説明

装入石炭のレベリング方法

【課題】コークス炉炭化室の炉長全体に亘って石炭の上面レベルを、レベラーの簡単な動作で均一に均すことができ、生産性を高めることができる装入石炭のレベリング方法を提供する。
【解決手段】コークス炉の炭化室10内に、装入孔13から装入された石炭20の上面を、炭化室10の前壁13から挿入されて炉長方向に沿って、一定の時間内に、往復動作を行うレベラー30で均す装入石炭のレベリング方法であって、レベラー30を一定の速度で移動させると共に、レベラー30を前壁13から後壁15内面近傍まで挿入し、後壁15内壁から炉長Lの半分未満の位置までの往復動作を繰り返し、最後にレベラー30を前壁13から取り出すようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は装入石炭のレベリング方法に関し、さらに詳しくは、コークス炉炭化室への原料石炭を装入したときに、炭化室内に効率よく石炭を均して装填するための装入石炭のレベリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コークス炉は、原料である石炭を乾留するための炭化室が、燃焼室に挟まれた構造を有している。図7に示すように、コークス炉の操業手順としては、先ず、炭化室10の上壁部11に炉長方向(矢印lで示す)に沿って所定間隔を隔てて開設された複数の装入孔12より石炭20を装入する。そして、燃焼室から隔壁を介して加熱を行うことにより、石炭20を乾留してコークスを生成する。乾留後は、炭化室10からコークスを押し出して排出し、その後再び原料石炭20を装入するという操業サイクルとなっている。
【0003】
炭化室10の装入孔12から装入された石炭20の上面は、図7において破線で示すように、装入孔12の直下が山状であり、装入孔12同士の間が低い谷状となる。このような石炭20の上面の凹凸を平坦に均すために、通常、図8に示すようなロッド状の長尺なレベラー30を用いている。このレベラー30は、図7に示すように、押し出し機(図示省略する)側の炉蓋13上部に形成されたレベラー挿入口13Aから挿入され、所定の時間内に、炉長方向lに沿って所定の往復運動を行わせるレベリングと称する作業に供される。この種のレベラーとしては、例えば特許文献1に記載された構造のものが知られている。
【0004】
従来、炭化室10内に挿入したレベラー30のストロークは、図6および図7に示すように、均し開始時に、レベラー30をレベラー挿入口13Aから炭化室10の炉長方向の対向炉蓋の内面近傍まで挿入し(ストロークs1)、その後対向炉蓋の内面から前記押出機側炉蓋側への戻し位置を炉長中間位置L/2に設定してレベラー30を往復動作させることにより、炉長寸法Lの1/2の距離のストロークs2〜s5の例えば2回の往復動作が行われ、最後にレベラー30をレベラー挿入口13Aから抜き出すストロークs6を行うようにしている。
【0005】
この場合、図7に示すように、炭化室10内における押出機側炉蓋13側に位置する領域では石炭20の表面レベルが、管理レベルA(一点鎖線で示す)に達しているが、押出機側炉蓋13と反対側の対向炉蓋15側に位置する石炭20の上面の高さが、管理レベルAより所定のレベル差αだけ低くなることが判った。しかし、上述したレベラー30のストロークでは、前壁13側の石炭20の表面レベルを管理レベルAに保った状態で、対向炉蓋15近傍の石炭20の凹みを解消することは困難であった。
【0006】
通常、炭化室10に石炭20を装入すると、隣接する燃焼室からの加熱を受けて、直ちに乾留に伴うガスや、炉壁近傍の石炭20から放出される水素ガスなどが発生する。したがって、管理レベルAを上回って石炭20を充填してしまうと、炭化室10の上壁部11に設けたガス回収部14へ、これら発生ガスを排出するための適切な流量のガス流路が確保できなくなる。このため、上記のレベル差α分の石炭20の凹みを埋めるよりも、上記のガス流路を確保することが優先されていた。すなわち、上記のような石炭20の凹みの発生は、避けようのないものとして許容されていた。
【0007】
しかし、上記のレベル差α分の凹み容量分は、石炭20を管理レベルAまで平坦に充填できた場合の石炭の容量の5〜6%程度にも及ぶものであった。このため、一度の乾留工程におけるコークスの生産性を向上させることが望まれていた。また、石炭20の表面がレベル差αだけ低くなることにより、露呈する炭化室部分が空熱されて炉壁への悪影響を与えることなどの問題があった。
このような炭化室10における均し不良を解消するため、レベラーの挿入速度制御を行う技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3590509号公報
【特許文献2】特開昭61−197684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献2に記載の従来技術は、レベラーの速度を変えるためのギヤなどの回転数を変えるための制御装置を備えるため、コスト増を招くものであり、また、コークス取り出し口近傍の石炭20の管理レベルAとのレベル差αを小さくする効果が実質的に小さいものであった。
そこで、本発明は、炉長全体に亘って石炭表面を均一に均すことができる装入石炭のレベリング方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、コークス炉の炭化室内に、炭化室上部の炉長方向に沿って所定間隔を隔てて設けられた複数の装入孔から装入された装入石炭の上面を、炭化室の炉長方向の一方の壁部から挿入されて炉長方向に沿って、一定時間に、往復動作を行うレベラーで均す装入石炭のレベリング方法であって、レベラーを一方の壁部から炭化室の炉長方向の他方の壁部の内面近傍まで挿入し、他方の壁部の内面から炉長の半分未満の距離を一方の壁部側へ向けて戻った位置までの往復動作を繰り返し、最後にレベラーを一方の壁部から取り出すことを要旨とする。
【0011】
また、本発明は、上記特徴において、レベラーの移動速度は、一定時間に一方の壁部から他方の壁部までの炉長全部に亘って3回の往復運動を行う一定の速度の1.6〜2.0倍の速度であることが好ましい。
さらに、本発明は、上記構成において、前記対向炉蓋からの前記戻し位置までの距離を炉長の1/4に設定することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、コークス炉炭化室の炉長全体に亘って石炭の上面レベルを、レベラーの簡単な動作で均一に均すことができ、一度の乾留工程あたりのコークス生産性を高めることができる装入石炭のレベリング方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る装入石炭のレベリング方法を示すものであり、コークス炉炭化室に装入された石炭のレベリング前の状態を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る装入石炭のレベリング方法を示すものであり、コークス炉炭化室にレベラーを挿入した状態を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る装入石炭のレベリング方法を示すものであり、レベラーのストロークパターンの一例を示す説明図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る装入石炭のレベリング方法を示すものであり、レベラーのストロークパターンの他の例を示す説明図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る装入石炭のレベリング方法による装入石炭のレベリング後の状態を示す断面図である。
【図6】従来のレベラーのストロークパターンを示す説明図である。
【図7】従来のレベリング方法の結果を示す装入石炭の状態を示す断面図である。
【図8】レベラーを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る装入石炭のレベリング方法の詳細を図面に基づいて説明する。但し、図面は模式的なものであり、各部材の寸法や寸法の比率などは現実のものと異なることに留意すべきである。
図1は、コークス炉の炭化室10内に、上壁部11に炉長方向lに沿って所定間隔を隔てて開設された複数の装入孔12より石炭20を装入した状態を示す。なお、図1に示す炭化室10は、図7に示した炭化室10と同一であるため、詳細な説明は省略する。
【0015】
上壁部11における図示しない押し出し機側には、発生ガスを排出するためのガス回収部14が設けられている。また、炭化室10における押出機側炉蓋13には、レベラー挿入口13Aが設けられている。炭化室10における押出機側炉蓋13と炉長方向lの反対側の図示しないガイド車側には、生成されたコークスを取り出すことを可能にする対向炉蓋(ガイド車側炉蓋)15が設けられている。
【0016】
図1に示すように、このレベラー挿入口13Aの開口下端縁の高さは、管理レベルA(一点鎖線で示す)と略同じ高さに設定されている。このレベラー挿入口13Aには、炭化室10の炉長Lの寸法全体に亘って挿入可能な長さを有するレベラー30が挿入されるようになっている。
そして、レベラー30は、図示しない往復駆動部にて一定の速度で炉長方向1に沿ってストロークを行うように設定されている。レベラー30のストロークパターンは、図3に示す通りである。なお、レベラー30のストロークパターンは、図示しない往復駆動部により適宜設定可能である。
【0017】
図1に示した状態は、装入した石炭20に山部20Aと谷部20Bが形成されている。このような状態において、図2に示すように、レベラー30をレベラー挿入口13Aから所定速度で挿入して、レベラー30の先端30Aを前壁13から後壁15の内面近傍まで挿入する(図3中、ストロークS1に相当)。その後、連続的に、図3に示すストロークパターンのように、後壁15の内壁から炉長Lの約1/4の長さL1だけ戻った折り返し位置までの往復動作(ストロークS2〜S7)を繰り返し、最後にレベラー30を前壁13から取り出す(ストロークS8)。このようなストロークS1〜S8までの一定速度での連続動作によって、図5に示すように、装入された石炭20の上面を炉長全域に亘り平坦に均すことができた。なお、これらの連続動作は、従来のように炉長全域に亘る3往復の動作に要する一定の均し時間をかけて行っている。
【0018】
ここで、一定の均し時間とは、炭化室10内に炭素20を装入すると同時に発生するガスの排出がレベラー30の作業により阻止されることを許容できる時間と定義する。このような一定の時間内であれば、コークス炉の操業に悪影響を与えずに行える。本実施の形態では、このような一定の時間内に、上述のようなストロークパターンでレベラー30を動作させることで、装入効率が高く、生産性を向上する装入石炭のレベリング方法を実現することができる。
【0019】
本実施の形態では、レベラーの移動速度を、このような一定の時間にレベラー30が3往復する従来の動作と同等の移動速度に設定したが、従来のレベラー30の移動速度比べて、1.7〜2.0倍の速度であることが好ましい。また、本実施の形態のようなストロークパターンとしたことにより、往復回数を増加させることが可能となる。なお、レベラー30の移動速度が、従来の1.0倍前後でも、後壁15側の石炭20の表面レベルを管理レベルAに近い高さで平坦に均すことが可能となるが、1.6〜2.0倍の速度とするとさらに往復回数を増加させることができ、管理レベルAに近い高さで平坦にすることが可能となる。なお、移動速度が2.0倍を超えると、平坦性がそれ以上向上しないため、消費エネルギーを考慮すると、2.0倍未満の移動速度であることが好ましい。
【0020】
図4は、レベラー30を、後壁15の内壁から炉長Lの約1/4でL1戻った位置まで4往復動作させた例である。図4に示すストロークパターンによっても、図5に示すように表面が平坦な石炭20の装入が可能となる。特に、本実施の形態に係る装入石炭のレベリング方法では、少なくとも、後壁15内壁と、後壁15に最も近い装入孔12の下方と、の間の往復動作を繰り返す動作を上記の条件にて一定速度で行うことにより、図5に示すような平坦な石炭20の表面状態を得ることが可能となった。
【0021】
なお、図6は従来のストロークパターンのを示すものである。図6に示すように、後壁15の内壁から炉長Lの1/2であるL2戻った位置まで2往復動作させようとすると、走行距離が長くなり後壁15近傍でのストローク数を上記の一定の時間内に稼ぐことができず、後壁15側での石炭20の表面を平坦にする効果が小さい。本実施の形態では、後壁15の内壁から炉長Lの1/2のL2未満戻った位置までを往復させるストロークパターンとすることで後壁15側での石炭20の表面が管理レベルAに近いレベルに均すことができた。
【0022】
なお、本実施の形態では、図8に示すような従来のものと同じレベラー30を用いている。このレベラー30は、互いに平行をなす長尺な一対の側板31と、これら側板31同士の間を連結する複数の連結板32を備えている。また、レベラー30の先端部は、連結板32と幅寸法が同じで縦寸法が短い先端板33が設けられている。
以上、本実施の形態に係る装入石炭のレベリング方法について説明したが、このように装入された石炭20は、燃焼室から隔壁を介して加熱を行うことにより、乾留されてコークスとなる。また、上述したように、乾留後は、炭化室10からコークスを押し出して排出し、その後再び原料石炭20を装入するという操業サイクルとなっている。
【0023】
炭化室10内でレベリングされた石炭20の上面は、図5において一点鎖線で示す管理レベルAにほぼ沿った面であり、石炭20の装入効率が高くなっている。したがって、本実施の形態に係る装入石炭のレベリング方法によれば、コークス炉の炭化室10の炉長L全体に亘って石炭20の上面レベルを、レベラー30の簡単な動作で均一に均すことができ、コークスの生産性を高めることができる。
【0024】
[その他の実施の形態]
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものではない。本発明は、様々な代替実施の形態、実施例および運用技術に適用することが可能である。例えば、上記の実施の形態では、コークス炉の炭化室10の上部に設けられた装入孔12は4つであったが、この数に限定されるものではない。
また、上記の実施の形態では、図8に示すようなレベラー30を用いたが、他の構成のレベラーを用いてもよい。
【符号の説明】
【0025】
10…炭化室、11…上壁部、12…装入孔、13…前壁、13A…レベラー挿入口、14…ガス回収部、15…後壁、20…石炭、20A…山部、20B…谷部、30…レベラー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉の炭化室内に、前記炭化室上部の炉長方向に沿って所定間隔を隔てて設けられた複数の装入孔から装入された装入石炭の上面を、前記炭化室の炉長方向の押出機側炉蓋のレベラー挿入口から挿入されて炉長方向に沿って、一定の均し時間内に、往復動作を複数回行うレベラーで均す装入石炭のレベリング方法であって、
均し開始時に、前記レベラーを前記レベラー挿入口から前記炭化室の炉長方向の対向炉蓋の内面近傍まで挿入し、その後該対向炉蓋の内面から前記押出機側炉蓋側へ戻った折り返し位置を炉長中間位置より短く設定して前記レベラーを往復動作させ、前記均し時間内におけるレベラー往復動作回数を前記戻し位置を炉長中間位置に設定した場合より増加させ、均し終了時に前記レベラーを前記レベラー挿入口から取り出すことを特徴とする装入石炭のレベリング方法。
【請求項2】
前記レベラー往復動作回数は、前記均し時間に前記戻し位置を炉長中間位置に設定した場合の標準往復動作回数の1.6〜2.0倍に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の装入石炭のレベリング方法。
【請求項3】
前記対向炉蓋からの前記戻し位置までの距離を炉長の1/4に設定したことを特徴とする請求項1又は2に記載の装入石炭のレベリング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−172050(P2012−172050A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34992(P2011−34992)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)