説明

被穿孔部材の穿孔方法

【課題】樹脂、木材または金属などにより形成された被穿孔部材の孔にバリが生じないようにする。
【解決手段】所定の大きさの孔13の径よりも小さい径のエンドミル2を用い、そのエンドミル2を軸方向に動かしながらその先端に有する刃16で所定の大きさの孔13の径よりも小さい径の仮孔18を被穿孔部材4に穿孔した後、その仮孔18の内面22をエンドミル2の側面に有する刃21で切削することにより、仮孔18が被穿孔部材4に穿孔されたときに生じたバリ20を削り取るようにして、仮孔18を、所定の大きさの孔13に加工する。このようにすれば、エンドミル2を軸方向に動かしながら仮孔18を被穿孔部材4に穿孔するので、仮孔18が被穿孔部材4に穿孔された段階では、被穿孔部材4にバリ20が生じるが、その仮孔18の内面22をエンドミル2の側面の刃21で切削することにより、バリ20を削り取ることができる。このため、被穿孔部材4の孔13にバリ20を生じさせないようにすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、樹脂、木材または金属などにより形成された被穿孔部材をエンドミルで穿孔する穿孔方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂、木材または金属などに孔を穿孔する場合、一般に、ドリルやホルソーが用いられる(例えば、特許文献1)。
【0003】
このドリルやホルソーによる穿孔では、ドリルやホルソーをマシニングセンタなどの加工機に取り付け、回転させたドリル又はホルソーを軸方向に動かしながら、その先端に有する刃で被穿孔部材を穿孔する方法が取られている。
【0004】
また、例えば、繊維強化プラスチック等で形成された集水管等を製造する際にも、このようなドリルやホルソーによる穿孔方法が採用されている。
特に集水管等は、筒状の部材の側面に多数の孔が穿孔されて地中に埋設されており、その穿孔された孔から地下水を管内に取り込んでその地下水を地上に汲み上げるものである。
【特許文献1】特開2007−283473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記ドリルやホルソーによる穿孔では、ドリル又はホルソーを軸方向に動かしながら被穿孔部材を穿孔するので、被穿孔部材の内面(裏面)にバリが生じることがある。
【0006】
被穿孔部材が金属板のような板状部材である場合には、バリを生じさせないために、金属板の裏面に当て物をあてがった状態で穿孔することが考えられるが、穿孔の度に当て物をあてがう必要があり作業が繁雑である。
【0007】
また、被穿孔部材が管状部材のようなもの、特に、内面が円筒面である場合にはさらに作業性が悪く、穿孔により生じたバリ取りの作業が繁雑であった。さらに、手や治具が内部に届かないような小径の管状部材の場合には、バリ取り作業自体が困難であった。
【0008】
そこで、この発明は、樹脂、木材または金属などにより形成された被穿孔部材の穿孔部にバリが生じないようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明は、切削工具により所定の大きさの孔を被穿孔部材に穿孔する穿孔方法において、前記切削工具として、先端および側面に刃を有し、かつ、前記所定の大きさの孔の断面よりも小さい断面のエンドミルを用い、そのエンドミルを軸方向に動かしながらその先端に有する刃で前記所定の大きさの孔の断面よりも小さい断面の仮孔を前記被穿孔部材に穿孔した後、その仮孔の内面を前記エンドミルの側面に有する刃で切削することにより、前記仮孔が前記被穿孔部材に穿孔されたときに生じたバリを削り取るようにして、前記仮孔を、前記所定の大きさの孔に加工したのである。
【0010】
このようにすれば、エンドミルを軸方向に動かしながら仮孔を被穿孔部材に穿孔するので、仮孔が被穿孔部材に穿孔された段階では、被穿孔部材の内面(裏面)にバリが生じるが、その仮孔の内面をエンドミルの側面の刃で切削することにより、バリを削り取ることができる。このため、被穿孔部材の内面(裏面)にバリを生じさせないようにすることができる。被穿孔部材としては、例えば、樹脂、木材または金属などにより形成されたものを採用できる。
【0011】
この構成において、前記エンドミルは、前記仮孔を前記被穿孔部材に穿孔した際に生じるバリが、前記所定の大きさの孔を穿孔するべき範囲の外側に生じない外径とすることができる。
【0012】
所定の大きさの孔の径とエンドミルの径の差が小さいと、仮孔を穿孔したときに生じるバリが、所定の大きさの孔の切削範囲を越えて外側にはみ出してしまうからである。この構成によれば、エンドミルは、前記仮孔を前記被穿孔部材に穿孔した際に生じるバリが、前記所定の大きさの孔を穿孔するべき範囲の外側に生じない外径であるので、全てのバリを除去し得る。
【0013】
これらの構成において、前記所定の大きさの孔は、自由な形状を採用することができるが、所定の径を有する円形の孔や所定の短径、長径を有する楕円形の孔とすることができる。
その所定の大きさの孔を円形とする際には、前記所定の大きさの孔と前記仮孔の孔中心とを一致させれば、仮孔周囲の削り取り範囲が周方向に沿って均等になるので、エンドミルの操作が容易となり、また、その仕上がりも綺麗になる。
【0014】
この構成において、前記エンドミルを、その動きをコンピュータ数値制御により制御可能な加工機に取り付け、その加工機に、前記所定の大きさの孔の位置、大きさに関する情報を入力することにより、前記エンドミルの動きを制御するようにすることができる。
このようにすれば、加工機に入力される情報に基づいて、エンドミルを被穿孔部材に対して、様々な動きをさせることができるので、1本のエンドミルで、円形、楕円形など様々な形状の孔を穿孔することができる。所定の大きさの孔の大きさに関する情報とは、例えば、所定の大きさの孔が円形の孔である場合は、直径などが該当する。加工機は、マシニングセンタ、NC旋盤など数値制御装置を備えるものであればよい。
【0015】
これらの構成において、前記被穿孔部材を管状部材とすれば、従来、穿孔後に行っていた管内面のバリ取り作業は非常に煩雑であったので、この穿孔方法を採用することの意義が大きい。
【0016】
また、前記管状部材が、繊維強化プラスチック管である場合は、さらにその意義が大きい。繊維強化プラスチック管は、その内外面をガラス繊維で形成しているので、穿孔したときに特にバリが生じやすいからである。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、この発明によれば、前記エンドミルの径と同一径を有する仮孔を被穿孔部材に穿孔した後、その仮孔の内面をエンドミルの側面に有する刃で切削するので、被穿孔部材に生じたバリを削り取ることができる。このため、穿孔された孔にバリのない仕上がりが容易に可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
この発明の実施形態の穿孔方法を図面に基づいて説明する。図1は、この発明の実施形態の穿孔方法に使用する立型のマシニングセンタを示し、図2は、エンドミルにより、2点鎖線に示す所定の大きさの孔を繊維強化プラスチック管に穿孔する穿孔方法を示している。図1に示すように、マシニングセンタ1は、エンドミル2と、エンドミル2を回転させ、そのエンドミル2をX軸およびZ軸のそれぞれの方向へ移動させる本体部3と、繊維強化プラスチック管4を固定し、その繊維強化プラスチック管4をY軸方向へ移動させる保持具5と、その保持具5の動きと本体部3の動きとをそれぞれ制御する数値制御装置6とを備えている。
【0019】
本体部3は、X軸方向に移動可能に支持されるX軸移動部7と、X軸移動部7とX軸方向に一体に移動し、かつ、X軸移動部7とZ軸方向に相対移動可能に支持されるZ軸移動部8と、Z軸移動部8に回転可能に支持されるギアケース9とから構成される。ギアケース9には、エンドミル2を保持する複数の工具ホルダ10が設けられている。このため、各工具ホルダ10に径の異なるエンドミルを取り付けておけば、繊維強化プラスチック管4の口径および所望する孔の径が変わっても、ギアケース9を回転させるだけで、所要の径を有するエンドミルに切り替えることができ、所望の穿孔をすることができる。
【0020】
保持具5は、Y軸方向に移動可能に支持されるY軸移動部11と、Y軸移動部11に固定される保持部12とを備え、その保持部12により、繊維強化プラスチック管4が固定される。
【0021】
数値制御装置6は、孔の位置、孔の大きさに関する情報を数値情報として入力されると、その数値情報に基づいて、エンドミル2をX軸方向、Z軸方向へ移動させる指令を本体部3に対して行ない、繊維強化プラスチック管4をY軸方向へ移動させる指令を保持具5に対して行なう。これにより、数値制御装置6に入力される情報に基づいて、エンドミル2の繊維強化プラスチック管4に対する動きを制御することができるので、1本のエンドミル2で、円形、楕円形など様々な形状の孔を穿孔することができる。
【0022】
以上のように構成されるマシニングセンタ1は、例えば、次のようにして使用することができる。なお、この実施例では、図2に示すように、所定の大きさの孔を、10mmの内径r1を有する円形の孔13とする。エンドミル2は、8mmの外径Rを有するものを使用する。
【0023】
まず、作業者は、所定の大きさの孔の位置、大きさに関する情報(例えば、内径10mmの円形、孔13の間隔30mm)を数値情報として数値制御装置6に入力すると、エンドミル2が回転を始め、そのエンドミル2が軸方向(Z軸方向)に下降する。
【0024】
エンドミル2の先端が繊維強化プラスチック管4の外面15に当接すると、その先端に有する刃16で、繊維強化プラスチック管4の側面17を切削する。エンドミル2の先端が、図2(a)に示すように、繊維強化プラスチック管4の内部に到達すると、8mmの内径r2を有する円形の仮孔18が繊維強化プラスチック管4の側面17に穿孔される。この実施形態では、前記仮孔18の孔中心と前記所定の大きさの孔13中心とは一致させている。
繊維強化プラスチック管4は、ガラス繊維で補強されて高靭性を有しているので、仮孔18が繊維強化プラスチック管4の側面17に穿孔されたときに、繊維強化プラスチック管4の内面19に1mm以下のバリ20が生じる。
【0025】
エンドミル2の先端が、繊維強化プラスチック管4の内部に到達すると、エンドミル2は、Z軸方向の位置が固定された状態で、その側面に有する刃21で、仮孔18の内面22を切削する。即ち、エンドミル2は、図2(a)の矢印が示すように、繊維強化プラスチック管4に対してY軸方向に1mm移動しながら仮孔18の内面22を切削した後、図2(b)、(c)の矢印が示すように、円の軌跡を描くように移動する。これにより、仮孔18の内面22が全周に亘って1mm分切削されるので、全てのバリ20が削り取られると共に、図2(d)に示すように、10mmの内径r1を有する孔13が、繊維強化プラスチック管4の側面17に形成される。このため、孔13が繊維強化プラスチック管4に穿孔されたときに、繊維強化プラスチック管4の内面19にバリ20が生じることがない。
【0026】
繊維強化プラスチック管4の側面17に孔13が形成されると、エンドミル2は、孔13の中心部に移動した後、上昇して孔13から退出する。そして、繊維強化プラスチック管4に対して、Y軸方向に30mm移動した後、上記と同様の穿孔方法で10mmの内径r1を有する次なる孔13が形成される。
【0027】
また、上記実施形態では、仮孔18の内面22を全周に亘って1mm分切削することにより、全てのバリを削り取るとともに、仮孔18を所定の大きさの孔に加工したが、仮孔18の内面22を切削する量は、少なくともバリが生じているエリアに対応する径方向幅だけ切削する必要がある。例えば、バリの大きさが2mmであれば、仮孔の内面を全周に亘って2mm以上切削すれば、全てのバリを削り取ることができる。仮孔の内面をどの程度切削するかは、穿孔される仮孔の大きさに応じて、生じるバリの大きさが異なるので、実験により適宜決定する。
【0028】
上記実施形態では、繊維強化プラスチック管4を穿孔したが、これに限定されるものではなく、樹脂、木材または金属などにより形成された他の管状部材や、その他の形状からなる被穿孔部材、例えば、樹脂板、木製板、金属板のような板状部材を穿孔してもよい。要は、エンドミルで切削することができる部材であれば、上記穿孔方法を適用することができる。
【0029】
上記実施形態では、立型のマシニングセンタで繊維強化プラスチック管4に穿孔したが、横型のマシニングセンタ、NC旋盤などにより、被穿孔部材を穿孔するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の実施形態の穿孔方法に使用する立型のマシニングセンタを示す斜視図
【図2】エンドミルにより、所定の大きさの孔を繊維強化プラスチック管に穿孔する穿孔方法を示す図であり、(a)は繊維強化プラスチック管に仮孔が穿孔された段階を示す断面図と正面図、(b)は仮孔の内面を切削している段階を示す断面図と正面図、(c)は仮孔の内面を切削している段階を示す断面図と正面図、(d)は繊維強化プラスチック管に所定の大きさの孔が穿孔された段階を示す断面図と正面図
【符号の説明】
【0031】
1 マシニングセンタ
2 エンドミル
4 繊維強化プラスチック管
13 孔
14 孔の内面
16 先端に有する刃
18 仮孔
20 バリ
21 側面に有する刃
22 仮孔の内面
R エンドミルの外径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削工具により所定の大きさの孔(13)を被穿孔部材(4)に穿孔する穿孔方法において、
前記切削工具として、先端および側面に刃(16,21)を有し、かつ、前記所定の大きさの孔(13)の断面よりも小さい断面のエンドミル(2)を用い、そのエンドミル(2)を軸方向に動かしながらその先端に有する刃(16)で前記所定の大きさの孔(13)の断面よりも小さい断面の仮孔(18)を前記被穿孔部材(4)に穿孔した後、その仮孔(18)の内面(22)を前記エンドミル(2)の側面に有する刃(21)で切削することにより、前記仮孔(18)が前記被穿孔部材(4)に穿孔されたときに生じたバリ(20)を削り取るようにして、前記仮孔(18)を、前記所定の大きさの孔(13)に加工することを特徴とする被穿孔部材の穿孔方法。
【請求項2】
前記エンドミル(2)は、前記仮孔(18)を前記被穿孔部材(4)に穿孔した際に生じるバリ(20)が、前記所定の大きさの孔(13)を穿孔するべき範囲の外側に生じない外径(R)であることを特徴とする請求項1に記載の被穿孔部材の穿孔方法。
【請求項3】
前記所定の大きさの孔(13)は、円形であり、前記所定の大きさの孔(13)と前記仮孔(18)の孔中心とを一致させることを特徴とする請求項1又は2に記載の被穿孔部材の穿孔方法。
【請求項4】
前記エンドミル(2)を、その動きをコンピュータ数値制御により制御可能な加工機(1)に取り付け、その加工機(1)に、前記所定の大きさの孔(13)の位置、大きさに関する情報を入力することにより、前記エンドミル(2)の動きを制御するようにしたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の被穿孔部材の穿孔方法。
【請求項5】
前記被穿孔部材(4)は、管状部材(4)であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の被穿孔部材の穿孔方法。
【請求項6】
前記被穿孔部材(4)は、繊維強化プラスチック管(4)であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の被穿孔部材の穿孔方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−17812(P2010−17812A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−181234(P2008−181234)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(000164885)栗本化成工業株式会社 (32)
【出願人】(508211269)株式会社田辺鉄工所 (1)
【Fターム(参考)】