説明

表面改質ガラスセラミックおよびその調製

【課題】強度と外観が改善されたガラスセラミック製品を製造する方法を提供する。
【解決手段】a)ガラスセラミックのガラス前駆体を成形する工程、b)ガラス前駆体の表面の少なくとも一部の上に、Zn,Cu,Zr,La,Nb,Y,Ti,Ge,V,Snおよびそれらの混合物の化合物および/または金属から選択される少なくとも一種類の結晶化促進化学剤を堆積させる工程、c)セラミック化を確実にする条件下でガラス前駆体を熱処理する工程、d)ガラスセラミックの表面の少なくとも一部の上にZn,Cu,Zr,La,Nb,Y,Ti,Ge,V,Snおよびそれらの混合物の化合物および/または金属から選択される少なくとも一種類の結晶化促進化学剤を堆積させ、核形成温度と最高セラミック化温度の間の温度で熱処理する工程、e)工程bおよび/または工程dで堆積され、遊離したままである結晶化促進化学剤を除去する工程からなる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスセラミック製品およびその製造方法に関する。本発明は、特に、表面が改質されたリチウムアルミノケイ酸塩ガラスセラミック製品およびその製造方法に関する。本発明は、例えば、ガラスセラミックのレンジ台の上面の製造に有用である。
【背景技術】
【0002】
ガラスセラミック製品が、ここ数年でたくさん開発されてきた。それらの製品は、特に、レンジ台の上面、暖房機の窓プレート、平鍋型の調理器具などとして一般に用いられる。そのような製品は、ガラス前駆体(「未処理ガラス」と呼ばれる)をセラミック化することによって得られる。主結晶相としてβ−石英固溶体を含有する製品は通常透明である。主結晶相としてβ−スポジュメン固溶体を含有する製品は通常半透明か不透明である。さらに、ガラスセラミックは、中に着色剤を含有して、特定の色にすることもできる。
【0003】
ガラスセラミック製品を着色する従来技術で公知の技法は、着色金属イオンをガラス前駆体組成物に添加する工程を含む。これは、例えば、コバルト、クロム、鉄、マンガン、ニッケル、バナジウムおよび/またはセリウムをイオンとして含有する製品の塊における着色法である。この着色技法は、工業規模では、うまくやるのが困難である。何故ならば、ある色のあるバッチから、別の色の別のバッチに進むために、通常、製造プロセスを中断しなければならないからである。さらに、塊におけるそのような着色は、表面に金属的な外観を与えることができない。
【0004】
従来技術によれば、ガラスセラミック製品を着色し、装飾する他の方法も提案されている。
【0005】
特許文献1および2には、ガラスセラミック製品を着色する2つの「類似した」方法が記載されている。これら2つの方法は、完成製品に行われ、製品の表面に着色イオンを導入することにある。これらのイオンは、CuCl,CoCl2,NiCl2,MnCl2またはそれらの混合物の形態で気相で導入される(特許文献1)か、またはCo,Ni,Mn,Cr,Feおよびそれらの混合物から選択される金属の酸化物または塩化物の形態で溶液中に溶解される(特許文献2)。これらの着色イオンは、ガラスセラミックの表面に浸透し、その中に拡散する。それらのイオンは、ガラスセラミックの結晶質表面を改質せず、問題のガラスセラミックの表面に金属的な外観を与えない。
【0006】
そのような金属的な外観をガラスセラミック・プレートに与えようと試みるために、従来は、その表面に装飾エナメルを付着させてきた。これは、完成製品に行われる表面処理である。結果は、求められている金属的な外観に関して、完全に満足のいくものではない。
【0007】
ガラスセラミック製品の表面に金属的な外観を与えるという同じ目的で、別の方法が特許文献3に提案された。ガラス前駆体組成物は酸化第1鉄(FeO)を含有し、セラミック化熱処理中に、鉄が表面に浸透し、その上にヘマタイト(α−Fe23)の表面層を生成する。その熱処理は、実施するのに細心の注意を必要とする。セラミック化は別にして、セラミック化を経る製品の塊内のイオンの浸透または拡散を確実に制御しなければならない。
【0008】
そのような状況において、本願の発明者等は、新規のガラスセラミック製品の製造を可能にする、ガラスセラミック製品の表面を装飾および/または着色する新規の表面処理方法を探求した。そのような方法は、上述した従来技術の方法の欠点を克服し、外観に関心のある効果を生じ、それでも、材料の機械的性質を損なわず、刻み(scored)や印がつけられる(marked)能力などのガラスセラミックの固有特性を望ましくないように変更しないべきである。
【0009】
特許文献4には、本体内よりも結晶化度が高い表面層を持ち、それゆえ、本体部分と同じガラスセラミックのみを含有する製品よりも曲げ強度が高いガラスセラミック製品が記載されている。しかし、この文献には、表面改質によって、外観が変化するかどうかについては開示されていない。さらに、表面の結晶化度を高くするためには、この文献に開示されたイオン交換プロセスは、実施するのが不便である。
【0010】
特許文献5には、還元雰囲気の存在下で前駆体ガラスに核を形成する工程を含む表面の結晶化度の高いガラスセラミック製品を製造するプロセスが開示されている。この文献では、表面区域の近くで還元された核形成剤により、結晶化度が高くなることが主張されている。やはり、この文献には、このように製造された製品の外観が変更されているかどうかについては開示されていない。さらに、この文献には、このプロセスが全てのリチウムアルミノケイ酸塩ベースのガラスセラミック製品には適用できるわけではないかもしれないと示唆されている。この文献の請求項において、前駆体ガラスがCuOおよび/またはFe23を含むことが要求されている。さらに、高温核形成プロセスにおける還元雰囲気の存在の要件のために、このプロセスが望ましくなくなっている。
【0011】
特許文献6には、表面の一部を選択的に加熱して、その部分を不透明にする工程を含む、透明なガラスセラミック製品を装飾するプロセスが開示されている。このプロセスには、赤外線ランプなどのハイパワー専用照射線源の使用、および表面への照射線吸収材料の選択的な施用が必要である。
【0012】
特許文献7および8には、リチウムアルミノケイ酸塩ガラスセラミック製品の表面が、結晶化促進剤のコーティングを施して、熱処理することによって、改質されるであろうことが開示されている。結晶化促進剤としては、γ−Al23および界面活性剤、Na2SO4およびNa227が挙げられる。両方の文献に、製品の曲げ強度が結果として改善されたことが開示されているが、製品の外観が変更されているかどうかは明白ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第03/048062号パンフレット
【特許文献2】国際公開第03/048063号パンフレット
【特許文献3】米国特許第3926602号明細書
【特許文献4】米国特許第4764444号明細書
【特許文献5】米国特許第3779856号明細書
【特許文献6】米国特許第3615318号明細書
【特許文献7】特開昭58−185455号公報
【特許文献8】特開昭59−35032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述した従来技術に鑑みて、強度と外観が改善され、製造が容易なガラスセラミック製品が本当に必要とされている。本願の発明者等は、そのような必要性を満たしたガラスセラミック製品を製造するために、リチウムアルミノケイ酸塩ベースのガラスセラミック製品の表面を改質する新たな方法を発明した。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の態様によれば、少なくとも1つの表面により範囲が定められた本体を有してなり、その表面の少なくとも一部が、改質された表面層の下にある本体の結晶化度よりも高い結晶化度を持つ改質表面層を有するものであるリチウムアルミノケイ酸塩ベースのガラスセラミック製品であって、改質された表面層の下の製品の本体と比較して、改質された表面層が、Zn,Cu,Zr,La,Nb,Y,Ti,Ge,V,Snおよびそれらの混合物からなる群より選択される、好ましくはZn,Cu,Zr,La,Nb,Y,Ti,Geおよびそれらの混合物からなる群より選択される、より好ましくはZn,Cu,Zr,La,Nb,Yおよびそれらの混合物からなる群より選択される、最も好ましくはZnおよびCuからなる群より選択される少なくとも一種類の結晶化促進化学元素を多量に含有することを特徴とするガラスセラミック製品が提供される。
【0016】
本発明のリチウムアルミノケイ酸塩ベースのガラスセラミック製品の好ましい実施の形態によれば、その製品の表面は、異なる結晶化度を持つ改質表面層を有する少なくとも2つの区域を含む。
【0017】
本発明のリチウムアルミノケイ酸塩ベースのガラスセラミック製品のある実施の形態によれば、その製品は、本体内にβ−石英固溶体の主結晶相を有し、結晶化度の高い改質表面層にもβ−石英固溶体の主結晶相を有する。
【0018】
本発明のリチウムアルミノケイ酸塩ベースのガラスセラミック製品の別の実施の形態によれば、その製品は、本体内にβ−石英固溶体の主結晶相を有し、結晶化度の高い改質表面層にβ−スポジュメン固溶体の主結晶相を有する。
【0019】
本発明のリチウムアルミノケイ酸塩ベースのガラスセラミック製品のさらに別の実施の形態によれば、その製品は、本体内にβ−スポジュメン固溶体の主結晶相を有し、結晶化度の高い改質表面層にβ−スポジュメン固溶体の主結晶相を有する。
【0020】
本発明のリチウムアルミノケイ酸塩ベースのガラスセラミック製品の好ましい実施の形態によれば、製品は、調理手段の上に取り付けるべき、2つの平行な主要側面を持つレンジ台の上面に意図されたプレートであって、そのプレートを構成するガラスセラミックが、着色されていてもいなくても差し支えない透明なガラスセラミックであり、結晶化度の高い改質表面層が、調理手段に面するように配置すべき主要側面の少なくとも一部を覆っていることを特徴とするプレートである。
【0021】
本発明の第2の態様によれば、ガラスセラミックのガラス前駆体から、少なくとも1つの表面により範囲が定められた本体を有してなるリチウムアルミノケイ酸塩ベースのガラスセラミック製品を調製する方法であって、以下の工程a)〜e)を有してなり、工程b)およびd)の少なくとも一方が実施される方法が提供される:
a) ガラスセラミックのガラス前駆体を成形する工程、
b) ガラスの表面の少なくとも一部の上に、効果的な量の少なくとも一種類の結晶化促進化学剤を必要に応じて堆積させる工程、
c) セラミック化を確実にする条件下でガラスを熱処理する工程、
d) 得られたガラスセラミックの表面の少なくとも一部の上に、効果的な量の少なくとも一種類の結晶化促進化学剤を必要に応じて堆積させ、その後、核形成温度および最高セラミック化温度の間の温度で熱処理する工程、および
e) 工程b)および/または工程d)で堆積され、遊離したままである結晶化促進化学剤を除去する工程。
【0022】
本発明の方法の好ましい実施の形態において、工程b)が実施される。
【0023】
本発明の方法の好ましい実施の形態において、効果的な量の少なくとも一種類の結晶化促進化学剤の存在下での熱処理は、1および20g/m3の間の水分レベルで実施される。
【0024】
本発明の方法の好ましい実施の形態において、少なくとも一種類の結晶化促進化学剤は、Zn,Cu,Zr,La,Nb,Y,Ti,Ge,V,Snおよびそれらの混合物の化合物および/または金属から選択される、好ましくはZn,Cu,Zr,La,Nb,Y,Ti,Geおよびそれらの混合物の化合物および/または金属から選択される、より好ましくはZn,Cu,Zr,La,Nb,Yおよびそれらの混合物の化合物および/または金属から選択される、最も好ましくはZnおよびCuの化合物および/または金属から選択される。
【0025】
本発明の方法の好ましい実施の形態において、少なくとも一種類の結晶化促進化学剤が、硝酸塩、炭酸塩、塩化物および/または酸化物の形態で堆積される。
【0026】
本発明のリチウムアルミノケイ酸塩ベースのガラスセラミック製品には、外観が魅力的であり、破壊係数が増加し、製造が容易であるという技術的利点がある。本発明の方法には、実施が容易であり、リチウムアルミノケイ酸塩ベースのガラスセラミック製品に広く適用できるという技術的利点がある。
【0027】
本発明の追加の特徴および利点は、以下に詳細に述べられており、一部は、その説明から当業者にとって容易に明らかであるか、またはその説明と特許請求の範囲に記載された発明を実施することによって認識されるであろう。
【0028】
先の一般的な説明および以下の詳細な説明は、本発明の単なる例示であり、特許請求の範囲に記載されたように本発明の性質および特徴を理解する上での概要および構成を提供することを意図したものであることが理解されよう。
【発明を実施するための形態】
【0029】
レンジ台の上面およびガスレンジの窓に用いられる最も一般的なガラスセラミック材料は、リチウムアルミノケイ酸塩ベースのガラスセラミック(主に以下の酸化物:SiO2−Al23−Li2Oを含有する)、すなわち、結晶化して、β−石英またはβ−スポジュメン(ガラス前駆体が、β−石英および/またはβ−スポジュメンの形態に結晶化できる)固溶体の主結晶相を持つものである。本発明のガラスセラミック製品は、その表面の少なくとも一部において、塊における内部、すなわち、改質表面層の下の製品の本体内のガラスセラミックの結晶化度よりも高い結晶化度の改質表面層を有することが特徴的である。
【0030】
問題の改質表面層は、加えられた層、または「オーバーレイヤー(over-layer)」では決してない。以下に述べる本発明の方法(ガラス前駆体および/またはガラスセラミックに実施した表面処理方法)を考慮すると、この表面層は、小さな厚さに沿って、ガラスセラミックの表面の改質から生じることが理解される。改質表面層の厚さは、一般に5μm未満、好ましくは2μm未満、より好ましくは1μm未満、さらに好ましくは約0.3μmである。問題の改質は、表面の結晶状態の改質、結晶化度の増加、および/または主結晶相の変化、および/またはその中に含まれる異なる結晶相の比率の変化である。製品を構成するガラスセラミックは、製品の芯部よりも、表面の少なくとも一部に亘り結晶化度が高い。
【0031】
リチウムアルミノケイ酸塩ベースのガラスセラミックの本発明の製品は、どのような形状のものであっても差し支えない。したがって、本体の範囲を定める表面は、それ自体、どのような形状のものであっても差し支えない。ガラスセラミックは、表面の少なくとも一部に亘り、改質表面層の下の容積における結晶化度よりも高い結晶化度の改質表面層を有することが特徴的である。
【0032】
本発明の製品には、多くの変形があり得る。
【0033】
第1の変形によれば、製品の全表面に亘り、製品の芯部のガラスセラミックの結晶化度より大きい、実質的に同じ結晶化度の改質表面層が見られる。
【0034】
第2の変形によれば、製品の表面一部のみに、製品の芯部のガラスセラミックの結晶化度より大きい、結晶化度の同じ連続(すなわち、一部のみ)または不連続(すなわち、いくつかの部分)の、それゆえ、改質表面層が見られない製品の表面の残りの区域の結晶化度より大きい改質表面層が見られる。
【0035】
第3の変形によれば、表面の一部において、製品の芯部のガラスセラミックの結晶化度より大きい結晶化度の、連続または不連続の第1の改質表面層が見られ、前記表面の少なくとも1つの他の部分において、製品の芯部のガラスセラミックの結晶化度より大きいが、第1の改質表面層の結晶化度とは異なる結晶化度の、連続または不連続の少なくとも第2の改質表面層が見られる。それゆえ、改質表面層の数はn(n≧2)であり得、全てが、芯部のガラスセラミックの結晶化度より大きい異なる結晶化度を持つ。それらの改質表面層の全ては組合せで、ガラスセラミック製品の表面の全てまたは一部を覆っている。このように、この第3の変形に関して、ガラスセラミック製品は、その表面の少なくとも2つの区域において、改質表面層の下の本体である「芯部」の結晶化度よりも全てが高い、結晶化度の異なる改質表面層を有する。
【0036】
先に述べた第2と第3の変形による本発明の製品は、全表面積で同じ結晶化度を持たない。本発明のこのタイプの製品が特に好ましい。
【0037】
本発明の製品は、以下の変形を有していてもよい:
− ガラスセラミック製品は、その本体内に、β−石英固溶体の主結晶相を持ち、一方で、本体の表面の少なくとも一部において、主結晶相としてより緻密なβ−石英固溶体を持つ改質層(連続または不連続)を有する(表面の少なくとも2つ区域において、主結晶相として異なる密度のβ−石英固溶体を持つ多数の改質表面層を有することが決して排除されるものではない)、または
− ガラスセラミック製品は、その本体内に、β−石英固溶体の主結晶相を持ち、製品の表面の少なくとも一部において、主結晶相としてβ−スポジュメン固溶体を持つ改質層(連続または不連続)を有する(表面の少なくとも2つ区域において、主結晶相として異なる密度のβ−スポジュメン固溶体を持つ多数の改質表面層を有することが決して排除されるものではない)、または
− ガラスセラミック製品は、その本体内に、β−スポジュメン固溶体の主結晶相を持ち、本体の表面の少なくとも一部において、随意的なルチルまたはスピネルタイプの結晶と共に、主結晶相としてより緻密なβ−スポジュメン固溶体を持つ改質層(連続または不連続)を有する(表面の少なくとも2つ区域において、随意的なルチルまたはスピネルタイプの結晶と共に、主結晶相として異なる結晶化度のより緻密なβ−スポジュメン固溶体を持つ多数の改質表面層を有することが決して排除されるものではない)。
【0038】
先に述べた変形は、決して制限するものではない。主結晶相としてβ−石英固溶体を有する本体について、特定の改質表面層において主結晶相としてより緻密なβ−石英固溶体を、また他の改質表面層において主結晶相としてβ−スポジュメン固溶体を有する異なる改質表面層を形成することも可能である。
【0039】
結晶化度に関して不均質な本発明の製品は、その調製方法により特徴付けられる。それら製品は、製造プロセスのサインを担持する。すなわち、結晶化度の高い改質表面層は、製品の改質表面層の下の本体におけるよりも、特定の結晶化促進元素の量が多い。そのような結晶化促進元素は、Zn,Cu,Zr,La,Nb,Y,Ti,Ge,V,Snおよびそれらの混合物から選択される、好ましくはZn,Cu,Zr,La,Nb,Y,Ti,Geおよびそれらの混合物から選択される、より好ましくはZn,Cu,Zr,La,Nb,Yおよびそれらの混合物から選択される、最も好ましくはZnおよびCuからなる群より選択される。本体および改質表面層における結晶化促進元素のレベルの差は、大きくても小さくても差し支えなく、ガラスセラミックの組成、その結晶相と密度、結晶化促進剤の性質、並びに本体と改質表面層との間の結晶化度の差の所望のレベルに応じて異なる。ガラスセラミック製品の本体が結晶化促進元素を実質的に含まない場合、改質表面層は、微量しかその元素を含有しなくてもよい。さらに、改質表面層は、結晶化を促進する少なくとも1種類の化学元素の酸化物の層によりさらに覆われてもよい。そのような酸化物の層は、一般に2μm未満、好ましくは1μm未満、より好ましくは約0.2μmの厚さを有する。結晶化促進元素の酸化物のそのような層の存在は、結晶化促進剤を用いた前駆体ガラスまたはガラスセラミックの表面処理中に存在する水分と関係付けられることを以下に論じる。
【0040】
上述したように、本発明の製品はどのような形状のものであっても差し支えない。それらの製品は、特に、レンジ台の上面および/またはレンジの窓などの上述した用途のための、プレート形状(すなわち、2つの平行な主要側面を持ち、概して厚さの小さい、リチウムアルミノケイ酸塩ベースのガラスセラミック・プレート)であることが都合よい。そのプレートは、平面であり得るが、そのような外形に制限されるものではない。そのプレートは、丸くなっていても、米国特許第5968219号明細書に開示されているような折り畳み、米国特許第5931152号明細書に開示されたような変形を含んでも差し支えない。
【0041】
プレートのこの脈絡の中で、本発明のガラスセラミック製品の好ましい実施の形態として以下が挙げられる:
− 少なくとも、2つの主要な側面の一方の表面において、プレートは、プレートの本体内よりも結晶化度の高い改質表面層を有する。プレートがレンジ台の上面の場合、上側の表面を、本発明にしたがって改質し装飾できることが都合よい。それゆえ、特に、加熱区域、制御区域などを、画成し、印付けることができる。これらの異なる区域は、異なる結晶化度により異なる輝度または不透明度を有するように、または異なる色を有するように改質できる。
− レンジ台の上面を構成することが意図され、調理手段の上に取り付けられるプレートを構成するガラスセラミックは、着色されていてもいなくてもよい透明なガラスセラミックであり(求められ、得られた装飾効果(金属的な外観)が認識されるようにするために、十分に透明である)、結晶化度の高い改質表面層が、調理手段/加熱要素に面するように配置すべきプレートの主要側面の少なくとも一部を覆う。この仮定の下で、レンジ台の上面の下側は装飾されている。「オーバークリスタライゼーション(over-crystallization)」は、装飾効果に加え、装飾側(下側)の機械的性質の改善も確実にでき、このことは非常に評価できる。
【0042】
一般に、本発明のガラスセラミック製品は、リチウムアルミノケイ酸塩ガラスをベースとするものである。問題のガラスセラミックは、(前駆体ガラスSiO2−Al23−Li2Oから得られた)このタイプの最も知られたもの、すなわち、主結晶相としてβ−石英またはβ−スポジュメンを含有するものであるのが分かる。これらのガラスセラミックは当業者にはよく知られている。
【0043】
全く限定されない様式で、本発明のガラスセラミックは、特に、米国特許第5070045号、同第5446008号、仏国特許出願公開第2766816号の各明細書および特開平11−100229号公報に記載されているガラスセラミックから得られることを示唆することができる。
【0044】
本発明のガラスセラミック製品は、芯部で、一般にMgO,ZnO,TiO2,ZrO2も含有する、SiO2,Al23およびLi2Oに基づく質量基準の従来の組成を有し、さらに、NaO,SrO,Na2O,K2Oを含有し得る。このガラスセラミックは、効果的かつ過剰ではない量の少なくとも一種類の清澄剤と、必要に応じての、一般にCoO,Cr23,Fe23,MnO2,NiO,V25およびCeO2、並びにそれらの混合物から選択される、効果的な量の少なくとも一種類の着色剤を含有することが都合よい。当業者には、清澄剤の含有をどのように管理するかが知られている。清澄剤は一般に、このタイプの化合物の3質量%未満、望ましくは2質量%未満で含有される。
【0045】
米国特許第5070045号明細書に示されているように、As23および/またはSb23は、以下の量で清澄剤として含有することができる:
As23 0〜1.5
Sb23 0〜1.5
As23+Sb23 0.5〜1.5(質量%)
SnO2,CeO2、フッ化物、硫化物および硫酸塩などの他の清澄剤を、単独または組合せで、同様に含有することができる。
【0046】
着色剤の必要に応じての含有に関しても当業者によく知られている。
【0047】
純粋に説明のために、本願の出願人は、特に、米国特許第5070045号明細書に記載された組成を有し、バナジウムにより着色され、主結晶相としてβ−石英固溶体を有するガラスセラミック・プレート(Kerablack(登録商標)として市販されているIR透過性黒色プレート)、および仏国特許出願公開第2766816号明細書に記載された組成を有し、セリウムで着色されたものとされていないガラスセラミック・プレート(Kerawhite(登録商標)(無着色)またはKerabisque(登録商標)(セリウムにより着色された)として市販されている、半透明プレート)を調製することをここに言及する。そのようなプレートは、本発明のガラスセラミック製品を形成するために、本発明にしたがって(以下参照)都合よく処理できる。
【0048】
本発明の第2の態様によれば、上述したように、処理済みガラスセラミック製品を調製する方法が提供される。これは、特定の性質の表面処理を含む、ガラスセラミック製品の調製方法であることが既に理解されている。その表面処理は、セラミック化の前と最中および/またはセラミック化の後に実施することができる。
【0049】
より一般的に、本発明の第2の態様によれば、ガラスセラミックのガラス前駆体から、少なくとも1つの表面により範囲が定められた本体を含むリチウムアルミノケイ酸塩ベースのガラスセラミック製品を調製する方法であって、以下の工程a)〜e)を有してなり、工程b)およびd)の少なくとも一方が実施される方法が提供される:
a) ガラスセラミックのガラス前駆体を成形する工程、
b) ガラスの表面の少なくとも一部の上に、効果的な量の少なくとも一種類の結晶化促進化学剤を必要に応じて堆積させる工程、
c) セラミック化を確実にする条件下でガラスを熱処理する工程、
d) 得られたガラスセラミックの表面の少なくとも一部の上に、効果的な量の少なくとも一種類の結晶化促進化学剤を必要に応じて堆積させ、その後、核形成温度および最高セラミック化温度の間の温度で熱処理する工程、および
e) 工程b)および/または工程d)で堆積され、遊離したままである結晶化促進化学剤を除去する工程。
【0050】
本発明の方法の第1の変形によれば、工程b)が行われる。この方法は、上記工程a),b),c)およびe)を含むが、工程d)は含まないことがより好ましい。この変形は、表面区域を改質する目的のために、セラミック化されたガラスセラミック・プレートの追加の熱処理が実施されるのを防ぐ。一度の熱処理により、前駆体ガラスの従来の結晶化(「セラミック化」("ceramming"または"ceramization"))並びに表面改質を確実にすることが考えられる。
【0051】
本発明の方法の第2の変形によれば、工程d)が行われる。この方法は、上記工程a),c),d)およびe)を含むが、工程b)は含まないことが好ましい。前記少なくとも一種類の結晶化促進化学剤が、セラミック化後工程において、セラミック化された基体の表面に含まれる。それゆえ、セラミック化後表面改質工程が必要である。
【0052】
第3の変形によれば、この方法は、上記工程a),b),c),d)およぴe)を含む。少なくとも一種類の結晶化促進化学剤が、セラミック化の前、最中および後に用いられる。もちろん、同じまたは異なるタイプの結晶化促進化学剤を、異なる段階で用いてもよい。最終的な意図する表面改質結果を達成するためのそれぞれの使用区域によれば、同じまたは異なる表面区域にそれぞれの効果が積み重なる。
【0053】
本発明の方法の重要な点は、上述した結晶化度の高い改質表面層を生成するために、少なくとも一種類の結晶化促進化学剤の表面への使用である。少なくとも一種類の化学剤は、所望の表面区域に堆積され、基本的なセラミック化熱処理および/または追加のセラミック化後熱処理を含む熱処理中に効果を発する。
【0054】
前記少なくとも一種類の結晶化促進化学剤は、全表面に亘りまたは表面の一部のみに亘り(連続的または不連続的に)堆積される。同じ結晶化促進化学剤を異なる量または濃度で用いても差し支えなく、または少なくとも2種類の異なる結晶化促進化学剤を前記表面の異なる区域に用いてもよい。本発明の製品は、このようにして、上述した変形のいずれにも調製できると考えられる。
【0055】
少なくとも一種類の結晶化促進化学剤の一部は、改質表面層の構造中に組み込まれることが意図されていない。この一部の化学剤は、一般に、例えば、吹付けにより、または粉末形態にない場合には、洗浄により、本発明の方法の工程e)において除去される。除去できる、すなわち、遊離したままである化学元素の一部のみが、本発明の方法の工程e)において、実際に除去される。この一部は、酸化物層の形態で表面に捕捉されなかった、または結晶化度の高い改質表面層中にも捕捉されなかったものである。
【0056】
本願の発明者等は、結晶化促進化学剤の結晶化促進作用、並びにそれによる酸化物層の形成は、結晶化促進化学剤の存在下での熱処理が行われる雰囲気の水分レベルに非常に依存することを見出した。より詳しくは、水分レベルは、その化学剤から形成された酸化物層の存在または不在、求められる改質表面層における高い結晶化度、およびそのような結晶化促進処理後に表される金属的な外観の強さに影響を与えるように思われる。処理(前記少なくとも一種類の化学剤がガラス前駆体の表面上に堆積されている場合にはセラミック化および前記少なくとも一種類の化学剤がセラミック化されたガラスセラミックの表面上に堆積されている場合にはアニーリング)雰囲気中に存在する水蒸気は、反応触媒であるようである。雰囲気中の水分が多いほど、処理された表面上の金属的な外観がより強くなる。金属的な外観の強さにおける著しい偏差が、処理雰囲気の1g/m3(全く明るい金属的な外観ではない)から20g/m3(明るい金属的な外観)の異なる水分レベルで目視により観察された。
【0057】
本発明の脈絡の中で、1から20g/m3の処理雰囲気水分レベルでのセラミック化および/またはセラミック化後アニーリングの熱処理を実施することが推奨される。水分レベルを制御することが好ましい。
【0058】
それより高いレベル(しかしながら、得られる製品の品質を制御するために、チェックを行う)およびそれより低いレベルで操作することが決して排除されるものではない。後者の文脈において、「オーバーセラミック化」表面層は、結晶化を促進する少なくとも一種類の化学剤の酸化物の層によって推測的にもはや囲まれていない。改質表面層は、微量の結晶化促進化学剤の元素を含有する。
【0059】
上述したような結晶化を促進する化学剤の性質に関して、その化学剤は、Zn,Cu,Zr,La,Nb,Y,Ti,Ge,V,Snおよびそれらの混合物の化合物および/または金属から選択される、好ましくはZn,Cu,Zr,La,Nb,Y,Ti,Geおよびそれらの混合物の化合物および/または金属から選択される、より好ましくはZn,Cu,Zr,La,Nb,Yおよびそれらの混合物の化合物および/または金属から選択される、最も好ましくはZnおよびCuの化合物および/または金属から選択される。
【0060】
なお、元素のCuが、特に強力な結晶化促進作用を示すことが観察された。
【0061】
実際に、当業者は、特に、問題の元素の性質とその使用量、並びに温度などの、その元素が作用できる条件を選択することによって、生じる作用の強度を習得しなければならない。当業者は、実際に、生じる作用の強度が過剰である場合、製品が著しく弱くなるかもしれないことを理解している。
【0062】
前記少なくとも一種類の結晶化促進化学剤に関して、それは一般に、硝酸塩、炭酸塩、塩化物および/または酸化物の形態で前駆体ガラスまたはガラスセラミックの表面に堆積されることをさらに示すことができる。
【0063】
ZnOまたはCuOの堆積が特に推奨される。
【0064】
一般に、前記少なくとも一種類の結晶化促進化学剤は、固体形態または液体形態で堆積される。
【0065】
特に、その化学剤は、純粋な、または不活性充填剤(求められる効果に関して中性である)中に希釈された、粉末の形態で堆積させることができる。その粉末は、そのような堆積技法を実施できる結合剤中に希釈されていても差し支えない。
【0066】
したがって、その化学剤は、液体形態で堆積させることができる。それゆえ、溶液、多かれ少なかれ粘性である懸濁液、ゾル−ゲルを用いてもよい。
【0067】
堆積方法は、少なくとも一種類の結晶化促進化学剤の形態に適合されるのは明らかである。手による、ブラシによる、ローラによる、スプレイによる、スクリーン印刷による、または転写法による堆積が考えられる。この技法の列記は網羅的ではない。
【0068】
スクリーン印刷により、適切な結合剤と混合された少なくとも一種類の結晶化促進化学剤の選択的な堆積を行うことが特に推奨される。そのような結合剤は、熱処理の高温で分解する限りで、少なくとも一種類の化学剤の作用を妨げない。
【0069】
本発明の方法は、プレートの形態の製品(上記参照)を調製するために実施することが好ましい。この目的で、工程a)において、ガラスセラミック前駆体はプレートに形成され、少なくとも一種類の結晶化促進化学剤がそのプレートの2つの主要側面の一方および/または他方の表面の少なくとも一部に堆積される。このプレートは、結晶化促進化学剤が堆積されたときに、セラミック化されていても(工程d)におけるように)、セラミック化されていなくてもよい(工程b)におけるように)。
【0070】
本発明を、製品と方法の態様に基づいて、以下の実施例により、全く制限しない様式でここに説明する。
【実施例】
【0071】
実施例1
「Kerablack」の商標で市販されている参照プレートは、米国特許第5070045号の実施例1により得たプレートである。そのガラス前駆体は、この米国特許の表1に与えられた質量の組成を有し、着色剤としてV25を含有する。周囲雰囲気下で行われたセラミック化サイクルは、その特許の第5欄および第6欄に述べられたものである。そのプレートを構成するガラスセラミックは、主結晶相としてβ−石英固溶体を有する。(当業者には、微量のβ−スポジュメンがこのガラスセラミック・プレート中に、比較的深い深さだけに見られるが、非常に近い表面区域には見られないことが分かる。以下の表1参照)。
【0072】
本発明は、そのような「Kerablack」ガラスセラミック・プレートの主要側面の全表面を処理するために実施される。
【0073】
約1g/m2の比率で、プレートの形態にある前駆体ガラスの主要側面の全表面に亘りZnO粉末を均一に堆積させた(このガラス前駆体の組成は、米国特許第5070045号の表1に見られる)。得られたアセンブリを、参照プレートについて先に指定したものと同じ周囲雰囲気下で行った同じセラミック化サイクルによりセラミック化した(米国特許第5070045号の第5欄および第6欄)。
【0074】
セラミック化熱処理後、表面から残留粉末を除去するように、ZnOを担持する表面に一吹きの空気を送った。得られたガラスセラミック・プレートのこのように処理した表面(”ZnO処理した「Kerablack」”)は、はっきりした金属的な外観を有する。
【0075】
X線回折分析(XRD)は、このプレートが、主結晶相としてβ−スポジュメン固溶体を含む改質表面層を含有することを示している。XRD測定は、当業者に馴染みがあり、「小角回折:GIAD」の測定として知られている方法によって行った。以下の表1は、2つの試料:従来技術の「Kerablack」プレートおよび本発明の”ZnO処理した「Kerablack」”プレートに関するβ−スポジュメンのピークの強度を比較している。
【表1】

【0076】
本発明のプレートのβ−スポジュメン表面層の上にZnO層がさらに観察された。
【0077】
(ZnOにより)処理した側面の機械的強度の改善も観察された。機械的強度の測定は、少なくとも7つの試験プレートをサンプリングしてASTM規格F394−78にしたがって行った。参照の「Kerablack」プレートは、215±28MPaの平均MOR(破壊係数)を有し、一方で、本発明の”ZnO処理した「Kerablack」”プレートは、256±5MPaの平均MORを有する。これは、20%近い増加を示す。
【0078】
実施例2
実施例1の方法を、以下の違いを除いて繰り返した:
− ZnO粉末を、松根油ベースの有機媒質とよく混合した、
− 混合物を、所定のパターンにしたがってスクリーン印刷により前駆体ガラスの主要側面の一方の表面の一部だけに堆積させた。
【0079】
ZnO粉末および有機媒質の混合物の粘度を、スクリーン印刷技法がその混合物を堆積させるために適するように調節した。
【0080】
はっきりした金属的な外観が生じたが、それは混合物を堆積させた区域のみにだけであった。
【0081】
実施例3
この実施例において、ZnO粉末を、セラミック化したガラスセラミック「Kerablack」プレートの主要側面の全表面に亘り堆積させた。
【0082】
堆積は、実施例1におけるものと同じ条件下で行った(ガラスセラミックのガラス前駆体の代わりに、ガラスセラミック上に)。
【0083】
次いで、得られたアセンブリ(ガラスセラミック・プレート+ZnO粉末、主要側面の一方の全表面に)を熱処理した。このアセンブリに、15分間に亘り950℃でのアニーリングサイクルを施した。残留ZnO粉末を一旦除去したら(空気の吹き付けにより)、処理した側面に金属的な外観が観察された。これは、実施例1に観察された外観と実質的に同一である。
【0084】
実施例4
実施例1の方法を、以下のことを除いて実施した:
参照プレートは、「Kerawhite」で市販されている仏国特許出願第2766816号の実施例1にしたがって得たプレートであった。そのガラス前駆体は、この特許出願の第4頁に与えられた質量組成を有している。周囲雰囲気で実施したセラミック化サイクルは、この特許出願の実施例1に指定されている。このプレートを構成するガラスセラミックは、β−スポジュメン固溶体の主結晶相を有している。
【0085】
本発明を、前駆体ガラス・プレートの主要側面の全表面に亘りZnO粉末を堆積させることによって実施した。そのようなガラスは、上述した仏国特許出願第2766816号に記載された組成を有し、アセンブリ(ガラスプレート+ZnO粉末、その主要側面の一方の全表面に亘る)を、この文献に記載されたようにセラミック化した。
【0086】
”ZnO処理した「Kerawhite」”プレートの処理側面は、虹色に輝く外観並びに改善された機械的強度:MOR=176±6MPaを有した。参照「Kerawhite」プレートの非処理側面(主要側面の一方)は、低い機械的強度:MOR=114±2MPaを有した。
【0087】
実施例5
異なる結晶化促進元素、亜鉛の代わりに銅を用いたことを除いて、実施例1を繰り返した。実際に、酸化銅CuOを、「Kerablack」プレートの前駆体ガラスプレートに用いた。
【0088】
セラミック化サイクルおよび残留CuO粉末の除去後、”CuO処理した「Kerablack」”ガラスセラミックは、非常にはっきりした金属的な表面外観を有する。この金属的な外観は、β−スポジュメンの存在を示す。上述したGIAD法によるX線回折研究は、以下の結論を与えた。
【表2】

【0089】
これらのデータは、改質表面層におけるβ−スポジュメンの高度の結晶化は、プレートの表面上のCuO層の堆積によるものであったことを示している。
【0090】
実施例6
アルミニウム(Al23)粉末中に希釈された酸化銅(CuO)粉末をガラスセラミック前駆体ガラスの表面上に堆積させたことを除いて、実施例5を繰り返した。50/50の混合物(質量で)を1g/cm2の比率で堆積させた。得られた金属的な効果は、実施例4において得られたものより少なかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスセラミックのガラス前駆体から、少なくとも1つの表面により範囲が定められた本体を有してなるリチウムアルミノケイ酸塩ベースのガラスセラミック製品を調製する方法であって、以下の工程a)、c)およびe)を有してなり、さらに以下の工程b)およびd)の少なくとも一方を実施して前記表面の少なくとも一部を、下にある本体の結晶化度よりも高い結晶化度を有すると共に下記の結晶化促進化学剤の元素を下にある本体よりも多く含有する表面層に改質する方法:
a) 前記ガラスセラミックの前記ガラス前駆体を成形する工程、
b) 前記ガラス前駆体の表面の少なくとも一部の上に、効果的な量の、Zn,Cu,Zr,La,Nb,Y,Ti,Ge,V,Snおよびそれらの混合物の化合物および/または金属から選択される少なくとも一種類の結晶化促進化学剤を堆積させる工程、
c) セラミック化を確実にする条件下で前記ガラス前駆体を熱処理する工程、
d) 得られたガラスセラミックの表面の少なくとも一部の上に、効果的な量の、Zn,Cu,Zr,La,Nb,Y,Ti,Ge,V,Snおよびそれらの混合物の化合物および/または金属から選択される少なくとも一種類の結晶化促進化学剤を堆積させ、その後、核形成温度と最高セラミック化温度の間の温度で熱処理する工程、および
e) 工程b)および/または工程d)で堆積され、遊離したままである前記結晶化促進化学剤を除去する工程。
【請求項2】
前記工程b)を行うことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記効果的な量の少なくとも一種類の結晶化促進化学剤の存在下での前記熱処理を、1から20g/m3の水分レベルで行うことを特徴とする請求項1または2記載の方法。

【公開番号】特開2012−229156(P2012−229156A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−133598(P2012−133598)
【出願日】平成24年6月13日(2012.6.13)
【分割の表示】特願2006−543508(P2006−543508)の分割
【原出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(501059442)
【Fターム(参考)】