説明

装飾チョコレート及びその製造方法

【課題】 水性の可食性インクによって、油性のチョコレート表面に直接的に表示を印刷できるようにする。
【解決手段】 成型し固化したチョコレート1の表面層2を柔らかくし、この柔らかくした表面層2に水性の可食性インクにより表示3を印刷する。これによって、表示がキチンと表わされている装飾チョコレートができる。印刷は、インクジェット印刷法によって、柔らかくした表面層2に接触することなく、水性の可食性インクを表面層2に噴射することにより行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョコレートに可食性インクを用いて文字、図形、模様、画像などの表示を印刷した装飾チョコレート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、せんべい、最中のような菓子の表面に文字、図形、模様などの表示を、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、パッド印刷法などによって印刷することは行われて来た。
しかし、チョコレートのように油性のものでは、一般の可食性インクが水性であるためにチョコレートの表面に可食性インクが載らず、インクが弾かれてしまって鮮明な表示を描くことができない。
【0003】
こうしたことから、水性の可食性インクの載る澱粉やこんにゃくを主原料とする可食性フィルムの上に印刷し、その上をペクチンなどの可食性コーティング材で覆ったものを作り、これをチョコレートの表面に貼り付けることによって装飾を行ったりしていた(特許文献1)。しかしながら、こうした可食性フィルムには表示が印刷されてはいるものの、チョコレートとは全く異質と言ってもよいものであるので、外観も、食味も悪く、また製造も複雑で満足の行くものではなかった。
【特許文献1】特開2001−161285号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、油性の可食性インクが存在すれば、こうした問題も解決されるのではないかと推測されるが、適当な油性の可食性インクの存在しない現状において、本発明は、一般に用いられている水性の可食性インクによって、油性のチョコレート表面に直接的に表示を印刷できるようにしようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記したように、水性の可食性インクは油性のチョコレート表面に載らず、弾かれてしまうことから、なかなかチョコレート表面に表示を印刷することができないでいたが、種々研究、開発の結果、成型し固化したチョコレートの表面層の部分を柔らかくし、この柔らかくした表面層に水性の可食性インクにより表示を印刷したところ、水性の可食性インクは弾かれることなく、印刷することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
このように、本発明は、成型し固化したチョコレートの表面層を柔らかくし、この柔らかくした表面層に水性の可食性インクにより表示を印刷することによって、表示がキチンと表わされている装飾チョコレートとするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、従来不可能とされていた油性であるチョコレートの表面に、水性の可食性インクによって表示を直接的に印刷することができ、その表示も鮮明であって、優良な装飾チョコレートを得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
チョコレートは、ブラックチョコレート、ミルクチョコレート、ホワイトチョコレートなどを使用することができるが、表示を鮮明に印刷し、特に多色の表示を印刷するためには、通常、ホワイトチョコレートを使用するとよい。
図1に示すものは、ホワイトチョコレート1を表面が平滑な板チョコ状に成型し、固化したものである。こうしたホワイトチョコレート1の表面層2を柔らかくする。この場合、表面側に温風を当てたり、ヒーターなどによって緩徐に、表面層2だけが柔らかくなるようにするとよい。
【0008】
表面層2が柔らかくなったら、水性の可食性インクによって表示3を印刷する。この印刷は、例えば、インクジェット印刷法で行うことができ、インクジェット印刷法で行えば、直接に柔らかくなった表面層2に接触することが無く、水性の可食性インクをジェット噴射することができるので、都合がよく、文字、記号、模様、画像その他の表示を自由に表すことができる。
このとき、チョコレート1の表面層2は上記の如く柔らかくなっているので、ジェット噴射された水性の可食性インクは表面層2に付着し、これを弾いたり、滲ませたりすることが見られず、表示を鮮明に印刷することができる。
この可食性インクは、単色で使用しても良いし、多色で使用しても良いが、多色を使用すれば、カラー写真や絵画などのカラー画像も精緻かつ鮮明に印刷することができる。
【0009】
水性の可食性インクにより表示3が印刷されたチョコレート1の表面層2は、放冷又は冷却すれば、柔らかくされていたものが徐々に硬くなっていくが、これによって表面層2に載っている可食性インクはその位置で固定され、表示3が鮮明に保たれる。
【0010】
図2に示すものは、最初にモールドの中央部に少量のホワイトチョコレート4を流し、その後で上からミルクチョコレート5またはスイートチョコレートを流し、モールドから抜いて額状に形成したチョコレート6であって、その中央部のホワイトチョコレート4の部分に、上記と同様にして花の絵7を表示したものである。
また、図3のものは、中央部のホワイトチョコレート8の周りを写真フィルム状9になるように形成したチョコレート11に、上記したのと同様にしてコミック人形の画像10を印刷したものである。
【0011】
図4に示すものは、中央部のホワイトチョコレート13をハート形にし、その周りに同じくハート形の縁14を形成したチョコレート16であって、上記したのと同様にしてホワイトチョコレート13の上に水差しの絵15を印刷したものである。
上記したものの他、チョコレートの平面形状は、円形、楕円形、三角形、多角形、星形、その他の適宜の形状にすることが出来る。
【0012】
上記したように、水性の可食性インクの色が、チョコレートの表面の色と違った色であり、チョコレートの表面層に印刷した表示を判別することが可能であれば、ホワイトチョコレート以外のチョコレートにも適宜に、同様にして表示を表すことができる。
【0013】
更に、図5に示すように、絵画などの表現しようとする画像の種類によっては、先にその表示を凹凸模様17を有するレリーフ状態にチョコレート18で成型しておき、このレリーフ状の凹凸模様17に合わせて、その上から水性の可食性インク19によって印刷を行えば、より立体感のある装飾チョコレートとすることができる。
また、同じ凹凸模様17の場合にも、水性の可食性インクによる着色パターンを変えることによって、趣の違った各種の表示とすることができる。
【0014】
上記したようにチョコレートに水性の可食性インクによって表示を印刷する際に、その表面層を柔らかくするために緩徐に温めているので、製造した装飾チョコレートを保存している間に、チョコレート中のカカオバターが分離して結晶化するいわゆるブルーミング現象を起こすことがある。こうした危険性が高い場合には、チョコレートの製造過程におけるテンパリング処理や、モールドに流す前にテンパー剤を必要量加えておく(例えば、商品名「NKクイック・テンパ」日新化工株式会社製を、チョコレートの全体量に対して0.2重量%程度を添加する)と、上記したようなブルーミング現象の発生を防止することができて都合がよいこともある。
【0015】
上記したものは、凹凸模様の有無はあっても本質的に板チョコレート状のものであるが、チョコレートの形状が玉子形であったり、花、動物その他の立体形状のものであっても、同様にしてその表面に適宜の表示をあらわすことができ、広く応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例を示す斜視図である。
【図2】本発明の他の実施例を示す平面図である。
【図3】本発明の更に他の実施例を示す平面図である。
【図4】本発明の他例を示す平面図である。
【図5】本発明の更に他例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0017】
1,4,8,13: ホワイトチョコレート
2: 表面層
3: 表示
5: ミルクチョコレート
6: 額状チョコレート
7: 花の絵
9: フィルム形状チョコレート
10: 人形の画像
14: ハート形の縁
17: 凹凸模様

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成型し固化したチョコレートの表面層を柔らかくし、この柔らかくされた表面層に水性の可食性インクにより適宜の表示を印刷したことを特徴とする装飾チョコレート。
【請求項2】
上記成型し固化したチョコレートの表面には、凹凸状の模様が成型されていることを特徴とする請求項1記載の装飾チョコレート。
【請求項3】
上記チョコレートの表面層は、緩除な加温によって柔らかくされていることを特徴とする請求項1または2に記載の装飾チョコレート。
【請求項4】
上記表示が印刷されるチョコレートがホワイトチョコレートであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の装飾チョコレート。
【請求項5】
上記チョコレート中にはテンパー剤が含まれていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の装飾チョコレート。
【請求項6】
上記ホワイトチョコレートが、成型したチョコレートの表面層の一部に存在している請求項4に記載の装飾チョコレート。
【請求項7】
チョコレートを成型して固化し、固化したチョコレートの表面層の部分を柔らかくし、柔らかくした表面層に水性の可食性インクにより適宜の表示を印刷し、表面層を再び固化させる装飾チョコレートの製造方法。
【請求項8】
上記印刷は、チョコレートの表面層と非接触状態のインクジェット印刷法により行うことを特徴とする請求項7に記載の装飾チョコレートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−29064(P2010−29064A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191663(P2008−191663)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000111719)ハンター製菓株式会社 (1)
【出願人】(591070266)谷沢菓機工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】