説明

裁断装置

【構成】 裁断装置は、裁断テーブルと、裁断ヘッドと、裁断テーブル上の被裁断材に裁断情報を表す画像を投影する投影装置とを備えている。被裁断材の厚さを測定し、投影装置により投影された画像のサイズが被裁断材の厚さに係わらず一定となるように、測定した厚さに応じて投影された画像のサイズを補正する。
【効果】 被裁断材の厚さが変化しても、投影装置から投影した通りに裁断できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、裁断情報を表す画像を被裁断材に投影する裁断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平07−324213(特許文献1)は、皮革等の被裁断材に、プロジェクタ等の投影装置から裁断パターンを投影することを開示している。ここで裁断パターンが、皮革の疵に触れる、被裁断材である布帛の柄と整合しない、などの問題が有れば、作業者は裁断パターンを移動し、被裁断材に合わせて裁断パターンを位置決めする。
【0003】
布帛等の被裁断材は生産効率を高めるため積層して裁断される。発明者は、積層等により被裁断材が厚くなると、投影した裁断パターンと実際の裁断パターンが異なってくるため、作業者が確認したとおりに裁断できなくなることに着目し、この発明に到った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−324213
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の課題は、被裁断材の厚さが変化しても、投影装置から投影した通りに裁断できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、裁断テーブルと、裁断ヘッドと、裁断テーブル上の被裁断材に裁断情報を表す画像を投影する投影装置とを備えた裁断装置において、
被裁断材の厚さを測定するための測定手段と、
投影装置により投影された画像のサイズが被裁断材の厚さに係わらず一定となるように、測定した厚さに応じて投影された画像のサイズを補正するための補正手段、とを備えることを特徴とする。
【0007】
この発明では、被裁断材の厚さが変化しても、裁断情報の画像を同じサイズで同じ位置に投影できる。このため被裁断材の厚さに基づく位置合わせ誤差を生じない。
【0008】
好ましくは、補正手段は投影装置の昇降機構である。被裁断材の厚さと同じ距離だけ昇降するように投影装置を昇降させると、投影装置と被裁断材間の高さの差を一定にでき、同じサイズで同じ位置に画像を投影できる。
【0009】
あるいは好ましくは、補正手段は投影装置へ供給する元画像を拡大あるいは縮小するための画像処理手段である。投影装置に供給する元画像を、被裁断材の厚さを打ち消すように補正すると、投影装置の昇降機構が不要になる。実施例のように元画像を投影する基準の高さを裁断テーブルの上面付近にすると、厚い被裁断材では元画像を拡大する。一方、基準の高さを厚い被裁断材に合わせて裁断テーブルよりも上にすると、薄い被裁断材では元画像を縮小する。
【0010】
好ましくは、補正手段は投影装置に設けられたズーム機構である。投影装置としてズーム機構を備えたものを用いると、ズーム機構の回動により被裁断材の厚さの影響を補正できる。
【0011】
好ましくは、測定手段は、被裁断材のプレッサの高さを測定するための、裁断ヘッドに設けられたセンサである。このようにすると別個に厚さセンサを設ける必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例の裁断装置の要部平面図
【図2】実施例の裁断装置での制御系のブロック図
【図3】実施例で用いるプレッサの側面図
【図4】実施例でのプロジェクタの昇降を示す図
【図5】変形例の裁断装置での制御系のブロック図
【図6】変形例での画像の拡大を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、発明を実施するための最適実施例を示す。この発明の範囲は、特許請求の範囲の記載に、周知技術による変更の可能性を加味して解釈されるべきである。
【実施例】
【0014】
図1〜図4に実施例の裁断装置2を示し、図5,図6に変形例の裁断装置3を示す。各図において、4は裁断テーブルで、その下流側にピックアップテーブル6があり、上流側には延反テーブル8があり、これらの間で図示しないコンベヤにより被裁断材を移動させる。また被裁断材は、1枚毎の皮革、あるいは複数枚積層した布帛などで、厚さは薄い場合には1cm以下で、厚い場合には数cm程度である。また皮革には厚いものと薄いものとがある。さらにピックアップテーブル6,延反テーブル8は設けなくても良い。10は裁断ヘッドで、裁断テーブル4上を図1のXYの2方向に移動し、12はアームで、ヘッド10をY方向に移動させる。アーム12は図示しないエンドレスベルト等により、裁断テーブルの長手方向(X方向)に沿って移動し、ヘッド10も図示しないエンドレスベルト等により、アーム12の長手方向(Y方向)に沿って移動する。
【0015】
16はプロジェクタで、昇降ガイド18に沿って、昇降ドライブ20により被裁断材(シート材)の厚さ程度のストロークで昇降し、例えば昇降ストロークは最大10cm程度とする。昇降ドライブ20の種類は任意であるが、例えばボールネジを用いる。プロジェクタ16はカラーでもモノクロでも良く、ここではカラーの単焦点レンズを用いたプロジェクタとするが、ズームレンズを用いたプロジェクタとしてもよい。またプロジェクタ16が裁断テーブル4上に投影できる範囲は、裁断ヘッド10が裁断可能な範囲よりもやや広い範囲とする。
【0016】
22は制御部で、裁断装置2を制御し、24は操作パネルで、例えばカラーディスプレイに感圧スイッチを組み合わせた感圧パネルである。プロジェクタ16から投影する裁断情報の画像を操作パネル24上にも表示し、操作パネル24上でこの画像を作業者がドラッグすると、プロジェクタ16から投影する画像も同様に裁断テーブル4上で移動する。感圧パネル上で指などでドラッグする代わりに、通常のカラーモニタなどを操作パネル24として、マウスなどでドラッグしても良い。また被裁断材に投影された画像を見ながら、ハンディコントローラで画像を移動させても良い。裁断情報の画像とは、例えば裁断する個々のパーツの形状と配置を表す画像、あるいば裁断開始点等の基準点の被裁断材に対する位置を表す画像、被裁断材の長手方向を示す線分や2点など、図1のX方向に対する被裁断材の傾きを表す画像などである。そして裁断情報を表す画像を、作業者が操作パネル24上で操作し、裁断テーブル4上で確認する。このようにして裁断する個々のパーツの位置、裁断を開始する基準点、被裁断材のX方向からの傾きなどを補正する。裁断情報を表す画像を被裁断材に対して位置合わせする作業を、この明細書では位置合わせという。なおプロジェクタ16に代えてレーザ投影装置などを設けても良く、その場合レーザビームを被裁断材上に投影することにより、裁断情報の画像を表示する。
【0017】
図2に裁断装置2の制御系を示し、裁断データ生成部26は裁断するパターンの配置、裁断を開始する原点、X方向に対する被裁断材の傾きなどのデータを基に、裁断データを発生させる。裁断データは裁断ヘッド10の経路と刃物の操作のデータである。メモリ28は裁断データと裁断情報の画像を記憶し、裁断情報の画像が位置決めされると、裁断データもそれに合わせて位置決めされる。プロジェクタ制御部30はプロジェクタ16と昇降ドライブ20とを制御し、特にプレッサ34からの厚さ信号に基づき、プロジェクタ16を昇降させる。ヘッド制御部32は、裁断ヘッド10、裁断テーブル4の内部に設けたX軸ドライブ35、及びアーム12に設けたY軸ドライブ36を制御し、ヘッド10のXY移動と、裁断とを制御する。裁断ヘッド10はプレッサ34を備え、その構造を図3に示す。
【0018】
図3において、40は空気圧などのシリンダ、41は軸で、プレッサ34はシリンダ40により被裁断材38側に押し当てられる。42は刃で、プレッサ34に設けた図示しない孔を介して被裁断材38を裁断する。プレッサ34は昇降ガイド43によって昇降をガイドされ、この時ロータリエンコーダなどの昇降センサ44により、プレッサ34の高さを測定する。例えばロータリエンコーダをガイド43に摺動させて回転させ、高さを測定する。あるいはガイド43などに図示しないマークを配列し、センサでマークの数をカウントする。昇降センサ44の種類は任意である。プレッサ34は、被裁断材38を押さえつけて裁断を容易にし、被裁断材38のしわや折り重なりなどを昇降センサ44により検出するための部材である。そして昇降センサ44により、被裁断材38の例えば1箇所もしくは2箇所などで高さを測定し、被裁断材の厚さを測定する。
【0019】
図4にプロジェクタ16の昇降を示す。例えば被裁断材46が標準の厚さで、この厚さの場合に、正しい裁断パターンが投影されるようにプロジェクタ16が設定されているとする。ここで被裁断材48のように厚さが大きい場合、プロジェクタ16の位置を固定し、同じ画像を投影すると、投影される幅がW1からW2へ減少する。この結果、作業者は実際の裁断パターンよりも小さな裁断パターンを見ながら位置合わせを行うことになる。このようにすると、皮革の疵に裁断パターンが掛かる、実際と異なる柄合わせが行われるなどの弊害が生じる。これに対して標準の厚さに対する被裁断材48の厚さ変化Δhだけプロジェクタ16を昇降させ、被裁断材46,48に対するプロジェクタ16の高さを一定にすると、被裁断材46,48の厚さに係わらず、同じ画像を同じサイズで同じ位置に投影できる。
【0020】
図5,図6に変形例の裁断装置3を示す。変形例の裁断装置3ではプロジェクタ16の高さを固定し、投影する前の元画像自体を拡大する、あるいはプロジェクタ16をズームレンズを用いたものとし、ズーム機構を回動させて、被裁断材の厚さによらず同じサイズで同じ位置に画像が投影されるようにする。図1〜図4と同じ符号は同じものを表す。
【0021】
図5において、50は画像補正部で、プロジェクタ16へ供給する元画像を縮小/拡大し、被裁断材の表面が高いほど画像を拡大し、表面が低いほど画像を縮小する。なお被裁断材の表面が裁断テーブル4の上面と同じ高さにある場合を基準にすると、画像の拡大のみができればよい。そして投影された画像が、被裁断材46,48の厚さによらず、同じサイズで同じ位置となるようにする。なおプロジェクタ16の高さを一定にすると、投影面までの距離が変化するので、画像に歪が生じる。歪補正部52は例えばプロジェクタ16に内蔵のもので、被裁断材の厚さに合わせて画像の歪を補正する。元画像を補正する代わりに、プロジェクタ16にズームレンズを用い、ズーム機構54を回動させて画像を縮小/拡大してもよい。
【0022】
図6に変形例での画像の投影を示し、56は支柱で、プロジェクタ16は支柱56に固定され、標準高さの被裁断材46に対しては、1点鎖線58,59のエリアに対し投影する。厚さがΔh増した被裁断材48に対しては、1点鎖線58と2点鎖線60の間のエリアに投影する。すると被裁断材46,48上に投影された画像は、その厚さによらず一定となる。
【0023】
実施例では以下の効果が得られる。
(1) 被裁断材の厚さが変化しても、裁断情報の画像を同じサイズで同じ位置に投影できる。このため被裁断材の厚さに基づく位置合わせ誤差を解消できる。
(2) 被裁断材の厚さと同じ距離だけ昇降するようにプロジェクタを昇降させると、プロジェクタと被裁断材間の高さの差を一定にでき、同じサイズで同じ位置に画像を投影できる。
(3) プロジェクタに供給する元画像を、被裁断材の厚さを打ち消すように補正すると、プロジェクタの昇降機構が不要になる。
(4) プロジェクタ16としてズーム機構を備えたものを用いると、ズーム機構の回動により被裁断材の厚さの影響を補正できる。但しズーム機構を用いると焦点距離が一般に長くなるので、プロジェクタ16を裁断テーブル4に対して高い位置に配置する必要が生じ、天井などと干渉する恐れがある。
(5) 裁断ヘッド10のプレッサ34を被裁断材の厚さの測定に兼用すると、別個に厚さセンサを設ける必要がない。
【0024】
実施例では投影の基準となる高さを、薄い被裁断材に合わせて裁断テーブルの上面付近としたので、厚い被裁断材では元画像を拡大した。しかし投影の基準となる高さを、厚い被裁断材に合わせて裁断テーブルの上面よりも高くする場合、薄い被裁断材では元画像を縮小すると良い。
【符号の説明】
【0025】
2,3 裁断装置
4 裁断テーブル
6 ピックアップテーブル
8 延反テーブル
10 裁断ヘッド
12 アーム
16 プロジェクタ
18 昇降ガイド
20 昇降ドライブ
22,23 制御部
24 操作パネル
26 裁断データ生成部
28 メモリ
30 プロジェクタ制御部
32 ヘッド制御部
34 プレッサ
35 X軸ドライブ
36 Y軸ドライブ
38 被裁断材
40 シリンダ
41 軸
42 刃
43 昇降ガイド
44 昇降センサ
46,48 被裁断材
50 画像補正部
52 歪補正部
54 ズーム機構
56 支柱


【特許請求の範囲】
【請求項1】
裁断テーブルと、裁断ヘッドと、裁断テーブル上の被裁断材に裁断情報を表す画像を投影する投影装置とを備えた裁断装置において、
被裁断材の厚さを測定するための測定手段と、
投影装置により投影された画像のサイズが被裁断材の厚さに係わらず一定となるように、測定した厚さに応じて投影された画像のサイズを補正するための補正手段、とを備えることを特徴とする、裁断装置。
【請求項2】
補正手段は投影装置の昇降機構であることを特徴とする、請求項1の裁断装置。
【請求項3】
補正手段は投影装置へ供給する元の画像処理手段であることを特徴とする、請求項1の裁断装置。
【請求項4】
補正手段は投影装置に設けられたズーム機構であることを特徴とする、請求項1の裁断装置。
【請求項5】
測定手段は、被裁断材のプレッサの高さを測定するための、裁断ヘッドに設けられたセンサであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかの裁断装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−125971(P2011−125971A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287466(P2009−287466)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000151221)株式会社島精機製作所 (357)