説明

被ガス化原料ガス化システム

【課題】ガス化効率の向上とガス化炉で生成された合成ガス中に含有されたチャー等の系外排出量を減少させる。
【解決手段】ガス化炉2で生成した合成ガスG1中に含まれるチャー等をガス化炉2より後段に設けられた集塵装置10で除去回収し、更に、集塵装置10より後段に設けられた洗浄部12で合成ガスG2中に含有しているタールを除去し、該タールと前記集塵装置10で除去したチャー等を混合して混合物被ガス化原料3’として、ガス化炉2に供給し再ガス化を行いガス化率の向上とチャー等の系外排出量を減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被ガス化原料を、ガス化炉によりガス化して生成したガス(合成ガス)中に含まれるチャーやタール等の炭素化合物をガス中から回収し、再度ガス化炉に戻し循環させてガス化効率を向上させるガス化システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
畜産由来の廃棄物、エネルギー作物などのバイオマスや、プラスチック、ゴムなどの有機廃棄物等の被ガス化原料をガス化してガス(合成ガス)を生成するガス化炉としては、流動床式、噴流床式、ロータリーキルン式などがある。
【0003】
ここで、前記種々のガス化炉で被ガス化原料を熱分解によりガス化させて生成されたガス(合成ガス)中には、チャーやタール等の炭素化合物が含まれるので、ガス化炉の下流側にチャーを除去する除去部(サイクロン等)と更にその下流にタールを除去するための洗浄部(湿式洗浄装置)を設け、前記チャーおよびタールをそれぞれ除去して、精製合成ガスを得るようにしている。
【0004】
そして、ガス化効率を上げるために、前述した除去部で除去されたチャー等の炭化水素化合物(以下「チャー等」という)を回収し、回収されたチャー等をガス化炉に戻して再ガス化することが行われている(特許文献1)。
しかし、これらには以下のような欠点があった。
例えば、流動床式ガス化炉を用いて被ガス化原料としてバイオマスを使用しガス化を行うと、原料であるバイオマスは、水分が蒸発し揮発分が蒸発してチャー(炭化物)となる。
【0005】
そして、チャーは流動床式ガス化炉の流動床部分においてガス化剤として供給される酸素や水蒸気と反応してゆっくりとガス化される。その際に、チャーは流動床中の流動媒体の作用により物理的に粉砕され細かい粉状物となって軽い状態になっているため合成ガスの気流に乗って合成ガスと共にガス化炉より排出され、その後ガス化炉より下流に設けられた除去装置(サイクロン等)よって除去される。
【0006】
ここで、特許文献1に記載された発明では、除去装置(サイクロン3)で除去(捕集)し回収したチャーをそのまま反応装置1に戻して再ガス化している。しかし、このような構成を採ると、前述したように、チャーは流動床中の流動媒体の作用により物理的に粉砕され細かい粉状物となって除去装置で除去(捕集)されているため、そのままの状態で反応装置1に戻しても、再び合成ガスの気流に乗って合成ガスと共に反応装置1から排出され、再度除去装置で除去され、実際にはほとんど再ガス化されず、現実的にガス化効率が向上しないという欠点を有している。
【0007】
そのため、除去装置によって除去回収された細かい粉状物であるチャーを再ガス化するに際しては、ガス化装置に回収したチャーを戻した時になるべく装置内での滞留時間が長くなるようにしてチャーが再ガス化できるような技術が求められている。
【0008】
さらに、前述したように、除去回収したチャーをそのままガス化装置に循環供給、すなわち再投入してもガス化効率が向上しないことから、ガス化システム内において除去回収したチャーをシステム外へ廃棄(系外排出)することが間々見られる。
【0009】
しかし、被ガス化原料の種類も多岐にわたり、また、得たい合成ガス組成によりガス化炉の運転条件も多岐にわたり、チャーの量も原料の種類、ガス化炉の運転条件により、大きく変動する。例えば、木質原料に比較して、草などは流動床中で物理的に破砕されやすく、被ガス化原料に対して25%ものチャーが発生する場合もある。発生するチャーの量が少量の場合は、系外排出しても環境にはそれ程影響はないが、発生するチャーの量が大量となる場合に、系外排出すれば環境に悪影響を及ぼすことなる。
そこで、系外排出するチャーの量を減少させるような技術、すなわち、回収したチャーを再ガス化してガス化効率を向上させるための技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平09−3461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、その目的は、被ガス化原料をガス化装置でガス化する際に発生するチャーを回収し、効果的に再ガス化することによりガス化効率を高め、系外排出されるチャーの量を減少させるガス化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明に係る被ガス化原料ガス化システムの第1の態様は、被ガス化原料をガス化するガス化炉と、前記ガス化炉によって生成されたガス中の固体炭素化合物を除去する第1除去部と、前記第1除去部で除去された固体炭素化合物と造粒材とを混ぜて粒状物を製造する粒状物製造部と、を備え、前記粒状物製造部によって製造された粒状物を前記ガス化炉に移してガス化するように構成されていることを特徴とするものである。
ここで、「造粒材」とは、第1除去部で回収された固体炭素化合物に添加して混合し、粒状物を製造することができるものであれば良く、後述する第2除去部で除去されるタールを用いることができる。なお、前記タール以外のものでも良い。
また、「製造された粒状物」とは、粉状のチャーとタール等の造粒材とが混合されてできる塊を意味し、前記造粒材がバインダーとなって前記塊のまとまり状態を保てるものであれば、その塊の硬軟の別は問わないものをいう。すなわち、圧縮して硬くした状態のもの、圧縮されず軟らかい状態のもののいずれでもよい。
【0013】
本態様によれば、第1除去部で除去された固体炭素化合物、例えばチャー(炭化物)を回収してバインダーの役目を果たす造粒材と混合することにより、チャー同士がくっついてより粒径が大きくなった粒状物が製造され、このチャーと造粒材で構成された粒状物をガス化炉に移すことで、チャーを再ガス化することが可能となりガス化効率を向上させることが可能となる。
また、チャー同士がバインダーの役目を果たす造粒材を介してくっついて粒子を形成しているので、製造された粒状物はチャー単体のときよりも重量も粒径も共に大きくなっている。そのためガス化炉内で再ガス化される際に、製造された粒状物がガス化炉で生成された合成ガスの気流に乗ってガス化炉内に排出されるという状況が少なくなる。よってガス化炉内で粒状物の滞留する時間が長くなりチャーが再ガス化され、ガス化効率を高めることができる。
【0014】
このように、第1除去部で除去された固体炭素化合物、例えばチャー(炭化物)を再ガス化することでガス化効率を高めた結果、系外排出するチャーの量を減少させることができる。
【0015】
本発明に係る被ガス化原料ガス化システムの第2の態様は、被ガス化原料をガス化するガス化炉と、前記ガス化炉によって生成されたガス中の固体炭素化合物を除去する第1除去部と、前記第1除去部で除去された固体炭素化合物とスラリー形成材とを混ぜてスラリー状混合物を製造するスラリー状混合物製造部と、を備え、前記スラリー状混合物製造部によって製造されたスラリー状混合物を前記ガス化炉に移してガス化するように構成されていることを特徴とするものである。
【0016】
本態様によれば、第1除去部で除去された固体炭素化合物、例えばチャー(炭化物)がスラリー形成材に包み込まれるような状態になってスラリー状混合物(粘性のある流動物)になるため重量が大きくなり、ガス化炉内で再ガス化される際に、製造されたスラリー状混合物がガス化炉で生成された合成ガスの気流に乗ってガス化炉内に排出されるという状況が少なくなる。よって、ガス化炉内でのスラリー状混合物の滞留する時間が長くなりチャーが再ガス化され、ガス化効率を高めることができる。また、第1の態様と同様に系外排出するチャーの量を減少させることができる。
【0017】
本発明に係る被ガス化原料ガス化システムの第3の態様は、第1の態様に記載された被ガス化原料ガス化システムにおいて、前記第1除去部を通過したガス中からタールを除去する第2除去部を備え、前記造粒材は前記第2除去部で除去されたタールであることを特徴とするものである。
【0018】
本態様によれば、第1の態様の効果に加え、造粒材として第2除去部で除去されたタールを使用しているので、第1除去部で除去され回収された固体炭素化合物とともにタールも再ガス化を行うことができガス化効率をさらに高めることが出来る。
【0019】
本発明に係る被ガス化原料ガス化システムの第4の態様は、第3の態様に記載された被ガス化原料ガス化システムにおいて、前記第2除去部で除去されたタールの量が所望の粒状物を作るのに必要な量より少ないときは、別の造粒材を加えることを特徴とするものである。
【0020】
第1除去部で除去され回収される固体炭素化合物や第2除去部で除去されたタールは、被ガス化原料の種類によって発生量が異なる。また、タールにおいてはその性状も異なる。よって、第1除去部で除去回収された固体炭素化合物であるチャーの発生量が多く、第2除去部で除去されたタールの量が少ない場合もあり得る。このような場合は、チャーとタールを混合しても、バインダーの役目を果たすタールが少ないため、チャー同士のくっつきが悪く所望の粒状物を作れない場合が生じる。
本態様によれば、第2除去部で除去されたタールの量が所望の粒状物を作るのに必要な量より少ないときは、別の造粒材を加えることによって粒状物を製造できるので、第1の態様と同様の効果を得ることが出来る。
【0021】
本発明に係る被ガス化原料ガス化システムの第5の態様は、第4の態様に記載された被ガス化原料ガス化システムにおいて、第2除去部は前記第1除去部によって固体炭素化合物が除去されたガス中からタールを洗浄物質によって洗浄物質とともに除去する洗浄部と、前記洗浄物質とともに除去されたタールを前記洗浄物質から分離する分離部と、を備え、前記タールの量が所望の粒状物を作るのに必要な量より少ないときは、前記別の造粒材として分離部でタールと分離した洗浄物質を利用するように構成されていることを特徴とするものである。
【0022】
本態様によれば、第4の態様において、分離部でタールと分離された洗浄部で使用された洗浄物質を、別の造粒材として使用するので、わざわざガス化システムの系外から別の造粒材を用意する必要がなく、ガス化システム全体を効率よく稼動させることが出来る。
【0023】
本発明に係る被ガス化原料ガス化システムの第6の態様は、第3の態様に記載された被ガス化原料ガス化システムにおいて、前記第2除去部で除去されたタールの量が所望の粒状物を作るのに必要な量より多いときは、前記第2除去部で除去されたタールの一部を前記ガス化炉に移すように構成されていることを特徴とするものである。
【0024】
本態様によれば、所望の粒状物を作るのに使用して残った第2除去部で除去されたタールをガス化炉に移して再ガス化するので、ガス化システム全体のガス化効率を上げることができる。
【0025】
本発明に係る被ガス化原料ガス化システムの第7の態様は、第2の態様に記載された被ガス化原料ガス化システムにおいて、前記第1除去部を通過したガス中からタールを除去する第2除去部を備え、前記スラリー形成材は前記第2除去部で除去されたタールであることを特徴とするものである。
【0026】
本態様によれば、第2の態様の効果に加え、スラリー形成材として第2除去部で除去されたタールを使用しているので、第1除去部で除去され回収された固体炭素化合物とともにタールも再ガス化を行うことができガス化効率をさらに高めることが出来る。
【0027】
ここで、第3の態様では造粒材として第2除去部で除去されたタールを使用し、第7の態様ではスラリー形成材として第2除去部で除去されたタールを使用している。つまり、第2除去部で除去されたタールは造粒材としても、スラリー形成材としても使用可能である。このように第2除去部で除去されたタールが造粒材としてもスラリー形成材としても使用できるのは、第2除去部で除去されたタールが被ガス化原料の種類によって、その種類(性状)や発生量が異なるためである。
【0028】
例えば、タールの性状が高い粘性を有するものである場合には、そのタールは、第1除去部で除去回収された固体炭素化合物、例えばチャー同士をくっつけるバインダーの機能を果たし、高い粘性を有するがゆえに形状を維持できる粉状物を製造することができる。一方で、タールの性状があまり高くない粘性を有する場合、すなわちある程度流動性を有している場合(形状を保つことが出来ないような状態)は、そのタールはスラリー形成材として使用でき、チャーを包み込むような状態のスラリー状混合物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る被ガス化原料ガス化システムの第1の実施形態の概略構成図である。
【図2】本発明に係る被ガス化原料ガス化システムの第2の実施形態の概略構成図である。
【図3】本発明に係る被ガス化原料ガス化システムの第3の実施形態の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るガス化システムの実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0031】
[第1の実施形態]
図1には、本発明に係るガス化システムの第1の実施形態の概略構成図が記載されている。
本態様では、被ガス化原料3をガス化して合成ガスG1を生成するガス化炉2と、該ガス化炉2において生成した合成ガスG1中に含まれるチャー等を除去回収するための第1除去部である集塵装置10、集塵装置10によってチャー等が除去された合成ガスG2中に含有されるタールを除去して精製された精製合成ガスG3を得るための洗浄部である湿式洗浄装置12、湿式洗浄装置12で合成ガスG2中のタールを除くために使用された洗浄物質とタールの混合物から両者を分離するための分離部である油水分離装置13が設けられている。
なお、洗浄部である湿式洗浄装置12、分離部である油水分離装置13は第2除去部を構成している。
【0032】
また、集塵装置10によって除去回収されたチャー等の回収物Csと油水分離装置13によって洗浄物質と分離された凝縮タールCv(造粒材)とを混合し、粒状物を製造するための粒状物製造部である造粒装置14が設けられている。そして、混合装置14で混合された粒状物は再ガス化するための被ガス化原料3’として、ライン1を通じてガス化炉2に供給されるように構成されている。以上が本態様のガス化装置の構成である。
【0033】
本発明で使用される被ガス化原料3は、いわゆる産業廃棄物や有機性廃棄物と言われる物である。産業廃棄物としてはプラスチック等が挙げられる。また有機性廃棄物としてはバイオマス、例えば、稲わら、麦わら、籾殻、竹、笹、パーム椰子空果房、パーム椰子の幹、バガス等サトウキビ由来の廃材等の草本系バイオマス、製材所の残材、間伐材(杉、松、檜、ラワン、ブナ、ゴム、イチジク等)、街路樹剪定材、建築廃材、廃電柱、バーク、ダム流木等の木質系バイオマス、畜産系残渣の一例である鶏糞や牛・豚等の糞尿の畜産由来のバイオマス、更に、発酵残渣、食品残渣、黒液、海藻等が挙げられる。
【0034】
ガス化炉2としては、公知のガス化炉を用いることが可能であり、例えば流動床式ガス化炉、噴流床式ガス化炉、ロータリーキルン等が挙げられる。ガス化炉2は、装置内を低酸素状態にして被ガス化原料3を約650〜800℃で燃焼させて合成ガスG1を生成させるための装置である。本態様では流動床式ガス化炉を使用している。
流動床式ガス化炉2は、流動媒体4で流動床9を形成し、酸化剤5を吹き込み流動床9を流動化させ、そこへ被ガス化原料3を投入してガス化させるように構成されている。
【0035】
ここで、流動媒体としては、珪砂、アルミナ、スチールショット、ゼオライト等の流動媒体の使用が可能である。この中でもアルミナ、スチールショットは物理的破壊作用が大きく、これらを流動媒体として使用した場合はチャーが粉砕されて細かくなるため集塵装置10でのチャー等の除去回収量が多くなる場合がある。しかし、本発明ではこのような場合であっても、後述するようにチャーをタールと混合することにより粒状物を製造し再ガス化するための被ガス化原料3’として、供給するように構成されているので、チャーの除去回収量を問題にすることがない。つまり、流動媒体の種類は任意に選択することができる。
【0036】
また、流動床9の上方のフリーボード部8にも酸化剤5を吹き込み、未反応の揮発成分をガス化させるように構成されている。反応後の被ガス化原料3及び流動媒体4から成る残渣7は、流動床式ガス化炉2の下方から該ガス化炉外へ排出される。
【0037】
流動床式ガス化炉2において生成した合成ガスG1はガス化炉2の出口6から排出され、チャー等を除去するための除去部である集塵装置10へ送られる。
集塵装置10としては、バグフィルターやサイクロン等が挙げられる。集塵装置10は、ガス化の際に生じた合成ガスG1に含まれる炭化水素化合物であるチャー等を除去する機能を果たしている。そして集塵装置10で除去回収されたチャー等の回収物Csは、後述する粒状物製造部である造粒装置14へ送られる。
【0038】
集塵装置10でチャー等が除去された合成ガスG2は、湿式洗浄装置12に送られる。
【0039】
湿式洗浄装置12は、集塵装置10でチャー等が除去された合成ガスG2中に残存しているタール分を除去し、精製された合成ガスG3を得るためのものである。一般にはクエンチャーが用いられる。クエンチャーは公知のものを使用することが可能であり、クエンチャーの上部より洗浄液を噴霧させ、下部より合成ガスG2を供給し、両者が対向するような状態でクエンチャー内で気液接触させて合成ガスG2中に含まれているタールを洗浄液と共に除去する。タールが除去された合成ガスG2は、精製合成ガスG3となり他の用途に供される。ここで、洗浄液としては、水、カセイソーダ、硫酸等が挙げられるが、コストや取り扱い易さを考慮すると水が好ましい。
なお、クエンチャー内での処理温度は、50〜100℃が好ましい。
【0040】
湿式洗浄装置12で洗浄液と共に合成ガスG2より除去されたタールは、油水分離装置13に送られ凝縮タールCvと凝縮液(洗浄液)とに分離される。そして、凝縮タールCvは、粒状物製造部である造粒装置14へ送られチャー等の回収物Csと混合される。
【0041】
粒状物製造部では造粒装置14により、チャー等の回収物Csと凝縮タールCvを混合して粒状物を製造し再ガス化するための被ガス化原料を製造する。
チャー等の回収物Csは、細かい粉状物となっているため、このまま流動床式ガス化炉2に戻しても、そのほとんどが、再び合成ガスG1の気流に乗って流動床式ガス化炉2で生成された合成ガスG1とともに流動床式ガス化炉2から排出され、再度除去装置11で除去(捕集)され、実際にはほとんど再ガス化されない状況が生じてしまう。
【0042】
そこで、チャー等の回収物Csを凝縮タールCvと混合し、ある程度の重量を有する粒状物とし、再ガス化するためのガス化原料として流動床式ガス化炉2へ供給することで、チャー等の回収物Csが合成ガスG1の気流に乗って流動床式ガス化炉2外へ排出される状況が少なくなり、よって粒状物の流動床式ガス化炉2内での滞留時間が長くなり、チャー等の回収物Csを再ガス化できガス化効率を上げることができる。
【0043】
上記、粒状物の構造としては、細かい粉状物質であるチャー等の回収物Csがバインダーの役目を果たす凝縮タールCvでくっつけられ粒状になったような構造が挙げられる。このような構造により、また粒状物自体が重量もあることから、チャー等の回収物Csは、合成ガスG1の気流に乗ることもなく、じっくりと流動床式ガス化炉2内でガス化される。
【0044】
また、チャー等の回収物Csの周りにはタールがあるためタール自身もガス化されるので、システム全体のガス化効率が向上する。しかし、すべのチャー等の回収物Csが流動床式ガス化炉2内でガス化できるわけではない。つまり、チャーを造粒してチャー等の回収物Csとしてガス化炉に再投入しても、チャーに含まれる灰分が系内に濃縮していくため、チャーの一部は造粒をしないでそのまま系外への排出が必要となる。この系外排出の目安としては、系外排出するチャーに含まれる可燃分量が、被ガス化原料中の可燃分量の5%以下となるようにチャーの排出量を設定するのが好ましい。
【0045】
製造される粒状物の粒径はガス化炉の種類や規模にもよるが、2〜20mm程度であり、好ましくは3〜10mmの範囲が良い。
また、被ガス化原料の種類によって、第2除去部で除去される凝縮タールCvの種類と量は異なるが、前記凝縮タールCvの一例としては炭素数が2〜20程度の直鎖もしくは鎖式炭化水素、または環状あるいは芳香族などの各種炭化水素が挙げられる。具体的な物質名を挙げれば、例えば、フェノールやジメチルフェノールなどのフェノール類、ベンゼン、トルエン、ベンゾディオースなどの単環芳香族、ナフタレン、フェナントレン、アントラセンなどの多環芳香族、アセチル酸、プロピオン酸、酢酸などの有機酸、フラン類、ケトン類である。そして、これらタールを造粒材として用いることができる。なお、タールは多種類の化合物の混合物であるため、前述した物質に限定されないのは言うまでもない。一般にタールと言われるものであれば造粒材として用いることができる。
【0046】
粒状物の製造は、造粒装置14にチャー等の回収物Csに所定量の凝縮タールCvを混ぜて造粒し粒状物とする。この際、所望の粒状物が得られないようであればタール以外の他の造粒材を一緒に混合しても良い。他の造粒材としては、水、油等が挙げられる。なお、造粒材として、油水分離装置13で凝縮タールCvと分離された凝縮液(洗浄液)を使用することも可能であり、この場合は、ガス化システムの系外からわざわざ造粒材を用意してくる必要がないため、ガス化システムのコストダウンを図ることができる。
粒状物製造部で使用する造粒装置14としては、ペレタイザー、アジテータ型混合造粒装置、各種ミキサー、押し出し型ペレット製造装置、パン型回転造粒装置等が挙げられる。
【0047】
ここで、被ガス化原料3をガス化した際のチャー等の回収物Csや凝縮タールCvの発生量について説明する。
流動床式ガス化炉2に供給する被ガス化原料3を100重量%とした場合、被ガス化原料3の種類にもよるが、チャー等の回収物Csの回収量は被ガス化原料に対して約5〜15重量%、凝縮タールCvの回収量は約3〜10重量%程度となる。
よって、チャー等の回収物Csの回収量/凝縮タールCvの回収量の値、すなわち重量比は0.5〜5である。
【0048】
また、チャー等の回収物Csおよび凝縮タールCv(製造された粒状物)が再ガス化される際に、これら粒状物と一緒に被ガス化原料3を流動床式ガス化炉2に供給するが、供給された被ガス化原料3を100重量%とした場合、チャー等の回収物Csの回収量は被ガス化原料3に対して約6〜30重量%、凝縮タールCvの回収量は約3〜10重量%程度となる。よって、チャー等の回収物Csの回収量/凝縮タールCvの回収量の値、すなわち重量比は0.6〜10となる。
【0049】
本発明者らが検討した結果、前述した重量比の範囲内、すなわち、チャー等の回収物Csの回収量/凝縮タールCvの回収量の値が、0.5〜10の値であれば、チャー等の回収物Csの回収量に対して10〜30重量%の凝縮タールCvを添加し混合することにより、チャー等の回収物Csが造粒され粒状物になることが確認された。
【0050】
以上から、チャー等の回収物Csの回収量/凝縮タールCvの回収量の値が、0.5〜10の値であれば、チャー等の回収物Csも凝縮タールCvも粒状物を製造できるだけの量があるため、チャー等の回収物Csの回収量に対して10〜30重量%の凝縮タールCvを添加し混合することにより、チャー等の回収物Csは粒状物になる。
【0051】
また、粒状物の形状をしっかり保ちたいのであれば、油液分離装置13でタールと分離された洗浄物質をタールに加えることでその洗浄物質がバインダーの機能を果たし、形状が崩れないしっかりとした粒状物である再ガス化するためのガス化原料3’を製造させることも出来る。
そして製造された粒状物である再ガス化するためのガス化原料3’はベルトコンベア等の公知の搬送手段であるライン1によって流動床式ガス化炉2へ供給される。
【0052】
なお、チャー等の回収物Csの回収量/凝縮タールCvの回収量の値が、0.5未満であれば、粒状物の状態を維持できるだけのチャー等の回収物Csの量がないため、凝縮タールCvをチャー等の回収物Csと混合するとスラリー状混合物となってしまう。
しかし、このように、形状がスラリー状になってもポンプ等の輸送装置を使用して、流動床式ガス化炉2にスラリー状混合物である再ガス化するための被ガス化原料3’’を供給することは可能である。この態様については、本発明に係るガス化システムの第3の実施形態で説明する。
【0053】
[第2の実施形態]
図2には、本発明の第2の実施形態が示されている。
なお、第1の実施形態と同一の構成部分については同一の符号を付してその説明は省略する。
本形態では、分離部13によって洗浄物質と分離された凝縮タールを粒状物製造部で使用した際、使用されなかった残りのタールをライン2を通じて流動床式ガス化炉に供給するようした構成である。
【0054】
本態様では、分離部13によって洗浄物質と分離された凝縮タールを、粒状製造部に供給して所望の粒状物が製造できた場合に、粒状物を製造するのに使用しなかった残りのタールをガス化炉2に供給することで、効率よく凝縮タールタールを利用するとともに、ガス化効率を向上させることが可能となる。
なお、ライン2は、ベルトコンベア等の公知の搬送手段であれば良く特に限定されるものではない。
【0055】
[第3の実施形態]
図3には、本発明の第3の実施形態が示されている。
なお、第1の実施形態と同一の構成部分については同一の符号を付してその説明は省略する。
本態様は、第1の態様の粒状物製造部に代えてスラリー状混合物製造部を設けた態様である。
【0056】
前述したように、チャー等の回収物Csの回収量/凝縮タールCvの回収量の値が、0.5未満であれば、チャー等の回収物と凝縮タールの混合物はスラリー状の混合物となる。そこで、凝縮タールをスラリー形成材として用いてチャー等の回収物と混合してスラリー状混合物を製造することで、スラリー状混合物を再ガス化するための被ガス化原料3’’として流動床式ガス化炉2に供給するようにした態様である。
なお、スラリー状混合物製造部で使用する混合装置14’としては、タンクミキサー等が挙げられる。なお、本発明で「スラリー」とは、液体中に固体物質(チャー等)が混ざっている混合物で、粘性のある流動物をいう。
【0057】
よって、スラリー状混合物はある程度の粘性があることから本態様では、ライン1’にポンプを用いて流動床式ガス化炉2にスラリー状混合物を供給することとしている。なお、供給手段についてはポンプに限定されるものでなく、公知の供給手を段用いることができる。
また、粘性が低く流動性がかなり大きい場合は、スラリー状混合物3と被ガス化原料3を混合し混合物として上で、流動床式ガス化炉2に供給するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
上述したように、本発明によれば、チャー等の回収物Csと凝縮タールCvとを混合し、混合物被ガス化原料としてガス化炉に供給し、再ガス化することでガス化効率を向上させ、さらに、チャー等の回収物Csの系外排出量も減少させることが可能となる。
【符号の説明】
【0059】
1 ガス化システム、 2 ガス化炉、 3 被ガス化原料、
3’ 粒状物被ガス化原料、 3’’ スラリー状混合物被ガス化原料、
4 流動媒体、 5 酸化剤、 6 出口、 7 残渣、 8フリーボード、
9 流動床、 10集塵装置(第1除去部)、 11 除去部、 12 洗浄部、
13 分離部、 14 造粒装置(粒状物製造部)、
14’ 混合装置(スラリー状混合物製造部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被ガス化原料をガス化するガス化炉と、
前記ガス化炉によって生成されたガス中の固体炭素化合物を除去する第1除去部と、
前記第1除去部で除去された固体炭素化合物と造粒材とを混ぜて粒状物を製造する粒状物製造部と、を備え、
前記粒状物製造部によって製造された粒状物を前記ガス化炉に移してガス化するように構成されていることを特徴とする被ガス化原料ガス化システム。
【請求項2】
被ガス化原料をガス化するガス化炉と、
前記ガス化炉によって生成されたガス中の固体炭素化合物を除去する第1除去部と、
前記第1除去部で除去された固体炭素化合物とスラリー形成材とを混ぜてスラリー状混合物を製造するスラリー状混合物製造部と、を備え、
前記スラリー状混合物製造部によって製造されたスラリー状混合物を前記ガス化炉に移してガス化するように構成されていることを特徴とする被ガス化原料ガス化システム。
【請求項3】
請求項1に記載された被ガス化原料ガス化システムにおいて、
前記第1除去部を通過したガス中からタールを除去する第2除去部を備え、
前記造粒材は前記第2除去部で除去されたタールであることを特徴とする被ガス化原料ガス化システム。
【請求項4】
請求項3に記載された被ガス化原料ガス化システムにおいて、
前記第2除去部で除去されたタールの量が所望の粒状物を作るのに必要な量より少ないときは、別の造粒材を加えるように構成されていることを特徴とする被ガス化原料ガス化システム。
【請求項5】
請求項4に記載された被ガス化原料ガス化システムにおいて、
第2除去部は前記第1除去部によって固体炭素化合物が除去されたガス中からタールを洗浄物質によって洗浄物質とともに除去する洗浄部と、前記洗浄物質とともに除去されたタールを前記洗浄物質から分離する分離部と、を備え、
前記タールの量が所望の粒状物を作るのに必要な量より少ないときは、前記別の造粒材として分離部でタールと分離した洗浄物質を利用するように構成されていることを特徴とする被ガス化原料ガス化システム。
【請求項6】
請求項3に記載された被ガス化原料ガス化システムにおいて、
前記第2除去部で除去されたタールの量が所望の粒状物を作るのに必要な量より多いときは、前記第2除去部で除去されたタールの一部を前記ガス化炉に移すように構成されていることを特徴とする被ガス化原料ガス化システム。
【請求項7】
請求項2に記載された被ガス化原料ガス化システムにおいて、
前記第1除去部を通過したガス中からタールを除去する第2除去部を備え、
前記スラリー形成材は前記第2除去部で除去されたタールであることを特徴とする被ガス化原料ガス化システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−213812(P2011−213812A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81814(P2010−81814)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)