説明

装飾玉およびその装飾玉の製造方法

【課題】球体形の装飾玉の凸面に表される模様がどの装飾玉についても同一の模様に仕上げるとともに、模様が損傷しない球体形の装飾玉を提供する。また、その球体形の装飾玉の製造方法を提供する。
【解決手段】無色透明のガラス製の下半球体2と、下半球体2の平坦面2aに設けられる転写シートによる模様3と、上記の下半球体2の平坦面2aおよびこの面に設けられた模様3の上面に溶解状態の無色透明のガラスによって形成されている。この上半球体は下半球体およびこの平坦面に固定された転写シートによって形成された模様3aの上に溶解状態の無色透明のガラスを徐々に乗せながら形成し、全体が球体に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は装飾玉およびその装飾玉の製造方法に関する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
装飾玉が球体形である場合、その表面に施される模様は手書きが一般的であるが、手書きの場合は、製品一つひとつの模様の出来上がりにばらつきが生じやすい。このようなばらつきを防止するために、転写シートによって模様を施す方法もあるが、凸面上では転写シートをまっすぐに伸ばした状態で張り付け難く、特に、球体が小振りの装飾玉の場合は一層、転写シートが部分的に重なり、また、模様が重なり易い。したがって、製品の出来上がりに安定性を欠く。また、球体表面に施された模様は外出しているので、掻き傷などの損傷を受け易い。
【0003】
本発明は、球体形の装飾玉の凸面に表される模様がどの装飾玉についても同一の模様に仕上げて製品のばらつきをなくし、また、模様が損傷しない装飾玉を提供することを課題としている。また、その装飾玉の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の装飾玉(請求項1)は、球体の一方を形成しているガラス製の一側体と、その一側体のほぼ平坦面に転写シートから焼き付け固定した印刷層と、その平坦面および印刷層の上面に設けた透明の前記球体の他方を形成するガラス製の他側体とからなり、前記印刷層が前記一側体と他側体とからなる球体内に密着状態で内蔵されていることを特徴としている。
【0005】
前記一側体は、透明が好ましい(請求項2)。
【0006】
前記一側体は、球体の中心から外れた位置を切断した状態の一方の側によって形成され、前記他側体は、その他方の側によって形成されているのが好ましい(請求項3)。
【0007】
前記一側体および他側体は、ほぼ半球体であり、前記印刷層が前記球体のほぼ中心に密着状態で内蔵されていてもよい(請求項4)。
【0008】
前記一側体または他側体の中に、前記印刷層とほぼ平行状態で金属箔を設けているのが好ましい(請求項5)。
【0009】
前記他側体は、前記一側体のほぼ平坦面および前記印刷層の上に溶解状態のガラスを設け、成形・固化したものが好ましい(請求項6)。
【0010】
前記一側体は、色ガラスであってもよい(請求項7)。
【0011】
前記印刷層の模様は、文字、紋などの記号が好ましい(請求項8)。
【0012】
本発明のストラップは、請求項1または5記載の装飾玉と、その装飾玉の天部に設けられた連結部材と、この連結部材に連結された吊り紐とからなるのを特徴としている(請求項9)。
【0013】
前記吊り紐は、請求項9の装飾玉の印刷層と同系色であるのが好ましい(請求項10)。
【0014】
本発明の装飾玉の製造法(請求項11)は、球体の一方を形成しているガラス製の一側体を成形し、その一側体の平坦面に転写シートによって印刷層を焼き付け固定し、加熱して高温状態にある一側体の平坦面側に透明のガラスを溶解状態で設けて前記球体の他方を形成している他側体を形成することを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の装飾玉(請求項1)は、球体の一方を形成しているガラス製の一側体のほぼ平坦面に転写シートの印刷層を焼き付け固定しているので、他側体を一側体および印刷層の上面に設ける時、印刷層が所定の位置よりずれることはない。したがって、印刷層、つまり模様はガラス製の球体の中の所定の位置に密着状態で確実に閉じ込めることができる。また、他側体は透明なので、印刷層、つまり模様は、他側体から中を見たとき、この他側体の凸面の作用によって拡大し、また、この凸面上に浮き上がって外見される。したがって、上記の模様は他側体の表面、または装飾玉の表面に施されているような外観を呈する。しかしこの模様は厚いガラス層で覆われているので、掻き傷や切り傷などによって損傷することはない。
【0016】
前記一側体が透明である場合(請求項2)、前記印刷層は、一側体についても他側体と同理同様に拡大して見える。また、一側体の凸面上に浮き上がって外見されるので、一側体の表面にも模様が施されているような外観を呈する。また、一つの印刷層は一側体と他側体とでは、対称的に表れるので、装飾玉は2通りの意匠を外見することができる。
【0017】
前記一側体が球体の中心から外れた位置を切断した状態の一方の側によって形成され、前記他側体が、その他方の側によって形成されている場合(請求項3)、一側体と他側体の厚みに差異があるので、その拡大作用は異なる。したがって、上記の各側体から中の印刷層を見たとき、その印刷層による模様は大きさが異なる相似形で表れるので、装飾玉は2通りの意匠を外見することができる。
【0018】
前記一側体および他側体の形状がほぼ半球体である場合(請求項4)、一側体と他側体のそれぞれの凸面による拡大作用はほぼ同じである。したがって、上記の各側体から中の印刷層による模様を見たとき、その模様はほぼ同じ大きさに表れるので、一側体および他側体のいずれの側においても同じ意匠が外見できる。
【0019】
前記一側体または他側体の中に前記印刷層とほぼ並行状態で金属箔を設けている場合(請求項5)、金属箔は、一側体または他側体のうち、金属箔が設けられている側の凸面の作用によって拡大し、その側の凸面に浮き上がって外見される。また、反対側の凸面には金属箔とその手前に位置する印刷層が一体となって拡大し、その側の凸面に浮き上がって外見される。したがって金属箔が設けられている側の表面には金属箔が施され、また、反対側の表面には金属箔上に印刷層が施されているような外観を呈する。しかし、金属箔および印刷層は厚いガラスの球体の中に設けられているので、外損を受けることはない。
【0020】
前記他側体が前記一側体のほぼ平坦面および前記印刷層の上に溶解状態のガラスを設け、成形・固化したものである場合(請求項6)、溶解状態のガラスは一側体の平坦面および印刷層に全面密着することができるので、印刷層の周辺に隙間は生じない。
【0021】
前記一側体が、色ガラスである場合(請求項7)、他側体からは一側体の色が透過する。したがって、他側体の色は実態とは異なる色で外見される。また、印刷層による模様はその色が付いた他側体の表面に沿って施されているような外観を呈する。
【0022】
前記の印刷層の模様は、文字、紋などの記号である場合(請求項8)、通常、見ることのない反転状態の形状も鑑賞できるので、一層、興趣がある。
【0023】
本発明のストラップ(請求項9)は、球体の一方を形成しているガラス製の一側体と、その一側体のほぼ平坦面に転写シートから焼き付け固定した印刷層と、その平坦面および印刷層の上面に設けた前記球体の他方を形成するガラス製の透明の他側体とからなり、前記印刷層が前記一側体と他側体とからなる球体内に密着状態で内蔵されている装飾玉、または、前記一側体が透明で、その中に前記印刷層とほぼ並行状態で金属箔を設けている装飾玉と、その装飾玉の天部に設けられた連結部材と、この連結部材に連結された吊り紐とからなっている。したがって、吊り紐で吊られた上記の装飾玉は回転が可能になっており、また、中の印刷層は見え隠れが可能になっているので、装飾玉は回転することによって、別の装飾玉に外見される。
【0024】
前記印刷層と前記吊り紐とが同系色である場合(請求項10)、吊り紐は印刷層による模様を直に吊り持しているような外観を呈する。
【0025】
本発明の装飾玉の製造法(請求項11)は、球体の一方を形成しているガラス製の一側体の平坦面に転写シートによって印刷層を焼き付け固定し、加熱して高温状態にある一側体の平坦面側に透明のガラスを溶解状態で設けて前記球体の他方を形成している他側体を形成しているので、他側体は一側体および印刷層の上に隙間なく、また、完全に密着した状態で接合させることができる。したがって、一側体と他側体によって形成された球体は、まるで一塊の球体が形成されているかのようにその接合部は分からないので、非常に美しい。また、印刷層は一塊の球体の中に密着状態で収められているので、一側体と他側体に挟まれている形態には見えない、印刷層と球体は非常に緊密に密着しているので、非常に好体裁の外観を呈している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
つぎに図面を参照しながら、本発明の装飾玉の実施形態および装飾玉の製造法について説明する。図1aは本発明の装飾玉の一実施形態を示す正面図、図1bは同背面図、図1cは同側面図、図2aは図1aの一部を切り欠いた状態の正面拡大図、図2bは図2aの同側面図、図3は転写シートの層構造を示す説明図、図4aはその他の実施形態を示す正面図、図4bは同背面図、図4cは同側面図、図5はその他の実施形態を示す正面中央縦断面図(または、正面中央横断面図)、図6は装飾玉の使用形態を示す正面図、図7は装飾玉の製造方法を示す概略工程図である。
【0027】
本発明の装飾玉1は、図1aないし図1cおよび図2aないし図2bに示す無色透明のガラス製の半球体(以下、下半球体と称す。)2と、図2に示す下半球体2の平坦面2aに設けられる転写シートによる印刷層3と、上記の下半球体2の平坦面2aおよびこの面に設けられた印刷層3の上面に溶解状態の無色透明のガラスによって形成される上半球体4とからなっている。装飾玉1の直径は、例えば12〜20mmくらいの小型のものである。
【0028】
下半球体2は、無色透明のガラスによって手作りで形成されている。下半球体2は上半球体4が手作りによって形成されることから、同じ触感の手作りの方が成型品よりも違和感がなく、また、風合いがあるので、好ましい。しかし成型品であってもよい。
【0029】
転写シート5は、図3に示すように可燃性のカバーコート6と、この下の転写用の模様が形成されている印刷層3と、この下の水溶性のバインダー7(一部)とからなる。この原形は水溶性バインダー7の下層に台紙である転写紙8が設けられているが、水に浸して転写紙8を取り除いた状態のものがここでいう転写シート5である。この転写シート5の印刷層3の厚みは極めて薄い。したがって、図2bに示すように、平坦面2aに転写シート5を焼き付けて転写された印刷層3と平坦面2aとの間にはほとんど段差が生じない。印刷層3を形成する印刷用のインク材には金粉が混合されているので、図1a、図1bおよび図2aに示す転写された模様3aの色は金色を呈している。金粉は溶解状態のガラスと接触しても変質することはないので、模様3aは美しい金色を保持する。
【0030】
印刷層3は転写用の模様3aを形成している。その模様としては、図1aおよび図2aに示すように漢字が好ましい。そもそも漢字は左右または上下のバランスがよい。また、円形の中にバランスよく収まるとともに円形の形状に調和する。漢字の形状は、例えば毛筆による楷書体、行書体または草書体がボリュームおよび線の流れなどから、模様としての価値が高く、好ましい。
【0031】
上記の漢字は一個あるいは複数個のいずれも模様として採用してよい。たとえ字数、また、画数が多くても、後述する上半球体4の凸面の作用によって拡大され、また、明瞭に表れるので、煩雑さはない。漢字の形状は上記の書体以外のもの、また、オリジナルのものであってもよい。模様3aは、漢字以外の記号として、図4に示すように家紋も好ましい。家紋は外周が略円形状のもの、あるいは円状に広がっているものが多いので、円形の平坦面2aの面積をフル活用できることからも模様として非常に有効である。その他の模様としては、社章、校章、園章なども好ましい。また、ブランドのロゴや人気キャラクターなどの図柄なども好ましい。さらに微妙な表情をだすために繊細に描かれているキャラクターの図柄は特に好ましい。
【0032】
図2aおよび図2bに示すように、平坦面2aの中心に焼きつけ固定された模様3aは、前述のとおり、金色で、かつ、側面から見ても厚みが見えないくらい非常に薄いので、まるで、金箔によって施されているかのような繊細さと豪華さが表現されている。この模様3aの大きさは、図2aに示すとおり、平坦面2aの周縁の内側に十分な空き部Pを残し、また、図2bに示すとおり、下半球体2の半円凸の立ち上がり部R1にかからない小さめのものである。例えば、模様3aが平坦面2aの直径よりも概略、3割程度、小さくしているものが好ましい。
【0033】
この場合、下半球体2の凸面R2を通して模様3aを真正面から見たとき、模様3aは立ち上がり部R1にかかっていないので、下半球体の凸面R2の拡大作用によって、歪曲することなくほぼ均等に拡大される。そのため、非常に美しい状態で外見することができる。この模様3aはほぼ3割増しに拡大されるので、凸面全体に模様3aが広がって外見される。このように、模様3aは上記のとおり平坦面2aの周縁に余地があるくらいの小さめのものを下半球体2の平坦面2aの中心に形成するのが好ましい。しかし、平坦面2aの周縁にあえて模様の周囲を接近させ、あるいは、R1の真下に位置させて、歪曲させてもよい。
【0034】
上半球体4は、図2に示すように、平坦面2aおよび印刷層3の上に高熱の溶解状態のガラスを徐々に垂らしながら形成するが、下半球体2は、高熱の溶解状態のガラスによってひびが入るなどの衝撃を受けないようにするため、予め加熱して高温状態にしたところで、溶解状態のガラスを垂らしている。そのため、上半球体4と下半球体2の密着度は極めて高く、また、上半球体4は下半球体2に同化する。したがって、両体の接合面が分らないほどの一塊の球体を形成したような外観を呈し、また、印刷層3は上記の両体に挟まれているというよりも、球体の中に密着状態で閉じ込められているような外観となっている。また、印刷層の周辺には隙間はない。
【0035】
さらに、上記の二つの半球体は同じ質感であって、境目のない一塊の球体に形成されるので、装飾玉の表面は段差や継ぎ目がない美しい平滑な面に仕上げることができる。このように半球体の間に印刷層を介在させて、一体化させたことによる球体形の装飾玉は、表面は一塊の球体であり、前述のとおり、その中に模様が完全密着の状態で閉じ込められているので、上下の半球体の間に挟まれている違和感は一切ない。
【0036】
したがって一塊のガラス製の球体と、水平状態の厚みのない模様との組み合わせによる装飾玉は、表面が滑らかで繊細な感じがある一方、各半球体の凸面を通して見たとき表れる拡大した模様には大胆さがあるので、繊細さと大胆さが融合した興趣のある外観を呈する。また、上記の模様3aは、前述のとおり、拡大さして外見されるので、転写シートは小さくてすむ。そのため、取扱が容易であり、また、経済的である。また、上半球体4の凸面4bを通して見る模様3aは、凸面4b上に浮かび上がっているように外見されるので、装飾玉1は摩訶不思議な光景を呈する。
【0037】
このように模様3aの拡大効果や浮かび上がり効果は反対側の下半球体2においても同理同様である。また、図1bに示すように下半球体2の凸面2bから見える模様3aは、図1aに示す上半球体4から見える模様の形状が反転状態になるので、裏側を見ているように錯覚する。特に、漢字の場合は、通常、反転状態を見慣れていないので、斬新さがある。そして、図1cに示すようにこの模様3aは装飾玉1の側面からはほとんど見えないので、模様3aは見る方向によって出没する。
【0038】
その他の実施形態としては、図4a乃至図4cに示すように、前記の実施形態の下半球体2を模様3aが見えない程度の不透過性の有色ガラスとし、上半球体4を無色透明のガラスとしている。印刷層による模様3aは有色ガラスと同化しない色、または色の組み合わせとしている。この実施形態では、下半球体の色とは異なる金色の紋を模様として採用している。上半球体4は、前記の実施形態と同じく無色透明の溶解状態のガラスによって形成し、下半球体2とともにほぼ球体を形成している。なお、模様は、この実施形態においてもこれに限定されるものではない。
【0039】
したがって上半球体4からは下半球体2の色が透視されるので、上半球体4が下半球体2と同じ不透過性の有色ガラスで形成されているように外見される。そのため、図4aに示すように、上半球体4を通して紋の模様3aを真正面から見ると、恰も不透過性の有色ガラスからなる上半球体4の表面に金色の紋が設けられているように錯覚させられる。さらに、その上半球体4の表面全体に設けられている模様3aならば、本来、側面からも外見されるが、図4cに示すように、模様3aは下半球体2の平坦面2aに設けられているので、側面からは見えない。また、図4bのように背面からは、下半球体2が上半球体4と同色でありながら、模様3aは外見されない。したがって、この実施形態の装飾玉1は、模様3aが思惑通りに見えないので、トリック的な興趣を持ち合わせている。
【0040】
その他の装飾玉1の実施形態としては、図5に示すように、球体の中心を外して切断することによって得られる一方の一側体20と、他方の他側体21とによってなり、さらには、その一側体が、その平坦面と並行に切断することによって得られる外側体22と内側体23とによってなる無色透明のガラス製の球体と、この外側体22と内側体23の間に閉じ込められる金属箔24と、内側体23と他側体21の間に閉じ込められる転写シートによる印刷層3とからなる。
【0041】
さらに詳しくは、一側体20は、図5に示すように、平坦面20aの直径が、仮想半球体Aの二点鎖線で示す平坦面A2の直径よりも小さく、奥行が長い。また、他側体21の方は、平坦面21aの直径が前記仮想半球体Aと同じ大きさの仮想半球体Bの平坦面B2の直径より小さく、奥行が短い。外側体22は、ほぼ半球体を形成している。内側体23は、この外側体22の上面に溶解状態のガラスを垂らして一側体の残り部分を形成している。内側体23は、予め高温状態にした外側体22の平坦面22aの中心にこれより小円形の金属箔24を設け、その上から溶解状態のガラスを垂らして形成しているので、外側体22と内側体23との間は隙間なく密着し、また、金属箔24は一側体20の中に密着状態で閉じ込められる。
【0042】
他側体21は、内側体23の平坦面、つまり一側体20の平坦面20aの上面の中心に前記実施形態と同じように、その周辺に余地が残る程度の小振りの印刷層3による模様3aを設けており、予め高温状態にしたその上から溶解状態のガラスを垂らして形成しているので、前記実施形態と同じく一側体20と他側体21との間には隙間がなく、また、模様3aは装飾玉1の中に密着状態で閉じ込められる。印刷層3は、前記の金属箔24の大きさの中に収まる程度の大きさになっている。また、内側体23を介して金属箔24の上に設けるので、転写作業の時、金属箔24を損傷させることはない。
【0043】
この内側体23および他側体21はいずれも上記のとおり、溶解状態のガラスによって形成されているので、金属箔24および印刷層3が設けられていても、外側体22、内側体23そして他側体21は相互に隙間なく、強力に密着した状態で球体を形成することができる。また、溶解状態のガラスによって内側体23と他側体21を形成するとき、外側体22あるいは一側体21は高温状態にしているので、上記の3つのパーツは同じ質感で形成される。したがってそれぞれのガラス体の接合部は分からない。また、金属箔24および印刷層3は上記外側体22、内側体23、そして他側体21に挟み込まれているというよりも、一塊のガラス製の球体の中に密閉状態で閉じ込められているような外観を呈する。なお、外側体22については成型であってもよいが、内側体23および他側体21との質感がより同じになるように溶解状態のガラスによって形成されたものが好ましい。
【0044】
この実施形態の印刷層3の色は少なくともアウトラインの色は背景の金属箔24と同化しないように、他の色で着色されている。しかし、同化する必要がある場合は金属箔24と同色でもよい。印刷層の模様3aは、文字、紋、キャラクターなどの図柄が好ましいが、これらに限るものではない。金属箔は、高温に対して、変質し難い金箔を使用するのが好ましい。しかし、金箔以外の金属箔を使用してもよい。
【0045】
この実施形態の装飾玉1は、外側体22の凸面から中を見たとき、金属箔24が外側体22の凸面の作用によって、拡大するとともに、表面上に浮き上がって外見されるので、一側体の凸面全体が金属箔によって覆われているような外観を呈する。また、反対の他側体21の凸面から中を見たとき、金属箔24を背景に印刷層3の模様がこの凸面に浮き上がって外見されるので、金属箔24で覆われた凸面に模様3aが施されているような外観を呈する。また、印刷層3の模様は他側体21の凸面の作用によって、拡大して見える。このように無色透明のガラス製の内側体23を介して印刷層3と金箔24とを設けていることによって、一側体20と他側体21の凸面から見える意匠は全く趣が異なるので、非常に贅沢感がある。
金属箔24と印刷層による模様3aは、前実施形態と同じように仮想半球体AおよびBの各凸面の立ち上がり部にかからないようにすることによって、拡大して外見される模様3aは歪曲しない。また、金箔24は、外側体22の凸面の拡大作用によって、実質的な面積は小さくて済むので、経済的である。
【0046】
その他の実施形態(図示外)は、球体の中心より外れたところを切断した無色透明のガラス製の一側体及び他側体からなり、この一側体と他側体の間に印刷層によって形成された模様を設けている。例えば、一側体の凸面の厚みが他側体よりも厚い場合、一側体の凸面から中を見た方が他側体の凸面から中を見たときよりも大きく拡大して見える。したがって、一つの大きさの模様が一側体からは大きい状態で外見され、反対に他側体からは小さい状態で外見される。
なお、前記の実施形態で示した装飾玉の大きさは、前述の大きさに限定されるものではない。
【0047】
前記実施形態の装飾玉は、このまま飾っておいてもよいし、また、財布の中に忍ばせるなどお守り感覚で携帯してもよい。その他、図6に示すようにストラップ30を装飾玉1に取り付けた状態で携帯してもよい。この場合、装飾玉1の天部に直径0.5〜1.0mm前後の竪穴31を設け、ストラップ30と連結するための連結部材32の脚部をこれに固定させる。竪穴31は装飾玉1を形成している途上において、ガラスが高熱状態にあるとき針によって形成している。連結部材32は、極細の金属の線材によって直径が2〜5mmの環状の頭部33と、その下方に直線状に伸びている前記の脚部34とからなり、脚部34をガラス用の接着剤に付けて竪穴31に挿入した後、赤外線に照射させて竪穴に固定させている。また、連結部材32は、装飾玉1の天部からその頭部33がわずかに突出するだけで、脚部34は竪穴31に埋まった状態になっている。なお、連結部材は先の線材に変えて、上半球体を形成する際にガラスで環を形成して装飾玉に一体化させたものでもよい。また、下半球体2が有色不透明の場合、前記の連結部材32は下半球体2の側に竪穴を設けて、当該竪穴にその脚部を固定することによって、不外見となるので、好体裁である。
【0048】
ストラップ30はボリューム感のある組紐で形成されているストラップ本体35と、この下部に設けられた前記の連結部材32に装着用の環状の連結金具36とからなる。前述のとおり、連結部材32の頭部33は比較的小さいので、ストラップ30の下端は装飾玉1の天部に接近し、また、模様3aにも接近している。また、ストラップ30は模様3aと同系色になっている。なお、ストラップ本体の上方は細い孔に貫通させ易いいわゆる松葉紐で形成されているのが好ましい。しかし、ストラップ本体全体が松葉紐のように繊細な感じのものであってもよい。この場合、模様と同系色とすることによって、一体感があるので、好ましい。しかし同系色でなくてもよい。
【0049】
したがって、ストラップ30は模様3aを直に吊り持しているような外観を呈している。特に、図1に示す上半球体4および下半球体2、そして図5に示す一側体20および他側体21がそれぞれ無色透明である場合は、金色で統一されたストラップ11と上記の模様3aだけが特に目立つので、その外観は顕著に表れる。また、模様3aが漢字である場合、ストラップ30はこの漢字を直に吊り持しているように外見されるので、興趣のあるものになる。
【0050】
さらに、従来のお守りは祈願の言葉である漢字などの文字を札などに書き留めたものを携帯用の袋の中に収めているため、そのお札は外見できない状態になっている。しかし、この装飾玉の文字は、球体全部が無色透明、または球体の一方の側が無色透明である、いずれかの球体の中に収められているので、ガラス製の球体と同時に外見することができる。そして、その文字は上半球体(また、下半球体)の凸面の作用によって表面上に浮かび上がって外見されるので、従来のお札に書き留められている平面的な文字とは異なり、新規な意匠性と不思議な雰囲気の神秘性がある。
【0051】
その他の使用形態としては、図7に示すように、図6に示す連結部32を装飾玉1の天部と底部にも設けて、その装飾玉1を連結金具40によって連結している。上方に位置する装飾玉1は図6に示すように、ストラップ30を設けている。例えば二つの装飾玉の模様を漢字「起」と「福」とした場合、連結した装飾玉1より「起福」の造語が形成される。その他「開運」、「縁結」、「大吉」など所望する文字を組み合わせることができる。さらに、装飾玉の大きさが異なるものを連結させてもよい。その他の使用形態としては装飾玉を数珠のように多数個連結したものを環状に形成してもよい。また、装飾玉の下部にガラス棒を熔着固定し、装飾玉をマドラーの飾り部材として使用することもできる。この場合、装飾玉が摘み部になるので、滑らかな表面は指先に優しい。
このように、装飾玉は単体で使用したり、組み合わせたり、また、別の部材を取り付けていろいろな形態または用途で使用することができる。
【0052】
図1に示す装飾玉1は、例えば図8のように製造される。まず、無色透明のガラスで下半球体2を形成する(S1)。この下半球体2の平坦面2aに転写シートの印刷層3を焼き付けて、印刷層による模様を形成する(S2)。この下半球体2を高温状態にして、この下半球体2の平坦面2aおよび上記模様の上面に溶解状態の無色透明のガラスを少量ずつ被せて(S3)、この溶解状態のガラスによって上半球体4を形成する(S4)。それにより、上記下半球体と上半球体とからなる球体が得られる。この球体を加熱させながら、球体の形状を補正する(S6)。最後の工程は、球体の形状を補正する必要がない場合は不要である。さらに、前述の連結部32の脚部34を装飾玉1に取り付ける場合、装飾玉が高温状態にあるとき(S6またはS7)、脚部34を挿入するための竪穴31を針で形成し、竪穴の形状が安定した後、脚部34をこの竪穴31に挿入するとともに接着剤で固定する。
【0053】
上記の製法において、転写シートを平坦面に焼き付け固定する(S2)時、図2に示す原形の転写シートを水に浸けて水溶性バインダー7を溶解させ、そして転写紙8を除去させているので、転写シート5は、水分を含んでいる状態にあるが、貼り付ける対象が平坦面なので、この水分は簡単に除去することができる。また、平坦面になじみ易いので、下半球体の平坦面の中心にぴんと張ることが簡単にできる。転写シートが張り付けられた下半球体はその後、完全に乾燥させてからガスバーナーなどで加熱して水溶性バインダーおよびカバーコートを燃焼させるとともに、その下半球体の平坦面に印刷層による模様を固定させている。したがって、下半球体2の平坦面2aに焼き付けされた模様3aはカバーコート6に印刷された形状のまま、美しく転写される。なお、焼き付けはガスバーナー以外の方法であってもよい。
【0054】
このように下半球体2の平坦面2aに設けられた模様3aは平坦面2aに強力に密着し、かつ固定しているので、擦っても一切、動かない。したがって、平坦面に溶解状態のガラスを被せながら上半球体を形成しても、模様は一切、ずれない。また、模様3aは下半球体2と上半球体4との間にサンドウィッチ状態で挟まれているが、上半球体4は溶解状態のガラスによって形成しているので、下半球体2との間に空隙は一切ない。つまり下半球体と上半球体は一塊の球体に形成される。したがって、模様は一塊の球体のなかに閉じ込められているような外観を呈する。
【0055】
図5に示す装飾玉1の製造は、外側体22を形状維持できる程度に加熱して高温にし、この外側体22の平坦面22aの上面に金属箔24を乗せた後、金属箔24および外側体の平坦面22aの上面に溶解状態の無色透明のガラスを少量ずつ被せて内側体23を形成するとともに、一側体20を形成する。熱が取れた後、内側体23の平坦面、つまり一側体20の平坦面20aに転写シートの印刷層3を前述の下半球体2の平坦面2aに転写シートの印刷層3を焼き付け固定するのと同じように焼き付けて、その模様を固定している。そして、一側体20の平坦面20aおよび印刷層3による模様3aの上に他側体21を前述の上半球体と同じ要領で形成している。
したがって、装飾玉の中間には金属箔や印刷層が設けられているが、各ガラス体との間に隙間なく密着しているので、前記の製造法と同じように、美しい装飾玉を形成することができる。さらに印刷層3は内側体23のガラス層を介して金属箔24の上に設けているので、転写シートによって形成される模様3aは、転写時に金属箔24を損傷させることがない。なお、金属箔24と印刷層3の位置を逆にすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1aは本発明の球体形の装飾玉の一実施形態を示す正面図、図1bは同背面図、図1cは同側面図である。
【図2】図2aは図1aの一部を切り欠いた状態の正面拡大図、図2bは同側面図である。
【図3】図3は転写シートの層構造を示す説明図である。
【図4】図4aはその他の実施形態を示す正面図、図4bは同背面図、図4cは同側面図である。
【図5】図5aはその他の実施形態を示す正面中央縦断面図、または正面中央横断面図である。
【図6】図6は装飾玉の使用形態を示す正面図である。
【図7】図7はその他の使用形態を示す正面図である。
【図8】図8は装飾玉の製造方法を示す概略工程図である。
【符号の説明】
【0057】
1 装飾玉
2 下半球体
2a 平坦面
2b 凸面
3 印刷層
3a 模様
4 上半球体
4b 凸面
5 転写シート
6 カバーコート
7 水溶性バインダー
20 一側体
20a 平坦面
21 他側体
21a 平坦面
22 外側体
22a 平坦面
23 内側体
24 金属箔
30 ストラップ
32 連結部材
31 竪穴
34 脚部
33 頭部
35 ストラップ本体
36 連結金具
40 連結金具
A 仮想半球体
A2 平坦面
B 仮想半球体
C 球体の中心
R1 立ち上がり部
R2 立ち上がり部を除く凸面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球体の一方を形成しているガラス製の一側体と、その一側体のほぼ平坦面に転写シートから焼き付け固定した印刷層と、その平坦面および印刷層の上面に設けた前記球体の他方を形成するガラス製の透明の他側体とからなり、前記印刷層が前記一側体と他側体とからなる球体内に密着状態で内蔵されている装飾玉。
【請求項2】
前記一側体が、透明である請求項1記載の装飾玉。
【請求項3】
前記一側体が、球体の中心から外れた位置を切断した状態の一方の側によって形成され、前記他側体が、その他方の側によって形成されている請求項1記載の装飾玉。
【請求項4】
前記一側体および他側体がほぼ半球体であり、前記印刷層が前記球体のほぼ中心に密着状態で内蔵されている請求項1記載の装飾玉。
【請求項5】
前記一側体または他側体の中に前記印刷層とほぼ平行状態で金属箔を設けている請求項2記載の装飾玉。
【請求項6】
前記他側体が前記一側体のほぼ平坦面および前記印刷層の上に溶解状態のガラスを設け、成形・固化したものである請求項1記載の装飾玉。
【請求項7】
前記一側体が、色ガラスである請求項1記載の装飾玉。
【請求項8】
前記印刷層の模様が、文字、紋などの記号である請求項1記載の装飾玉。
【請求項9】
請求項1または5記載の装飾玉と、その装飾玉の天部に設けられた連結部材と、この連結部材に連結された吊り紐とからなるストラップ。
【請求項10】
前記吊り紐が前記装飾玉の印刷層と同系色である請求項9記載のストラップ。
【請求項11】
球体の一方を形成しているガラス製の一側体を成形し、その一側体の平坦面に転写シートによって印刷層を焼き付け固定し、加熱して高温状態にある一側体の平坦面側に透明のガラスを溶解状態で設けて前記球体の他方を形成している他側体を形成する装飾玉の製造法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−268594(P2009−268594A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−119897(P2008−119897)
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【出願人】(591249471)
【Fターム(参考)】