説明

袖壁ユニット及びこれを用いた袖壁構造

【課題】引戸が引き込まれる袖壁の施工性を向上し得る袖壁ユニット及びこれを用いた袖壁構造を提供する。
【解決手段】引戸3が引き込まれる袖壁として建物内の開口部4に配設される袖壁ユニット1であって、引き込まれた状態の前記引戸の一方面3aに対面するように配設される面材11と、この面材の一側部11cに沿うように裏面11bに固着された袖壁下地枠体13とを有した袖壁本体10と、前記袖壁本体とは別体とされ、かつ、前記袖壁下地枠体と略同厚さとされるとともに、この袖壁下地枠体から間隔を空けて前記面材の裏面に固着される縦桟17とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物内の開口部に配設される袖壁ユニット及びこれを用いた袖壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の引戸が引き込まれる袖壁構造は、施工現場において発生した端材等を利用して、袖壁下地を形成し、建物内の開口部に配設して、その表裏面に石膏ボード等の壁面材を貼着して袖壁を形成する構造とされていた。このような構造では、端材の加工や袖壁下地の形成など施工現場において多くの作業が必要となり、施工性の改善が望まれていた。
下記特許文献1では、建築物の引戸を収納する引戸用小壁の施工方法が提案されている。
この施工方法では、矩形状に予め組み立てられた軸組を、開口枠体の中方立に当接させて開口部に固定する。次いで、軸組と略同一の厚みとされた縦軸を、引戸の移動する左右方向に軸組に並べて開口枠体の外枠材に当接させて開口部に固定する。そして、これら左右方向に沿って並べられた軸組と縦軸の表面及び裏面にボードを貼り付けて引戸用小壁を施工する態様とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−226313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された引戸用小壁の施工方法では、軸組及び縦軸を開口部に固定した後、その表裏にボードを貼り付ける必要があり、更なる施工性の改善が望まれていた。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、引戸が引き込まれる袖壁の施工性を向上し得る袖壁ユニット及びこれを用いた袖壁構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る袖壁ユニットは、引戸が引き込まれる袖壁として建物内の開口部に配設される袖壁ユニットであって、引き込まれた状態の前記引戸の一方面に対面するように配設される面材と、この面材の一側部に沿うように裏面に固着された袖壁下地枠体とを有した袖壁本体と、前記袖壁本体とは別体とされ、かつ、前記袖壁下地枠体と略同厚さとされるとともに、この袖壁下地枠体から間隔を空けて前記面材の裏面に固着される縦桟とを備えていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る袖壁ユニットにおいては、前記面材を、ケナフボードとしてもよい。
【0008】
また、上記目的を達成するために、本発明に係る袖壁構造は、本発明に係る袖壁ユニットを用いた袖壁構造であって、前記袖壁本体の面材は、前記開口部に固定された戸尻側縦枠及び中方立に、幅方向の各端部がそれぞれ当接する幅寸法となるように前記一側部とは異なる側の他側部側が切断され、この面材の他側部に沿うように前記縦桟が裏面に固着されており、前記袖壁ユニットは、幅方向の各端部が前記戸尻側縦枠及び前記中方立のそれぞれに当接されるとともに、前記開口部に固定され、この袖壁ユニットの前記袖壁下地枠体及び前記縦桟の表面には、壁面材が貼着される構造とされている。
【0009】
本発明に係る袖壁構造においては、前記袖壁本体の面材を、前記戸尻側縦枠の壁厚方向背面側端面及び前記中方立の袖壁側側面に、幅方向の各端部がそれぞれ当接する幅寸法となるように他側部側が切断されたものとし、前記袖壁ユニットを、前記縦桟が固着された側の幅方向の端部の表面が前記戸尻側縦枠の壁厚方向背面側端面に当接するように配設する構造としてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る袖壁ユニット及びこれを用いた袖壁構造は、上述のような構成としたことで、袖壁の施工性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)、(b)は、いずれも本発明の一実施形態に係る袖壁ユニットを用いた袖壁構造の一例を模式的に示し、(a)は、一部破断概略背面図、(b)は、(a)におけるX−X線矢視に対応させた一部破断概略拡大横断面図である。
【図2】同袖壁ユニットの一例を模式的に示す一部分解概略斜視図である。
【図3】(a)、(b)は、いずれも同袖壁構造の施工手順の一例を説明するための概念的な説明図であり、(a)は、図1(b)に対応させた図、(b)は、図1(a)に対応させた図である。
【図4】(a)、(b)は、いずれも同施工手順を説明するための概念的な説明図であり、(a)は、図1(b)に対応させた図、(b)は、図1(a)に対応させた図である。
【図5】(a)、(b)は、いずれも同施工手順を説明するための概念的な説明図であり、(a)は、図1(b)に対応させた図、(b)は、図1(a)に対応させた図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1〜図5は、本実施形態に係る袖壁ユニット及びこれを用いた袖壁構造の一例について説明するための概念的な説明図である。
なお、一部の図では、他図に付している詳細な符号の一部を省略している。
また、以下の実施形態では、図1(b)に示すY方向から見た状態を基準として、図1(b)における上側を手前側、下側を背面側として、その方向等を説明する。
【0013】
本実施形態に係る袖壁ユニット1は、図1(b)に示すように、建物内の開口部4に、引戸3が引き込まれる袖壁として配設される。図例では、一枚からなる片引き式の引戸3が引き込まれる袖壁として配設された例を示している。
開口部4は、柱材や間柱、横桟(まぐさ)、飼木、床下地などの枠下地5によって正面視して略矩形状に形成されている(図3も参照)。
この開口部4の内周面に沿うようにして、引戸3を建て付ける戸枠2が配設される。
開口部4の開口幅は、図1(b)に示すように、開口部4に配設された戸枠2に建て付けられる引戸3が開閉自在にスライドし得るように引戸3の戸幅及び戸枠2の厚さ(引戸3の戸幅と同方向に沿う厚さ)に応じて形成される。つまり、本実施形態のように袖壁納めで施工される片引き式の引戸3を例にすれば、開口部4の開口幅は、当該引戸3の戸幅の略2倍程度の幅寸法とされる。
【0014】
戸枠2は、図例では、一対の縦枠21,22(戸先側縦枠21及び戸尻側縦枠22)と、これら縦枠21,22の上端部間に架設された上枠(鴨居)20と、これら縦枠21,22間の略中間部に設けられた中間縦枠(中方立)23とを備えている(図3も参照)。
上枠20は、その下面に、引戸3のスライド移動を案内する上吊レールや案内溝を長手方向に沿って有している。また、この上枠20は、図3(a)に示すように、戸先側が、開口部4の戸先側に形成される内壁の壁厚に対応させて幅広部とされ、戸尻側が、袖壁ユニット1を用いて形成される袖壁の壁厚に対応させて上記幅広部よりも幅の狭い幅狭部とされている。また、この上枠20の幅広部と幅狭部とを区切る長手方向略中央部には、中方立23の上端部が係合する切欠部が形成されている。
【0015】
戸先側縦枠21は、上枠20の上記幅広部に応じた幅寸法(壁厚方向の幅寸法)とされ、開口部4の戸先側の内側面に沿うように上下方向に沿って配設される(図3も参照)。この戸先側縦枠21には、引戸3の戸先側端部を受け入れる戸じゃくり溝が上下方向に沿って形成されている。
戸尻側縦枠22は、上枠20の上記幅狭部に応じた幅寸法(壁厚方向の幅寸法)とされ、開口部4の戸尻側(袖壁側)の内側面に沿うように上下方向に沿って配設される(図3も参照)。この戸尻側縦枠22には、引戸3の戸尻側端部を受け入れる戸じゃくり溝が上下方向に沿って形成されている。
中方立23は、開口部4の略中間位置において上下方向に沿って配設され、その壁厚方向に沿う幅寸法が、袖壁ユニット1を用いて形成される袖壁の壁厚に応じた幅寸法とされている(図3も参照)。この中方立23の壁厚方向手前側端面には、引戸3の背面側表面3aに摺接する隙間遮蔽部材(モヘア部材)が上下方向に沿って添設されている。
【0016】
上記構成とされた戸枠2は、上枠20の長手方向の各端面を、各縦枠21,22の上端部内側面に突き合わせ、これら縦枠21,22の上端部の外側面から木ねじ等の固定止具を螺入して、上枠20と各縦枠21,22とを連結するようにしてもよい。また、上枠20の上記切欠部に中方立23の上端部を係合させ、木ねじ等の固定止具を螺入して中方立23を上枠20に連結して、戸枠2を組み付けるようにしてもよい。
また、このように組み付けられた戸枠2は、図3に示すように、開口部4の内周面に沿わせるようにして固定される。図例では、開口部4の内周天面を構成する横桟などの枠下地5に沿わせるようにして上枠20を固定し、開口部4の内周両側面を構成する柱材などの枠下地5,5に沿わせるようにして一対の縦枠21,22を固定した例を示している。また、これら上枠20及び一対の縦枠21,22は、各枠下地5に対して飼木などのスペーサー材6を介して固定された例を示している。
また、方立材23の下端部は、床下地などの枠下地5に固定するようにしてもよい。
【0017】
引戸3は、上記構成とされた戸枠2にスライド自在に建て付けられる。本実施形態では、当該引戸3の上端部にランナー部材を連結し、このランナー部材を引戸3の戸幅方向に沿って走行自在に支持する走行案内部としての上吊レールを上枠20に設け、上吊式で開閉される構成とされている。なお、図示を省略しているが、床面には、引戸3のスライド移動をガイドするガイドピンが固定され、引戸3の下端面には、このガイドピンを受け入れる凹溝が形成されている。
なお、戸枠2としては、図例のように下枠を備えない上吊式の戸枠に限られず、引戸の下端部に戸車を設け、この戸車をガイドするレールを備えた下枠を更に備えた戸枠としてもよい。また、図例のような固定枠に限られず、ケーシング額縁を備えたいわゆるケーシング枠を戸枠として採用するようにしてもよい。
また、戸枠2は、合板やLVL等の木質積層板、パーティクルボード等の木質ボード、またはインシュレーションボードやMDF(中密度繊維板)等の木質繊維板などの木質系材料から形成されたものとしてもよい。または、合成樹脂系材料や金属系材料等から形成されたものとしてもよい。
【0018】
上記のように戸枠2に建て付けられる引戸3が引き込まれる袖壁として、開口部4の戸尻側の内側面から戸先側に向けて突出するように本実施形態に係る袖壁ユニット1が配設される。
袖壁ユニット1は、図1及び図2に示すように、面材11及び袖壁下地枠体13を有した袖壁本体10と、この袖壁本体10とは別体とされた縦桟17とを備えている。
面材11は、図2に示すように、略矩形平板状とされ、図1(b)に示すように、引き込まれた状態の引戸3の背面側表面3aに対面するように配設される。
この面材11の高さ寸法は、開口部4の開口高さに応じた寸法とされ(図4(b)参照)、この面材11の幅寸法は、施工前の状態では、一般的な汎用の各種の引戸3の戸幅に対応可能なように、この戸幅よりも予め大きく形成されている。つまりは、この面材11の幅寸法は、施工前の状態では、汎用の最大幅の引戸の戸幅に応じた幅寸法とされている。
【0019】
また、本実施形態では、面材11は、ケナフを解繊して得られた繊維に、バインダー(接着成分)となる樹脂材を含有させてボード化したケナフボード11とされている。
このケナフボード11は、例えば、以下のようにして製造するようにしてもよい。
ケナフの靭皮を、繊維径が20μm〜500μm、好ましくは、50μm〜100μm程度となるように解繊し、繊維長が6mm以上、好ましくは、10mm〜200mm程度となるように切断して堆積、積層し、長繊維マット体を形成する。この長繊維マット体を形成する際、ケナフ長繊維のそれぞれを、略一方向に配向させるようにしたり、略直交する二方向に配向させるようにしたりしてもよい。
次いで、上記長繊維マット体に、バインダーとしての接着剤を均一に分散させて熱プレス機に導入して熱プレス(加熱圧縮)し、密度が0.35g/cm〜1.20g/cm程度、好ましくは、0.50g/cm〜1.00g/cm程度となるように製造するようにしてもよい。
なお、長繊維マット体に接着剤を分散させる方法は、液状の接着剤に上記長繊維マット体を浸漬させ、ローラ等で絞って混合量を調整して混合させたり、粉末状の接着剤を混合して分散させたり、スプレー塗布により混合、分散させたりしてもよい。
また、バインダーとなる接着剤は、ケナフボード11の総重量に対して、その含有量が固形分で、5重量%〜50重量%程度、好ましくは10重量%〜30重量%程度としてもよい。また、接着剤としては、ユリア樹脂系、ユリア・メラミン共縮合樹脂系、フェノール樹脂系及びイソシアネート樹脂系等の熱硬化性タイプの樹脂接着剤としてもよい。
【0020】
また、このケナフボード11の表面(手前側の面)11aには、樹脂含浸紙を更に貼着積層して、表面11aを形成するようにしてもよい。この樹脂含浸紙としてはジアリルフタレート系樹脂(DAP)を含浸させたクラフト紙(DAP含浸紙)としてもよい。また、積層後の樹脂含浸紙の厚みを薄くするようにサンダー処理を施し、サンダー処理後の樹脂含浸紙の厚みを、0.1mm〜0.15mm程度としてもよい。このような樹脂含浸紙を表面側に積層することで、ケナフボード11の表面11aの平滑性を高めることができる。
また、このケナフボード11の裏面(背面側の面)11bには、紙材を貼着積層するようにしてもよい。この紙材としては、防湿紙としてもよい。
【0021】
ケナフボード11の厚さは、一般的な壁面材としての石膏ボードや合板等の厚さよりも薄くするようにしてもよい。例えば、一般的な壁面材の半分程度の厚さとしてもよく、または半分よりも薄くするようにしてもよく、1.5mm〜6mm程度の厚さとしてもよい。
また、本実施形態では、ケナフボード11の表面11aには、その略全面に亘って、図1(b)に示すように、化粧シート12が貼着されている。この化粧シート12としては、オレフィン系樹脂等の合成樹脂化粧シートや化粧紙、壁クロス紙としてもよく、また、この化粧シート12は、予め工場において貼着しておくようにしてもよい。例えば、内壁の手前側表面を構成する壁面材7の表面に貼着される化粧シートの色柄等に応じた化粧シート12を予め貼着しておくようにしてもよい。これによれば、後記するように当該袖壁ユニット1を開口部4に施工した後、その手前側面に壁クロス紙張り等の表面処理をする工程が不要となり、袖壁の施工性をより向上させることができる。
【0022】
なお、上記樹脂含浸紙をケナフボード11の表面11aに積層させた構造のケナフボードを採用した場合には、化粧シート12を、樹脂含浸紙の表面側に貼着するようにすればよい。このような態様によれば、化粧シート12が貼着されて構成される袖壁本体10の表面(袖壁面)10aの平滑性を向上させることができ、施工後の見栄えを向上させることができる。
また、ケナフボード11の表面11aに予め化粧シート12を貼着しておく態様に限られず、当該袖壁ユニット1を施工した後に貼着する態様としてもよい。
【0023】
袖壁下地枠体13は、図2に示すように、ケナフボード11の幅方向の一側部(図1(b)における戸先側縦枠21側の側部)11cに沿うようにケナフボード11の裏面11bに固着されており、袖壁面10aを構成するケナフボード11の袖壁下地として機能する。
この袖壁下地枠体13は、上記同様の木質系材料から角柱状に形成された複数本の略同厚さとされた枠材14,15,16を、枠組みして形成されている。本実施形態では、一対の縦枠14,14と、この上端部間及び下端部間のそれぞれに架設された一対の横枠15,15と、一対の縦枠14,14間に架設された複数本(図例では、4本)の横桟16とによって、梯子状に形成された枠体とされている。
【0024】
この袖壁下地枠体13の高さ寸法は、ケナフボード11の高さ寸法と略同寸法とされている。
また、この袖壁下地枠体13の幅寸法は、ケナフボード11の幅寸法よりも小さく形成されている。この袖壁下地枠体13の幅寸法は、ケナフボード11の幅寸法の1/2以上で、かつ、一般的な汎用の各種の引戸3の戸幅に当該袖壁ユニット1が対応可能なように、縦桟17の幅寸法や縦桟17との間の寸法等を加味して、上記戸幅よりも小さく形成するようにしてもよい。つまりは、この袖壁下地枠体13の幅寸法は、縦桟17の幅寸法やこの縦桟17との間に形成される間隔寸法等を加味して、汎用の最小幅の引戸の戸幅に応じた幅寸法としてもよい。
【0025】
また、この袖壁下地枠体13の厚さ寸法は、当該袖壁ユニット1によって形成する袖壁の壁厚に応じた厚さ寸法とされる。この袖壁の厚さ寸法は、建物内の内壁自体の壁厚に応じて設定され、それに応じて袖壁下地枠体13の厚さ寸法を、一方面に固着されたケナフボード11の厚さ、及び後記するように他方面(背面側表面)13aに貼着される汎用の壁面材7の厚さを加味して設定するようにすればよい。つまりは、一般的な壁厚に応じて規定される袖壁の厚さ寸法に応じた寸法となるように袖壁下地枠体13とケナフボード11とを備えた袖壁ユニット1の厚さを形成しておくようにしてもよい。
本実施形態では、ケナフボード11を含む袖壁ユニット1の厚さ寸法を、図4(a)に示すように、開口部4に固定された戸尻側縦枠22の壁厚方向背面側端面22aから枠下地(内壁の下地ともなる下地)5の背面側表面までの壁厚方向の寸法と略同寸法としている。つまりは、袖壁ユニット1の厚さは、本実施形態では、当該袖壁ユニット1の手前側の表面10aを戸尻側縦枠22の壁厚方向背面側端面22aに当接させた状態で、この袖壁ユニット1の背面側の表面13a,17aが枠下地5の背面側表面と略同一平面状となるように形成されている。
【0026】
また、この袖壁下地枠体13は、上記した枠材を用いて、予め工場において枠状に組み付けられる。また、この袖壁下地枠体13は、予め工場において、ケナフボード11の一側部11cに沿わせるようにしてケナフボード11の裏面11bに一方面が固着される。つまり、ケナフボード11と、その裏面11bに固着された袖壁下地枠体13とによって構成される袖壁本体10は、予め工場において一体化されて施工現場に搬送される。
なお、この袖壁下地枠体13のケナフボード11の裏面11bへの固定は、木ねじや釘、タッカー等の固定止具及び接着剤の両方または一方を用いて固定するようにしてもよい。
【0027】
上記構成とされた袖壁本体10は、図2に示すように、ケナフボード11の幅方向の他側部側が、後記するように、当該袖壁ユニット1によって形成する袖壁の幅寸法に応じて切断される。
また、この袖壁本体10の袖壁下地枠体13から間隔を空けて、ケナフボード11の幅方向の他側部(図1(b)における戸尻側縦枠22側の側部)11dに沿って、このケナフボード11の裏面11bに縦桟17が固着される。つまり、本実施形態に係る袖壁ユニット1は、上記のように一体化された袖壁本体10と、この袖壁本体10とは別体とされ、この袖壁本体10に固着される縦桟17とを備えたユニットとされている。
【0028】
縦桟17は、袖壁下地枠体13と同様の木質系材料から角柱状に形成されており、その高さ寸法(長さ寸法)及び厚さ寸法が、袖壁下地枠体13の高さ寸法及び厚さ寸法と略同寸法とされ、袖壁面10aを構成するケナフボード11の袖壁下地として機能する。
縦桟17の幅寸法は、袖壁下地枠体13の幅寸法及びこの袖壁下地枠体13との間に形成される間隔に応じて、袖壁下地として機能し得る幅寸法に設定される。つまりは、当該袖壁ユニット1によって形成される袖壁の下地として、これら袖壁下地枠体13及び縦桟17が機能し得るように、これらの幅寸法が設定される。
この縦桟17のケナフボード11の裏面11bへの固定は、木ねじや釘、タッカー等の固定止具及び接着剤の両方または一方を用いて固定するようにしてもよい。
【0029】
次に、上記構成とされた袖壁ユニット1を用いた袖壁構造の施工手順の一例について説明する。
まず、上述したように、組み付けた戸枠2を開口部4に固定する(図3参照)。
次いで、図2に示すように、袖壁ユニット1の袖壁本体10のケナフボード11の他側部側を、開口部4に固定された戸尻側縦枠22及び中方立23に、幅方向の各端部がそれぞれ当接する幅寸法となるように切断する。
本実施形態では、図4(a)に示すように、ケナフボード11の幅寸法Wが、開口部4の袖壁側(戸尻側)の枠下地内側面5aから中方立23の袖壁側側面23aまでの幅寸法に応じた寸法となるように他側部側を切断した例を示している。つまり、本実施形態では、このケナフボード11の一側部11cが中方立23の袖壁側側面23aに当接し、ケナフボード11の他側部11dが開口部4の袖壁側枠下地内側面5aに当接するように、他側部側を切断した例を示している。なお、袖壁側枠下地内側面5aとしては、柱材等の枠下地の袖壁側枠下地内側面に限られず、飼木等のスペーサー材を枠下地として把握し、これの袖壁側内側面を、袖壁側枠下地内側面として把握するようにしてもよい。
【0030】
上記のように袖壁本体10のケナフボード11の他側部側を切断した後、図2に示すように、その他側部11dに沿うように縦桟17をケナフボード11の裏面11bに固着して、図4(a)に示すように、形成される袖壁に応じた袖壁ユニット1を形成する。
そして、図4(a)、(b)に示すように、この袖壁ユニット1を、開口部4の背面側(図示手前側)から、開口部4の袖壁側枠下地内側面5aと、中方立23の袖壁側側面23aとによって幅方向が区画された開口部4内に嵌め込むようにして開口部4内に配置する。また、袖壁ユニット1の幅方向の各端部を、戸尻側縦枠22及び中方立23のそれぞれに当接させて、当該袖壁ユニット1を開口部4に固定する。
【0031】
図例では、袖壁ユニット1の幅方向の袖壁下地枠体13が固着された側の端部を、中方立23の袖壁側側面23aに当接させ、縦桟17が固着された側の端部を、戸尻側縦枠22の壁厚方向背面側端面22aに当接させて固定した状態を示している。つまり、袖壁ユニット1を、縦桟17が固着された側の幅方向の端部の表面が戸尻側縦枠22の壁厚方向背面側端面22aに当接するように配設する構造としている。
また、図例では、袖壁ユニット1の幅方向の一端面1aを、中方立23の袖壁側側面23aに当接させ、袖壁ユニット1の幅方向の他端面1bを、開口部4の袖壁側枠下地内側面5aに当接させて固定された状態を示している(図5(a)も参照)。
なお、この袖壁ユニット1の開口部4への固定は、戸枠2及び枠下地5の両方または一方に対して、上記同様の固定止具を用いて固定するようにしてもよい。
【0032】
上記のように袖壁ユニット1を固定した後、図5(a)、(b)に示すように、この袖壁ユニット1の袖壁下地枠体13と縦桟17とに跨るように、袖壁ユニット1の背面側の表面となる袖壁下地枠体13及び縦桟17の表面13a,17aに背面側壁面材7を貼着する。
この壁面材7は、建物の内壁を構成する面材として汎用される壁面材7とされ、枠下地5等を含む内壁下地材の手前側及び背面側のそれぞれに貼着される。
手前側の壁面材7は、戸枠2の上枠20の上側面並びに戸先側縦枠21及び戸尻側縦枠22の外方側側面に当接するように加工されて貼着される。
一方、背面側の壁面材7は、戸枠2の上枠20の上側面、戸先側縦枠21の外方側側面及び中方立23の袖壁側側面23aに当接するように加工されて貼着される。
【0033】
なお、この壁面材7としては、石膏ボードや合板等としてもよく、その表面に上記同様の化粧シートを貼着するようにしてもよい。また、一枚からなる壁面材を上記形状に加工して配設する必要はなく複数枚を連設して内壁の壁面を構成するものとすればよい。
上記のように壁面材7を貼着すれば、図1に示すように、開口部4の戸尻側には、引戸3のスライドスペース(走行スペース)の背面側に位置するように、袖壁が形成される。一方、開口部4の戸先側には、引戸3によって開閉される出入り口としての開口が形成される。そして、適宜、引戸3を、戸枠2に対して建て付けることで、袖壁納めの引戸構造となる。
【0034】
以上のように、本実施形態に係る袖壁ユニット1は、引き込まれた状態の引戸3の一方面3aに対面するように配設される面材11と、この面材11の一側部11cに沿うように裏面11bに固着された袖壁下地枠体13とを有した袖壁本体10を備えている。従って、袖壁下地枠体13によって、面材11が補強され、保管時や搬送時、施工時における損傷等を防止することができる。
また、袖壁本体10とは別体とされ、かつ、袖壁下地枠体13と略同厚さとされるとともに、この袖壁下地枠体13から間隔を空けて面材11の裏面11bに固着される縦桟17を備えている。従って、袖壁ユニット1の面材11の他側部側を、上記のように切断すれば、この面材11の他側部11dに沿うように縦桟17を面材11の裏面11bに固着することで、施工現場に応じた幅寸法、つまりは、袖壁の幅寸法に応じた袖壁ユニット1を容易に形成することができる。
【0035】
さらに、このような袖壁ユニット1を用いた袖壁構造とすることで、施工性を向上させることができる。つまり、戸枠2を開口部4に固定した後、開口部4の一方側(背面側)から袖壁ユニット1を容易に施工することができ、次いで、その背面側の表面13a,17aに、背面側の壁面材7を貼着することができる。従って、一連の施工作業を、開口部4の一方側(背面側)からスムーズに行え、袖壁の施工性を向上させることができる。
さらにまた、本実施形態では、袖壁ユニット1を、縦桟17が固着された側の幅方向の端部の表面が戸尻側縦枠22の壁厚方向背面側端面22aに当接するように配設する構造としている。従って、上記のように切断される面材11の他側部11dが直線状に切断されていないような場合にも、戸尻側縦枠22によって、その他側部11dが隠蔽されて露出せず見栄えを向上させることができる。換言すれば、袖壁本体10の面材11の他側部側を、精度良く加工する必要がなく、袖壁の施工性をより向上させることができる。
【0036】
また、本実施形態では、袖壁ユニット1の面材を、ケナフボード11としている。従って、石膏ボードや合板等の壁下地ボードに比べて、強度があり、反り難いため、面材を効率的に軽量化(薄型化)することができる。従って、袖壁ユニット1自体の軽量化が図れ、施工時等における取り扱い性を向上させることができ、袖壁の施工性をより向上させることができる。
【0037】
なお、本実施形態では、袖壁ユニットが備える面材を、ケナフボードとした例を示しているが、このような態様に限られず、石膏ボードや、その他、木質系板材を面材としてもよい。このような面材としても、本実施形態に係る袖壁ユニットによれば、袖壁下地枠体によって補強され、その損傷等を防止することができる。
また、本実施形態では、略同厚さの枠材を枠組みして梯子状に形成した袖壁下地枠体を例示しているが、例えば、上下の横枠及び横桟の厚さ寸法を、左右の縦枠の厚さ寸法よりも薄く形成するようにしてもよい。また、袖壁下地枠体としては、図例のような梯子状に枠組みされたものに限られず、一対の縦枠と一対の横枠とで枠組みされたものとしてもよく、または、枠内に複数本の縦桟及び横桟を設けた格子状のものとしてもよい。
【0038】
さらに、本実施形態では、袖壁ユニットの面材と、袖壁下地枠体及び縦桟の高さ寸法を略同寸法とした例を示しているが、このような態様に限られない。例えば、袖壁下地枠体及び縦桟が面材よりも上方に突出するものとし、面材の上端面が上枠の下面に当接するように、その高さ寸法が形成されたものとしてもよい。
さらにまた、本実施形態では、袖壁ユニットの高さ寸法を開口部の開口高さに応じた寸法とした例を示しているが、このような態様に限られず、少なくともその上端部が上枠の一部に正面視して重合するような高さ寸法とすればよい。この場合は、この袖壁ユニットの上端部は、上枠に対して固定するようにしてもよい。
【0039】
また、本実施形態では、袖壁ユニットの幅方向の各端面を、開口部の袖壁側枠下地内側面、及び中方立の袖壁側側面に当接させて、開口部に固定した例を示しているが、このような態様に限られない。例えば、袖壁ユニットの幅方向の一端部の端面を、中方立の袖壁側側面に当接させ、幅方向の他端部は、戸尻側縦枠に当接させるようにしてもよい。この場合、その他端部の手前側の表面を、戸尻側縦枠の背面側端面に当接させるようにしてもよく、その他端部の端面を、戸尻側縦枠の内方側(戸先側)側面に当接させるようにしてもよい。
さらに、本実施形態では、袖壁ユニットの袖壁下地枠体が固着された側の端部を中方立側に配置し、縦桟が固着された側の端部を戸尻側縦枠側に配置した例を示しているが、逆側となるように配置するようにしてもよい。
【0040】
さらにまた、本実施形態では、袖壁ユニットによって形成する袖壁の幅寸法に応じて面材の他側部側を切断した例を示しているが、このような態様に限られない。例えば、当該袖壁ユニットを戸枠や引戸とユニット化し、これらに応じた幅寸法となるように予め工場等において面材の幅寸法を形成しておくようにしてもよい。
また、本実施形態では、片引きの一枚の引戸が引き込まれる袖壁として袖壁ユニットを開口部に配設した例を示しているが、このような態様に限られない。複数枚の引戸が引き込まれる袖壁として配設されるものとしてもよく、また、両引き(引き分け)の引戸が引き込まれる袖壁として、開口部の両側に、本実施形態に係る袖壁ユニットをそれぞれ配設するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 袖壁ユニット
10 袖壁本体
11 ケナフボード(面材)
11b 裏面
11c 一側部
11d 他側部
13 袖壁下地枠体
13a 背面側表面(袖壁下地枠体の表面)
17 縦桟
17a 背面側表面(縦桟の表面)
22 戸尻側縦枠
22a 背面側端面(壁厚方向背面側端面)
23 中方立
23a 袖壁側側面
3 引戸
3a 背面側表面(引戸の一方面)
4 開口部
5a 袖壁側の枠下地内側面
7 背面側壁面材(壁面材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引戸が引き込まれる袖壁として建物内の開口部に配設される袖壁ユニットであって、
引き込まれた状態の前記引戸の一方面に対面するように配設される面材と、この面材の一側部に沿うように裏面に固着された袖壁下地枠体とを有した袖壁本体と、
前記袖壁本体とは別体とされ、かつ、前記袖壁下地枠体と略同厚さとされるとともに、この袖壁下地枠体から間隔を空けて前記面材の裏面に固着される縦桟とを備えていることを特徴とする袖壁ユニット。
【請求項2】
請求項1において、
前記面材は、ケナフボードであることを特徴とする袖壁ユニット。
【請求項3】
請求項1または2に記載された袖壁ユニットを用いた袖壁構造であって、
前記袖壁本体の面材は、前記開口部に固定された戸尻側縦枠及び中方立に、幅方向の各端部がそれぞれ当接する幅寸法となるように前記一側部とは異なる側の他側部側が切断され、この面材の他側部に沿うように前記縦桟が裏面に固着されており、
前記袖壁ユニットは、幅方向の各端部が前記戸尻側縦枠及び前記中方立のそれぞれに当接されるとともに、前記開口部に固定され、この袖壁ユニットの前記袖壁下地枠体及び前記縦桟の表面には、壁面材が貼着される構造とされていることを特徴とする袖壁構造。
【請求項4】
請求項3において、
前記袖壁本体の面材は、前記戸尻側縦枠の壁厚方向背面側端面及び前記中方立の袖壁側側面に、幅方向の各端部がそれぞれ当接する幅寸法となるように他側部側が切断され、
前記袖壁ユニットは、前記縦桟が固着された側の幅方向の端部の表面が前記戸尻側縦枠の壁厚方向背面側端面に当接するように配設される構造とされていることを特徴とする袖壁構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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