説明

被覆用防汚性組成物

【構成】フッ素系アクリル重合体と(メタ)アクリル酸エステル重合体とフッ素化オレフィン重合体と有機ポリイソシアネート等の硬化剤とからなる被覆用防汚性組成物に関する。
【効果】本発明の被覆組成物は、可塑剤のブリード防止性、防汚性に優れた皮膜を形成する。さらに、硬化剤により,基材及び各成分間の密着性を向上させ、強靱な皮膜を形成させることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、防汚性並びに可塑剤等のブリード防止性に優れた被覆用組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、材料の高付加価値化が進む中、各種基材表面に対する防汚性が強く要求されており、数多くのコーティング剤が提案されている。
【0003】例えば、各種(メタ)アクリル酸アルキルエステル類の重合体を被覆するもの、あるいはそれらとフッ素系モノマーとシリコン系モノマーとの共重合体を被覆するもの、さらにはそれらとバインダー樹脂とのブレンド物を被覆するものなどが知られている。中でも、フッ素系あるいはシリコン系モノマーの導入は有力な手段と考えられてきた(特開昭63−61032号公報、特開昭63−137934号公報)。
【0004】しかしながら、基材が可塑化ポリ塩化ビニルである場合、コストに見合う適当な量のフッ素系あるいはシリコン系モノマーの導入、重合といった従来公知の方法で得られた組成物では、可塑剤の影響等により充分な防汚性能が発揮され得ないという問題があった。また、フッ素或いはシリコーン系モノマーの導入の際には、基材との密着性を阻害するという問題が常に懸念されてきた。特に、可塑化ポリ塩ビニルの中でも可塑剤の含有量の多い塩ビレザー或いは人工皮革、合成皮革等では耐屈曲性、耐もみ摩耗性といった高度の密着性が要求される事から、基材に対する密着性と防汚性とを兼備した表面コート剤が望まれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、フッ素或いはシリコーン系組成物の弱点とも言うべき基材との接着性の問題を払拭した、基材との密着性に優れ且つ強靱な皮膜を形成する組成物を見いだすと共に、従来にない防汚性能を発現するばかりでなく、基材中に含まれる可塑剤、顔料、染料等の樹脂内添剤のブリード防止効果および異物が接触した場合、異物に含まれる一部又は全部の化合物の移行防止効果に優れた被覆用樹脂組成物を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】そこで本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討したところ、非フッ素化アクリル系重合体及びフッ素化アクリル系重合体とフッ素化オレフィン系重合体と硬化剤との最適な組み合わせからなる組成物を用いれば、上記の問題を解決できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0007】即ち本発明は、フッ素化(メタ)アクリレート(A)及び/又はポリシロキサン基含有(メタ)アクリレート(B)と、該(メタ)アクリレート(A)及び該(メタ)アクリレート(B)以外の(メタ)アクリレート(C)とを重合させて得られる共重合体(I)と、(メタ)アクリロイル基を含有する単量体の重合体(II)と、フッ素化オレフィン系重合体(III)と硬化剤(IV)とを含有してなる被覆用防汚性組成物を提供するものである。
【0008】本発明において、まずフッ素化(メタ)アクリレート(A)及び/又はポリシロキサン基含有(メタ)アクリレート(B)と、該(メタ)アクリレート(A)及び該(メタ)アクリレート(B)以外の(メタ)アクリレート(C)とを重合させて得られる共重合体(I)は、本発明の組成物を基材上にコーティングした場合、最表面(空気面側)に配列する部分であるので、外部からの異物の接触、混入に対して直接的影響を及ぼす。即ち、防汚性を発揮する上で非常に重要な部分である。また、より経済的なフッ素含有量で最大の防れ防止効果を発現させ、あるいは(メタ)アクリロイル基を含有する単量体の重合体(II)とフッ素化オレフィン系重合体(III)との間に優れた相溶性を得るためには、フッ素化(メタ)アクリレート(A)及び/又はポリシロキサン基含有(メタ)アクリレート(B)と、(A)及び(B)以外の(メタ)アクリレート(C)との重合物を用いることが好ましい。
【0009】フッ素化(メタ)アクリレート(A)としては、原料の入手性並びに他の成分との相溶性、防汚性の観点から、アクリルエステル基及びその類縁基を含有するものが適しており、下記一般式(A−1)にて表されるフッ素化(メタ)アクリレ−トが挙げられる。すなわち[
【0010】
【化1】


【0011】(式中、Rfは炭素数1〜20のパ−フロロアルキル基、または部分フッ素化アルキル基であり、直鎖状、分岐状、または主鎖中に酸素原子が介入したもの、例えば
【0012】
【化2】


【0013】等でも良く、R1はH,CH3,Cl,FまたはCNであり、Xは2価の連結基で、具体的には −(CH2)n
【0014】
【化3】


【0015】
【化4】


【0016】
【化5】


【0017】(但し、nは1〜10の整数であり、R2 はHまたは炭素数1〜6のアルキル基である。)、
【0018】
【化6】


【0019】
【化7】


【0020】
【化8】


【0021】
【化9】


【0022】
【化10】


【0023】
【化11】


【0024】等であり、aは0または1である。]にて表わされる化合物である。以下、特に断わりのない限り、メタアクリレート、アクリレート、ハロアクリレートおよびシアノアクリレートを総称して(メタ)アクリレートという。
【0025】フッ素化(メタ)アクリレート(A−1)の具体例として以下の如きものが挙げられる。
A-1-1 : CH2=CHCOOCH2CH2C8F17A-1-2 : CH2=C(CH3)COOCH2CH2C8F17A-1-3 : CH2=CHCOOCH2CH2C12F25A-1-4 : CH2=C(CH3)COOCH2CH2C12F25A-1-5 : CH2=CHCOOCH2CH2C10F21A-1-6 : CH2=C(CH3)COOCH2CH2C10F21A-1-7 : CH2=CHCOOCH2CH2C6F13A-1-8 : CH2=C(CH3)COOCH2CH2C6F13A-1-9 : CH2=CHCOOCH2CH2C4F9A-1-10 : CH2=CFCOOCH2CH2C6F13A-1-11 : CH2=C(CH3)COOCH2CH2C20F41A-1-12 : CH2=C(CH3)COOCH2CH2C4F9A-1-13 : CH2=C(CH3)COO (CH2)6 C10F21A-1-14 : CH2=C(CH3)COOCH2CF3A-1-15 : CH2=CHCOOCH2CF3A-1-16 : CH2=CHCOOCH2C8F17A-1-17 : CH2=C(CH3)COOCH2C8F17A-1-18 : CH2=C(CH3)COOCH2C20F41A-1-19 : CH2=CHCOOCH2C20F41A-1-20 : CH2=C(CH3)COOCH2CF(CF3)2A-1-21 : CH2=C(CH3)COOCH2CFHCF3A-1-22 : CH2=CFCOOCH2C2F5A-1-23 : CH2=CHCOOCH2(CH2)6CF(CF3)2A-1-24 : CH2=C(CH3)COOCHCF2CFHCF3A-1-25 : CH2=C(CH3)COOCH(C2H5)C10F21A-1-26 : CH2=CHCOOCH2(CF2)2HA-1-27 : CH2=C(CH3)COOCH2(CF2)2HA-1-28 : CH2=CHCOOCH2(CF2)4HA-1-29 : CH2=CHCOOCH2CF3A-1-30 : CH2=C(CH3)COO(CF2)4HA-1-31 : CH2=CHCOOCH2(CF2)6HA-1-32 : CH2=C(CH3)COOCH2(CF2)6HA-1-33 : CH2=CHCOOCH2(CF2)8HA-1-34 : CH2=C(CH3)COOCH2(CF2)8HA-1-35 : CH2=CHCOOCH2(CF2)10HA-1-36 : CH2=CHCOOCH2(CF2)12HA-1-37 : CH2=CHCOOCH2(CF2)14HA-1-38 : CH2=CHCOOCH2(CF2)18HA-1-39 : CH2=CHCOOC(CH3)2(CF2)4HA-1-40 : CH2=CHCOOCH2CH2(CF2)7HA-1-41 : CH2=C(CH3)COOCH2CH2(CF2)7HA-1-42 : CH2=C(CH3)COOC(CH3)2(CF2)6HA-1-43 : CH2=CHCOOCH(CF3)C8F17A-1-44 : CH2=CHCOOCH2C2F5A-1-45 : CH2=CHCOOCH2CH(OH)CH2C8F17A-1-46 : CH2=C(CH3)COOCH2CH(OH)(CH2)4C18F37A-1-47 : CH2=CHCOOCH2CH2N(C3H7)SO2C8F17A-1-48 : CH2=C(CH3)COOCH2CH2N(CH3)SO2C6F13A-1-49 : CH2=C(Cl)COO(CH2)6NHSO2C12F25A-1-50 : CH2=CHCOOCH2CH2N(C2H5)COC7F15A-1-51 : CH2=CHCOO(CH2)8N(CH3)COC12F25A-1-52 : CH2=CHCOO(CH2)2(CF2)8CF(CF3)2本発明に係る被覆用樹脂組成物の防汚性、及びその耐久性の向上の観点から、フッ素化(メタ)アクリレート(A−1)のパ−フロロアルキル基または部分フッ素化アルキル基の炭素数としては、4以上が好ましく、6以上がより好ましい。
【0026】また、フッ素化(メタ)アクリレート(A)は、経済的な観点、他の成分との効率的な相溶性並びに防汚性の点から、フッ素化アルキル基を含有する1価基を少なくとも2つ有し、その全てが同一の炭素原子または窒素原子に結合した骨格を有する重合性エチレン不飽和単量体であって、かつフッ素化アルキル基を含有する1価基の少なくとも1つが、上記炭素原子または窒素原子とフッ素化アルキル基との間にエステル結合またはウレタン結合をも有する1価基であるものが好ましい。このようなフッ素化(メタ)アクリレートとしては、例えば一般式
【0027】
【化12】


【0028】[式中、Rfは炭素数1〜20のフッ素化アルキル基であり、Zは−(CH2X−、−CH2CH(OH)(CH2X− 、−(CH2XN(R1)SO2−、−(CH2XN(R1)CO−(但しXは1または2であり、R1はH又は炭素数1〜6のアルキル基である)、−CH( CH3)−、−CH(C25)−、−C(CH32−、−CH(CF3)−又は−(CF32−の如き2価の連結基であり、R2はH、Cl、CH3、F、又は−(CH2XRf(但し、X、Rfは前記と同じである。)であり、AはR3C(CH2−)3(但しR3はH、メチル基、エチル基、又はニトロ基である。)、又はN(CH2CH23−、N(CH2CH(CH3))3−にて表される3価の連結基であり、Bは−OCONHY1NHCOO−(但し、Y1は炭素数が15以下で、B中に占める重量割合が35〜65%の間である2価の連結基である。)にて表される2価の連結基であり、Z1は−(CH2m−(但し、mは2〜6の整数である。)又は−CH2CH(CH3)−である。]にて表される化合物が挙げられる。
【0029】尚、一般式(A−2)中、2個含まれているZは、前記2価の連結基の群から選ばれた相異なる2種の連結基であっても良い。2価の連結基B中のY1基の代表的なものとしては、
【0030】
【化13】


【0031】等が挙げられる。また一般式
【0032】
【化14】


【0033】[式中、Rf、Z、Z1、は前記と同じであり、Rf'は炭素数1〜20のフッ素化アルキル基であり、Z'は−(CH2X−、−CH2CH(OH)(CH2X−、−(CH2XN(R1)SO2−、−(CH2XN(R1)CO−(但し、Xは1または2であり、R1はH又は炭素数1〜6のアルキル基である)、−CH(CH3)−、−CH(C25)−、−C(CH32−、−CH(CF3)−又は−(CF32−の如き2価の連結基であり、RはHまたはFである。X1、X2、そしてX3は−OCOCH2CH(R4)COO−(但し、R4はH、又は炭素数1〜36のアルキル基もしくはアルケニル基である。)又は
【0034】
【化15】


【0035】からなる群から選ばれる2価の連結基であり、A1はR5C(CH2OCH2CH(OH)CH23−、R5C(CH2OCH2CH2OCH2CH(OH)CH23−(但し、R5はH、ヒドロキシメチル基、メチル基、エチル基、又はニトロ基である。)、N(CH2CH2OCH2CH(OH)CH23−、又はN(CH2CH(CH3)OCH2CH(OH)CH23−にて表される3価の連結基である。]にて表される化合物、一般式
【0036】
【化16】


【0037】[式中、Rf、Rf'、Z、Z'、そしてRは前記と同じであり、X4とX5は−COO−、−OCOCH2CH(R4)COO−(但し、R4は前記と同じである。)
【0038】
【化17】


【0039】又は−OCONHY1NHCOO−(但し、Y1は前記と同じである。)にて表される2価の連結基である。)から選ばれる2価の連結基である。]にて表される化合物、一般式
【0040】
【化18】


【0041】[式中、Rf、Rf'、Z、Z1、そしてRは前記と同じであり、Rf''はRfもしくはRf'と同意義であって、これらは等しくても又異なっていても良く、Z''はZもしはZ'と同意義であって、これらも等しくても又異なっていても良く、X6、X7、X8は同一でも異なっていても良くて、−O−又は−OCONHY1NHCOO−(但し、Y1は前記と同じである。)にて表される2価の連結基であり、X9は−OCONHY1NHCOO−(但し、Y1は前記と同じである。)又は−OCONH(CH2a−(但し、aは0〜2の整数である。)にて表される2価の連結基であり、Z1は前記と同じである。]にて表される化合物を挙げることができる。
【0042】単量体(A−2)、(A−3)、(A−4)、(A−5)の具体例として、例えば以下の如きものが挙げられるが、これらの具体例によって本発明が何ら限定されるものでないことは勿論である。
【0043】
【化19】


【0044】
【化20】


【0045】
【化21】


【0046】
【化22】


【0047】
【化23】


【0048】
【化24】


【0049】
【化25】


【0050】
【化26】


【0051】
【化27】


【0052】
【化28】


【0053】また、フッ素化(メタ)アクリレート(A)は、構造が異なる2種類以上の化合物の混合物であっても良い。本発明者の知見によれば、防汚性を付与するためにはフッ素化(メタ)アクリレートの外にポリシロキサン基含有(メタ)アクリレートを導入することが有効である。
【0054】フッ素化(メタ)アクリレートとポリシロキサン基含有(メタ)アクリレートは、重合体(II)、重合体(III)との相溶性或いは用途により、何れか一方だけでも良いし、両者を含んでいてもそれらの防汚性は高レベルで維持される。
【0055】ポリシロキサン基含有(メタ)アクリレートは、ポリシロキサン鎖の片末端あるいは両末端に2価の連結基を介して、アクリロイル基、あるいはメタクリロイル基のいずれかが連結されたものであり、その具体例としては、一般式(B−1)
【0056】
【化29】


【0057】[式中、R6及びR7は炭素数1〜20のアルキル基又はフェニル基で、それらは同一でも異なっていてもよく、又シロキシ単位毎に同一でも異なっていてもよく、pは3〜520の整数であり、qは0又は1であり、Y2は2価の連結基で、-CH2CH(OH)CH2OCO-、-(CH2)n1NHCH2CH(OH)CH2OCO-、-(CH2)n1OCO-、-(CH2)n1-O-(CH2)m1OCO-、又は-OCH2CH(OH)CH2OCO-(但し、n1、m1は2〜6の整数である。)であり、R1は前記と同じであり、Z1はメチル基、フェニル基、又はCH2=C(R)-(Y2)q-である。]にて表される化合物、又は一般式(B−2)
【0058】
【化30】


【0059】[式中、R6'、R6''、R6'''、R7'、R7''、R7'''、R8'、R8''、R8'''は炭素数1〜20のアルキル基又はフェニル基で、これらは同一でも異なっていても良く、r,s,tは1〜200の整数で、これらは同一でも異なっていても良く、Y2,q,R は前記と同意義である。]にて表わされる化合物が挙げられる。
【0060】ポリシロキサン鎖を含有する単量体のより具体的なものとして以下の如きものが例示される。
【0061】
【化31】


【0062】
【化32】


【0063】
【化33】


【0064】但し、上記のいずれの式においても Me, Phは、それぞれメチル基,フェニル基を表わす。尚、本発明が上記具体例によって何等限定されるものでないことは勿論である。
【0065】本発明において、フッ素化(メタ)アクリレート(A)及び/またはポリシロキサン基含有(メタ)アクリレート(B)は、防汚性及び汚れ落ち性を発揮する上で必須の単量体成分であり、これら両者が欠落すると上記性能は劣悪なものとなる。
【0066】一方、上述したフッ素化(メタ)アクリレート(A)及び/またはポリシロキサン基含有(メタ)アクリレート(B)と共重合する(A)および(B)以外の(メタ)アクリレート(C)としては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ドデシル、アクリロニトリル、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ジブチルフマル酸エステル、ジメチルフマル酸エステル等を挙げることができる。また、これらは単独または2種類以上用いることができる。
【0067】尚、本発明が、これら具体例によって何等限定されるものでないことは勿論である。本発明者らの知見によれば、皮膜の強靱性の観点から、加工工程上可能である場合は、重合体(I)、(II)、(III)各成分間の接着性及び基材との密着性を向上させる為に、重合体(I)中にも硬化剤(IV)と反応する反応性官能基を導入することが好ましい。
【0068】反応性官能基の選択は、後述する硬化剤(IV)との反応性により決定されるが、官能基の種類としては特に制限はなく、例えば、水酸基、チオール基、カルボキシル基、アミノ基、イソシアネート基、アジリジニル基、グリシジル基、アルコキシシリル基、シラノール基、シクロカーボネート基、酸無水基、ビニル基、エノールエーテル基、チオエーテル基、活性エステル基、アセトアセテート基、金属塩、金属酸化物及びこれらの官能基を各種ブロック化剤でブロック化したものが挙げられる。また、これらの官能基は、単官能であっても多官能であっても良く、さらに含有する官能基の種類は、1種類であっても2種類以上であっても良い。
【0069】また、これらの官能基の導入の方法にも特に制限はなく、例えば、直接これらの官能基を含むモノマーを用いて重合体(I)を合成する方法、或いは予め重合体(I)を合成した後、目的とする官能基を持つ化合物と重合体(I)を反応させる方法、重合体(I)をプラズマ処理する方法、さらには重合開始剤、連鎖移動剤中に目的とする官能基を含むものを使用し導入する方法等が挙げられる。
【0070】尚、本発明が、これら具体例によって何等限定されるものでないことは勿論である。硬化剤(IV)としては、特に制限はないが、原料の入手性及び多様性、架橋反応の簡便さ、生成した皮膜の強靱性、基材との密着性の向上等の理由から、有機ポリイソシアネート化合物が工業的に有用である。
【0071】そこで、重合体(I)中に導入するイソシアネート基と反応する官能基としては、活性水素を有する官能基であれば特に制限はなく、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、活性メチレン等の活性水素を有する官能基が挙げられる。
【0072】また、重合体(I)中にもイソシアネート基を導入し、イソシアネート同士を反応させビュレット構造の形成或いはアロハネート架橋等も可能である。これらの中で、イソシアネート基との反応性、原料の入手性、生成したポリマーの皮膜特性を考慮すると、水酸基による架橋が特に好ましい。重合体(I)に導入する水酸基の導入方法には特に制限はなく、上述した各種官能基の導入方法と同様の方法が挙げられるが、中でも反応工程上最も簡便であり、導入量のコントロールも容易であるのは、水酸基を含むモノマーを用いて重合体(I)を合成する方法である。
【0073】水酸基を含むモノマーの具体例としては、例えばヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びその変性物等が挙げられる。重合体(I)中に導入する水酸基を含むモノマーは、1種類であっても2種類以上であっても構わない。
【0074】尚、本発明がこれら具体例によって何等限定されるものでないことは勿論である。本発明者らの知見によれば、重合体(I)、(II)、(III)各成分間の相溶性、皮膜の強靱性等の観点から、(A)および(B)以外の(メタ)アクリレート(C)としては、メタクリル酸メチルを含有することが好ましい。メタクリル酸メチルを共重合することは、他の重合体との相溶性を向上させるばかりでなく、皮膜のハード成分として防汚性にも寄与し、さらにはホモポリマーは高ガラス転移点を有することから、皮膜の強靱性を向上させ得る。
【0075】本発明に係る単量体(A)及び/または(B)と単量体(C)とを重合して成るフッ素系重合体(I)の製造方法には、何ら制限はなく、公知の方法、即ちラジカル重合法、カチオン重合法、アニオン重合法等の重合機構に基づき、溶液重合法、塊状重合法、更にエマルジョン重合法等によって製造できるが、特にラジカル重合法が簡便であり、工業的に好ましい。
【0076】この場合重合開始剤としては、当業界公知のものを使用することができ、例えば過酸化ベンゾイル、過酸化ジアシル等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、フェニルアゾトリフェニルメタン等のアゾ化合物、Mn(acac)3等の金属キレート化合物等が挙げられ、必要に応じてラウリルメルカプタン、2−メルカプトエタノ−ル、エチルチオグリコ−ル酸、オクチルチオグリコ−ル酸等の連鎖移動剤や、更にγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のカップリング基含有チオ−ル化合物を連鎖移動剤と併用することが可能である。
【0077】尚、本発明者等の知見によれば、この様なカップリング基含有連鎖移動剤を併用すると、基材に対する密着性や、コーティング剤としての耐久性を向上させることが可能である。また光増感剤や光開始剤の存在下での光重合、あるいは放射線や熱をエネルギー源とする重合によっても本発明に係るフッ素系のランダムもしくはブロック共重合体を得ることができる。
【0078】重合は、溶剤の存在下又は非存在下のいずれでも実施できるが、作業性の点から溶剤存在下の場合の方が好ましい。溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶剤、1,1,1−トリクロルエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族類、更にパ−フロロオクタン、パ−フロロトリ−n−ブチルアミン等のフッ素化イナ−トリキッド類等を挙げることができ、これらを単独又は混合して使用できる。
【0079】本発明に係る重合体の単量体(A)及び/または(B)と単量体(C)との共重合組成比は、重量比で、通常100:0〜1:1000であり、2:1〜1:100の範囲が好ましく、49:51〜1:100が本発明に示す被覆剤としての諸特性、即ち被覆作業性に関係する本発明の重合体(I)の溶剤溶解性、防汚性、皮膜特性、更には重合体(I)中のフッ素含有量に関係する経済性を発揮する上でより好ましい。
【0080】次に、本発明における第二の必須成分である(メタ)アクリロイル基を含有する単量体の重合体(II)についてであるが、本重合体(II)は基材との密着性、他の成分との相溶性並びにニーズに合致した皮膜を形成させる点で重要な成分である。
【0081】(メタ)アクリロイル基を含有する重合体(II)としては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ドデシル、2−エチルヘキシルメタアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルメタアクリレート、ジブチルフマル酸エステル、ジメチルフマル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸等の単独重合体、又は共重合体を挙げることができる。
【0082】尚、本発明がこれら具体例によって何等限定されるものでないことは勿論である。また、重合体(II)においても、重合体(I)の場合と同様に、各成分間及び基材との接着性を向上させ、更に皮膜を強靱化させるために、後述する硬化剤(IV)、中でも有機ポリイソシアネートと反応する官能基を持たせることが好ましい。有機ポリイソシアネートと反応する官能基としては特に制限はないが、重合体(I)の場合と同様の理由から、水酸基が好ましい。また、重合体(II)に導入する水酸基の導入方法にも特に制限はなく、重合体(I)の場合と同様に、水酸基を含むモノマーを用いて重合体(II)を合成する方法である。水酸基を含むモノマーの具体例としては、例えばヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及びその変性物等が挙げられる。
【0083】尚、本発明がこれら具体例によって何等限定されるものでないことは勿論である。次に、第三の必須成分であるフッ素化オレフィン系重合体(III)であるが、本重合体(III)は、皮膜の断面方向において表面成分である重合体(I)と密着成分である重合体(II)の中間に位置し、外部からの汚れの侵入および内部、即ち基材樹脂の一部、あるいは基材樹脂に含有される顔料、染料、可塑剤等の添加物のコーティング層への移行を防止する役割を担う。
【0084】フッ素化オレフィン系重合体(III)とは、フッ素化オレフィンモノマーを含む重合体をいい、有機溶剤に分散又は溶解するものである。その具体例として、例えばポリテトラフロロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、(エチレン・テトラフロロエチレン)共重合体、(フッ化ビニリデン・テトラフロロエチレン)共重合体、(テトラフロロエチレン・ヘキサフロロプロピレン)共重合体、ポリフッ化ビニルエ−テル、ポリクロロトリフルオロエチレン、(エチレン・クロロトリフルオロエチレン)共重合体、(フッ化ビニルエ−テル・テトラフロロエチレン)共重合体そしてルミフロン[旭硝子(株)]、フルオネート[大日本インキ化学工業(株)]、セフラルコート[セントラル硝子(株)]、ゼッフル[ダイキン工業(株)]、ザフロン[東亜合成(株)]、トリフロン[三井石油化学工業(株)]等の商品名で例示されるフッ素塗料が挙げられるが、これらの中で他のアクリル成分との相溶性、溶剤に対する溶解性などの加工性と防汚性を兼備するという点で、特にフッ化ビニリデン系重合体が好ましい。
【0085】フッ化ビニリデン系重合体としては、例えばポリフッ化ビニリデン、(フッ化ビニリデン・テトラフロロエチレン)共重合体、(フッ化ビニリデン・テトラフロロエチレン・ヘキサフロロプロピレン)共重合体 、(テトラフロロエチレン・ヘキサフロロプロピレン)共重合体、(フッ化ビニリデン・ヘキサフロロプロピレン)共重合体等が挙げられる。
【0086】尚、本発明がこれら具体例によって何等限定されるものでないことは勿論である。フッ化ビニリデン系重合体を用いれば、溶液状態においては他のアクリル系樹脂とも優れた相溶性を示すばかりでなく、皮膜を形成すると外部からの汚れ或いは内部からの異物の侵入を防止するバリア層を形成することにより、皮膜全体の防汚性を向上させることが可能となる。さらに、皮膜としては非常に伸長率の高い柔軟な皮膜を形成するため、基材にコーティングした場合、基材に対する追随性に優れ、折り曲げ、湾曲部を伴う用途への応用が容易である。
【0087】本発明に係わる被覆防汚用組成物に含まれる、上述した重合体(I)、(II)、(III)の割合は、特に制限はないが、重量比で2〜15/35〜70/20〜50であることが好ましい。その理由としては以下のことが考えられる。
【0088】先ず、重合体(I)の割合が2重量%より少ない場合、目的とする防汚性は得られず、又15重量%より多くなるとコストアップにつながるばかりでなく、系の相溶性は低下し、それに伴い皮膜強度も低下する。
【0089】次に、重合体(II)の割合が35重量%よりも少ない場合は、基材に対する密着性に劣り、皮膜自体の耐久性も低下する。逆にその割合が70重量%を超えると皮膜の柔軟性が低下し、伸びの少ない脆い皮膜となり、その結果として基材に対する追随性も失われる。
【0090】また、重合体(III)の割合が20重量%よりも少ない場合は、十分な防汚性能、特に基材側からの異物の侵入防止能を維持できず、さらには皮膜自体も柔軟性を失う。一方、50重量%を超えると基材に対する密着性は著しく低下する。
【0091】以上のことから、本発明者らの知見によれば、最適な割合の重合体(I)、(II)、(III)を用いることにより、より優れた防汚性能を発揮するコーティング剤を得ることが可能となる。
【0092】最後に、第四の成分である硬化剤(IV)についてであるが、硬化剤(IV)の導入は、コーティングする基材と上記(I)〜(III)の組成からなる組成物との密着性を向上させるだけでなく、(I)〜(III)の成分間の接着性を高め、より強靱かつ耐溶剤性に優れた皮膜を形成させることを可能にし得る。
【0093】使用できる硬化剤(IV)の種類には特に制限はなく、上述したような各重合体中に導入された官能基と反応する、分子中に2つ以上の反応性官能基を持つ反応性多官能化合物であれば良い。
【0094】反応性官能基としては、各重合体中に導入したものと同様のものが考えられ、例えば、水酸基、チオール基、カルボキシル基、アミノ基、イソシアネート基、アジリジニル基、グリシジル基基、アルコキシシリル基、シラノール基、シクロカーボネート基、酸無水基、ビニル基、エノールエーテル基、チオエーテル基、活性エステル基、アセトアセテート基、金属塩、金属酸化物及びこれらの官能基を各種ブロック化剤でブロック化したものが挙げられる。このような含有する官能基の種類は、1種類であっても2種類以上であっても良い。
【0095】また硬化剤(IV)は、これらの官能基を含む2官能性以上の化合物であれば、低分子化合物であっても高分子化合物であっても構わない。さらに、硬化剤(IV)は、重合体(I)及び/または(II)中に、硬化剤(IV)に含まれる反応性官能基と反応する官能基を含有する場合はもとより、反応する官能基を含まない場合も基材との密着性を向上させるという点から重要な役割を果たす。
【0096】硬化剤(IV)としては、特に制限されないが、原料の入手性、多様性、生成皮膜の強靱性、基材との密着性の向上等の理由から、有機エポキシ化合物、有機ポリイソシアネート化合物が工業的に有用であり好ましい。
【0097】有機エポキシ化合物としては、グリシジル基を2個以上分子内に含む化合物が挙げられる。例えば、各種エポキシ樹脂、また2つ以上のグリシジル基を有する低分子化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、スピログリコールジグリシジルエーテル等が挙げられるが、特にこれに限定されるものではない。
【0098】また、これらの架橋剤の中で架橋反応の簡便さからは有機ポリイソシアネート化合物がより好ましい。有機ポリイソシアネート化合物としては、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’ビフェニレンジイソシアネート3,3’−ジクロロ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等とこれら化合物の2量体、3量体あるいはフェノール類、オキシム類、アルコール類、活性メチレン類、メルカプタン類、酸アミド類、イミド類、アミン類、イミダゾール類、尿素類、カルバミン酸塩類、イミン類または亜硫酸塩類で部分的にブロック化されたポリイソシアネート等が挙げられる。
【0099】尚、本発明がこれら具体例によって何等限定されるものでないことは勿論である。これら以外にも、上記各種イソシアネート化合物と、次に挙げられるような各種活性水素化合物との反応により得られる末端にイソシアネート基を有するイソシアネートプレポリマー等が挙げられる。
【0100】活性水素化合物としては、イソシアネート基と反応し得る基、即ち活性水素原子を有する化合物であれば特に制限はなく、何れでも使用することができるが、一般にはアルコール性の水酸基を有する化合物が用いられ、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ないしは1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール若しくはジプロピレングリコールの如き各種ジオール類またはグリセリン、トリメチロールプロパン若しくはペンタエリスリトールの如き各種ポリオール類あるいはこれらの各種ジオール及び/またはポリオール類と各種の脂肪族ポリカルボン酸とから得られるポリエステルジオール、さらにはポリエチレングリコール、ポロプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールの如き各種ポリエーテルジオール、さらにはポリカーボネートジオール等が挙げられる。
【0101】これらの有機ポリイソシアネート化合物は、単独でも、2種類以上を混合した形でも構わない。尚、本発明がこれら具体例によって何等限定されるものでないことは勿論である。
【0102】本発明者らの知見によると、これらの内、上記重合体(I)、(II)、(III)との相溶性を考慮すると、有機ポリイソシアネート化合物としては、上述した様な単量体、2量体、3量体、或いはそれらがビュウレット構造を有するもの、或いは上述した単量体が水、トリメチロールプロパン等への付加体であるアダクトタイプ等の低分子量有機ポリイソシアネートが特に好ましい。
【0103】硬化剤(IV)の導入量は、重合体(I)、重合体(II)、重合体(III)の総重量に対して0.0001〜200重量%が好ましく、0.001〜100重量%がより好ましい。
【0104】また、本被覆用防汚性組成物には、目的に応じて種々の添加物を導入することができる。例えば、基材に被覆する際、基材との密着性を向上させる目的から、シラン系、チタン系、ジルコ−アルミネート系等のカップリング剤を併用することができる。カップリング剤の中でもシラン系のカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤としては、例えばジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルビニルメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。更にフッ素原子含有アルコキシシラン化合物、フッ素原子含有チタンアシレ−ト化合物、フッ素原子含有アルコキシジルコニウム化合物等のフッ素系カップリング剤も使用できる。
【0105】本発明に係る被覆樹脂組成物には、必要に応じて、顔料、染料、カ−ボン等の着色剤、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム等の無機粉末、高級脂肪酸、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(テトラフロロエチレン)、ポリエチレン等の有機微粉末、更に耐光性向上剤、耐候性向上剤等の各種充填剤を適宜添加することが可能である。
【0106】本発明に係わる基材としては、ガラス、石英、シリカ等の無機物、鉄、銅、フェライト、コバルト、ニッケル、アルミニウム等の金属及びそれらの合金、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメタアクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル等に代表される熱可塑性樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6ナフタレート等のポリエステル類、ポリパラフェニレンサルファイト、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂等のエンジニアリングプラスチック、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0107】これら基材は、密着性良く被覆する場合必要に応じて当業界公知のプライマー処理を施すことが可能である。本発明に係る被覆組成物は、必要に応じて目的に見合った溶剤で適当な濃度または粘度に調整した後、例えばグラビアコーター、ナイフコーター、デイッピング塗布、スプレー塗布等の方法により各種基材上に塗布することができ、塗布した後発泡、エンボス、シボ、プレス、印刷等の後加工を行うことも可能である。尚、本発明が上記具体例によって何等限定されるものでないことは勿論である。
【0108】本発明に係る被覆組成物は、例えば壁装材、床材、マーキングフィルム、反射シート、ポリ塩化ビニル鋼板、農業用ビニルフィルム、化粧紙、ポリ塩化ビニルシート、ポリ塩化ビニルレザー、人工皮革、合成皮革、人工大理石、ターポリン、テント、ネット、テーブルクロス、デスクマット等の防汚性コーティング剤として使用することが可能である。
【0109】また、各種塗料のトップコート剤としての利用も可能である。塗料としては、天然樹脂を使った塗料、例えば石油樹脂塗料、セラック塗料、ロジン系塗料、セルロース系塗料、ゴム系塗料、漆、カシュー樹脂塗料、油性ピヒクル塗料等、また、合成樹脂を使った塗料、例えばフェノール樹脂塗料、アルキッド樹脂塗料、不飽和ポリエステル樹脂塗料、アミノ樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、ビニル樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、シリコーン樹脂塗料、フッ素樹脂塗料等が挙げられが、特にこれらに限定されるものではない。
【0110】尚、本発明が上記具体例によって何等限定されるものでないことは勿論である。従って、本発明に係る被覆組成物を用いれば、従来通りに、基材に対する密着性、皮膜特性に優れ、かつ従来公知の組成物ではなし得ない防汚効果を有する各種基材用コーティング剤を提供することができる。
【0111】本発明に係る被覆組成物は、上記の使用目的以外に、表面潤滑性、耐擦傷性、耐油性、平滑性、撥水撥油性、耐水性、防湿性、防錆性、剥離性、低吸水性等に優れた被膜を形成することから、各種素材並びに基材の保護被覆膜としても使用することができる。
【0112】例えば、銅、アルミニウム、亜鉛等の非磁性体金属やポリエチレンテレフタレ−ト、ポリエチレン−2,6−ナフタレ−ト等のポリエステル類、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、セルロ−スアセテ−ト等のセルロ−ス誘導体、ポリカ−ボネ−ト等のプラスチックや、更に場合によりガラス、紙、木材、繊維、磁器及び陶器のようなセラミックス上に蒸着された強磁性合金(鉄、コバルト及び/またはニッケルを主成分とし、少量のアルミニウム、シリコン、クロム、マンガン、モリブデン、チタン、各種重金属類、希土類金属等含むもの)または微量酸素存在下で、鉄、コバルト、クロム等の磁性材料をポリエステル等のプラスチックフィルムに蒸着した磁気テ−プ、または磁気ディスクの磁性層等の保護被覆や、減摩性が特に要求される、磁気テ−プ、フロッピ−ディスク等の磁気記録媒体の表面及び背面処理剤としても好適である。
【0113】更にまた、防湿性等が特に要求される太陽電池用保護膜、光ファイバ、光ファイバケ−ブル、光ディスク、光磁気ディスク等の保護被覆剤としても好適である。更に、耐擦傷性、防汚性及び耐湿性に優れるので医療用具及び器具の表面保護、歯、義歯の表面保護及び虫歯のつめ物、型どりとしても使用できるまた、本発明の被覆組成物は、耐擦傷性に優れた被膜を形成できるので、各種成形品またはフィルム、シ−ト等のハ−ドコ−ト剤としても使用できる。
【0114】更に又、本発明の被覆組成物は、顔料及び分散剤を混入することによって、防汚性または非粘着性に優れた塗料またはインキを形成することができる。従って、船底塗料、着氷雪防止塗料としても有用である。
【0115】
【実施例】次に本発明をより詳細に説明するために、参考例、実施例及び比較例を掲げるが、これらの実施例等によって本発明が何等限定されるものでないことは勿論である。文中の「部」は、断わりのない限り重量基準である。
【0116】参考例1(重合体I−1の合成)
攪拌装置、コンデンサー、温度計を備えたガラスフラスコにフッ素系単量体A−1−1 15重量部、メチルメタクリレート(以下、MMAと略す)75重量部、2−ヒドロキシルエチルメタアクリレート(以下、2−HEMAと略す)5重量部、B−1−10 5重量部、そしてメチルイソブチルケトン(以下、MIBKと略す)233重量部を仕込み、窒素ガス気流中、還流下に、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNと略す)0.5重量部と、分子量調整剤としてラウリルメルカプタン 0.6重量部を添加した後、11時間還流し重合を完結させた。
【0117】参考例2〜5(重合体I−2、I−3、I−4の合成)
参考例1と同様にして重合体(I)溶液を得た。
【0118】
【表1】


尚、表1中の略号は以下の通りである。
n-BMA:n−ブチルメタアクリレートEA:エチルメタクリレートAA:アクリル酸参考例7〜13(重合体II−1、II−2、II−3、III−1、III−2)
重合体II−1、II−2、II−3、III−1、III−2としては表2に示す組成のものを用いた。
【0119】
【表2】


カイナーSL:(商品名:エルフ・アトケム・ジャパン社製、フッ化ビニリデン−4フッ化エチレン共重合体)
カイナーADS:(商品名:エルフ・アトケム・ジャパン社製、フッ化ビニリデン−4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体)
参考例14〜16(硬化剤IV−1、IV−2)硬化剤IV−1、IV−2としては下記のものを用いた。
【0120】
【表3】


バーノック DN−950:(商品名:大日本インキ化学工業社製 有機イソシアネート化合物)(固形分濃度:76重量%,NCO含有量:13重量%)
クリスボン CL−10 :(商品名:大日本インキ化学工業社製 有機イソシアネート化合物)(固形分濃度:100重量%:NCO含有量:21重量%)
エポライト 100MF :(商品名:共栄社化学社製 エポキシ樹脂)
(固形分濃度:100重量%:エポキシ当量:150)
実施例1〜16及び比較例1〜2参考例で示した重合体(I)、重合体(II)、重合体(III)、硬化剤(IV)をそれぞれ所定量混合し、不揮発分が15%、溶剤組成がメチルエチルケトン/メチルイソブチルケトン/酢酸-n-ブチル=35/5/60になるように各溶剤にて調製した。
【0121】調製した溶液は、アプリケーター(100μm)にて可塑化ポリ塩化ビニルシート(ポリ塩化ビニルに対して可塑剤含有量20%のものを基材Aとし、60%のものを基材Bとする。)に塗布し、70℃で5分間乾燥させた後,140℃で2分間、次いで50℃で18時間熱処理を行うことにより試験片を作製した。表4に各試料の混合比をまとめて示した。
【0122】
【表4】


【0123】化合物IV−1は固形分濃度76重量%であるが、表中の数値は見かけの値を示している。その他の数値は全て固形分比を表している。
<試験方法及び評価基準>防汚性並びに可塑剤のブリード防止性の評価は、マジック汚染性により行った。
【0124】マジック汚染性は、試験片に赤、青、黒の油性マジックで線引きした場合のマジックインキの付着性、並びに付着した試片を室温にて24時間放置した後、エタノール含浸脱脂綿で拭き取り、汚れの度合いを目視にて5段階で判定した。
【0125】可塑剤のブリード防止性は、上記マジック汚染試験に於いてマジックを付着させた後の放置温度を、50℃とすることにより可塑剤の影響を強く受ける環境を設定し、室温放置のものと比較した。
【0126】耐摩耗性、密着性の評価は、5cm×10cmの試験片を用いてスコット型もみ摩耗試験機〔(株)東洋精機製作所〕を用いて、荷重1kg、移動速度120回/分にて2000回後の皮膜の状態を5段階評価にて判定した。
【0127】耐擦傷性の評価は、学振型摩擦堅牢度試験機〔(株)興亜商会〕を用いて荷重1kgで対象布として1000回綿布をしゅう接した後の皮膜の状態を目視にて5段階評価で判定した。
【0128】耐溶剤性は、ガラス板状にキャストしたフィルムをトルエン、メチルエチルケトンに浸漬し、24時間後のゲル分率を測定することにより評価した。防汚性、耐摩耗性、密着性、耐擦傷性、耐溶剤性の評価結果は表5にまとめて示した。尚、表中5段階評価の数値は大きいものほど各性能が優れていることを示している。
【0129】
【表5】


【0130】表5より明らかなように、被覆用防汚性組成物は、可塑化されたポリ塩化ビニルの被覆用途において、極めて顕著な耐汚染性、可塑剤のブリード防止性を有する一方、耐摩耗性、密着性、耐擦傷性、耐溶剤性にも優れていることがわかる。
【0131】
【発明の効果】本発明の被覆組成物の内、重合体(I)は汚染付着防止性を、重合体(II)は基材との密着性をさらに重合体(III)は汚染物質の浸透防止性を発現させるための成分であって、これら3者を的確な配合比でブレンドすることにより、可塑剤のブリード防止性、防汚性に優れた皮膜を形成する。さらに、硬化剤(IV)を加えることにより,基材及び各成分間の密着性を向上させ、強靱な皮膜を形成させることが可能である。従って、本発明に係る組成物は、基材に対する密着性、皮膜特性に優れかつ長寿命の防汚効果を有する各種基材用コーティング剤を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】フッ素化(メタ)アクリレート(A)及び/又はポリシロキサン基含有(メタ)アクリレート(B)と、該(メタ)アクリレート(A)および該(メタ)アクリレート(B)以外の(メタ)アクリレート(C)とを重合させて得られる共重合体(I)と、(メタ)アクリロイル基を含有する単量体の重合体(II)と、フッ素化オレフィン系重合体(III)と硬化剤(IV)とを含有してなる被覆用防汚性組成物。
【請求項2】硬化剤(IV)が、有機ポリイソシアネート化合物であることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項3】フッ素化オレフィン系重合体(III)が、フッ化ビニリデン系重合体であることを特徴とする請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】フッ素化(メタ)アクリレート(A)及びポリシロキサン基含有(メタ)アクリレート(B)以外の(メタ)アクリレート(C)として、メタクリル酸メチルを使用することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】フッ素化(メタ)アクリレート(A)及びポリシロキサン基含有(メタ)アクリレート(B)以外の(メタ)アクリレート(C)として、硬化剤(IV)と反応する官能基含有の(メタ)アクリレートを使用することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】硬化剤(IV)と反応する官能基が、水酸基であることを特徴とする請求項5記載の組成物。
【請求項7】(メタ)アクリロイル基を含有する単量体の重合体(II)として、硬化剤(IV)と反応する官能基含有の重合体を使用することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】硬化剤(IV)と反応する官能基が、水酸基であることを特徴とする請求項7記載の組成物。
【請求項9】フッ素化(メタ)アクリレート(A)及び/又はポリシロキサン基含有(メタ)アクリレート(B)と、該(メタ)アクリレート(A)および該(メタ)アクリレート(B)以外の(メタ)アクリレート(C)とを重合させて得られる共重合体(I)と、(メタ)アクリロイル基を含有する単量体の重合体(II)と、フッ素化オレフィン系重合体(III)との割合が、重量比で2〜15:35〜70:20〜50であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の組成物。

【公開番号】特開平8−231743
【公開日】平成8年(1996)9月10日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−35134
【出願日】平成7年(1995)2月23日
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)