説明

被介護者用ロボット装置

【課題】高齢者等及び被介護者等の心に育幼の感覚を促すことで、高齢者等及び被介護者等の精神的機能の減衰を抑制し、高齢者等及び被介護者等が存在価値や生きがいを発見することを支援することができる被介護者用ロボット装置を提供する。
【解決手段】外部刺激検出手段と、内部状態検出手段と、感情を含む自身の状態を判定する状態判定手段と、判定した状態を表現する状態表現手段と、を備えて乳児を模擬した被介護者用ロボット装置1であって、状態判定手段は外部刺激検出手段にて検出した外部状態と内部状態検出手段にて検出した自身の内部状態とに基づいて自身が備えられている被介護者用ロボット装置が、機嫌の良い状態を表す通常状態と機嫌の悪い状態を表す欲求状態と寝入っていることを表す睡眠状態との少なくとも3つの状態のいずれの状態であるかを判定し、判定した状態に応じて状態表現手段を動作させて被介護者用ロボット装置1の状態を表現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被介護者用ロボット装置に関し、特に乳児を模擬した被介護者用ロボット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では国内人口の高齢化が進み、例えば総人口に対する65歳以上の人口が占める割合である高齢化率が年々上昇する傾向にあり、2010年12月時点では既に20%を超えている。
高齢者は身体的機能が減衰していくことはもちろんのこと、精神的機能も減衰していく場合があり、身体的な介護を必要とするとともに、精神的な介護を必要とする場合も少なくない。
特に「人」として生きていくためには、自身の存在価値を発見し、自身の生きがいを持ち、精神的機能の減衰を抑制することが重要である。しかし、高齢者は身体的機能が減衰しているので、自由に動きまわることが困難であり行動範囲や交友範囲が限られるため、自身の存在価値や生きがいを発見することは非常に困難である。
【0003】
近年では、存在価値や生きがいの発見までは掲げていないが、老若男女を問わず、「いやし」や「やすらぎ」等を提供する種々のロボットの開発が進められている。
例えば特許文献1に記載された従来技術には、動物型のロボット装置で、順次供給される入力情報の履歴に応じた現在の動作、及び次に供給される入力情報に基づいて、現在の動作に続く次の動作を決定することにより、自身の感情や本能等の状態に基づいて自律的に行動する、ロボット装置及び動作制御方法が開示されている。このロボット装置でペットを模擬して「いやし」を提供している。
また特許文献2に記載された従来技術には、動物型のロボット装置で、何に対しても興味を持つ好奇心による無邪気な行動を実現し、見ている人の「なごみ」や「やすらぎ」を創出するロボット装置に相当する自動応答機器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−149276号公報
【特許文献2】特開2002−018147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2に記載された従来技術では、実際の動物を模擬して、実際の動物により近い動作・行動をするロボットを提供し、見ている人、関わる人に「いやし」や「やすらぎ」等を提供できると思われる。しかし、ロボット自身が自律的に行動するので、ロボットが補助や介護等を要求する訳ではなく、特に高齢者等が手を出さなくても見ているだけでよく、高齢者等がロボットを見ているだけでは、存在価値や生きがいを発見することは非常に困難であると思われる。
高齢者自身が、そのロボットに手を差し伸べ、高齢者が擬似的に介護をし、高齢者自身がそのロボットの役に立っていると感じることが、高齢者自身が自分の存在価値や生きがいを発見するために重要である。このことは、高齢者であり且つ介護を必要としている者に限らず、高齢者ではないが介護される者である被介護者にとっても同様に重要である。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、高齢者等及び被介護者等の心に育幼の感覚を促すことで、高齢者等及び被介護者等の精神的機能の減衰を抑制し、高齢者等及び被介護者等が存在価値や生きがいを発見することを支援することができる被介護者用ロボット装置を提供することを課題とする。
なお以降では、「被介護者等」と記載することで、高齢者の中でも介護を必要としている高齢者、及び高齢者ではないが介護される者を表す。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る被介護者用ロボット装置は次の手段をとる。
まず、本発明の第1の発明は、外部からの刺激を検出する外部刺激検出手段と、自身の内部状態を検出する内部状態検出手段と、感情を含む自身の状態を判定する状態判定手段と、判定した状態を表現可能な出力手段である状態表現手段と、を備えて乳児を模擬した被介護者用ロボット装置である。
そして前記状態判定手段は、前記外部刺激検出手段にて検出した外部からの刺激である外部状態と、前記内部状態検出手段にて検出した自身の内部状態と、に基づいて、自身が備えられている被介護者用ロボット装置が、機嫌の良い状態を表す通常状態と、前記通常状態よりも機嫌の悪い状態を表す欲求状態と、寝入っていることを表す睡眠状態と、の少なくとも3つの状態のいずれの状態であるかを判定し、判定した状態に応じて前記状態表現手段を動作させて前記被介護者用ロボット装置の状態を表現する。
【0007】
この第1の発明によれば、より現実味のある乳児を模擬することが可能であり、特に「睡眠状態」にさせるためには、できるだけ被介護者用ロボット装置に優しく接し、安心感を与える必要がある。従って、被介護者が「世話をしている」という意識を持ち、存在価値や生きがいを発見する支援をすることができる。
【0008】
次に、本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係る被介護者用ロボット装置であって、前記状態表現手段には、音声出力手段が含まれており、前記状態判定手段は、前記睡眠状態と判定した場合、浅い呼吸音と深い呼吸音を周期的あるいはランダムに繰り返し、それぞれの呼吸音に応じた寝息を前記音声出力手段から出力する。
【0009】
この第2の発明によれば、被介護者用ロボット装置が「睡眠状態」であることをより明確に表現することに加えて、より安心して寝入っていることを表現できるので、被介護者に、自身の世話のおかげで安心して寝入っていると表現できる。
これにより、世話をしてくれる被介護者が、存在価値や生きがいを発見する支援をすることができる。
【0010】
次に、本発明の第3の発明は、上記第1の発明または第2の発明に係る被介護者用ロボット装置であって、前記内部状態検出手段には、時刻検出手段が含まれており、前記状態判定手段は、前記時刻検出手段を用いて夜中であることを検出すると、前記被介護者用ロボット装置の状態を強制的に前記睡眠状態とする。
【0011】
この第3の発明によれば、乳児をより現実的に模擬すると、夜中に泣くのが普通であるが、夜中では強制的に睡眠状態とする。
これにより、世話をしてくれる被介護者のストレスを低減し、長期に渡って世話を継続することを支援することができる。
【0012】
次に、本発明の第4の発明は、外部からの刺激を検出する外部刺激検出手段と、自身の内部状態を検出する内部状態検出手段と、感情を含む自身の状態を判定する状態判定手段と、判定した状態を表現可能な出力手段である状態表現手段と、を備えて乳児を模擬した被介護者用ロボット装置である。
前記被介護者用ロボット装置には、脱臼・整復可能な関節を備えて可動する腕部が設けられており、前記関節は、許容量以上の力が加えられると外れて脱臼状態となるように構成されているとともに元通りに整復することが可能となるように構成されており、前記内部状態検出手段には、前記関節の脱臼・整復状態を検出する関節状態検出手段が含まれている。
そして前記状態判定手段は、自身が備えられている被介護者用ロボット装置が、機嫌の良い状態を表す通常状態と、前記通常状態よりも機嫌の悪い状態を表す欲求状態と、の少なくとも2つの状態のいずれの状態であるかを判定し、判定した状態に応じて前記状態表現手段を動作させて前記被介護者用ロボット装置の状態を表現し、前記関節状態検出手段にて前記関節が脱臼状態であることを検出すると、前記欲求状態であると判定して前記通常状態よりも機嫌の悪い状態を前記状態表現手段を用いて表現する。
【0013】
この第4の発明によれば、被介護者用ロボット装置は、関節が脱臼状態である場合は例えば泣いて元通りに整復してくれるように要求し、関節が元通りに整復されると、機嫌が良くなる表現を行う。
このように、世話をしてくれる被介護者等に、より具体的な世話を積極的に要求する。この場合、例えば腕関節が脱臼して痛いことを音声で出力したりして脱臼状態となった関節を元通りに整復することを要求する。
これにより、被介護者等が、どのような世話をすればよいか、的確な世話を行える支援をすることができる。
なお、要求した世話が行われた場合には、満足する表現を行うことが好ましい。この場合、脱臼状態となった関節が元通りに整復された場合には、例えば喜びや笑顔等を表現して満足する表現を行うことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の被介護者用ロボット装置1の一実施の形態を説明する外観図である。
【図2】被介護者用ロボット装置1の各部を説明する図であり、(A)は頭部の顔側の斜視図を、(B)は頭部の側面図を、(C)は胴体部の腹側の斜視図を、(D)は胴体部の背中側の斜視図を、(E)は右腕の斜視図を示している。
【図3】被介護者用ロボット装置1の頭部10の内部構造の例を説明する図であり、(A)は顔部分を裏側から見た図であり、(B)は表皮を省略した顔部分を表側から見た図である。
【図4】被介護者用ロボット装置1の頭部10と胴体部20を接続する首に相当する部分の内部構造の例を説明する図である。
【図5】被介護者用ロボット装置1の腕部30における関節の構造の例を説明する図である。
【図6】被介護者用ロボット装置1の入出力のブロック図である。
【図7】被介護者用ロボット装置1のソフトウェアにおける状態遷移を説明する図である。
【図8】図7の各状態における処理の流れを説明する概略フローチャートである。
【図9】図8の概略フローチャートにおいて各状態のモード判定処理の概念を説明するフローチャートである。
【図10】通常状態におけるモード判定処理の詳細を説明するフローチャートである。
【図11】欲求状態におけるモード判定処理の詳細を説明するフローチャートである。
【図12】睡眠状態におけるモード判定処理の詳細を説明するフローチャートである。
【図13】各状態のモード判定処理の判定方法を補足する図である。
【図14】(A)はモード判定処理にて使用する、遊んでもらえているか否かを示す遊び状態、及び疲労度合を求める際の喜び状態を判定する例の手順を、(B)はモード判定処理にて使用する疲労度合を算出する例の手順を、説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の被介護者用ロボット装置1の一実施の形態の概略外観図を示している。
【0016】
●[被介護者用ロボット装置1の外観と入出力構成(図1〜図6)]
図1に示すように、本実施の形態における被介護者用ロボット装置1は、頭部10と胴体部20とを有し、乳児用の衣類に近似した衣類で包み、乳児を模擬した外観、形状、大きさ、重量等を有している。
そして、被介護者用ロボット装置1に乳児のような振る舞いをさせることで、被介護者用ロボット装置1の世話をしてくれる被介護者等の心に育幼の感覚を促し、ロボット介護者が存在価値や生きがいを発見する支援をする。以降、被介護者用ロボット装置1の世話をしてくれる人、あるいはあやしてくれる人を「ロボット介護者」と記載する。
なお、普段の生活において介護人の援助を必要とする「被介護者」は、本実施の形態にて説明する被介護者用ロボット装置1に対しては「介護者」となる。
【0017】
図1は被介護者用ロボット装置1の外観を示し、図2(A)及び(B)は被介護者用ロボット装置1の頭部10の外観を示し、図2(C)及び(D)は被介護者用ロボット装置1の胴体部20の外観を示し、図2(E)は被介護者用ロボット装置1の腕部30の外観を示しており、右腕の例を示している。
また、図3(A)及び(B)は頭部10における顔に相当する部分の内部構造の例を示し、図4は頭部10と胴体部20を接続している首に相当する部分の内部構造の例を示し、図5は腕部30の外観と脱臼・整復可能な関節の構造の例を示している。
また図6は被介護者用ロボット装置1の入出力を示すブロック図である。制御ユニットCUはCPU等の演算手段C10と、制御プログラムが格納された記憶手段M10や、泣き声や笑い声や寝息等のデータが格納された記憶手段M20等を備えている。そして図6に示すように、制御ユニットCUは、図6中に符号Sxxで示す各種の検出手段からの検出信号を取り込み、図6中に符号Axxで示す各種のアクチュエータに駆動信号を出力する。また制御ユニットCUは、パーソナルコンピュータPC等の他の機器と通信回線等にて接続可能であり、パーソナルコンピュータPCから制御プログラムを書き換えたり、動作チェックを行ったりすることができる。
なお、記憶手段としてFlashメモリを搭載し、電源BTが切れる前や電源BTの交換前の状態をFlashメモリに記憶すれば、電源BTの充電後あるいは交換後、充電前または交換前の状態に応じた動作を再開することができるので、より好ましい。
なお、電源BTを、例えば擬似オムツと一体的に構成し、電源BTのバッテリ残量が低下した場合に欲求状態に遷移して、泣き声等をスピーカA22から出力したり、まぶた駆動モータA11を動作させるとともに涙LED(A12)を点灯あるいは点滅させて泣き顔を表現したりして、予め充電した電源BTが取付けられている擬似オムツとの交換を要求するようにしても良い。
あるいは、電源BTのバッテリ残量が低下した場合に欲求状態に遷移して上記のように泣き声の出力や泣き顔を表現し、家庭用電源から電源BTを充電するための充電用ケーブルの接続を要求するようにしても良い。図示省略するが、被介護者用ロボット装置1に充電制御回路を搭載し、充電用ケーブルが接続されると、充電制御回路から電源BTを充電させながら被介護者用ロボット装置1の制御ユニットCUや各アクチュエータに電力を供給させることができる。また充電用ケーブルが抜かれると、充電制御回路から電源BTへの充電を停止させ、電源BTから被介護者用ロボット装置1の制御ユニットCUや各アクチュエータに電力を供給させるように動作させることができる。
【0018】
次に、図1、図2(A)及び(B)、図3(A)及び(B)、図4、図6を用いて、頭部10に設けられている入力検出手段と出力手段のそれぞれについて説明する。
頭部10の額部と頭頂部に相当する位置には、光の明暗を検出する光検出手段である光センサS11、S14が設けられている。
また頭部10の左右の耳に相当する位置には、赤外線の量の変化を検出することでロボット介護者を検出する赤外線検出手段である焦電センサS12が設けられている。
また頭部10の後頭部に相当する位置には、当該位置に他の物体が接触しているか否かを検出する接触検出手段であるタッチセンサS13が設けられている。
【0019】
図3(A)は顔部分の裏側から見た図であり、図3(B)は表皮を省略した顔部分の表側から見た図である。顔部分の表面にはシリコン樹脂等で形成された表皮が被されている。
また頭部10の左右の眼に相当する位置には、まぶたを開閉する眼球11が設けられている。そして図3(A)及び(B)に示すように、眼球11はシャフト11Aの両端に接続されており、まぶた駆動モータA11にて眼球11が回転軸X11回りに回転駆動されてまぶたが開閉する。
また頭部10の左右の眼球11の下に相当する位置には、涙を表す涙LED(A12)が設けられている。
また頭部10の左右の頬に相当する位置には、赤くなった頬を表す頬LED(A14)が設けられている。
また頭部10の口に相当する位置の唇15の裏側には、唇15を駆動して唇15を開閉する唇駆動モータA15が設けられている。また、唇及び唇の周囲を含む表皮はシリコン樹脂等で形成されて滑らかに唇が開閉するように構成されている。
図3(A)及び(B)に示すように、唇駆動モータA15はカム15Cを回転駆動するように取付けられており、カム15Cの回転軸X15Aから偏心した位置には偏心軸部材15Sが設けられている。そして偏心軸部材15Sは唇駆動部材15Bに設けられたスリットに挿通されている。この構成により、唇駆動モータA15がカム15Cを回転駆動すると、唇駆動部材15Bが回転軸X15回りに揺動し、唇15はゆっくり、且つ滑らかに動作する。
また頭部10における首との接続個所に相当する位置には、首に対して頭部10を前後に揺動する頭部揺動モータA16が設けられている。また図4に示すように、頭部10は、胴体部20に設けられて頭部10を左右に旋回させる首旋回モータA21に接続されたシャフト21Aに対して、回転軸X16回りに揺動可能となるように接続部材16Bにてシャフト21Aに接続されている。また図4に示すように、頭部揺動モータA16は、揺動カム16Cを回転駆動し、揺動カム16Cの偏心した位置には偏心軸部材16Sが設けられている。そして偏心軸部材16Sは、シャフト21Aの先端に形成されたスリット21Sに嵌め込まれている。この構成により、頭部揺動モータA16が揺動カム16を回転駆動すると、シャフト21Aに対して頭部10が回転軸X16回りに揺動する。
【0020】
次に、図1、図2(C)及び(D)、図4、図6を用いて、胴体部20に設けられている入力検出手段と出力手段のそれぞれについて説明する。
胴体部20の胸に相当する位置の上方には、被介護者用ロボット装置1の正面にいるロボット介護者の存在を画像で検出する撮像手段であるカメラS21が設けられている。
また胴体部20のカメラS21に近接する位置には、ロボット介護者の存在及び言葉を検出する音声検出手段であるマイクS22が設けられている。
また胴体部20の腹部に相当する位置、背中に相当する位置のそれぞれには、各位置に他の物体が接触しているか否かを検出する接触検出手段であるタッチセンサS23、S24が設けられている。なお、タッチセンサの取り付け位置は、これらの位置に限定されず、適宜、適切な位置に取り付けられる。
また胴体部20の内部には、被介護者用ロボット装置1を揺り動かしてあやしてくれていることを検出する加速度検出手段である加速度センサS25や、内部の温度を検出する温度検出手段である温度センサS26が設けられている。
また胴体部20には、被介護者用ロボット装置1のバッテリであって充電、着脱等が可能な電源BTが取付けられており、電源BTのバッテリ残量を検出する電源検出手段であるバッテリセンサSBTが設けられている。
また図示省略するが、充電用ケーブルを接続して電源BTを充電中であるか否かを検出可能な充電検出センサも設けられている。
【0021】
また胴体部20における首との接続個所に相当する位置には、首を左右に旋回させる首旋回モータA21が設けられている。図4を用いて上述したように、首旋回モータA21はシャフト21Aを旋回させて頭部10を左右に旋回させる。なお被介護者用ロボット装置1では、まだ首が充分にすわっていない幼児の状態を模擬しており、例えばロボット介護者が後頭部を支えなければ頭部10が垂れ下がるように、制御ユニットCUは首旋回モータA21及び頭部揺動モータA16を駆動する。
また胴体部20の胸に相当する位置には、被介護者用ロボット装置1の感情等に基づいた音声を出力する音声出力手段であるスピーカA22が設けられている。
また胴体部20には、各入力検出手段からの検出信号に基づいて被介護者用ロボット装置1の感情を含む自身の状態を判定するとともに各出力手段を駆動して判定した状態を表現する状態判定手段である制御ユニットCUが収容されている。
【0022】
次に、図1、図2(E)、図5、図6を用いて、胴体部20に設けられている腕部30の入力検出手段と出力手段のそれぞれについて説明する。なお図2(E)、図5に示す腕部30は右腕を表しているが、左腕も同様である。
腕部30は、肩から肘に相当する上腕部31Bと、肘から先を軸X31回りに旋回させる肘回転部31と、肘から手首に相当する前腕部32と、手首から手先に相当する手部33と、で構成されている。
上腕部31Bは胴体部20に取り付けられ、上腕部31Bには肘回転部31が接続され、肘回転部31には前腕部32が接続され、前腕部32には手部33が接続されている。
【0023】
上腕部31Bには、上腕部31Bに対して肘回転部31を軸X31回りに旋回させる旋回モータA31が設けられている。
前腕部32には、肘回転部31に対して前腕部32を軸Y32回りに旋回させる旋回モータA32が設けられている。
手部33には、前腕部32に対して手部33を軸Y33回りに旋回させる旋回モータA33が設けられている。また手部33における掌に相当する位置にはタッチセンサS33が設けられており、ロボット介護者が手部33に触れているか否かを検出することができる。
【0024】
なお図5に示すように、例えば前腕部32を軸Y32回りに旋回させる関節部には、特開2007−301704にて開示されているような、所定量以上の負荷がかかると接続が解除されて脱臼状態となるラッチ機構が設けられている。なお本願では、この脱臼・整復可能なラッチ機構にて駆動機構の破損を防止するだけでなく、後述するように、接続が解除されて脱臼状態となった場合、ロボット介護者に元通りに整復するように催促するような振る舞いをさせる。例えば、後述する欲求状態に遷移して、悲しみや痛み等を表現し、関節を元通りに整復することを要求する。また、元通りに整復された場合は、例えば後述する通常状態に遷移して喜び等を表現する。そして脱臼状態と整復状態を検出可能とするため、対象とする関節部には、ラッチ機構である関節部の脱臼状態及び整復状態を検出可能な関節センサS32が設けられている。なお関節センサS32は「関節状態検出手段」に相当する。
例えばラッチ機構は、図5の拡大図に示すように、旋回モータA32の回転軸に接続されて係合部材32Kを係合可能な凹部32Gが形成された被係合部材32Hと、旋回モータA32の方向に往復移動が可能に構成された係合部材32Kと、係合部材32Kを旋回モータA32の側に所定の付勢力で付勢する板ばね32D等にて構成されている。
そして関節センサS32は、例えば被係合部材32Hにおける肘回転部31に対向する位置と、肘回転部31における被係合部材32Hに対向する位置と、のそれぞれに取り付けられた導電性の端子で構成されている。腕関節が脱臼していない整復状態であるラッチ接続状態ではそれぞれの端子が接触して導通状態となり、腕関節が外れた脱臼状態であるラッチ外れ状態ではそれぞれの端子が離間して絶縁状態となることで、制御ユニットCUは、腕関節が外れているか否かを判定することができる。
なお、関節センサS32は、上記の構成以外にも、例えば弾性体に歪センサを取り付け、弾性体の変形量やトルク等を検出して関節が外れているか否かを検出するようにしても良い。
また上記の説明では、前腕部32を軸Y32回りに旋回させる関節部にラッチ機構と関節センサS32を設けた例を説明したが、ラッチ機構と関節センサS32とを一部の関節部に設けて当該関節部の脱臼時の欲求状態の表現及び整復時の通常状態の表現を行うようにしても良い。また、ラッチ機構と関節センサS32とを全ての関節部に設けて全ての関節部に対して脱臼時の欲求状態の表現及び整復時の通常状態の表現を行うようにしても良い。
【0025】
また図6に示すように、制御ユニットCUは、現在の時刻を検出可能な時刻検出手段であるタイマSTを有している。
上記に説明した、光センサS11、S14、焦電センサS12、タッチセンサS13、S23、S24、S33、カメラS21、マイクS22、加速度センサS25は、被介護者用ロボット装置1の外部からの刺激を検出する外部刺激検出手段に相当する。なお、外部刺激検出手段は、図6中では符号Ggで表されている。
また温度センサS26、バッテリセンサSBT、関節センサS32、タイマSTは、被介護者用ロボット装置1の自身の内部状態を検出する内部状態検出手段に相当する。なお、内部状態検出手段は、図6中では符号Gnで表されている。
また、まぶた駆動モータA11等の各種モータ、涙LED(A12)等の各種LED、スピーカA22は、被介護者用ロボット装置1の状態を表現可能な出力手段である状態表現手段に相当する。なお、状態表現手段は、図6中では符号Gjで表されている。
以上に説明したように、被介護者用ロボット装置1には制御ユニットCUが収容されており、制御ユニットCUは、外部刺激検出手段にて検出した外部状態と、内部状態検出手段にて検出した自身の内部状態と、に基づいて、被介護者用ロボット装置1が機嫌の良い状態を表す通常状態と、通常状態よりも機嫌の悪い状態を表す欲求状態と、寝入っていることを表す睡眠状態と、の少なくとも3つの状態のいずれの状態であるかを判定する。そして制御ユニットCUは、判定した状態に応じて状態表現手段を動作させて、被介護者用ロボット装置1の感情等を含む状態を表現し、被介護者用ロボット装置1を乳児のごとく振る舞わせる。
以下、制御ユニットCUにて、被介護者用ロボット装置1の状態を決定するソフトウェアの処理について説明する。
【0026】
●[ソフトウェアによる各状態への遷移と各状態の処理の概略(図7、図8)]
まず図7の状態遷移図を用いて、制御ユニットCUにおけるソフトウェアによる状態遷移について説明する。制御ユニットCUは、被介護者用ロボット装置1の状態を、動作休止状態M0または睡眠状態M1または欲求状態M2または通常状態M3の4つの状態のいずれかの状態とする。
動作休止状態M0は、バッテリ残量の不足により、動作を一時的に停止させた状態である。
睡眠状態M1は、乳児の睡眠状態を模擬した状態である。
欲求状態M2は、乳児が起きていて感情が比較的不安定な状態であって主に泣いている状態等を表現した状態である。
通常状態M3は、乳児が起きていて感情が比較的安定した状態であって平静な状態や喜んでいる状態等を表現した状態である。
【0027】
図7に示すように、動作休止状態M0では、動作休止状態M0の継続、または充電や電源BTの交換によりバッテリ残量の不足が解消されると動作休止状態M0から睡眠状態M1や欲求状態M2や通常状態M3への遷移が可能である。
また睡眠状態M1では、睡眠状態M1の継続、または動作休止状態M0や欲求状態M2や通常状態M3への遷移が可能である。
また欲求状態M2では、欲求状態M2の継続、または動作休止状態M0や睡眠状態M1や通常状態M3への遷移が可能である。
また通常状態M3では、通常状態M3の継続、または動作休止状態M0や睡眠状態M1や欲求状態M2への遷移が可能である。
【0028】
動物を模擬した従来のロボット装置では、実際の動物の動作を模擬し、ロボット装置の振る舞いを被介護者等が見たり被介護者等が世話をしたりすることで被介護者等が「いやし」を感じるものであった。
本願の被介護者用ロボット装置1は、ロボット介護者が乳児を模擬した振る舞いを見たり、ロボット介護者が世話をしたりすることに加えて、ロボット介護者の適切な世話に応じて睡眠状態に遷移して、安心して寝入る状態を表現し、ロボット介護者の心に、より大きな育幼の感覚を促し、存在価値や生きがいを発見することを支援する。
【0029】
次に図8(A)〜(C)を用いて、通常状態M3、欲求状態M2、睡眠状態M1の各状態の処理手順の概略を説明する。
通常状態M3では図8(A)に示すように、ステップS10Aの人物検知処理、ステップS10Bの音声認識処理、ステップS10Cの感情起動処理、ステップS10Dの感情表出処理、ステップS10Eのモード判定処理、ステップS10Fのモード変更処理、の順に処理が行われる。
また欲求状態M2では図8(B)に示すように、ステップS20Aの人物検知処理、ステップS20Cの感情起動処理、ステップS20Dの感情表出処理、ステップS20Eのモード判定処理、ステップS20Fのモード変更処理、の順に処理が行われる。
また睡眠状態M1では図8(C)に示すように、ステップS30Gの睡眠処理、ステップS30Hの覚醒判定処理、ステップS30Eのモード判定処理、ステップS30Fのモード変更処理、の順に処理が行われる。
【0030】
人物検出処理では、焦電センサS12やカメラS21等からの検出信号に基づいて、被介護者用ロボット装置1の周囲にロボット介護者が存在しているか否かが判定される。
音声認識処理では、マイクS22等の検出信号に基づいて、ロボット介護者からの音声の有無や音声内容が認識される。
感情起動処理では、図6に示す各種の入力検出手段からの検出信号や後述するパラメータ情報等に基づいて感情が起動される。
感情表出処理では、起動された感情が、頭部10に設けられた各種のアクチュエータ(A11〜A15)やスピーカA22を用いて表現される。
モード判定処理では、図6に示す各種の入力検出手段からの検出信号や後述するパラメータ情報等に基づいて、現在の被介護者用ロボット装置1の状態が、動作休止状態M0、睡眠状態M1、欲求状態M2、通常状態M3の、どの状態であるかを判定する。
モード変更処理では、判定した状態に応じて、動作休止状態M0、睡眠状態M1、欲求状態M2、通常状態M3の、いずれかの状態へと処理を遷移させる。
睡眠処理では、まぶた駆動モータA11、唇駆動モータA15、スピーカA22等を制御して、寝息をたてて寝入っている状態を表現する。寝息をたてて寝る睡眠状態を設定することにより、被介護者用ロボット装置1を使用していない状況でも、その存在を強く印象づけることが可能であり、共生感をもたらし、ロボット介護者に強い愛着心を与えることができる。
覚醒判定処理では、図6に示す各種の入力検出手段からの検出信号に基づいて、「起こされたか否か」を判定する。
【0031】
なお「睡眠処理」において、制御ユニットCUは、浅い呼吸を表現する第1睡眠時呼吸と、第1睡眠時呼吸よりも深い呼吸を表現する第2睡眠時呼吸と、を周期的あるいはランダムに繰り返す。そして制御ユニットCUは、第1睡眠時呼吸の期間では、記憶手段M20に記憶されている種々の呼吸音の中から、浅い睡眠時呼吸音を抽出して音声出力手段に相当するスピーカA22から浅い睡眠時呼吸音を出力する。また制御ユニットCUは、第2睡眠時呼吸の期間では、記憶手段M20に記憶されている種々の呼吸音の中から、深い睡眠時呼吸音を抽出してスピーカA22から深い睡眠時呼吸音を出力する。なお、浅い呼吸音とは、1回の呼吸量が「深い呼吸音の呼吸量」よりも少ない場合の音であり、深い呼吸音とは、1回の呼吸量が「浅い呼吸音の呼吸量」よりも多い場合の音である。また、記憶手段M20に記憶されている種々の呼吸音には、呼吸の深さの違いの他にも、呼吸の継続時間の長さの違いや、呼吸音の音量の違い等、種々の呼吸音が用意されている。
このように、睡眠状態を表現すること、及び睡眠状態において適切な呼吸音を出力して寝息をたてている状態を表現することで、より乳児に近い振る舞いをさせることができるとともに、ロボット介護者に睡眠時の呼吸音を聴かせて、世話をしてあげた達成感から育幼の感覚を得ることを支援することができる。
幼児を寝かしつけることは比較的大変であるとともに立派な育幼であり、ロボット介護者に育幼の感覚が生起することを充分期待できる。
以降では、モード判定処理の概略から詳細を順に説明する。
【0032】
●[各状態でのモード判定処理の概略(図9)]
図8のステップS10E、S20E、S30Eの各モード判定処理は、どれも図9に示す概略フローの流れに従っている。なお、各モード判定処理は、所定タイミング毎(例えば数十[ms]〜数百[ms]毎)に制御ユニットCUにて実行される。なお、各状態における詳細フローチャート(ステップS100、S200、S300の内容の詳細)については図10〜図14を用いて後述する。図9では、まずモード判定処理の概略を説明する。
制御ユニットCUは、通常状態M3、欲求状態M2、睡眠状態M1、のいずれの状態であっても、モード判定処理では、図9の概略フローチャートに示すように、まずステップS100にて休止条件が成立するか否かを判定する。そして休止条件が成立する場合(Yes)はステップS600に進んで動作休止状態であると判定して処理を終了し、休止条件が成立しない場合(No)はステップS200に進む。
【0033】
ステップS200に進んだ場合、制御ユニットCUは、睡眠条件が成立するか否かを判定する。そして睡眠条件が成立する場合(Yes)はステップS601に進んで睡眠状態であると判定して処理を終了し、睡眠条件が成立しない場合(No)はステップS300に進む。
ステップS300に進んだ場合、制御ユニットCUは、欲求条件が成立するか否かを判定する。そして欲求条件が成立する場合(Yes)はステップS602に進んで欲求状態であると判定して処理を終了し、欲求条件が成立しない場合(No)はステップS603に進んで通常状態であると判定して処理を終了する。
なお、図9の処理手順から明らかなように、各状態の判定の優先順位は、動作休止状態>睡眠状態>欲求状態>通常状態であり、動作休止状態、睡眠状態、欲求状態、通常状態、のいずれかの状態に必ず判定される。
【0034】
●[通常状態におけるモード判定処理の詳細(図10、図14)]
次に図10、図14のフローチャートを用いて、通常状態における図9のモード判定処理の詳細な処理手順を説明する。
【0035】
[通常状態のモード判定処理の処理手順の詳細]
制御ユニットCUは、まず、ステップSA00にて遊び状態M、喜び状態Yを判定し、ステップSB00にて疲労度合パラメータTを求める。なおステップSA00の処理手順の詳細については図14(A)に示し、ステップSB00の処理手順の詳細については図14(B)に示す。
【0036】
まず図14(A)を用いて、ステップSA00の処理手順について説明する。
図14(A)に示すように、制御ユニットCUは、ステップSA10にて、加速度センサS25の検出信号に基づいた加速度が閾値Th6(例えば0.05[G])以上であるか否かを判定する。
加速度が閾値Th6以上である場合(Yes)はステップSA22に進み、閾値Th6未満である場合(No)はステップSA12に進む。
ステップSA12に進んだ場合、制御ユニットCUは、マイクS22からの検出信号に基づいて、ロボット介護者からの音声入力(話しかけ)の有無を判定する。音声入力がある場合(Yes)はステップSA22に進み、音声入力が無い場合(No)はステップSA14に進む。
ステップSA14に進んだ場合、制御ユニットCUは、額部の光センサS11の検出信号に基づいた光Aが明るく且つ頭頂部の光センサS14の検出信号に基づいた光Bが暗いか否か、または光Aが暗く且つ光Bが明るいか否か、を判定する。光A=明且つ光B=暗、または光A=暗且つ光B=明の場合(Yes)はステップSA22に進み、そうでない場合はステップSA16に進む。例えばロボット介護者が被介護者用ロボット装置1の額部や頭頂部をなでたりしている場合に、ステップSA22に進む。
ステップSA16に進んだ場合、制御ユニットCUは、タッチセンサS13、S24のいずれかが非接触状態である場合(Yes)はステップSA22に進み、すべて接触状態である場合(No)はステップSA24に進む。例えば被介護者用ロボット装置1が床上に放置されている場合は、タッチセンサS13、S24のすべて接触状態となるようにタッチセンサS13、S24が配置されており、放置されている場合はステップSA24に進む。
ステップSA22に進んだ場合、制御ユニットCUは加算値Xに1を代入してステップSA30に進み、ステップSA24に進んだ場合、制御ユニットCUは加算値Xに0を代入してステップSA30に進む。
ステップSA30では、制御ユニットCUは、遊びパラメータP(P[i−1])にγ(例えば係数が0.95)を乗じて、更に加算値Xを加算して、遊びパラメータP(最新のP[i])の値を求め、ステップSA40に進む。
【0037】
ステップSA40では、制御ユニットCUは、求めた遊びパラメータPが閾値Th4以上(例えばパラメータ値が0.1)であるか否かを判定する。遊びパラメータPが閾値Th4以上である場合(Yes)はステップSA54に進み、閾値Th4未満である場合(No)はステップSA52に進む。
ステップSA52に進んだ場合、制御ユニットCUは遊び状態フラグMをクリア(0)して遊んでもらっていないと判定してステップSA70に進み、ステップSA54に進んだ場合、制御ユニットCUは遊び状態フラグMをセット(1)して遊んでもらっていると判定してステップSA70に進む。
ステップSA70にて、制御ユニットCUは、遊びパラメータPが閾値Th5(例えばパラメータ値が5.0)以上であるか否かを判定する。遊びパラメータPが閾値Th5以上である場合(Yes)はステップSA74に進み、閾値Th5未満である場合(No)はステップSA72に進む。
ステップSA72に進んだ場合、制御ユニットCUは喜び状態フラグYをクリア(0)して被介護者用ロボット装置1が喜びを感じていないと判定して処理を終了し、続いて図10に示すステップSB00に進む。
ステップSA74に進んだ場合、制御ユニットCUは喜び状態フラグYをセット(1)して被介護者用ロボット装置1が喜びを感じていると判定して処理を終了し、続いて図10に示すステップSB00に進む。
【0038】
次に図14(B)を用いて、ステップSB00の処理手順について説明する。
図14(B)に示すように、制御ユニットCUは、ステップSB10にて、現在の状態が通常状態であるか否かを判定する。通常状態である場合(Yes)はステップSB20に進み、通常状態でない場合(No)はステップSB30に進む。
ステップSB20に進んだ場合、制御ユニットCUは、喜び状態フラグYがセットされているか否かを判定する。喜び状態フラグYがセットされている場合(Yes)はステップSB51に進み、喜び状態フラグYがクリアされている場合(No)はステップSB52に進む。
ステップSB30に進んだ場合、制御ユニットCUは、現在の状態が欲求状態であるか否かを判定する。欲求状態である場合(Yes)はステップSB53に進み、欲求状態でない場合(No)はステップSB40に進む。
ステップSB40に進んだ場合、制御ユニットCUは、現在の状態が睡眠状態であるか否かを判定する。睡眠状態である場合(Yes)はステップSB54に進み、睡眠状態でない場合(No)は処理を終了する。
【0039】
ステップSB51に進んだ場合、制御ユニットCUは、疲労度合パラメータT(T[i−1])に加算値α1(例えばパラメータ値が1.0)を加算して疲労度合パラメータT(最新のT[i])を求めて処理を終了する。
ステップSB52に進んだ場合、制御ユニットCUは、疲労度合パラメータT(T[i−1])に加算値α2(例えばパラメータ値が0.5)を加算して疲労度合パラメータT(最新のT[i])を求めて処理を終了する。
ステップSB53に進んだ場合、制御ユニットCUは、疲労度合パラメータT(T[i−1])に加算値α3(例えばパラメータ値が1.0)を加算して疲労度合パラメータT(最新のT[i])を求めて処理を終了する。
ステップSB54に進んだ場合、制御ユニットCUは、疲労度合パラメータT(T[i−1])から減算値β(例えばパラメータ値が0.1)を減算して疲労度合パラメータT(最新のT[i])を求めて処理を終了する。
【0040】
図14(A)に示すステップSA00、図14(B)に示すステップSB00の処理を終了すると、図10のステップS110に戻り、制御ユニットCUは、バッテリ残量が閾値Th10(例えば10[%])未満であるか否かを判定する。この場合、バッテリセンサSBTからの検出信号に基づいて判定する。閾値Th10未満である場合(Yes)はステップS600に進み、動作休止状態であると判定して処理を終了し、閾値Th10以上である場合(No)はステップS120に進む。
ステップS120に進んだ場合、制御ユニットCUは、温度センサS26の検出信号に基づいた内部温度が閾値Th20(例えば40[℃])より高いか否かを判定する。閾値Th20より高い場合(Yes)はステップS600に進み、動作休止状態であると判定して処理を終了し、閾値Th20以下である場合(No)はステップS210に進む。
【0041】
ステップS210に進んだ場合、制御ユニットCUは、タイマSTの検出した時刻に基づいて、現在が夜であるか否か(例えば21時〜6時であるか否か)を判定する。現在が夜であると判定した場合(Yes)はステップS601に進み、睡眠状態であると判定して処理を終了し、夜でないと判定した場合(No)はステップS220に進む。夜であっても欲求状態と判定するほうが、より忠実に幼児を模擬することになるが、ロボット介護者の睡眠を妨げないように、被介護者用ロボット装置1の電源が切り忘れられている場合、夜中には強制的に睡眠状態にすることが好ましい。
ステップS220に進んだ場合、制御ユニットCUは、バッテリ残量が閾値Th10(例えば10[%])以上であり且つ閾値Th11(例えば20[%])未満であるか否かを判定する。閾値Th10以上であり且つ閾値Th11未満である場合(Yes)はステップS601に進み、睡眠状態であると判定して処理を終了し、そうでないと判定した場合(No)はステップS230に進む。
【0042】
ステップS230に進んだ場合、制御ユニットCUは、内部温度が閾値Th20(例えば40[℃])以下であり且つ閾値Th21(例えば35[℃])より高いか否かを判定する。閾値Th20以下であり且つ閾値Th21より高い場合(Yes)はステップS601に進み、睡眠状態であると判定して処理を終了し、そうでないと判定した場合(No)はステップS240に進む。
ステップS240に進んだ場合、制御ユニットCUは、ステップSB00にて求めた疲労度合パラメータTで示される疲労度合が閾値Th31(例えばパラメータ値が100)より高いか否かを判定する。閾値Th31より高い場合(Yes)はステップS601に進み、睡眠状態であると判定して処理を終了し、閾値Th31以下である場合(No)はステップS310に進む。
【0043】
ステップS310に進んだ場合、制御ユニットCUは、バッテリ残量が閾値Th11(例えば20[%])以上であり且つ閾値Th12(例えば30[%])未満であり且つ充電中でないか否かを判定する。この場合、充電中であるか否かは充電検出センサからの検出信号に基づいて判定する。閾値Th11以上であり且つ閾値Th12未満であり且つ充電中でない場合(Yes)はステップS602に進み、欲求状態であると判定して処理を終了し、そうでないと判定した場合(No)はステップS320に進む。
ステップS320に進んだ場合、制御ユニットCUは、内部温度が閾値Th22(例えば32[℃])より高く且つ閾値Th21(例えば35[℃])以下であるか否かを判定する。閾値Th22より高く且つ閾値Th21以下である場合(Yes)はステップS602に進み、欲求状態であると判定して処理を終了し、そうでないと判定した場合(No)はステップS330に進む。
【0044】
ステップS330に進んだ場合、制御ユニットCUは、疲労度合パラメータTが閾値Th31(例えばパラメータ値が100)以下であり且つ遊び状態フラグMがクリアされているか否かを判定する。疲労度合パラメータTが閾値Th31以下であり且つ遊び状態フラグMがクリアされている場合(Yes)はステップS602に進み、欲求状態であると判定して処理を終了し、そうでないと判定した場合(No)はステップS350に進む。
ステップS350に進んだ場合、制御ユニットCUは、関節センサS32の検出信号に基づいて、関節が外れているか否かを判定する。関節が外れている場合(Yes)はステップS602に進み、欲求状態であると判定して処理を終了し、そうでないと判定した場合(No)はステップS603に進み、通常状態であると判定して処理を終了する。
【0045】
●[欲求状態におけるモード判定処理の詳細(図11)]
次に図11のフローチャートにて、欲求状態における図9のモード判定処理の詳細な処理手順を示すが、この図11のフローチャートの処理手順は、図10に示す通常状態におけるフローチャートの処理手順と同一であるので説明は省略する。
【0046】
●[睡眠状態におけるモード判定処理の詳細(図12)]
次に図12に示すフローチャートを用いて、睡眠状態における図9のモード判定処理の詳細な処理手順を説明する。
なお、図10に示す通常状態における処理手順と重複する個所が多いので、図10に示す通常状態のフローチャートとの相違点について主に説明する。
【0047】
図12に示すステップSA00〜ステップS210の処理は図10に示すフローチャートの処理と同一であるので説明を省略する。
図12に示すフローチャートでは、図10のステップS220、S230、S240の代わりに、ステップS224、S234、S244の処理が行われる。
ステップS224では、制御ユニットCUは、バッテリ残量が閾値Th10(例えば10[%])以上であり且つ閾値Th13(例えば50[%])未満であるか否かを判定する。閾値Th10以上であり且つ閾値Th13未満である場合(Yes)はステップS601に進み、睡眠状態であると判定して処理を終了し、そうでないと判定した場合(No)はステップS234に進む。
ステップS234に進んだ場合、制御ユニットCUは、内部温度が閾値Th23(例えば25[℃])より高く且つ閾値Th20(例えば40[℃])以下であるか否かを判定する。閾値Th23より高く且つ閾値Th20以下である場合(Yes)はステップS601に進み、睡眠状態であると判定して処理を終了し、そうでないと判定した場合(No)はステップS244に進む。
ステップS244に進んだ場合、制御ユニットCUは、疲労度合パラメータTで示される疲労度合が閾値Th32(例えばパラメータ値が50)より高いか否かを判定する。閾値Th32より高い場合(Yes)はステップS601に進み、睡眠状態であると判定して処理を終了し、閾値Th32以下である場合(No)はステップS603に進み、通常状態であると判定して処理を終了する。
【0048】
●[各状態における、バッテリ残量、内部温度、疲労度合の閾値と判定する状態の関係(図13)]
図13(A)は、バッテリ残量に応じて、図10のフローチャートに示す通常状態、図11のフローチャートに示す欲求状態、図12のフローチャートに示す睡眠状態のそれぞれにて、Th10〜Th13にて示される各閾値と、判定する状態(動作休止状態、睡眠状態、欲求状態、通常状態)の関係を示す図である。既に図10〜図12を用いて説明済みであるが、図13(A)に示すように、通常状態及び欲求状態では、バッテリ残量が充分多い場合は通常状態に遷移可能であり、やや残量が減少してくると欲求状態へと遷移させて泣く等の動作をさせて電池交換や充電を催促し、更に残量が減少すると睡眠状態へと遷移させてバッテリの消耗を小さくし、更に残量が減少した場合は動作休止状態へと遷移させている。
なお、被介護者ロボット装置1に充電制御回路を搭載し、バッテリ残量が減少して欲求状態に遷移した場合であっても、家庭用電源から電源BTを充電するための充電用ケーブルを接続して充電中にすると、欲求状態から通常状態へと遷移する。
【0049】
図13(B)は、内部温度に応じて、図10のフローチャートに示す通常状態、図11のフローチャートに示す欲求状態、図12のフローチャートに示す睡眠状態のそれぞれにて、Th20〜Th23にて示される各閾値と、判定する状態(動作休止状態、睡眠状態、欲求状態、通常状態)の関係を示す図である。既に図10〜図12を用いて説明済みであるが、図13(B)に示すように、通常状態及び欲求状態では、例えば内部温度が常温以下である場合は通常状態に遷移可能であり、やや温度が上昇してくると欲求状態へと遷移させて泣く等の動作をさせて温度を下げることを催促し、更に温度が上昇すると睡眠状態へと遷移させ、更に温度が上昇すると動作休止状態へと遷移させている。
【0050】
図13(C)は、疲労度合に応じて、図10のフローチャートに示す通常状態、図11のフローチャートに示す欲求状態、図12フローチャートに示す睡眠状態のそれぞれにて、Th31、Th32にて示される各閾値と、判定する状態(動作休止状態、睡眠状態、欲求状態、通常状態)の関係を示す図である。既に図10〜図12を用いて説明済みであるが、図13(C)に示すように、通常状態、欲求状態、睡眠状態のそれぞれにおいて、疲労度合と遊んでもらえているか否かに応じて、適切な状態に遷移するように設定されている。
【0051】
例えば通常状態において腕関節が外れた脱臼状態となった場合、図10のステップS350にて関節が外れていると判定されてステップS602にて欲求状態と判定され、通常状態から欲求状態へと状態が遷移する。
そして欲求状態と判定された場合、図8(B)のステップS20Cにて痛みや悲しみ等が起動され、ステップS20Dにて痛みや悲しみ等が表現される。例えばまぶた駆動モータA11、唇駆動モータA15、涙LED(A12)にて悲しい表情が作られ、スピーカA22から泣き声や腕が痛い旨の音声が出力される。
そして例えば腕関節が元通りに整復された場合、通常状態と判定され、図8(A)のステップS10Cにて喜びが起動され、ステップS10Dにて喜びが表現される。例えばまぶた駆動モータA11、唇駆動モータA15、頬LED(A14)にて喜びの表情が作られ、スピーカA22から喜びの音声が出力される。
【0052】
本発明の被介護者用ロボット装置1は、本実施の形態で説明した外観、構成、構造、処理、動作等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
本実施の形態の説明では、通常状態と欲求状態の少なくとも2つの状態を判定する処理手順(図10、図11)において、腕関節が外れた場合に欲求状態と判定して機嫌が悪い状態を表現した。しかし、更に睡眠状態を加え、通常状態と欲求状態と睡眠状態の3つの状態のそれぞれにて、腕関節が外れた場合に欲求状態と判定して機嫌が悪い状態を表現するようにしても良い。すなわち、関節が外れて欲求状態となるのは、通常状態と欲求状態のときだけでなく、睡眠状態においても可能となるようにしても良い。
また、以上(≧)、以下(≦)、より大きい(>)、未満(<)等は、等号を含んでも含まなくてもよい。
また、本実施の形態の説明に用いた数値は一例であり、この数値に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0053】
1 被介護者用ロボット装置
10 頭部
20 胴体部
30 腕部
31 上腕部
32 前腕部
33 手部
BT 電源
CU 制御ユニット(状態判定手段)
S11、S14 光センサ
S12 焦電センサ
S13、S23、S24、S33 タッチセンサ
S21 カメラ
S22 マイク
S25 加速度センサ
S26 温度センサ
S32 関節センサ(関節状態検出手段)
SBT バッテリセンサ
ST タイマ(時刻検出手段)
A11 まぶた駆動モータ
A12 涙LED
A14 頬LED
A15 唇駆動モータ
A16 頭部揺動モータ
A21 首旋回モータ
A22 スピーカ(音声出力手段)
A31、A32、A33 旋回モータ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの刺激を検出する外部刺激検出手段と、
自身の内部状態を検出する内部状態検出手段と、
感情を含む自身の状態を判定する状態判定手段と、
判定した状態を表現可能な出力手段である状態表現手段と、
を備えて乳児を模擬した被介護者用ロボット装置であって、
前記状態判定手段は、
前記外部刺激検出手段にて検出した外部からの刺激である外部状態と、前記内部状態検出手段にて検出した自身の内部状態と、に基づいて、自身が備えられている被介護者用ロボット装置が、機嫌の良い状態を表す通常状態と、前記通常状態よりも機嫌の悪い状態を表す欲求状態と、寝入っていることを表す睡眠状態と、の少なくとも3つの状態のいずれの状態であるかを判定し、判定した状態に応じて前記状態表現手段を動作させて前記被介護者用ロボット装置の状態を表現する、
被介護者用ロボット装置。
【請求項2】
請求項1に記載の被介護者用ロボット装置であって、
前記状態表現手段には、音声出力手段が含まれており、
前記状態判定手段は、前記睡眠状態と判定した場合、浅い呼吸音と深い呼吸音を周期的あるいはランダムに繰り返し、それぞれの呼吸音に応じた寝息を前記音声出力手段から出力する、
被介護者用ロボット装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の被介護者用ロボット装置であって、
前記内部状態検出手段には、時刻検出手段が含まれており、
前記状態判定手段は、前記時刻検出手段を用いて夜中であることを検出すると、前記被介護者用ロボット装置の状態を強制的に前記睡眠状態とする、
被介護者用ロボット装置。
【請求項4】
外部からの刺激を検出する外部刺激検出手段と、
自身の内部状態を検出する内部状態検出手段と、
感情を含む自身の状態を判定する状態判定手段と、
判定した状態を表現可能な出力手段である状態表現手段と、
を備えて乳児を模擬した被介護者用ロボット装置であって、
前記被介護者用ロボット装置には、脱臼・整復可能な関節を備えて可動する腕部が設けられており、
前記関節は、許容量以上の力が加えられると外れて脱臼状態となるように構成されているとともに元通りに整復することが可能となるように構成されており、
前記内部状態検出手段には、前記関節の脱臼・整復状態を検出する関節状態検出手段が含まれており、
前記状態判定手段は、
自身が備えられている被介護者用ロボット装置が、機嫌の良い状態を表す通常状態と、前記通常状態よりも機嫌の悪い状態を表す欲求状態と、の少なくとも2つの状態のいずれの状態であるかを判定し、判定した状態に応じて前記状態表現手段を動作させて前記被介護者用ロボット装置の状態を表現し、
前記関節状態検出手段にて前記関節が脱臼状態であることを検出すると、前記欲求状態であると判定して前記通常状態よりも機嫌の悪い状態を前記状態表現手段を用いて表現する、
被介護者用ロボット装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−220783(P2012−220783A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87562(P2011−87562)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000151597)株式会社東郷製作所 (78)