説明

表面電磁探査を改善するシステム及び方法

地下領域(24)の探査を改良する方法を提供する技術に関する。かかる方法は、オーバーバーデン(24)のマクロ異方性及び固有又はミクロ異方性を推定するステップを有する。表面電磁探査(30)を実施し、探査からのデータを、マクロ異方性及び/又はミクロ異方性の推定から得られた情報(32)に基づいて又はこれを含んだ状態でインバージョンする。探査により提供された情報を改善するために異方性の調整をした状態でインバージョンを実施するようプロセッサシステムを使用するのが良い。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
炭化水素の探査にあたり、地下環境についての良好な理解を得るために種々の技術が採用されている。例えば、地面又は海底の下に位置する貯留層の比抵抗は、炭化水素の探査を容易にするために検出されている。幾つかの作業では、制御信号源電磁探査を利用して炭化水素が存在しているらしいことが分かっている好ましい炭化水素貯留構造内における比抵抗流体、例えば液体又は気体の存在の確認に役立たせている。マグネトテルリック探査も又、或る特定の環境内における地下構造的画像を生じさせるために用いられている。しかしながら、電磁探査による解読は、比抵抗異方性、地球の地下体積の水平及び垂直電気比抵抗の差を十分に考慮していない場合が多い。表面電磁探査データのインバージョンは、計測されたデータを多くの非拘束状態のパラメータに当てはめるインバージョンモデルの非一意性に起因して相当な誤差が生じる場合がある。
【0002】
或る幾つかの環境では、地震探査も又、地球の音響応答及びその特定の構造又は層状化を測定するために用いることができる。しかしながら、音響情報は、液体の種類を区別するのに役立たない。というのは、流体相互間における伝搬差の変化が殆どないからである。また、地震探査によっては、坑井ガス飽和の識別が可能ではない。というのは、少量又は多量の気体中を通る音響伝搬が互いに類似しているからである。また、地下構造及び潜在的な貯留層についての良好な理解を得るのを助ける他の測定法も又用いられている。しかしながら、かかる技術及び測定法も又、オーバーバーデンの異方性を十分に考慮に入れていない。
【発明の概要】
【0003】
一般に、本発明は、地下領域の探査を改善する方法を提供する。かかる方法は、オーバーバーデンのマクロ異方性及び固有又はミクロ異方性を推定するステップを有する。この方法は、表面電磁探査を実施するステップを更に有する。探査からのデータを、マクロ異方性及び/又はミクロ異方性の推定から得られた情報に基づいて又はこれを含んだ状態でインバージョンする。プロセッサシステムは、新たな情報が利用可能になると、又は全ての情報を収集した後に、インバージョンを実施して異方性の調整をするように使用することができる。
【0004】
以下、添付の図面を参照して本発明の或る特定の実施形態について説明し、図中、同一の参照符号は、同一の要素を示している。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】本発明の一実施形態による地下領域の探査を向上させるシステムの略図である。
【図2】本発明の一実施形態によるミクロスケールでの異方性のグラフ図である。
【図3】本発明の一実施形態によるマクロスケールでの異方性のグラフ図である。
【図4】本発明の一実施形態による垂直比抵抗及び水平比抵抗の図である。
【図5】本発明の一実施形態による種々のモデルによる異方性の作用効果を示すグラフ図である。
【図6】本発明の一実施形態による流体で満たされた貯留層からの応答を表わしたグラフ形態の例を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態による等方性及び異方性電磁シミュレーションのために用いられた2D地球モデルの図である。
【図8】本発明の一実施形態による等方性データの2D電磁画像化の結果を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態による各受信機のところでの等方性一次場推定を用いた異方性データの2D電磁画像化の結果を示す図である。
【図10】本発明の一実施形態による各受信機のところでの異方性一次場推定を用いた異方性データの2D電磁画像化の結果を示す図である。
【図11】本発明の一実施形態による所与の地下領域の探査の改善を容易にするよう坑井を掘削しながら得ることができる種々の形式の情報を示す図である。
【図12】本発明の一実施形態による地下領域の探査を改善する方法の一例を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下の説明において、多くの細部は、本発明の理解を提供するために記載されている。しかしながら、当業者であれば理解されるように、本発明は、これら細部がなくても実施でき、説明する実施形態の多くの変形例又は改造例が可能である。
【0007】
本発明は、一般に、地下領域の探査を改善する方法及びシステムに関する。掘削中又は掘削後のいずれかに坑井データを得るための種々の測定を実施するのが良く、このデータを表面探査情報と組み合わせると、これらの探査を改善することができる。例えば、この追加の測定は、モデル探索空間の拘束に役立つよう拘束を異方性に与えることで、電磁探査インバージョン処理を改善するのを助けることができる。加うるに、表面地震又はボアホール地震技術は、貯留層の位置を突き止めるのを助け、かくして、インバージョンの範囲を存在場所と特性の両方の問題ではなく、例えば炭化水素飽和のような特性の問題に狭めるのを助けるよう利用可能である。一実施形態では、この技術は、更新されたモデル/探査により坑井についての新たな標的位置を生じさせることができるような仕方で、坑井が掘削されているときに実施される。
【0008】
一般的に言って、本発明の方法は、表面電磁探査をインバージョンする新規な手法を提供する。インバージョンは、オーバーバーデンのマクロ異方性と固有異方性の両方の推定に基づいて容易になる。異方性λの推定は、坑井が掘削されている間又は坑井を掘削した後に坑井内部で実施される特定の電磁測定によって得られる。一例を挙げると、電磁測定は、傾動コイル又は方位角伝搬ツールを用いてボアホール内においてを実行することができる。特定の一例は、シュルンベルジェ・テクノロジー・コーポレイション(Schlumberger Technology Corporation)から入手できるPeriScope(登録商標)ツールである。別の例を挙げると、特定の電磁測定を坑井の掘削後に、例えば、運搬及び遠隔測定モードとは無関係に用いることができる三軸比抵抗ツールの使用により実行することができ、かかる三軸比抵抗ツールは、ワイヤ遠隔測定装置、泥水パルス遠隔測定装置、電磁遠隔測定装置、音響遠隔測定装置、ワイヤードドリルパイプ、又は他の遠隔測定技術を含む場合がある。三軸比抵抗ツールの特定の一例は、シュルンベルジェ・テクノロジー・コーポレイションから入手できるRtScanner(登録商標)ツールである。
【0009】
方位角伝搬ツール、例えばPeriscope(登録商標)ツールは、傾動型受信機と一緒に軸方向送信機と横方向送信機の両方を利用する。この種の組み合わせにより、ツールは、非方位角伝搬ツールの制限又は欠点を受けなかった測定値を収集することができる。例えば、従来型伝搬比抵抗ツールでは、送信機及び受信機の磁気モーメントは、ツール軸線に対して軸方向に差し向けられる。かかるツールにより得られた測定値は、大まかに言って、相対的傾斜角が45°を超える場合に異方性に対して敏感であり又はこの影響を受けるに過ぎない。このことは、誘導電流が水平面に平行であり、従って、応答が垂直比抵抗に関する情報を備えていない垂直坑井の場合に一層良く理解できる。加うるに、従来型伝搬比抵抗ツールでは、垂直比抵抗と相対的傾斜角は、結合され、従って、比較的高い傾斜角状況の場合であっても、水平比抵抗、垂直比抵抗及び相対的傾斜角の同時量定は、均質の地層について可能ではない。
【0010】
方位角伝搬ツール及び三軸比抵抗ツールは、地層境界部の正確な存在場所を提供する。加うるに、これらのツールは、水平比抵抗及び垂直比抵抗並びに地層傾斜情報の正確な推定をもたらし、かかる推定を用いると、より正確なバックグラウンド比抵抗モデルを定めることができる。さらに、本発明の方法の一実施形態では、層状化モデルは、地震解読及び坑井測定から推定された地層境界部存在場所、水平比抵抗、垂直比抵抗及び地層傾斜データにより得られた比抵抗分布状態からの構造的情報に基づいて構築される。例えば、地層傾斜に関する推定により、オーバーバーデンの地層が水平ではない場合にいつでも、バックグラウンド比抵抗のモデル化が改善される。
【0011】
全体として図1を参照すると、本発明の一実施形態としての探査システム20が示されている。探査システム20は、地下領域の探査を改善する際に用いられるよう設計されており、かかる探査システムは、種々のツール及びセンサシステムを有するのが良い。センサシステム及びツールをボアホール22内で用いることができ、このボアホールは、地下領域24又は他の場所、例えば地表の場所26に形成される。例えば、坑井システム20は、電磁探査システム28、地震探査システム30、ボアホールツール32及び所望の測定を実行すると共に地下領域24と関連した知識又は情報を改善するようデータを得る他のツールを有するのが良い。
【0012】
種々のツール及びシステムは、多くの形式のセンサ及びツールを有するのが良く、かかるセンサ及びツールとしては、上述した方位角伝搬ツール及び/又は三軸比抵抗ツールが挙げられる。別の例として、電磁探査システム28は、制御信号源電磁探査システム及び/又はマグネトテルリック探査システムから成っていても良い。また、地震探査システム30は、種々のサイズ及び形態で構成されても良い。同様に、ボアホールツール32は、追加のセンサ、例えば重力センサ及び地下領域24に関する情報を得るための他のパラメータセンサを有しても良い。ボアホールツール32は、ボアホール22の掘削中、測定値を得るため、掘削中測定及び/又は掘削中ログ記録ツールとして設計されるのが良い。幾つかの用途では、ボアホールツール32は又、ボアホール22を掘削した後に使用できるよう設計されていても良い。
【0013】
図示の坑井システム20は、坑井システム20の種々の他のセンサ/ツールと連絡状態にあるプロセッサ利用システム34を更に有する。例えば、プロセッサシステム34は、電磁探査システム28、地震探査システム30及びボアホールツール32からのデータを受け取るよう設計されているのが良い。本明細書において説明する方法の幾つか又は全ては、プロセッサ利用システム34によって実施できる。一例を挙げると、プロセッサ利用システム34は、中央処理装置(CPU)36を備えたコンピュータ利用システムであるのが良い自動化システムである。CPU36は、システム/ツール28,30,32に作動的に結合されるのが良い。図示の例では、プロセッサシステム34は、メモリ38並びに入力装置40及び出力装置42を更に有している。入力装置40は、種々の装置であって良く、例えば、キーボード、マウス、音声認識ユニット、タッチスクリーン、他の入力装置又はかかる装置の組み合わせである。出力装置42は、ビジュアル及び/又はオーディオ出力装置から成るのが良く、例えば情報、例えば地下領域の評価を伝送するためのグラフィカルユーザインターフェイスを備えたディスプレイである。加うるに、処理は、探査場所で、探査場所から離れたところに設けられた単一装置若しくは多数の装置により又は幾つかの装置を探査場所に設置し、他の装置を遠隔地に配置した状態で実施できる。
【0014】
全体的探査システム20に属するツール及びシステムを探査データのインバージョンからの結果を改善するよう使用できる情報を収集するよう種々の仕方で使用されるのが良い。例えば、地震探査システム30は、地球の音響応答、及びかくしてその構造又は層状化を測定するよう設計された地震探査を実施する際に使用することができる。地震探査から得られた音響特性は、液体又は気体の存在を突き止めるのを助けることができる。というのは、液体、気体及び固体中を通る音波の伝搬上の違いが劇的に変わるからである。
【0015】
さらに、地下領域24の比抵抗の測定又は推定は、導電性流体と抵抗性流体を区別するのに役立ちうる。ただし、これら流体と母岩との間に十分なコントラストがあることを条件とする。比抵抗は、例えば抵抗性炭化水素と導電性水の識別子としての役目を果たすことができる。比抵抗測定と地震探査データの組み合わせを解読すると、液体、気体又はそれどころか固体ガス水和物を含有する構造の確度、並びに液体又は気体が経済的に有用な炭化水素である確度を評価することにより試堀のランク付けを助けることができる。追加の測定値、例えば重力測定値を用いると、特定の環境、例えば音響伝搬が貧弱である(例えば、塩の下)環境において補足的データ収集を容易にすることができる。地下特性のこれら測定値の多くは、ボアホール22を掘削している間及び/又は掘削を例えばワイヤーラインログにより完了した後に得られる。
【0016】
表面電磁探査、例えば制御信号源電磁探査(controlled source electromagnetic survey)及びマグネトテルリック探査(magnetotelluric survey)は、地下領域24に関する情報を集めるために採用される。例えば、表面電磁探査は、未知のオーバーバーデンの下に埋まっている貯留体の描写状態を改善するようインバージョンすることができる。他の測定値、例えば表面又は空中重力を他の表面測定値と協働して用いてこれをインバージョンすると、この場合も又、未知のオーバーバーデンの下に埋まっている貯留体の良好な描写を達成することができる。
【0017】
電磁探査における送信機と受信機の直接的な結合に起因した一次場を除去するため、表面下に均一のバックグラウンド比抵抗を仮定し、又は地下に予想された位置で埋まっている貯留体の単純な2D又は3D表示を利用するのが良い。予想位置は、局所地質学の知識と組み合わせた3D地震探査データにより求めることができる。代表的には、1組の海底又は地表面受信機によって測定された地球の電磁応答が、例えば制御信号源電磁探査が特定の箇所又は1組の表面箇所に適用された場合(例えばトウラインに沿って)、埋め込まれた抵抗性貯留体付きで又はこれなしでモデル化される。次に、探査結果を収集し、そして観察した受信機応答が抵抗性貯留層又は非抵抗性貯留層モデルに最も高い類似性を示しているかどうかの判定を行うことができる。データのインバージョンにより、受信機及びソースデータの全てが所与の場合、地下(表面)比抵抗の空間分布の解読が可能である。
【0018】
マグネトテルリック探査の場合、電磁源は、効果的には、大気の自然バックグラウンド放射線、太陽挙動、即ちフレアの組み合わせ及び大気現象、例えば雷である。モデル化を局所地質学の知識及び場合によっては既存の地震探査の知識に基づいてマグネトテルリック探査に先立って実施する。探査ステーションを計画し、データを収集する。マグネトテルリックデータの1D、2D及び3Dインバージョンは、表面地震データ及び他の利用可能な既存坑井データから得られた構造的境界部によって拘束することができる。電磁探査を最初の坑井を掘削する前に、探査段階で利用するのが良い。貯留体の存在場所、形状、大きさ又はボリューム及び比抵抗についてインバージョンは、本発明の方法により対処可能な多くの固有でない解決策、及びかくして多くの不確実性を生じる。
【0019】
例えばバックグラウンド比抵抗の貧弱な表示に起因してこれら深い場所に埋まっている貯留層のパラメータをインバージョンすると、大きな誤差を見出される。仮定した均一のバックグラウンド比抵抗とは大きくコントラストをなす抵抗性又は導電性層の存在は、表面電磁インバージョンに相当大きな誤差を入り込ませ得る。
【0020】
かかる比抵抗層状化の作用効果は、マクロ異方性係数により表わすことができる。地下領域24の材質は、図2に表わされているようにミクロスケールでは異方性であることができ、又は図3に表わされているようにマクロスケールでは異方性であることができる。図3は、400フィート(約122m)区分にわたって比抵抗ログの一例を示している。比抵抗が互いに異なる層の特定の分布に関し、水平比抵抗Rhは、各層の相対厚さによって重み付けされた層比抵抗の調和平均であるということと関連している。垂直比抵抗Rvは、図4に図式的に示されているように各層の相対厚さにより重み付けされた層比抵抗の算術平均であるということと関連している。
【0021】
水平比抵抗の項Rhは、成層に平行な比抵抗を特徴づける一般項であり、成層が水平面内において平らに位置している場合に水平である。垂直比抵抗の項Rvは、成層に垂直な比抵抗を特徴づけるために用いられる一般項であり、成層が水平面内に平らに位置しているとき、垂直である。比抵抗異方性係数λをλ=√(Rv/Rh)と定義することができる。
【0022】
一般に図5を参照すると、探査中、送信機から見て遠くのところで測定されたx場に対する異方性の作用効果に関するグラフによる例が提供されている。グラフ中の線は、多種多様なモデルに従って提供されている。図6では、種々のモデルに従って受け取られた応答のグラフによる例が提供されている。この特定の例では、応答は、流体(例えば炭化水素流体又は塩水)で満たされた厚さ100mの貯留層に基づくものであり、貯留層は、2つの互いに異なる地下海底に埋まっている。
【0023】
幾つかの適用では、検出可能な層は見受けられないが、バックグラウンドは2つの優先的又は選択的な方向において相当大きな比抵抗異方性を依然として示す。この種の異方性を「固有異方性」又は「ミクロ異方性」と呼ぶ。マクロ異方性に関して上述したように、最も有望な解決策(非現実的又は単に不正確なモデルに対応したインバージョン後では最小の残留誤差値)であっても、表面電磁探査データをインバージョンするときに、かかる固有異方性の存在を無視すると、インバージョンされた結果に大きな誤差が生じ得る。
【0024】
仮定した均一バックグラウンド比抵抗に対して大きなコントラストをなす抵抗性又は導電性層の存在に起因した表面電磁インバージョンへの相当大きな誤差の導入が、図7〜図10に見られる図式的な例によって示されている。図7では、例えば、等方性及び異方性電磁シミュレーションに用いられる2D地球モデルの一例が提供されている。震源(ソース)位置及び受信機位置は、それぞれ、Tx及びRxで表わされている。等方性データの2D電磁画像化の結果が、図8の図式図に提供されている。黒色の線は、真のモデルからの地球電気境界部を示している。
【0025】
図9及び図10では、2D等方性画像結果が異方性電磁シミュレーションについて提供された別の例が提供されている。図9を参照すると、各受信機で等方性一次場推定が用いられている異方性データの2D電磁画像化の結果が提供されている。図10には、各受信機で異方性一次場推定を用いた異方性データの2D電磁画像化の結果が提供されている。黒い線は、真のモデルからの地球電気境界部を示している。
【0026】
少なくとも幾つかの適用では、3D電磁探査は、2D探査よりも適している。例えば、牽引されるソースラインを有する受信機の単純な2Dラインを用いると、測定は、主として、地層の垂直異方性に敏感である。しかしながら、3D探査の中には、受信機の多数の平行な2Dラインで実施されるものがあり、応答は、牽引されているラインからオフセットした受信機ライン中の受信機により受け取られる。その結果、応答は、下部表面の水平比抵抗によって相当大きく影響を受けた状態になり、長いオフセットは、この水平比抵抗に対してより高い敏感性を提供し、短いオフセット又はインライン受信機は、垂直比抵抗に対してより高い感受性を提供する。
【0027】
一般に図11を参照すると、坑井の掘削中に収集することができる多くの種類の情報を示すための図式表示が提供されている。この例では、坑井22は、表面プラットホームから海水46の下の貯留層44中に掘削されている。地下領域24全体の複数の層48を貫通して坑井22を掘削しながら種々の測定値を取ることができる。測定値のうちの少なくとも幾つかは、例えば掘削しながらロギング(検層)を行う(LWD)システムを含む底部穴組立体(BHA)50を介して得ることができる。坑井22内から測定/検出可能なパラメータの例としては、真の深さ、層境界部の交差、地層傾斜、及び他の測定値、例えば比抵抗、密度、多孔度及び重力が挙げられる。貯留層の不均一性に関連した他のパラメータ、例えば断層も検出することができる。これら測定値のうちの幾つか又は全てから得られるデータは、プロセッサシステム34によって用いられ、それにより表面電磁探査のインバージョンを促進して地下領域の探査により得られた結果を改善することができる。
【0028】
表面電磁インバージョンを改善する手順の一例が図12の流れ図に示されており、かかる一例を図12の流れ図を参照して説明する。この実施形態では、ブロック52で示されているように、2D又は3D地震探査を最初に捕捉し、例えば実施し、解読する。地震探査は、例えば貯留層頂部、貯留層底部、検出された気体又は液体貯留層の大まかな実際の深さ及び他の関連情報のような構造情報を提供することができる。また、ブロック54で示されているように、表面電磁探査、例えば制御信号源電磁探査又はマグネトテルリック探査が実施される。また、追加の測定データは、他のセンサ及び機器から収集したデータに基づいて得ることができ又は推定することができる。例えば、掘削しながらロギングを行う方位角伝搬測定、及び/又はワイヤーライン三軸誘導測定は、ブロック56で表わされているように例えば真の深さ、垂直比抵抗、水平比抵抗及び地層傾斜のようなパラメータを量定/推定するために得ることができる。
【0029】
探査及び協働するセンサからの情報の捕捉に基づき、比抵抗モデルを構築する。この例では、比抵抗モデルは、ブロック58で表わされているようにオーバーバーデンについて実施される層状化モデル(層状化ケークモデルと呼ばれる場合がある)である。関心のある領域にログが存在しない状態では、この開始モデルは、関心のある領域の近くの坑井ログから得られた比抵抗値の使用により構築することができる。層状化モデルは、坑井22を標的貯留層44に向かって掘削しながら測定ツールを稼働させることにより収集された情報に少なくとも部分的に基づくことができる。さらに、層状化モデルの幾何学的形状は、ブロック60で表わされているように地震探査データから得られた地震情報及び傾斜情報により誘導することができる。加うるに、ブロック62で表わされているように、水平比抵抗、垂直比抵抗及び異方性についての値は、ミクロ又は固有異方性を示す各層について、推定及び指定される。注目されるべきこととして、全ての層48が等方性である場合(水平比抵抗が垂直比抵抗に等しい)、互いに異なる比抵抗の層により構築されているモデルは、自動的に、オーバーバーデンにマクロ異方性を示すようにさせる。また、層モデルの構築は、ブロック64で表わされているように、掘削しながらロギングを行うシステム、又はワイヤーラインシステムにより得られた真の深さ測定値により影響を受け、真の深さにおける地震移動時間の較正を可能にする。
【0030】
ブロック66で表わされているように、次に、表面測定電磁地下表面探査の順方向モデル(1D、2D又は3D)を、標的貯留層がない状態で一次場の値を推定するために、例えばプロセッサシステム34で実行する。次に、次のインバージョンのための開始モデルを定めるのを助けるために、この一次場を全体の場から差し引くことができる。加うるに、固有のミクロ比抵抗異方性(ブロック68参照)を含むオーバーバーデン比抵抗分布の詳細な説明を用いて、地震データ及び/又は重力データにより完全1D、2D又は3D比抵抗インバージョンを、プロセッサシステム34で個々に又は共同して実施する。この後者のインバージョンの出力は、標的貯留層の比抵抗の改良された描写及び推定である。さらに、この後者のインバージョンを新たな層48を貫通する度に定期的に実施するのが良い。定期的インバージョンは、新たなボアホール地震情報又は密度情報が掘削プロセス中に利用可能になる度に、新たな地震インバージョンを再実行する仕方と類似した層状化モデルの小刻みな又は更新的な較正を可能にする。較正は、電磁インバージョンモデル内の抵抗性境界部、及び/又は先頃貫通された層の良好な推定値を提供することができるログ又は掘削測定値からの比抵抗値として役立つ更新された表面存在位置の形態をしているのが良い。
【0031】
これらインバージョンの結果は、例えば出力ディスプレイ42上にプロセッサシステム34を介して表示することができる。出力情報は、炭化水素の存在確実性、及びボリュームの増加又は減少を指示するために用いられ、かくして例えば探査チームの意思決定を改善する。この方法は、未知のオーバーバーデンの下に埋まっている貯留体の良好な描写を可能にするよう表面電磁探査データ、例えば制御信号源電磁データ及びマグネトテルリックデータのインバージョンの改良を提供する。
【0032】
上述したように、この方法は又、貯留層の構造、並びに掘削中の坑井の軌道に沿って成層に平行な比抵抗(水平比抵抗)及び成層に垂直な比抵抗(垂直比抵抗)の空間分布を推定することにより、表面電磁探査データのインバージョンを改善する。この方法は、更に、掘削をしながらロギングを行う地層評価測定値及び方位角伝搬比抵抗測定値からの構造的情報及び異方性比抵抗(垂直及び水平比抵抗)を指定することにより表面電磁探査のインバージョンを改善することができる。同様な適用では、この方法は、ワイヤーライン三軸誘導測定値から構造情報及び異方性比抵抗(垂直及び水平比抵抗)を指定することにより表面電磁探査のインバージョンを改善する。
【0033】
他の適用では、この方法は、構造、不均一性(例えば断層の存在)に関する情報、及び表面電磁インバージョンを拘束するために用いることができる他の情報を組み込むことにより、表面地震探査の解読を改善する。この方法により可能な拘束の結果として、未知のオーバーバーデンの下に埋まっている貯留体の描写が改善する。幾つかの適用では、マグネトテルリックデータと制御ソース電磁データの両方を捕捉し、マグネトテルリックデータは、地震探査の分解能の改善に寄与し、このことは、制御ソース電磁インバージョンを拘束するのを一段と助ける。
【0034】
本明細書において説明した方法及びシステムを利用すると、地下領域に関連したデータを得るために用いられる表面電磁インバージョンを改良することができる。この方式を種々のシステム、ツール及びセンサと併用すると、標的貯留層及び他の地下特徴部に関連づけられたインバージョン結果の改善を容易にする情報を得ることができる。上述したように、結果の改善を可能にするような仕方で表面電磁インバージョンを拘束するために多くの種類の情報を利用することができる。加うるに、この方法を種々の電磁探査システム、地震探査システム、掘削をしながらロギングを行うツール、重力センサ及び他のセンサと共に利用することができる。この方法を部分的に繰り返し方式で実施することができる。というのは、坑井の掘削中に多数の地層について追加のデータが得られるからである。この方法は又、多種多様な海底環境及び他の環境に利用することができる。
【0035】
したがって、本発明のほんの僅かな実施形態を上記において詳述したが、当業者であれば容易に理解されるように、本発明の教示からそれほど逸脱することなく、多くの改造例が可能である。かかる改造例は、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲に含まれるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下領域の1つ又は2つ以上の地層特性を量定する方法であって、
ボアホール内に配置されたツールからの測定値を用いて地層特性を推定するステップと、
表面電磁探査を実施するステップと、
前記推定した地層特性に基づいてプロセッサシステムにより前記表面電磁探査をインバージョンして1つ又は2つ以上のインバージョンされた地層特性を生じさせるステップと、
前記プロセッサシステムを用いて前記1つ又は2つ以上のインバージョンされた地層特性を出力するステップと、を有する方法。
【請求項2】
前記推定ステップは、前記ボアホールを掘削しながら電磁測定を実施するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記電磁測定実施ステップは、方位角伝搬ツールを用いるステップを含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記推定ステップは、前記ボアホールの掘削後に電磁測定を実施するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記電磁測定実施ステップは、三軸比抵抗ツールを用いるステップを含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
地震探査結果を収集し、前記プロセッサシステムで前記地震探査結果を解読するステップを更に有する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記プロセッサシステムで前記地下領域の層状化比抵抗モデルを調製するステップを更に有する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記調製ステップは、地震情報及び地層傾斜情報により前記層状化比抵抗モデルの幾何学的形状を誘導するステップを含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
ミクロ異方性を示す層状化比抵抗モデルの各層について最初に又は前記各層からの情報が利用可能になったときに水平比抵抗及び垂直比抵抗の値を指定するステップを更に有する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
貯留層の構造及び成層に平行であり且つ掘削中の坑井の軌道に沿って前記成層に垂直である比抵抗の空間分布を推定するステップと、
表面電磁探査を実施するステップと、
前記構造及び前記空間分布を推定することにより得られた値を用いることにより前記表面電磁探査のインバージョンを改善するステップと、を有する方法。
【請求項11】
前記改善ステップは、プロセッサシステム上に集められたデータを処理し、改善された探査結果をディスプレイ上に出力するステップを含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記実施ステップは、制御信号源電磁探査を実施するステップを含む、請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記実施ステップは、マグネトテルリック探査を実施するステップを含む、請求項10記載の方法。
【請求項14】
オーバーバーデンの下に埋まっている貯留体を描写するステップを更に有する、請求項11記載の方法。
【請求項15】
前記改善ステップは、掘削しながら方位角伝搬比抵抗測定値をログ記録することにより構造情報及び異方性比抵抗を指定するステップを含む、請求項10記載の方法。
【請求項16】
前記改善ステップは、ワイヤーライン三軸誘導測定値から構造情報及び異方性比抵抗を指定するステップを含む、請求項10記載の方法。
【請求項17】
表面電磁探査からのデータのインバージョンを実行するステップと、
異方性に拘束を課すことによりモデル探索空間を拘束するステップと、
前記拘束を受けた前記インバージョンに基づいて結果を出力するステップと、を有する方法。
【請求項18】
前記拘束ステップは、オーバーバーデンのマクロ異方性と固有異方性の両方を推定し、前記マクロ異方性及び前記固有異方性に拘束を課すステップを含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記拘束ステップは、垂直比抵抗、水平比抵抗、及び地層傾斜を推定するステップを含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記拘束ステップは、ミクロ異方性を示す層状化比抵抗モデルの各層について水平比抵抗及び垂直比抵抗の値を指定するステップを含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記拘束ステップは、前記オーバーバーデンの層状化モデルを用いるステップを含む、請求項17記載の方法。
【請求項22】
前記拘束ステップは、標的貯留層なしに前記表面電磁探査の順方向モデルを稼働させて一次場の値を推定するステップを含む、請求項17記載の方法。
【請求項23】
前記拘束ステップは、地震データインバージョン又は重力データインバージョンのうちの少なくとも一方を用いて比抵抗インバージョンを実行するステップを含む、請求項17記載の方法。
【請求項24】
前記出力ステップは、オーバーバーデンよりも下に埋まっている貯留体をディスプレイ上に描写するステップを含む、請求項17記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2011−508876(P2011−508876A)
【公表日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539640(P2010−539640)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/086525
【国際公開番号】WO2009/079355
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(500177204)シュルンベルジェ ホールディングス リミテッド (51)
【氏名又は名称原語表記】Schlnmberger Holdings Limited