表面系刺激装置における刺激電流の最適化
(i)刺激装置の内部インピーダンスを増加させて時値の時限を広げることで皮膚/電極間インピーダンスに拘らず意図する生理学的標的の活動電位を確実に発火させる工程、及び/又は(ii)好ましくは実質的に刺激パルスの電流減衰期間全域にわたって非ゼロ平均電流(例えば、刺激波形のエンベロープの非ゼロ勾配)を最適化する刺激波形を発生させる工程によって、皮膚/電極間インピーダンスに拘らず、非侵襲性表面系刺激装置の電極によって発生した刺激パルスによって活性化された意図する生理学的標的内の活動電位を確実に発火させる方法及びそれに関連する刺激装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給される刺激電流を最適化する一方で、その持続時間を最小限に抑えることでより高い効率及び最小電力消費を得る、改良型表面系刺激装置に関する。
【背景技術】
【0002】
神経内の電荷を増加させることにより、その神経細胞を外部から励起することができ、したがってその神経内の膜電位を周囲の細胞外液に対して高めることができる。2005年6月7日付で出願され、本願と同じ譲受人に譲渡された米国特許第11/146,522号には、外部経皮的神経刺激パッチが開示されている。これは表面系刺激装置の一例に過ぎない。神経装置の基本的な特徴、即ち電気インパルスを発生させ伝導する能力は、軸索又は繊維を伝わる単一電気インパルスとして定義される活動電位(AP)の形態をとることができる。この活動電位(神経インパルス又は神経スパイクと呼ばれることもある)は、「全か無か」現象である。基電流は、無限時間(実際的には数百ミリ秒)に活動電位を生じさせる極小電流である。更に、最小限の強度には、神経を励起するために必要な最小限の時間がある。時値と呼ばれる最小時間は、基電流の強度の2倍で神経を刺激したときの応答を生成する持続時間である。刺激信号の刺激時間又は刺激強度のどちらかが十分でない場合、神経は活動電位を発火させない。図1に示される興奮性組織の代表的な強度対持続時間曲線は、参照要素「1」によって基電流を表し、また0.25Vの値を有する一方、参照要素「3」によって時値を表し、また約0.23msの値を有する。
【0003】
外部から電気刺激を経皮的に適用すると、皮膚の複素インピーダンスが刺激電流を変更することがある。例えば、皮膚の静電容量が増加した場合、刺激信号の振幅は神経を励起するに十分であっても、活動電位を発火させるには、時間が不十分なことがある。これは、電流減衰として知られる。皮膚の表面にDC電流を適用すると、正味電流がゼロになるまで電流の減衰が観察される。典型的には、これには約600マイクロ秒を要する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、皮膚のインピーダンスの変化又は電流の減衰に合わせて調節する改善された方法及びシステムを開発することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様は、刺激信号の振幅又は強度を増加させずに、活動電位が確実に発火するように、電流減衰を広げ、又は増加させるシステム及び方法に関する。
【0006】
本発明の別の態様は、電極インターフェース側に直列インピーダンスを追加することにより、刺激信号に割り当てられた時間を延長して活動電位を発火させることで、電流の減衰を長引かせるシステム及び方法に関する。
【0007】
本発明の更に別の態様は、少なくとも実質的に電流減衰の持続時間の間、平均電流が非ゼロであるような非ゼロ勾配又は変化率を有する刺激波形エンベロープを用いることによって、刺激信号に割り当てられた時間を延長して活動電位を発火させるシステム及び方法に関する。
【0008】
本発明は、(i)刺激装置の内部インピーダンスを増加させて時値の時限を広げることで皮膚/電極間インピーダンスに拘らず意図する生理学的標的の活動電位を確実に発火させる工程、及び/又は(ii)好ましくは実質的に刺激パルスの電流減衰全域の間、非ゼロ平均電流(例えば、刺激波形のエンベロープの非ゼロ勾配)を最適化する刺激波形を発生させる工程によって、皮膚/電極間インピーダンスに拘らず、非侵襲性表面系刺激装置の電極によって発生した刺激パルスによって活性化された意図する生理学的標的内の活動電位を確実に発火させる方法及びそれに関連する刺激装置に関する。
【0009】
本発明の1つの特定の態様は、皮膚/電極間インピーダンスに拘らず、非侵襲性表面系刺激装置の電極によって発生した刺激パルスによって活性化された意図する生理学的標的内に活動電位を確実に発火させる方法に関する。これは、刺激装置の内部インピーダンスを増加させることによって実現する。刺激パルスは電極によって発生する。したがって、増加した内部インピーダンスが時値の時限を広げることで、皮膚/電極間インピーダンスに拘らず、意図した生理学的標的の活動電位が確実に発火する。
【0010】
本発明の別の特定の態様は、前の段落で述べた方法を実現する刺激装置に関する。刺激装置は、刺激波形を生成する波形発生器を含む。電極は、刺激波形を受信し、刺激パルスを生成するように電気的に接続されている。刺激装置の内部インピーダンスを増加させる抵抗器が電極と直列に提供されており、この増加した内部インピーダンスが時値の時限を広げて、皮膚/電極間インピーダンスに拘らず、意図する生理学的標的の活動電位を確実に発火させる。
【0011】
本発明の更に別の特定の態様は、皮膚/電極間インピーダンスに拘らず、非侵襲性表面系刺激装置の電極によって発生する刺激パルスによって活性化された意図する生理学的標的内に活動電位を確実に発火させる方法に関する。刺激パルスの電流減衰の期間の非ゼロ平均電流(例えば、刺激波形のエンベロープの非ゼロ勾配)を最適化する刺激波形が発生する。刺激波形を入力として受信する電極を使用して、刺激パルスが生成される。
【0012】
本発明の更に別の態様は、前の段落で述べた方法を実現する刺激装置に関する。刺激装置は、刺激パルスの電流減衰の期間の非ゼロ平均電流を最適化する刺激波形を生成する波形発生器を含む。電極が刺激波形を入力として受信し、刺激パルスを発生させる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の以上及びその他の特徴は、本発明の実例となる実施形態の以下の詳細な説明と図面から、より容易に明らかになり、いくつかの図面全体にわたって類似の参照番号は類似の要素を示す。
【図1】組織を刺激する代表的な強度対持続時間曲線。
【図2】皮膚と電極との間の界面をシミュレートし、微分電流を観察する、代表的な概略刺激回路。
【図3】刺激波形が刺激周波数20Hzの方形波であるときの、図2でシミュレートされた刺激回路の、代表的な電圧対時間のシミュレーション結果。
【図4】刺激波形が刺激周波数210kHzの方形波であるときの、図2でシミュレートされた刺激回路の、代表的な電圧対時間のシミュレーション結果。
【図5a】直列抵抗器の追加によって皮膚/電極間インピーダンスを補正する、代表的な概略刺激回路。
【図5b】刺激波形が刺激周波数20Hzの方形波であるときの、図5aでシミュレートされた刺激回路の、代表的な電圧対時間のシミュレーション結果。
【図5c】刺激波形が刺激周波数210kHzの方形波であるときの、図5aでシミュレートされた刺激回路の、代表的な電圧対時間のシミュレーション結果。
【図5d】並列抵抗の追加により、皮膚/電極間インピーダンスを補正する、代表的な概略刺激回路。
【図6】検出された皮膚インピーダンスのフィードバックに基づいて刺激信号のエンベロープを調節する、経皮的外部刺激装置の代表的な系統図。
【図7】刺激波形が所定の傾斜波形であるときの、図2でシミュレートされた刺激回路の、代表的な電圧対時間のシミュレーション結果。
【図8】刺激波形が所定の指数波形であるときの、図2でシミュレートされた刺激回路の、代表的な電圧対時間のシミュレーション結果。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のシステム及び方法は、電極を皮膚の表面に近接させて、又は直接接触させて配置し、例えば治療の対象となる神経又は組織などの生理学的標的を外部から刺激する、非侵襲性表面系刺激装置の改良である。外部電極を使用して電気的刺激を皮膚を通して適用すると、皮膚の複素インピーダンスが刺激電流を変更することがある。皮膚のインピーダンスは常に変化しており、多くの要因に依存する。例えば、皮膚インピーダンスは年齢と共に徐々に高くなり、女性は男性よりも高い値を示す傾向がある。立っているとき、屈んでいるとき、しゃがんでいるとき、平坦な床の上を歩いているとき、及び階段を上っている/下っているときなど、関節にかかる歪みに対する皮膚インピーダンスの減少割合の明らかな相互関係が報告されている。更に、皮膚温度、体毛の存在及び皮膚の種類もまたインピーダンスの変化に寄与する。皮膚のインピーダンスが刺激電流を変更することで神経を励起するために必要な時間(時値)に達しない場合、神経は刺激されず(即ち活動電位が発火せず)、したがって刺激装置は、治療の対象となる健康状態を効果的に治療できないであろう。
【0015】
したがって、活動電位を活性化又は発火させるためには、最小限の刺激持続時間が必要である。しかし、経皮的電極を介して刺激を提供する場合、皮膚の複素インピーダンスが刺激電流を変更することがある。電極と皮膚の間の界面におけるインピーダンスの影響は、微分として近似できる。即ち、皮膚インピーダンスは、刺激波形、したがって刺激電流を微分している。抵抗−コンデンサ回路(RC回路)を利用して、皮膚/電極間インピーダンスの体抵抗及び静電容量をシミュレートすることができる。図2は、RC回路を使用して皮膚/電極間インピーダンスをシミュレートする代表的な概略回路である。波形発生器105は、刺激信号を代表する。波形発生器105によって生成された刺激信号は、皮膚/電極界面の体抵抗及び静電容量を代表する直列RC回路(R1及びC1)を通過する。オシロスコープ110を使用して微分電流が観測される。
【0016】
例示的な実施例において、抵抗値及び静電容量値は、それぞれR=619オーム及びC1=470nFに設定されている。図2のシミュレーション結果の電圧対時間の掃引線が図3に示されており、波形発生器105によって刺激周波数20Hzの方形波刺激信号が生成されている。上側の波形は波形発生器105によって生成された20Hzの方形波刺激を表し、下側の波形はオシロスコープ110によって観測された微分電流を描いている。刺激信号のパルス幅(持続時間)が約25msである一方、刺激の前縁及び後縁の双方における微分電流のパルス幅(持続時間)は、約2msのみである。刺激パルスの残りの21msについては電流は記録されていない。別の実施例によれば、波形発生器105によって生成された方形波刺激信号は210kHzに設定されており、刺激の掃引線の結果は図4に示されている。正の賞味平均電流は、時間t0から約600マイクロ秒まで観察できる。初期の600マイクロ秒後の平均電流は、約0mAである。600マイクロ秒より以後の刺激は、ゼロ平均電流を有する。図3及び図4に示される例示的実施例において、微分電流の持続時間(時値)は、意図する、又は標的とする興奮性組織を活性化するのに十分ではない可能性がある。したがって、意図する、又は標的とする興奮性組織の活動電位を発火させるために、刺激電流の持続時間を延長することが望ましい。
【0017】
皮膚/電極間インピーダンスに起因する刺激持続時間の損失を克服する1つの可能な手段は、刺激信号の強度を要求される基電流よりも大きくすることである。再度図1の強度対持続時間の波形を参照すると、興奮性組織を活性化するために必要な、時値未満の持続時間で生じる刺激強度は、時値よりも上で生じる刺激強度よりも著しく高い値である。このような比較的高い刺激信号強度は、非標的組織の活性化の可能性という望ましくない結果を招くおそれがある。更に、より高い刺激信号強度はより多くの電力を消費し、外部刺激装置が限定的な電源を有する場合には特に不利となることがある。
【0018】
本発明のシステム及び方法は、電流の減衰を広げることによって、即ち時間を延長することによって、装置の電力を増加する必要なく神経が発火するように、皮膚/電極間インピーダンス並びに電流の減衰を変更し又は変化させるように補正する。刺激が神経の発火を可能とするために時間を延長することによって、電流の減衰が長引く。減衰は広げること又は増加させることができるが、換言すれば、追加の直列インピーダンスを含めることによって、及び/又は減衰期間の刺激波形の振幅を増加させることによって、時間が更に追加される。
【0019】
電極/皮膚界面のインピーダンスを制御することにより、刺激電流の持続時間を、意図する興奮性組織の時値よりも僅かに大きく増加させ、又は意図しない興奮性組織の時値よりも僅かに少なく減少させることができることが分かっている。即ち、図5aに示されるように、界面の電極側に直列抵抗(R2)を追加して、刺激パルス持続時間を意図する生理学的標的(例えば興奮性組織)の時値よりも高くシフトさせることができる。例えば、数百オームの抵抗を追加してインピーダンスを僅かに増加することで、刺激パルスの持続時間を時値よりも高くシフトさせることができる。逆に、界面の電極側から直列抵抗(R2)を除去し、又はその代わりに並列抵抗(R3)を追加(図5dに示されるように)して、刺激パルスの持続時間を意図しない興奮性組織の時値よりも下にシフトさせることができる。このようにすれば、皮膚のインピーダンスが変化しても標的又は意図する組織が刺激されるように、刺激信号の強度を補正できる。皮膚のインピーダンスを検出し、検出したインピーダンスに基づいて可変直列抵抗を調節することにより、抵抗をリアルタイムで制御することもまた想到され、これも本発明の意図する範囲内である。好ましくは、皮膚のインピーダンスはリアルタイムにサンプリング又は監視され、この測定値から抵抗及び静電容量(電流減衰)が導かれる。皮膚のインピーダンスは、電流源(定電流源又は可変電流源)を適用すること、及び皮膚の表面に定置されたセンサ又は電極を使用して皮膚インピーダンスを測定することなどの従来のスキームを使用して測定できる。可変抵抗、したがって刺激パルスの持続時間は、検出された皮膚/電極間インピーダンスのそれに正比例して変化することが好ましい。即ち、検出された皮膚/電極間インピーダンスが増加するに従って可変抵抗が増加し、刺激パルスの持続時間を長くして刺激のためのより長い時間を可能とする一方、インピーダンスが減少するに従って可変抵抗が減少することで、刺激パルスの持続時間が短くなる。
【0020】
図5bは、1kΩの直列抵抗器R2を追加し、20Hzで再度刺激を与えたときの代表的な刺激の掃引線である。ここでも、上側の波形が刺激信号を表し、下側の波形が微分電流を表している。図5bに示される波形の電流パルスの持続時間は、今3msであり、電流パルス波形の持続時間が2msであった図2の直列抵抗がない基準ケースから1msの延長を示している。
【0021】
図5cは、同じ1kΩの直列抵抗で210kHzの刺激電流波形の掃引線を示す。ゼロよりも大きな電流パルス持続時間を2.5msの間観察することができるが、これは、図4で以前約0mAの平均電流を示した600マイクロ秒(0.6ms)の基準から1.9msの延長を示している。これらの代表的な刺激電流波形の掃引線は、直列抵抗器の追加によって刺激パルスの持続時間が神経の励起の閾値(この実施例では600マイクロ秒)よりも長く延長され、皮膚のインピーダンスが変化しても神経が刺激されることを実証している。電力消費を最小限に抑えるために、最小限の直列抵抗を使用して神経の励起を達成することが好ましい。しかし、電力消費が特定の回路設計の要因又は考慮すべき事情ではない場合、直列抵抗値を最小限に抑える必要はない。
【0022】
限定的な電源(例えば電池)の使用のように、電力消費を考慮すべき状況において、如何なる直列抵抗の追加によるインピーダンスの増加も何らかの電力を不利に消散し、又は消費するので、電源の寿命を縮める。電力の消費を最小限に抑えながら減衰を広げる別の方法は、少なくとも電流減衰期間に非ゼロの勾配又は変化率を有するエンベロープの波形を刺激信号として使用することである。ゼロ勾配のエンベロープを有する方形波刺激信号を使用した図3を再度参照すると、微分電流は数ミリ秒という非常に小さなパルス幅(持続時間)の間だけ存在し、刺激信号の残部の間には電流が存在しなかった。刺激パルスのエンベロープの勾配又は変化率は、非ゼロ電流の持続時間に正比例する。したがって、非ゼロ電流の持続時間を最適化するために、少なくとも波形の電流減衰期間に非ゼロの勾配又は変化率を有するエンベロープの刺激波形を用いることが望ましい。好ましくは実質的に波形の電流減衰の持続時間にわたって、かつ最も好ましくは実質的に刺激パルス幅又は区間全域にわたって、非ゼロの勾配又は変化率を有するエンベロープの刺激波形が使用される。
【0023】
ゼロ勾配を有する方形波刺激の代わりに、電流減衰期間に非ゼロの勾配又は変化率を有するエンベロープの、いくつかの代表的な所定の波形が利用され、その結果が観察された。第1の例では、図2の刺激設定を20Hzの周波数で使用した傾斜した刺激を用い、その結果を図7に示す。傾斜した刺激が上側の掃引線であり、微分電流の掃引線が下側の掃引線である。傾斜した刺激のパルス幅(持続時間)は、約30msである。刺激の持続時間の間非ゼロ電流の持続時間を観察することができ、それは適用された刺激の勾配又は変化率に比例している。
【0024】
図2の刺激回路を使用した指数刺激波形を用いた更に別の実施例もまた、20Hzの周波数で行った。図8では、指数刺激が上側の掃引線であり、微分電流の掃引線が下側の掃引線である。パルス幅(持続時間)の刺激は、約25msである。ここでも、刺激の持続時間の間非ゼロ電流の持続時間を観察することができ、それは適用された刺激の勾配又は変化率に比例している。
【0025】
適用された刺激のエンベロープの勾配又は変化率は、皮膚インピーダンスに整合し、したがってそれを補正するように選択することが好ましい。皮膚インピーダンスは、前述した多くの要因により時間と共に変化することがあるので、定義済みの刺激波形を用いるよりも、適用された刺激のエンベロープの勾配又は変化率をリアルタイムで調節して検出した静電容量に整合させるほうが望ましいであろう。したがって、少なくとも実質的に電流減衰の持続時間の間の勾配が非ゼロである所定の刺激エンベロープを刺激信号として適用する代わりに、刺激エンベロープの勾配を、少なくとも実質的に電流減衰の持続時間の間リアルタイムで調節して、監視されている皮膚/電極間インピーダンスを補正することができる。検出された皮膚/電極間インピーダンスが増加するに従ってエンベロープの勾配が上昇して減衰を広げることで、刺激の持続時間を長くすることが可能となる一方、検出された皮膚/電極間インピーダンスが減少するに従ってエンベロープの勾配が減少することで、減衰及び刺激の持続時間が短くなる。
【0026】
刺激信号波形のエンベロープを検出された皮膚インピーダンスのフィードバックの関数としてリアルタイムで調節する、本発明による表面系刺激装置600の代表的な系統図を図6に示す。好ましくは、皮膚のインピーダンスはリアルタイムにサンプリング又は監視され、この測定値から抵抗及び静電容量(電流減衰)が導かれる。皮膚のインピーダンスは、電流源(定電流源又は可変電流源)を適用すること、皮膚の表面に定置されたセンサ620又は電極を使用して皮膚インピーダンスを測定することなどの従来のスキームを使用して測定できる。監視している減衰の量又は強度によっては、表面系刺激装置は、電源615によって電源を供給され、波形発生器605によって生成された波形(例えばパルスのエンベロープの勾配)の形状を電流減衰の期間にリアルタイムに調節し、この測定された電流減衰を補正するようにプログラムされたプロセッサ又は制御装置625を含む。波形発生器605によって生成された、調節された電流刺激は、外部電極610への入力として受信され、標的(例えば神経)を刺激する。
【0027】
したがって、その平均電流が電流減衰の期間に非ゼロとなるように、直列抵抗を追加/除去することによって、又は刺激波形のエンベロープの形状を変えることによって、刺激信号を皮膚/電極間インピーダンスに合わせて補正できる。これら2つの選択肢を同時に利用して、皮膚のインピーダンスに起因する刺激電流の全ての変化を補正することもまた想到され、これも本発明の意図する範囲内である。
【0028】
したがって、本発明の基礎となる新規な特徴を、本発明の好ましい実施形態に適用されるように図示し、説明し、指摘したが、当業者は、本発明の精神と範囲から逸脱することなく、例示された装置の形と詳細並びにその操作の様々な省略、代用及び変更を行うことができることを理解するであろう。例えば、本発明の範囲内と同様の結果を得るために、実質的に同じ方法で、実質的に同じ機能を行う要素及び/又は工程の全ての組み合わせが明確に意図される。ある記載された実施形態の要素を別の実施形態の要素に置換することも十分意図され、想到される。また、図面は必ずしも縮尺通りではないが、実際には単に概念的なものである。よって、添付の「請求項の範囲」によって示されている通りに限り限定されることが意図される。
【0029】
本明細書に引用される全ての発行済み特許、係属中の特許出願、刊行物、論文、書籍、又は任意の他の参照文献は、その全文が参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0030】
〔実施の態様〕
(1) 皮膚/電極間インピーダンスに拘らず、非侵襲性表面系刺激装置の電極によって発生した刺激パルスによって活性化された意図する生理学的標的内に活動電位を確実に発火させる方法であって、該方法は、
前記刺激装置の内部インピーダンスを増加させる工程と、
前記電極を使用して前記刺激パルスを発生させる工程と、
を含み、前記増加した内部インピーダンスが時値の時限を広げて、前記皮膚/電極間インピーダンスに拘らず、前記意図した生理学的標的の前記活動電位を確実に発火させる、方法。
(2) 前記増加させる工程が、前記刺激パルスの持続時間を、前記活動電位の発火に要する前記意図する生理学的標的の前記時値よりも高くシフトさせる工程を含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記増加させる工程が、抵抗器を前記電極に直列に追加する工程を含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記皮膚/電極間インピーダンスの減少に伴い、前記直列抵抗器を除去することによって前記内部インピーダンスを減少させる工程を更に含む、実施態様3に記載の方法。
(5) 前記皮膚/電極間インピーダンスの減少に伴い、前記電極の両端に並列抵抗器を追加することによって前記内部インピーダンスを減少させる工程を更に含む、実施態様3に記載の方法。
(6) 前記抵抗器が数百Ωである、実施態様3に記載の方法。
(7) 皮膚/電極間インピーダンスに拘らず、意図する生理学的標的内の活動電位を確実に発火する非侵襲性表面系刺激装置であって、
刺激波形を生成する波形発生器と、
前記刺激波形を受信し、刺激パルスを生成するように電気的に接続された電極と、
前記刺激装置の内部インピーダンスを増加させる、前記電極に直列の抵抗器と、を備え、前記増加した内部インピーダンスが時値の時限を広げて、前記皮膚/電極間インピーダンスに拘らず、前記意図する生理学的標的の前記活動電位を確実に発火させる、装置。
(8) 前記抵抗器が、前記刺激パルスの持続時間を、前記活動電位の発火に要する前記意図する生理学的標的の前記時値よりも高くシフトさせる、実施態様7に記載の刺激装置。
(9) 実施態様7に記載の刺激装置であって、
前記刺激装置の前記内部インピーダンスを減少させる、前記電極に並列の抵抗器を更に備え、前記減少した内部インピーダンスが、前記皮膚/電極間インピーダンスの減少に応答して前記時値の時限を短くする、装置。
(10) 前記抵抗器が数百オームである、実施態様7に記載の刺激装置。
【0031】
(11) 皮膚/電極間インピーダンスに拘らず、非侵襲性表面系刺激装置の電極によって発生した刺激パルスによって活性化された意図する生理学的標的内に活動電位を確実に発火させる方法であって、
前記刺激パルスの電流減衰の期間の非ゼロ平均電流を最適化する刺激波形を発生させる工程と、
前記刺激波形を入力として受信する前記電極を使用して前記刺激パルスを生成する工程と、を含む、方法。
(12) 前記発生させる工程が、前記電流減衰の少なくとも一部の期間に非ゼロ勾配を有するエンベロープを形成する前記刺激波形を選択する工程を含む、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記刺激波形の前記エンベロープの前記非ゼロ勾配が前記電流減衰の約50%にわたって延長する、実施態様12に記載の方法。
(14) 前記刺激波形の前記エンベロープの前記非ゼロ勾配が前記電流減衰の実質的に全域にわたって延長する、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記刺激波形が定義済みの波形である、実施態様11に記載の方法。
(16) 前記定義済みの波形が、傾斜波形又は指数波形のうちの1つである、実施態様15に記載の方法。
(17) 実施態様11に記載の方法であって、前記発生させる工程の前に、
前記皮膚/電極間インピーダンスをリアルタイムに検出する工程と、
前記検出された皮膚/電極間インピーダンスに基づいて、前記電流減衰を決定する工程と、を更に含む、方法。
(18) 前記生成する工程が、前記電流減衰の期間に、前記刺激波形の前記勾配をリアルタイムに調節して前記検出された皮膚/電極間インピーダンスと実質的に整合させる工程を含む、実施態様17に記載の方法。
(19) 前記調節する工程が、前記検出された皮膚/電極間インピーダンスが増加するに従って前記刺激波形の前記エンベロープの前記勾配を増加させる一方、前記検出された皮膚/電極間インピーダンスが減少するに従って前記刺激波形の前記エンベロープの前記勾配を減少させる工程を含む、実施態様18に記載の方法。
(20) 皮膚/電極間インピーダンスに拘らず、電極によって発生した刺激パルスによって活性化された意図する生理学的標的内に活動電位を確実に発火させる非侵襲性表面系刺激装置であって、
前記刺激パルスの電流減衰の期間の非ゼロ平均電流を最適化する刺激波形を生成する波形発生器と、
前記刺激波形を入力として受信し、前記刺激パルスを発生させる電極と、を備える、装置。
【0032】
(21) 前記刺激波形が、前記電流減衰の少なくとも一部の期間に非ゼロ勾配を有するエンベロープを形成する、実施態様20に記載の刺激装置。
(22)前記刺激波形の前記エンベロープの前記非ゼロ勾配が前記電流減衰の約50%にわたって延長する、実施態様21に記載の刺激装置。
(23) 前記刺激波形の前記エンベロープの前記非ゼロ勾配が実質的に前記電流減衰の全域にわたって延長する、実施態様22に記載の刺激装置。
(24) 前記刺激波形が定義済みの波形である、実施態様20に記載の刺激装置。
(25) 前記定義済みの波形が、傾斜波形又は指数波形のうちの1つである、実施態様24に記載の刺激装置。
(26) 実施態様20に記載の刺激装置であって、
前記皮膚/電極間インピーダンスをリアルタイムに検出する回路と、
前記検出された皮膚/電極間インピーダンスに基づいて前記電流減衰を決定するプロセッサと、
を更に備える、装置。
(27) 前記プロセッサが、前記電流減衰の期間に、前記刺激波形の前記勾配をリアルタイムに調節して前記検出された皮膚/電極間インピーダンスと実質的に整合させる、実施態様26に記載の刺激装置。
(28) 前記プロセッサが、前記検出された皮膚/電極間インピーダンスが増加するに従って前記刺激波形の前記エンベロープの前記勾配を増加させ、前記検出された皮膚/電極間インピーダンスが減少するに従って前記刺激波形の前記エンベロープの前記勾配を減少させる、実施態様27に記載の刺激装置。
(29) 前記刺激パルスを発生させる工程が、
前記刺激パルスの電流減衰の期間の非ゼロ平均電流を最適化する刺激波形を発生させる工程と、
前記刺激波形を入力として受信する前記電極を使用して前記刺激パルスを生成する工程と、
を含む、実施態様1に記載の方法。
(30) 前記刺激波形を発生させる工程が、前記電流減衰の少なくとも一部の期間に非ゼロ勾配を有するエンベロープを形成する前記刺激波形を選択する工程を含む、実施態様29に記載の方法。
【0033】
(31) 前記刺激波形の前記エンベロープの前記非ゼロ勾配が前記電流減衰の約50%にわたって延長する、実施態様30に記載の方法。
(32) 前記刺激波形の前記エンベロープの前記非ゼロ勾配が実質的に前記電流減衰の全域にわたって延長する、実施態様31に記載の方法。
(33) 前記刺激波形が定義済みの波形である、実施態様29に記載の方法。
(34) 前記定義済みの波形が、傾斜波形又は指数波形のうちの1つである、実施態様33に記載の方法。
(35) 実施態様29に記載の方法であって、前記刺激波形を発生させる工程の前に、
前記皮膚/電極間インピーダンスをリアルタイムに検出する工程と、
前記検出された皮膚/電極間インピーダンスに基づいて前記電流減衰を決定する工程と、を更に含む、方法。
(36) 前記生成する工程が、前記電流減衰の期間に、前記刺激波形の前記勾配をリアルタイムに調節して前記検出された皮膚/電極間インピーダンスと実質的に整合させる工程を含む、実施態様29に記載の方法。
(37) 前記調節する工程が、前記検出された皮膚/電極間インピーダンスが増加するに従って前記刺激波形の前記エンベロープの前記勾配を増加させる一方、前記検出された皮膚/電極間インピーダンスが減少するに従って前記刺激波形の前記エンベロープの前記勾配を減少させる工程を含む、実施態様36に記載の方法。
(38) 実施態様7に記載の刺激装置であって、
前記刺激パルスの電流減衰の期間の非ゼロ平均電流を最適化する刺激波形を生成する波形発生器を更に含み、
前記電極が、前記刺激波形を入力として受信し、前記刺激パルスを発生させる、装置。
(39) 前記刺激波形が、前記電流減衰の少なくとも一部の期間に非ゼロ勾配を有するエンベロープを形成する、実施態様38に記載の刺激装置。
(40) 前記刺激波形の前記エンベロープの前記非ゼロ勾配が前記電流減衰の約50%にわたって延長する、実施態様39に記載の刺激装置。
【0034】
(41) 前記刺激波形の前記エンベロープの前記非ゼロ勾配が実質的に前記電流減衰の全域にわたって延長する、実施態様40に記載の刺激装置。
(42) 前記刺激波形が定義済みの波形である、実施態様38に記載の刺激装置。
(43) 前記定義済みの波形が、傾斜波形又は指数波形のうちの1つである、実施態様42に記載の刺激装置。
(44) 実施態様38に記載の刺激装置であって、
前記皮膚/電極間インピーダンスをリアルタイムで検出する回路と、
前記検出された皮膚/電極間インピーダンスに基づいて前記電流減衰を決定するプロセッサと、を更に備える、装置。
(45) 前記プロセッサが、前記電流減衰の期間に、前記刺激波形の前記勾配をリアルタイムに調節して前記検出された皮膚/電極間インピーダンスと実質的に整合させる、実施態様44に記載の刺激装置。
(46) 前記プロセッサが、前記検出された皮膚/電極間インピーダンスが増加するに従って前記刺激波形の前記エンベロープの前記勾配を増加させ、前記検出された皮膚/電極間インピーダンスが減少するに従って前記刺激波形の前記エンベロープの前記勾配を減少させる、実施態様45に記載の刺激装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給される刺激電流を最適化する一方で、その持続時間を最小限に抑えることでより高い効率及び最小電力消費を得る、改良型表面系刺激装置に関する。
【背景技術】
【0002】
神経内の電荷を増加させることにより、その神経細胞を外部から励起することができ、したがってその神経内の膜電位を周囲の細胞外液に対して高めることができる。2005年6月7日付で出願され、本願と同じ譲受人に譲渡された米国特許第11/146,522号には、外部経皮的神経刺激パッチが開示されている。これは表面系刺激装置の一例に過ぎない。神経装置の基本的な特徴、即ち電気インパルスを発生させ伝導する能力は、軸索又は繊維を伝わる単一電気インパルスとして定義される活動電位(AP)の形態をとることができる。この活動電位(神経インパルス又は神経スパイクと呼ばれることもある)は、「全か無か」現象である。基電流は、無限時間(実際的には数百ミリ秒)に活動電位を生じさせる極小電流である。更に、最小限の強度には、神経を励起するために必要な最小限の時間がある。時値と呼ばれる最小時間は、基電流の強度の2倍で神経を刺激したときの応答を生成する持続時間である。刺激信号の刺激時間又は刺激強度のどちらかが十分でない場合、神経は活動電位を発火させない。図1に示される興奮性組織の代表的な強度対持続時間曲線は、参照要素「1」によって基電流を表し、また0.25Vの値を有する一方、参照要素「3」によって時値を表し、また約0.23msの値を有する。
【0003】
外部から電気刺激を経皮的に適用すると、皮膚の複素インピーダンスが刺激電流を変更することがある。例えば、皮膚の静電容量が増加した場合、刺激信号の振幅は神経を励起するに十分であっても、活動電位を発火させるには、時間が不十分なことがある。これは、電流減衰として知られる。皮膚の表面にDC電流を適用すると、正味電流がゼロになるまで電流の減衰が観察される。典型的には、これには約600マイクロ秒を要する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、皮膚のインピーダンスの変化又は電流の減衰に合わせて調節する改善された方法及びシステムを開発することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様は、刺激信号の振幅又は強度を増加させずに、活動電位が確実に発火するように、電流減衰を広げ、又は増加させるシステム及び方法に関する。
【0006】
本発明の別の態様は、電極インターフェース側に直列インピーダンスを追加することにより、刺激信号に割り当てられた時間を延長して活動電位を発火させることで、電流の減衰を長引かせるシステム及び方法に関する。
【0007】
本発明の更に別の態様は、少なくとも実質的に電流減衰の持続時間の間、平均電流が非ゼロであるような非ゼロ勾配又は変化率を有する刺激波形エンベロープを用いることによって、刺激信号に割り当てられた時間を延長して活動電位を発火させるシステム及び方法に関する。
【0008】
本発明は、(i)刺激装置の内部インピーダンスを増加させて時値の時限を広げることで皮膚/電極間インピーダンスに拘らず意図する生理学的標的の活動電位を確実に発火させる工程、及び/又は(ii)好ましくは実質的に刺激パルスの電流減衰全域の間、非ゼロ平均電流(例えば、刺激波形のエンベロープの非ゼロ勾配)を最適化する刺激波形を発生させる工程によって、皮膚/電極間インピーダンスに拘らず、非侵襲性表面系刺激装置の電極によって発生した刺激パルスによって活性化された意図する生理学的標的内の活動電位を確実に発火させる方法及びそれに関連する刺激装置に関する。
【0009】
本発明の1つの特定の態様は、皮膚/電極間インピーダンスに拘らず、非侵襲性表面系刺激装置の電極によって発生した刺激パルスによって活性化された意図する生理学的標的内に活動電位を確実に発火させる方法に関する。これは、刺激装置の内部インピーダンスを増加させることによって実現する。刺激パルスは電極によって発生する。したがって、増加した内部インピーダンスが時値の時限を広げることで、皮膚/電極間インピーダンスに拘らず、意図した生理学的標的の活動電位が確実に発火する。
【0010】
本発明の別の特定の態様は、前の段落で述べた方法を実現する刺激装置に関する。刺激装置は、刺激波形を生成する波形発生器を含む。電極は、刺激波形を受信し、刺激パルスを生成するように電気的に接続されている。刺激装置の内部インピーダンスを増加させる抵抗器が電極と直列に提供されており、この増加した内部インピーダンスが時値の時限を広げて、皮膚/電極間インピーダンスに拘らず、意図する生理学的標的の活動電位を確実に発火させる。
【0011】
本発明の更に別の特定の態様は、皮膚/電極間インピーダンスに拘らず、非侵襲性表面系刺激装置の電極によって発生する刺激パルスによって活性化された意図する生理学的標的内に活動電位を確実に発火させる方法に関する。刺激パルスの電流減衰の期間の非ゼロ平均電流(例えば、刺激波形のエンベロープの非ゼロ勾配)を最適化する刺激波形が発生する。刺激波形を入力として受信する電極を使用して、刺激パルスが生成される。
【0012】
本発明の更に別の態様は、前の段落で述べた方法を実現する刺激装置に関する。刺激装置は、刺激パルスの電流減衰の期間の非ゼロ平均電流を最適化する刺激波形を生成する波形発生器を含む。電極が刺激波形を入力として受信し、刺激パルスを発生させる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の以上及びその他の特徴は、本発明の実例となる実施形態の以下の詳細な説明と図面から、より容易に明らかになり、いくつかの図面全体にわたって類似の参照番号は類似の要素を示す。
【図1】組織を刺激する代表的な強度対持続時間曲線。
【図2】皮膚と電極との間の界面をシミュレートし、微分電流を観察する、代表的な概略刺激回路。
【図3】刺激波形が刺激周波数20Hzの方形波であるときの、図2でシミュレートされた刺激回路の、代表的な電圧対時間のシミュレーション結果。
【図4】刺激波形が刺激周波数210kHzの方形波であるときの、図2でシミュレートされた刺激回路の、代表的な電圧対時間のシミュレーション結果。
【図5a】直列抵抗器の追加によって皮膚/電極間インピーダンスを補正する、代表的な概略刺激回路。
【図5b】刺激波形が刺激周波数20Hzの方形波であるときの、図5aでシミュレートされた刺激回路の、代表的な電圧対時間のシミュレーション結果。
【図5c】刺激波形が刺激周波数210kHzの方形波であるときの、図5aでシミュレートされた刺激回路の、代表的な電圧対時間のシミュレーション結果。
【図5d】並列抵抗の追加により、皮膚/電極間インピーダンスを補正する、代表的な概略刺激回路。
【図6】検出された皮膚インピーダンスのフィードバックに基づいて刺激信号のエンベロープを調節する、経皮的外部刺激装置の代表的な系統図。
【図7】刺激波形が所定の傾斜波形であるときの、図2でシミュレートされた刺激回路の、代表的な電圧対時間のシミュレーション結果。
【図8】刺激波形が所定の指数波形であるときの、図2でシミュレートされた刺激回路の、代表的な電圧対時間のシミュレーション結果。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のシステム及び方法は、電極を皮膚の表面に近接させて、又は直接接触させて配置し、例えば治療の対象となる神経又は組織などの生理学的標的を外部から刺激する、非侵襲性表面系刺激装置の改良である。外部電極を使用して電気的刺激を皮膚を通して適用すると、皮膚の複素インピーダンスが刺激電流を変更することがある。皮膚のインピーダンスは常に変化しており、多くの要因に依存する。例えば、皮膚インピーダンスは年齢と共に徐々に高くなり、女性は男性よりも高い値を示す傾向がある。立っているとき、屈んでいるとき、しゃがんでいるとき、平坦な床の上を歩いているとき、及び階段を上っている/下っているときなど、関節にかかる歪みに対する皮膚インピーダンスの減少割合の明らかな相互関係が報告されている。更に、皮膚温度、体毛の存在及び皮膚の種類もまたインピーダンスの変化に寄与する。皮膚のインピーダンスが刺激電流を変更することで神経を励起するために必要な時間(時値)に達しない場合、神経は刺激されず(即ち活動電位が発火せず)、したがって刺激装置は、治療の対象となる健康状態を効果的に治療できないであろう。
【0015】
したがって、活動電位を活性化又は発火させるためには、最小限の刺激持続時間が必要である。しかし、経皮的電極を介して刺激を提供する場合、皮膚の複素インピーダンスが刺激電流を変更することがある。電極と皮膚の間の界面におけるインピーダンスの影響は、微分として近似できる。即ち、皮膚インピーダンスは、刺激波形、したがって刺激電流を微分している。抵抗−コンデンサ回路(RC回路)を利用して、皮膚/電極間インピーダンスの体抵抗及び静電容量をシミュレートすることができる。図2は、RC回路を使用して皮膚/電極間インピーダンスをシミュレートする代表的な概略回路である。波形発生器105は、刺激信号を代表する。波形発生器105によって生成された刺激信号は、皮膚/電極界面の体抵抗及び静電容量を代表する直列RC回路(R1及びC1)を通過する。オシロスコープ110を使用して微分電流が観測される。
【0016】
例示的な実施例において、抵抗値及び静電容量値は、それぞれR=619オーム及びC1=470nFに設定されている。図2のシミュレーション結果の電圧対時間の掃引線が図3に示されており、波形発生器105によって刺激周波数20Hzの方形波刺激信号が生成されている。上側の波形は波形発生器105によって生成された20Hzの方形波刺激を表し、下側の波形はオシロスコープ110によって観測された微分電流を描いている。刺激信号のパルス幅(持続時間)が約25msである一方、刺激の前縁及び後縁の双方における微分電流のパルス幅(持続時間)は、約2msのみである。刺激パルスの残りの21msについては電流は記録されていない。別の実施例によれば、波形発生器105によって生成された方形波刺激信号は210kHzに設定されており、刺激の掃引線の結果は図4に示されている。正の賞味平均電流は、時間t0から約600マイクロ秒まで観察できる。初期の600マイクロ秒後の平均電流は、約0mAである。600マイクロ秒より以後の刺激は、ゼロ平均電流を有する。図3及び図4に示される例示的実施例において、微分電流の持続時間(時値)は、意図する、又は標的とする興奮性組織を活性化するのに十分ではない可能性がある。したがって、意図する、又は標的とする興奮性組織の活動電位を発火させるために、刺激電流の持続時間を延長することが望ましい。
【0017】
皮膚/電極間インピーダンスに起因する刺激持続時間の損失を克服する1つの可能な手段は、刺激信号の強度を要求される基電流よりも大きくすることである。再度図1の強度対持続時間の波形を参照すると、興奮性組織を活性化するために必要な、時値未満の持続時間で生じる刺激強度は、時値よりも上で生じる刺激強度よりも著しく高い値である。このような比較的高い刺激信号強度は、非標的組織の活性化の可能性という望ましくない結果を招くおそれがある。更に、より高い刺激信号強度はより多くの電力を消費し、外部刺激装置が限定的な電源を有する場合には特に不利となることがある。
【0018】
本発明のシステム及び方法は、電流の減衰を広げることによって、即ち時間を延長することによって、装置の電力を増加する必要なく神経が発火するように、皮膚/電極間インピーダンス並びに電流の減衰を変更し又は変化させるように補正する。刺激が神経の発火を可能とするために時間を延長することによって、電流の減衰が長引く。減衰は広げること又は増加させることができるが、換言すれば、追加の直列インピーダンスを含めることによって、及び/又は減衰期間の刺激波形の振幅を増加させることによって、時間が更に追加される。
【0019】
電極/皮膚界面のインピーダンスを制御することにより、刺激電流の持続時間を、意図する興奮性組織の時値よりも僅かに大きく増加させ、又は意図しない興奮性組織の時値よりも僅かに少なく減少させることができることが分かっている。即ち、図5aに示されるように、界面の電極側に直列抵抗(R2)を追加して、刺激パルス持続時間を意図する生理学的標的(例えば興奮性組織)の時値よりも高くシフトさせることができる。例えば、数百オームの抵抗を追加してインピーダンスを僅かに増加することで、刺激パルスの持続時間を時値よりも高くシフトさせることができる。逆に、界面の電極側から直列抵抗(R2)を除去し、又はその代わりに並列抵抗(R3)を追加(図5dに示されるように)して、刺激パルスの持続時間を意図しない興奮性組織の時値よりも下にシフトさせることができる。このようにすれば、皮膚のインピーダンスが変化しても標的又は意図する組織が刺激されるように、刺激信号の強度を補正できる。皮膚のインピーダンスを検出し、検出したインピーダンスに基づいて可変直列抵抗を調節することにより、抵抗をリアルタイムで制御することもまた想到され、これも本発明の意図する範囲内である。好ましくは、皮膚のインピーダンスはリアルタイムにサンプリング又は監視され、この測定値から抵抗及び静電容量(電流減衰)が導かれる。皮膚のインピーダンスは、電流源(定電流源又は可変電流源)を適用すること、及び皮膚の表面に定置されたセンサ又は電極を使用して皮膚インピーダンスを測定することなどの従来のスキームを使用して測定できる。可変抵抗、したがって刺激パルスの持続時間は、検出された皮膚/電極間インピーダンスのそれに正比例して変化することが好ましい。即ち、検出された皮膚/電極間インピーダンスが増加するに従って可変抵抗が増加し、刺激パルスの持続時間を長くして刺激のためのより長い時間を可能とする一方、インピーダンスが減少するに従って可変抵抗が減少することで、刺激パルスの持続時間が短くなる。
【0020】
図5bは、1kΩの直列抵抗器R2を追加し、20Hzで再度刺激を与えたときの代表的な刺激の掃引線である。ここでも、上側の波形が刺激信号を表し、下側の波形が微分電流を表している。図5bに示される波形の電流パルスの持続時間は、今3msであり、電流パルス波形の持続時間が2msであった図2の直列抵抗がない基準ケースから1msの延長を示している。
【0021】
図5cは、同じ1kΩの直列抵抗で210kHzの刺激電流波形の掃引線を示す。ゼロよりも大きな電流パルス持続時間を2.5msの間観察することができるが、これは、図4で以前約0mAの平均電流を示した600マイクロ秒(0.6ms)の基準から1.9msの延長を示している。これらの代表的な刺激電流波形の掃引線は、直列抵抗器の追加によって刺激パルスの持続時間が神経の励起の閾値(この実施例では600マイクロ秒)よりも長く延長され、皮膚のインピーダンスが変化しても神経が刺激されることを実証している。電力消費を最小限に抑えるために、最小限の直列抵抗を使用して神経の励起を達成することが好ましい。しかし、電力消費が特定の回路設計の要因又は考慮すべき事情ではない場合、直列抵抗値を最小限に抑える必要はない。
【0022】
限定的な電源(例えば電池)の使用のように、電力消費を考慮すべき状況において、如何なる直列抵抗の追加によるインピーダンスの増加も何らかの電力を不利に消散し、又は消費するので、電源の寿命を縮める。電力の消費を最小限に抑えながら減衰を広げる別の方法は、少なくとも電流減衰期間に非ゼロの勾配又は変化率を有するエンベロープの波形を刺激信号として使用することである。ゼロ勾配のエンベロープを有する方形波刺激信号を使用した図3を再度参照すると、微分電流は数ミリ秒という非常に小さなパルス幅(持続時間)の間だけ存在し、刺激信号の残部の間には電流が存在しなかった。刺激パルスのエンベロープの勾配又は変化率は、非ゼロ電流の持続時間に正比例する。したがって、非ゼロ電流の持続時間を最適化するために、少なくとも波形の電流減衰期間に非ゼロの勾配又は変化率を有するエンベロープの刺激波形を用いることが望ましい。好ましくは実質的に波形の電流減衰の持続時間にわたって、かつ最も好ましくは実質的に刺激パルス幅又は区間全域にわたって、非ゼロの勾配又は変化率を有するエンベロープの刺激波形が使用される。
【0023】
ゼロ勾配を有する方形波刺激の代わりに、電流減衰期間に非ゼロの勾配又は変化率を有するエンベロープの、いくつかの代表的な所定の波形が利用され、その結果が観察された。第1の例では、図2の刺激設定を20Hzの周波数で使用した傾斜した刺激を用い、その結果を図7に示す。傾斜した刺激が上側の掃引線であり、微分電流の掃引線が下側の掃引線である。傾斜した刺激のパルス幅(持続時間)は、約30msである。刺激の持続時間の間非ゼロ電流の持続時間を観察することができ、それは適用された刺激の勾配又は変化率に比例している。
【0024】
図2の刺激回路を使用した指数刺激波形を用いた更に別の実施例もまた、20Hzの周波数で行った。図8では、指数刺激が上側の掃引線であり、微分電流の掃引線が下側の掃引線である。パルス幅(持続時間)の刺激は、約25msである。ここでも、刺激の持続時間の間非ゼロ電流の持続時間を観察することができ、それは適用された刺激の勾配又は変化率に比例している。
【0025】
適用された刺激のエンベロープの勾配又は変化率は、皮膚インピーダンスに整合し、したがってそれを補正するように選択することが好ましい。皮膚インピーダンスは、前述した多くの要因により時間と共に変化することがあるので、定義済みの刺激波形を用いるよりも、適用された刺激のエンベロープの勾配又は変化率をリアルタイムで調節して検出した静電容量に整合させるほうが望ましいであろう。したがって、少なくとも実質的に電流減衰の持続時間の間の勾配が非ゼロである所定の刺激エンベロープを刺激信号として適用する代わりに、刺激エンベロープの勾配を、少なくとも実質的に電流減衰の持続時間の間リアルタイムで調節して、監視されている皮膚/電極間インピーダンスを補正することができる。検出された皮膚/電極間インピーダンスが増加するに従ってエンベロープの勾配が上昇して減衰を広げることで、刺激の持続時間を長くすることが可能となる一方、検出された皮膚/電極間インピーダンスが減少するに従ってエンベロープの勾配が減少することで、減衰及び刺激の持続時間が短くなる。
【0026】
刺激信号波形のエンベロープを検出された皮膚インピーダンスのフィードバックの関数としてリアルタイムで調節する、本発明による表面系刺激装置600の代表的な系統図を図6に示す。好ましくは、皮膚のインピーダンスはリアルタイムにサンプリング又は監視され、この測定値から抵抗及び静電容量(電流減衰)が導かれる。皮膚のインピーダンスは、電流源(定電流源又は可変電流源)を適用すること、皮膚の表面に定置されたセンサ620又は電極を使用して皮膚インピーダンスを測定することなどの従来のスキームを使用して測定できる。監視している減衰の量又は強度によっては、表面系刺激装置は、電源615によって電源を供給され、波形発生器605によって生成された波形(例えばパルスのエンベロープの勾配)の形状を電流減衰の期間にリアルタイムに調節し、この測定された電流減衰を補正するようにプログラムされたプロセッサ又は制御装置625を含む。波形発生器605によって生成された、調節された電流刺激は、外部電極610への入力として受信され、標的(例えば神経)を刺激する。
【0027】
したがって、その平均電流が電流減衰の期間に非ゼロとなるように、直列抵抗を追加/除去することによって、又は刺激波形のエンベロープの形状を変えることによって、刺激信号を皮膚/電極間インピーダンスに合わせて補正できる。これら2つの選択肢を同時に利用して、皮膚のインピーダンスに起因する刺激電流の全ての変化を補正することもまた想到され、これも本発明の意図する範囲内である。
【0028】
したがって、本発明の基礎となる新規な特徴を、本発明の好ましい実施形態に適用されるように図示し、説明し、指摘したが、当業者は、本発明の精神と範囲から逸脱することなく、例示された装置の形と詳細並びにその操作の様々な省略、代用及び変更を行うことができることを理解するであろう。例えば、本発明の範囲内と同様の結果を得るために、実質的に同じ方法で、実質的に同じ機能を行う要素及び/又は工程の全ての組み合わせが明確に意図される。ある記載された実施形態の要素を別の実施形態の要素に置換することも十分意図され、想到される。また、図面は必ずしも縮尺通りではないが、実際には単に概念的なものである。よって、添付の「請求項の範囲」によって示されている通りに限り限定されることが意図される。
【0029】
本明細書に引用される全ての発行済み特許、係属中の特許出願、刊行物、論文、書籍、又は任意の他の参照文献は、その全文が参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0030】
〔実施の態様〕
(1) 皮膚/電極間インピーダンスに拘らず、非侵襲性表面系刺激装置の電極によって発生した刺激パルスによって活性化された意図する生理学的標的内に活動電位を確実に発火させる方法であって、該方法は、
前記刺激装置の内部インピーダンスを増加させる工程と、
前記電極を使用して前記刺激パルスを発生させる工程と、
を含み、前記増加した内部インピーダンスが時値の時限を広げて、前記皮膚/電極間インピーダンスに拘らず、前記意図した生理学的標的の前記活動電位を確実に発火させる、方法。
(2) 前記増加させる工程が、前記刺激パルスの持続時間を、前記活動電位の発火に要する前記意図する生理学的標的の前記時値よりも高くシフトさせる工程を含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記増加させる工程が、抵抗器を前記電極に直列に追加する工程を含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記皮膚/電極間インピーダンスの減少に伴い、前記直列抵抗器を除去することによって前記内部インピーダンスを減少させる工程を更に含む、実施態様3に記載の方法。
(5) 前記皮膚/電極間インピーダンスの減少に伴い、前記電極の両端に並列抵抗器を追加することによって前記内部インピーダンスを減少させる工程を更に含む、実施態様3に記載の方法。
(6) 前記抵抗器が数百Ωである、実施態様3に記載の方法。
(7) 皮膚/電極間インピーダンスに拘らず、意図する生理学的標的内の活動電位を確実に発火する非侵襲性表面系刺激装置であって、
刺激波形を生成する波形発生器と、
前記刺激波形を受信し、刺激パルスを生成するように電気的に接続された電極と、
前記刺激装置の内部インピーダンスを増加させる、前記電極に直列の抵抗器と、を備え、前記増加した内部インピーダンスが時値の時限を広げて、前記皮膚/電極間インピーダンスに拘らず、前記意図する生理学的標的の前記活動電位を確実に発火させる、装置。
(8) 前記抵抗器が、前記刺激パルスの持続時間を、前記活動電位の発火に要する前記意図する生理学的標的の前記時値よりも高くシフトさせる、実施態様7に記載の刺激装置。
(9) 実施態様7に記載の刺激装置であって、
前記刺激装置の前記内部インピーダンスを減少させる、前記電極に並列の抵抗器を更に備え、前記減少した内部インピーダンスが、前記皮膚/電極間インピーダンスの減少に応答して前記時値の時限を短くする、装置。
(10) 前記抵抗器が数百オームである、実施態様7に記載の刺激装置。
【0031】
(11) 皮膚/電極間インピーダンスに拘らず、非侵襲性表面系刺激装置の電極によって発生した刺激パルスによって活性化された意図する生理学的標的内に活動電位を確実に発火させる方法であって、
前記刺激パルスの電流減衰の期間の非ゼロ平均電流を最適化する刺激波形を発生させる工程と、
前記刺激波形を入力として受信する前記電極を使用して前記刺激パルスを生成する工程と、を含む、方法。
(12) 前記発生させる工程が、前記電流減衰の少なくとも一部の期間に非ゼロ勾配を有するエンベロープを形成する前記刺激波形を選択する工程を含む、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記刺激波形の前記エンベロープの前記非ゼロ勾配が前記電流減衰の約50%にわたって延長する、実施態様12に記載の方法。
(14) 前記刺激波形の前記エンベロープの前記非ゼロ勾配が前記電流減衰の実質的に全域にわたって延長する、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記刺激波形が定義済みの波形である、実施態様11に記載の方法。
(16) 前記定義済みの波形が、傾斜波形又は指数波形のうちの1つである、実施態様15に記載の方法。
(17) 実施態様11に記載の方法であって、前記発生させる工程の前に、
前記皮膚/電極間インピーダンスをリアルタイムに検出する工程と、
前記検出された皮膚/電極間インピーダンスに基づいて、前記電流減衰を決定する工程と、を更に含む、方法。
(18) 前記生成する工程が、前記電流減衰の期間に、前記刺激波形の前記勾配をリアルタイムに調節して前記検出された皮膚/電極間インピーダンスと実質的に整合させる工程を含む、実施態様17に記載の方法。
(19) 前記調節する工程が、前記検出された皮膚/電極間インピーダンスが増加するに従って前記刺激波形の前記エンベロープの前記勾配を増加させる一方、前記検出された皮膚/電極間インピーダンスが減少するに従って前記刺激波形の前記エンベロープの前記勾配を減少させる工程を含む、実施態様18に記載の方法。
(20) 皮膚/電極間インピーダンスに拘らず、電極によって発生した刺激パルスによって活性化された意図する生理学的標的内に活動電位を確実に発火させる非侵襲性表面系刺激装置であって、
前記刺激パルスの電流減衰の期間の非ゼロ平均電流を最適化する刺激波形を生成する波形発生器と、
前記刺激波形を入力として受信し、前記刺激パルスを発生させる電極と、を備える、装置。
【0032】
(21) 前記刺激波形が、前記電流減衰の少なくとも一部の期間に非ゼロ勾配を有するエンベロープを形成する、実施態様20に記載の刺激装置。
(22)前記刺激波形の前記エンベロープの前記非ゼロ勾配が前記電流減衰の約50%にわたって延長する、実施態様21に記載の刺激装置。
(23) 前記刺激波形の前記エンベロープの前記非ゼロ勾配が実質的に前記電流減衰の全域にわたって延長する、実施態様22に記載の刺激装置。
(24) 前記刺激波形が定義済みの波形である、実施態様20に記載の刺激装置。
(25) 前記定義済みの波形が、傾斜波形又は指数波形のうちの1つである、実施態様24に記載の刺激装置。
(26) 実施態様20に記載の刺激装置であって、
前記皮膚/電極間インピーダンスをリアルタイムに検出する回路と、
前記検出された皮膚/電極間インピーダンスに基づいて前記電流減衰を決定するプロセッサと、
を更に備える、装置。
(27) 前記プロセッサが、前記電流減衰の期間に、前記刺激波形の前記勾配をリアルタイムに調節して前記検出された皮膚/電極間インピーダンスと実質的に整合させる、実施態様26に記載の刺激装置。
(28) 前記プロセッサが、前記検出された皮膚/電極間インピーダンスが増加するに従って前記刺激波形の前記エンベロープの前記勾配を増加させ、前記検出された皮膚/電極間インピーダンスが減少するに従って前記刺激波形の前記エンベロープの前記勾配を減少させる、実施態様27に記載の刺激装置。
(29) 前記刺激パルスを発生させる工程が、
前記刺激パルスの電流減衰の期間の非ゼロ平均電流を最適化する刺激波形を発生させる工程と、
前記刺激波形を入力として受信する前記電極を使用して前記刺激パルスを生成する工程と、
を含む、実施態様1に記載の方法。
(30) 前記刺激波形を発生させる工程が、前記電流減衰の少なくとも一部の期間に非ゼロ勾配を有するエンベロープを形成する前記刺激波形を選択する工程を含む、実施態様29に記載の方法。
【0033】
(31) 前記刺激波形の前記エンベロープの前記非ゼロ勾配が前記電流減衰の約50%にわたって延長する、実施態様30に記載の方法。
(32) 前記刺激波形の前記エンベロープの前記非ゼロ勾配が実質的に前記電流減衰の全域にわたって延長する、実施態様31に記載の方法。
(33) 前記刺激波形が定義済みの波形である、実施態様29に記載の方法。
(34) 前記定義済みの波形が、傾斜波形又は指数波形のうちの1つである、実施態様33に記載の方法。
(35) 実施態様29に記載の方法であって、前記刺激波形を発生させる工程の前に、
前記皮膚/電極間インピーダンスをリアルタイムに検出する工程と、
前記検出された皮膚/電極間インピーダンスに基づいて前記電流減衰を決定する工程と、を更に含む、方法。
(36) 前記生成する工程が、前記電流減衰の期間に、前記刺激波形の前記勾配をリアルタイムに調節して前記検出された皮膚/電極間インピーダンスと実質的に整合させる工程を含む、実施態様29に記載の方法。
(37) 前記調節する工程が、前記検出された皮膚/電極間インピーダンスが増加するに従って前記刺激波形の前記エンベロープの前記勾配を増加させる一方、前記検出された皮膚/電極間インピーダンスが減少するに従って前記刺激波形の前記エンベロープの前記勾配を減少させる工程を含む、実施態様36に記載の方法。
(38) 実施態様7に記載の刺激装置であって、
前記刺激パルスの電流減衰の期間の非ゼロ平均電流を最適化する刺激波形を生成する波形発生器を更に含み、
前記電極が、前記刺激波形を入力として受信し、前記刺激パルスを発生させる、装置。
(39) 前記刺激波形が、前記電流減衰の少なくとも一部の期間に非ゼロ勾配を有するエンベロープを形成する、実施態様38に記載の刺激装置。
(40) 前記刺激波形の前記エンベロープの前記非ゼロ勾配が前記電流減衰の約50%にわたって延長する、実施態様39に記載の刺激装置。
【0034】
(41) 前記刺激波形の前記エンベロープの前記非ゼロ勾配が実質的に前記電流減衰の全域にわたって延長する、実施態様40に記載の刺激装置。
(42) 前記刺激波形が定義済みの波形である、実施態様38に記載の刺激装置。
(43) 前記定義済みの波形が、傾斜波形又は指数波形のうちの1つである、実施態様42に記載の刺激装置。
(44) 実施態様38に記載の刺激装置であって、
前記皮膚/電極間インピーダンスをリアルタイムで検出する回路と、
前記検出された皮膚/電極間インピーダンスに基づいて前記電流減衰を決定するプロセッサと、を更に備える、装置。
(45) 前記プロセッサが、前記電流減衰の期間に、前記刺激波形の前記勾配をリアルタイムに調節して前記検出された皮膚/電極間インピーダンスと実質的に整合させる、実施態様44に記載の刺激装置。
(46) 前記プロセッサが、前記検出された皮膚/電極間インピーダンスが増加するに従って前記刺激波形の前記エンベロープの前記勾配を増加させ、前記検出された皮膚/電極間インピーダンスが減少するに従って前記刺激波形の前記エンベロープの前記勾配を減少させる、実施態様45に記載の刺激装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚/電極間インピーダンスに拘らず、電極によって発生した刺激パルスによって活性化された意図する生理学的標的内に活動電位を確実に発火させる非侵襲性表面系刺激装置であって、
前記刺激パルスの電流減衰の期間の非ゼロ平均電流を最適化する刺激波形を生成する波形発生器と、
前記刺激波形を入力として受信し、前記刺激パルスを発生させる電極と、を備える、装置。
【請求項2】
前記刺激波形が、前記電流減衰の少なくとも一部の期間に非ゼロ勾配を有するエンベロープを形成する、請求項1に記載の刺激装置。
【請求項3】
前記刺激波形の前記エンベロープの前記非ゼロ勾配が前記電流減衰の約50%にわたって延長する、請求項2に記載の刺激装置。
【請求項4】
前記刺激波形の前記エンベロープの前記非ゼロ勾配が実質的に前記電流減衰の全域にわたって延長する、請求項3に記載の刺激装置。
【請求項5】
前記刺激波形が定義済みの波形である、請求項1に記載の刺激装置。
【請求項6】
前記定義済みの波形が、傾斜波形又は指数波形のうちの1つである、請求項5に記載の刺激装置。
【請求項7】
請求項1に記載の刺激装置であって、
前記皮膚/電極間インピーダンスをリアルタイムに検出する回路と、
前記検出された皮膚/電極間インピーダンスに基づいて前記電流減衰を決定するプロセッサと、
を更に備える、装置。
【請求項8】
前記プロセッサが、前記電流減衰の期間に、前記刺激波形の前記勾配をリアルタイムに調節して前記検出された皮膚/電極間インピーダンスと実質的に整合させる、請求項7に記載の刺激装置。
【請求項9】
前記プロセッサが、前記検出された皮膚/電極間インピーダンスが増加するに従って前記刺激波形の前記エンベロープの前記勾配を増加させ、前記検出された皮膚/電極間インピーダンスが減少するに従って前記刺激波形の前記エンベロープの前記勾配を減少させる、請求項8に記載の刺激装置。
【請求項1】
皮膚/電極間インピーダンスに拘らず、電極によって発生した刺激パルスによって活性化された意図する生理学的標的内に活動電位を確実に発火させる非侵襲性表面系刺激装置であって、
前記刺激パルスの電流減衰の期間の非ゼロ平均電流を最適化する刺激波形を生成する波形発生器と、
前記刺激波形を入力として受信し、前記刺激パルスを発生させる電極と、を備える、装置。
【請求項2】
前記刺激波形が、前記電流減衰の少なくとも一部の期間に非ゼロ勾配を有するエンベロープを形成する、請求項1に記載の刺激装置。
【請求項3】
前記刺激波形の前記エンベロープの前記非ゼロ勾配が前記電流減衰の約50%にわたって延長する、請求項2に記載の刺激装置。
【請求項4】
前記刺激波形の前記エンベロープの前記非ゼロ勾配が実質的に前記電流減衰の全域にわたって延長する、請求項3に記載の刺激装置。
【請求項5】
前記刺激波形が定義済みの波形である、請求項1に記載の刺激装置。
【請求項6】
前記定義済みの波形が、傾斜波形又は指数波形のうちの1つである、請求項5に記載の刺激装置。
【請求項7】
請求項1に記載の刺激装置であって、
前記皮膚/電極間インピーダンスをリアルタイムに検出する回路と、
前記検出された皮膚/電極間インピーダンスに基づいて前記電流減衰を決定するプロセッサと、
を更に備える、装置。
【請求項8】
前記プロセッサが、前記電流減衰の期間に、前記刺激波形の前記勾配をリアルタイムに調節して前記検出された皮膚/電極間インピーダンスと実質的に整合させる、請求項7に記載の刺激装置。
【請求項9】
前記プロセッサが、前記検出された皮膚/電極間インピーダンスが増加するに従って前記刺激波形の前記エンベロープの前記勾配を増加させ、前記検出された皮膚/電極間インピーダンスが減少するに従って前記刺激波形の前記エンベロープの前記勾配を減少させる、請求項8に記載の刺激装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図5d】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図5d】
【図6】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2012−512701(P2012−512701A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542188(P2011−542188)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/065306
【国際公開番号】WO2010/071725
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(591286579)エシコン・インコーポレイテッド (170)
【氏名又は名称原語表記】ETHICON, INCORPORATED
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/065306
【国際公開番号】WO2010/071725
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(591286579)エシコン・インコーポレイテッド (170)
【氏名又は名称原語表記】ETHICON, INCORPORATED
【Fターム(参考)】
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