説明

被覆プラスチックフィルム

【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は酸素、窒素、炭酸ガスや水蒸気などの気体の遮断性および透明性に優れた包装材料として好適な被覆プラスチックフィルムに関するものである。
〔従来の技術〕
従来より、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミドなどの熱可塑性樹脂よりなるフィルム、特に配向されたポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等のフィルムは、優れた力学的性質や、耐熱性、透明性などを有し広く包装材料として用いられている。しかし、これらフィルムを食品包装用として用いる場合には、その気体透過性が大きすぎることから酸素遮断性が不十分であり、酸化劣化による場合や好気性微生物による場合など内容物の変質を招き易く、通常は他の酸素遮断性の良い膜層を積層するなどの方法がとられる場合が多い。
その最も代表的な手段としてはアルミニウムなどの金属箔をラミネートしたり、それ等金属を該熱可塑性樹脂フィルム表面に蒸着する方法が用いられ、優れた気体遮断性、特に酸素遮断性が有効に活用されている。
しかし、これらのアルミニウムラミネートや蒸着されたフィルムは不透明となり、これらを用いて食品の包装を行った場合にその内容物を見ることができない欠点があり、近年の包装形態の多様化、ファッション化傾向とも相俟って透明で気体遮断性に優れたフィルムへの要求がますます高まっている。
一方従来より、気体透過性の小さな透明プラスチックフィルム素材も種々知られており、例えばポリビニルアルコールやポリエチレンビニルアルコール、およびポリ塩化ビニリデン系樹脂から成るフィルム等がある。しかし、これらのフィルムは何れも単独では強度、伸度、耐水性、耐熱性などの物性が、配向されたポリプロピレン、ポリエスル、ポリアミド等のフィルムに比し不十分であり、特にポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコールなどは非常に吸湿性が大きく、ロール状フィルムの端面が吸湿によって花びら状になるなど取り扱い性が困難なものであるとともに、目的である気体遮断性も吸湿によって大幅に低下してしまう。
よって、これらのフィルムは包装材料用フィルムとして到底単独で用い得るものではなく、通常20〜40μm程度のこれらのフィルムを前記ポリプロピレンフィルムやポリエステルフィルムなどと共に積層することによって用いられているのが現状である。しかもこれらのフィルムは単独でも何れも高価格であり、複層化することによって更に高価格なものとなるばかりでなくトータルの層厚みも非常に厚いものになる、高度の透明性が得られ難いなどの問題点がある。
また、これらのフィルムによって得られる気体遮断性のレベルも先のアルミニウム積層されたフィルムに比べると未だ充分とは言えないことから、高透明で高度の気体遮断性を有し、単体で用い得る低価格のフィルムが強く求められているのが現状である。
一方これらの問題を解決すべく、配向されたポリプロピレンやポリエステル、ポリアミドなどに前記ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン等のバリアー性樹脂を塗布する方法も検討されており、特にポリ塩化ビニリデンに就いては多く用いられている。しかし、それ等の気体遮断性は未だ充分であるとは言えず、塗布厚みを大きくすることによって用いられているが、そのレベルは、アルミニウム蒸着などのレベルには程遠いものに過ぎない。
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明は、上記従来の課題を解決しようとするものであり、その目的とするところは、高度の気体遮断性と高度の透明性を同時に満足する、ラミネートなどの多層化不要で取り扱い性、経済性に優れたプラスチックフィルムを提供しようとするものである。
〔課題を解決するための手段および作用〕
即ち、本発明の被覆プラスチックフィルムは、熱可塑性樹脂からなる基材フィルムの少なくとも片面に、膨潤性を有するコロイド性含水層状珪酸塩化合物〔以下、(A)成分という〕、および分子内にシリル基を有する化合物の少なくとも一種により変性された変性ポリビニルアルコール系樹脂〔以下、(B)成分というよりなる層(以下、当該被覆層ともいう)が、少なくとも一層形成されてなることを特徴とする被覆プラスチックフィルムである。
本発明の被覆フィルムに用いられる基材フィルムとしては、透明なフィルム形成能を有する熱可塑性樹脂であれば、特に制限はないが、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレートやそれ等の共重合体などに代表されるごときポリエステル系樹脂、ポリオキシメチレンに代表されるごときポリエーテル系樹脂、ナイロン−6、ナイロン−66、ポリメタキシレンアジパミドなどに代表されるごときポリアミド系樹脂、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニルやそれ等の共重合体に代表されるごときビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等やセロファン、アセテートなどに代表されるごときセルロース系樹脂、更にはポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、フッ素含有重合体、その他の多くの樹脂の単体、共重合体、混合体、複合体よりなる、未延伸あるいは一軸または直行する二軸方向に延伸された配向フィルムなどを挙げることができる。
なかでも本発明の趣旨からは、基材フィルムには耐熱寸法変化や機械的強度、更には成型性や経済性などの面から二軸延伸されたポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等のフィルムである場合が好適であり、更に透明性、耐熱性、機械的強度の点から、ポリエチレンテレフタレートを主成分とするごときポリエステル系フィルムであることが最も好ましい。
フィルムの厚みは特に限定はされないが、通常は1〜250μmであり、包装材料としては3〜50μmである場合が特に好ましい。
この基材フィルムは、単体であっても複合された多層フィルムであってもよく、多層フィルムにおける複合方法や層数などは任意である。
本発明は、かかる熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一表面に、特定の樹脂組成物層、即ち(A)成分および(B)成分よりなる層を被覆して成ることを本質とする。
本発明において(A)成分とは、アルミニウム、マグネシウムまたは鉄の含水ケイ酸塩である、クレー鉱物の内、SiO4の四面体結晶質にもとづく繰り返し単位により層状構造をなす化合物であり、こうしたSiO4の四面体が六角網目の板状に連なっており、この上下2枚の板の間に八面体配位をとるイオン、例えばAl3+、Fe2+、Mg3+などがイオン結合したサンドイッチ状三層構造を有するものである。このような三層構造を有するものとしては膨脹性の格子を有するものと、例えばタルクのごとき比膨脹格子のものとがあるが、本発明における膨潤性とは、前者の膨脹性格子を有するものは、更に、無制限層膨脹を示すもの、例えばスメクタイトなどと、制限層膨脹を示すもの、例えばひる石などに分類されるが、本発明の目的からは、前者の無制限膨脹のものが効果的であり好ましい。このような無制限膨脹スメクタイトグループとしては数種の鉱物があり、占有されている中央層におけるオクタヘドラルサイトの数の差により、三価および二価に置換された中央カチオンを有するジオクタヘドラルスメクタイト及び一価に置換された二価カチオンを有するトリオクタヘドラルスメクタイトに分類される。
ジオクタヘドラルスメクタイトの例としては、モンモロリロナイト、ビーデライト、ノントロナイトなどが、トリオクタヘドラルスメクタイトとしては、ヘクトライト、サボナイト、テニオライトなどが挙げられる。これらの鉱物は、天然のクレー中より産するもの、天然品より抽出したものの層間イオン交換処理を行った半合成品、及び天然品と類似構造を有するごとく合成した純合成品などがある。
これらの内で、純度、均一性などの点で合成品のトリオクタヘドラルスメクタイトが好ましく、膜状にした時の透明性や、ガス不透過性の点から、〔Si8(Mg5.34Li0.66)O20(OH)〕M+0.66(ただし、M+はNa+などの層間陽イオン)で示されるごとき、合成ヘクトライトを用いる場合が最も好ましい。
このような合成ヘクトライトの層状構造における結晶構造各層は厚さ約1mmの2次元小板状を形成しており、この小板ユニットに存在するマグネシウム原子が、より低原子価陽イオンのリチウム原子と同形置換としており、小板ユニットは、負に帯電している。乾燥状態では、この負電荷はプレート面の格子構造外側にある置換可能陽イオン(通常ナトリウムイオン)と釣り合っており、固層では、これら粒子はファン・デァ・ワールス力により互いに結合し、平板の束となっている。これを水中に分散すると、置換可能な陽イオンが水和され、粒子が膨潤を起こし小板が分離する。この完全分離状態で透明なコロイド分散ゾルとなり、本発明に最も好ましい適用形態となる。
水中などのイオン状態では、小板は表面負電荷となり端部は正電荷となる。表面負電荷が端部正電荷よりかなり大きい条件下では、粒子間反発により安定なゾル状態となる。しかし、粒子濃度増加や、塩添加などイオン濃度が増大する条件下では、反発力が減少し、表面負電荷と端部正電荷の吸引によるいわゆるカードハウス構造を形成し、増粘或いは、ゲル化を起こす結果となる。従来この合成ヘクトライトの用途としては、このカードハウス構造や、結果として得られるチクソトロピー性などを利用したものが多いが、本発明の主旨である気体不透過性において好ましい結果を得るには、このカードハウス構造をとらないようにすることが重要である。このカードハウス構造をとらずに、高粒子濃度のゾルを得るためには、ヘキサメタン酸塩、トリポリリン酸塩、ピロリン酸塩などのポリリン酸塩によるいわゆる解膠剤を用いることが好ましく、乾燥状態でこの解膠剤を予め付与されたごとき粉体グレードが、特に好ましく用い得る。
一方、本発明に用いられる(B)成分は、分子内にシリル基を有する化合物の少なくとも一種で変性されたポリビニルアルコール系樹脂であれば、特に制限はない。
本発明で使用される(B)成分である変性ポリビニルアルコール系樹脂としては、結果的にその分子内にシリルを有するものであれば何れでもよいが、分子内に含有されるシリル基がアルコキシル基(例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシブトキシ、ヘキシロキシ、オクチロキシ、ラウリロキシ、オレイロキシなどのC1〜40のアルコキシ基)あるいはアシロキシル基(例えば、アセトキシ、ベンゾイルオキシなど)及びこれらの加水分解物であるシラノール基またはその塩等の反応性置換基を有してなるものが好ましく、なかでもシラノール基である場合が特に好ましい。
本発明に用いられる(B)成分である変性ポリビニルアルコール樹脂における好適な変性度、即ちシリル基の含有量、鹸化度などは他の共重合成分の有無その種類あるいは重合度などによってその適正範囲は各々異なるが、本発明の目的である気体遮断性に対しては、重要な一要因となる。しかしてシリル基の含有量は、通常重合体中のビニルアルコール単位に対しシリル基を含む単量体として0.01モル%から30モル%が好ましく、特に0.1%から10モル%が好ましく、更に0.1モル%から5モル%が特に好ましい。重合体中のビニルアルコール単位に対するシリル基含有単量体が0.01モル%に満たないと気体遮断効果が低く、また30モル%を超えると気体遮断効果がが飽和され、より高い気体遮断効果がみられず、むしろ重合安定性や塗布液の安定性が低下する傾向がみられる。
かかる変性ポリビニルアルコール樹脂を得る方法には特に限定はなく、例えば常法によって得られたポリビニルアルコールあるいは変性ポリ酢酸ビニルなど(ここに変成とは、例えば(メタ)アクリル酸、ヒドロキシ(メタ)アクリレート、アクリルアミド、ビニルピロリドン、スチレン、ブタジエン、その他のビニルエステル類と共重可能な重合性不飽和単量体や、カルボキシル基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、4級アンモニウム塩基、アミン基等のイオン性基含有単量体などとの共重合体などである)のビニルアルコール系重合体に、分子内にシリル基を有する化合物を反応させシリル基を重合体に導入する、あるいはポリビニルアルコールあるいはその前記の如き変性体、特にイオン性親水基を有する重合体と、分子内にシリル基を有する不飽和単量体とを該単量体が活性となる温度下で反応させ、重合体中に導入する、更には該不飽和単量体をビニルアルコール系重合体分子鎖にグラフト共重合せしめるなど各種の後変性による方法、ビニルエステル系単量体(例えば、酢酸ビニル、ケイ皮酸ビニル、安息香酸ビニルなど)と分子内にシリル基を有する不飽和単量体とから共重合体を得てこれを鹸化する方法、またはシリル基を有するメルカプタンなどの存在下で前記の如きビニルエステル系単量体を重合し、これを鹸化するなどの末端にシリル基を導入する方法などの各種の方法が有効に用いられる。
これらの変性ポリビニルアルコール系樹脂を得るために用いられる分子内にシリル基を有する化合物(シリル化剤)としては、トリメチルクロルシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、ビニルトリクロルシラン、ジフェニルジクロルシラン、トリエチルフルオロシランなどのオルガノハロシラン、トリメチルアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシランなどのオルガノシリコンエステル、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシランなどのオルガノアルコキシシラン、トリメチルシラノール、ジエチルシランジオールなどのオルガノシラノール、N−アミノエチルトリメトキシシランなどのアミノアルキルシラン、トリメチルシリコンイソシアネートなどのオルガノシリコンイソシアネートその他のものが挙げられる。これらシリル化剤による変性度は用いられるシリル化剤の種類、量、反応条件などによって任意に調節することができる。
また、ビニルエステル系単量体と分子内にシリル基を有する不飽和単量体とからの共重合体を鹸化する方法において用いられる該不飽和単量体としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどに代表される如きビニルアルコキシシランや、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシランなどに代表される如きビニルアルコキシシランのアルキルあるいはアリル置換体等多くのビニルシラン系化合物、更にこれらのアルコキシ基を一部または全部をポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール置換したポリアルキレングリコール化ビニルシランなどが挙げられる。更には、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリエトキシシランなどに代表されるごとき(メタ)アクリルアミド−アルキルシランなども好ましく用い得る。
一方、シリル基を有するメルカプタンなどの存在下でビニルエステルを重合した後鹸化し、末端にシリル基を導入する方法には、3−(トリメトキシシリル)−プロピルメルカプタンなどのアルコキシシリルアルキルメルカプタンが好ましく用いられる。
本発明において、(A)成分と、(B)成分との配合比は、本発明の変性重合体の特徴である該変性ポリビニルアルコール中のシリル基、特にシラノール基と、無機化合物との反応性を有効に活用し、効果的な気体遮断効果を得る意味において重要である。即ち、(A)成分/(B)成分の重量比が0.5/99.5〜80/20の範囲内であることが好適であり、5/95〜50/50である場合が特に好ましい。これらの配合比を採用することによって、本来の気体遮断効果以外にも、被覆フィルムの透明性とすべり性の関係や、帯電防止性、更には被覆層の耐久性などの性質がいずれも好ましく改善される。
上記配合比が0.5/99.5より小さい場合には、(A)成分の添加効果が充分でなく、また、80/20を超える場合には、(B)成分と無機物との相互作用が強いことから、配合組成物の急激な増粘や、ゲル化を招きやすく、実質的に有効な効果を発揮し難い。
(A)成分および(B)成分よりなる組成物を得るための配合方法は、公知の任意の混合方法をとることが可能であるが、(A)成分および(B)成分の配合効果を最も効果的に得るには、(A)成分を予め水中にて、層間水和による膨潤を行わしめた後、(B)成分またはその溶液中あるいは(B)成分の製造過程、すなわち重合反応など、高分子化の過程における任意の段階に添加、混合せしめる方法が好ましく用いられる。中でも透明性や、安定性に優れた塗布液組成物を得るためには、(A)成分および(B)成分両者をそれぞれ充分に希釈した後、撹拌しつつ混合せしめる方法が特に好ましく用い得る。
該配合された組成物は、もちろんそれのみで用いられてもよいが、本発明の目的を阻害しない限り混合可能な他の樹脂と併用することができる。このような樹脂としては、例えば共重合されていないポリビニルアルコールやポリアクリル酸またはそのエステル類、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂その他の多くのものを挙げることができる。
また、これらの樹脂組成物中にこれらと反応し得る反応基を有する高分子または低分子の化合物よりなる架橋剤を配合することも可能である。架橋剤を配合することによって一般に当該被覆層の耐久性や密着性などが向上する場合が多い。これらの架橋剤としては従来公知のものが任意に用い得るが、気体遮断効果の点からは当該被覆層の分子間隙をできるだけ拡げないためにも、なるべく低分子の化合物を用いることがより好ましい。このような化合物の例としては、硼酸などの硼酸化合物、グルタルアリデヒドなどの低分子多価アルデヒドなどが好ましく挙げられる。また、変性重合体分子中にカルボン酸成分を含ませ多価金属によるイオン架橋を行うことも可能である。
該組成物は、通常水または、水と混合可能な任意の有機溶媒(例えば、メチルアルコール、イソプロピルアルコールなどの低級アルコールなど)とを混合した水性媒体に溶解、分散または乳化して用いられる。該水性媒体の組成は特に限定はされないが、樹脂の溶解性、分散性などを阻害しない範囲であれば、塗布性、乾燥性などの点から、水/アルコール系混合溶媒を用いることがより好ましい。
また、基材フィルムにこのような組成物の層を形成させる方法としては、溶液コーティング法、ラミネート法など任意の方法が用い得るが、特に樹脂組成物の水性溶液あるいは水性分散液などの水性樹脂組成物を基材フィルム表面に塗布、乾燥、熱処理を行うコーティング法が有効に用いられる。コーティング方法としては、グラビアやリバース等のロールコーティング法、ドクターナイフ法やエアーナイフ、ノズルコーティング法、バーコーティング法やこれらを組み合わせたコーティング法など通常の方法が用い得る。
当該被覆層の厚みは、基材フィルム、および目的とするレベルなどによって異なり、通常は乾燥厚みで10μm以下、好ましくは5μm以下、最も好ましくは3μm下であることが透明性、取り扱い性、経済性等の点で好ましい。下限は特に無いが0.05μm以下である場合には実質的に充分な効果が得られ難い。
コーティング時の乾燥、熱処理の条件は塗布厚み、装置の条件にもよるが通常80〜170℃程度が好ましい。
なお、本被覆層を形成させる前に基材フィルムにコロナ処理その他の表面活性化処理や公知のアンカー処理材を用いてアンカー処理を施してもよい。また、被覆すべき組成物中に制電防止剤や滑り剤、アンチブロッキング剤等の公知の無機、有機の各種添加剤を加えることは本発明の目的を阻害しない限り任意である。
〔実施例〕
以下、実施例によって本発明をより詳細に述べる。
なお、例中の濃度表示は、特に断らないかぎり重量基準であり、評価は以下の方法によった。
[酸素透過性]
ASTM−D−1434−75に準拠し測定した。
[ヘイズ]
ASTM−D−1003−61に準拠した。
[摩擦係数]
ASTM−D−1894に準拠し、被覆層面と、基材フィルム面(裏面)との間の静摩擦係数により判定した。
[製袋物の酸素透過性]
レザズリン反応を利用した定性試験によった。
袋の中にチオグリコレートとレザズリン、寒天液を入れ、密封後、空気中に保存した時包材を通過した酸素とレザズリンが反応すると赤色に着色することから、着色度により判定した。
実施例1(塗布液の調整)
解膠剤としてピロリン酸ナトリウムを6%含有する純合成ヘクトライト 〔Si8(Mg5.34Li0.66)O20(OH))〕Na+0.66(日本シリカ工業製ラポナイトXLS)を撹拌しつつ水中に添加し、10%の膨潤吸ゾルとした後、メタノールで希釈して(A)成分とした。
一方、ビニルトリエトキシシランと酢酸ビニルとの共重合体を鹸化し、シリル基をビニルシラン単位として0.2モル%含有し酢酸ビニル単位の鹸化度が98.5モル%、重合度が1750の変性ポリビニルアルコール系樹脂を得た。得られた変性樹脂を、水に溶解した後メタノールで希釈する方式により、水/メタノール50/50の混合溶媒中に固形分2%となし、(B)成分とした。
(A)成分と(B)成分をそれぞれの固型分比が(A)成分/(B)成分=30/70なるごとく混合し、固型分2%の水/メタノール系溶媒を作製し、塗布液とした。
(被覆フィルムの作製)
得られた塗布液をコロナ放電処理された厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのコロナ処理面上にロールコーティング方式により、塗布、乾燥の後、150℃で2分間の熱処理を行い被覆フィルムを得た。当該被覆層の乾燥厚みは1.0μmであった。
得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
実施例2 基材フィルムとして、コロナ放電処理された厚さ20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用い、熱処理温度を130℃とした以外は実施例1と同様にして被覆フィルムを得た。
得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
実施例3 シリル基の含有量をビニルシラン単位として2.0モル%とし鹸化度99℃、重合度600の変性樹脂を得て水酸化ナトリウムの存在下に水に溶解した後メタノールで希釈し、(B)成分とした以外は、実施例1と全く同様にして被覆フィルムを得た。
得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
実施例4 (A)成分と(B)成分との比が(A)成分/(B)成分=5/95となるごとく変更したこと以外は、実施例1と全く同様の方法で被覆フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
実施例5 (A)成分と(B)成分との比を(A)成分/(B)成分=50/50とし、固型分1.5%となるごとく変更したこと以外は、実施例1と全く同様の方法で被覆フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を1に示す。
比較例1 当該被覆層用樹脂組成物の被覆を行わず、基体ポリエステルフィルムのみで評価を行った。結果を表1に示す。
比較例2 当該被覆層用樹脂組成物として、シリル基を含まないポリビニルアルコール単一ポリマー単独を用いた以外は実施例1と全く同様にして被覆フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
比較例3 (B)成分を含まず、(A)成分のみにより当該被覆層を形成した以外は、実施例1と全く同様の方法で被覆フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
比較例4 (A)成分を含まず、(B)成分のみにより当該被覆層を形成した以外は、実施例1と全く同様の方法で被覆ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
比較例5 実施例1における(A)成分の代わりに、非膨潤性球状シリカコロイドゾルを用いた以外は、実施例1と全く同様の方法で、被覆フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
比較例6 (A)成分と(B)成分の固型分比が、(A)成分/(B)成分=85/15となるごとく変更した以外は、実施例1と全く同様の方法で積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
比較例7 厚さ30μmのポリエチレンビニルアルコール(エチレン含量30モル%)から成るフィルムをドライラミネート法により厚さ20μmの二軸延伸されたポリプロピレンフィルムと積層した。次いで、該積層フィルムのポリエチレンビニルアルコールフィルム面に、厚さ40μmの未延伸ポリプロピレンフィルムをドライラミネート法により積層し、3層構造のフィルム積層体を得た。得られたフィルム積層体を未延伸ポリプロピレン側を内側として二つ折にして重ね、開いている辺の2辺を幅1.5cmにわたってヒートシールを行い袋を作成した。この袋のなかに、レザズリンテスト試薬を含む寒天液を封入後、真空下で他の1辺をヒートシールした。これらのサンプルを、40℃、80%RHの条件下で1週間空気中に放置し内容物の着色度を判定した。
評価結果を表2に示す。
実施例6および比較例8〜9 実施例1および比較例1〜2で得られたブランクおよび被覆フィルムをそれぞれ、被覆面に40μmの未延伸ポリプロピレンフィルムをドライラミネート法により積層し、フィルム積層体を得た。これらのフィルム積層体を比較例7と同様それぞれ袋状と為しレザズリンによる着色度テストを行った。評価結果を表2に示す。
実施例7および比較例10 実施例1で得られた被覆フィルムおよび比較例7で用いたポリエチレンビニルアルコール単体フィルムをそれぞれシート状と為し、40℃、90%RHの条件下で一昼夜放置した後状態観察を行った結果、実施例1のフィルムはほとんど変化が認められなかったのに対し、ポリエチレンビニルアルコールフィルムは形態変化が激しく端面の伸び、波うちなどにより実用に堪えない状態であった。
〔発明の効果〕
以上、実施例で示したように、本発明によれば、(A)成分と(B)成分とを配合した組成物層が被覆された場合においてのみ、被覆フィルムは透明性、気体遮断性およびすべり性が高度に優れており、かつ、総厚みが薄く経済的有利性を有するとともに、安定性、取り扱い性に優れていることが判る。
従って、本発明によれば高度の気体遮断性と高度の透明性を同時に満足する、ラミネート等の多層化不要で取り扱い性、経済性に優れたプラスチックフィルムを提供することができる。




【特許請求の範囲】
【請求項1】熱可塑性樹脂からなる基材フィルムの少なくとも片面に、膨潤性を有するコロイド性含水層状珪酸塩化合物、および分子内にシリル基を有する化合物の少なくとも一種により変性された変性ポリビニルアルコール系樹脂よりなる層が、少なくとも一層形成されてなることを特徴とする被覆プラスチックフィルム。

【特許番号】第2789705号
【登録日】平成10年(1998)6月12日
【発行日】平成10年(1998)8月20日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平1−232154
【出願日】平成1年(1989)9月6日
【公開番号】特開平3−93542
【公開日】平成3年(1991)4月18日
【審査請求日】平成8年(1996)7月3日
【出願人】(999999999)東洋紡績株式会社
【参考文献】
【文献】特開 昭62−174148(JP,A)
【文献】特開 平1−249340(JP,A)