説明

被処理水処理装置

【課題】架台内に充填した接触材間に汚水を均等に通過できる接触ばっ気装置を提供する。
【解決手段】接触材16を充填する架台11の一対の側部12,13間の高さ方向Bの長さCを、一対の側部12,13間の水平方向Aの長さDより長くする。散気管21での散気で隔壁18の上端縁を越流した汚水Wが、隔壁18と架台11の側部12との間から均等な流速で接触材16間を略水平方向に通過する。架台11の高さ方向Bの全体に亘って汚水Wを均等な流速で略水平に接触材16間を通過できる。接触材16による汚水Wの処理効率を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理水を貯溜させて処理する被処理水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の被処理水処理装置である水処理装置としては、被処理水としての汚水が流入される生物処理槽を具備し、この生物処理槽内には、この生物処理槽の流入側から流出側に向けて誘導板と仕切板とが取り付けられている。そして、この生物処理槽内の流入側に誘導板が位置し流出側に仕切板が位置した部分には、この生物処理槽内に接触材を固定させる架台がそれぞれ取り付けられている。さらに、この生物処理槽内の架台の下部には、この架台内に保持されている接触材内に下方から上方に向けて汚水を通過させる散気管がそれぞれ取り付けられている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−66595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記水処理装置では、生物処理槽内の汚水を下方から上方に向かう上下方向に沿って架台内の接触材内を通過させる構成である。したがって、この生物処理槽内の誘導板の近くでの汚水の流れが速く、この誘導板から水平方向に離れるに連れて汚水の流れが遅いので、これら架台内に汚水が流れて通過しない部分が形成されてしまうおそれがある。このことから、この架台内には実質的に使用されない接触材が存在してしまうおそれがあるという問題を有している。
【0004】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたもので、処理室に被処理水を均等に通過できる被処理水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の被処理水処理装置は、被処理水が流入され底部および側面部を有する槽本体と、この槽本体内に取り付けられ、少なくとも対向する両側部が前記被処理水が透過可能に形成され、透過する前記被処理水を処理し、上下方向の長さが水平方向の長さより長い処理室と、前記槽本体内に上下方向に沿って取り付けられ、前記処理室の底部に下端部が接続された隔壁部と、前記槽本体内の底部の前記隔壁部と前記槽本体の側面部との間に配設された散気手段とを具備したものである。
【0006】
請求項2記載の被処理水処理装置は、請求項1記載の被処理水処理装置において、槽本体内の処理室の底部より下部に取り付けられた洗浄散気手段を具備し、前記処理室の底部は、被処理水が透過可能に形成されているものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の被処理水処理装置によれば、槽本体に被処理水を流入させた状態で、この被処理水を散気手段にて散気することにより、槽本体の側面と隔壁との間の被処理水が上方へ流れて隔壁を越流した後に、この被処理水が処理室の両側部間を水平に透過していく。したがって、この処理室の上下方向に亘って被処理水を水平に透過できるから、この被処理水を処理室に均等に通過でき、この処理室での被処理水の処理効率を向上できる。
【0008】
請求項2記載の被処理水処理装置によれば、洗浄散気手段にて槽本体内の処理室の底部より下部の被処理水を散気することにより、この被処理水が処理室の底部を透過して、この処理室の底部から側面部へと通過する。したがって、この処理室を通過する被処理水の流れに直交する流れで処理室を洗浄できるので、この処理室を均等に洗浄できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の被処理水処理装置の実施の一形態を図1を参照して説明する。
【0010】
図1において、1は被処理水処理装置としての接触ばっ気装置で、この接触ばっ気装置1は、横方向としての水平方向Aの流れを生じさせる横流れ型の接触ばっ気槽である。そして、この接触ばっ気装置1は、被処理水としての汚水Wが貯溜される貯溜部としての貯溜槽である槽本体2を有している。この槽本体2は、汚水Aを貯溜可能な中空の箱状に合成樹脂などで形成された水槽である。さらに、この槽本体2は、この槽本体2の側面を形成する計4枚の側面部3,4と、これら側面部3,4の底側を閉塞する底部5とで構成されている。
【0011】
また、この槽本体2は、この槽本体2の各側面部3,4それぞれの幅方向である水平方向Aの長さよりも、これら各側面部3,4それぞれの上下方向である高さ方向Bの長さが長い有底細長角筒状に形成されている。また、この槽本体2の底部5は、水平方向Aに沿った奥行き方向の長さが、幅方向の長さよりも大幅に長い長方形状に形成されている。
【0012】
さらに、この槽本体2の内部には、この槽本体2内の汚水Wを浄化処理する中空直方体状の処理室としての接触材充填部である架台11が取り付けられている。この架台11は、槽本体2の対向して位置する一対の側面部3,4および底部5のそれぞれとの間に所定の間隙を介した状態で取り付けられている。そして、この架台11は、槽本体2の一対の側面部3,4間に位置している図示しない一対の側面部それぞれに接続されている。
【0013】
また、この架台11の槽本体2の対向する一対の側面部3,4のそれぞれに対向する一対の側部12,13のそれぞれは、透水性を有するように構成されている。そして、これら一対の側部12,13は、槽本体2内に貯溜される汚水Wの水位Lよりもこれら一対の側部12,13の上端部が上方に突出するように取り付けられている。
【0014】
さらに、この架台11の下方に位置する底部14もまた、透水性を有するように形成されている。また、この架台11の上方に位置する上面部15は、この架台11の側部12,13間であって、槽本体2に貯溜される汚水Wの水位L、すなわちこの汚水Wの水面位置より下方に位置するように形成されている。そして、この架台11の上面部15は、透水性を有するパネルなどで形成されている。
【0015】
さらに、この架台11の一対の側部12,13間の高さ方向Bの長さCは、これら一対の側部12,13間の水平方向Aの長さDより長く形成されている。具体的に、この架台11は、一対の側部12,13間の高さ方向Bの長さCが、これら一対の側部12,13間の水平方向Aの長さDよりも大幅に長い、例えば5倍以上10倍以下の長さとなるように形成されている。
【0016】
また、この架台11の内部には、多数の接触材16が充填されている。これら接触材16は、これら接触材16に接触する汚水Wを浄化処理させるものである。
【0017】
さらに、この架台11の底部14の一方の側部12側の一側縁には、この架台11の一方の側部12側に向けて水平に突出した平板状の底部延出部17が一体的に設けられている。この底部延出部17は、透水性を有さないパネルなどで形成されている。さらに、この底部延出部17は、この底部延出部17が設けられている側の架台11の側部12と槽本体2の側面部3との間の水平方向Aの約中間位置までに亘って突出している。
【0018】
そして、この底部延出部17の先端部には、上下方向に沿って取り付けられた水流ガイドとしての隔壁部である矩形平板状の隔壁18が設けられている。この隔壁18の幅方向の両側縁は、槽本体2の一対の側面部3,4間に位置している図示しない一対の側面部のそれぞれに接合されている。さらに、この隔壁18の上下方向である高さ方向Bの下端縁は、底部延出部17の先端部に接合されている。また、この隔壁18の高さ方向Bの上端縁は、架台11の上面部15と同じ高さ位置となるように形成されている。さらに、この隔壁18は、槽本体2の側面部3と架台11の側部12との間の略中間部に位置するように取り付けられている。
【0019】
また、槽本体2内の隔壁18と、この槽本体2の側部12との間の下方には、散気手段としての散気管21が取り付けられている。この散気管21は、槽本体2内に貯溜されている汚水Wを散気して、この汚水Wに流れを生じさせるものである。すなわち、この散気管21は、槽本体2内の隔壁18と、この槽本体2の側面部3との間に位置している汚水Wを散気することにより、この槽本体2内の隔壁18と槽本体2の側面部3との間の汚水Wに上方に向かう流れ、すなわち上方流を生じさせつつ、この汚水Wの溶存酸素量を向上させるものである。
【0020】
さらに、槽本体2内の架台11の底部14の下方には、この架台11内の接触材16を洗浄するための洗浄散気手段としての逆洗空気管である洗浄散気管22が取り付けられている。この洗浄散気管22は、この洗浄散気管22からの汚水Wの散気により、架台11内に充填されている接触材16を空気逆洗する。そして、この洗浄散気管22は、架台11の底部14の水平方向Aに沿った長さDに応じて、1本以上、すなわち複数本が槽本体2の架台11の底部14の下方に、この底部14の幅方向に沿って等間隔に離間された状態で取り付けられている。
【0021】
次に、上記実施の一形態の被処理水処理装置の作用を説明する。
【0022】
まず、接触ばっ気装置1の槽本体2内に設置されている隔壁18の上端縁および架台11の上面部15のそれぞれよりも上方に汚水Wの水位Lが位置するまで、この槽本体2内に汚水Wを流入させて貯溜させる。
【0023】
この状態で、この槽本体2内に設置されている散気管21へと空気を送り込んで、この槽本体2内に貯溜されている汚水Wを散気する。
【0024】
このとき、この散気管21による汚水Wの散気によって、槽本体2の側面部3と隔壁18との間に位置している汚水Wに下方から上方に向かう上方流が生じる。
【0025】
そして、この槽本体2の側面部3と隔壁18との間の汚水Wの上方流によって、この汚水Wが隔壁18の上端縁を越流して、この隔壁18と架台11の側部12との間へ流れ込んでいく。
【0026】
このとき、この隔壁18と架台11の側部12との間へ流れ込んだ汚水Wは、この汚水Wの流れによって隔壁18と架台11の側部12との間で上方から下方に向かう下降流が生じる。
【0027】
この後、この隔壁18と架台11の側部12との間に流れ込んだ汚水Wは、架台11の高さ方向Bの長さCが水平方向Aの長さDよりも長いことから、これら隔壁18と架台11の側部12との間から架台11内へと略横方向、すなわち略水平方向に向けて略均等に流れ込んでいく。
【0028】
そして、この汚水Wは、この架台11内の接触材16間を略水平方向Aに沿って通過して、この架台11の側部13と槽本体2の側面部4との間へと流れていく。
【0029】
このとき、この汚水Wは、架台11内の接触材16間を通過する際に、これら接触材16に接触して浄化処理される。
【0030】
さらに、この架台11の側部13と槽本体2の側面部4との間へと流れた汚水Wは、この槽本体2の底部5と架台11の底部14との間へと流れていく。
【0031】
そして、この槽本体2の底部5と架台11の底部14との間へと流れた汚水Wは、散気管21による汚水Wの散気によって、槽本体2の側部12と隔壁18との間へと流れていく。
【0032】
ここで、この槽本体2内の架台18内に充填されている接触材16を洗浄する場合には、この槽本体2内に設置されている洗浄散気管22へと空気を送り込む。
【0033】
このとき、この洗浄散気管22による散気によって、架台11内の接触材16間を通過する汚水Wの水平方向Aに沿った流れに対して直交する高さ方向Bに向けて架台11内の接触材16が空気逆洗されるとともに、これら接触材16間を通過した汚水Wが架台11の側部12,13間から槽本体2内に溢れ出すように流れていく。
【0034】
ここで、図2に示す従来の接触ばっ気装置31では、散気管21による散気によって架台11の上方から下方に向かう縦方向としての鉛直方向、すなわち高さ方向Bに向けて汚水Wを通過させる構成である。このため、架台11の側部13の近くでは汚水Wの流れが強く、この架台11の側部13から離れるほど汚水Wの流れが弱くなるから、この汚水Wが不均等な状態で架台11内を通過する。したがって、この架台11内の側部12の近くに汚水Wが停滞する部分、すなわち浄化に利用されない無効な部分が生じやすい。
【0035】
また、この従来の接触ばっ気装置31では、槽本体2内の架台11に充填されている接触材16が目詰まりして閉塞した際に、この槽本体2内の架台11の底部14の下方に設置した洗浄散気管22で散気して、この架台11内の接触材16を空気逆洗する。この場合に、この架台11に充填されている接触材16のうち、この架台11の上面部15寄りの部分の接触材16の目詰まりがひどいことから、この架台11に充填されている接触材16のうち洗浄散気管22の上部に位置する部分だけが洗浄されるに過ぎず、これら接触材16の洗浄後に、いわゆる水道(みずみち)といわれる汚水Wの短絡流路が接触材16間に形成されやすい。
【0036】
そこで、上述した実施の一形態のように、接触材16を充填させる架台11の一対の側部12,13間の高さ方向Bの長さCを、これら一対の側部12,13間の水平方向Aの長さDより長く形成したことにより、散気管21による散気にて隔壁18の上端縁を越流した汚水Wが、隔壁18と架台11の側部12との間から均等な流速で、この架台11の側部12,13間である接触材16間を略水平方向に沿って通過していく。
【0037】
したがって、この架台11の高さ方向Bの全体に亘って汚水Wを均等な流速で略水平に接触材16間を通過させることができるから、この架台11内に充填されている接触材16による汚水Wの処理効率を向上できる。このことから、この架台11内に充填させる接触材16の充填量を少なくすることが可能となる。よって、この接触材16の充填量を少なくすることにより、槽本体2の大きさを小さくできるから、この槽本体2の設置スペースを小さくできる。このため、この槽本体2を備えた接触ばっ気装置1が設置される土地を有効に利用できる。
【0038】
さらに、架台11の高さ方向Bの全体に亘って汚水Wが均等な流速で略水平に接触材16間を通過するので、この架台11内に充填させる接触材16の充填量を少なくでき、これら接触材16の目間隔を小さくできるので、これら接触材16の単位容積当たりの処理能力を向上できる。
【0039】
また、槽本体2内の架台11の底部14の下方に設置した洗浄散気管22による散気によって、この架台11の底部14の下方に位置する汚水Wに上方流が生じ、この汚水Wが架台11の底部14を通過して架台11内へ流入される。このことから、この架台11内の接触材16間を通過する汚水Wの水平方向Aに沿った流れに対して直交する高さ方向Bに向けて架台11内の接触材16を洗浄散気管22で散気して、これら接触材16を空気逆洗できる。すなわち、この洗浄散気管22による散気によって、汚水Wの通過方向に対して直交する方向の全体に亘って、架台11内の接触材16を均一に洗浄できる。よって、例えば、接触材16間に高さ方向Bに沿って汚水Wを通過させる従来の接触ばっ気装置31の場合に生じる、いわゆる水道(みずみち)の発生を防止できる。
【0040】
なお、上記実施の一形態において、汚水Wを対象として説明したが、汚水W以外の浄化処理が必要ないずれの被処理水であっても対応させて用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の被処理水処理装置の実施の一形態を示す説明断面図である。
【図2】従来の被処理水処理装置を示す説明断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 被処理水処理装置としての接触ばっ気装置
2 槽本体
3,4 側面部
5,14 底部
11 処理室としての架台
12,13 側部
18 隔壁部としての隔壁
21 散気手段としての散気管
22 洗浄散気手段としての洗浄散気管
W 被処理水としての汚水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水が流入され底部および側面部を有する槽本体と、
この槽本体内に取り付けられ、少なくとも対向する両側部が前記被処理水が透過可能に形成され、透過する前記被処理水を処理し、上下方向の長さが水平方向の長さより長い処理室と、
前記槽本体内に上下方向に沿って取り付けられ、前記処理室の底部に下端部が接続された隔壁部と、
前記槽本体内の底部の前記隔壁部と前記槽本体の側面部との間に配設された散気手段と
を具備したことを特徴とした被処理水処理装置。
【請求項2】
槽本体内の処理室の底部より下部に取り付けられた洗浄散気手段を具備し、
前記処理室の底部は、被処理水が透過可能に形成されている
ことを特徴とした請求項1記載の被処理水処理装置。

【図1】
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【図2】
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