説明

装着型排泄装置

【課題】排泄装置内部に排泄物を残すことなく排出することが可能な装着型排泄装置の提供。
【解決手段】人体の股部に装着可能な装着部10と、人体の陰部に臨んで排泄物を受ける受け部11と、受け部11に接続された開口部12を介して排泄物を吸引する吸引パイプ13と、受け部11の内面に沿って摺動することにより受け部11内の排泄物を開口部12へ導く摺動板17とを備え、受け部11内の排泄物を摺動板17によって開口部12へと導き、吸引パイプ13により吸引して取り込むことができるので、吸引パイプ13により吸引する開口部12から離れた位置に排泄物がある場合であっても、残らず吸引して取り込むことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病人や介護を必要とする患者等の人体に装着して排泄物を受ける装着型排泄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
病気、怪我や加齢等により、自力でトイレに行くことのできない病人や高齢者等が紙おむつを使用することがある。しかし、紙おむつを使用する場合には、排泄の度に取り替えが必要で、介護者にとって負担であるばかりでなく、使用者の自尊心を傷つける問題がある。このため、おむつのように人体の股部に装着可能な形状をした排泄装置が開発されており、排泄装置の内部に溜まった排泄物を外部からパイプを通じて吸引する排泄装置が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開平6−54874号公報
【特許文献2】特開2005−66011号公報
【特許文献3】特開2002−58692号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の吸引式の排泄装置の場合、パイプの吸引取込口に落下した排泄物は上手く吸引して取り込むことができるものの、パイプの吸引取込口から離れた場所に落下した排泄物を吸引できないという問題が発生している。この問題は吸引装置の出力を高めても解決できず、結局は人手によって除去することになる。
【0005】
そこで、本発明においては、排泄装置内部に排泄物を残すことなく排出することが可能な装着型排泄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の装着型排泄装置は、人体の股部に装着可能な装着部と、人体の陰部に臨んで排泄物を受ける受け部と、受け部に接続された開口部を介して排泄物を吸引する吸引パイプとを備え、吸引パイプは、当該吸引パイプ内をスライドすることにより開口部を覆うとともに排泄物を押し出すピストンを備えたものである。
【0007】
本発明の装着型排泄装置によれば、人体の股部に装着されて受け部に受けた排泄物を、受け部に接続された開口部を介して吸引パイプにより吸引する際、ピストンのスライド動作によって開口部が覆われることにより、吸引パイプと受け部との間が密閉状態となる。これにより、この吸引パイプ内を吸引すれば、吸引パイプ内の排泄物を残らず取り除くことができる。
【0008】
また、本発明の装着型排泄装置は、ピストンの先端部に、当該ピストンが開口部を覆ったときに当該ピストンの前方空間と後方空間とを連通状態とするバルブ機構を備え、ピストンの後方空間が、大気開放されたものであることが望ましい。これにより、ピストンの前進によって開口部が覆われた際に、ピストンの前方空間と大気開放された後方空間とが連通状態となるので、吸引パイプ内から排泄物を吸引する際にピストンの後方空間から空気が引き込まれ、この空気とともに排泄物を軽い吸引力で吸引することが可能となる。
【0009】
また、バルブ機構は、ピストンの前方空間と後方空間とを連通する連通孔を有するピストン本体と、このピストン本体の前方で進退することにより連通孔を開閉するバルブと、このバルブが連通孔を閉じる方向に付勢するスプリングと、ピストン本体が開口部を覆った後にピストン本体の前進を阻止してバルブのみを前進させるピストンストッパとから構成されたものであることが望ましい。
【0010】
通常はスプリングの付勢力によりバルブは連通孔を閉じているが、ピストン本体が前進して開口部を覆った後に、ピストンストッパによりピストンの前進が阻止されることで、バルブのみが前進する。これにより、ピストンの前方空間と後方空間とが連通状態となり、吸引パイプ内から排泄物を吸引する際にピストンの後方空間から空気が引き込まれ、この空気とともに排泄物を軽い吸引力で吸引することが可能となる。
【0011】
また、本発明の装着型排泄装置は、受け部の内面に沿って摺動することにより、受け部内の排泄物を開口部へ導く摺動板を備えるものであることが望ましい。
【0012】
これにより、人体の股部に装着されて受け部に受けた排泄物を、受け部に接続された開口部を介して吸引パイプにより吸引する際、摺動板が受け部の内面に沿って摺動し、受け部内の排泄物を開口部へと導き、吸引パイプにより残らず吸引して取り込むことができる。
【0013】
ここで、摺動板は、水または空気を噴射しながら摺動するものであることが望ましい。これにより、摺動板の摺動によって受け部内の排泄物を開口部へ導く際、摺動板から噴射される水または空気によって受け部内の排泄物を刮ぎ落とすことができ、受け部内の排泄物を綺麗に取り除くことが可能となる。特に、水の噴射によるものであれば、受け部内の水洗効果も得られるので、受け部内の排泄物をさらに綺麗に取り除くことができる。
【0014】
また、摺動板は、弾性素材により形成されたものであることが望ましい。摺動板が弾性素材であることにより、受け部の内面に沿って摺動する際、摺動板が撓むことで受け部の内面に密着して摺動するので、受け部の内面に付着した排泄物を残らず刮ぎ落とすことが可能となる。
【0015】
また、本発明の装着型排泄装置は、摺動板がピストンロッドに連結されたピストンと、このピストンがスプリングを介して内装されたシリンダと、シリンダ内に水または空気を導入してピストンを押し出す圧送機構とを備えたものであることが望ましい。これにより、圧送機構によりシリンダ内に水または空気を導入することで、ピストンとともに摺動板を前進させることができる。また、このピストンの前進により圧縮または伸長したスプリングの反力によって、ピストンとともに摺動板を後退させることができる。
【0016】
また、摺動板は、水または空気を噴射する噴射口を備えたものであり、ピストンおよびピストンロッドは、シリンダ内に導入される水または空気を摺動板の噴射口まで導く導通孔を備えたものであることが望ましい。これにより、圧送機構によりシリンダ内に水または空気を導入すると、この導入された水または空気がピストンおよびピストンロッドの導通孔を介して摺動板の噴射口から噴射され、摺動板から噴射される空気または水によって受け部内の排泄物を刮ぎ落とすことができ、受け部内の排泄物を綺麗に取り除くことが可能となる。
【0017】
また、本発明の装着型排泄装置は、開口部を開閉可能に覆うシャッタを備えたものであることが望ましい。これにより、吸引パイプにより吸引する際、シャッタを閉じることで、使用者の局部や陰部等が引き込まれるのを防止し、痛みや不快感等が生じるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
(1)人体の股部に装着可能な装着部と、人体の陰部に臨んで排泄物を受ける受け部と、受け部に接続された開口部を介して排泄物を吸引する吸引パイプとを備え、吸引パイプが、当該吸引パイプ内をスライドすることにより開口部を覆うとともに排泄物を押し出すピストンを備えたものであることにより、ピストンのスライド動作のみによって、吸引パイプと受け部との間が密閉状態となり、吸引パイプ内を吸引することで排泄物を残らず取り除くことが可能となる。
【0019】
(2)ピストンの先端部に、当該ピストンが開口部を覆ったときに当該ピストンの前方空間と後方空間とを連通状態とするバルブ機構を備え、ピストンの後方空間が、大気開放されたものであることにより、ピストンの前進によって開口部が覆われた際に、ピストンの前方空間と大気開放された後方空間とが連通状態となるので、吸引パイプ内から排泄物を吸引する際にピストンの後方空間から空気が引き込まれ、この空気とともに排泄物を軽い吸引力で吸引することが可能となり、小型で小出力の吸引装置を使用して低廉な装着型排泄装置を提供することができる。
【0020】
(3)バルブ機構が、ピストンの前方空間と後方空間とを連通する連通孔を有するピストン本体と、このピストン本体の前方で進退することにより連通孔を開閉するバルブと、このバルブが連通孔を閉じる方向に付勢するスプリングと、ピストン本体が開口部を覆った後にピストン本体の前進を阻止してバルブのみを前進させるピストンストッパとから構成されたものであることにより、ピストン本体が前進して開口部を覆った後に、自動的にバルブが開いてピストンの前方空間と後方空間とが連通状態となり、吸引パイプ内から排泄物を吸引する際にピストンの後方空間から空気が引き込まれ、この空気とともに排泄物を軽い吸引力で吸引することが可能となる。
【0021】
(4)受け部の内面に沿って摺動して受け部内の排泄物を開口部へ導く摺動板を備えることにより、受け部内の排泄物を摺動板によって開口部へと導き、吸引パイプにより吸引して取り込むことができるので、吸引パイプにより吸引する開口部から離れた位置に排泄物がある場合であっても、残らず吸引して取り込むことが可能となる。
【0022】
(5)摺動板が、水または空気を噴射しながら摺動するものであることにより、摺動板の摺動によって受け部内の排泄物を開口部へ導く際、摺動板から噴射される水または空気によって受け部内の排泄物を刮ぎ落とすことができ、受け部内の排泄物を綺麗に取り除くことが可能となる。特に、水の噴射によるものであれば、受け部内の水洗効果も得られるので、受け部内の排泄物をさらに綺麗に取り除くことができる。
【0023】
(6)摺動板が、弾性素材により形成されたものであることにより、受け部の内面に沿って摺動する際、摺動板が撓むことで受け部の内面に密着して摺動するので、受け部の内面に付着した排泄物を残らず刮ぎ落とすことが可能となり、受け部内の排泄物をさらに綺麗に取り除くことができる。
【0024】
(7)摺動板がピストンロッドに連結されたピストンと、このピストンがスプリングを介して内装されたシリンダと、シリンダ内に水または空気を導入してピストンを押し出す圧送機構とを備えたものであることにより、簡単な構造により摺動板を摺動させることができ、低廉な装着型排泄装置を提供することができる。
【0025】
(8)摺動板が、水または空気を噴射する噴射口を備えたものであり、ピストンおよびピストンロッドが、シリンダ内に導入される水または空気を摺動板の噴射口まで導く導通孔を備えたものであることにより、摺動板の摺動動作と水または空気の噴射動作を簡単な構造によって同時に行うことが可能となる。
【0026】
(9)開口部を開閉可能に覆うシャッタを備えたものであることにより、吸引パイプにより吸引する際、シャッタを閉じることで、使用者の局部や陰部等が引き込まれるのを防止し、痛みや不快感等が生じるのを防止することができ、使用者の排泄行為を楽にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1は本発明の実施の形態における装着型排泄装置の側面図、図2は図1の装着型排泄装置の一部切欠き側面図、図3は平面図、図4は図2の右側面図、図5は図1の吸引部を拡大した平面図、図6は図5のA−A断面図、図7は図1の装着型排泄装置の斜視図、図8は摺動板の動作を示す斜視図、図9は摺動板の動作を示す平面図、図10〜図13は吸引パイプ内のピストンの動作を示す側面断面図である。なお、以下では、便宜上、図2の左側を前方、右側を後方として説明する。
【0028】
図1において、本発明の実施の形態における装着型排泄装置1は、人体Bの股部に装着される装置本体2と、装置本体2に接続されて高圧空気を供給するコンプレッサ3と、装置本体2に接続されて高圧水を供給する水ポンプ4と、装置本体2に接続されて排泄物を吸引する吸引装置5等とから構成される。なお、図示例ではコンプレッサ3、水ポンプ4および吸引装置5を別々に示しているが、これらは一体的に形成されても良い。
【0029】
図2および図3に示すように装置本体2は、人体Bの股部に装着可能な装着部10と、人体Bの陰部に臨んで排泄物を受ける受け部11と、受け部11に接続された開口部12を介して排泄物を吸引する吸引パイプ13と、吸引パイプ13の開口部12の口縁に形成され、受け部11内の排泄物を開口部12へ導くガイド部14と、吸引パイプ13内でスライドするピストン15と、ピストン15を進退運動させるエアシリンダ16と、受け部11の内面に沿って摺動する摺動板17等とを備える。
【0030】
装着部10は、人体Bが触れても炎症やアレルギ反応が起きない安全な素材でできており、防水性と通気性を有した生地でできている。また、臭い漏れを防止するために、外側をナイロンやビニールなどの素材で覆うことも可能である。また、装置本体2は、装着部10を跨ぐようにして人体Bに装着されるので、装着部10は、股部へフィットするように、人体に触れる部分は柔らかく、外側は硬質な素材で形成することも可能である。
【0031】
受け部11は、装着部10の内部に備えられている。ガイド部14は、装置本体2が人体に装着された場合に人体の局部(排泄器官の位置)に対向する位置となるように受け部11の底部に接続されている。ガイド部14は、受け部11を介して排泄物を受け、ガイド部14内部に排泄物を溜める。ガイド部14は、本実施形態においては半球形状であるが、排泄物を溜めやすいような形状であれば良い。
【0032】
吸引パイプ13は、図5に示すように、ピストン15が内装されて往復動する真っ直ぐな円管状のシリンダ部13aと、シリンダ部13aに接続され、シリンダ部13aから押し出された排泄物を、装置本体2の後方の終端部材18に形成された排出口19まで導出する排出部13bとから構成される。シリンダ部13aの後方空間は、終端部材18を貫通し、複数の貫通孔20aを設けたフィルタ20(図4参照。)を介して大気に開放されている。
【0033】
図1に示す吸引装置5は排出口19に接続されている。吸引装置5は、ポンプ機能やバキューム機能を有し、吸引パイプ13に吸引圧力を付加する。また、終端部材18には、電磁弁(図示せず。)を介してコンプレッサ3が接続される空気出入口21a,21bが設けられている。空気出入口21a,21bは、エアシリンダ16の両端部へそれぞれ接続されており、コンプレッサ3により供給する高圧空気の流路を空気出入口21a,21bのいずれかに制御することで、エアシリンダ16に内装されたピストン(図示せず。)を往復動作させるためのものである。なお、このピストンに連結されたピストンロッド16aは、連結部材16bによってピストン15に連結されている。
【0034】
ピストン15は、ピストン本体15aと、バルブ15bと、ピストン本体15aをバルブ15b側へ付勢するスプリング15cと、バルブ15bに連結されたロッド15d等とから構成される。ピストン本体15aには、ピストン15の前方空間と後方空間とを連通する連通孔15eが形成されている。バルブ15bは、このピストン本体15aの前方で進退することにより連通孔15eを開閉するものである。スプリング15cがピストン本体15aをバルブ15b側へ付勢するので、通常はバルブ15bが連通孔15eを閉じている。エアシリンダ16の連結部材16bはシリンダ部13aに形成された溝13cを通じてロッド15dに連結されている。
【0035】
摺動板17は、受け部11の内面に密着して摺動するように、受け部11の内面に沿った形状、例えば略半月状に形成されたものである。なお、本実施形態においては、摺動板17は、シリコンゴム等の柔軟な弾性素材により形成されている。摺動板17の両端部には、シリンダ30にスプリング33を介して内装されたピストン31のピストンロッド32が連結されている。また、シリンダ30には、電磁弁(図示せず。)を介して水ポンプ4が接続されるホース34が連結されている。
【0036】
このホース34を通じてシリンダ30内に高圧水を導入し、ピストン31を押し出すことで、摺動板17は図8(b)および図9(b)に示すように前進する。また、摺動板17の後退は、このピストン31の押し出しによって圧縮されたスプリング33の反力によって行われ、摺動板17は図8(a)および図9(a)に示す元の位置へと戻る。電磁弁を制御してこのような動作を繰り返し行うことにより、摺動板17を受け部11の内面に沿って摺動させ、受け部11内の排泄物を、ガイド部14を通じて開口部12へと導く。
【0037】
また、摺動板17の下面には、水を噴射する噴射口17aが複数設けられている。摺動板17の内部には、各噴射口17aへ水を導く導通孔17bが形成されている。ピストン31およびピストンロッド32にも、この導通孔17bに連通された導通孔32aが形成されている。この導通孔32aは、ピストン31を貫通してシリンダ30のホース34により高圧水が導入される側に連通されている。したがって、前述のようにホース34を通じてシリンダ30内に高圧水を導入した際、高圧水は導通孔32aおよび17bを通じて各噴射口17aから噴射される。
【0038】
なお、水ポンプ4は、終端部材18の吸水口22に連結される。水ポンプ4により吸水口22へ導入された高圧水は、前述のホース34の他、受け部11内部にも給水される。受け部11に給水されることで、受け部11に溜まっている排泄物が柔らかくなり、吸引パイプ13により排泄されやすくなる。また、受け部11の洗浄もできる。このため、水ポンプ4より給水される水が、洗浄成分を含むものであれば、洗浄効果も高くなる。
【0039】
次に、上記構成の装着型排泄装置1の動作について説明する。
装置本体2は人体Bの股部に装着される。装置本体2が人体Bに装着されると、排泄器官である陰部に対向するように、ガイド部14が位置する。このとき、ピストン15は、図11に示すようにシリンダ部13aの後方に位置し、シリンダ部13aの開口部12は開いている。排泄物は、通常、ガイド部14に排泄され、開口部12からシリンダ部13a内へと落下するが、ガイド部14からはみ出て受け部11内に排泄されることもある。ここで、水ポンプ4を動作させ、受け部11内部に給水することにより、受け部11内が洗浄されるとともに、排泄物はガイド部14内へと流れていく。
【0040】
また、水ポンプ4によりホース34を通じてシリンダ30へ高圧水を導入し、ピストン31を押し出すことで、図8および図9に示すように、摺動板17を前進させながら噴射口17aから高圧水を噴射させる。これにより、受け部11内の排泄物は、摺動板17から噴射される高圧水と受け部11の内面に密着して摺動する摺動板17により刮ぎ落とされ、ガイド部14へと導かれる。また、シリンダ30へ導入する高圧水の圧力が低下すると、スプリング33の反力により摺動板17が後退し、同様に受け部11内の排泄物が刮ぎ落とされる。
【0041】
そして、排泄が終了すると、エアシリンダ16を動作させ、ピストン15を前進させる。ピストン15は図10に示す位置から図11に示す状態を経て図12に示す位置まで移動する。これにより、シリンダ部13aの開口部12が閉じられるとともに、シリンダ部13a内の排泄物が洗浄水とともに排出部13bへと押し出される。また、このとき、ピストン15のバルブ15bは閉じた状態であり、排泄物は連通孔15eへ浸入することなく、すべて排出部13bへと押し出される。
【0042】
そして、ピストン15を図12に示す状態からさらに図13に示す状態へと前進させる。このとき、ピストン本体15aは、シリンダ部13a内に形成された段差状のピストンストッパ13d(図10参照。)によって前進が阻止されるので、スプリング15cが圧縮されてバルブ15bのみが前進する。これにより、図13に示すように、ピストン本体15aの連通孔15eが開放され、ピストン15の前方空間と後方空間とが連通状態となる。
【0043】
次に、この状態で吸引装置5を動作させ、吸引パイプ13内の排泄物および洗浄水を吸引する。このとき、吸引パイプ13の開口部12は閉じられているので、吸引装置5により吸引パイプ13内へ加えられる吸引圧力は人体Bの陰部などに及ばない。このため、従来の装着型排泄装置のように、排泄物の吸引時に加わる圧力による不快感や痛みなどが生じず、使用者が快適に排泄行為を行うことができる。
【0044】
また、吸引装置5による吸引時にピストン15の前方空間と後方空間とが連通状態となっているので、吸引パイプ13内から排泄物を吸引する際にピストン15の後方空間からフィルタ20を通じて空気が引き込まれるので、排泄物はこの空気とともに吸引される。なお、バルブ15bの前進は、エアシリンダ16により行わずに、吸引装置5の吸引力によって行う構成とすることも可能である。
【0045】
そして、排泄物の吸引が完了すると、エアシリンダ16を逆方向に動作させ、図10に示す位置まで戻す。ここで、ピストン本体15aがピストンストッパ13dから離れると、スプリング15cの反力によってバルブ15bが後退し、ピストン本体15aの連通孔15eが閉じられる。
【0046】
以上のように、本実施形態における装着型排泄装置1では、自立的な排泄行為が困難な使用者が、不快感や痛みを感じることなく、他人の介護なしに排泄行為を行うことができる。特に、この装着型排泄装置1では、摺動板17によって受け部11内の排泄物を開口部12へと導き、吸引装置5により吸引して取り込むことができるので、開口部12から離れた位置に排泄物がある場合であっても、残らず吸引して取り込むことが可能である。これにより、従来、開口部12から離れていた排泄物を残らず取り込むには、真空装置等の強力な吸引力を使用しても限界があったが、この装着型排泄装置1では低出力の吸引装置5で排泄物を残らず取り込むことができるので、吸引時の騒音が少なくなるうえ、低廉な装着型排泄装置1を実現できる。
【0047】
また、本実施形態における装着型排泄装置1では、摺動板17が水を噴射しながら受け部11内を摺動するので、摺動板17の摺動によって受け部11内の排泄物を開口部12へ導く際、摺動板17から噴射される水によって受け部11内の排泄物を刮ぎ落とすことができ、受け部11内の排泄物を綺麗に取り除くことが可能である。なお、本実施形態においては、水圧によって摺動板17の摺動と噴射口17aからの噴射を行っているが、高圧水に代えて高圧空気を用いることも可能である。なお、水を用いた場合には、受け部11内の水洗効果も得られるので、受け部11内の排泄物をさらに綺麗に取り除くことができるので望ましい。
【0048】
また、この摺動板17は、弾性素材により形成されているので、受け部11の内面に沿って摺動する際、摺動板17が撓むことで受け部11の内面に密着して摺動する。したがって、受け部11の内面に付着した排泄物を残らず刮ぎ落とすことが可能であり、受け部11内の排泄物をさらに綺麗に取り除くことが可能である。なお、摺動板17は受け部11の内面に沿って摺動すれば良いので、プラスチックや金属などの硬い素材を用いることも可能である。
【0049】
また、本実施形態における摺動板17は、両端部に設けたシリンダ30の両方へホース34により高圧水を供給して動作させているが、いずれか一方へ供給することにより動作させることも可能である。また、スプリング33をいずれか一方へ設けたり、スプリング33をピストン31の反対側へ設けたりすることも可能である。また、図2に示すように、この例では摺動板17を装置本体2の前方から後方へ向かって伸縮させているが、逆に装置本体2の後方から前方へ向かって伸縮させる構成とすることも可能である。
【0050】
また、図示例では、シリンダ30、ピストン31およびピストンロッド32が直線状であるが、これらを曲面状の受け部11の内面に合わせて曲線状に構成することも可能である。あるいは、シリンダ30、ピストン31およびピストンロッド32をゴムチューブ等の柔軟な素材により構成することで、受け部11の内面に沿って曲線状に変形させることも可能である。
【0051】
また、本実施形態においては、摺動板17へシリンダ30、ピストン31およびピストンロッド32を通じて高圧水を供給し、噴射口17aから噴射する構成としているが、これらとは別の流路を構成して摺動板17の噴射口17aから噴射させることも可能である。また、摺動板17以外の場所から高圧水を受け部11やガイド部14内に噴射する構成とすることも可能である。
【0052】
また、本実施形態における装着型排泄装置1では、吸引パイプ13のシリンダ部13a内でピストン15を前進動作させるだけで開口部12の閉塞と排出部13bへの排泄の押し出しが完了するので、開口部12を覆うシャッタを別に設ける必要がなくなり、部品点数が少なくて済む。また、開口部12が覆われることにより気密状態となったシリンダ部13a内は、ピストン15の先端部のバルブ15bが開くことで、ピストン15の前方空間と大気開放された後方空間とが連通状態となるので、吸引装置5による吸引時に吸引パイプ13内の気圧が低下して排泄物が円滑に吸引されなくなることを防止することができ、排泄物を軽い吸引力で吸引することが可能である。
【0053】
また、この装着型排泄装置1は、装着部10を人体Bの股部に直接装着する構成であるが、従来と同様、パンツ型として脚を通して装着する構成とすることも可能である。また、人体Bの股部に装着した際にずれることがないようにバンド等を用いて固定する構成とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の装着型排泄装置は、病人や介護を必要とする患者等の人体に装着して排泄物を受ける排泄装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態における装着型排泄装置の側面図である。
【図2】図1の装着型排泄装置の一部切欠き側面図である。
【図3】図1の装着型排泄装置の平面図である。
【図4】図2の右側面図である。
【図5】図1の吸引部を拡大した平面図である。
【図6】図5のA−A断面図である。
【図7】図1の装着型排泄装置の斜視図である。
【図8】摺動板の動作を示す斜視図である。
【図9】摺動板の動作を示す平面図である。
【図10】吸引パイプ内のピストンの動作を示す側面断面図である。
【図11】吸引パイプ内のピストンの動作を示す側面断面図である。
【図12】吸引パイプ内のピストンの動作を示す側面断面図である。
【図13】吸引パイプ内のピストンの動作を示す側面断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 装着型排泄装置
2 装置本体
3 コンプレッサ
4 水ポンプ
5 吸引装置
10 装着部
11 受け部
12 開口部
13 吸引パイプ
13a シリンダ部
13b 排出部
13c 溝
13d ピストンストッパ
14 ガイド部
15 ピストン
15a ピストン本体
15b バルブ
15c スプリング
15d ロッド
15e 連通孔
16 エアシリンダ
16a ピストンロッド
16b 連結部材
17 摺動板
17a 噴射口
17b 導通孔
18 終端部材
19 排出口
20 フィルタ
20a 貫通孔
21a,21b 空気出入口
22 吸水口
30 シリンダ
31 ピストン
32 ピストンロッド
32a 導通孔
33 スプリング
34 ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の股部に装着可能な装着部と、
前記人体の陰部に臨んで排泄物を受ける受け部と、
前記受け部に接続された開口部を介して前記排泄物を吸引する吸引パイプとを備え、
前記吸引パイプは、当該吸引パイプ内をスライドすることにより前記開口部を覆うとともに前記排泄物を押し出すピストンを備えたものである装着型排泄装置。
【請求項2】
前記ピストンの先端部に、当該ピストンが開口部を覆ったときに当該ピストンの前方空間と後方空間とを連通状態とするバルブ機構を備え、
前記ピストンの後方空間が、大気開放されたものである請求項1記載の装着型排泄装置。
【請求項3】
前記バルブ機構は、前記ピストンの前方空間と後方空間とを連通する連通孔を有するピストン本体と、このピストン本体の前方で進退することにより前記連通孔を開閉するバルブと、このバルブが前記連通孔を閉じる方向に付勢するスプリングと、前記ピストン本体が前記開口部を覆った後に前記ピストン本体の前進を阻止して前記バルブのみを前進させるピストンストッパとから構成されたものである請求項2記載の装着型排泄装置。
【請求項4】
前記受け部の内面に沿って摺動することにより、前記受け部内の排泄物を前記開口部へ導く摺動板を備える請求項1から3のいずれかに記載の装着型排泄装置。
【請求項5】
前記摺動板は、水または空気を噴射しながら摺動するものである請求項4記載の装着型排泄装置。
【請求項6】
前記摺動板は、弾性素材により形成されたものである請求項5記載の装着型排泄装置。
【請求項7】
前記摺動板がピストンロッドに連結されたピストンと、このピストンがスプリングを介して内装されたシリンダと、前記シリンダ内に水または空気を導入して前記ピストンを押し出す圧送機構とを備えた請求項4から6のいずれかに記載の装着型排泄装置。
【請求項8】
前記摺動板は、水または空気を噴射する噴射口を備えたものであり、
前記ピストンおよびピストンロッドは、前記シリンダ内に導入される水または空気を前記摺動板の噴射口まで導く導通孔を備えたものである請求項7記載の装着型排泄装置。
【請求項9】
前記開口部を開閉可能に覆うシャッタを備えた請求項1から8のいずれかに記載の装着型排泄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−112515(P2009−112515A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−288630(P2007−288630)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【出願人】(393028449)
【Fターム(参考)】