説明

被測定溶液のpHを測定するための測定デバイス

【課題】被測定溶液のpHを測定するための測定デバイスを提供する。
【解決手段】測定されるべき溶液のpHを測定するための測定デバイス(1)であって、基準電池(2)であって、電解質溶液が充填されるタンク(20)と、タンク(20)の中に浸される、白金めっきされた白金基準電極(21)とを含む基準電池(2)と、測定電池(4)であって、被測定溶液中に浸されるべき、白金めっきされた白金測定電極(41)を含む測定電池(4)とを備え、また、測定デバイス(1)が、基準電池(2)と測定電池(4)との中の同じ温度を保証するための温度調整器(R)と、基準電池(2)と測定電池(4)との中の同じ水素分圧を保証するための分圧調整器(RPP)も備える測定デバイス(1)に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液のpHを測定する技術分野に関する。より詳細には、本発明は、例えば原子力発電所のための、液体の水の安定性の範囲全体にわたるpH測定デバイスの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
pHは、溶液中の水素イオンHの活性度を測定し、とりわけこれらのイオンが水とオキソニウム・イオンH(また、ヒドロニウムとも呼ばれる)を形成する水溶液中の水素イオンHの活性度を測定する。pHは溶液の酸性度を反映している。例えば、25℃の水性媒体中では、7のpHは中性と呼ばれており、7を超えるpHは塩基性と呼ばれており、また、7未満のpHは酸性と呼ばれている。
【0003】
酸性度は、金属腐食機構を考慮する際のパラメータであり、また、とりわけ産業プラントのための金属ダクト内における金属腐食機構を考慮する際のパラメータであるため、pHを知ることにより、これらのダクトの腐食を制御することができる。
【0004】
また、酸性度は、水溶液中の化学種の溶解度を考慮する際のパラメータでもある。したがって、pHを知ることにより、表面上への化学化合物の堆積であって、特定のpHでのこれらの化合物の結晶化による堆積を制御することができる。したがって、例えば、表面の汚れと蒸気発生器の詰まりとを防止することが可能である。
【0005】
最後に、特定の産業手順には限られたpH範囲内での操作が必要であり、また、したがってpHを測定する必要がある。
【0006】
最も広く使用されているpH測定デバイスはガラス膜に基づいている。これらの測定デバイスは100℃未満の温度でのみ動作する。
【0007】
他の測定デバイスは280℃まで動作することができる。これらのデバイスは、基準Ag/AgCl電極を一方では重合体電極ボディに結合し、他方ではpHが測定されるべき溶液中に浸される白金電極に結合する。AgCl塩の熱安定性と電極ボディを製造するために使用される重合体の融解温度とには、280℃の動作温度の制限が必要である。さらに、塩化物が存在する可能性がある場合、鉄をベースとする金属回路を損傷することがあり、また、銀が存在する可能性がある場合、核回路にとっては極端に有害である。
【0008】
280℃を超える測定のためのデバイスが存在している。例えば、酸化イットリウム−ジルコニウム膜デバイスは300℃を超えて動作する。しかし、酸化物中への酸素の拡散は温度と共に指数的に減少するため、それらを300℃未満にすることはできない。約300℃未満で信頼性の高い測定をするためには酸素の拡散が不十分である。また、これらの測定デバイスは、溶液のヒドロニウム・イオンの活性度を測定することもなく、そうではなくむしろ酸素の分圧を測定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の1つの目的は、上で示された従来技術の欠点のうちの少なくとも1つを克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的において、本発明は、被測定溶液のpHを測定するための測定デバイスであって、
− 基準電池であって、
− 電解質溶液が充填されるタンクと、
− タンクの中に浸される、白金めっきされた白金基準電極と
を含む基準電池と、
− 測定電池であって、
− 被測定溶液中に浸されるべき、白金めっきされた白金測定電極
を含む測定電池と
を備え、また、測定デバイスが、
− 基準電池と測定電池との中の同じ温度を保証するための温度調整器と、
− 基準電池と測定電池との中の同じ水素分圧を保証するための分圧調整器と、
− 基準電池と測定電池との中の同じ圧力を保証するための流体圧力調整器
も備えることを特徴とする測定デバイスを提供する。
【0011】
この測定デバイスの1つの利点は、使用可能温度範囲が280℃未満に限定されず、その一方でヒドロニウム・イオンの活性度の直接測定を許容することである。
【0012】
他のオプションの特徴と非制限の特徴とは、
− 温度調整器は、電解質溶液中に浸される基準温度計と、被測定溶液と接触して配置されるべき測定温度計と、基準温度計と測定温度計とによって測定される温度を比較するための温度比較器とを有している、
− また、温度調整器は、温度比較器によって実施される比較の結果に応じて電解質溶液または被測定溶液を加熱するための少なくとも1つの加熱器も有している、
− また、測定デバイスは、電解質溶液中の水素ガス入口と、被測定溶液中の水素ガス入口も有している、
− 分圧調整器は、それぞれ電解質溶液中と被測定溶液中との水素分圧が設定分圧より低くなると開くよう、水素ガス入口の各々の上に配置される弁を有している、
− また、分圧調整器は、弁の各々に対して、それぞれ電解質溶液中と被測定溶液中との水素分圧を設定分圧と比較し且つ比較の結果に応じて弁の開きを制御するための比較器も有している、
− 流体圧力調整器は、基準マノメータと、測定マノメータと、出口弁と、タンクの流体圧力を溶液の流体圧力と比較し且つ比較の結果に応じて出口弁を制御するための流体圧力比較器とを有している、および、
− また、測定デバイスは、基準電池と測定電池との中の同じイオン強度を保証するためのイオン強度調整器も有している、
である。
【0013】
他の目的、特徴および利点は、実例として与えられ、また、非制限の図面を参照した以下の詳細な説明を読めば明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明によるpH測定デバイスの実施形態の一例を概略的に示す図である。
【図2】図1の測定デバイスに使用される白金めっきされた白金電極を概略的に示す図である。
【図3a】電極が白金めっきされていない場合の白金電極によって測定される電位に対する流れの影響を示す図である。
【図3b】電極が白金めっきされている場合の白金電極によって測定される電位に対する流れの影響を示す図である。
【図4】図1の測定デバイスに使用される分圧調整器の実施形態の一例を示す図である。
【図5】図1の測定デバイスに使用されるイオン強度調整器の実施形態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の説明において、温度計は、温度を測定するための任意のデバイスを意味しており、また、マノメータは、圧力を測定するための任意のデバイスを意味している。
【0016】
pH測定デバイス
以下、図1を参照して、pHを知りたい被測定溶液のためのpH測定デバイスが詳細に説明される。
【0017】
測定デバイス1は、基準電池2と測定電池4とを備えている。
【0018】
基準電池2は、基準電極21と、電解質溶液が充填されたタンク20とを有しており、タンク20の中に基準電極21が浸される。タンク20は、タンクの内側の電解質溶液から被測定溶液への水素イオンの通過、およびその逆の被測定溶液からタンクの内側の電解質溶液への水素イオンの通過を可能にする絶縁微小多孔性酸化物でできた焼結フィルタ201をその末端に有している。
【0019】
焼結フィルタ201は、その大きさが15kDaから1500kDaまでである細孔を有することができる。使用されることができる材料は、二酸化ジルコニウム(ZrO)、二酸化チタン(TiO)、五酸化タンタル(Ta)、および五酸化ニオブ(NbO)とである。
【0020】
電解質溶液は、被測定溶液の性質に応じて調整される。
【0021】
基準電極21は、白金めっきされた白金電極であることが有利である。また、基準電池2は、電解質溶液が充填された貯蔵容器32と、電解質溶液を貯蔵容器32からタンク20へポンプ供給するための基準ポンプ31も有している。タンク20は適切な材料のタンクであり、例えば500℃と600℃との間の炉の中で、少なくとも48時間の間、空気の下で予め酸化されたジルコニウムZr、チタンTi、タンタルTaまたはニオブNbをベースとする合金のタンクである。
【0022】
また、測定電池4も、白金めっきされた白金電極であることが有利である測定電極41を有している。この測定電極41は、被測定溶液中に浸されるべきである。また、測定電池4も、被測定溶液が充填された貯蔵容器52と、溶液を貯蔵容器52から容器40の中へポンプ供給するためのポンプ51を有しており、容器40の中に測定電極41とタンク20とが浸される。また、容器40も、被測定溶液に対する腐食の観点から、ジルコニウムZr、チタンTi、タンタルTaまたはニオブNbあるいは任意の他の適切な金属材料をベースとする合金の容器であってもよい。
【0023】
基準電極21と測定電極41とは、タンク20内の基準溶液の基準電位Eと、容器40内の被測定溶液の測定電位Eとをそれぞれ測定するための電位差計22および42の役割を果たしている。これらの電極21と41とは、微小多孔性白金(microporous platinum)である、白金黒(platinum black)とも呼ばれる白金めっきされた白金でできている。微小多孔性白金は、所与の流れから電極の周りに生じる流れに無関係の電位測値の獲得を可能にする。
【0024】
図3aでは、電極が単純に白金でできている場合、測定される電位が電極の周りの流体の流れに依存する範囲が存在することが分かる。一方、図3bが示しているように、電極が白金めっきされた白金できている場合、測定される電位は、所与の流れを越えると一定である。
【0025】
また、測定デバイス1は、タンク20内と容器40内との概ね全く同じ温度を保証するための温度調整器Rも有している。
【0026】
温度調整器Rは、電解質が充填されたタンク20の中に浸された基準温度計23と、容器40内の被測定溶液と接触して配置されるべき測定温度計43と、温度比較器24とを有している。温度比較器24は、基準温度計と測定温度計23、43とによって測定される温度T、Tを比較する。
【0027】
したがって、温度TとTとは直接測定される。
【0028】
温度計23および43の各々と、電極21および41の各々とは、相俟ってオン・オンリー・エレメント(on only element)を形成することができる(図2参照)。この場合、電極21または41は、気密方式でその末端211e、411eで閉じられ、かつ、この末端に白金黒212、412が電気化学的にコーティングされた白金のシース(sheath)211、411によって形成される。工業白金抵抗温度計(industrial platinum resistance thermometer)213、413は、シース211、411の内側に配置されている。したがって、単一の部品が、温度を測定する機能と電位を測定する機能との二重の機能を有している。
【0029】
また、温度調整器Rは、温度比較器24によって制御される、温度比較器24によって実施される比較の結果に応じて基準電池2または測定電池4を加熱するための少なくとも1つの加熱器25、45も有している。
【0030】
加熱器は、基準電池2を取り囲んでいる第1の炉25と、被測定溶液が充填された、その中に測定電極41が浸される容器40を取り囲んでいる第2の炉45との2つの炉から構成されてもよい。
【0031】
この後者の場合、温度比較器24は第1の炉25を制御する。もう1つの温度比較器44が提供されており、かつ、測定温度計43によって測定される温度Tを設定温度Tと比較している。この温度比較器44は、溶液が充填された容器40を取り囲んでいる炉45を制御し、概ね設定温度Tに等しくなるよう、被測定溶液中で優勢な温度の制御を可能にしている。また、これは、タンク20の温度Tが溶液の温度Tに概ね等しくなり、したがって設定温度Tに概ね等しくなるよう、間接的に、温度比較器24を介してタンク20の温度Tの制御も可能にしている。
【0032】
また、測定デバイス1は、基準電池2のタンク20内への水素ガスのための入口36と、被測定溶液中への水素ガスのための入口56も有しており、いずれの場合も、事によるとタンク20の側の電解質溶液貯蔵容器32と、測定側の被測定溶液の貯蔵容器52とを介している。
【0033】
また、測定デバイス1は、基準電池2の側と測定電池4の側との水素分圧であって、適用可能である場合、貯蔵容器32内と52内との概ね全く同じ水素分圧を保証するための分圧調整器RPPも有している。
【0034】
分圧調整器RPPは、それぞれタンク20の側と被測定溶液の側との水素分圧が設定分圧Pより低くなると開くよう、水素ガス入口36、56の各々の上に配置される弁35、55を有していてもよい。
【0035】
また、分圧調整器RPPは、弁35、55の各々に対して、比較器34、54も有している。比較器34は、タンク20の側の部分水素圧力Pを設定分圧Pと比較し、かつ、比較の結果に応じて弁35の開きを制御する。それと同時に、比較器54は、溶液の側の部分水素圧力Pを設定分圧Pと比較し、かつ、比較の結果に応じて弁55の開きを制御する。
【0036】
部分水素圧力PまたはPが設定分圧Pより低い場合、対応する比較器34、54が対応する弁35、55を開く(それが閉じられている場合)か、あるいはその開きを大きくする(弁がグラデュアルであり、また、バイナリではない場合)。逆の場合、比較器34または54は、電解質溶液の貯蔵容器32内または被測定溶液の貯蔵容器52内への水素の流入を遮断するために弁35または55を閉じるか、あるいは弁35または55の開きを小さくして水素の流入を制限する。
【0037】
図4によって示されている変形態様では、分圧調整器RPPは、それぞれ電解質溶液と被測定溶液との貯蔵容器32と52とのヘッドスペース(headspace)を接続している管−液柱アセンブリ(pipe-liquid column assembly)であってもよい。水素は、貯蔵容器32と52との中に含まれているそれぞれの溶液中に浸された管36と56とによって両方の貯蔵容器32、52の中に直接注入される。
【0038】
また、ガス出口37と57も、例えば、一方の末端がそれぞれの貯蔵容器32と52とのヘッドスペースに達している管の形態で提供されている。これらの管路のもう一方の末端は、両方の貯蔵容器32と52との中の同じ圧力を保証している(全く同じ液体高さによって)液柱CLに向かって導かれている。
【0039】
また、測定デバイス1は、タンク20と容器40との中の概ね全く同じ流体圧力を保証するための流体圧力調整器RPFも有している。
【0040】
流体圧力調整器RPFは、基準マノメータ62と、測定マノメータ64と、タンク20に接続された出口弁61と、タンク20の流体圧力を被測定溶液の流体圧力と比較し且つ比較の結果に応じてタンク20に接続されている出口弁61を制御するための流体圧力比較器63を有していてもよい。タンク20と容器40との中の同じ圧力は、焼結フィルタ201を介したタンク20と容器40との間の液体流によって誘導される、「フロー・ポテンシャル」と呼ばれる寄生電位を相殺する。
【0041】
基準マノメータ62は、基準ポンプ31の出口の圧力Pを測定し、また、測定マノメータ64は、測定電池4のポンプ51の出口の圧力Pを測定する。圧力Pが圧力Pより高い場合、流体圧力比較器63は、タンク20に結合されている出口弁61の開きを制御し、それによりタンク20内の圧力が降下する。逆の場合、流体圧力比較器63は、出口弁61の閉めを制御し、それにより基準ポンプ31による基準溶液の連続注入に続いて、タンク20内の圧力が高められる。
【0042】
また、流体圧力調整器RPFは、測定電池4のポンプ51の出口で測定された圧力Pを設定圧力Pと比較するための圧力比較器65も有していてもよい。この圧力比較器65は、比較の結果に応じて測定電池4のポンプ51を制御する。したがって、測定された圧力Pが設定圧力Pより低い場合、圧力比較器65は、測定電池4のポンプ51を制御してポンプ供給能力を大きくする。逆の場合、圧力比較器65は、測定電池4のポンプ51を制御してそのポンプ供給能力を小さくする。
【0043】
一般に、流体圧力調整器RPFは、タンク20と容器40との間の流体流を相殺するために、タンク20と容器50との内側の同じ圧力を保証する。
【0044】
したがって、変形態様では、圧力比較器63は基準ポンプ31を制御することができ、また、圧力比較器65は、容器40からの被測定溶液の排出を制御するために、容器40に接続されている出口弁46を制御することができる。
【0045】
他の変形態様では、流体圧力比較器63と圧力比較器65とは、タンク20と容器40とに接続されている出口弁61、46をそれぞれ制御する。
【0046】
さらに他の変形態様では、流体圧力比較器63と圧力比較器65とは、基準電池2と測定電池4とのポンプ31、51をそれぞれ制御する。上で説明されたような測定デバイス1には、基準電池2のための循環回路と測定電池4のための循環回路との2つの独立した循環回路が存在していることに留意されたい。したがって相互の化学汚染が防止される。
【0047】
使用される材料により、また、とりわけ2つの水素電極の使用により、測定デバイス1は、タンク20および/または貯蔵容器40内の圧力が考慮されている温度における飽和圧力より高い場合、液体水の温度範囲内、すなわち0℃と370℃との間での使用に限定されない。例えば、300℃では、水の飽和蒸気圧は約86バールである。したがってpH測定デバイスは86バールより高い圧力に対して動作することができる。さらに、溶液は、希釈または濃縮のいずれかがなされてもよく、それは、従来の発電所、または加圧水型原子炉と沸騰水型原子炉とにおける電気の生成、あるいは軍艦推進のための原子力発電所の冷却材回路における測定デバイス1の使用を可能にする。
【0048】
タンク20の基準溶液のイオン強度σは、被測定溶液中で溶解される、例えば塩化ナトリウムNaClまたは硝酸ナトリウムNaNOなどの塩を加えることにより、容器40の被測定溶液のイオン強度σに適応される。
【0049】
そのために、図5に示されている、上で説明された測定デバイス1と共に使用することができるイオン強度調整器Rσは、基準電池2と測定電池4との上流側の基準溶液と被測定溶液とのイオン強度σ、σをそれぞれ測定するためのイオン強度センサ71、72を有しており、イオン強度比較器73とポンプ74とは、溶液と塩との混合物を含んだ貯蔵容器75に結合されている。
【0050】
例えば、イオン強度センサ71と72とは、基準溶液の貯蔵容器32と被測定溶液の貯蔵容器52との中に直接配置される。
【0051】
有利には、溶液と塩との混合物の注入に対する対抗反作用ループ(counter-reaction loop)を許容するために、イオン強度センサ71と72とは、さらには、一方では基準電池2のタンク20とポンプ31との間に配置され、また、他方では測定電池4の容器40とポンプ51との間に配置されてもよい。
【0052】
より一層有利には、溶液と塩との混合物の注入に対する対抗反作用ループと、高圧力の領域を回避することとの両方を可能にするために、イオン強度センサ71と72とは、一方では基準電池2の基準貯蔵容器32とポンプ31との間に配置され、また、他方では測定電池4の測定貯蔵容器52とポンプ51との間に配置されてもよい。
【0053】
イオン強度センサ71と72とは、例えば、測定デバイス1の金属コンポーネントから電気的に隔離される、白金めっきされた白金線などの導電率メータ(conductivity meter)であってもよい。
【0054】
次に、イオン強度σ、σが、その出口が比較の結果に応じてポンプ74を制御するイオン強度比較器73によって比較される。
【0055】
第1の変形態様(図5に示されている)では、イオン強度調整器Rσのポンプ74は、溶液と塩の混合物の貯蔵容器75と、被測定溶液との間に配置されてもよく、例えば溶液(この溶液は基準溶液である)と貯蔵容器75の塩の混合物を基準溶液にもたらすために、基準電池2の貯蔵容器32とポンプ31との間に配置されてもよい。
【0056】
基準溶液中のイオン強度σが被測定溶液中のイオン強度σより小さい場合、ポンプ74が駆動される。逆の場合、濃度が濃すぎる基準溶液に水を注入しなければならない。
【0057】
他の変形態様では、イオン強度調整器Rσのポンプ74は、溶液(この溶液は被測定溶液である)と塩の混合物の貯蔵容器75と、被測定溶液との間に配置されてもよく、例えば溶液と貯蔵容器75の塩の混合物を被測定溶液にもたらすために、測定電池4の貯蔵容器52とポンプ51との間に配置されてもよい。
【0058】
さらに、基準溶液は、最初に基準溶液が測定されるべき溶液のイオン強度より大きいイオン強度を有するように準備され、また、被測定溶液のイオン強度値を基準溶液のイオン強度の値にする量の塩のみを被測定溶液中に注入するように準備される。
【0059】
被測定溶液中のイオン強度σが基準溶液中のイオン強度σより小さい場合、ポンプ74が駆動される。
【0060】
動作原理
測定デバイス1により、基準電極21によって測定される基準電位Eと測定電極41によって測定される測定電位Eとの間の電位差が測定されてもよく、したがってタンク20内の溶液と、pHを知りたい被測定溶液との間の電位差を知ることが可能である。
【0061】
測定デバイス1によって形成される蓄電池は、
Pt|H2(g)/H(aq)::H(aq)/H2(aq)|Pt
である。
【0062】
一般に、電位差ΔEは、次の関係によって与えられる。
【数1】

【0063】
上式で、R=8.314 472J・mol−1・K−1は理想ガス定数、F=9.65・10C・mol−1はファラデー定数、aH+(aq、M)は被測定溶液中の水素イオン活性度、aH+(aq、R)はタンク20内の水素活性度、PH2、Mは容器40内の被測定溶液中の水素Hの分圧(より正確には逃散度(fugacity))、PH2、Rはタンク20内の基準溶液中の水素Hの分圧(より正確には逃散度)、P=1バールは標準圧力、Eは焼結フィルタ201内の接合電位である。接合電位Eは測定可能ではなく、また、温度、圧力、濃度、イオン強度、およびタンク20と容器40との間の流れのかたより(deviation)に依存する。
【0064】
温度調整器Rが温度TとTとを同じ温度に維持すると仮定すると、上記の関係が単純化される。
【数2】

【0065】
上式で、Tは、温度TとTとの共通の値である。
【0066】
分圧調整器RPPは、タンク20内と被測定溶液中との部分水素圧力を同じ圧力に維持する。したがって次の単純化された関係が得られる。
【数3】

つまり
【数4】

であり、
【数5】

は、被測定溶液のpHであり、また、
【数6】

は、電解質溶液のpHである。
【0067】
接合電位Ejは測定されることはできないが、提案されている測定デバイス1は、温度のかたよりと(温度調整器Rによって)、圧力のかたよりと(流体圧力調整器RPFによって)、イオン強度のかたよりと(基準溶液中と被測定溶液中とへの塩の添加によって)の相殺によって接合電位Ejを最小化する。
【符号の説明】
【0068】
1 測定デバイス
2 基準電池
4 測定電池
20 タンク
21 基準電極
22、42 電位差計
23 基準温度計
24、44 温度比較器
25、45 加熱器(炉)
31 基準ポンプ
32、52、75 貯蔵容器
34、54 比較器
35、55 弁
36、56 水素ガス入口(管)
37、57 ガス出口
40 容器(貯蔵容器)
41 測定電極
43 測定温度計
46、61 出口弁
51、74 ポンプ
62 基準マノメータ
63 流体圧力比較器
64 測定マノメータ
65 圧力比較器
71、72 イオン強度センサ
73 イオン強度比較器
201 焼結フィルタ
211、411 シース
211e、411e シースの末端
212、412 白金黒
213、413 工業白金抵抗温度計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定溶液のpHを測定するための測定デバイス(1)であって、
− 基準電池(2)であって、
− 電解質溶液が充填されるタンク(20)と、
− 前記タンク(20)の中に浸される、白金めっきされた白金基準電極(21)と
を含む基準電池(2)と、
− 測定電池(4)であって、
− 前記被測定溶液中に浸されるべき、白金めっきされた白金測定電極(41)
を含む測定電池(4)と
を備え、また、前記測定デバイス(1)が、
− 前記基準電池(2)と前記測定電池(4)との中の同じ温度を保証するための温度調整器(R)と、
− 前記基準電池(2)と前記測定電池(4)との中の同じ水素分圧を保証するための分圧調整器(RPP)と、
− 前記基準電池と前記測定電池との中の同じ圧力を保証するための流体圧力調整器(RPF
も備えることを特徴とする測定デバイス(1)。
【請求項2】
前記温度調整器(R)が、前記電解質溶液中に浸される基準温度計(23)と、前記被測定溶液と接触して配置されるべき測定温度計(43)と、前記基準温度計と前記測定温度計(23、43)とによって測定される温度(T、T)を比較するための温度比較器(24)とを有する、請求項1に記載の測定デバイス(1)。
【請求項3】
また、前記温度調整器(R)が、前記温度比較器(24)によって実施される比較の結果に応じて前記電解質溶液または被測定溶液を加熱するための少なくとも1つの加熱器(25、45)も有する、請求項2に記載の測定デバイス(1)。
【請求項4】
前記電解質溶液中への水素ガスのための入口(36)、及び、前記被測定溶液中への水素ガスのための入口(56)も備える、請求項1に記載の測定デバイス(1)。
【請求項5】
前記分圧調整器(RPP)が、それぞれ前記電解質溶液中と前記被測定溶液中との水素分圧が設定分圧(P)より低くなると開くよう、前記水素ガスの入口(36、56)の各々の上に配置される弁(35、55)を有する、請求項4に記載の測定デバイス。
【請求項6】
前記分圧調整器(RPP)が、前記弁(35、55)の各々に対して、それぞれ前記電解質溶液中の水素分圧(PPR)と前記被測定溶液中の水素分圧(PPM)とを前記設定分圧(P)と比較し且つ比較の結果に応じて対応する弁(35、55)の開きを制御するための比較器(34、54)も有する、請求項5に記載の測定デバイス(1)。
【請求項7】
前記流体圧力調整器(RPF)が、基準マノメータ(62)と、測定マノメータ(64)と、出口弁(61)と、前記タンク(20)の流体圧力を前記被測定溶液の流体圧力と比較し且つ比較の結果に応じて前記出口弁(61)を制御するための流体圧力比較器(63)とを有する、請求項1に記載の測定デバイス(1)。
【請求項8】
前記基準電池(2)と前記測定電池(4)との中の同じイオン強度を保証するためのイオン強度調整器も備える、請求項1に記載の測定デバイス(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−108120(P2012−108120A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−234040(P2011−234040)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(510225292)コミサリア ア レネルジー アトミック エ オ ゼネルジー アルテルナティブ (97)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
【住所又は居所原語表記】Batiment Le Ponant D,25 rue Leblanc,F−75015 Paris, FRANCE