説明

被服取付用弾性部材具

【課題】農作業や運送配達業務の前屈姿勢での重量物の取り扱いで起因する腰への負担をエプロン等に装着した被服取付用弾性部材具で腰への負担を軽減し、トラックを運転するなど前屈作業以外の複雑な動作の変化にも能率良く対応する。
【解決手段】上半身と下半身にまたがって力が作用する1本以上の弾性部材2aを備えた被服取付用弾性部材具であって、上半身の力が作用する部分に前記弾性部材を備え、下半身に至る部分に関節構造部11を設け前記弾性部材とを連繋する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエプロン,作業用スーツ等の被服に取付けて作業時の腰にかかる負担を軽減させるための被服取付用弾性部材具に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、腰痛で辛い思いをしている人は多く、特に前屈み作業では腰にかかる負担が大きく連続の作業では痛みが激しくなることもある。特に農作業、介護、運搬業では前屈になる姿勢が多くこれらは今後の高齢化時代と共に解決しなければならない重要な問題と思われる。
【0003】
また農作業の中でも畠の作業は、植え付けや収穫あるいは手入れのほとんどが手作業であり、田植えや稲刈りは機械化されたとはいえ稲の株間の除草は適当な機械がないために手作業に頼らざるを得なく、また有害性に問題のある農薬を出来るだけ使用しない有機農法においても手作業が多く腰への負担が大である。
【0004】
一方介護の職場においても介護度が重くなる傾向を増し、介護者の力仕事から腰にかかる負担も大きくなり、腰痛に悩む介護者が多くなっている。このため下記に示す
特許文献1乃至2において種々提案がなされている。
【特許文献1】実開昭60-189515
【特許文献2】特開2007-247110
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記提案の特許文献1は着用する上着などの両脇の位置から膝の上部にまで延長した2本の弾性部材を設けた上体支持用具であり、特許文献2は人体の腰部を腰痛などから保護するもので、弾性部材を用いた腰に付けるサポータである。しかしながら、以上の文献からなる提案は、身体への着用時において前屈の作業時ではもちろん、作業時以外でも前屈の多少にかかわらず身体に対する拘束感があり、本来の必要とする作業以外での妨げになる場合もあり、都度必要に応じて着脱をしなければならない不都合がある。そこで本発明は農作業や介護あるいは一般製造業等での前屈を伴う作業において使用するエプロンあるいは作業用スーツ等に簡単に取付けられ、作業時の腰への負担を軽減するための被服取付用弾性部材具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために請求項1に記載の本発明による被服取付用弾性部材具は、上半身と下半身にまたがって力が作用する1本以上の弾性部材を備えた被服取付用弾性部材具において、上半身の力が作用する部分に前記弾性部材を備え、下半身に至る部分に関節構造部を設け前記弾性部材とを連繋したことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の本発明による被服取付用弾性部材具は、前記関節構造部において、連繋している前記弾性部材が折れ曲る状態と、折れ曲らない状態とに切り替えを可能としたことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の本発明による被服取付用弾性部材具は、前記関接構造部は前記弾性部材の一端と連繋する関節ハウジングと、下半身の力を作用する加圧部材と連繋された関節体とを軸受けを介して回転可能に連結され、前記関接体の所定の回転位置で前記連結部材と前記加圧部材が所定の角度まで折れ曲がる関節構造を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の被服取付用弾性部材具を着用することで前屈を必要とする作業においては腰への負担を軽くし、一方椅子にすわっての事務作業、車を運転するなど平常動作時の前屈姿勢に類似した体勢等の上半身を支える作用を必要としない動作に移行する場合は、関節構造部の簡単な操作で切り替えが可能であり弾性部材の固定を解放し身体への拘束感が取り除かれるため常時着用でも不都合としない。
【0010】
このため、農作業や配達業務では、前屈姿勢での重量物の取り扱いで発生する腰への負担を図6のエプロンに着用した被服取付用弾性部材具で補助し、続いて弾性部材2の作用を解放してトラックを運転するなど、複雑な動作の変化に能率良く対応することが可能となった。
【0011】
また、老人介護の職場においては、入浴介助、おむつ交換などの前屈作業で腰への負担を軽くすることができ、さらに事務やその他の複雑な作業においては、弾性部材の作用を解放することで通常の動作で仕事ができ常時の着用でも不都合としない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の被服取付用弾性部材具はエプロンのほか、作業用スーツ、チョッキなどに取付けが可能である。
【0013】
弾性部材2は形状記憶合金部材からなる本発明の被服取付用弾性部材具をエプロンに取付け、その超弾性特性を利用することで本発明がより現実的な効果を発揮できる。ここではエプロンに取付けた場合で説明する。
【実施例】
【0014】
図1は形状記憶合金部材からなる従来の弾性部材具2をエプロン1に取付けた状態を示す説明図であり、直線状の形状記憶合金部材からなる弾性部材具2の上端を胸又は脇の高さに位置するエプロンに縫付け、あるいは袋状のポケットに挿入して固定され、下端は下半身の腿あるいは膝部分に位置するエプロンに固定されている。弾性部材具を取付けたエプロンを身体に装着し前屈作業では、弾性部材具2が前屈とともに変形し、上半身を変形した弾性部材具2にもたれかかる状態で作業を行い、前屈姿勢を元に戻す時には弾性部材具2の反力を利用して戻すことで装着者の腰や筋肉の負担を軽減する。しかしながら、従来の弾性部材具2では前屈作業以外の、平常動作においても弾性部材具2を多少に係らず変形させることがあり弾性部材具2から受る拘束感から作業時以外は着用を外し、都度着用する不便さがある。
【0015】
図2は本発明の被服取付用弾性部材具の基本構造を示す図であり、弾性部材2aの一端を保持部4と他端を加圧部材3が関節ピン6を介して連繋されている関節ハウジング5で保持し、さらに弾性部材2aと連繋している。
【0016】
図3は関接構造部14の内部を示した図で、弾性部材2aを連繋保持している関節ハウジング5は加圧部材3と関節ピン6で連繋している関節体7と軸受け13を介して回転可能に保持されている。関節体7は固着されているレバー9で軸受け13を中心に加圧部材3とともに回転が可能である。これらを構成している材料は、弾性部材2aは弾力性に富んだバネ材料、特に変形による歪の少ない形状記憶合金材料が適している。その他構成する部品の材料はアルミ等軽量のものが良く、場合によっては下半身の力の作用を受ける加圧部材3には形状記憶合金材料などのバネ材料を使用することもある。弾性部材2aは使用者または使用目的に応じて材質や太さ、あるいは長さや本数を選択することも可能である。
【0017】
図3に示す状態では、加圧部材3は関節ピン6と関節体7によって動きが制限され、前屈姿勢をとったとき上半身から保持部4にC方向の力が加わり、加圧部材3には下半身からDの力が加わるので、弾性部材2に曲げ応力が発生する。図5にはこの曲げ応力が上半身を支える力となって、腰の負担を軽減するエプロンの装着状態を示している。
【0018】
図4は図3に示す状態からレバー9を180度旋回させた状態を示す。レバー9と一体になっている関節体7も180度旋回し、スリット8は加圧力Dにより加圧部材3が関節ピン6を支点にして倒される側に位置している。スリット8の幅は加圧部材3が通過可能の寸法である。その状態で保持部4にC方向の力が加わり、加圧部材3にD方向の力が加わると、加圧部材3は関節ピン6を支点にしてスリット8に倒れ込み、弾性部材2には曲げ応力が発生しない。図6に図4の状態の被服取付用弾性部材具を装着した前屈姿勢をとったときを示し、身体には力が作用していないので抵抗感なく自由な動きができる。
【0019】
以上構成の被服取付用弾性部材具を一例としてエプロン等の左右および上下に設けた縦長のポケに挿入、または縫付け等で固着して着用することにより、前屈作業における腰への負担を軽減するものである。
【0020】
本発明は上述実施の形態に限らず本発明の要旨を逸脱することなく、その他種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来の弾性部材具をエプロンに取付けた状態を示す図。
【図2】本発明の被服取付用弾性部材具の基本構造を示す図。
【図3】本発明の被服取付用弾性部材具の関接構造部の内部を示した図。
【図4】本発明の被服取付用弾性部材具のレバー操作後を示した図。
【図5】本発明の被服取付用弾性部材具を装着して曲げ応力を発生させた状態の図。
【図6】本発明の被服取付用弾性部材具を装着して身体に負荷のかからない状態の 図。
【符号の説明】
【0022】
1 エプロン
2 弾性部材
2a 弾性部材
3 加圧部材
4 保持部
5 関節ハウジング
6 関節ピン
7 関節体
8 スリット
9 レバー
10 軸受け
11 関節構造部
12 ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上半身と下半身にまたがって力が作用する1本以上の弾性部材を備えた被服取付用弾性部材具において、上半身の力が作用する部分に前記弾性部材を備え、下半身に至る部分に関節構造部を設けて前記弾性部材とを連繋したことを特徴とする被服取付用弾性部材具。
【請求項2】
前記関節構造部において、連繋している前記弾性部材が折れ曲る状態と、折れ曲らない状態とに切り替えを可能としたことを特徴とする請求項1に記載の被服取付用弾性部材具。
【請求項3】
前記関接構造部は前記弾性部材の一端と連繋する関節ハウジングと、下半身の力を作用する加圧部材に連繋された関節体とを軸受けを介して回転可能に連結され、前記関接体の所定の回転位置で前記連結部材と前記加圧部材が所定の角度まで折れ曲がる関節構造を設けたことを特徴とする請求項1乃至2の被服取付用弾性部材具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−70879(P2010−70879A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−240312(P2008−240312)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(301065814)日精電機株式会社 (8)
【出願人】(508283738)
【Fターム(参考)】