説明

袋状容器

【課題】把持した際の手先への食い込みをより効果的に防止でき得る袋状容器を提供する。
【解決手段】袋状容器10には、その周囲がシールされることにより袋部13から隔離されるとともに、その内部が未シールの把持部20が設けられている。この把持部20の内部には、切込線である舌片形成線22が形成されている。この舌片形成線22により、一端が把持部に繋がったまま他端が把持部から離間可能な舌片24が形成される。この舌片24は、個別にカールした状態を維持可能となっている。具体的には、この舌片24の基端近傍には、カールさせた当該舌片24が差し込まれる係止用切込線26が形成されており、カールした舌片24の先端が当該係止用切込線26に差し込まれることでカール状態が維持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート材(フィルムを含む)を貼り合わせることで形成される袋状容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シート材を貼り合わせることで形成される袋状容器、例えば、パウチ容器などが広く知られている。近年、かかる袋状容器を、より取り扱いやすくするために、当該袋状容器に把持部を設けることが提案されている。
【0003】
把持部の構成としては、種々考えられるが、例えば、特許文献1−3に開示されているように、容器のシール部に、手先が差し込まれる差込孔を形成する構成が考えられる。かかる構成によれば、当該差込孔に手先を差し込んで引っ掛けることで、比較的、容易に容器を把持することができる。
【0004】
ただし、かかる差込孔に手先を引っ掛けた場合、剛性の高いシール部が手先に直接食い込み、痛みを生じるという問題がある。かかる問題を避けるために、特許文献4には、シート材の貼り合わせにより形成された容器(パウチ容器)のヒートシール部に二つの切り込み端がつなぎ部を挟んで相互に離間した一本の切り込みを入れ、当該切り込みと前記つなぎ部とで囲まれて手先を差し入れたときに把手孔が開口する把手孔予定部が設けられ、前記把手予定部の周囲に未シール部を設ける技術が開示されている。かかる技術によれば、把手孔(差込孔)の周辺は未シール状態であるため、把手孔に手先を引っ掛けたとしても剛性の高いシール部が手先に直接食い込むことが防止される。また、把手孔に手先を差し込んだ場合、つなぎ部が多少の丸みを持って折れ曲がる。そして、把手孔に手先を引っ掛けた際には、この丸みを持った折れ曲がり部が手先に当たることになるため、食い込みに伴う痛みを多少は低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6−49341号公報
【特許文献2】特開平9−183442号公報
【特許文献3】特開2002−211588号公報
【特許文献4】特開2004−359258号公報
【特許文献5】特開2004−359259号公報
【特許文献6】実開昭62−87038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この特許文献4に記載の技術では、単に、つなぎ部を曲げているだけのため、手先との接触面積を大幅に向上することはできず、手先への食い込みに伴う痛みを効果的に低減することはできなかった。
【0007】
また、特許文献4の他に、特許文献5,6などにも、食い込み防止を目的とする技術が開示されているが、いずれも、食い込みを効果的に防止することはできなかった。
【0008】
そこで、本発明では、把持した際の手先への食い込みをより効果的に防止でき得る袋状容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の袋状容器は、シート材を貼り合わせることで形成される袋状容器であって、
【0010】
充填物が収容される袋部と、その周縁がシールされることにより前記袋部から隔離されるとともに、その内部が未シール状態の把持部と、前記把持部内に施される舌片形成線により区画され、当該舌片形成線に沿ってシート材が破断されることにより、その一端が前記把持部に繋がったまま、その他端が把持部から離間可能となる複数の舌片であって、めくられることでユーザの手が差し込まれる差込孔を前記把持部内に形成する複数の舌片と、を備え、各舌片を個別にカールさせたカール状態が維持可能である、ことを特徴とする。
【0011】
他の好適な態様では、一つの舌片と把持部との繋がり部分の近傍または他の舌片に形成され、カールされた前記一つの舌片の先端が差し込まれることで前記一つの舌片をカール状態で維持する係止用切込線を有する。
【0012】
他の好適な態様では、さらに、カールされた前記舌片の先端を他部位に貼着することで、前記舌片をカール状態で維持するシール体を有する。
【0013】
他の好適な態様では、前記舌片は、カールした状態で、その先端が他部位に接着されている。
【0014】
他の好適な態様では、前記舌片は、舌片形成線に沿ってシート材が破断された後に加熱され、熱収縮することによりカール状態で維持される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数の舌片が個別にカールさせた状態で維持可能となっている。そして、舌片がカールすることにより、手先にかかる負荷を分散することができ、手先への食い込みを効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態である袋状容器の正面図である。
【図2】(a)は舌片をカールさせた際の把持部周辺の正面図であり、(b)は(a)におけるB−B断面図である。
【図3】把持部の他の例を示す図である。
【図4】把持部の他の例を示す図である。
【図5】把持部の他の例を示す図である。
【図6】把持部の他の例を示す図である。
【図7】袋状容器の他の例を示す図である。
【図8】袋状容器の他の例を示す図である。
【図9】従来技術での把持の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態である袋状容器について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態である袋状容器10の正面図である。この袋状容器10は、シート材を貼り合わせることで形成されており、流動性を有する充填物、例えば、液状、ゼリー状、あるいは、粉状の飲料や薬品、雑貨などを収容するのに好適な構成となっている。なお、理解を容易にするために、以下の図面では、シート材のうち、他のシート材に貼着(シール)されたシール部には濃墨ハッチングを、他のシート材に貼着されていない未シール部には薄墨ハッチングを施す。
【0018】
袋状容器10は、パウチ本体12と、当該パウチ本体12に装着されるスパウト15と、に大別される。パウチ本体12は、シート材を貼り合わせることで形成される袋状部材である。このパウチ本体12を構成するシート材は、適度な柔軟性を有するのであれば、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等からなる熱接着性を有するシーラントフィルムの外面に、アルミホイル等のガスバリア性シート等を積層した二軸延伸ポリエステルフィルム等をラミネートした厚さ60〜200μm程度の柔軟性シート等を用いることができる。
【0019】
また、パウチ本体12は、袋状であれば、その形状も特に限定されないが、本実施形態では、自立型のスタンディングパウチ型としている。すなわち、本実施形態のパウチ本体は、表裏一対の外装シート14f、14b(以下、表裏を区別しない場合は「外装シート14」という)と、当該一対の外装シート14の下部から内側に折り込まれてボトムガセット部を形成するガセットシート(図1では見えず)から構成されている。そして、折り込まれたガセットシートの周縁部が外装シート14の下部周縁に、外装シート14の両側縁部同士が相互に公知の貼着技術、例えば、ヒートシール技術などによりシールされることで袋状に形成される。ただし、ここで例示した形態は、一例であり、袋状を呈するのであれば、四方または三方シールのパウチ(いわゆる平パウチ)や、外装シート14の側縁にガセットシートが配されたサイドガゼットパウチ等であってもよい。
【0020】
かかるパウチ本体12は、充填物が充填される袋部13が構成されることになる。また、本実施形態では、袋状容器10をより取り扱いやすくするために、このパウチ本体12の一部に、この袋部13とは隔離された把持部20を構成しているが、この把持部20の具体的構成については後に詳説する。
【0021】
スパウト15は、パウチ本体12の袋部13に充填された充填物を注ぎだすための抽出口として機能するものである。このスパウト15は、樹脂、例えば、パウチ本体12を形成している柔軟性シートのシーラントフィルムと同種の熱接着性樹脂などからなる。スパウト15は、袋部13と連通された連通孔を有する口部本体と、当該口部本体を開閉するキャップ部と、に大別される。キャップ部は、口部本体を開閉できるのであれば、口部本体に対して螺合により着脱自在のスクリューキャップであってもよいし、ヒンジ部材を介して口部本体に接続されるヒンジキャップなどであってもよい。このスパウト15は、パウチ本体12のどこに装着されてもよいが、本実施形態では、図1に図示するように、パウチ本体12の上縁辺と側縁辺とが交わる角部を斜めに切り落として形成される斜辺にヒートシールされている。
【0022】
パウチ本体12の袋部13には、液体などの充填物が充填される。この充填物は、スパウト15、または、外装シート14の上縁の未シール部から充填される。図1の図示例では、充填物を充填する前の段階では、外装シート14の上縁のうちスパウト15から離間した部位(図1における領域M)は、未シールの状態で保たれ、当該未シール部から充填物が充填される。そして、充填物を充填した後に、当該未シール領域Mにおいてシート材同士がシールされ、容器が密封される。なお、当然ながら、この充填方法に代えて、他の充填方法、例えば、外装シート14の上縁を全てシールしたうえで、スパウト15を通じて充填物を充填する方法などを採用してもよい。
【0023】
以上のように構成された袋状容器10には、流動性を有した充填物が充填され、製品として出荷される。ユーザは、適宜、この製品となった袋状容器10を持ち運ぶ。この持ち運びの際、ユーザは、袋部13あたりを把持することが多いが、袋部13そのものは、安定性に欠くため把持しにくいという問題があった。また、ユーザは、必要に応じて、袋状容器10に充填された充填物を他の容器に詰め替える詰め替え作業なども行う。この詰め替え作業時にも、ユーザは、袋部13を把持することが多いが、充填物の流出に伴い袋部13の形状が変形するため、やはり、把持しにくいという問題があった。また、詰め替え作業のために袋部13を把持する際に、誤って、当該袋部13を過度に押圧すると、充填物が急激に押し出され、充填物の意図しない飛散などを招くこともあった。
【0024】
そこで、こうした持ち運び作業や詰め替え作業時などにおける取り扱いやすさを向上するために、従来から、袋状容器に把持手段を設けることが提案されている。この把持手段としては、パウチ本体のうちシール部に形成され、手先が差し込まれる差込孔が提案されている。かかる構成によれば、差込孔に手先を差し込んで引っ掛けることで、比較的、容易、かつ、安定的に容器を把持することができる。
【0025】
しかし、こうした従来の差込孔は、比較的、剛性の高いシール部に形成されているため、当該差込孔の縁部が手先に直接食い込み、痛みを生じるという問題があった。本実施形態では、かかる問題を解決するために、パウチ本体12に、特殊な形態の把持部20を設けている。以下、この把持部20について詳説する。
【0026】
把持部20は、パウチ本体12に設けられ、その周縁がシールされることにより袋部13から隔離されるとともに、その内部が未シールとなっている部位である。この把持部20の位置、形状は袋状容器10を把持する際に持ちやすいものであれば、特に限定されない。本実施形態の把持部20は、パウチ本体12の側端近傍に設けられ、パウチ本体12の上下方向に長尺な略長方形となっている。そして、かかる位置に把持部20が形成されているため、袋部13は、その一側辺が大きく内側にえぐれた形状となっている。
【0027】
ここで、このように袋部13の一側辺を内側にえぐった場合、充填物を充填した際に当該えぐれ部分周辺に急激な厚み変化が生じてしまい、袋状容器10に屈曲が発生、ひいては、当該袋状容器10の意匠性や自立時の安定性などが低下する恐れがある。かかる屈曲を防止するために、パウチ本体12の側端近傍に把持部20を設ける場合には、当該把持部20の下側には充填物が充填されないようなシールを施すことが望ましい。また、かかるシールを施すことにより生じる充填量の低減を最小限に抑えるために、当該シールは、下端に近づくにつれ袋部13が幅広となるように傾斜していることが望ましい。具体的には、パウチ本体12の側端近傍に把持部20を設ける場合には、図1における二点鎖線Lに沿うようなシールを施すことが望ましい。
【0028】
再び、把持部20について詳説すると、この把持部20の内部には、表外装シート14fおよび裏外装シート14bの両方に貫通した切り込み線であって、その両端(切り込み端)が相互に離間した切り込み線、すなわち、舌片形成線22が一本形成されている。そして、かかる舌片形成線22により、把持部20の内部には、一端が把持部20に繋がったまま、他端が把持部20から離間可能な舌片24が形成されることになる。ここで、把持部20は未シール状態であるため、得られる舌片24の個数は、表外装シート14fに一つ、裏外装シート14bに一つの計二つである。
【0029】
かかる舌片24は、めくられることで、把持部20の内部に当該舌片24に相似形の差込孔23を形成する(図2(a)参照)。ユーザは、この差込孔23に手先を差し込んで引っ掛けることで、袋状容器10を把持することができる。したがって、めくられる前の舌片24部分は、将来的に差込孔となる差込孔予定部分として機能しているといえる。また、後に詳説するように、この舌片24は、めくられて、カールされた状態で維持されことで、差込孔23に差し込まれた手先にかかる荷重を分散させる緩衝材としても機能する。
【0030】
緩衝材として機能させるために、舌片24のうち把持部20と繋がった部分(以下「基端」という)は、袋部13とは反対側である手掛け側、すなわち、把持時に差込孔23に差し込まれた手先が当たる側に位置するようになっている。本実施形態では、図1、図2における右側が手掛け側に相当するため、舌片24の右側端部が把持部20と繋がっており、舌片24の左側端部は、把持部20とは離れた状態となっている。
【0031】
ここで、舌片24(ひいては、舌片形成線22の形状)は、少なくとも、手先相当の大きさを備えた帯状であれば、その形状は特に限定されない。したがって、舌片24は、例えば、略U字状や略C字状、略V字状、略コ字状などであってもよい。本実施形態では、舌片24を、略矩形の帯の先端に略V字が接続された矢印のような形状としている。かかる形状とすることで、後述する係止用切込線26への舌片24の差し込みを容易としつつも、一度、係止用切込線26に差し込まれた舌片24の抜けを生じにくくさせることができる。また、本実施形態では、舌片形成線22の端部にパンチ孔28を形成している。これは、舌片形成線22の端部から意図しない破断が進行することを防止するためである。なお、意図しない破断を防止できるのであれば、図3に図示するように、パンチ孔28に代えて、円弧状の切込端28を設けるようにしてもよい。
【0032】
把持部20の外部(すなわち、表裏一対の外装シート14が互いに貼着されたシール部16)であって舌片24の基端近傍には、舌片24の幅相当の長さの切込線、すなわち、係止用切込線26が形成されている。この係止用切込線26は、舌片24をカールしたカール状態で維持する維持手段として機能するもので、外側にめくられてカールさせられた舌片24の先端が差し込まれる切込線である。この係止用切込線26は、舌片24の一部が差し込み可能であるならば、その形状や長さは特に限定されない。ただし、本実施形態では、係止用切込線26を、舌片24のうち帯状部分(舌片24のうち幅一定の部分)の幅より長く、かつ、V字状部分の基端(V字状部分のうち最も幅広となる部分)の幅より短い直線形状としている。かかる形状とすることで、係止用切込線26に一度差し込まれた舌片24は、V字状部分の基端が当該係止用切込線26に引っ掛かることになる。そして、この引っ掛かりにより舌片24の係止用切込線26からの抜けが生じにくくなる。また、既述したとおり、舌片24の先端は、徐々に幅広となる略V字状であるため、比較的、容易に係止用切込線26に差し込めるようになっている。
【0033】
次に、この係止用切込線26に舌片を差し込んだ際の状態について図2を参照して説明する。図2(a)は、係止用切込線26に舌片を差し込んだ際の正面図であり、図2(b)は、図2(a)における概略B−B断面図である。
【0034】
既述したとおり、本実施形態では、未シール部である把持部20の内部に舌片形成線22が形成されており、当該舌片形成線22により一対の舌片24が形成される。袋状容器10を把持する際には、予め、この一対の舌片24を、それぞれ個別に外側に向けてめくりカールさせる。そして、このカールした舌片24の先端(すなわち略V字状部分)を係止用切込線26に差し込む。係止用切込線26に差し込まれることにより、各舌片24は、図2(b)に図示するように、カールした状態で維持されることになる。また、既述したとおり、舌片24のうち把持部20と繋がった基端は、差込孔23のうちユーザの手が引っ掛けられる手掛け側に位置しているため、このカールされた舌片24は手掛け側に位置することになる。
【0035】
ユーザは、舌片24をめくることで形成された差込孔23に手先を差込んで引っ掛けることで袋状容器10を把持する。このとき、ユーザの手先は、個別にカールした二つの舌片24に当たることになる。ここで、このカールした舌片24は、丸みを帯びた形状、換言すれば、角部がない形状をしている。そのため、図9に図示する従来技術のように、単に舌片24を折り曲げただけの場合に比して、手先への当たりが柔らかくなる。また、舌片24をカールさせた場合、舌片24を折り曲げただけの従来技術に比して、手先との接触面積も大きくなるため、手先にかかる荷重をより分散させることができる。また、本実施形態では、二つの舌片24を個別にカールさせており、断面視では、略円筒部材が二つの並んだような形状となっている。そのため、二つの舌片を纏めて折り曲げただけの従来技術に比して、手先との接触面積がより向上し、手先にかかる荷重がより分散されることになる。さらに、このカールした舌片24は、適度な弾性を有しており、当接した手先の形状に応じて柔軟に形状を変化することができる。そして、この形状変化により、手先にかかる荷重が、より一層分散されることになる。そして、手先にかかる荷重が分散されることで、把持時における手先への食い込み、ひいては、食い込みに伴う痛みを大幅に低減することができる。つまり、カールした舌片24は、差込孔23に差し込まれた手先にかかる荷重を分散させ、食い込みを低減する緩衝材として機能する。
【0036】
本実施形態では、このようにパウチ本体12に係止用切込線26を形成することで、二つの舌片24をカール状態で維持可能にしている。そして二つの舌片24をカール状態で維持することにより、従来に比して、手先への食い込みを低減できる。そして、結果として、持ち運び時や詰め替え作業時をより容易、より快適に行うことができ、取り扱い性をより向上できる。
【0037】
なお、カールさせた舌片24の係止用切込線26への差し込み作業、すなわち、舌片24をカール状態で維持させるための作業は、製品を購入したユーザが行ってもよいし、製品として出荷する前の段階においてメーカ側が行ってもよい。また、ここまでで説明した構成は一例であり、各舌片24が個別にカールしたカール状態が維持できるのであれば、他の構成であってもよい。例えば、上述の説明では、把持部20の外部に位置するシール部に係止用切込線26を形成していたが、他の部位に形成してもよい。例えば、スペース的な余裕があるのであれば、把持部20内(すなわち未シール部)に係止用切込線26を形成してもよい。また、図3に図示するように、舌片24そのものに係止用切込線26を形成してもよい。この場合、係止用切込線26は、舌片24の先端付近に形成される。そして、一つの舌片24に形成された係止用切込線26に、他方の舌片24が差し込まれることでカール状態が維持される。
【0038】
また、上述の説明では、舌片形成線22を、事前に切り込まれた切込線としているが、舌片形成線22に沿った破断を誘発する半破断線としてもよい。別の言い方をすれば、舌片24を形成する切込線を、ユーザが形成するようにしてもよい。すなわち、図4に図示するように、舌片形成線22として、切れ部と繋ぎ部とが交互に並ぶミシン線や、シート材の肉厚より浅い溝線であるハーフカット線などの半破断線22を用いてもよい。そして、必要に応じて、ユーザが半破断線22に沿ってシート材を破断することにより切込線、ひいては、舌片24を形成するようにしてもよい。このように、切込線に代えて半破断線22を用いることで、舌片24が不必要にバタつくことが防止される。
【0039】
なお、半破断線22を用いる場合には、破断作業時に、ユーザが舌片24の一部を摘めるように、舌片24の一部(図示例では先端)のみに切込22aを施しておくことが望ましい。さらに、この一部にのみ切込22aを施した状態で、舌片24周辺を加熱しておけば、当該切込22a周辺のみが熱収縮により反り返る。この反り返りにより、ユーザは、舌片24の一部をより摘みやすくなるため、破断作業をより楽に行うことができる。また、舌片形成線22だけでなく、舌片24が差し込まれる係止用切込線26も、ユーザにより形成されるようにしてもよい。すなわち、係止用切込線26に相当する位置に、当該切込線に代えてミシン線やハーフカット線などの半破断線26を形成するようにしてもよい。
【0040】
また、上述の説明では、係止用切込線26に舌片を差し込むことでカール状態の維持を図っていたが、他の構成でカール状態を維持するようにしてもよい。例えば、図5に図示するように、カールした舌片24の先端を、タックシールなどのシール体30で、他部位に貼着することで、カール状態を維持するようにしてもよい。ここで、一つの舌片が貼着される他部位は、把持部20やその周辺であってもよいし、図5に図示するように他方の舌片24であってもよい。また、この貼着は、メーカ側で予め行っていてもよいし、製品を購入したユーザが行ってもよい。また、ユーザが貼着作業を行う場合、シール体30は、図5(a)に図示するように、カールされる前の舌片24の先端付近において、舌片形成線22を跨ぐように貼着されていることが望ましい。このように舌片形成線22を跨ぐようにシール体30を貼着しておくことで、舌片24が不用意にばたつくことが防止される。また、シール体30を用いる場合であっても、舌片形成線22として半破断線を用いてもよい。
【0041】
また、図6(a)に図示するように、カールさせた舌片24の先端を、予め、他部位に接着しておくことで、カール状態を維持するようにしてもよい。この接着には、公知の接着技術、例えば、ヒートシール技術や、溶剤溶着技術などを用いることができる。ここで、溶剤溶着に用いられる溶剤としては、例えば、シート材が、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂などのシート材や、表裏面に非晶性ポリオレフィン系樹脂を積層した積層シートなどである場合、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソランなどのエーテル系溶剤、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素系溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸メチルなどのエステル系溶剤、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、トルエンなどの芳香族炭化水素系溶剤などの1種、又は2種以上の混合溶剤などの有機溶剤を用いることができる。なお、この舌片24の接着は、予め、メーカ側で行われることが望ましい。また、一つの舌片24の接着位置は、当該一つの舌片24の先端以外の部位であれば、把持部20やその周辺であってもよいし、図6(a)に図示するように、他方の舌片24であってもよい。
【0042】
また、舌片24を熱収縮させることでカール状態を維持するようにしてもよい。すなわち、舌片24を構成する切込線を形成した状態で、当該舌片24周辺を加熱すると、舌片が熱収縮し、カールする。そして、一度、熱収縮した舌片24は、加熱停止後(冷却後)も、カールした状態で維持される。なお、この熱収縮に伴うカールの態様は、加熱時における各種条件によって異なってくる。したがって、場合によっては、図6(b)に図示するように、二つの舌片24が、互いに内側に向かってカールすることもある。また、一つの舌片24のみが内側に、他方の舌片24のみが外側にカールすることもある。さらに、二つの舌片24が互いに外側に向かってカールすることもある。しかし、いずれの場合であっても、二つの舌片24が個別にカールすることに変わりはない。そのため、手先との舌片24との接触面積が広がり、また、舌片24が適度な弾性を有するため、把持時に手先にかかる負荷を分散することができる。
【0043】
また、上述の説明では、把持部20(ひいては舌片24や差込孔23)を、パウチ本体12の側端近傍に設ける場合を例に挙げて説明したが、把持部20は、他の位置に設けられてもよい。例えば、図7に図示するように、パウチ本体12の上端近傍に設けてもよい。また、上述の説明では、スパウト15(注出口)を有した袋状容器10を例に挙げて説明したが、シート材を貼り合わせることで形成される袋状容器であれば、図8に図示するように、スパウト15を有さない袋状容器10に把持部20等を設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
10 袋状容器、12 パウチ本体、13 袋部、14 外装シート、15 スパウト、16 シール部、20 把持部、22 舌片形成線、23 差込孔、24 舌片、26 係止用切込線、28 パンチ孔、30 シール体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材を貼り合わせることで形成される袋状容器であって、
充填物が収容される袋部と、
その周縁がシールされることにより前記袋部から隔離されるとともに、その内部が未シール状態の把持部と、
前記把持部内に施される舌片形成線により区画され、当該舌片形成線に沿ってシート材が破断されることにより、その一端が前記把持部に繋がったまま、その他端が把持部から離間可能となる複数の舌片であって、めくられることでユーザの手が差し込まれる差込孔を前記把持部内に形成する複数の舌片と、
を備え、
各舌片を個別にカールさせたカール状態が維持可能である、
ことを特徴とする袋状容器。
【請求項2】
請求項1に記載の袋状容器であって、さらに、
一つの舌片と把持部との繋がり部分の近傍または他の舌片に形成され、カールされた前記一つの舌片の先端が差し込まれることで前記一つの舌片をカール状態で維持する係止用切込線を有する、ことを特徴とする袋状容器。
【請求項3】
請求項1に記載の袋状容器であって、さらに、
カールされた前記舌片の先端を他部位に貼着することで、前記舌片をカール状態で維持するシール体を有することを特徴とする袋状容器。
【請求項4】
請求項1に記載の袋状容器であって、
前記舌片は、カールした状態で、その先端が他部位に接着されている、ことを特徴とする袋状容器。
【請求項5】
請求項1に記載の袋状容器であって、
前記舌片は、舌片形成線に沿ってシート材が破断された後に加熱され、熱収縮することによりカール状態で維持される、ことを特徴とする袋状容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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