説明

被梱包物損傷推定装置及びその推定方法

【課題】被梱包物を梱包体内に充填する際に発生するその被梱包物の損傷の有無をその被梱包物をその梱包体に充填した後に推定する被梱包物損傷推定装置を提供すること。
【解決手段】被梱包物60を梱包体20内に充填する際に被梱包物60が梱包体20の内側の突出部と接触することにより発生する被梱包物60の損傷の有無を、被梱包物60を梱包体20に充填した後に推定する被梱包物損傷推定装置100は、梱包体20を構成する複数の面部材群のうち充填方向に延びる面部材30〜33の所定位置に形成される、梱包体20の内側の突出部となり得るカット部42の状態を検知するカット状態検知部2と、カット状態検知部2が検知したカット部42の状態に基づいて被梱包物60の損傷の有無を推定する損傷推定部10とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被梱包物を梱包体内に充填する際に発生するその被梱包物の損傷の有無をその被梱包物をその梱包体に充填した後に推定する被梱包物損傷推定装置及びその推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の缶を包装したマルチパックをプッシャーでカートンに押し込み、複数のマルチパックを一組としてカートンに梱包する梱包システムにおける包装物検査装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この包装物検査装置は、マルチパックをカートンに押し込むまでのマルチパックの移動経路上にある段差やガイドによってマルチパックが浮き上がるのを光学センサによって検出し、マルチパックがカートン内に充填される前に、その段差やガイドによって生じるそのマルチパックの包装用板紙の破損を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−126564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、マルチパックをカートン内に押し込むまでの段階でマルチパックの包装用板紙の破損が検知されていなかったにもかかわらず、カートン開梱後にマルチパックの包装用板紙の破損に起因する、マルチパックからの缶の抜け落ちが発生するという問題があった。
【0006】
この問題に対し、特許文献1に記載の包装物検査装置は、マルチパックをカートン内に押し込むまでの段階で生じる包装用板紙の破損を検出するのみであるため、何らの解決策をも提供することができない。
【0007】
上述の点に鑑み、本発明は、被梱包物を梱包体内に充填する際に発生するその被梱包物の損傷の有無をその被梱包物をその梱包体に充填した後に推定する被梱包物損傷推定装置及びその推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明の実施例に係る被梱包物損傷推定装置は、被梱包物を梱包体内に充填する際に該被梱包物が該梱包体の内側の突出部と接触することにより発生する該被梱包物の損傷の有無を、該被梱包物を該梱包体に充填した後に推定する被梱包物損傷推定装置であって、前記梱包体を構成する複数の面部材群のうち充填方向に延びる面部材の所定位置に形成される、前記梱包体の内側の突出部となり得るカット部の状態を検知するカット状態検知部と、前記カット状態検知部が検知した前記カット部の状態に基づいて前記被梱包物の損傷の有無を推定する損傷推定部と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の実施例に係る被梱包物損傷推定方法は、被梱包物を梱包体内に充填する際に該被梱包物が該梱包体の内側の突出部と接触することにより発生する該被梱包物の損傷の有無を、該被梱包物を該梱包体に充填した後に推定する被梱包物損傷推定方法であって、前記梱包体を構成する複数の面部材群のうち充填方向に延びる面部材の所定位置に形成される、前記梱包体の内側の突出部となり得るカット部の状態を検知するカット状態検知ステップと、前記カット状態検知ステップにおいて検知された前記カット部の状態に基づいて前記被梱包物の損傷の有無を推定する損傷推定ステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上述の手段により、本発明は、被梱包物を梱包体内に充填する際に発生するその被梱包物の損傷の有無をその被梱包物をその梱包体に充填した後に推定する被梱包物損傷推定装置及びその推定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例に係る被梱包物損傷推定装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】梱包体の一例であるカートンの展開図である。
【図3】図2のカートンを組み立てた状態を示す斜視図である。
【図4】カートンとそのカートンに充填されるマルチパックとの間の関係を概略的に示す図である。
【図5】Hカットの拡大平面図である。
【図6】スリーブと接触した後のHカットの状態を示す図である。
【図7】コンベア上を搬送されるカートンとカット状態検知センサとの間の位置関係を説明するための図である。
【図8】図5及び図6で示されるHカットを走査するカット状態検知センサの測定値の推移を示す図である。
【図9】被梱包物損傷推定処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】手掛け穴遮蔽部を有するカートンの斜視図である。
【図11】手掛け穴遮蔽部の拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0013】
なお、本発明は、本願の発明者によって解明された新たな事実であり、被梱包物を梱包体内に充填する際にその被梱包物がその梱包体の内側に誤って形成されてしまった不要な突出部と接触することによりその被梱包物が損傷を受けるという事実に基づくものである。
【0014】
図1は、本発明の実施例に係る被梱包物損傷推定装置の構成例100を示すブロック図である。
【0015】
被梱包物損傷推定装置100は、被梱包物を梱包体内に充填する際に発生するその被梱包物の損傷の有無をその被梱包物をその梱包体に充填した後に推定するための装置であって、制御部1、カット状態検知センサ2、及び推定結果出力装置3を有する。
【0016】
制御部1は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、NVRAM(Non-Volatile Random Access Memory)等を備えたコンピュータであって、例えば、損傷推定部10(詳細は後述する。)に対応するプログラムをROMに記憶しながら、その損傷推定部10に対応する処理をCPUに実行させる。
【0017】
カット状態検知センサ2は、梱包体を構成する面部材の所定位置に形成された切り込み構造であるカット部(詳細は後述される。)の状態を検知するためのセンサであり、例えば、カット部が存在するはずの面部材上の所定領域を走査し、そのカット部の状態に応じて変化する物理量を測定するセンサであって、可視光線、赤外線、電磁波又は超音波等を用いてその領域にある物体との間の距離を測定するセンサ、又は、梱包体内の被梱包物(特に金属である。)の接近に応じて変化する静電容量や渦電流を測定する近接センサ等がある。
【0018】
また、カット状態検知センサ2は、カット部が存在するはずの面部材上の所定領域を撮像する画像センサであってもよい。
【0019】
推定結果出力装置3は、被梱包物の損傷の有無の推定結果を出力するための装置であり、例えば、被梱包物の損傷が発生しているおそれがあることを通知する音声メッセージを出力するスピーカ、被梱包物の損傷が発生しているおそれがあることを通知するテキストメッセージを表示するディスプレイ等がある。
【0020】
制御部1は、損傷推定部10により、カット状態検知センサ2が出力する測定値に基づいて被梱包物の損傷の有無を推定しその推定結果を示す制御信号を推定結果出力装置3に対して出力する。
【0021】
本実施例において、被梱包物損傷推定装置100は、例えば、飲料等の液体が入った缶、瓶、ペットボトル等の複数の容器を一纏めにしたもの(以下、「マルチパック」とする。)を梱包するための梱包体(例えば、段ボールやプラスチックでできたカートンである。)におけるカット部の状態に基づいて、そのマルチパックの損傷の有無を推定する。
【0022】
図2は、梱包体の一例であるカートン20の展開図であり、組み立てられた場合に直方体となるカートン20の内側面を示す。また、図3は、組み立てられた状態のカートン20の斜視図である。
【0023】
カートン20は、350ミリリットルの飲料缶を24本梱包するための梱包体であり、前面左サイドフラップ21F、後面左サイドフラップ21R(以下、前後を区別しない場合には集合的に「左サイドフラップ21」とする。ボトムフラップ22、右サイドフラップ23、トップフラップ24についても同様である。なお、本実施例において、前面は、梱包体の六面のうち被梱包物が充填される側の面を表すものとし、内側面は、梱包体が組み立てられたときに梱包体の内部を向く面を表すものとする。)、前面ボトムフラップ22F、後面ボトムフラップ22R、前面右サイドフラップ23F、後面右サイドフラップ23R、前面トップフラップ24F、後面トップフラップ24R、シームフラップ25、並びに、頂部面部材30、右側部面部材31、底部面部材32、及び左側部面部材33を有する。
【0024】
また、カートン20は、左サイドフラップ21、右サイドフラップ23、右側部面部材31、及び左側部面部材33の内側面のそれぞれにライナーカット40及び誘導カット41を有し、右側部面部材31及び左側部面部材33の内側面のそれぞれにHカット42を有する。
【0025】
ライナーカット40、誘導カット41、及びHカット42は何れも、カートン20を開梱する際に利用される切り込み構造であり、ライナーカット40は、カートン20の内側面のみに形成されているが、誘導カット41及びHカット42は、カートン20の内側面から外側面に貫通するように形成されている。
【0026】
図3(A)で示される組み立て後のカートン20は、図3(B)で示されるように、右側部面部材31及び左側部面部材33(不可視)に形成されたHカット42をライナーカット40及び誘導カット41に沿って外側に引き剥がすことによって、上部構造(左サイドフラップ21の上半分、右サイドフラップ23の上半分、トップフラップ24、頂部面部材30、右側部面部材31の上半分、及び左側部面部材33の上半分で構成される構造である。)と下部構造(左サイドフラップ21の下半分、右サイドフラップ23の下半分、ボトムフラップ22、底部面部材32、右側部面部材31の下半分、及び左側部面部材33の下半分で構成される構造である。)とに分断される。
【0027】
また、本実施例において、被梱包物損傷推定装置100は、被梱包物を自動的に梱包体に充填し且つ梱包するための自動充填・梱包システム(ケーサー)に併置される装置であり、例えば、被梱包物が梱包体内に充填された後の段階においてコンベア上を搬送されるその梱包体におけるカット部の状態に基づいて、そのマルチパックの損傷の有無を推定する。
【0028】
図4は、カートン20とそのカートン20に充填されるマルチパック60との間の関係を概略的に示す図であり、マルチパック60は、プッシャー(図示せず。)により矢印AR1で示される充填方向に押し込まれて自動的にカートン20内に充填される。
【0029】
本実施例において、カートン20は、矢印AR1で示される充填方向に平行に6缶、及びその充填方向に垂直に4缶の合計24缶が充填されるように、4個のマルチパック60を梱包する。
【0030】
また、マルチパック60は、充填方向の前後でそれぞれ2個の飲料缶61が露出するように、6個の飲料缶61を纏め部材としての包装用板紙(スリーブ)62で一纏めにする。
【0031】
Hカット42は、右側部面部材31及び左側部面部材33(不可視)の中央部に形成され、充填方向と同じ方向に引き剥がされる右Hカット部420R、及び充填方向とは逆の方向に引き剥がされる左Hカット部420Lをそれぞれ有する。
【0032】
図5は、右側部面部材31上に形成されたHカット42の拡大平面図であり、右Hカット部420R及び左Hカット部420Lは、開梱のために利用されるまでは図中の破線円で示される切り込みが入れられていない部分(以下、この部分を「未切り込み部」とする。)において右側部面部材31に接続されたままの状態(以下、「正常状態」とする。)にあり、右Hカット部420R及び左Hカット部420Lのそれぞれの表面(内側面及び外側面)と右側部面部材31の表面(内側面及び外側面)とが表裏のそれぞれで同一平面を形成する。左側部面部材33上に形成されたHカット42についても同様である。
【0033】
なお、未切り込み部は、カートン20を作業者が開梱する際に指で内側に押し込まれることによって容易に破られるように形成されている。
【0034】
この構成により、Hカット42は、原則的には、右側部面部材31の内側面よりもカートン20の内側に突出することはなく、マルチパック60が右側部面部材31の内側面に沿ってカートン20内に押し込まれる場合であっても、スリーブ62と接触してスリーブ62を破損するようなことはない。
【0035】
但し、マルチパック60がカートン20内に押し込まれる前にHカット42が外部からの衝撃を受ける等の理由によって、Hカット42の右Hカット部420Rの端部が右側部面部材31の内側面よりもカートン20の内側に突出する場合、右Hカット部420Rは、マルチパック60のスリーブ62と接触し、スリーブ62を破損する場合がある。
【0036】
Hカット42の右Hカット部420Rは、その端部を充填方向とは逆の方向に延ばし、プッシャーによって押し込まれるマルチパック60におけるスリーブ62の端部と接触した場合に、マルチパック60(スリーブ62)の充填方向への移動を妨げる力を発生させるからである。
【0037】
この場合、スリーブ62と接触したHカット42の右Hカット部420Rは、関連する未切り込み部が破られて右側部面部材31から切り離され、場合によっては、充填方向に押し込まれるマルチパック60によって内側に折り込まれそのまま充填方向に引き込まれることとなる。
【0038】
なお、Hカット42の左Hカット部420Lは、その端部を充填方向と同じ方向に延ばすので、プッシャーによってカートン20内に押し込まれるマルチパック60におけるスリーブ62の端部と接触した場合であっても、マルチパック60(スリーブ62)の充填方向への移動を妨げる力が右Hカット部420Rの場合に比べて小さく、スリーブ62を破損する可能性は比較的低いものとなる。
【0039】
図6は、スリーブ62と接触した後のHカット42の状態を示す図であり、図6(A)は、関連する未切り込み部が破られて右側部面部材31から切り離された状態(以下、「切離状態」とする。)の右Hカット部420Rを示し、図6(B)は、充填方向に押し込まれるマルチパック60によって内側に折り込まれそのまま充填方向に引き込まれた状態(以下、「折れ込み状態」とする。)の右Hカット部420Rを示す。
【0040】
図7は、コンベア50上を搬送されるカートン20とカット状態検知センサ2との間の位置関係を説明するための図である。なお、カートン20は、24個の飲料缶61を既に梱包しているものとする。
【0041】
本実施例において、カット状態検知センサ2R、2Lはそれぞれ、可視光線(波長:650nm)LBを用いた反射型の距離センサ(例えば、キーエンス社製CMOSレーザセンサGV−H130である。)であり、コンベア50の両脇に固定的に設置され、コンベア50上を矢印AR2の方向に搬送されるカートン20の右側部面部材31及び左側部面部材33のそれぞれに可視光線LBを照射して右側部面部材31及び左側部面部材33の外側面のそれぞれからの反射光を受けカートン20までの距離を測定する。なお、距離センサは、画像センサ等に比べ、カートン20の表面の色やデザインが変更された場合であっても、それらの変更による影響を受けにくく安定的な測定が可能である点で好適である。
【0042】
また、カット状態検知センサ2R、2Lのそれぞれは、カートン20が矢印AR2の方向に搬送されるにつれて、右Hカット部420R及び左Hカット部420Lを順番に走査するように、その設置高さが決定されている。
【0043】
なお、カット状態検知センサ2R、2Lのそれぞれは、カートン20よりもその高さが大きな別のカートン(例えば、500ミリリットルの飲料缶が梱包されるカートンである。)がコンベア50上を搬送される場合であってもカートン20の場合と同様にその別のカートンの右Hカット部及び左Hカット部を順番に走査できるように、カートン20のHカット42が通過する高さ部分とその別のカートンのHカットが通過する高さ部分とが重複する高さ部分にその可視光線を照射するよう、その設置高さが決定されてもよい。
【0044】
更に、カット状態検知センサ2R、2Lのそれぞれは、様々な高さを有する複数のカートンのそれぞれの右Hカット部及び左Hカット部を順番に走査できるように、異なる高さに複数設置されていてもよく、コンベア50上を搬送されるカートンの高さに応じてその設置高さが動的に変更されてもよい。
【0045】
次に、図8を参照しながら、被梱包物損傷推定装置100の制御部1が有する損傷推定部10の詳細について説明する。
【0046】
なお、図8(A)〜図8(C)のそれぞれは、図5、図6(A)及び図6(B)のそれぞれで示されたHカット42を、カット状態検知センサ2が図の一点鎖線に沿って右側から左側に走査したときの測定値の推移を示す図である。
【0047】
走査経路(走査高さ)は、図8(A)から図8(C)を通じて同じであり、右Hカット部420R、左Hカット部420Lの順番で、それぞれの表面を走査する。
【0048】
また、測定値の推移は、カット状態検知センサ2とカートン20との間の距離を縦軸に配し時間を横軸に配するチャートで示され、図8(B)及び図8(C)には正常時の測定値の推移(図8(A)の測定値の推移である。)が比較のために点線で示されるものとする。
【0049】
図8(A)は、Hカット42が正常状態にある場合の測定値の推移を示し、カット状態検知センサ2と右Hカット部420R及び左Hカット部420Lの表面との間の距離を示す基準レベルL1が形成される状態を示す。
【0050】
基準レベルL1の値は、カット状態検知センサ2とコンベア50との間の相対位置関係によって決まる値であり、例えば、制御部1のROMやNVRAMに予め記憶されている。
【0051】
制御部1の損傷推定部10は、被梱包物の損傷の有無を推定するための手段であり、例えば、カット状態検知センサ2がカートン20における右側部面部材31及び左側部面部材33の表面のそれぞれを走査するときに取得する測定値の推移をRAM等に記録し、その記録した測定値の推移パターンに基づいて被梱包物の損傷の有無を推定する。
【0052】
具体的には、損傷推定部10は、カット状態検知センサ2と右Hカット部420Rの表面との間の距離として測定される値が基準レベルL1から所定の閾値を超えて逸脱した場合に、マルチパック60のスリーブ62に損傷が発生しているものと推定する。
【0053】
図8(B)は、右Hカット部420Rが切離状態となっている場合の測定値の推移を示し、カット状態検知センサ2の照射する可視光線LBが右Hカット部420Rの表面で反射される代わりに、カートン20内に梱包された飲料缶61の表面で反射され、カット状態検知センサ2と右Hカット部420Rの表面との間の距離として測定される値の一部が基準レベルL1から逸脱する状態を示す。
【0054】
また、図8(C)は、右Hカット部420Rが折れ込み状態となっている場合の測定値の推移を示し、図8(B)で示される測定値の推移と同様に、カット状態検知センサ2の照射する可視光線LBが右Hカット部420Rの表面で反射される代わりに、カートン20内に梱包された飲料缶61の表面で反射され、カット状態検知センサ2と右Hカット部420Rの表面との間の距離として測定される値の一部が、図8(B)における逸脱よりも長い時間範囲にわたって、基準レベルL1から逸脱する状態を示す。
【0055】
損傷推定部10は、上述のようにカット状態検知センサ2の測定値が基準レベルL1から逸脱した場合に、マルチパック60のスリーブ62に損傷が発生しているものと推定する。
【0056】
なお、本実施例において、被梱包物損傷推定装置100は、カット状態検知センサ2の前を通過するカートン20の有無にかかわらずカット状態検知センサ2を継続的に動作させ(カット状態検知センサ2から継続的に可視光線LBを照射させ)、カット状態検知センサ2の前にカートン20が存在しない場合のカット状態検知センサ2の測定値とカット状態検知センサ2の前にカートン20が存在している場合のカット状態検知センサ2の測定値との間の顕著な差を用いながら、カット状態検知センサ2の前を通過する複数のカートン20のそれぞれに関する測定値の推移を区別可能に記録する。
【0057】
但し、被梱包物損傷推定装置100は、カートン20がカット状態検知センサ2の上流にあるコンベア50上の所定地点を通過したことを通過センサ(図示せず。例えば、別の光学センサである。)が検知した場合にそのカートン20に関するカット状態検知センサ2の測定値の記録を開始し、所定時間(例えば、カートン20がカット状態検知センサ2の前を通過するのに要する時間、或いは、右Hカット部420Rがカット状態検知センサ2の前を通過するのに要する時間である。)の経過後にその記録を終了させるようにして、カット状態検知センサ2の前を通過する複数のカートン20のそれぞれに関する測定値の推移を区別可能に記録するようにしてもよい。この場合、カット状態検知センサ2は、その通過センサがカートン20の通過を検知した場合に、可視光線LBの照射を開始し、所定時間の経過後にその照射を終了させるようにしてもよい。
【0058】
次に、図9を参照しながら、被梱包物損傷推定装置100が被梱包物の損傷の有無を推定する処理(以下、「被梱包物損傷推定処理」とする。)について説明する。なお、図9は、被梱包物損傷推定処理の流れを示すフローチャートであり、被梱包物損傷推定装置100は、自動充填・梱包システム(ケーサー)が動作している間、繰り返しこの処理を実行するものとする。
【0059】
最初に、制御部1の損傷推定部10は、カット状態検知センサ2の出力に基づいて、コンベア50上を搬送されるカートン20がカット状態検知センサ2の前(カット状態検知センサ2が照射する可視光線LBが当たる地点)に到達したか否かを判定する(ステップS1)。
【0060】
カートン20がカット状態検知センサ2の前に到達していないと判定した場合(ステップS1のNO)、損傷推定部10は、カートン20がカット状態検知センサ2の前に到達するまでカット状態検知センサ2の測定値の監視を継続させる。
【0061】
カートン20がカット状態検知センサ2の前に到達したと判定した場合(ステップS1のYES)、損傷推定部10は、カット状態検知センサ2が出力する測定値のRAMへの記録を開始する(ステップS2)。
【0062】
具体的には、損傷推定部10は、カット状態検知センサ2の測定値が検出不能の状態から検出範囲(例えば、最大検出距離が130mmである。)内の値となった場合に、カット状態検知センサ2の前にカートン20が到達したものと判定する。
【0063】
なお、損傷推定部10は、カット状態検知センサ2の上流にあるコンベア50上の所定地点にカートン20が到達したことを通過センサにより検知した場合に、カートン20がカット状態検知センサ2の前に到達すると判定し、カット状態検知センサ2の測定値のRAMへの記録を開始するようにしてもよい。
【0064】
カット状態検知センサ2が出力する測定値の記録を開始した後、損傷推定部10は、所定時間(例えば、カートン20がカット状態検知センサ2の前を通過するのに要する時間であり、カートン20の搬送速度に基づいて予め決定される値である。)の経過を監視し(ステップS3)、その所定時間が経過するまで(ステップS3のNO)その記録を継続させる。
【0065】
所定時間が経過した場合(ステップS3のYES)、損傷推定部10は、カット状態検知センサ2が出力する測定値の記録を終了させる(ステップS4)。
【0066】
その後、損傷推定部10は、RAMに記録した測定値の推移を読み出し、その測定値の推移が所定の推移パターンから逸脱していないか否かを判定する(ステップS5)。
【0067】
具体的には、損傷推定部10は、NVRAM等に記憶された、カット状態検知センサ2と右Hカット部420Rの表面との間の距離を示す基準レベルL1の値を読み出し、RAMに記録した測定値の推移のうち、右Hカット部420Rに対応する部分(特に、右Hカット部420Rと左Hカット部420Lとの間の境界に近い部分である。)における瞬間値のそれぞれと、基準レベルL1の値とを比較する。
【0068】
そして、損傷推定部10は、それら瞬間値の一部又は全部が、基準レベルL1の値から逸脱したことを検知した場合(例えば、基準レベルL1の値に対する比率が所定値以上若しくは所定値以下となった場合、或いは、基準レベルL1の値から上下に所定値以上離れた場合)、マルチパック60がカートン20内に充填される際にマルチパック60のスリーブ62が右Hカット部420Rの端部と接触して損傷を受けたおそれがあるものと推定する。
【0069】
なお、損傷推定部10は、それら瞬間値のそれぞれと基準レベルL1の値とを比較する代わりに或いはその比較に加えて、それら瞬間値に基づいて導き出される統計値(例えば、右Hカット部420Rに対応する部分における測定値の平均値である。)と基準レベルL1の値とを比較することによって、スリーブ62の損傷の有無を推定するようにしてもよい。
【0070】
その測定値の推移が所定の推移パターンから逸脱したと判定した場合(ステップS5のYES)、損傷推定部10は、推定結果出力装置3に対して制御信号を送信し、自動充填・梱包システム(ケーサー)を管理する作業者に対して音声メッセージやテキストメッセージを出力させて、そのカートン20内に充填されたマルチパック60のスリーブ62に損傷が発生しているおそれがあることをその作業者に通知する(ステップS6)。なお、損傷推定部10は、スリーブ62に損傷が発生しているおそれがあることを自動充填・梱包システム(ケーサー)及びコンベア50に通知し、自動充填・梱包システム(ケーサー)及びコンベア50を自動的に停止させて、その作業者がそのマルチパック60を充填したカートン20を排除できるようにしてもよく、或いは、自動充填・梱包システム(ケーサー)及びコンベア50を停止させることなく、コンベア50上を搬送されるカートン20をコンベア50上の通常の経路から押し出すための不良品排除装置(図示せず。)を用いてそのカートン20を自動的に排除するようにしてもよい。
【0071】
一方、その測定値の推移が所定の推移パターンから逸脱していないと判定した場合(ステップS5のNO)、損傷推定部10は、そのスリーブ62には損傷が存在しないとして、その作業者に推定結果を通知することなく、この被梱包物損傷推定処理を終了させるようにする。
【0072】
以上の構成により、被梱包物損傷推定装置100は、マルチパック60をカートン20内に充填する際にマルチパック60のスリーブ62がカートン20のHカット42(特に、右Hカット部420Rである。)と接触することによって発生するそのスリーブ62の損傷の有無を、そのマルチパック60をそのカートン20内に充填した後に、その損傷を直接的に検知することなく、そのHカット42の状態に基づいて推定することができる。
【0073】
次に、図10及び図11を参照しながら、被梱包物損傷推定装置100の監視対象であるHカット部42とは別の監視対象について説明する。なお、図10は、被梱包物損傷推定装置100の別の監視対象である手掛け穴遮蔽部70を有するカートン20Aの斜視図であり、図11は、カートン20Aの右側部面部材31上に形成された手掛け穴遮蔽部70の拡大平面図である。
【0074】
手掛け穴遮蔽部70は、作業者がカートン20Aを持ち上げて運搬する際に利用される手掛け穴を形成するための切り込み構造であり、例えば、右側部面部材31及び左側部面部材33(不可視)の中央部に形成され、充填方向と同じ方向に延びる右湾曲部700R、及び充填方向とは逆の方向に延びる左湾曲部700Lをそれぞれ有する。
【0075】
また、手掛け穴遮蔽部70は、運搬のために利用されるまでは図中の破線円で示される切り込みが入れられていない部分(以下、この部分を「未切り込み部」とする。)において右側部面部材31に接続されたままの状態(以下、「正常状態」とする。)にあり(図11(A)参照。)、手掛け穴遮蔽部70の表面(内側面及び外側面)と右側部面部材31の表面(内側面及び外側面)とが同一平面を形成するよう構成される。左側部面部材33上に形成された手掛け穴遮蔽部70についても同様である。
【0076】
なお、手掛け穴遮蔽部70の未切り込み部は、作業者がカートン20Aを運搬するために手掛け穴を利用する際に手掛け穴遮蔽部70が指で内側に押し込まれることによって容易に破られるように形成されている。
【0077】
この構成により、手掛け穴遮蔽部70は、原則的には、右側部面部材31の内側面よりもカートン20Aの内側に突出するようなことはなく、マルチパック60がカートン20A内に押し込まれる場合であっても、スリーブ62と接触してスリーブ62を破損することはない。
【0078】
但し、マルチパック60がカートン20A内に押し込まれる前に手掛け穴遮蔽部70が外部からの衝撃を受ける等の理由によって、手掛け穴遮蔽部70の左湾曲部700Lの端部が右側部面部材31の内側面よりもカートン20Aの内側に突出する場合、左湾曲部700Lは、マルチパック60のスリーブ62と接触し、スリーブ62を破損する場合がある。なお、この場合、スリーブ62と接触した左湾曲部700Lは、関連する未切り込み部が破られて右側部面部材31から切り離され、場合によっては、充填方向に押し込まれるマルチパック60によって内側に折り込まれそのまま充填方向に引き込まれることとなる。
【0079】
図11(B)及び図11(C)は、スリーブ62と接触した後の手掛け穴遮蔽部70の状態を示す図であり、図11(B)は、関連する未切り込み部が破られて右側部面部材31から切り離された状態(以下、「切離状態」とする。)の左湾曲部700Lを示し、図11(C)は、充填方向に押し込まれるマルチパック60によって内側に折り込まれそのまま充填方向に引き込まれた状態(以下、「折れ込み状態」とする。)の左湾曲部700Lを示す。
【0080】
損傷推定部10は、Hカット42の場合と同様に、カット状態検知センサ2の測定値が所定の基準レベルから逸脱した場合に、マルチパック60のスリーブ62に損傷が発生したものと推定する。
【0081】
以上の構成により、被梱包物損傷推定装置100は、マルチパック60をカートン20A内に充填する際にマルチパック60のスリーブ62がカートン20Aの手掛け穴遮蔽部70(特に、左湾曲部700Lである。)と接触することによって発生するそのスリーブ62の損傷の有無を、そのマルチパック60をそのカートン20A内に充填した後に、その手掛け穴遮蔽部70の状態に基づいて推定することができる。
【0082】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0083】
例えば、上述の実施例において、被梱包物損傷推定装置100は、コンベア50上を搬送されるカートン20の表面を固定式のカット状態検知センサ2で走査することによって被梱包物の損傷の有無を推定するが、静止したカートン20の表面を可動式のカット状態検知センサ2(例えば、水平に延びるレール上を移動するセンサである。)で走査することによって被梱包物の損傷の有無を推定するようにしてもよい。
【0084】
また、上述の実施例において、被梱包物損傷推定装置100は、マルチパック60のスリーブ62の損傷の有無を推定するが、他の部材(複数の被梱包物を一纏めにする他の部材、及び個々の被梱包物を形成する部材を含む。)の損傷の有無を推定するようにしてもよい。
【0085】
また、上述の実施例において、被梱包物損傷推定装置100は、カット状態検知センサ2として距離センサを採用するが、近接(金属探知)センサや画像センサ等の他のセンサを採用するようにしてもよい。なお、被梱包物損傷推定装置100は、カット状態検知センサ2として画像センサを採用する場合には、パターンマッチング技術を用いてHカット42や手掛け穴遮蔽部70の状態を判定し、その判定結果に基づいて被梱包物の損傷の有無を推定するようにしてもよい。
【0086】
また、上述の実施例において、被梱包物損傷推定装置100は、右側部面部材31及び左側部面部材33上に形成された切り込み構造の状態に基づいて被梱包物の損傷の有無を推定するが、頂部面部材30又は底部面部材32上に形成された切り込み構造の状態に基づいて被梱包物の損傷の有無を推定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 制御部
2 カット状態検知センサ
3 推定結果出力装置
10 損傷推定部
20 カートン
21 左サイドフラップ
22 ボトムフラップ
23 右サイドフラップ
24 トップフラップ
25 シームフラップ
30 頂部面部材
31 右側部面部材
32 底部面部材
33 左側部面部材
40 ライナーカット
41 誘導カット
42 Hカット
420L 左Hカット部
420R 右Hカット部
50 コンベア
60 マルチパック
61 飲料缶
62 スリーブ
70 手掛け穴遮蔽部
700L 左湾曲部
700R 右湾曲部
100 被梱包物損傷推定装

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被梱包物を梱包体内に充填する際に該被梱包物が該梱包体の内側の突出部と接触することにより発生する該被梱包物の損傷の有無を、該被梱包物を該梱包体に充填した後に推定する被梱包物損傷推定装置であって、
前記梱包体を構成する複数の面部材群のうち充填方向に延びる面部材の所定位置に形成される、前記梱包体の内側の突出部となり得るカット部の状態を検知するカット状態検知部と、
前記カット状態検知部が検知した前記カット部の状態に基づいて前記被梱包物の損傷の有無を推定する損傷推定部と、
を有することを特徴とする被梱包物損傷推定装置。
【請求項2】
前記被梱包物の損傷は、複数の被梱包物を一纏めにする纏め部材の損傷を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の被梱包物損傷推定装置。
【請求項3】
前記カット部は、前記梱包体の開梱又は運搬を補助するためのカット部を含む、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の被梱包物損傷推定装置。
【請求項4】
被梱包物を梱包体内に充填する際に該被梱包物が該梱包体の内側の突出部と接触することにより発生する該被梱包物の損傷の有無を、該被梱包物を該梱包体に充填した後に推定する被梱包物損傷推定方法であって、
前記梱包体を構成する複数の面部材群のうち充填方向に延びる面部材の所定位置に形成される、前記梱包体の内側の突出部となり得るカット部の状態を検知するカット状態検知ステップと、
前記カット状態検知ステップにおいて検知された前記カット部の状態に基づいて前記被梱包物の損傷の有無を推定する損傷推定ステップと、
を有することを特徴とする被梱包物損傷推定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−240979(P2011−240979A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116555(P2010−116555)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(303040183)サッポロビール株式会社 (150)