説明

被覆付ホールカッタ

円筒状を呈する鋸身の外面だけにインクによる有色被覆が形成されており、周沿いに延びる切削エッジの表面や鋸身の内面には形成されていない被覆付ホールカッタを提案する。有色被覆形成用のインクとしては、特定波長及び強度の紫外線に曝されると硬化する紫外線硬化性インクを使用する。切削エッジ表面や鋸身内面を含め有色被覆がない部分では、蒸気調質による酸化物仕上げを通じ、有色被覆でもたらされる色に比し対照的な色を発現させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はホールカッタ、特に被覆付のホールカッタに関する。
【背景技術】
【0002】
ホールカッタ例えばホールソーといえば、通常、その鋸身が円筒状で、鋸身の切削エッジ上に鋸歯が複数個あり、その鋸身の横合いに1個又は複数個の孔がある角度間隔で貫通形成されたもののことである。その鋸身貫通孔は、それを介しスクリュードライバ等のツールを差し込み、ワークピースの切削で生じた円形のスラグを鋸身内から除去することができるよう、様々な形態で設けられる。ホールカッタに塗料等で被覆が施されること、例えばカッタをさびから護るための被覆が施されることや、製造者識別色、トレードドレス、商標、ロゴ等を伴う装飾乃至広告目的での被覆が施されることも多い。
【0003】
こうした従来型ホールカッタで生じる問題の一つは、その内外を問わずホールカッタの前面に被覆が施されるため、カッタを被覆するのにかなり大量の被覆材が必要な点である。被覆材が高価な場合、こうした被覆形態では製造コストが嵩み、最終的には使用者向けのホールカッタ販売価格が高まってしまう。
【0004】
従来型ホールカッタにおける問題としては、鋸身のうちワークピースと対面する部分、例えば切削エッジや鋸身内外面上の切削エッジ近傍部分が、回転する鋸身とワークピースとの間の摩擦力で昇温する点もある。そうした摩擦力で生じる熱エネルギはかなりの昇温をもたらすので、当該対面部で被覆が軟化乃至粘化する恐れがある。被覆に軟化や粘化が生じると、対面部での摩擦力が増すためホールカッタの総切削速度や切削効率が低下してしまう。ホールカッタ内で被覆に軟化や粘化が生じると、軟化乃至粘化した被覆にスラグが貼り付き、ワークピーススラグとカッタ内面との間の摩擦力が増す結果、カッタ外へのスラグの押出やこじり出しが難しくなるため、そこにあるスラグの除去にも妨げとなる。そして、軟化乃至粘化した被覆がホールカッタからワークピースに転写されてワークピースへの色移り、染みつき等の汚れが生じる恐れがある。
【0005】
ホールカッタの種類によっては、切削中に大量に生じるチップやダストを排出できない点も問題となる。即ち、従来型ホールカッタのなかには、切削中にチップやダストが生じる速度にその排出能が早々と負けてしまい、切削エッジ付近、鋸身内等、鋸身・ワークピース間対面部にチップやダストが残ることとなりやすいものもある。鋸身・ワークピース間対面部にチップやダストが集まると、回転する鋸身、集まったチップやダスト、そしてワークピースの間の摩擦力で昇温する恐れがある。そうした摩擦力で生じる熱エネルギはかなりの昇温をもたらすので、当該対面部で被覆が軟化乃至粘化する恐れがある。被覆に軟化や粘化が生じると、鋸身・ワークピース間対面部例えば切削エッジ近傍にチップやダストが囚われ、ホールカッタの切削効率が更に低下する恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここに、本発明の目的のうち一つは、従来技術における上掲の諸問題、諸難点のうち少なくとも1個を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに、本発明の第1実施形態は、ある軸周りでの回転によりワークピースを切削してチップを発生させるホールカッタであって、その回転軸沿いに延びており略円筒状の外面及び内面を有する略円筒状の鋸身と、鋸身の一端にあり外面及び内面を有するキャップと、キャップから見て鋸身の他端にあり外面及び内面を有する切削エッジと、鋸身外面のうち切削エッジからの軸沿い距離が第1距離以上の部分内に有色帯が形成されるよう軸沿い及び周沿いに延設された非金属被覆と、切削エッジ外面上で、切削エッジ沿いに鋸身の縁を巡り、回転軸沿いに切削エッジから非金属被覆まで延び、且つ非金属被覆に比し対照的な色の金属帯をなす一方、鋸身内面及び切削エッジ内面上で、切削エッジ外面、切削エッジ内面、鋸身内面及びワークピース間の対面部で被覆が軟化しない状態、並びにそのワークピースの切削で生じるチップにその被覆が混ざらない状態を概ね維持するメタリック仕上げ部分と、を備える。
【0008】
本実施形態における非金属被覆は、鋸身外面のうち切削エッジからの軸沿い距離が第1距離以上の部分を一周する略円筒状の帯内に設けるのが望ましい。例えば、略直線状で切削エッジからの軸沿い距離が第1距離の縁を呈するように非金属被覆を設けるとよい。その場合、切削エッジに備わる複数個の鋸歯にて刃先間に位置する刃溝のうち、最も深いものの深さに比べ第1距離を大きくするとよい。最も深い刃溝の深さに対する第1距離の超過分は、約1/10インチ以上にするのが望ましく、また約1/2インチ未満、できれば約1/3インチ未満、更には約1/4インチ未満に抑えるのが望ましい(1インチ=約2.5×10-2m)。
【0009】
本実施形態における非金属被覆は、上述した略円筒状の帯のほぼ全体に亘るように設けるのが望ましい。また、非金属被覆がキャップ、例えばメタリック仕上げが施されたキャップの後端面に達しない構成にしてもよい。これらの構成では、非金属被覆からキャップの後端面までの距離たる第2距離を第1距離以上にすること、特に第1距離とほぼ等しくすることが望ましい。
【0010】
本実施形態におけるメタリック仕上げ部分は、蒸気調質による酸化物仕上げ部分とすること、例えば酸化鉄膜にすることが望ましい。或いは、そのメタリック仕上げ部分のうち切削エッジ上の部分を金属被覆にしてもよい。メタリック仕上げ部分上に非金属被覆を設けてもよい。それらの構成で、切削エッジの外面上及び内面上に金属被覆を配することも可能である。金属被覆としてはPVD(物理気相堆積)被覆を設けるとよい。そのPVD被覆は、窒化チタン、窒化チタンアルミニウム及びその組合せのうちいずれかによる被覆を含むものにするとよい。
【0011】
本実施形態における非金属被覆は、鋸身外面の約75%以上、できれば約85%以上、更には約90%以上を覆うように設けるのが望ましい。
【0012】
本実施形態における非金属被覆は、インク又は塗料による被覆とするのが望ましい。その場合、非金属被覆を形成する素材としては、染料、染料含有インク、写真、光乃至輻射硬化性インク、熱乃至熱気乾燥性インク及び溶剤インクのうち一種類又は複数種類を使用するとよい。非金属被覆の形成に適する素材としては、紫外線硬化性インクを挙げることができる。また、その非金属被覆を、切削中に生じる摩擦力や熱に曝されても軟化しない耐熱性被覆としてもよい。その非金属被覆を、商標、ロゴ、製造者識別子、部品番号、その組合せ等をはじめ、各種識別子乃至所要情報を示すラベルを表す被覆としてもよい。
【0013】
本発明の第2実施形態は、ある軸周りでの回転によりワークピースを切削してチップを発生させるホールカッタであって、その回転軸沿いに延びており略円筒状の外面及び内面を有する略円筒状の鋸身と、鋸身の一端にあり外面及び内面を有するキャップと、キャップから見て鋸身の他端にあり外面及び内面を有する切削エッジと、鋸身外面のうち切削エッジから軸沿いに離隔した部分内で軸沿い及び周沿いに拡がっており商標、ロゴ、製造者識別子及び部品番号のうち一種類又は複数種類による本ホールカッタの装飾に使用される非金属質部分と、非金属質部分に比し対照的な色を呈しつつ切削エッジの外面及び内面にて鋸身の縁沿いに延びるよう、非金属質部分から切削エッジにかけての軸沿い位置に設けられる一方、切削エッジ外面、切削エッジ内面、鋸身内面及びワークピース間の対面部における被覆の軟化並びにワークピースの切削で生じるチップに対する被覆の混合が実質的に生じないよう、鋸身内面内に軸沿い且つ周沿いに設けられた金属質部分と、を備える。
【0014】
本実施形態における非金属質部分は非金属被覆、金属質部分はメタリック仕上げ部分とするのが望ましい。その非金属被覆は紫外線硬化性インクによる被覆、メタリック仕上げ部分は蒸気調質による酸化鉄仕上げ部分とするのが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のホールカッタに備わる長所の一つは、被覆が鋸身外面にしか施されず切削エッジやカッタ内面には施されないため、切削エッジやカッタ内面での被覆の昇温やその被覆とチップやダストとの混合が生じ得ず、その切削効率が損なわれないことである。本発明のホールカッタ、特に従来から被覆として使用されてきた塗料等でなくインクで被覆を施した構成では、ワークピースとの接触で高温になりうる対面部に被覆がないため被覆が過剰に昇温する恐れが少ないだけでなく、仮に過剰に昇温したとしても被覆に軟化や粘化が発生せず、その切削効率が損なわれない、という長所もある。本発明のホールカッタには、更に、被覆を施す先が円筒状鋸身の外面であるため、所望の色例えば製造者識別色やトレードドレスをカッタに纏わせることや、商標、ロゴ、製造者乃至販売者識別子、部品番号等をはじめ所望の情報をカッタに纏わせることができる、という長所もある。本発明のホールカッタには、加えて、大抵は暗色をしている切削エッジに対し対照的な色の被覆が鋸身上に設けられるため、美的に秀でた外観にすることができる、という長所もある。そして、本発明のホールカッタには、有色の非金属被覆が鋸身外面の帯状部分内にしか施されないため、塗料等による被覆がその外面及び内面の双方或いはその全面に施されている従来型ホールカッタに比べ、有色被覆材の量や被覆を施すのに必要な費用を抑えることができる、という長所もある。
【0016】
本発明やその好適な実施形態に係るホールカッタには、これら以外にも様々な目的及び効果がある。そうした目的及び効果をより速やかにご理解頂けるよう、以下、別紙図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態に関し説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るホールカッタの斜視図である。
【図2】図1に示したホールカッタで使用される鋸身の円筒化前側面図である。
【図3】図1に示したホールカッタで使用される鋸身の裏面の円筒化前側面図である。
【図4】図1に示したホールカッタに被覆を施す装置の模式図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係るホールカッタで使用される鋸身の円筒化前側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に、本発明の一実施形態に係るホールカッタ10の外観を示す。本願でいう「ホールカッタ」は木材製や金属製のワークピースに孔をあける道具、例えばホールソー(冠鋸)のことである。カッタ10の鋸身12には側壁13となる部分があり、平面的には図2及び図3の如き形状になっている。これを丸める等して略円筒状にしたものが、図1に示すカッタ10の製造に際し使用される。従って、図1に示す如く、鋸身12やそれにより形成される側壁13はカッタ10の回転軸Xを芯とする略円筒状となる。その鋸身12の一端には、軸Xに対し略直交する方向に沿い切削エッジ14が設けられており、その逆側の端にはリム16が設けられている。そのリム16には、図1及び図3に示す如く、カッタ10の対応する端即ち「非作用端」を閉止するキャップ17が熔接等で固着されている。そのキャップ17には、心棒と螺合するネジ孔を有する中心ハブ28、心棒に備わるドライブピンと係合するようハブ28周りに略等間隔で形成された複数個のドライブピン孔30、ハブ28を挟み対をなすよう約180°の相互間隔で設けられた広角孔32等が設けられている。広角孔32の寸法及び位置は、ワークピーススラグ除去用のツール例えばスクリュードライバをその孔32から挿入できるように設定されている。
【0019】
図1〜図3に示す如く、切削エッジ14は縁に沿って延びており、その上には刃溝を挟み刃先が並ぶよう複数個の鋸歯が設けられている。従って、ホールカッタ10をワークピースに当接させ、切削方向に沿い回転軸X周りで回転させることで、その鋸歯をワークピースに食い入らせることができる。本実施形態でエッジ14として使用しているのはバイメタル型、即ち鋸歯の刃先が工具鋼又はそれに類する硬質な金属製、鋸歯の他の部分が(鋸身12の他の部分と同じく)炭素鋼又はそれに類する軟質鋼製のタイプである。本件技術分野で習熟を積まれた方々(いわゆる当業者)であれば本願による教示から容易に理解できる通り、こうしたエッジ14に代え、既知の又は今後開発される他形態の切削エッジを設けてもよい。同様に、金属シートを丸める等して円筒状にした鋸身12に熔接等の手段でキャップ17を装着する手法に代え、既知の又は今後開発される他手法でホールカッタを製造してもよい。例えば、スピニング(箆絞り)、焼成、成形等の手法でエンドキャップを側壁に一体化させてもかまわない。
【0020】
図1〜図3に示す如く、鋸身12の側壁13には2個の軸沿い長孔乃至スロット18が貫通形成されている。図から読み取れるように、円筒状をした鋸身12におけるスロット18の角度位置は互いに異なっている。即ち、本実施形態では、2個のスロット18が略等間隔即ち約180°の間隔で形成されている。いずれのスロット18も、鋸身12内からワークピーススラグを取り除くための梃子、例えばスクリュードライバを差し込めるように構成されている。また、いずれのスロット18にも、図1〜図3に示す如く、3個の梃子枕20A〜20Cが均一な軸沿い間隔及び角度間隔で設けられている。梃子枕20A〜20Cは鋸身12の側壁13に設けられた丸み付陥入端面であり、対応するスロット18の縁のうち、ホールカッタ10の非作用端に面する方乃至近い方の縁に設けられている。そのうち第1梃子枕20Aは切削エッジ14寄りの位置を占め、第2梃子枕20Cはエッジ14から最も遠く且つカッタ10の非作用端に近い位置及び第1梃子枕20Aに比べ切削方向後方寄りの角度位置を占め、第3梃子枕20Cは梃子枕20A・20Bの中間に当たる軸沿い位置及び角度位置を占めている。いわゆる当業者であれば本願による教示から容易に理解できる通り、ホールカッタにスロット等の孔がない形態、スロット等の個数が異なる形態(例.ホールカッタ直径が大きくスロットの個数が多い形態やホールカッタ直径が小さくスロットの個数が少ない形態)、スロット内に梃子枕がない形態、梃子枕の個数が異なる形態(例.スロット内の梃子枕個数が3個ではなく4個の形態)といった形態にしてもよい。
【0021】
図1及び図3に示す如く、ホールカッタ10に備わり円筒状をしている鋸身12の外面には被覆24が施されている。この被覆24は、鋸身12の縁沿いに巡るよう角度方向に延びる一方、カッタ10の作用端寄りにある第1境界線34からカッタ10の非作用端寄りにある第2境界線36に亘り軸方向に延びている。図示の通り、被覆24が施されているのは境界線34・36間だけで、縁に沿って延びる切削エッジ14や、エッジ14の一部をなす刃先及びその狭間にある刃溝や、キャップ17には被覆が施されていない。また、エッジ14から被覆24の第1境界線34までの軸沿い距離たる第1距離D1や、キャップ17の後端面即ちカッタ10の非作用端から被覆24の第2境界線36までの軸沿い距離たる第2距離D2は、鋸身外面の有意部分が被覆24で覆われるよう設定されている。鋸身外面積に対する被覆24の面積比は、約50%以上、できれば約75%以上、例えば約85%以上、更には約90%以上にするのが望ましい。
【0022】
被覆24の作用端側にある第1境界線34と切削エッジ14との間の距離即ち第1距離D1は、約1/16〜1/2インチ、できれば約1/10〜1/3インチ、更には約1/8〜1/4インチの範囲内にするのが望ましい。第2距離D2は第1距離D1以上、できれば第1距離D1とほぼ等しくするのが望ましい。いわゆる当業者であれば本願による教示から容易に理解できる通り、これらの寸法は一例に過ぎないので、既知の又は今後採用されることとなる他の寸法でも本発明を実施することができる。例えば、図1ではキャップ17にメタリック仕上げが施されているが、これに代え被覆を施すようにしてもよい。
【0023】
本実施形態では、目立てされていない鋸歯の刃先を結ぶ平面を基準にして第1距離D1を測っている。これに代え、切削エッジ14上にある刃溝のうち最も深いものを基準にして距離D1を測るようにしてもよい。いわゆる当業者であれば本願による教示から容易に理解できる通り、ホールカッタ10やそのエッジ14を構成する諸部分間の距離例えばD1は、既知の又は今後採用されることとなる他の線乃至事物を基準にして測ることもできる。
【0024】
被覆24は、所望の色例えば製造者識別色や、販売者のトレードドレス、商標、ロゴ、部品番号、製造者乃至販売者識別子等をはじめとする既知の又は今後利用されることとなる他の情報を、ホールカッタ10に纏わせるのに役立つ。本実施形態では、その被覆24の色を、カッタ10のうち被覆24で覆われていない部分例えば切削エッジ14の色に比し対照的な色としている。具体的には、図1〜図3中の被覆24を明るめの色例えば白とし、エッジ14、鋸身12の内面、並びにキャップ17の色を暗めの色例えば黒乃至灰と違えている。こうした被覆24であれば、カッタ表面に求められる一般的特性(例.表面保護性や外観的魅力・特徴性)が向上するのに加え、切削効率やスラグ除去の障りとなることもない。具体的には、被覆24が刃先及びその間の刃溝を含めエッジ14上に施されておらず、エッジ14から第1距離D1だけ隔たった位置から始まっているので、切削動作中にエッジ14で生じる高温の影響に被覆24が曝されることがない。同様に、図3から最も好適に読み取れるように、発生したスラグと擦れやすい鋸身内面に被覆24が及んでいない。従って、切削動作中にエッジ14や鋸身内面で生じる熱で被覆24が昇温することがないため、被覆24によってチップ排出が阻害等され切削効率が低下することもスラグ除去が邪魔されることもない。
【0025】
本実施形態の更なる長所としては、被覆24が耐熱性の非金属被覆であるため、切削動作中の摩擦力によってもたらされる熱で軟化・粘化することがなく、ホールカッタ外面からの剥離による摩耗に留まる、という点がある。本実施形態では、そうした被覆24が紫外線硬化性インク、別称UVインクの硬化によって形成されている。UVインクは顔料及び樹脂を主成分とするインクであり、紫外線照射による光重合を通じこれを硬化させることで被覆24を施すことができる。その実施に際しては、一般的な塗料で被覆を施す際に実行される熱乃至空気“乾燥”工程に代わり、光化学反応による“硬化”工程が実行される。硬化前のUVインクは固形分100%の調合物を液中に分散させた無溶剤インクであり、その状態即ち液相未硬化状態では樹脂分として液相モノマ及びオリゴマに加え少量の光重合開始剤を含有している。光重合開始剤は重合、即ちモノマとオリゴマの結合によるポリマの生成を開始させる物質であり、特定強度、特定波長の紫外線に曝されるとUVインクは1秒に満たないごく僅かな時間で硬化する。被覆24はこの化学反応によるUVインクの硬化を通じ生じるので、円筒状鋸身12の外面上に最初に付着させたUVインクの総量及び膜厚を保ったまま、硬化した被覆24を得ることができる。被覆24の形成に適するUVインクの例としては、米国フロリダ州フォートローダーデール所在のCapex Corporationで製造されている84、85、87、89、90、92、93、94、95及び96シリーズUV印刷インクがある。
【0026】
UVインクによる被覆24は、総じて、溶剤も乾燥剤も含んでいない点で塗料による被覆と異なっている。また、UVインクによる被覆24では、溶剤の蒸発に伴い膜厚がほぼ半減する塗料被覆と違い、硬化の前後でその膜厚が同一である。UVインクによる被覆24は、更に、UVインクに溶剤が含まれていないため危険な揮発性有機化合物(VOC)が発生せず、より安全に製造、施被できる点でも、従来の塗料によるホールカッタ被覆と異なっている。
【0027】
更に、被覆24には、従来のホールカッタ被覆例えば塗料による被覆と違い、高温に曝されたときに軟化や粘化ではなくひびが生じ、ホールカッタ10からの部分分離即ち付着先面からの部分脱落に向かう、という長所がある。被覆24には、従来のホールカッタ被覆例えば塗料による被覆と違い、粘着性がなく摩擦係数が低い、という長所もある。被覆特性のうち摩擦係数低下に寄与するものとして表面粗さ、硬度及び分子引力を挙げうるところ、硬化した被覆24は、塗料による被覆等に比べ、滑らかで硬くワークピースに対する分子引力が低い(粘着性が低い)ものとなる。その結果、被覆24に潤滑効果、即ち塗料等で被覆された従来のホールカッタや被覆が施されていないホールカッタに比べカッタ10の摩擦係数が低くなる、という効果が生じる。摩擦係数が低いと被覆24・ワークピース間対面部における摩擦が少なくなる。
【0028】
図4に、本実施形態で円筒状鋸身12の外面に被覆24を施す際に使用されるオフセット輪転印刷装置及びプロセスを示す。図中、可回転クリシェ40の縁沿いには位置校正済の印刷版42があり、その版42には被覆24の所要図案に従い凹部44が設けられている。版42を複数枚配することや凹部44を複数個設けることも可能だが、鋸身12の縁に沿って延びる単一且つ帯状の非金属被覆24を形成できればよいため、図示例では、1個の版42上に凹部44が1個、製造すべきホールカッタ10の周の長さとほぼ等しい周沿い寸法を呈するように設けられている。このクリシェ40及びその上の版42を回転させると、まず版42の凹部44が被覆材、具体的には上述したUVインクで充填される。クリシェ40を更に回転させると、凹部44が輪転印刷転写装置46側の付パッド面乃至可撓面48、即ちラバーブランケット面又は特殊組成弾性素材(例えばシリコーン)面に接触する。すると、図から読み取れるように、転写装置46の付パッド面48が凹部44内に入り込み、被覆24の所要図案例えば部品番号、商標、ロゴ等の情報を含む図案に従い被覆材が凹部44から面48へと転写される。次いで、転写装置46を回転させると、面48及びその上にある未硬化の被覆材が、回転している鋸身12の上へと転写される。その際には、付パッド面48上に現れた図案に対し鋸身12を整列させてから、被覆材を転写装置46の付パッド面48から鋸身12へと転写させる。その後、その被覆材を相応の紫外線に露出させる等して硬化させると、被覆24が施されたカッタ10が得られる。このプロセスによる被覆処理は、ホールカッタ毎に繰返し実行することができる。ホールカッタに被覆を複数層設けたい場合、例えば色違い部分を追加したい場合や名称、部品番号、商標、ロゴ等を追加したい場合は、クリシェ40上に版42を複数枚装着する、クリシェ40を複数個使用する、印刷プロセスを複数回実行する、それらの併用等の手段を採ればよい。
【0029】
また、図1〜図3に示す如く、ホールカッタ10の構成部材乃至表面のうち非金属の被覆24が施されていない部分はメタリック仕上げ部分、具体的には蒸気調質による暗色乃至黒色酸化物仕上げ部分38となっている。即ち、切削エッジ14の外面のうち鋸歯の刃先から被覆24の第1境界線34にかけての部分、円筒状鋸身12の外面のうち被覆24の第2境界線36からカッタ10の後端面乃至非作用端にかけての非作用端近傍部分、キャップ17の外面、スロット118に備わる内壁(側壁13の厚みによってスロット118に生じる縁)の側面、並びにカッタ10の内面(鋸身12、切削エッジ14及びキャップ17の内面)に、蒸気調質による酸化物仕上げが施されている。
【0030】
本実施形態における酸化物仕上げ部分38は、肉薄、硬質、頑丈、固着性且つ青黒色の酸化物膜、具体的にはマグネタイト(Fe34)膜である。本実施形態ではこの部分38の膜厚を0.0001インチとしているが、いわゆる当業者であれば本願による教示から容易に理解できる通り、この厚みは一例に過ぎず、既知の又は今後着目される他の厚み乃至寸法にすることもできる。また、本実施形態における酸化物仕上げ部分38は蒸気による調質動作、即ち制御された調質サイクルに従いホールカッタ構成部材の表面を蒸気に曝す動作で形成されたものである。蒸気調質で面上に酸化物仕上げ部分38を発現させる際には、まず、ホールカッタ構成部材又はそのアセンブリを炉内に配置し、窒素等の不活性ガスを導入して炉内の空気をパージする。次いで、華氏約600〜1100°の温度を有する蒸気を炉内に導入し、ある時間に亘り華氏約900〜1100°の温度に曝すことで、それらの部材乃至アセンブリを昇温させる(華氏=1.8×摂氏+32)。炉内の圧力は正に保つのが望ましい。このように蒸気調質で酸化物仕上げ部分38を発現させることで、素材の多孔性を抑え、耐摩耗性を与え、耐腐食性を高め、部品寿命を延ばし、清掃回数を減らし、また環境安全性を高めることができる。蒸気調質で生じる暗色の酸化物仕上げ部分38は美的に望ましい外観を呈する。特に、非金属被覆24によって鋸身12に付与される色に対し対照的な色になる。
【0031】
図5に、本発明の他の実施形態で使用される鋸身112の平面形状を示す。いわゆる当業者であれば本願による教示から容易に理解できる通り、ホールカッタの製造に使用されるのは、図1に示した鋸身12に倣いこの鋸身112を丸める等して略円筒状にしたものである。この鋸身112は図1〜図3を参照して説明した鋸身12に類似した構成であり、その構成部分を参照する符号としては類似構成部分のそれに「1」を冠したものが使用されている。また、この鋸身112が上掲の鋸身12と大きく異なる点は、側壁113の外面のうち鋸身112上の軸沿い長孔乃至スロット118の縁に沿い境界領域119があり、その領域119内に酸化物仕上げ部分138が蒸気調質で形成されており、その部分138が非金属被覆124で覆われていないことである。この境界領域138は、それぞれ、円筒状鋸身外面上である幅Wを呈している。酸化物仕上げ部分138とする境界領域119それぞれに幅Wを持たせたのは、スロット118の縁から被覆124までの距離を十分にとるためである。こうすれば、スロット118内に2号スクリュードライバ等の梃子乃至ツールを差し込み、そのスロット118の縁例えば梃子枕120A〜120Cのうちいずれかを支点にする梃子として使用したとしても、そのツールが被覆124に接触しないため被覆124の損傷を抑えることができる。本実施形態では、各境界領域119の幅Wを約0〜1/4インチの範囲内としている。
【0032】
本発明に係るホールカッタには、本発明の譲受人を譲受人とし、この参照を以てそれによる開示全てが本願の一部となる係属中の特許出願によって開示又は提案されたホールカッタ、具体的には「多梃子枕型軸沿い長孔付ホールカッタ」(Hole Cutter with Axially-Elongated Aperture Defining Multiple Fulcrums)と題する未付番の米国特許出願(代理人側整理番号97309.00200)、「鋸歯ピッチ対鋸身厚比が小さなホールカッタ」(Hole Cutter With Minimum Tooth Pitch to Blade Body Thickness Ratio)と題する未付番の米国特許出願(代理人側整理番号97309.00205)、「押出成形型キャップ付ホールカッタ」(Hole Cutter With Extruded Cap)と題する未付番の米国特許出願(代理人側整理番号97309.00196)、「チップ排出孔付ホールカッタ」(Hole Cutter With Chip Egress Aperture)と題する未付番の米国特許出願(代理人側整理番号97309.00206)、「ホールソー」(Hole Saw)と題する未付番の米国意匠特許出願(代理人側整理番号97309.00209)、並びに「ホールソー」(Hole Saw)と題する未付番の米国意匠特許出願(代理人側整理番号97309.00212)に備わる構成部分のうち幾つかを盛り込むことも可能である。
【0033】
なお、本願では、「被覆」なる語を、物体の表面に拡がり又はそこを覆うもの、例えばインク、塗料等の物質で形成された層、という意味で使用している。本願では、「メタリック仕上げ」なる語を、金属、合金又はその混合物を一種類又は複数種類含む面、例えばFeO、マグネタイト(Fe34)、ヘマタイト(Fe23)等の酸化鉄を含む面や、炭素鋼の表面又は工具鋼の表面(例.切削エッジ表面)のように酸化物が存在しない面、或いはそれらの面を生成する処理という意味で使用している。本願では、「金属被覆」なる語を、金属、合金又はその混合物を一種類又は複数種類含む被覆、例えば窒化チタン(TiN)被覆、窒化チタンアルミニウム(AlTiN)被覆、AlTiN・TiN併用被覆(例.AlTiNを下層としTiNを上層とする被覆)等のPVD被覆をカバーする趣旨で使用している。本願では、「PVD被覆」なる語を、気化した物質を諸面に凝結させることで薄膜を堆積させる諸手法やそれにより形成された種々の真空堆積被覆、例えば蒸着堆積被覆、電子ビームPVD被覆、スパッタ堆積被覆、陰極アーク堆積被覆、パルスレーザ堆積被覆等をカバーする趣旨で使用している。本願では、「インク」なる語を、種々の印刷用流体乃至粘性物質、例えば染料、染料含有インク(例.液体中に着色性分子をとけ込ませたもの)、紫外線硬化性インク、その他写真、光乃至輻射硬化性インク、熱乃至熱気乾燥性インク、溶剤インク等をカバーする趣旨で使用している。本願では、「塗料」なる語を、液相媒体中に固体着色剤が懸架しており種々の面の保護用又は装飾用被覆として付着可能な物質、という意味で使用している。そして、本願では、「チップ」なる語を、ホールカッタでワークピースを切削したときに生じる粒状物体、例えばソーダスト、木材ダスト、木材チップ、金属ダスト、金属チップ等、切削対象ワークピースが木材か、金属かそれとも他の素材かを問わずワークピースの切削で生じるダスト乃至チップをカバーする趣旨で使用している。
【0034】
いわゆる当業者であれば本願による教示から容易に理解できる通り、上述のものもそれ以外のものも含め本発明の諸実施形態には、別紙特許請求の範囲で定義される本発明の技術的範囲から逸脱しない様々な変形乃至改良を施すことができる。まず、ホールカッタの製造に際し採用可能な素材、形状、寸法等は多様であり、既知の又は今後開発される様々な種類乃至組合せを使用することができる。一例としては、切削エッジを、既知の又は今後開発される任意の形態、パターン、配置、形状等にすること、例えば相応しい用途が異なる専用型、複数用途型、汎用型等の鋸歯パターンにすることができる。例えば、鋸歯が採りうる形態、ピッチパターン乃至目立てパターンは数多くある。また、ホールカッタの鋸身に設ける軸沿い長孔の個数は1個でも複数個でもよいし、軸沿い長孔間で角度位置や軸沿い位置を揃えることもずらすことも可能である。更に、ホールカッタに備わる軸沿い長孔の個数、形態、形状乃至寸法を本願記載のものと異なるものにすることもできる。また、本発明のホールカッタは、様々な切削分野乃至様々なワークピース素材、例えば木材、金属、プラスチック、複合材、樹脂、石材、織物、発泡材等を対象にして使用することができる。更に、長孔やスロットを欠く鋸身にすること、即ちカッタ側壁に長孔やスロットがない構成にすることも可能である。例えば、切削エッジ、側壁のリム又はその上のキャップに開口する切欠を設けることや、鋸身の軸方向沿い全長乃至略全長を占めるよう切削エッジと側壁のリム上縁又はキャップとの間を結ぶチャネルを設けることも可能である。また、鋸身外面における非金属被覆部分をその面の一部だけにすることも全体にすることも可能である。同様に、キャップの外面や内面における非金属被覆部分をその面の一部だけにすることも全体にすることも可能である。更に、非金属被覆を鋸身の一部分だけに設けることや、鋸身の縁を巡らないようにすることや、軸に沿い切削エッジや非作用端の近くまで達しないようにすることも可能である。また、非金属被覆をオフセット輪転印刷プロセス乃至装置で発生させるのに代え、他種被覆生成プロセス乃至装置、例えばPVDプロセス乃至装置で発生させてもよい。更に、蒸気調質による酸化物仕上げ等のメタリック仕上げをカッタ構成部分に施してからカッタの部分的乃至全面的組立を実行することも、鋸身に被覆を施してからカッタの部分的乃至全面的組立を実行することも可能である。例えば、キャップ、切削エッジ又はその双方に個別に蒸気調質を施してから鋸身だけに被覆を施し、その上で鋸身、切削エッジ及びキャップをカッタへと組み上げるようにしてもよい。また、ホールカッタ構成部材例えば切削エッジに、酸化物仕上げとは別の又はこれに代わる被覆を施してもよい。例えば、PVDプロセス乃至装置を用いAlTiN被覆等の金属被覆を切削エッジに設けてもよい。更に、AlTiNその他のPVD被覆に加え又は代え、金色被覆例えばTiN被覆を切削エッジに設けてもよい。そして、鋸身とキャップを別部品として製造し熔接でつなぎ合わせる手法に代え、鋳造、スピニング(箆絞り)、焼成等、既知の又は今後開発される他の金属処理手法で両者を一体形成することも可能である。これらを踏まえ、本発明の好適な実施形態に関するこれまでの詳細な説明については、要旨限定ではなく例示であると捉えられたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある軸周りでの回転によりワークピースを切削してチップを発生させるホールカッタであって、その回転軸沿いに延びており略円筒状の外面及び内面を有する略円筒状の鋸身と、鋸身の一端にあり外面及び内面を有するキャップと、キャップから見て鋸身の他端にあり外面及び内面を有する切削エッジと、鋸身外面のうち切削エッジからの軸沿い距離が第1距離以上の部分内に有色帯が形成されるよう軸沿い及び周沿いに延設された非金属被覆と、切削エッジ外面上で、切削エッジ沿いに鋸身の縁を巡り、回転軸沿いに切削エッジから非金属被覆まで延び、且つ非金属被覆に比し対照的な色の金属帯をなす一方、鋸身内面及び切削エッジ内面上で、切削エッジ外面、切削エッジ内面、鋸身内面及びワークピース間の対面部で被覆が軟化しない状態、並びにそのワークピースの切削で生じるチップにその被覆が混ざらない状態を概ね維持するメタリック仕上げ部分と、を備えるホールカッタ。
【請求項2】
請求項1記載のホールカッタであって、その非金属被覆が、鋸身外面のうち切削エッジからの軸沿い距離が第1距離以上の部分を一周する略円筒状の帯内にあるホールカッタ。
【請求項3】
請求項2記載のホールカッタであって、その非金属被覆が、略直線状で切削エッジからの軸沿い距離が第1距離の縁を有するホールカッタ。
【請求項4】
請求項2記載のホールカッタであって、その切削エッジが、刃先同士が刃溝を挟み並ぶ複数個の鋸歯を有し、その刃溝のうち最も深いものの深さに比べ第1距離が大きいホールカッタ。
【請求項5】
請求項4記載のホールカッタであって、最も深い刃溝の深さに対する第1距離の超過分が約1/10インチ以上であるホールカッタ。
【請求項6】
請求項5記載のホールカッタであって、最も深い刃溝の深さに対する第1距離の超過分が約1/2インチ未満であるホールカッタ。
【請求項7】
請求項6記載のホールカッタであって、最も深い刃溝の深さに対する第1距離の超過分が約1/4インチ未満であるホールカッタ。
【請求項8】
請求項5記載のホールカッタであって、その非金属被覆が上記略円筒状の帯のほぼ全体に亘るホールカッタ。
【請求項9】
請求項5記載のホールカッタであって、そのキャップがメタリック仕上げ部分を有し且つ非金属被覆がキャップの後端面に達していないホールカッタ。
【請求項10】
請求項9記載のホールカッタであって、その非金属被覆からキャップの後端面までの距離たる第2距離が第1距離とほぼ等しいホールカッタ。
【請求項11】
請求項1記載のホールカッタであって、そのメタリック仕上げ部分が蒸気調質による酸化物仕上げ部分であるホールカッタ。
【請求項12】
請求項1記載のホールカッタであって、そのメタリック仕上げ部分が切削エッジ上に形成された金属被覆を含むホールカッタ。
【請求項13】
請求項12記載のホールカッタであって、その金属被覆がPVD被覆であるホールカッタ。
【請求項14】
請求項13記載のホールカッタであって、そのPVD被覆が窒化チタン、窒化チタンアルミニウム及びその組合せのうちいずれかによる被覆を含むホールカッタ。
【請求項15】
請求項1記載のホールカッタであって、その非金属被覆が鋸身外面の約75%以上を覆うホールカッタ。
【請求項16】
請求項15記載のホールカッタであって、その非金属被覆が鋸身外面の約90%以上を覆うホールカッタ。
【請求項17】
請求項1記載のホールカッタであって、その非金属被覆がインク又は塗料による被覆であるホールカッタ。
【請求項18】
請求項17記載のホールカッタであって、その非金属被覆が染料、染料含有インク、写真、光乃至輻射硬化性インク、熱乃至熱気乾燥性インク及び溶剤インクのうち一種類又は複数種類で形成された被覆であるホールカッタ。
【請求項19】
請求項18記載のホールカッタであって、その非金属被覆が紫外線硬化性インクによる被覆であるホールカッタ。
【請求項20】
請求項4記載のホールカッタであって、その第1距離を測る際に基準となる面が、(i)切削エッジに備わる刃溝のうち最も深いもの、並びに(ii)切削エッジに備わる鋸歯のうち目立てがされていないものの刃先間に延びる平面、のいずれかであるホールカッタ。
【請求項21】
請求項1記載のホールカッタであって、そのメタリック仕上げ部分が蒸気調質による暗色酸化物仕上げ部分を含むホールカッタ。
【請求項22】
請求項21記載のホールカッタであって、その暗色酸化物仕上げ部分が酸化鉄膜を含むホールカッタ。
【請求項23】
請求項1記載のホールカッタであって、その非金属被覆がキャップ外面の全体又は一部分を覆うホールカッタ。
【請求項24】
請求項1記載のホールカッタであって、その非金属被覆が、切削中に生じる摩擦力に曝されても軟化しない耐熱性被覆であるホールカッタ。
【請求項25】
請求項1記載のホールカッタであって、その非金属被覆が、商標、ロゴ、製造者識別子及び部品番号のうち一種類又は複数種類を含むラベルを表す被覆であるホールカッタ。
【請求項26】
ある軸周りでの回転によりワークピースを切削してチップを発生させるホールカッタであって、その回転軸沿いに延びており略円筒状の外面及び内面を有する略円筒状の鋸身と、鋸身の一端にあり外面及び内面を有するキャップと、キャップから見て鋸身の他端にあり外面及び内面を有する切削エッジと、鋸身外面のうち切削エッジから軸沿いに離隔した部分内で軸沿い及び周沿いに拡がっており、商標、ロゴ、製造者識別子及び部品番号のうち一種類又は複数種類による本ホールカッタの装飾に使用される非金属質の第1部分と、第1部分に比し対照的な色を呈しつつ切削エッジの外面及び内面にて鋸身の縁沿いに延びるよう、第1部分から切削エッジにかけての軸沿い位置に設けられる一方、切削エッジ外面、切削エッジ内面、鋸身内面及びワークピース間の対面部で被覆が軟化しない状態並びにワークピースの切削で生じるチップに対するその被覆が混ざらない状態が概ね維持されるよう、鋸身内面内に軸沿い且つ周沿いに設けられた金属質の第2部分と、を備えるホールカッタ。
【請求項27】
請求項26記載のホールカッタであって、第1部分が非金属被覆、第2部分がメタリック仕上げ部分であるホールカッタ。
【請求項28】
請求項27記載のホールカッタであって、その非金属被覆が紫外線硬化性インクによる被覆、メタリック仕上げ部分が蒸気調質による酸化鉄仕上げ部分であるホールカッタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−517147(P2013−517147A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549098(P2012−549098)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際出願番号】PCT/US2011/021214
【国際公開番号】WO2011/088266
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(505333849)アーウィン インダストリアル トゥール カンパニー (15)
【Fターム(参考)】