説明

被覆電線の導通検査方法とそのための電線ホルダ

【課題】導通部品のないホルダ内に収容された電線に対して導通検査を行うことができ、従って、電装品に接続された後に導通検査を行う必要のない導通検査方法を提供する。
【解決手段】内ホルダ(61)と内ホルダに被せるカバー(62)とから成る電線ホルダ(60)において、内ホルダ(61)に被覆電線(W1、W2、W3)を敷設する溝(63)を形成し、内ホルダ(61)にカバー(62)を被せた状態で被覆電線(W1、W2、W3)の位置する部位にカバー(62)が導通検査用端子(M1、M2、M3)を挿入するための開口(62K)を備え、被覆電線(W1、W2、W3)の絶縁被覆を除去した芯線(C1、C2、C3)を溝(63)に敷設し、内ホルダ(61)にカバー(62)をした後、開口(62K)に導通検査用端子(M1、M2、M3)を挿入して、導通検査をする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輌用室内照明装置の電線の導通検査に関するもので、特に導通部品のない電線ホルダに設けられたワイヤハーネスを構成する被覆電線の導通検査方法とそのための電線ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
<特許文献1記載の車輌用室内照明装置>
導通部品を内部に持たないコネクタに収容された電線の電気的接続を圧接部材を用いて行うことは、既に公知である(特許文献1参照)。特許文献1記載のコネクタは圧接用カバーを備えており、この圧接用カバーで、電線とコンタクトを圧接して電線とコンタクトと間の電気的接続を行なうものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−147273号公報
【0004】
<特許文献1記載の発明の問題点>
特許文献1の電線圧接型のコネクタは、複数の電線を保持した圧接カバーを直接ハウジングに押圧することで、ハウジング側の各コンタクトの圧接溝に圧入するものであり、圧接接続する電線の数量が少ない場合には効果があるが、電線の数量が多くなると大きな操作力が必要となり、専用の圧接用治具を使用しないと圧接作業ができない、という問題点があった。従って、専用の圧接用治具が整っていない現場等では、ワイヤハーネスを製造することが難しいという問題があった。
【0005】
この問題点を解決するために、本出願人は先に発明をし、特願2009−268928号として特許出願した(以後、「先行発明」という)。先行発明によれば、ワイヤハーネスの製造に専用の圧接用治具や手間のかかる端末処理が不要で、ワイヤハーネスの製造コストを低減することができ、かつ、ワイヤハーネスの配索時に端子の汚損等による品質低下がなく、信頼性を向上させることができるコネクタが得られる。
【0006】
図7は先行発明に係るホルダ受容部を備えたハウジングの斜視図である。図7では、ホルダ受容部を備えた電線ホルダが垂直に挿入されて、電線ホルダの取付用軸部がホルダ受容部のホルダ軸支部に係合した状態を示している。図7において、車輌用室内照明装置100は、ハウジング400を備え、ハウジング400の裏側400Rに第1コネクタ430を設けている。この第1コネクタ430はバスバー500を固定すると共に多数の圧接刃510を配置している。一方、電線W2をホルダ610とカバー620とによって挟持している第2コネクタ600は、回動軸600Sを中心に回動して第1コネクタ430の上に接触し、第2コネクタ600を第1コネクタ430に嵌合させることにより、多数の圧接刃510がそれぞれの対応する電線W2に食い込み電気的に接続するものである。
【0007】
<先行発明における問題点>
先行発明に係る車輌用室内照明装置100によれば、第2コネクタ600を回動軸600Sを中心に回動して第1コネクタ430の上に接触させればよいので、ワイヤハーネスの製造に専用の圧接用治具や手間のかかる端末処理が不要となり、ワイヤハーネスの製造コストを低減することができ、かつ、ワイヤハーネスの配索時に端子の汚損等による品質低下がなく、信頼性を向上させることができるようになった。
しかしながら、電線ホルダ内の電線には芯線露出部がなく、電装品に接続される際に圧接されるので、電装品に接続される前のワイヤハーネスの状態で電線の導通検査を行うことができない、という問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、この問題点を解決するためになされたもので、導通部品のない電線ホルダ内に収容された電線に対して導通検査を行うことができ、従って、電装品に接続された後に導通検査を行う必要のない導通検査方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために、本願発明は、下記(1)〜(3)を特徴としている。
(1) 被覆電線の導通検査方法において、検査対象である被覆電線の端部近傍の絶縁被覆を所定長さ除去し、除去により露出した芯線部位を開口付き電線ホルダに敷設し、前記開口に導通検査用端子を挿入して前記露出した芯線部位に接触させ、前記導通検査用端子と前記検査対象である被覆電線の他端との間に電流を流すことにより、導電部位を備えていない電線ホルダ付き被覆電線の導通を検査すること。
(2) 被覆電線の導通検査可能な電線ホルダであって、内ホルダと前記内ホルダに被せるカバーとから成る電線ホルダにおいて、前記内ホルダに被覆電線を敷設する溝を形成し、
前記内ホルダに前記カバーを被せた状態で前記被覆電線の位置する部位に前記カバーが導通検査用端子挿入用の開口を備えたこと。
(3) 前記内ホルダの前記溝の長さ方向に所定間隔をあけて、前記被覆電線の芯線を保持するための芯線保持部を形成したこと。
【発明の効果】
【0010】
(1)および(2)によれば、被覆電線の絶縁被覆の一部だけ所定の長さ除去して芯線を露出させ、その露出部分を開口を有するカバー付き内ホルダの頂部に敷設するので、頂部に敷設された電線の色から電線の配列が合っているかどうかの検査が可能となり、そして、カバーを内ホルダに被せてしまってもその開口に導通検査用端子を挿入するだけで導通検査ができるので、導通部品のない電線ホルダに設けられた被覆電線の導通検査が簡単に可能となる。
さらに、ワイヤハーネスが出来上がった時点で導通検査が簡単になされるので、製品完成後のこの種の検査を省くことができる。
また、この電線ホルダを最終的に車輌用室内照明装置に装着する場合、車輌用室内照明装置側の圧接刃が電線ホルダ内の芯線に食い込む部分に絶縁被覆がないのでホルダ嵌合の荷重が低減される。
(3)によれば、内ホルダに芯線保持部を備えることで、芯線保持部に絶縁被覆の除去した部分を合わせることができ、正確な位置決めを簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は本発明に係る導通検査方法に用いられる電線と電線ホルダを説明する斜視図で、図1(A)(1)は被覆電線の中間皮むき前、図1(A)(2)は被覆電線の中間皮むき後、図1(B)は嵌合前の状態の電線ホルダである。
【図2】図2は本出願人が別途考えた電線配索用治具を用いて図9の車輌用室内照明装置に組付けられるコネクタへの電線装着方法を示す図で、図2(A)(1)はコネクタ組付け前の斜視図、図2(A)(2)はコネクタを電線配索用治具上に仮固定した斜視図、図2(B)は電線を電線ホルダに装着する前の斜視図である。
【図3】図3は電線ホルダへの電線装着方法を示し、図3(A)は電線が電線ホルダに組み付けられる直前状態の斜視図、図3(B)は電線の仮固定の完成斜視図、図3(C)は電線ホルダの装着が完成した状態を示す斜視図である。
【図4】図4(A)は図3(B)の電線が敷設された電線ホルダの頭部の拡大図で、図4(A)(1)は斜視図、図4(A)(2)は図4(A)(1)のB−B矢視断面図、図4(B)は図4(A)の電線ホルダの変形例で、図4(B)(1)は斜視図、図4(B)(2)は図4(B)(1)のC−C矢視断面図である。
【図5】図5は本発明に係る導通検査方法の前作業を示す図で、図5(A)は導通検査用端子の挿入前、図5(B)は導通検査用端子の挿入後、図5(A)(1)は電線配索用治具を含む全体の斜視図、図5(A)(2)は図5(A)(1)の電線ホルダの頭部近傍の縦断面図、図5(B)(1)は電線配索用治具を含む全体の斜視図、図5(B)(2)は図5(B)(1)の電線ホルダの頭部近傍の縦断面図である。
【図6】図6は本発明の導通検査方法を実現する導通検査システム図である。
【図7】図7は本発明が対象とする車輌用室内照明装置の裏面斜視図である。
【図8】図8は本発明が対象とする車輌用室内照明装置を示す分解斜視図である。
【図9】図9は導通部品を内蔵しない電線ホルダを図8の車輌用室内照明装置に装着する状態を示す図で、図9(A)は本発明に係る電線ホルダを第1コネクタに嵌合させる嵌合前を示す裏面斜視図、図9(B)は嵌合完了状態を示す裏面斜視図である。
【図10】図10(A)は図9(B)の車輌用室内照明装置を裏面から見た平面図、図10(B)は図10(A)のD−D矢視断面図である。
【図11】図11(C)は図10(B)の楕円で囲った嵌合完了した第1コネクタの拡大図であり、図11(A)および(B)は、嵌合完了した第1コネクタを示す図11(C)に至るまでの嵌合前と嵌合途中を示す縦断面図である。
【図12】図12は車輌用室内照明装置のバスバーと金具の装着状態を示す図で、図12(A)はバスバーと金具の装着前を示す裏面斜視図、図12(B)は装着完了状態を示す裏面斜視図、図12(C)は図12(B)のA部拡大図である。
【図13】図13は車輌用室内照明装置のスイッチの装着状態を示す図で、図13(A)は装着前を示す裏面斜視図、図13(B)は装着完了状態を示す裏面右斜視図、図13(C)は装着完了状態を示す裏面左斜視図である。
【図14】図14は車輌用室内照明装置のスイッチノブの装着状態を示す図で、図14(A)はスイッチノブの装着前を示す正面斜視図、図14(B)は装着完了状態を示す正面斜視図である。
【図15】図15は車輌用室内照明装置のバルブ(電球)の装着状態を示す図で、図15(A)はバルブの装着前を示す正面斜視図、図15(B)は装着完了状態を示す正面斜視図である。
【図16】図16は車輌用室内照明装置のレンズの装着状態を示す図で、図16(A)はレンズの装着前を示す正面斜視図、図16(B)は装着完了状態を示す正面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〈本発明が対象とする車輌用室内照明装置〉
まず、本発明の導通検査方法が適用された電線付き電線ホルダが取り付けられる車輌用室内照明装置について、図面を参照して簡単に説明する。
図8は本発明が対象とする車輌用室内照明装置を示す分解斜視図である。図8において、車輌用室内照明装置10は、車輌の車室を区画する隔壁板(天井板)に取り付けられ、略長方形状のレンズ20、縦長のスイッチノブ30、略長方形状のハウジング40、バスバー50とから概略構成されている。
【0013】
ハウジング40の表側40Fにはバルブ収容室41が形成され、バルブ収容室41の中央部には光源であるバルブ41Bが組付けられ、ハウジング40の側部にはスイッチ収容室42が設けられ、スイッチノブ30が表側40Fから摺動自在に組付けられる。
また、ハウジング40の一側部にはハウジング40の側方に突出して第1コネクタ43が設けられている。この第1コネクタ43には、ワイヤハーネスを構成する電線Wが固定された電線ホルダ60(図9(A))が嵌合する。ハウジング40の第1コネクタ43と反対側の他側部には、車輌用室内照明装置10を車輌室内の隔壁板に取り付けるための金属クリップ44(図8)が固定される。スイッチノブ30と連動するスイッチ42R(図9)が、裏側からスイッチ収容室42内に組付けられ、ハウジング40の裏側には、スイッチ42Rやバルブ41B等を電気的に接続するための回路であるバスバー50(図8)が組付け固定される。バスバー50の一端には、複数の圧接刃51(図8)が個々に並列状に縦方向に配置され、圧接刃51は第1コネクタ43内に装着固定されている。
【0014】
次ぎに、圧接刃51による電気接続を図9〜図11を用いて説明する。
図9〜図11は導通部品を内蔵しない電線ホルダを図8の車輌用室内照明装置に装着する方法を説明する図で、図9(A)は本発明に係る電線ホルダ60(後述)を第1コネクタに嵌合させる嵌合前を示す裏面斜視図、図9(B)は嵌合完了状態を示す裏面斜視図、図10(A)は嵌合完了状態を示す裏面から見た平面図、図10(B)は図10(A)のD−D矢視断面図、図11(C)は図10(B)の楕円43で囲った嵌合完了した第1コネクタの拡大図であり、図11(A)および(B)は、嵌合完了した第1コネクタを示す図11(C)に至るまでの嵌合前と嵌合途中を示す縦断面図である。
図9(A)および(B)において、第1コネクタ43には、電線Wが固定された電線ホルダ60が嵌合する。ハウジング40の裏側には、スイッチ42Rとバスバー50とが固定され、バスバー50の圧接刃51(図8)が第1コネクタ43に固定されている。電線ホルダ60が導通部品を内蔵していなくても、電線ホルダ60が図9(B)のように第1コネクタ43に挿入されて第1コネクタ43と嵌合すると、その内部では図10(A)および(B)で示すように、圧接刃51が電線ホルダ60の開口から(本発明により電線ホルダ60には圧接刃1の挿入する開口が本発明により設けられている。これについては後述する。)内部に入り、被覆電線Wの芯線C(被覆電線Wの絶縁被覆は本発明により事前に除去されている。これについては後述する。)に直接食い込み、電線Wと圧接刃51が電気的に接続された状態となる。
【0015】
〈嵌合前〉
図11(A)は、本発明に係る電線ホルダ60を第1コネクタ43に嵌合させる前を示す縦断面図で、電線ホルダ60は、内ホルダ61と、内ホルダ61に被せられるカバー62とから成っている。図11(A)は内ホルダ61の頭部(図で左側)に電線(芯線)W1、W2、W3が敷設されており、この状態で全体をカバー62が被っている。
一方、ハウジング40側にはバスバー50が固定されており、バスバー50の先端に圧接刃51が形成されている。
〈嵌合途中〉
図11(B)は、嵌合途中を示す縦断面図で、圧接刃51が電線ホルダ60のカバー62に形成された開口62Kから入って、内ホルダ61の頭部に敷設された電線(芯線)W2を圧接刃51のスロット部に導入している。内ホルダ61のロックビーク61Bは第1コネクタ43の係止部43Bにまだ係合してない。
〈嵌合完了〉
図11(C)は、嵌合完了を示す縦断面図で、ロックビーク61Bは係止部43Bに係合され、圧接刃51は電線(芯線)W2に食い込み、圧接が完了している。このとき被覆電線W2の絶縁被覆は既に本発明により除去されている(後述)ので、圧接刃51が入る際のホルダ嵌合の荷重が低減される。
【0016】
<車輌用室内照明装置の各部品の組み付け工程>
(1)〈金属クリップ44およびバスバー50の装着:図12〉
図12は、車輌用室内照明装置のバスバーと金具の装着状態を示す図で、図12(A)は装着前を示す裏面斜視図、図12(B)は装着完了状態を示す裏面斜視図、図12(C)は図12(B)のA部拡大図である。
図12において、ハウジング40の第1コネクタ43(図9〜図11(A))と反対側の側面に設けられた係合溝44R(図12(A))に金属クリップ44が係合固定され、ハウジング40の裏側全体にバスバー50が装着固定される。バスバー50は、裏側に複数形成された突起40T(図12(C))に仮固定された後、突起40Tの先端を溶融する熱溶着方法でバスバー50を裏側に固定する。
(2)〈スイッチ42Rの装着:図13〉
図13は車輌用室内照明装置のスイッチの装着状態を示す図で、図13(A)はスイッチの装着前を示す裏面斜視図、図13(B)は装着完了状態を示す裏面右斜視図、図13(C)は装着完了状態を示す裏面左斜視図である。スイッチ42Rは、ハウジング40に設けられたスイッチ収容室42内に、ハウジング40の裏側から装着固定される。
(3)〈スイッチノブ30の装着:図14〉
図14は車輌用室内照明装置のスイッチノブの装着状態を示す図で、図14(A)はスイッチノブの装着前を示す正面斜視図、図14(B)は装着完了状態を示す正面斜視図である。スイッチノブ30は、ハウジング40の表側40Fからスイッチ42Rと連動できるようにスイッチ収容室42の内部を覆い隠すようにスイッチ収容室42内に摺動自在に装着される。
(4)〈バルブ41Bの装着:図15〉
図15は車輌用室内照明装置のバルブの装着状態を示す図で、図15(A)はバルブの装着前を示す正面斜視図、図15(B)は装着完了状態を示す正面斜視図である。バルブ41Bはハウジング40の表側40Fからバルブ収容室41の略中央部に装着され、バスバー50と電気的に接続される。
(5)〈レンズ20の装着:図16〉
図16は車輌用室内照明装置のレンズの装着状態を示す図で、図16(A)はレンズの装着前を示す正面斜視図、図16(B)は装着完了状態を示す正面斜視図である。レンズ20はハウジング40の表側40Fからハウジング40を覆い隠すようにして、レンズ20の両端側に形成された複数の係合片20Sとハウジング40の両端側に形成された係合突起40Sとが係合して、ハウジング40に装着される。その際、レンズ20に設けられた開口部21がスイッチノブ30の側面に周接する。
以上で、本発明が対象とする車輌用室内照明装置の全体構成およびこれらを構成する主な部品について説明した。
【0017】
〈絶縁被覆の除去〉
図1はこの車輌用室内照明装置10(図9(A)および(B))の第1コネクタ43(図9(A)および(B))に嵌合される電線ホルダ(第2コネクタ)60(図9(A)および(B))とこれに敷設される被覆電線Wを説明する斜視図で、図1(A)(1)は被覆電線の中間の絶縁被覆を除去する前、図1(A)(2)は除去後、図1(B)は図1(A)(2)で絶縁被覆の除去された芯線を敷設するための電線ホルダである。
図1(A)(1)に示す電線はワイヤハーネスを構成する複数の被覆電線W1、W2、W3で、それぞれの絶縁被覆の中心に芯線C1、C2、C3が通っている。複数の被覆電線W1、W2、W3はそれぞれ区別できるように異なる電線色としてある。
本発明に係る導通検査方法を実施するに当たって、3本の被覆電線W1、W2、W3の端部近傍で所定の長さに亘ってその絶縁被覆を除去して、図1(A)(2)に示すように、芯線C1、C2、C3を露出させる。所定の長さとは、後述する内ホルダ61の頂部を覆う開口62Kに対応する長さである。
【0018】
〈電線ホルダへの敷設〉
このように芯線C1、C2、C3が露出した電線W1、W2、W3は、図1(B)に示す電線ホルダ60の内ホルダ61の図で頂部に設けられた3本の溝63にその露出した芯線C1、C2、C3を敷設し、その両端を両端下方に折り曲げて両端の溝に敷設する。
【0019】
〈電線ホルダ60の構成〉
ここで、図1(B)に示す電線ホルダ60の構成について説明する。
電線ホルダ60は、内ホルダ61と、内ホルダ61の端部と可撓ヒンジ61Hで連結されたカバー62とから成っている。内ホルダ61には電線Wを敷設する複数の溝63がその頂部と両側部に亘って形成されている。内ホルダ61にはロック61Rが形成されており、カバー62が内ホルダ61に被せられたとき、ロック61Rと係合する嵌合ロック62Rがカバー62に形成されている。内ホルダ61には図で下部縁部にカバー差込部61Kが形成されており、カバー62と一体に形成されている可撓ヒンジ61Hの先端がカバー差込部61Kに差し込まれることで、内ホルダ61とカバー62が可撓ヒンジ61Hを介して一体となっている。また、内ホルダ61の外側にロックビーク61Bがあり、これは嵌合する相手側の第1コネクタ43(図11(B)および(C)参照)の係止部43Bと係合する。
カバー62は断面コ字状となっているのでカバー62が内ホルダ61に被せられたとき、カバー62の両脚部が構造的に開き易くなるため、これが開かないように両脚部の末端近傍同士を連結するカバー開き防止リブ62Sがカバー62に形成されている。
また、カバー62の図で下端は図1(B)では見難いが、カバー62が内ホルダ61に被せられたとき、内ホルダ61の頂部に敷設された芯線C1、C2、C3が隠れないようにそれぞれの検査部位に開口62Kが形成されている。開口62Kの形状は限定しないが、後述の導通検査用端子M1、M2、M3(図5(A)および(B))を差し込むことができる形状であれば何でもよい。
【0020】
〈電線ホルダの電線を配索する電線配索用治具の構成〉
図2は本出願人が別途考えた電線配索用治具を用いて図9の車輌用室内照明装置に組付けられるコネクタへの電線装着方法を示す図で、図2(A)(1)はコネクタ組付け前の斜視図、図2(A)(2)はコネクタを電線配索用治具上に仮固定した斜視図、図2(B)は電線を電線ホルダに装着する前の斜視図である。
図2(A)(1)において、電線配索用治具70には、電線ホルダ用台座71が電線配索用治具70の中心線上の一方の縁部近傍に設けられている。電線ホルダ用台座71は内ホルダ61を載置するための内ホルダ用台座71Aと、カバー62を載置するためのカバー用台座71Bとから構成されているので、電線ホルダ60の内ホルダ61とカバー62とをそれぞれ内ホルダ用台座71Aとカバー用台座71Bに載置する。その際、内ホルダ用台座71Aからホルダ用の位置決め突起71Tが上方に突出して設けられており、この位置決め突起71Tに内ホルダ61を載置することで、内ホルダ61の位置決めが正確になされる。
カバー用台座71Bの上に載置されているカバー62をカバー用台座71Bから外して、可撓ヒンジ61Hを介して内ホルダ61の上まで回転させると、カバー62は内ホルダ61の上から内ホルダ61にスムーズに被さり、互いに嵌合し、電線ホルダ60が完成する。
電線配索用治具70には、第3コネクタ用位置決めピン72Aと電線用位置決めピン72Bの2種類の位置決めピン72が立設されている。
第3コネクタ用位置決めピン72Aは第3コネクタ80を位置決めするための位置決めピンで、電線配索用治具70の縁部にその2個が電線の幅に相当する間隔を互いにあけて並設されている。
電線用位置決めピン72Bは電線を位置決めするための位置決めピンで、複数(図2では4個)のピンが電線配索用治具70の四隅の近傍にそれぞれ1個設けられている。
第3コネクタ用位置決めピン72Aで固定された第3コネクタの上下からそれぞれ複数本(図では3本)の電線Wが水平方向に延出し、その各電線Wを上下そのまま各電線用位置決めピン72Bの側面に這わせて90度方向転換させることで、電線配索用治具70の四隅を引き回すことができる。
【0021】
〈電線配索用治具を用いた電線ホルダの電線配索方法〉
次ぎに、このような電線配索用治具を用いた電線ホルダの電線配索方法について説明する。
(1)組付方法の最初の工程は、電線ホルダ60の内ホルダ61をホルダ用位置決め突起71Tの直上に持ってくる(図2(A)(1)参照)。
(2)内ホルダ61を図2(A)(1)の白抜き矢印の下方に降ろして、ホルダ用位置決め突起71Tの上に挿入し、電線ホルダ60を台座71の上に仮固定する(図2(A)(2)参照)。
(3)複数本の電線W付き第3コネクタ80を電線配索用治具70の上に持ってくる。このとき、第3コネクタ80側は一対の第3コネクタ用位置決めピン72A、72Aの真上に、また、3本の電線Wは上下方向に揃えて電線配索用治具70の上を真っ直ぐ横切る方向に持ってくる(図2(B))。
(4)電線W付き第3コネクタ80全体を、そのまま、図2(B)の白抜き矢印の下方に降下させて、まず、第3コネクタ80を第3コネクタ用位置決めピン72A、72Aの外側(電線配索用治具70の反対側)に当接させ(図2(B))、第3コネクタ80の付け根の3本の電線Wを上下方向に揃えて第3コネクタ用位置決めピン72A、72Aの間に挟み込む(図3(A))。
(5)次ぎに、第3コネクタ80から延出する上下方向に揃えて成る3本の電線Wを、第3コネクタ用位置決めピン72Aに直近の電線用位置決めピン72Bの側面に沿わせて方向転換させて、さらに次の電線用位置決めピン72Bの側面に沿わせて、内ホルダ用台座71Aの近傍まで持ってくる。
(6)内ホルダ用台座71Aまで到達した上下方向に揃えて成る3本の電線Wは、内ホルダ用台座71Aの上に仮固定されている内ホルダ61の頂部の複数の溝63にそれぞれ水平方向に揃うように向きを変えて挿入される。
(7)内ホルダ61の頂部を経た3本の電線Wは再び上下方向に揃って次の電線用位置決めピン72Bの側面にそれぞれ沿って方向転換し、さらに次の電線用位置決めピン72Bの側面にそれぞれ沿って方向転換して、最終的に電線配索用治具70の反対側から電線Wを外側へ導出する(図3(A))。
(8)第3コネクタ80から延出する上下方向に揃った3本の電線W部分の端部を図3(B)の矢印方向F(第3コネクタ80の反対方向)に強く引っ張ると、電線用位置決めピン72Bにより電線Wの弛みが緩和され、内ホルダ61の複数の溝63に緩く敷設されていた電線Wは各溝63の中にしっかり固定され、絶縁被覆W1、W2、W3(図1(A)(2)参照)の芯線C1、C2、C3(図1(A)(2)参照)が内ホルダ61の頂部の複数の溝にそれぞれ収容される(図3(B))。
(9)この状態でカバー62をヒンジ部で折り返して内ホルダ61に被せることにより、電線Wを内ホルダ61とカバー62とで挟持させて、電線Wを電線ホルダ60内に固定させる。この状態で、カバー62の開口62Kの下方には絶縁被覆W1、W2、W3(図1(A)(2)参照)の芯線C1、C2、C3(図1(A)(2)参照)が位置している。
以上の工程により、電線ホルダ60への電線Wの装着が完了する(図3(C)参照)。
このような電線配索用治具70を用いることで、電線Wの弛みが解消でき、ホルダへの取り付けを正確に行うことができる。
【0022】
〈電線が敷設された内ホルダ61の頭部の説明〉
図4(A)は図3(B)の電線が敷設された電線ホルダの頭部の拡大図で、図4(A)(1)は斜視図、図4(A)(2)は図4(A)(1)のB−B矢視断面図である。
内ホルダ61の頂部に3本平行に設けられた溝63にそれぞれ電線W1、W2、W3が敷設され、各電線W1、W2、W3の頂部の絶縁被覆H2(図4(A)(2)参照)が剥がされて、芯線C1,C2、C3(図4(A)(2)参照)が露出しているのが分かる。
溝63の幅は被覆電線W1、W2、W3の外径より若干狭く形成されているので、被覆電線W1、W2、W3の持つ屈曲性と内ホルダ61の挟持により、被覆電線W1、W2、W3はストレインリリーフされる。
【0023】
〈実施例2としての内ホルダ61’〉
図4(B)は図4(A)の内ホルダ61の変形例(実施例2)である内ホルダ61’を示す頭部の拡大図で、図4(B)(1)は斜視図、図4(B)(2)は図4(B)(1)のC−C矢視断面図である。
内ホルダ61’が内ホルダ61と異なるのは、頭部の3本の溝63のそれぞれに2個の芯線保持部61Fを所定の間隔をあけて設けている点である。芯線保持部61Fの形状は、これによって保持された電線を前後左右に移動し難くするものであればどのような形状のものでもよいが、実施例2では断面コ字状をした部材であり、断面コ字状の開口部を上に向くように形成している。2個の芯線保持部61Fの所定の間隔とは、図4(A)(2)に示す2個の芯線保持部61Fの外側同士の間隔が、被覆電線W2の絶縁被覆H2が除去されて剥き出しになっている芯線C2の長さである。
したがって、内ホルダ61’の平行に設けられた3本の溝63の2個のコ字状の芯線保持部61F間に各電線W1、W2、W3の芯線C1、C2、C3の部位を押し込み固定することで、正確に位置決めされ、電線W1、W2、W3は前後左右に移動し難くなる。
【0024】
〈カバー62による覆い〉
内ホルダ61および内ホルダ61’の頭部に被覆電線W1〜W2を敷設したら(図3(B)、図4(A)および(B)参照)、カバー用台座71B(図3(B)参照)の上に固定されているカバー62をカバー用台座71Bから取り外し、内ホルダ71A側に回転させて内ホルダ61の上に被せ、両者を嵌合させると、図3(C)のように電線ホルダ60が完成する。このとき、カバー62の底部に形成してあった開口62K(図1(B)参照)は、図3(C)では電線ホルダ60の頭部に位置している。
【0025】
〈導通検査用端子M1、M2、M3の挿入〉
図5は本発明に係る導通検査方法の前作業を示す図で、図5(A)は導通検査用端子の挿入前、図5(B)は導通検査用端子の挿入後、さらに、図5(A)(1)は電線配索用治具を含む全体の斜視図、図5(A)(2)は図5(A)(1)の電線ホルダの頭部近傍の縦断面図、図5(B)(1)は電線配索用治具を含む全体の斜視図、図5(B)(2)は図5(B)(1)の電線ホルダの頭部近傍の縦断面図である。
図5(A)において、導通検査用端子M1、M2、M3を電線ホルダ60の上方へ移動させ、上方から導通検査用端子M1、M2、M3を下降させると、図5(B)(1)のように、電線ホルダ60のカバー62の3つの開口62Kにそれぞれ入り込む。その内部では、例えば導通検査用端子M2は図5(B)(2)のように開口62Kを介して芯線C2の上部に接触し、導通検査用端子M2と芯線C2とが電気的に接続状態となる。
他の導通検査用端子M1、M3も同様に芯線C1、C3と接触し、それぞれ電気的に接続状態となる。
このように導通検査用端子M1、M2、M3を電線ホルダ60の各開口62Kに差し込むことで、導通検査用端子M1、M2、M3と被覆電線W1、W2、W2の芯線C1、C2、C3とが電気的に接触状態となるので、図6のような導通検査システムが可能となる。
【0026】
〈導通検査方法を実施〉
図6は本発明の導通検査方法を実現する導通検査システム図である。
図6において、導通検査用端子M1、M2、M3を取り付けた端子保持具2と電源4の一端4T1とがそれぞれメータ(電流計)5を介して電線6で接続されている。
一方、電線ホルダ60には、図2および図3で説明した電線配索用治具70によって配索された検査対象の被覆電線W1、W2、W3が装着されており、被覆電線W1、W2、W3の各他端は第3コネクタ80(図3(C)参照)に接続されている。この第3コネクタ80には内部に導電端子が内蔵されているので、各導電端子はそれぞれ3本の電線6を介して電源4の他端4T2にそれぞれ接続されている。なお、電線ホルダ60を通過した被覆電線W1、W2、W3の後端部位は折り返されて電線ホルダ60の被覆電線W1、W2、W3と纏めて接着テープなどで後端処理されている。
そこで、導通検査用端子M1、M2、M3を電線ホルダ60のカバー62のそれぞれの開口62Kに差し込むと、導通検査用端子M1、M2、M3は図5で説明したように被覆電線W1、W2、W3の芯線C1、C2、C3とそれぞれ接触することになり、導通検査用端子M1、M2、M3のそれぞれが電源4を含んだ閉回路が形成される。
そこで、検査対象の被覆電線W1、W2、W3のそれぞれが途中で断線していなければメータ(電流計)5に電流が流れるため、メータの指針が大きく振れることで「断線なし」が分かる。
逆に、検査対象の被覆電線W1、W2、W3のいずれかが途中で断線していれば、その電線中にあるメータ(電流計)5に電流が流れないので、メータの指針が振ないことから「断線」が分かる。
このように、導通検査はメータ5のそれぞれの指針が振れていることを確認することで導通検査合格となる。
メータ5としては電流計を用いたが、電圧計でもよい。
また、メータ5の代わりに発光ダイオードを用いてもいい。この場合は、発光ダイオードが発光すれば導通検査合格となる。
なお、電線ホルダ60のカバー62の3つの開口62Kが、被覆電線の長さ方向に互いにずらして形成されているのは、導通検査用端子M1、M2、M3が互いに接触する恐れを回避するためである。
【0027】
<本発明のまとめ>
本発明によれば、被覆電線の絶縁被覆の一部だけ所定の長さ除去して芯線を露出させ、その露出部分を開口を有するカバー付き内ホルダの頂部に敷設するので、頂部に敷設された電線の色から電線の配列が合っているかどうかの検査が可能となり、そして、カバーを内ホルダに被せてしまってもその開口に導通検査用端子を挿入するだけで導通検査ができるので、導通部品のない電線ホルダに設けられた被覆電線の導通検査が簡単に可能となる。
さらに、ワイヤハーネスが出来上がった時点で導通検査が簡単になされるので、製品完成後のこの種の検査を省くことができる。
また、この電線ホルダを最終的に車輌用室内照明装置に装着する場合、車輌用室内照明装置側の圧接刃が電線ホルダ内の芯線に食い込むのであるが、圧接刃が入る部分に絶縁被覆が既にないのでホルダ嵌合の荷重が低減される。
また、芯線保持部を備えた電線ホルダを用いることで、芯線保持部に絶縁被覆の除去した部分を合わせることができ、正確な位置決めが簡単に行うことができる。
【符号の説明】
【0028】
10:車輌用室内照明装置
20:レンズ
30:スイッチノブ
40:ハウジング
41:バルブ収容室
41B:バルブ
42:スイッチ収容室
42R:スイッチ
43:第1コネクタ
43B:係止部
44:金属クリップ
50:バスバー
51:圧接刃
60:電線ホルダ
61、61’:内ホルダ
61B:ロックビーク
61F:芯線保持部
61H:可撓ヒンジ
61K:カバー差込部
62:カバー
62K:開口
62R:嵌合ロック
62S:カバー開き防止リブ
63:溝
70:電線配索用治具
71A:内ホルダ用台座
71B:カバー用台座
80:第3コネクタ
4:電源
4T1:一端
4T2:他端
5:メータ(電流計)
6:電線
C1、C2、C3:芯線
M1、M2、M3:導通検査用端子
W1、W2、W3:被覆電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象である被覆電線の端部近傍の絶縁被覆を所定長さ除去し、除去により露出した芯線部位を開口付き電線ホルダに敷設し、前記開口に導通検査用端子を挿入して前記露出した芯線部位に接触させ、前記導通検査用端子と前記検査対象である被覆電線の他端との間に電流を流すことにより、導電部位を備えていない電線ホルダ付き被覆電線の導通を検査することを特徴とする被覆電線の導通検査方法。
【請求項2】
内ホルダと前記内ホルダに被せるカバーとから成る電線ホルダにおいて、
前記内ホルダに被覆電線を敷設する溝を形成し、
前記内ホルダに前記カバーを被せた状態で前記被覆電線の位置する部位に前記カバーが導通検査用端子挿入用の開口を備えたことを特徴とする被覆電線の導通検査可能な電線ホルダ。
【請求項3】
前記内ホルダの前記溝の長さ方向に所定間隔をあけて、前記被覆電線の芯線を保持するための芯線保持部を形成したことを特徴とする請求項2記載の導通検査可能な電線ホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−227022(P2012−227022A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94359(P2011−94359)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】