテンローラ120、ピンチローラ132、およびキャプスタンローラ134、さらにローラ駆動機構(図示せず。)により、記録紙200を搬送する搬送機構が構成される。
【0029】
熱転写シート150は、画像を形成するため記録紙200に熱転写される染料を保持するシートである。熱転写シート150の詳細な構成を図2に示す。熱転写シート150には、リボン状の基材シート153に、染料を保持する染料層151と、記録紙200の表面に形成された画像の表面に熱転写され、画像を保護する保護材層156とが、基材シート153の長手方向に並んで形成されている。この熱転写シート150は、通常、インクリボンと称される。なお、基材シート153の裏面側には耐熱滑性層154が形成されており、基材シート153の表面側には易接着層155が形成されている。
【0030】
染料層151は、1または複数色の染料を保持しており、本実施形態では、イエロー(Y)染料層151Y、マゼンタ染料層(M)151M、シアン染料層(C)151Cの3色の染料を保持している。この他、染料層151は、例えばブラックの染料層を備えてもよい。図2では、イエロー染料層151Yの先端位置をY1s、後端位置をY1eで表し、マゼンタ染料層151Mの先端位置をM1s、後端位置をM1eで表し、シアン染料層151Cの先端位置をC1s、後端位置をC1eで表している。染料層151は、図2に示すように、易接着層155を介して基材シート153上に形成されており、記録紙200の表面に昇華転写または溶融転写により転写される。
【0031】
保護材層156は、基材シート153の表面側に形成された易接着層155上に、さらに剥離層157を介して形成されている。図2では、保護材層156の先端位置をL1s、後端位置をL1eで表している。保護材層156は、記録紙200の表面に形成された画像の耐摩耗性、耐薬品性等を向上させるために記録紙200の表面に転写される。また、保護材層156に紫外線吸収剤を添加することにより、画像の耐光性を向上させることも可能である。保護材層156としては、例えば、ポリスチレン樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることができる。あるいは、記録紙200およびその表面に形成された画像表面への保護材層156の接着性を良好にするため、保護材層156の最上層に接着層(図示せず。)を設けてもよい。例えば、保護材層156を、ポリスチレン樹脂の上層にアクリル偏性樹脂を設けた2層構造として構成してもよい。
【0032】
熱転写シート150には、イエロー染料層151Y、マゼンタ染料層151M、シアン染料層151Cの各染料層と保護材層156との4つの領域からなる領域を1つの単位領域として、複数単位の領域が設けられる。各単位領域のイエロー染料層151Y、マゼンタ染料層151M、シアン染料層151C、そして保護材層156の先頭には、それぞれ各領域の先頭位置を示す位置検出マーク152Y、152M、152C、152Lが設けられる。位置検出マーク152Y、152M、152C、152Lは、基材シート153を幅方向に横断して形成された線状のマーキングである。なお、各単位領域の先頭に設けられるイエロー染料層151Yの位置検出マーク152Yは2本の線からなり、マゼンタ染料層151M、シアン染料層151C、保護材層156の位置検出マーク152M、152C、152Lは1本の線からなる。
【0033】
このような熱転写シート150は、図1に示すように、供給リール142と巻取りリール144とによって張設されて、リボンカセット(図示せず。)に収納されている。リボンカセットは、画像形成装置本体に着脱可能に設けられる。リボンカセットが画像形成装置本体に装着されると、熱転写シート150は、サーマルヘッド110とプラテンローラ120とに挟まれて、記録紙200の搬送に同期して走行される。なお、供給リール142および巻取りリール144は、熱転写シート150を所定方向に走行させる熱転写シート走行機構を構成している。なお、熱転写シート150、供給リール142および巻取りリール144は、必ずしもリボンカセットに収納されていなくてもよく、それぞれ画像形成装置本体の所定位置に設けて動作させるようにすることもできる。
【0034】
また、熱転写シート走行機構による熱転写シート150の走行経路の途中には、光センサ146が設けられる。光センサ146は、熱転写シート150に形成された位置検出マーク152Y、152M、152C、152Lを検出するものであり、光センサ146の検出結果に基づき、記録紙200に転写させる色の染料層が転写位置にセットされる。このため、光センサ146は、各位置検出マーク152Y、152M、152C、152Lを当該光センサ146が検出したときに、対応する染料層152Y、152M、152Cまたは保護材層156が転写位置に位置するように、サーマルヘッド110とプラテンローラ120との対向する位置から所定距離だけ離隔した位置に設けられる。
【0035】
表面性改質シート170は、記録紙200に形成された画像を保護する保護層の表面状態を改質する表面性改質部材となる、リボン状のシートである。表面性改質シート170は、図3に示すように、リーダーシート171a、171bと、リーダーシート171a、171bの間に設けられた改質シート174とからなる。
【0036】
リーダーシート171a、171bは、表面性改質シート170の位置出しを行うために設けられた、引っ張り強度の高いシートであり、それぞれ端部が巻取りリール162、供給リール164に固定されている。リーダーシート171a、171bは、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)からなる。
【0037】
第1のリーダーシート171aは、供給リール164に固定されており、処理開始位置検知穴175が設けられている。処理開始位置検知穴175は、熱転写シート150の染料を昇華させるサーマルヘッド110による加熱処理の開始を検出するための穴である。処理開始位置検知穴175による位置検出は、図4に示すようなセンサアクチュエータによって行われる。センサアクチュエータは、回転軸190a回りに回転可能に設けられた支持部190と、支持部190の切り欠き部190bに支持軸192aが嵌め込まれ、表面性改質シート170上に載置されるコロ部192とからなる。コロ部192は、表面性改質シート170の表面を傷つけることのないよう、表面性改質シート170の移動に伴い従動回転する。
【0038】
コロ部192は、通常は図4の状態(A)のように表面性改質シート170上に位置するが、表面性改質シート170が移動され加熱処理が必要な状態となると、状態(B)に示すように処理開始検知穴175にコロ部192が落下し入り込む。センサアクチュエータは、この重力方向へのコロ部192の移動を検知することで、加熱処理の開始を検出する。そして、状態(B)からさらに表面性改質シート170が移動されると、状態(C)に示すようにコロ部192が再び表面性改質シート170上に位置するようになる。
【0039】
処理開始位置検知穴175は、センサアクチュエータのコロ部192との引っかかりを低減するため、表面性改質シート170の移動方向に勾配を持たせた形状に形成してもよい。本実施形態の処理開始位置検知穴175は、図3に示すように、略六角形の形状に形成されているが、本発明はかかる例に限定されず、例えばひし形等の形状としてもよい。これにより、コロ部192が処理開始位置検知穴175に入り込みやすく、かつ出易くすることができる。なお、この処理開始位置検知穴175がコロ部192からの負荷を繰り返し受けることからも、表面性改質シート170にはこの負荷にも耐え得る強度を有する材料を用いる必要がある。
【0040】
第2のリーダーシート171bは、巻取りリール162に固定されており、サーマルヘッド110を逃すために形成された開口部172と、格納位置検知穴176とが設けられている。
【0041】
開口部172は、熱転写シート150により染料を記録紙200へ転写させる際に、開口部172でサーマルヘッド110を通過させて熱転写シート150にサーマルヘッド110を押し当てるために形成される(図7参照)。開口部172の幅は、サーマルヘッド110の主走査方向長さ(図3の紙面垂直方向)よりもやや大きめに形成されており、通常の印画時および保護層形成時には、印画紙に対して熱転写シート150を介してサーマルヘッド110が押し付けられる。これにより、印画紙および熱転写シートを移動させながらサーマルヘッド110を用いて画像を形成し、さらにその上に保護層を形成するという、通常の印画動作を行うことができるようになる。
【0042】
開口部172が形成された位置では、表面性改質シート170の幅方向(走行方向と直交する方向)の両端部分である側部172aにのみリーダーシート171bが残存している。側部172aは、表面性改質シート170の走行によって張力がかかると内側に寄ろうとする傾向があり、この状態で表面性改質シート170を走行させると、表面性改質シート170が収容されている表面性改質シートカートリッジの出入り用隙間に引っかかってしまう。
【0043】
そこで、第2のリーダーシート171bを、巻取りリール162に1周以上巻回させることで、開口部172の側部が確実に平行となるようにする。すなわち、図3に示すように、第2のリーダーシート171bが巻取りリール162に固定された位置から開口部172の巻取りリール162側の一辺までの長さLが、少なくとも巻取りリール162の周長以上に構成される。これにより、表面性改質シート170を安定して走行させるようにすることができる。また、開口部172の側部172aが表面性改質シート170の内側へ寄ろうとする力に対して内側の規制位置を決めるようにする規制部材を設けることで、側部172aが確実に平行となるようにさせることができる。なお、規制部材の詳細については後述する。
【0044】
また、リーダーシート171は、薄いシートであるため湾曲しやすい。このため、開口部172は、表面性改質シート170が収容される表面性改質シートカートリッジから引き出される際、出入り用隙間に引っかかりやすい傾向がある。そこで、本実施形態では、開口部172の走行方向に対して直交する辺の少なくとも一辺を、図3に示すように、表面性改質シート170の走行方向に、開口部172の外側に向かって突出した形状に形成する(符号172b)。これにより、表面性改質シートカートリッジの出入り用隙間での引っかかりをなくすことができる。
【0045】
本実施形態では、開口部172の改質シート174側の一辺のみ走行方向に突出する形状としたが、本発明はかかる例に限定されず、巻取りリール162側の辺も走行方向に突出する形状としてもよい。本実施形態の構成では、第2のリーダーシート171bは巻取りリール162に1周以上巻回されることから、巻取りリール162側の一辺は、巻取りリール162から僅かしか引き出されない。したがって、開口部172の改質シート174側の一辺が少なくとも走行方向に突出する形状とされていればよい。
【0046】
格納位置検知穴176は、表面性改質シート170が供給リール164に巻回され格納された状態を検出するための穴である。格納位置検知穴176による位置検出は、処理開始位置検知穴175による位置検出と同様、図4に示すセンサアクチュエータによって行われる。すなわち、表面性改質シート170上に位置するコロ部192は、表面性改質シート170が移動され供給リール164に格納されると、格納位置検知穴176にコロ部192が落下し入り込む。センサアクチュエータは、この重力方向へのコロ部192の移動を検知することで、表面性改質シート170が供給リール164に格納されたことを検出する。かかる状態が検知されると、表面性改質シート170の移動が停止される。
【0047】
改質シート174は、表面性改質処理を行うために用いられる部材であり、表面仕上げに応じた材質のシートが設けられる。本実施形態では、印画物の保護層表面に光沢性を持たせる鏡面加工を行うための改質シート174が設けられている。鏡面加工を行うための改質シート174としては、例えば表面が極めて平坦なポリイミドフィルムを用いることができ、具体的にはユーピレックスS(登録商標)やカプトン(登録商標)等である。これに以外にも、改質シート174として、例えば、ポリサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート等を用いてもよい。
【0048】
表面改質処理時には、保護層は適度に軟化した状態で改質シート174と密着した状態となるため、保護層の表面状態は、改質シート174の表面状態に倣って平坦となる。そして、サーマルヘッド110による加熱処理が終了して、サーマルヘッド110が改質シート174から離隔され、保護層が冷却した後に改質シート174から記録紙200が当該改質シート174から剥離される。印画物の保護層表面は、こうして改質シート174の平坦面が保護層に転写されることで、極めて平坦で光沢のある表面に仕上げられる。
【0049】
なお、ポリイミドフィルムは他の材質の改質シート174と比較して保護層との接着性が低い。他の材質の改質シート174は、表面改質処理時に、熱可塑性樹脂である保護層がある程度軟化した状態でも保護層と密着して接着してしまい、保護層内部で凝集破壊が生じてしまう。そうすると、表面改質処理後に両者を剥離する際に剥離不良が発生し、十分に保護層表面に光沢を出すことができなくなる可能性がある。そこで、本実施形態のように改質シート174にポリイミドフィルムを用いることで、保護層内部での凝集破壊が生じたりすることによる剥離不良の発生をなくすことができ、印画物の保護層表面に良好な光沢性を与えることができる。
【0050】
ここで、リーダーシート171a、171bと改質シート174との繋ぎ部は、各シートが重ね合わせられているため、繋ぎ部の厚みと当該繋ぎ部以外における厚みとは異なってくる。このようなシートの繋ぎ部で段差が生ずると、表面性改質シートカートリッジの出入り用隙間(図9の符号161d、161e等)等で表面性改質シート170が引っかかる可能性がある。このため、繋ぎ部の段差は最小限にするのが望ましい。
【0051】
本実施形態では、リーダーシート171a、171bおよび改質シート174の繋ぎ部での厚みを他の部分よりも小さくし、繋ぎ部での厚みが、繋ぎ部以外での厚みとほぼ同一となるようにする。繋ぎ部では、例えばテープを用いて各シートを接続することができる。これにより、表面性改質シート170全体がほぼ均一な厚みとなり、表面性改質シートカートリッジの出入り用隙間等で表面性改質シート170が引っかかりをなくすことができる。
【0052】
<2.画像形成処理>
上述した画像形成装置では、図5A、図5Bに示す処理によって記録紙200に画像が形成される。以下、図5Aおよび図5Bに基づいて、本実施形態の画像形成装置による画像形成処理について説明する。なお、図5Aおよび図5Bは、本実施形態の画像形成装置による画像形成処理を示すフローチャートである。
【0053】
本実施形態の画像形成装置による画像形成処理は、熱転写シート150を用いた画像形成処理(S100〜S114)と、形成された画像の表面性改質処理(S115〜S134)とに大別される。まず、画像形成装置は、記録紙200に形成する画像データが入力されると、画像形成装置の制御部(図示せず。)は、記録紙200を所定方向に搬送するとともに、サーマルヘッド110、熱転写シート150および表面性改質シート170を初期位置に移動させる(S100)。記録紙200は、プラテンローラ120、ピンチローラ132およびキャプスタンローラ134がローラ駆動機構(図示せず。)により駆動されることにより所定方向に搬送される。初期状態において、表面性改質シート170は、巻取りリール162および供給リール164により構成される表面性改質シート走行機構によって走行され、サーマルヘッド110の熱転写シート150への押し付け位置に開口部172が位置するように移動される。
【0054】
次いで、熱転写シート150の供給リール142および巻取りリール144から構成される熱転写シート走行機構によって、熱転写シート150が移動される。これにより、記録紙200に対して画像を形成する位置に、図2に示す熱転写シート150の各染料層151Y、151M、151Cのいずれか1つの領域が位置される。熱転写シート150の位置合わせは、熱転写シート150に形成された位置検出マーク152Y、152M、152Cを検出可能なセンサ(図示せず。)の検出結果に基づき行うことができる。
【0055】
本実施形態では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)およびシアン(C)の3つの染料層151Y、151M、151Cが熱転写シート150に設けられている。例えば、まず、熱転写シート走行機構によりイエロー染料層151Yを画像形成位置に移動させた状態で熱転写シート150を介してサーマルヘッド110をプラテンローラ120に押圧させる。この状態で、サーマルヘッド110により熱転写シート150に熱エネルギを印加し、熱転写シート150のイエロー染料層151Yを記録紙200の表面に熱転写することによりイエローの画像が形成される(S102)。その後、記録紙200は、ピンチローラ132およびキャプスタンローラ134によって、次の色の画像を形成するために、初期位置に戻される(S104)。
【0056】
次に、イエローの画像の形成と同様に、マゼンタ染料層151Mを画像形成位置に移動して記録紙200の表面にマゼンタの画像を形成した後(S106)、記録紙200は再び初期位置に戻される(S108)。そして、シアン染料層151Cを画像形成位置に移動して記録紙200の表面にシアンの画像を形成した後(S110)、記録紙200は再び初期位置に戻される(S112)。これにより、記録紙200に対して所望の染料層151Y、151M、151Cによって画像が形成される。
【0057】
その後、記録紙200に形成された画像と熱転写シート150の保護材層156とを対向させた状態で、熱転写シート150を介してサーマルヘッド110をプラテンローラ120に押圧させる。この状態で、サーマルヘッド110により熱転写シート150に熱エネルギを印加し、熱転写シート150の保護材層156を記録紙200に形成された画像上に熱転写する(S114)。このとき、熱転写シート150は、熱転写シート走行機構により走行される。そして、センサ(図示せず。)が保護材層156の位置を示す位置検出マーク152Lを検出することにより、熱転写シート150の位置を認識して、熱転写シート150の保護材層156を画像形成位置に位置合わせすることができる。
【0058】
保護材層156が記録紙200の表面に転写されると、画像の表面に形成された保護層の表面状態はまだ改質されていない。そこで、ステップS115〜S134の処理により、ユーザにより指定された表面状態に保護層が改質される。まず、制御部は、ユーザによって指定された表面状態の仕上げ種類を確認する(S115)。図5Bに示す処理手順では、表面状態を光沢仕上げ、またはマット調仕上げのいずれかを選択できるようになっているが、この選択は、表面性改質シート170に設けられた表面性改質部の種類によって決まる。例えば、本実施形態の表面性改質シート170のように、光沢仕上げを行う改質シート174のみが設けられているときには、光沢仕上げ処理(S116〜S124)のみが実行可能となる。
【0059】
光沢仕上げ処理が指定されている場合には、まず、記録紙200が初期位置まで走行され(S116)、熱転写シート150が巻き戻される(S118)。このとき、熱転写シート150は、保護材層156が記録紙200に転写される前の位置、すなわち先端位置L1sの位置まで巻き戻される(S120)。その後、表面性改質シート170を巻取りリール162および供給リール164によって走行させ、画像形成位置に、開口部172から改質シート174が位置するようにされる(S122)。このように、記録紙200の画像上に形成された保護層と、表面性改質シート170の改質シート174とが位置合わせされた後、これらをサーマルヘッド110によって加圧しながら加熱する。そして、冷却後に改質シート174を記録紙200から剥離すると、改質シート174の平坦面が保護層に転写され、画像表面に光沢性が与えられる(S124)。
【0060】
ステップS115にてマット調仕上げ処理が指定されている場合も同様に、まず、記録紙200が初期位置まで走行され(S126)、熱転写シート150が巻き戻される(S128)。このとき、熱転写シート150は、保護材層156が記録紙200に転写される前の位置、すなわち先端位置L1sの位置まで巻き戻される(S130)。その後、表面性改質シート170を巻取りリール162および供給リール164によって走行させ、画像形成位置に、開口部172からマット調仕上げを行う表面性改質部が位置するようにされる(S132)。このように、記録紙200の画像上に形成された保護層と、表面性改質シート170のマット調仕上げを行う表面性改質部とが位置合わせされた後、これらをサーマルヘッド110によって加圧しながら加熱する。そして、冷却後に当該表面性改質部を記録紙200から剥離すると、保護層への転写が行われ、画像表面がマット調となる(S134)。
【0061】
他の種類の表面性改質部による表面性改質処理も、ステップS116〜S134と同様に行うことができる。このように、画像の表面性改質処理が終了すると、プラテンローラ120の回転とともに熱転写シート150、表面性改質シート170および記録紙200が搬送方向下流側に移動され、サーマルヘッド110から離隔される。そして、熱転写シート150、表面性改質シート170および記録紙200の温度がほぼ所定値以下となり冷却された状態となった後に、表面性改質シート170が記録紙200から剥離される。
【0062】
次いで、表面性改質シート170を移動させ、開口部172が画像形成位置となるように改質シート174を退避させた後(S135)、供給リール142および巻取りリール144により、熱転写シート150を巻き上げて使用された染料層151および保護材層156を供給リール144に巻き取る(S136)。そして、次の記録紙200に画像を形成するための染料層151および保護材層156が供給リール142から供給され、初期位置まで走行される(S138)。一方、記録紙200は、切断部(図6、図7の符号180)により所定サイズに切断された後、画像形成装置の排出口から排出される(S140)。その後、終了処理が行われ(S142)、本実施形態に係る画像形成装置による画像形成処理が終了する。
【0063】
なお、複数枚の印画を連続的に行う場合で、各印画物の表面仕上げ状態が異なる場合であっても、図5Aおよび図5Bの処理を印画物毎に繰り返し行うことにより、指定された表面仕上げ状態を実現することができる。
【0064】
<3.表面性改質シートカートリッジの構成>
本実施形態に係る画像形成装置では、表面性改質シート170を、熱転写シート150を収容するリボントレーと一体化し、駆動原を表面性改質シートカートリッジ外部に配置している。これにより、表面性改質シート170を画像形成装置本体から容易に着脱することができ、装置を小型化することもでき、メンテナンス性も向上させることができる。以下、図6〜図15に基づいて、本実施形態に係る表面性改質シートカートリッジの構成について詳細に説明する。
【0065】
[画像形成装置における表面性改質シートカートリッジの配置]
図6および図7に、本実施形態に係る画像形成装置における表面性改質シートカートリッジ160および熱転写シート150の配置を示す。
【0066】
図6は、熱転写シート150および表面性改質シートカートリッジ160に収容された表面性改質シート170の走行時の状態を示す説明図である。熱転写シート150および表面性改質シート170は、それぞれの位置出し動作時(走行時)において、各シートが互いに影響を及ぼすことがないように、各シートの走行パスは離隔されている。図6に示す状態は、表面性転写シートカートリッジ160をリボントレーから着脱するときの状態でもある。
【0067】
一方、表面性改質処理時には、図7に示すように、サーマルヘッド110が待機位置より上昇され、印画紙200、表面性改質シート170および熱転写シート150をプラテンローラ120との間に挟み込む。このように、画紙200、表面性改質シート170および熱転写シート150が押圧された状態で、加熱しながら搬送されることで表面性改質処理が行われる。
【0068】
表面性改質処理時に、熱転写シート150と表面性改質シート170とは略平行に搬送させる必要がある。搬送方向に角度が生じた場合、各シート150、170や記録紙200に発生するしわ等の原因となり、表面性の品位の妨げとなる。したがって、熱転写シート150の供給リール142および巻取りリール144、および表面性改質シート170の巻取りリール162および供給リール164の4本を平行に配置させなければならない。そこで、これらのリール142、144、162、164の位置出しを行う位置出し部を表面性改質シートカートリッジに形成する。また、表面性改質処理中に駆動力が加わることによって各リール142、144、162、164の平行度がずれないようにするため、表面性改質シートカートリッジに固定機構を設けている。さらに、表面性改質シート170の第2のリーダーシート171bの開口部172の側部172aが張力によって内側に寄るのを防止するため、規制部材を設けている。
【0069】
以下では、上記のような表面性改質シート170を収容する表面性改質シートカートリッジ160の構成について、より詳細に説明していく。なお、図8は、本実施形態に係る表面性改質シートカートリッジ160とリボントレー140との配置関係を示す概略斜視図である。図9は、本実施形態に係る表面性改質シートカートリッジ160の構成を示す概略斜視図である。図10は、本実施形態に係る表面性改質シートカートリッジ160の構成を示す概略断面図である。図11は、本実施形態に係る表面性改質シートカートリッジ160の構成を示す概略平面図である。図12は、図11の領域Bの部分拡大図である。図13は、図6の領域Cを示す部分拡大図である。図14は、図6の領域Dを示す部分拡大図である。図15は、本実施形態に係る表面性改質シートカートリッジ160とリボントレー140との接続関係を示す背面図である。
【0070】
[表面性改質シートカートリッジの構成]
本実施形態に係る表面性改質シート170は巻取りリール162、供給リール164とともにケース161に収容されて、表面性改質シートカートリッジ160を構成している。表面性改質シートカートリッジ160は、図8に示すように、画像形成装置に設けられた、熱転写シート150を収容するリボントレー140に装着される。表面性改質シートカートリッジ160がリボントレー140に装着されると、図6に示すように、熱転写シート150を支持する供給リール142および巻取りリール144が、表面性改質シート170を支持する巻取りリール162および供給リール164によって挟み込まれた状態となる。
【0071】
表面性改質シートカートリッジ160のケース161は、図9に示すように、巻取りリール162を覆う略筒状の第1部分161aと、供給リール164を覆う略筒状の第2部分161bと、第1部分161aおよび第2部分161bの両端を連結する2つの連結部分161cとからなる。第1部分161aには、表面性改質シート170の第2のリーダーシート171bの一端が固定された巻取りリール162が収容されている。巻取りリール162には、テンションを発生させるためトルクリミッタ163が設けられている。また、巻取りリール162から供給される表面性改質シート170の位置を規制する規制部材166、167が、第1部分161aと連結部分161cとの接続部分に設けられている。
【0072】
第2部分161bには、表面性改質シート170の第1のリーダーシート171aの一端が固定された供給リール164が収容されている。供給リール164にも巻取りリール162と同様に、トルクリミッタ163が設けられている。また、第2部分161bの、リボントレー140と対向する面には、各リール142、144、162、164を平行に配置させるための位置出し部材169が設けられている。
【0073】
第1部分161aおよび第2部分161bの両端を連結する2つの連結部分161cは、表面性改質シート170の側部を支持する。これにより、表面性改質シート170が張った状態を保持し易くなる。また、第1部分161aおよび第2部分161bの両端のみを連結部分161cで連結することで、第1部分161a、第2部分161b、および2つの連結部分161cによって開口部分が形成される。ケース161の開口部分の内周面には、表面性改質シート170が走行可能なように出入り用隙間が形成されている。
【0074】
出入り用隙間は、第1部分の隙間161d、第2部分の隙間161e、そして各連結部分161cの隙間からなる。出入り用隙間は、表面性改質シート170が走行可能な程度に、表面性改質シート170の厚さよりも大きな隙間であればよい。また、出入り用隙間は、表面性改質シート170をケース161内部に引き込み易くするため、出入り部の形状を広げるようにしてもよい。例えば、図10に示すように、第1部分161aの出入り用隙間161dの出入り部160a、160bを、表面性改質シート170の走行路を広げるように断面形状を斜めにする。これにより、表面性改質シート170をスムーズに走行させることができる。
【0075】
開口部分に表面性改質シート170の改質シート174を露出させ、記録紙200および熱転写シート150とともにサーマルヘッド110とプラテンローラ120とで挟む込むことにより、画像の表面状態を改質することができる。また、熱転写シート150によって記録紙200に画像を形成するときには、図11に示すように、ケース161の開口部分に表面性改質シート170の開口部172を位置させる。これにより、サーマルヘッド110が表面性改質シート170に接触しないようにすることができる。
【0076】
(規制部材)
表面性改質シートカートリッジ160には、上述したように、表面性改質シート170(特に、開口部172の側部172a)が内側に寄らないようにするため、巻取りリール162にリーダーシート171bが少なくとも1周以上巻回されている。さらに、ケース161の第1部分161aと連結部分161cとの連結位置には、規制部材166、167が設けられている。図11の領域Bを拡大すると、図12に示すように、規制部材166は、フランジ部166aを備える円柱部材により構成することができる。
【0077】
規制部材166のフランジ部166aは、ケース161の開口部分側に設けられ、表面性改質シート170の開口部172の側部172aとフランジ部166aとが当接するように設けられる。これにより、表面性改質シート170が開口部分(内側)に寄っていこうとする力に対向して内側への寄りを規制することができ、表面性改質シート170の開口部172の側部172aの平行度を保持することができる。
【0078】
なお、図3に示すように、第2のリーダーシート171bの幅は、一部において開口部172の幅よりも大きくなっている。したがって、かかる部分では規制部材166のフランジ部166a上に第2のリーダーシート171bが乗り上げることになる。一方、第1のリーダーシート171aおよび改質シート174の幅は、開口部172の幅より小さいため、規制部材166のフランジ部166aは、各シート171b、174の外側に位置するようになる。また、本実施形態では、動作上負荷の低いフランジ付きのコロ形状に規制部材166を形成したが、本発明はかかる例に限定されない。
【0079】
(固定部材)
表面性改質シートカートリッジ160は、図6、図7に示すように、印画機構部であるメディアトレーに備えられたリボントレー140に装着して使用される。表面性改質処理等、画像形成装置が起動しているときには、各部材を駆動する駆動力によって、熱転写シート150用の供給リール142、巻取りリール144、表面性改質シート170用の巻取りリール162、供給リール164の平行度がずれる可能性がある。そこで、本実施形態に係る画像形成装置のリボントレー140および表面性改質シートカートリッジ160の装着時に、装着位置を固定する固定部材が表面性改質シートカートリッジ160に設けられている。
【0080】
本実施形態においては、図7の領域Cおよび領域Dに固定部材が設けられている。すなわち、表面性改質シートカートリッジ160をリボントレー140に装着したとき、領域Cにおいては、図13に示すように、リボントレー140の突起部140aとケース161の第2部分161bに設けられた固定部材168とが係合する。また、領域Dにおいては、図14に示すように、リボントレー140の突起部140aとケース161の第1部分161aに設けられた固定部材(係合部)168とが係合する。
【0081】
このようなロック機構は、表面性改質シートカートリッジ160を取り外す際には容易に解除できると、表面性改質シートカートリッジ160の着脱が容易になる。そこで、本実施形態では、図13、図14に示すような爪状の固定部材168を表面性改質シートカートリッジ160に設け、爪とリボントレー140の突起部140aとの引っかかりを利用して表面性改質シートカートリッジ160をリボントレー140に固定している。しかし、本発明はかかる例に限定されず、他のロック機構によって表面性改質シートカートリッジ160をリボントレー140に固定してもよい。
【0082】
(位置出し部材)
本実施形態に係る表面性改質シートカートリッジ160には、熱転写シート150用の供給リール142、巻取りリール144、表面性改質シート170用の巻取りリール162、供給リール164を平行に配置するための位置出し部材169が設けられている。位置出し部材169は、図9に示したように、ケース161の第2部分161bの、リボントレー140と対向する位置に形成されている。位置出し部材169は、円筒形状の部材であり、その内部には、リボントレー140に設けられた、鉛直上方に突出する嵌合部140bが嵌合される。すなわち、位置出し部材169および嵌合部140bは、これらを嵌合させたとき、各リール142、144、162、164が平行となる位置に形成される。
【0083】
例えば、図15に示すように、ケース161の第2部分161bの両端部分に2つの位置出し部材169が設けられるとともに、当該位置出し部材169に対応する位置に2つの嵌合部140bが設けられる(状態(A))。そして、表面性改質シートカートリッジ160をリボントレー140に装着すると、位置出し部材169と嵌合部140bとが嵌合し、表面性改質シートカートリッジ160の位置が規定される(状態(B))。
【0084】
なお、本実施形態では、図15に示すように、2つの位置出し部材169を設けたが、本発明はかかる例に限定されず、3以上の位置出し部材を設けてもよい。また、本発明は、位置出し部材による位置出し機構もかかる例に限定されず、他の構成によってリールの位置出しを行うようにしてもよい。さらに、本実施形態では、表面性改質シートカートリッジ160とリボントレー140によってリールの位置出しを行ったが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、画像形成装置本体に、表面性改質シートカートリッジ160の位置出し部材169と対応する嵌合部を設けるようにすることで、より正確にリールの位置出しを行うことができる。
【0085】
以上、本実施形態に係る画像形成装置の構成と、これに設けられる表面性改質シートカートリッジ160および表面性改質シート170の構成について説明した。本実施形態に係る画像形成装置は、形成された印画物の表面状態を、表面性改質処理により光沢仕上げやマット調仕上げをはじめとする各種の表面仕上げ状態とすることができる。表面性改質処理を行う表面性改質シートカートリッジ160は、画像形成装置に着脱可能に設けられ、当該カートリッジの外に設けられた駆動機構によって駆動される。これにより、画像形成装置本体から表面性改質シートカートリッジ160を容易に取り外すことができ、取り扱い性を向上させることができる。
【0086】
また、表面性改質シート170を画像形成装置本体から着脱可能なカートリッジ形状として構成することで、装置の小型化を実現できるとともに、複数回使用による表面性改質シート170の劣化に伴うメンテナンスを容易に行うことができる。また、他の表面性品質を得る目的で異なる表面性改質部を備える表面性改質シートに交換する場合にも、安価で容易に交換することが可能である。
【0087】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0088】
例えば、上記実施形態では、表面性改質シート170は、表面性改質部である改質シート174として光沢仕上げ用のシートのみを設けたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、光沢仕上げ用に加えて、マット調仕上げ用、絹目仕上げ用等の表面性改質部を設けてもよい。もちろん、これ以外の仕上げ用の表面性改質部を設けてもよく、また、これらの種類の数や配列順等も特に限定されない。また、表面性改質シート170に複数の表面性改質部を設けた場合に、各仕上げ用の表面性改質部をそれぞれ1つずつ表面性改質シート170に設けてもよく、表面性改質部の使用頻度に応じて、使用頻度の高い表面性改質部は複数設けるなど、適宜設定してもよい。
【0089】
また、上記実施形態に係る画像形成装置は、昇華式の画像形成装置であったが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、溶融転写式のサーマルプリンタや、熱転写シートを用いずに感熱タイプの記録紙に記録する感熱式のサーマルプリンタにおいても適用可能である。
【符号の説明】
【0090】
100 サーマルプリンタ
110 サーマルヘッド
120 プラテンローラ
132 ピンチローラ
134 キャプスタンローラ
140 リボントレー
142 供給リール
144 巻取りリール
150 熱転写シート
151 染料層
156 保護材層
160 表面性改質シートカートリッジ
161 ケース
162 巻取りリール
163a、163b トルクリミッタ
164 供給リール
166、167 規制部材
168 固定部材
169 位置出し部材
170 表面性改質シート
171a、171b リーダーシート
172 開口部
172a 側部
174 改質シート
175 処理開始位置検知穴
176 格納位置検知穴
200 記録紙


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔を有して平行に配置された2つのリールと、
前記2つのリールに端部がそれぞれ固定されており、前記2つのリールに巻回されて前記2つのリールの間で張設される表面性改質シートと、
前記2つのリールおよび前記表面性改質シートを収容する筐体部と、
を備え、
前記筐体部は、前記2つのリールの間に位置する前記表面性改質シートの一部を露出する貫通部を有する、表面性改質シートカートリッジ。
【請求項2】
前記表面性改質シートは、
前記表面性改質処理時にサーマルヘッドにより加熱押圧される表面性改質部と、
一方の前記リールに固定された前記端部と前記表面改質部の一端とを接続する第1の中間部および他方の前記リールに固定された前記端部と前記表面改質部の他端とを接続する第2の中間部と、
を備え、
前記第1の中間部または前記第2の中間部のうちいずれか一方に、印刷時に前記サーマルヘッドを通過させる矩形状の開口部が形成され、
前記開口部の、前記表面性改質シートの走行方向に対して略直交する辺のうち少なくとも一方は、前記開口部の外部に向かって前記走行方向に突出する形状を有する、請求項1に記載の表面性改質シートカートリッジ。
【請求項3】
前記第1の中間部および前記第2の中間部には、前記表面性改質シートの搬送状態を検知する検知穴がそれぞれ形成される、請求項2に記載の表面性改質シートカートリッジ。
【請求項4】
前記各検知穴は、前記表面性改質シートの走行方向に突出する形状を有する、請求項3に記載の表面性改質シートカートリッジ。
【請求項5】
前記開口部が形成されている前記第1の中間部または前記第2の中間部は、いずれの走行状態においても、少なくとも前記リールの周長以上の長さが前記リールに巻回されている、請求項2に記載の表面性改質シートカートリッジ。
【請求項6】
前記表面性改質部と前記第1の中間部および前記第2の中間部とは、異なる材質で形成されている、請求項2に記載の表面性改質シートカートリッジ。
【請求項7】
前記表面性改質部は、ポリイミドからなり、
前記第1の中間部および前記第2の中間部は、ポリエチレンテレフタレートからなる、請求項6に記載の表面性改質シートカートリッジ。
【請求項8】
前記表面性改質部と前記第1の中間部および前記第2の中間部とは、略同一厚みである、請求項2に記載の表面性改質シートカートリッジ。
【請求項9】
前記表面性改質部と前記第1の中間部および前記第2の中間部とが接合されている接合部の厚みは、前記表面性改質部、前記第1の中間部および前記第2の中間部の前記接合部以外の厚みと同一である、請求項8に記載の表面性改質シートカートリッジ。
【請求項10】
所定の間隔を有して平行に配置された2つのリールと、
前記2つのリールに端部がそれぞれ固定されており、前記2つのリールに巻回されて前記2つのリールの間で張設される、複数の染料層領域と保護材層領域とを有する熱転写シートと、
前記2つのリールおよび前記熱転写シートを収容する筐体部と、
を備える熱転写シートカートリッジと、
所定の間隔を有して平行に配置された2つのリールと、
前記2つのリールに端部がそれぞれ固定されており、前記2つのリールに巻回されて前記2つのリールの間で張設される表面性改質シートと、
前記2つのリールおよび前記表面性改質シートを収容する筐体部と、
を備える表面性改質シートカートリッジと、
からなり、
前記熱転写シートカートリッジと前記表面性改質シートカートリッジとは互いに着脱可能に設けられる、画像形成カートリッジ。
【請求項11】
前記熱転写シートカートリッジの2つのリールと、前記表面性改質シートカートリッジの2つのリールとは、略平行に設けられ、
前記表面性改質シートカートリッジは、前記熱転写シートカートリッジの2つのリールを、前記表面性改質シートカートリッジの2つのリール間に挟み込むように、前記熱転写シートカートリッジに設けられる、請求項10に記載の画像形成カートリッジ。
【請求項12】
前記表面性改質シートカートリッジの筐体部には、前記熱転写シートカートリッジが設けられた印画機構部に前記表面性改質シートカートリッジを取り付けたとき、前記印画機構部に設けられた突起部に係合する係合部が設けられる、請求項10に記載の画像形成カートリッジ。
【請求項13】
前記表面性改質シートカートリッジの筐体部には、前記熱転写シートカートリッジが設けられた印画機構部に前記表面性改質シートカートリッジを取り付けたとき、前記印画機構部に設けられた嵌合部に嵌合する位置出し部が設けられる、請求項10に記載の画像形成カートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−40800(P2012−40800A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185071(P2010−185071)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】