説明

裁断機への生地被覆シート供給装置および方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、裁断テーブル上に裁断すべき生地を真空吸引して保持しながら裁断データに従ってパーツの裁断を行う裁断機に、真空保持特性を増進するための空気不透過性被覆シートを供給するための裁断機への空気生地被覆シート供給装置および方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、裁断機、特に自動裁断機においては、裁断テーブル上に裁断すべき生地を真空吸引しながら保持し、裁断テーブル上を自在に移動可能な裁断用刃物によって裁断データに従ってパーツの外形などを裁断している。裁断すべき生地は一般に非通気性ではないので、生地を単に裁断テーブル上に載置するだけでは充分に保持することができない。このため、生地をさらに空気不透過性のシートで覆い、真空保持を確実に行うようにしている。生地被覆シートとしては、たとえばポリエチレンや塩化ビニルなどの合成樹脂フィルムが用いられている。
【0003】図14は、特公昭62−25785号公報に開示されている先行技術の構成を簡略化して示す。裁断機1は、加工テーブル2、上流側の転送テーブル3および下流側の転送テーブル4から成る裁断テーブルを有する。裁断キャリッジ5は、加工テーブル2および転送テーブル3,4の幅方向の両側に設けられるレール2a,3a,4a上を走行移動可能である。裁断キャリッジ5には、裁断キャリッジ5上を幅方向に移動可能な裁断ヘッド6が設けられ、生地の裁断を行うための刃物6aが備えられている。ラベルキャリッジ7は、裁断キャリッジ5と同様に、加工テーブル2および転送テーブル3,4の両側に設けられるレール2a,3a,4a上を走行移動可能である。ラベルキャリッジ7は、走行移動しながら、生地にパーツ識別のためのラベルを付与する機能を有する。ラベルキャリッジ7には、さらに生地シートなどの挟持装置8が設けられる。加工テーブル2と上流側の転送テーブル3との境界付近の上方には、切断装置9が設けられる。
【0004】上流側の転送テーブル3の端部には、生地シートおよび生地被覆シートをそれぞれ巻回した生地シート原反10および被覆シート原反11がそれぞれ軸支される。ラベルキャリッジ7に設けられる挟持装置8は、生地シート原反10から巻戻される生地シートの先端を挟持し、転送テーブル3から加工テーブル2へ移動しながら生地シートを加工テーブル2上に所定長さだけ広げる延反を行う。1枚の生地シートの延反が終了すると、切断装置9によって切断し、さらに生地シートの延反を繰返して積層シート12を加工テーブル2上に形成する。所定枚数の積層シート12が形成された後、ラベルキャリッジ7の挟持装置8は、被覆シート原反11から巻戻される生地被覆シートの先端を挟持し、加工テーブル2上に載置されている積層シート12上を被覆する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】図14に示すような先行技術では、同一のラベルキャリッジ7および挟持装置8を用いて、加工テーブル2に生地シートを広げて積重ねて積層シート12を形成した後で生地被覆シートで覆うようにしている。このような延反作業を行っているときには、裁断キャリッジ5を稼働させて裁断を行うことはできない。この先行技術では、転送テーブル3,4がそれぞれ加工テーブル2とは独立に図14の紙面に垂直な方向に移動可能であり、複数の加工テーブル2を用いて、1つの加工テーブル2上に積層シート12を延反によって形成しながら、他の加工テーブル22上に既に形成された積層シート12に対して裁断を行うことを可能にしている。
【0006】しかしながら、たとえば特開平5−69382号公報に開示されているような裁断テーブルをコンベア駆動方式とした自動裁断機では、裁断テーブルのコストが上昇する。このような裁断機では、裁断テーブル上での延反は行わず、専用の延反機によって延反された生地を搬入して効率的に裁断することを目的としている。このため、コンベア駆動方式の裁断テーブルを有する自動裁断機においては、シート材を広げる機構は設けられておらず、空気不透過性のシートを被覆する作業は人手で行う必要がある。たとえば裁断テーブルの上流側で、幅方向の両側から立設した支柱でロール状に巻かれた生地被覆シートを軸支し、裁断用の生地の搬入時など、必要に応じて、作業者が生地被覆シートを繰り出して生地を被覆する。生地を充分に覆うためには、作業者が生地の両側から作業を行う必要があり、2人の作業者が必要となる。
【0007】本発明の目的は、コンベア駆動方式の裁断テーブルを有する自動裁断機においても、自動的に被覆シートの供給が可能な裁断機への生地被覆シート供給装置および方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、生地をコンベア駆動方式の裁断支持面上で吸引して保持しながら、裁断データに従って生地からパーツを裁断する自動裁断機に、生地の表面を覆う空気不透過性の被覆シートを供給するための装置であって、裁断支持面への生地の搬入側で、自動裁断機の幅方向の両側に立設され、被覆シートが巻回されたロールを支持する支持手段と、支持手段によって支持されたロールから、被覆シートをコンベア駆動される裁断支持面への生地の搬入に従って繰り出す繰り出し手段とを含むことを特徴とする裁断機への生地被覆シート供給装置である。
【0009】また本発明は、前記繰り出し手段の下方に、繰り出される被覆シートを切断する切断手段を設けることを特徴とする。
【0010】また本発明は、前記繰り出し手段から繰り出される被覆シートを、裁断支持面のコンベア駆動方向に誘導案内する誘導手段を備えることを特徴とする。
【0011】また本発明の前記誘導手段は、前記繰り出し手段の下方から空気を裁断支持面の方向に噴出させて被覆シートを誘導案内することを特徴とする。
【0012】また本発明の前記誘導手段は、繰り出された被覆シートに接触しながら裁断支持面の方向に誘導案内することを特徴とする。
【0013】また本発明の前記自動裁断機の搬入側の上流には、延反された生地の搬出手段を有する延反機が設置され、延反機から搬入される生地を検出する検出手段と、検出手段によって生地が検出されるとき、延反機の搬出速度に関連付けてコンベアの駆動と繰り出し手段からの被覆シートの繰り出しとを行わせる制御手段とを含むことを特徴とする。
【0014】さらに本発明は、生地をコンベア駆動方式の裁断支持面上で吸引して保持しながら、裁断データに従って生地からパーツを裁断する自動裁断機に、生地の表面を覆う空気不透過性の被覆シートを供給するための方法であって、裁断支持面への生地の搬入経路上方で、被覆シートが巻回されたロールを支持し、ロールから被覆シートを繰り出して裁断支持面の方向に誘導案内しながら、生地の搬入速度に関連付けた繰り出し速度で生地を被覆シートで覆うことを特徴とする裁断機への生地被覆シート供給方法である。
【0015】また本発明の前記誘導案内は、裁断支持面を吸引しながらコンベア駆動することによって行うことを特徴とする。
【0016】また本発明の前記誘導案内は、繰り出された被覆シートに生地の搬入経路から空気を噴出させて行うことを特徴とする。
【0017】また本発明は、前記生地の搬入経路の上流側に延反された生地を搬出可能な延反機を設置し、裁断データに従って、延反条件および裁断条件を設定し、延反機および自動裁断機を設定された延反条件および裁断条件に従って連動させ、延反された生地を延反機から搬出させて裁断支持面で吸引して搬入しながら、生地全面に覆い被せるように被覆シートを供給することを特徴とする。
【0018】
【作用】本発明に従えば、空気不透過性の被覆シートが巻回されたロールは、コンベア駆動方式の裁断支持面への生地の搬入側で、自動裁断機の幅方向の両側に立設された支持手段によって支持される。繰り出し手段は、ロールから被覆シートを、コンベア駆動される裁断支持面への生地の搬入に従って繰り出す。裁断支持面上に生地が搬入されると、生地の上は被覆シートによって覆われた状態なる。
【0019】また本発明に従えば、繰り出し手段の下方に繰り出される被覆シートを切断する切断手段が設けられるので、裁断支持面への生地の搬入に従って繰り出されて生地を覆った被覆シートの終端を切断することができる。
【0020】また本発明に従えば、繰り出し手段から繰り出される被覆シートは、誘導手段によって、コンベア駆動方向に誘導案内されるので、搬入される生地の上に皺などを生じさせないで円滑に被覆シートを供給することができる。
【0021】また本発明に従えば、繰り出し手段によって繰り出される被覆シートの誘導案内を、下方から空気を裁断支持面のコンベア駆動方向に噴出させて行う。裁断機の方式によっては、裁断支持面への生地搬入時に、空気の噴出を利用して生地の搬送を行っている。そのような裁断機においては、空気の噴出を被覆シートの誘導案内にも利用することもできる。被覆シートを誘導案内する必要が特に大きいのは、生地の前端がコンベア上に搬入されるまでの期間であり、そのような期間に被覆シートを空気の噴出によって充分に誘導案内することができる。
【0022】また本発明に従えば、繰り出された被覆シートは、誘導手段と接触しながら裁断支持面の方向に誘導案内される。被覆シートを接触して捌くことになるので、被覆シートを確実に誘導案内することができる。
【0023】また本発明に従えば、搬入側の上流には延反された生地の搬出手段を有する延反機が設置される。延反機から搬入される生地は検出手段によって検出され、制御手段によって延反機の搬出速度に関連付けてコンベアの駆動と繰り出し手段からの被覆シートの繰り出しとを行う。これによって、延反機と自動裁断機とを連続して稼働させながら、生地上に被覆シートを自動的に供給することができる。
【0024】さらに本発明に従えば、裁断支持面への生地の搬入経路上方で被覆シートが巻回されたロールを支持し、ロールから被覆シートを繰り出して裁断支持面の方向に誘導案内しながら生地の搬入速度に関連付けた繰り出し速度で生地を被覆シートで覆う。たとえば生地の搬入速度に略同期させたり、わずかに遅くしたりして繰り出し、誘導案内しながら被覆シートで生地を覆うので、容易に被覆シートの供給を自動化することができる。
【0025】また本発明に従えば、裁断支持面を吸引しながらコンベア駆動することによってシート材の誘導案内を行う。被覆シートは、空気不透過性であるので、裁断支持面上での吸引力が大きく、そのコンベア駆動によって引張られ、容易に誘導案内することができる。
【0026】また本発明に従えば、生地の搬入経路から空気を噴出させて被覆シートの誘導案内を行う。このような空気の噴出機能は、生地の搬入のために設けられているものを利用することができる。
【0027】また本発明に従えば、生地の搬入経路の上流側に延反された生地を搬出可能な延反機を設置し、延反機と自動裁断機とを裁断データに従って連動させ、延反された生地を搬出して裁断支持面で吸引して搬入しながら生地全面に覆い被せるように被覆シートを自動的に供給することができる。
【0028】
【実施例】図1は、本発明の一実施例による裁断機への被覆シート供給装置の主要な構成を示す。裁断機21は、生地シートを積重ねた積層シート22上を、空気不透過性の生地被覆シート23で覆った状態で裁断する。積層シート22は、上流側の延反機によって形成され、エアーテーブル24から裁断テーブル25の裁断支持面上に搬入される。エアーテーブル24上には、生地被覆シート23を積層シート22上に供給するための供給装置26が設けられる。供給装置26内には、一対の支持ローラ27,28が設けられる。支持ローラ27,28の下方には、生地被覆シート23を繰り出すための繰り出しローラ29が設けられる。繰り出しローラ29に生地被覆シート23を押圧するため、押圧ローラ30が設けられる。支持ローラ27,28上には、ロール状の被覆シート原反31が載置される。繰り出しローラ29の下方には、切断装置32が設けられ、さらにその下方には上流側から搬入される積層シート22を検出するための生地センサ33が設けられる。
【0029】エアーテーブル24には複数のエアーノズル34が配置され、裁断テーブル25側に向けて矢符34aに示すように空気を吹き出す。エアーノズル34は、エアーテーブル24に一定間隔で千鳥模様状に配置される。裁断テーブル25は、コンベア35によって、載置された積層シート22や、裁断されたパーツを搬送可能に構成される。コンベア35は、複数の剛毛ブラシ36を有し、剛毛ブラシ36の先端が裁断支持面37を形成する。剛毛ブラシ36は通気性を有し、吸引モータ38によって真空吸引される吸引室39に連通する。
【0030】切断装置32は、繰り出しローラ29の下方に設けられるレール40を有する。レール40は、支持ローラ27,28および繰り出しローラ29とともに、裁断機21の幅方向、すなわち図1の紙面に垂直な方向に延び、幅方向の両側で支柱26aによって支持される。レール40に沿って、カッタ台41が走行可能である。
【0031】図2は切断装置32の正面図、図3は部分的な平面図、図4は部分的な右側面図をそれぞれ示す。カッタ台41には、切断を行うための刃42と押し上げカム43が設けられる。押し上げカム43はレール40の一端でレバー44の一端に設けられるホロアローラ45を押し上げ、レバー44の先端44aで生地被覆シート23をレール40側に押さえる。カッタ台41には、走行ローラ46が軸支され、駆動ベルト47が接続される。駆動ベルト47は、支柱26aに設けられる支持プーリ48で支持される。カッタ台41が裁断テーブル25の一側部に移動したときには、位置センサ49によって検出される。位置センサ49は、センサ取付板49aによって、レール40に取付けられる。レール40は、ブラケット50によって支持される。レバー44はレバー取付台51に立設される軸51aを中心として揺動変位可能である。レバー44のホロアローラ45側のアームは、ばね51bによってレール40側に付勢される。カッタ台41がレバー取付台51の位置まで移動したとき、押し上げカム43によって先端44aをレール40側に押し付ける。先端44aは、刃42によって生地被覆シート23の切断を行うため、切り込みの最初の段階で生地被覆シート23をレール40側に押さえて拘束する。カッタ台41が移動して、押し上げカム43によるレバー44の先端44aの押圧を解除すると、生地被覆シート23の拘束状態が解除されるけれども、一旦切れ込みがついているので、後の切断は容易である。図3に示すように、カッタ台41が一端側の待機位置にあるときも拘束状態は解除され、裁断テーブル25側から引っ張るようなときや被覆シート原反31の交換時などに、生地被覆シート23を自由に引き出したり巻き戻したりすることができる。なお、レバー44の押圧状態およびその解除状態は、図3に2点鎖線および実線でそれぞれ示す。
【0032】図5および図6は、繰り出しローラ29の駆動に関連する構成を示す。図5は図1の背面側から見た状態を示し、図6は図5を紙面左側から見た状態を示す。駆動のための繰り出しモータ52は、減速のための歯車が内蔵されており、その出力軸にはプーリ53が設けられる。プーリ53からベルト54を介して回転駆動力が伝達され、繰り出しローラ29の軸に設けられるプーリ55に伝達される。カッタ台41をレール40に沿って走行させるための切断モータ56は、同様にベルト駆動によってプーリ48から駆動ベルト47に駆動力を伝達する。
【0033】図7は、本実施例の裁断機21の上流側に、延反された生地を自動的に搬出可能な延反機が接続されるシステムの構成を示す。裁断機21には、図7の左右方向であるX方向に裁断テーブル25上を移動可能な裁断キャリッジ57が設けられる。裁断キャリッジ57には、図7の紙面に垂直なY方向に移動可能な裁断ヘッド58が設けられ、生地を裁断するための刃物が備えられる。裁断機21は、全体的な制御を行う統合制御装置59によって、延反機60とともに連動して制御される。統合制御装置59は、裁断用のデザインシステムや生産管理システムなどとオンライン回線で結合され、ネットワークを形成する。エアーテーブル24に設けられる供給装置26からは、搬入された積層シート24上に生地被覆シート23が供給される。また、裁断終了後は、裁断キャリッジ57に設けられるロール57aと、裁断テーブル25の終端上のスタンド25aとの間で、生地被覆シート23aが追加される。
【0034】延反機60には、延反テーブル61上を図7R>7の左右方向に走行可能な延反キャリッジ62が備えられる。延反キャリッジ62は、ロール状の生地シート原反63を搭載し、リフタ64から解反された生地シートを引き出して延反テーブル61上に所定の長さだけ広げる。リフタ64内にはカッタが備えられ、所定の長さだけ引き出された生地シートを切断する。生地シートは積重ねられ、積層高さに応じてリフタ64は上昇する。このようにして積層シート65が延反テーブル61上に形成される。生地シートが柔らかい材料であったり、目が粗い材料であったりするときには、裁断テーブル25の裁断支持面37を形成する剛毛ブラシ36の先端に突き刺さるので、下敷きシート66が敷かれる。下敷きシート66は、一定間隔で穴が空いたクラフト紙など起用され、一般に積層シート64よりも面積が大きい。
【0035】延反キャリッジ62には、フットプレッサ67などによって実現される捕捉手段が設けられる。フットプレッサ67は、シリンダ68によって昇降変位可能である。延反テーブル61の下面からは空気が噴出し、延反された積層シート65の搬出を容易にする。まず、延反キャリッジ62が走行して、積層シート65の先頭を基準とした所定位置に移動し、フットプレッサ67によって下敷きシート66を押圧して捕捉する。下方から空気を噴出させた状態で延反キャリッジ62を前進させれば、下敷きシート66に載置された状態で積層シート65を裁断機21の裁断テーブル25側に搬出することができる。下敷きシート66は、ロール状の下敷きシート原反69から供給され、延反キャリッジ62のフットプレッサ67を利用して延反テーブル61上に延反開始前に広げられる。なお、搬出は、延反テーブル61を、裁断テーブル25と同様にコンベア駆動方式として行うようにしてもよい。
【0036】図8は、図7のシステムを制御するための電気的構成を示す。裁断機21には、マイクロコンピュータなどを含んで実現される中央処理装置70が含まれ、裁断キャリッジ57、裁断ヘッド58、コンベア35、吸引モータ38、エアーテーブル24および供給装置26を制御する。この制御では供給装置26内の生地センサ33からの搬入生地検出信号が利用される。統合制御装置59は、コンピュータ化されたデザインシステムによって作成された裁断延反データ71に従って、裁断機21、延反テーブル61に空気を噴出させるためのブロアモータ72、延反キャリッジ62を制御する。延反キャリッジ62内にもマイクロコンピュータなどを含んで実現される中央処理装置80が含まれ、キャリッジ位置検出器81からの信号に応答してキャリッジ走行モータ82、解反モータ83、繰り出しモータ84、リフタ64の昇降、リフタ64に内蔵されるカッタ85、フットプレッサ67のシリンダ68などを制御する。
【0037】図9は、図7のシステムの概略的な動作を示す。ステップa1から延反を開始し、ステップa2で延反を終了する。ステップa3では、捕捉位置へ延反キャリッジ62が移動し、ステップa4でシリンダ68を作動させてフットプレッサ67によって積層シート65を捕捉する。ステップa5では、ブロアモータ74を作動させて延反テーブル61の下面から空気を噴出させる。ステップa6では、延反キャリッジ62を裁断機21側に走行させて前進させ、積層シート65の搬出を行う。ステップa7では、供給装置26の生地センサ33が延反機から搬出された積層シートの先端を検出する。ステップa8では、繰り出しモータ52を作動させて被覆シート23を繰り出す。ステップa9では、エアーテーブル24を作動させてエアーノズル34から空気を噴出させ、コンベア35を作動させてコンベア駆動を行いながら吸引モータ38を作動させて真空吸引を行う。これによって積層シート22は、表面を生地被覆シート23で覆った状態で裁断支持面37上に保持され、ステップa10の裁断が可能となる。
【0038】図10は、縦方向を時間軸として、図7のシステムを構成する各要素の関連した動作をさらに詳細に示す。ステップb1では、延反機60の延反キャリッジ62が基準位置である原点にて待機する。ステップb2では、下敷きシート原反69がセットされる。ステップb3では、シリンダ68が下降するように作動され、フットプレッサ67がONとなる。フットプレッサ67は下敷きシートを捕捉し、ステップb4で延反キャリッジ62を走行移動させるとステップb5の下敷きシートの搬入が行われる。所定の長さだけ下敷きシート66を搬入したら、ステップb6でシリンダ68を上昇させフットプレッサ67をOFFとする。
【0039】次にステップb7で生地シートの延反が行われる。延反が行われると、ステップb8で、延反キャリッジ62は所定位置で待機する。この所定位置は、延反されて積層された生地を捕捉する位置である。ステップb9ではシリンダ68を下降させてフットプレッサ67をONとする。ステップb10では、延反キャリッジ62を走行させる。このようにしてフットプレッサ67で生地を捕捉した状態でステップb10,11で生地を裁断機に搬入する。延反キャリッジ62は、ステップb12で停止し、シリンダ68を上昇させてフットプレッサ67をOFFとする。ステップb14で延反キャリッジ62は原点に復帰して待機する。
【0040】一方、裁断機21では、ステップb20で裁断キャリッジ57および裁断ヘッド58を、予め定める原点位置で待機させておく。供給装置26では、ステップb21で被覆シート原反31をセットし、ステップb22で押圧ローラ30を開放し、ステップb23で生地被覆シート23を支持ローラ27,28間に垂下させ、ステップb24で押圧ローラ30を閉鎖する。ステップb30では裁断機21に設けられる搬入スイッチをONとし、ステップb31ではエアーテーブル24からエアーを吹き出す。ステップb32では、繰り出しモータ52によって繰り出しローラ29を回転させて生地被覆シート23を繰り出す。ステップb33では、繰り出された生地被覆シート23がエアーテーブル24の全面を覆う程度の長さになった位置で繰り出しローラ29を停止する。エアーテーブル24では、裁断テーブル25の方に向けてエアーが吹き出されているので、繰り出された生地被覆シート23は、先端が裁断テーブル24の方に誘導案内されて傾斜した状態となる。次のステップb34で吸引モータ38を駆動して吸引を開始し、コンベア35を起動する。
【0041】延反機60側から積層シート65が搬出されて裁断機21側に搬入されると、供給装置26の生地センサ33によって検知される。ステップb35では、エアーテーブル24の長さ、たとえば0.5mだけ搬入するのに要する時間、すなわち0.5を生地搬入速度(m/秒)で除算した時間経過後、繰り出しローラ29をコンベア35の搬送と関連付けて回転させ、さらに生地被覆シート23を繰り出す。繰り出し速度は、搬入速度以下とし、略同程度とすることが好ましい。エアーテーブル24上で生地被覆シート23が積層シート22を充分に被覆した状態で、ステップb36では、繰り出しローラ29を停止する。積層シート22はさらにコンベア35上を搬送され、ステップb37で先端が所定位置に到達すると搬入完了となり、ステップb38でコンベア35を停止する。積層シート22の搬入完了時点で、生地被覆シート23の被覆も自動的に完了し、裁断可能となる。
【0042】ステップb40では、停止したコンベア35上に積層シート22および生地被覆シート23が真空吸引されて保持され、ステップb20で原点に待機していた裁断ヘッド58を用いて裁断を実行する。裁断中あるいは裁断終了後、ステップb41で生地被覆シート23の後端を切断装置32によって切断する。なお、連続裁断の場合は、生地被覆シート23の切断を、最後の裁断が終了するまで実施しない。ステップ42では、コンベア35を駆動して裁断された積層シート22を搬出する裁断生地搬出を行う。
【0043】ステップb33で、生地被覆シート23をエアーテーブル24の全体を覆う程度の長さよりもさらに長く繰り出しておき、ステップb34で先端を裁断テーブル25で吸引し、コンベア35を起動させると、生地被覆シート23はコンベア35によって誘導案内されて引っ張られる状態となる。このとき、生地被覆シート23に無理な力が加わらないようにするため、繰り出しローラ29の軸にはワンウェイクラッチが設けられる。
【0044】図11は、本発明の他の実施例の構成を示す。図1の実施例に対応する部分には同一の参照符を付す。本実施例では、裁断テーブル85には、図1の実施例のようなエアーテーブル24が設けられておらず、コンベア35がほぼ全面にわたって設けられている。本実施例では、供給装置26から繰り出された生地被覆シート23の先端をコンベア35の表面で吸引し、コンベア35を搬送させて生地被覆シート23の誘導案内を行う。搬入された積層シートは、直ちにコンベア35上に真空吸引によって保持され、コンベア35による搬入を続けながら、供給される生地被覆シート23によって覆われる。
【0045】図12および図13は、図1および図11の実施例における押圧ローラ30に関連する構成を示す。繰り出しローラ29によって確実に生地被覆シート23の繰り出しが可能となるように、押圧ローラ30が設けられる。押圧ローラ30の軸91には前述のワンウェイクラッチが設けられ、アーム92の遊端部に軸支され、自重で生地被覆シート23を繰り出しローラ29側に押圧する。図12は押圧している閉鎖状態を示す。新たな被覆シート原反31をセットするようなときには、図13に示すように押圧ローラ30を繰り出しローラ29から引き離す。その操作は手動で行い、図13のように押圧を解除した状態では、押圧ローラ30の重力はアーム92の基端部の支点93よりも図13の右側に働くので、押圧解除の開放状態が外力が加わらなければ保持される。手動操作を容易にするため、ばね94が設けられる。
【0046】以上の各実施例では、供給装置26内には特に繰り出された生地被覆シート23を誘導案内するための機構は設けられていないけれども、たとえば傾斜した板などを切断装置32の下方に設け、鉛直下方に垂れ下がる生地被覆シート23に接触しながら捌いて裁断テーブル25側に誘導案内することもできる。また供給装置26内に空気噴出ノズルや小形のファンなどを設け、空気によって繰り出された生地被覆シート23を裁断テーブル側に誘導案内するようにしてもよい。さらに、供給装置26も生地の搬入に同期して裁断テーブル上を走行するようにしてもよい。
【0047】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、裁断支持面への生地の搬入時に裁断支持面のコンベア駆動に従って被覆シートを繰り出し、被覆シートを自動的に供給して生地の表面を被覆シートで覆うことができる。裁断支持面に生地が搬入された時点で被覆シートも被せられているので、迅速に裁断を開始することができる。
【0048】また本発明によれば、切断手段によって、生地の表面を覆った被覆シートの後端を自動的に切断することができる。
【0049】また本発明によれば、被覆シートは裁断支持面のコンベア駆動方向に誘導案内されるので、生地が搬入される際に円滑に生地表面を覆うことができる。
【0050】また本発明によれば、被覆シートは下方から噴出される空気によって裁断支持面のコンベア駆動方向に誘導案内される。生地の搬入経路に生地を搬入するためのエアーテーブルが設けられているようなときには、その構成を被覆シートの誘導案内にも有効に利用することができる。
【0051】また本発明によれば、誘導手段が被覆シートに接触しながら裁断支持面の方向に被覆シートを確実に誘導案内することができる。
【0052】また本発明によれば、延反機と自動裁断機とを連動させて、生地の延反機からの搬出と関連させて被覆シートの繰り出しを行いながら、裁断支持面上に被覆シートで覆われた生地を自動的に供給することができる。
【0053】さらに本発明によれば、被覆シートが巻回されたロールから被覆シートを、生地の搬入速度に関連させて繰り出しながら、被覆シートを裁断支持面の方向に誘導案内させて生地を被覆シートで覆う。コンベア駆動方式の裁断支持面に生地が搬入される際に被覆シートで円滑に覆うことができるので、人手を要せず自動的に被覆シートの供給が可能である。
【0054】また本発明によれば、空気不透過性の被覆シートを吸引してコンベア駆動方向に容易に誘導案内することができる。
【0055】また本発明によれば、生地の搬入経路から空気を噴出させて繰り出された被覆シートの誘導案内を行う。空気の噴出機構が生地を搬入するためにエアーテーブルなどとして設けられているようなときには、その利用によって被覆シートの誘導案内を有効に行うことができる。
【0056】また本発明によれば、延反された生地を搬出可能な延反機と自動裁断機とを連動させて、裁断データに従って延反と延反された生地の裁断とを自動的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の正面から見た要部断面図である。
【図2】図1の切断装置32の正面図である。
【図3】切断装置32の部分的な平面図である。
【図4】切断装置32の部分的な右側面図である。
【図5】図1の供給装置26の部分的な背面図である。
【図6】図5の供給装置26を図5の紙面左側から見た図である。
【図7】図1の実施例の裁断機21を延反機とともにシステム化した構成を示す簡略化した正面図である。
【図8】図7のシステムの電気的構成を示すブロック図である。
【図9】図7のシステムの動作を示すフローチャートである。
【図10】図7のシステムにおける各部の連動状態を示すタイムチャートである。
【図11】本発明の他の実施例を示す正面断面図である。
【図12】図1および図11の押圧ローラ30に関連する構成を示す正面断面図である。
【図13】図1および図11の押圧ローラ30に関連する構成を示す正面断面図である。
【図14】先行技術を示す簡略化した正面図である。
【符号の説明】
21 裁断機
22 積層シート
23 生地被覆シート
24 エアーテーブル
25 裁断テーブル
26 供給装置
27,28 支持ローラ
29 繰り出しローラ
32 切断装置
33 生地センサ
34 エアーノズル
35 コンベア
36 剛毛ブラシ
37 裁断支持面
38 吸引モータ
40 レール
41 カッタ台
42 刃
43 押し上げカム
44 レバー
47 駆動ベルト
49 位置センサ
51 レバー取付台
52 繰り出しモータ
56 切断モータ
57 裁断キャリッジ
58 裁断ヘッド
59 統合制御装置
60 延反機
61 延反テーブル
62 延反キャリッジ
67 フットプレッサ
70,80 中央処理装置
75 裁断延反データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 生地をコンベア駆動方式の裁断支持面上で吸引して保持しながら、裁断データに従って生地からパーツを裁断する自動裁断機に、生地の表面を覆う空気不透過性の被覆シートを供給するための装置であって、裁断支持面への生地の搬入側で、自動裁断機の幅方向の両側に立設され、被覆シートが巻回されたロールを支持する支持手段と、支持手段によって支持されたロールから、被覆シートをコンベア駆動される裁断支持面への生地の搬入に従って繰り出す繰り出し手段とを含むことを特徴とする裁断機への生地被覆シート供給装置。
【請求項2】 前記繰り出し手段の下方に、繰り出される被覆シートを切断する切断手段を設けることを特徴とする請求項1記載の裁断機への生地被覆シート供給装置。
【請求項3】 前記繰り出し手段から繰り出される被覆シートを、裁断支持面のコンベア駆動方向に誘導案内する誘導手段を備えることを特徴とする請求項1または2記載の裁断機への生地被覆シート供給装置。
【請求項4】 前記誘導手段は、前記繰り出し手段の下方から空気を裁断支持面の方向に噴出させて被覆シートを誘導案内することを特徴とする請求項3記載の裁断機への生地被覆シート供給装置。
【請求項5】 前記誘導手段は、繰り出された被覆シートに接触しながら裁断支持面の方向に誘導案内することを特徴とする請求項3記載の裁断機への生地被覆シート供給装置。
【請求項6】 前記自動裁断機の搬入側の上流には、延反された生地の搬出手段を有する延反機が設置され、延反機から搬入される生地を検出する検出手段と、検出手段によって生地が検出されるとき、延反機の搬出速度に関連付けてコンベアの駆動と繰り出し手段からの被覆シートの繰り出しとを行わせる制御手段とを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の裁断機への生地被覆シート供給装置。
【請求項7】 生地をコンベア駆動方式の裁断支持面上で吸引して保持しながら、裁断データに従って生地からパーツを裁断する自動裁断機に、生地の表面を覆う空気不透過性の被覆シートを供給するための方法であって、裁断支持面への生地の搬入経路上方で、被覆シートが巻回されたロールを支持し、ロールから被覆シートを繰り出して裁断支持面の方向に誘導案内しながら、生地の搬入速度に関連付けた繰り出し速度で生地を被覆シートで覆うことを特徴とする裁断機への生地被覆シート供給方法。
【請求項8】 前記誘導案内は、裁断支持面を吸引しながらコンベア駆動することによって行うことを特徴とする請求項7記載の裁断機への生地被覆シート供給方法。
【請求項9】 前記誘導案内は、繰り出された被覆シートに生地の搬入経路から空気を噴出させて行うことを特徴とする請求項7記載の裁断機への生地被覆シート供給方法。
【請求項10】 前記生地の搬入経路の上流側に延反された生地を搬出可能な延反機を設置し、裁断データに従って、延反条件および裁断条件を設定し、延反機および自動裁断機を設定された延反条件および裁断条件に従って連動させ、延反された生地を延反機から搬出させて裁断支持面で吸引して搬入しながら、生地全面に覆い被せるように被覆シートを供給することを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の裁断機への生地被覆シート供給方法。

【図2】
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【図12】
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【図4】
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【図13】
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【図1】
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【図3】
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【図7】
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【図14】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図10】
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【特許番号】第2585190号
【登録日】平成8年(1996)11月21日
【発行日】平成9年(1997)2月26日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−7949
【出願日】平成6年(1994)1月27日
【公開番号】特開平7−214496
【公開日】平成7年(1995)8月15日
【出願人】(000151221)株式会社島精機製作所 (357)
【参考文献】
【文献】特開 平5−69382(JP,A)
【文献】特開 昭63−278794(JP,A)
【文献】特公 昭62−25785(JP,B2)