装飾経編地およびその製造方法
【課題】 簡素な工程で製造でき、経編地の表面からの見る角度が若干変わるだけでも異なる外観を呈することができる装飾性に優れた装飾経編地およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】 編地の経方向に沿って装飾帯部Dが配設された装飾経編地であって、
この装飾帯部Dは、鎖編糸2により鎖編組織W・W…が経方向に沿って並列してそれぞれ編成され、これら各鎖編組織Wは、各針床列に対応して装飾経編地の表側と裏側に配設される一対の表側鎖編みWAおよび裏側鎖編みWBの二層構造から成る一方、
装飾扁平糸1の折り返し部が両端の鎖編組織Wに編絡して前記鎖編組織W・Wの間に亙り緯方向にジグザグに折り返された状態で挿入されて編み込まれて構成されており、
この装飾帯部Dを、前記装飾扁平糸1の扁平面11・11…の配列面側が、装飾経編地全体の表裏面に露出する向きになるように配設する。
【解決手段】 編地の経方向に沿って装飾帯部Dが配設された装飾経編地であって、
この装飾帯部Dは、鎖編糸2により鎖編組織W・W…が経方向に沿って並列してそれぞれ編成され、これら各鎖編組織Wは、各針床列に対応して装飾経編地の表側と裏側に配設される一対の表側鎖編みWAおよび裏側鎖編みWBの二層構造から成る一方、
装飾扁平糸1の折り返し部が両端の鎖編組織Wに編絡して前記鎖編組織W・Wの間に亙り緯方向にジグザグに折り返された状態で挿入されて編み込まれて構成されており、
この装飾帯部Dを、前記装飾扁平糸1の扁平面11・11…の配列面側が、装飾経編地全体の表裏面に露出する向きになるように配設する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装飾性繊維製品の改良、更に詳しくは、簡素な工程で製造でき、経編地の表面からの見る角度が若干変わるだけでも異なる外観を呈することができる装飾性に優れた装飾経編地およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、被服やカーテンなどの布地に装飾性を付与するために、装飾用のテープ(細幅の編織物など)が用いられており、基礎となる生地に止着したり、それ単独で用いられている。
【0003】
従来、かかる装飾用のテープの構成として、生地の組織の中にラメ糸等の装飾糸を挿入したものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、かかる装飾生地は、装飾糸を生地の表面に露出させているが、この装飾性は装飾糸自体の色彩や光沢などの外観に起因しているに過ぎず、表現の独創性がなかった。
【0005】
また、生地の表面と裏面とで模様や色彩を違えることも可能ではあるが、それぞれの面においては、単一の色彩や模様になって外観が単調になってしまい変化に乏しく、装飾性の面白みに欠けるという不満があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−54309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の装飾性繊維製品に上記のような問題があったことに鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、簡素な工程で製造でき、経編地の表面からの見る角度が若干変わるだけでも異なる外観を呈することができる装飾性に優れた装飾経編地およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者が上記技術的課題を解決するために採用した手段を、添付図面を参照して説明すれば、次のとおりである。
【0009】
即ち、本発明は、編地の経方向に沿って装飾帯部Dが配設された装飾経編地であって、
この装飾帯部Dは、鎖編糸2により鎖編組織W・W…が経方向に沿って並列してそれぞれ編成され、これら各鎖編組織Wは、各針床列に対応して装飾経編地の表側と裏側に配設される一対の表側鎖編みWAおよび裏側鎖編みWBの二層構造から成る一方、
装飾扁平糸1の折り返し部が両端の鎖編組織Wに編絡して前記鎖編組織W・Wの間に亙り緯方向にジグザグに折り返された状態で挿入されて編み込まれて構成されており、
前記装飾扁平糸1は、扁平面11表面に装飾部が形成された長手の扁平部材であって、この装飾扁平糸1は、これら鎖編みWA・WB間において所定角度に揃えて一様に傾斜した並列状態に挟持されて一体に編成保持されており、
この装飾帯部Dは、前記装飾扁平糸1の扁平面11・11…の配列面側が、装飾経編地全体の表裏面に露出する向きになるように配設されており、
この装飾扁平糸1の扁平面11が装飾経編地表面となす角度の視角によって、並列した扁平面11の可視面積が増減することにより、異なる外観を呈するようにするという技術的手段を採用したことによって、装飾経編地を完成させた。
【0010】
また、本発明は、編地の経方向に沿って装飾帯部Dが配設された装飾経編地であって、
この装飾帯部Dは、鎖編糸2により鎖編組織W・W…が経方向に沿って並列してそれぞれ編成され、これら各鎖編組織Wは、各針床列に対応して装飾経編地の表側と裏側に配設される一対の表側鎖編みWAおよび裏側鎖編みWBの二層構造から成る一方、
装飾扁平糸1の各折り返し部が両端の鎖編組織Wに編絡して前記鎖編組織W・Wの間に亙り緯方向にジグザグに折り返された状態で挿入されて編み込まれて構成されており、
前記装飾扁平糸1は、扁平面11表面に装飾部が形成された長手の扁平部材であって、単数または複数の装飾扁平糸1を具備して成り、
当該装飾扁平糸1は、これら鎖編みWA・WB間において所定角度で交互に傾斜したハの字型の並列状態で挟持されて一体に編成保持されており、
この装飾帯部Dは、前記装飾扁平糸1の扁平面11・11…の配列面側を、装飾経編地全体の表裏面に露出する向きになるように配設されており、
これら各装飾扁平糸1の各扁平面11・11…の配列角度を色毎にそれぞれ揃えることによって、装飾経編地表面となす各角度の視角によってそれぞれ異なる色合いを呈するようにするという技術的手段を採用したことによって、装飾経編地を完成させた。
【0011】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、複数の装飾扁平糸1を、少なくとも互いに異なる色の装飾扁平糸1A・1B…を具備して成るようにするという技術的手段を採用することができる。
【0012】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、装飾扁平糸1を、少なくとも3針以上の振りの間隔で、鎖編組織W・Wに亙り緯方向に挿入するという技術的手段を採用することができる。
【0013】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、装飾扁平糸1の扁平面11の傾斜角度を、装飾経編地表面に対して30〜60度で鎖編みWA・WB間に挟持するという技術的手段を採用することができる。
【0014】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、装飾扁平糸1を、表面にラメ加工されたラメ糸にするという技術的手段を採用することができる。
【0015】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、装飾扁平糸1を、表面に金属蒸着された反射スリット糸にするという技術的手段を採用することができる。
【0016】
また、本発明は、編地の経方向に沿って装飾帯部Dを配設した装飾経編地を製造するにあたり、
この装飾帯部Dは、鎖編糸2により鎖編組織W・W…を経方向に沿って並列させてそれぞれ編成して、これら各鎖編組織Wは、各針床列に対応して装飾経編地の表側と裏側に配設される一対の表側鎖編みWAおよび裏側鎖編みWBの二層構造から構成する一方、
装飾扁平糸1の折り返し部を両端の鎖編組織Wに編絡して前記鎖編組織W・Wの間に亙り緯方向にジグザグに折り返した状態で挿入して編み込んで構成して、
前記装飾扁平糸1は、扁平面11表面に装飾部が形成された長手の扁平部材であって、この装飾扁平糸1を、これら鎖編みWA・WB間において所定角度に揃えて一様に傾斜した並列状態で挟持して一体に編成保持して、
この装飾帯部Dを、前記装飾扁平糸1の扁平面11・11…の配列面側を、装飾経編地全体の表裏面に露出する向きになるように配設して、
この装飾扁平糸1の扁平面11が装飾経編地表面となす角度の視角によって、並列した扁平面11の可視面積が増減することにより、異なる外観を呈するようにするという技術的手段を採用したことによって、装飾経編地の製造方法を完成させた。
【0017】
また、本発明は、編地の経方向に沿って装飾帯部Dを配設した装飾経編地を製造するにあたり、
この装飾帯部Dは、鎖編糸2により鎖編組織W・W…を経方向に沿って並列させてそれぞれ編成して、これら各鎖編組織Wは、各針床列に対応して装飾経編地の表側と裏側に配設される一対の表側鎖編みWAおよび裏側鎖編みWBの二層構造から構成する一方、
装飾扁平糸1の各折り返し部を両端の鎖編組織Wに編絡して前記鎖編組織W・Wの間に亙り緯方向にジグザグに折り返した状態で挿入して編み込んで構成して、
前記装飾扁平糸1は、扁平面11表面に装飾部が形成された長手の扁平部材であって、単数または複数の装飾扁平糸1を具備して成り、
当該装飾扁平糸1を、これら鎖編みWA・WB間において所定角度で交互に傾斜したハの字型の並列状態で挟持して一体に編成保持して、
この装飾帯部Dを、前記装飾扁平糸1の扁平面11・11…の配列面側を、装飾経編地全体の表裏面に露出する向きになるように配設して、
これら各装飾扁平糸1の各扁平面11・11…の配列角度を色毎にそれぞれ揃えることによって、装飾経編地表面となす各角度の視角によってそれぞれ異なる色合いを呈するようにするという技術的手段を採用したことによって、装飾経編地の製造方法を完成させた。
【0018】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、複数の装飾扁平糸1を、少なくとも互いに異なる色の装飾扁平糸1A・1B…を具備して成るようにするという技術的手段を採用することができる。
【0019】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、少なくとも2列の針床列を備えたダブルラッセル編み機を用いて編成するという技術的手段を採用することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明にあっては、装飾帯部を、鎖編糸により鎖編組織が経方向に沿って並列してそれぞれ編成して、これら各鎖編組織は、各針床列に対応して装飾経編地の表側と裏側に配設される一対の表側鎖編みおよび裏側鎖編みの二層構造から構成する一方、
装飾扁平糸の折り返し部を両端の鎖編組織に編絡して前記鎖編組織の間に亙り緯方向にジグザグに折り返した状態で挿入して編み込んで構成して、前記装飾扁平糸は、扁平面表面に装飾部が形成された長手の扁平部材であって、この装飾扁平糸を、これら鎖編み間において所定角度に揃えて一様に傾斜した並列状態に挟持して一体に編成保持して、この装飾帯部を、前記装飾扁平糸の扁平面の配列面側が、装飾経編地全体の表裏面に露出する向きになるように配設して、この装飾扁平糸の扁平面が装飾経編地表面となす角度の視角によって、並列した扁平面の可視面積が増減することにより、異なる外観を呈するようにすることができる。
【0021】
また、装飾扁平糸の各折り返し部を両端の鎖編組織に編絡して前記鎖編組織の間に亙り緯方向にジグザグに折り返した状態で挿入されて編み込んで構成して、前記装飾扁平糸は、扁平面表面に装飾部が形成された長手の扁平部材であって、単数または複数の装飾扁平糸を具備して成り、
当該装飾扁平糸を、これら鎖編み間において所定角度で交互に傾斜したハの字型の並列状態で挟持して一体に編成保持して、この装飾帯部を、前記装飾扁平糸の扁平面の配列面側が、装飾経編地全体の表裏面に露出する向きになるように配設して、これら各装飾扁平糸の各扁平面の配列角度を色毎にそれぞれ揃えることによって、装飾経編地表面となす各角度の視角によってそれぞれ異なる色合いを呈するようにすることもできる。
【0022】
したがって、本発明の装飾経編地およびその製造方法によれば、簡素な工程で製造することができ、立体感に富み、経編地の表面からの見る角度が若干変わるだけでも異なる外観を呈することができることから、産業上の利用価値は頗る大きいと云える。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態の装飾経編地の構造を表わす概略図である。
【図2】本発明の第1実施形態の装飾経編地の装飾帯部の製造工程を表わす概略側面図である。
【図3】本発明の第1実施形態の装飾経編地の装飾帯部の製造工程を表わす概略側面図である。
【図4】本発明の第1実施形態の装飾経編地の装飾帯部の製造工程を表わす概略側面図である。
【図5】本発明の第1実施形態の装飾経編地の製造工程を表わす部分斜視図である。
【図6】本発明の第1実施形態の装飾経編地を斜めから見た状態を表わす概略図である。
【図7】本発明の第1実施形態の装飾経編地を斜めから見た状態を表わす概略図である。
【図8】本発明の第1実施形態の装飾経編地の編み組織図である。
【図9】本発明の第2実施形態の装飾経編地の構造を表わす概略図である。
【図10】本発明の第2実施形態の装飾経編地の装飾帯部の製造工程を表わす概略側面図である。
【図11】本発明の第2実施形態の装飾経編地の装飾帯部の製造工程を表わす概略側面図である。
【図12】本発明の第2実施形態の装飾経編地の装飾帯部の製造工程を表わす概略側面図である。
【図13】本発明の第2実施形態の装飾経編地の製造工程を表わす部分斜視図である。
【図14】本発明の第2実施形態の装飾経編地の製造工程を表わす部分斜視図である。
【図15】本発明の第2実施形態の装飾経編地を斜めから見た状態を表わす概略図である。
【図16】本発明の第2実施形態の装飾経編地を斜めから見た状態を表わす概略図である。
【図17】本発明の第3実施形態の装飾経編地の装飾帯部の製造工程を表わす概略側面図である。
【図18】本発明の第3実施形態の装飾経編地の装飾帯部の製造工程を表わす概略側面図である。
【図19】本発明の第3実施形態の装飾経編地の装飾帯部の製造工程を表わす概略側面図である。
【図20】本発明の第3実施形態の装飾経編地の製造工程を表わす部分斜視図である。
【図21】本発明の製造実施例1の編み組織図である。
【図22】本発明の製造実施例2の編み組織図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明を実施するための形態を、具体的に図示した図面に基づいて、更に詳細に説明すると、次のとおりである。
【0025】
『第1実施形態』
本発明の第1実施形態を図1から図8に基づいて説明する。図中、符号1で指示するものは装飾扁平糸であり、この装飾扁平糸1は、扁平面11表面に装飾部が形成された長手の扁平部材である。本実施形態では、この装飾扁平糸1として、ポリエステルフィルムの表面に金属光沢加工されたラメ糸を採用することができる。
【0026】
また、符号2で指示するものは鎖編糸であり、この鎖編糸2は、ポリエステル等の合成繊維や天然繊維などを採用することができる。
【0027】
しかして、本実施形態においては、編地の経方向に沿って装飾帯部Dを配設した装飾経編地であって、その構成および製造手順を以下に説明する。
【0028】
本実施形態では、少なくとも2列の針床列を備えたダブルラッセル編み機を用いて編成する。
【0029】
まず、装飾帯部Dは、鎖編糸2により鎖編組織W・W…を経方向に沿って並列させてそれぞれ編成して、これら各鎖編組織Wは、各針床列に対応して装飾経編地の表側と裏側に配設される一対の表側鎖編みWAおよび裏側鎖編みWBの二層構造から構成する。
【0030】
具体的には、図に示すように、ダブルラッセル編み機の一方の針床列Aにおいては、鎖編糸2により表側鎖編みWA・WA…を編成する一方、他方の針床列Bにおいて、鎖編糸2により裏側鎖編みWB・WB…を編成する。また、これらの鎖編糸2はそれぞれ筬L2、L5から供給される。
【0031】
そして、これら表側鎖編みWAと裏側鎖編みWBとの間を通りながら装飾扁平糸1の各折り返し部を両端の鎖編組織Wに編絡して前記鎖編組織W・Wの間に亙り緯方向にジグザグに折り返した状態で挿入して編み込んで装飾帯部Dを構成する。
【0032】
この際、本実施形態では、装飾扁平糸1を、少なくとも3針以上の振りの間隔で、鎖編組織W・Wに亙り緯方向に挿入することができる。具体的には、装飾扁平糸1を3針の間隔で挿入し、中央の1針の鎖編糸を抜いて1ウェール分の編目列を空けておくことにより、装飾扁平糸1を1ウェール分完全に露出させることができる。
【0033】
この場合、装飾扁平糸1が両端の鎖編内で折返しながら隣の中央の露出部へと挿入されるので、折り返しによる捻じれが装飾扁平糸1の露出部に及ぶ懸念があるため、より好ましくは装飾扁平糸1の挿入間隔を5針以上として、両端の鎖編を2針以上で装飾扁平糸1を挟持させることにより捻じれを防ぐことができる。
【0034】
また、両端の鎖編み内に挿入されている装飾扁平糸1が編糸の間から見え隠れすると、扁平面11の露出部の際立ちが劣るので、両端の鎖編内への挿入部分の最外層に2針以上の挿入糸を設けることによって、前記装飾扁平糸1が鎖編みの間から見え隠れするのを隠蔽することができて好ましい。
【0035】
そして、前記装飾扁平糸1は、扁平面11表面に装飾部が形成された長手の扁平部材であって、本実施形態では、金色や銀色などのラメ糸を採用する。なお、この装飾扁平糸1は筬L4から供給される。
【0036】
次いで、この装飾扁平糸1を、これら鎖編みWA・WB間において所定角度に揃えて一様に傾斜した並列状態で挟持して一体に編成保持する(図2〜図4に示す構造側面図参照)。
【0037】
この際、装飾扁平糸1は、鎖編糸2によって鎖編組織が形成されていくタイミングに挿入されるため、装飾扁平糸1は自然に鎖編糸2にかかる編み込みテンションによって傾斜した状態で挟持することができる(図5参照)。
【0038】
本実施形態では、装飾扁平糸1の扁平面11の傾斜角度を、装飾経編地表面に対して30〜60度にして鎖編みWA・WB間に挟持することができ、更に好ましくは45度にすることによって、見る方向を変えた時の可視面積の違いによる外観の違いをより際立たせることができる。
【0039】
なお、装飾扁平糸1の扁平面11の装飾経編地表面に対する傾斜角度(α)は、実測することもできるが、便宜上、次式で求めることができる。
〔数1〕
α=tan−1(2T/L)
ただし、α:装飾扁平糸1の扁平面11の傾斜角度(°)
L:編目列WAまたはWBの1つの編目長さ(mm)
T:編目列WAとWBの間隙(mm)
【0040】
然る後、この装飾帯部Dを、前記装飾扁平糸1の扁平面11・11…の配列面側を、装飾経編地全体の表裏面に露出する向きになるように配設する。本実施形態では、ダブルラッセル編み機の何れか一方の針床列にて基布部Fを連続的に一体編成することができる。
【0041】
こうすることにより、例えば、編地の斜め上から見た場合と斜め下から見た場合とでは、この装飾扁平糸1の扁平面11が装飾経編地表面となす角度の視角によって、並列した扁平面11の可視面積が増減することにより、斜め上から見た場合には扁平面11が全部見える一方(図6参照)、斜め下から見た場合には、扁平面11が見えなくなって装飾扁平糸1・1…の隙間から経編地の反対側を透過して見ることができ(図7参照)、異なる外観を呈する装飾経編地を完成することができる。なお、本実施形態における装飾経編地の編み組織図は図8のとおりである。
【0042】
『第2実施形態』
本発明の第2実施形態を図9から図16に基づいて説明する。本実施形態では、複数の装飾扁平糸1(1A・1B…)をハの字に配列して成る点に最大の特徴がある。
【0043】
しかして、本実施形態においては、第1実施形態と同様に、編地の経方向に沿って装飾帯部Dを配設した装飾経編地であって、その構成および製造手順を以下に説明する。
【0044】
本実施形態では、少なくとも2列の針床列を備えたダブルラッセル編み機を用いて編成する。
【0045】
まず、本実施形態の装飾帯部Dは、鎖編糸2により鎖編組織W・W…を経方向に沿って並列させてそれぞれ編成して、これら各鎖編組織Wは、各針床列に対応して装飾経編地の表側と裏側に配設される一対の表側鎖編みWAおよび裏側鎖編みWBの二層構造から構成する。
【0046】
具体的には、図に示すように、ダブルラッセル編み機の一方の針床列Aにおいては、鎖編糸2により表側鎖編みWA・WA…を編成する一方、他方の針床列Bにおいて、鎖編糸2により裏側鎖編みWB・WB…を編成する。また、これらの鎖編糸2はそれぞれ筬L2、L5から供給される。
【0047】
そして、これら表側鎖編みWAと裏側鎖編みWBとの間を通りながら装飾扁平糸1の各折り返し部を両端の鎖編組織Wに編絡して前記鎖編組織W・Wの間に亙り緯方向にジグザグに折り返した状態で挿入して編み込んで装飾帯部Dを構成する。
【0048】
本実施形態では、複数の装飾扁平糸1を(例えば2本)用いて、扁平面11表面に装飾部が形成された長手の扁平部材であって、少なくとも互いに異なる色の装飾扁平糸1A・1Bを具備して成り、本実施形態では、金色と銀色の2種類の色のラメ糸を採用する。なお、これらの装飾扁平糸1A・1Bはそれぞれ筬L3、L4から供給される。
【0049】
次いで、当該装飾扁平糸1を、これら鎖編みWA・WB間において所定角度で交互に傾斜したハの字型の並列状態で挟持して一体に編成保持する(図10〜図12に示す構造側面図参照)。
【0050】
この際、装飾扁平糸1は、鎖編糸2によって鎖編組織が形成されていくタイミングに挿入されるため、装飾扁平糸1は自然に鎖編糸2にかかる編み込みテンションによって傾斜した状態でハの字型に挟持することができる(図13および図14参照)。
【0051】
然る後、第1実施形態と同様に、この装飾帯部Dを、前記装飾扁平糸1の扁平面11・11…の配列面側を、装飾経編地全体の表裏面に露出する向きになるように配設する。本実施形態では、ダブルラッセル編み機の何れか一方の針床列にて基布部Fを連続的に一体編成することができる。
【0052】
こうすることにより、これら各装飾扁平糸1の各扁平面11・11…の配列角度を色毎にそれぞれ揃えることによって、例えば、図15に示すような編地の斜め上から見た場合と、図16に示すような斜め下から見た場合とでは、異なる色の各装飾扁平糸1の各扁平面11・11…の見える面積比率が変わるので、装飾経編地表面となす各角度の視角によってそれぞれ異なる色合いを呈する装飾経編地を完成することができる。
【0053】
『第3実施形態』
本発明の第3実施形態を図17から図20に基づいて説明する。本実施形態では、単数の装飾扁平糸1をハの字に配列して成る点に最大の特徴がある。
【0054】
まず、本実施形態においても、少なくとも2列の針床列を備えたダブルラッセル編み機を用いて編成する。
【0055】
そして、本実施形態の装飾帯部Dは、鎖編糸2により鎖編組織W・W…を経方向に沿って並列させてそれぞれ編成して、これら各鎖編組織Wは、各針床列に対応して装飾経編地の表側と裏側に配設される一対の表側鎖編みWAおよび裏側鎖編みWBの二層構造から構成する。
【0056】
具体的には、図に示すように、ダブルラッセル編み機の一方の針床列Aにおいては、鎖編糸2により表側鎖編みWA・WA…を編成する一方、他方の針床列Bにおいて、鎖編糸2により裏側鎖編みWB・WB…を編成する。また、これらの鎖編糸2はそれぞれ筬L2、L5から供給される。
【0057】
そして、これら表側鎖編みWAと裏側鎖編みWBとの間を通りながら装飾扁平糸1の各折り返し部を両端の鎖編組織Wに編絡して前記鎖編組織W・Wの間に亙り緯方向にジグザグに折り返した状態で挿入して編み込んで装飾帯部Dを構成する。
【0058】
そして、本実施形態は、単数の装飾扁平糸1を用いて、扁平面11表面に装飾部が形成された長手の扁平部材であって、この装飾扁平糸1は筬L4から供給される。
【0059】
次いで、当該装飾扁平糸1を、これら鎖編みWA・WB間において所定角度で交互に傾斜したハの字型の並列状態で挟持して一体に編成保持する(図17〜図19に示す構造側面図参照)。
【0060】
この際、装飾扁平糸1は、鎖編糸2によって鎖編組織が形成されていくタイミングに挿入されるため、装飾扁平糸1は自然に鎖編糸2にかかる編み込みテンションによって傾斜した状態でハの字型に挟持することができる(図20参照)。
【0061】
本実施形態では、装飾扁平糸1として、例えば、装飾扁平糸1自身が見る角度により見え方が異なる偏光フィルムのようなスリット糸を用いることにより、互いに隣り合う装飾扁平糸が異なった色で見え、しかも見る角度によりその色が変化する効果がある。
【0062】
このように、見る角度で色が変化するようなフィルム糸や反射糸などでは隣接するフィルム糸は明確に色が異なりはっきりとした外観の相違が現れる。
【実施例】
【0063】
〔製造実施例1〕
装飾扁平糸1として、金色にメッキされたスリット糸を用い、そのスリット糸が鎖編みWA・WB間において所定角度で一様に傾斜し、並列状態に挟持されて一体に編成保持された装飾経編地を下記条件で製作した。
【0064】
なお、筬L4のスリット糸の5針振りの中央位置が編地幅の2:1の割合位置になるように配置し、前記中央となる1針分には筬L2、L3の鎖編およびL1の扁平糸隠蔽糸、L6の緯挿入糸が掛からないように糸通しを行った。
【0065】
<編成条件>
製作編機 ダブルラッセル機 24ゲージ
編組織 図21の組織図に示す
編幅 1.2cm
糸使い L1 帝人社製 ポリエステル 167 dtex(デシテックス)
L2 帝人社製 ポリエステル 167 dtex
L4 泉工業社製 スリット糸 80 切
L5 帝人社製 ポリエステル 167 dtex
L6 帝人社製 ポリエステル 167 dtex
編成密度 ウェール 29.6ウェール/inch
コース 34.0コース/inch
【0066】
こうして得られた装飾経編地は、装飾扁平糸であるスリット糸の扁平面が編地面に対してほぼ45°の角度差で一様に傾斜した状態で長手方向に連続して露出しており、見る角度によりスリット糸の金色が大きく変化し、意匠性に優れていることを確認した。
【0067】
〔製造実施例2〕
次いで、第二に実施例として装飾扁平糸1として金色にメッキされたスリット糸と銀色にメッキされたスリット糸の2種類を交互に挿入して、スリット糸が鎖編みWA・WB間において所定角度で交互に傾斜して並列状態に挟持されて一体に編成保持された装飾経編地を下記条件で製作した。
【0068】
なお、装飾扁平糸である2種のスリット糸は同一ニードル間の挿入になるように糸通しを行い、鎖編および扁平糸隠蔽糸、緯挿入糸の糸通しは実施例1と同様にした。
【0069】
<編成条件>
製作編機 ダブルラッセル機 24ゲージ
編組織 図22の組織図に示す
編幅 1.2cm
糸使い L1 帝人社製 ポリエステル 167 dtex(デシテックス)
L2 帝人社製 ポリエステル 167 dtex
L3 泉工業社製 スリット糸 80 切
L4 泉工業社製 スリット糸 80 切
L5 帝人社製 ポリエステル 167 dtex
L6 帝人社製 ポリエステル 167 dtex
編成密度 ウェール 29.6ウェール/inch
コース 34.0コース/inch
【0070】
こうして得られた装飾経編地は、装飾扁平糸であるスリット糸の扁平面が編地面に対してほぼ45°の角度差で交互に傾斜した状態で長手方向に連続して露出しており、その露出個所が見る角度により金色、金銀混合色、銀色と多彩に変化し、これまでにない意匠性が発揮された装飾経編地であることを確認した。
【0071】
本発明は、概ね上記のように構成されるが、図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、装飾扁平糸1は、ラメ糸に限らず、織布、不織布、ニット、人工皮革、合成皮革、樹脂等をマイクロスリットしたものや扁平成型品、表面に金属蒸着された反射スリット糸を採用することもでき、また、表面と裏面とでそれぞれ違う色や模様などの装飾部が形成されているものであっても良く、さらには幅替りがあるものであっても良い。
【0072】
また、装飾扁平糸1は、3種類以上の異なる外観のものを使用することもできるし、更にまた、装飾扁平糸1の扁平面11が露出する間隔は、編地の形態が安定している範囲で、3針以上の振りで、鎖編組織W・Wに亙り緯方向に挿入することもできる。
【0073】
更にまた、本実施形態では、編地の長手方向にゴムなどの弾性糸を配設して、この弾性糸の伸縮により装飾扁平糸の傾斜角度を変化させて、装飾部の外観が変化するように構成することができる。この弾性糸は、鎖編組織の内部に長手方向に沿って挿入するものであっても良いし、弾性糸自体で鎖編組織を編成するものであっても良く、これら何れのものも本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0074】
1(1A・1B) 装飾扁平糸
11 扁平面
2 鎖編糸
W 鎖編組織
WA 表側鎖編み
WB 裏側鎖編み
D 装飾帯部
F 基布部
A 針床列
B 針床列
【技術分野】
【0001】
本発明は、装飾性繊維製品の改良、更に詳しくは、簡素な工程で製造でき、経編地の表面からの見る角度が若干変わるだけでも異なる外観を呈することができる装飾性に優れた装飾経編地およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、被服やカーテンなどの布地に装飾性を付与するために、装飾用のテープ(細幅の編織物など)が用いられており、基礎となる生地に止着したり、それ単独で用いられている。
【0003】
従来、かかる装飾用のテープの構成として、生地の組織の中にラメ糸等の装飾糸を挿入したものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、かかる装飾生地は、装飾糸を生地の表面に露出させているが、この装飾性は装飾糸自体の色彩や光沢などの外観に起因しているに過ぎず、表現の独創性がなかった。
【0005】
また、生地の表面と裏面とで模様や色彩を違えることも可能ではあるが、それぞれの面においては、単一の色彩や模様になって外観が単調になってしまい変化に乏しく、装飾性の面白みに欠けるという不満があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−54309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の装飾性繊維製品に上記のような問題があったことに鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、簡素な工程で製造でき、経編地の表面からの見る角度が若干変わるだけでも異なる外観を呈することができる装飾性に優れた装飾経編地およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者が上記技術的課題を解決するために採用した手段を、添付図面を参照して説明すれば、次のとおりである。
【0009】
即ち、本発明は、編地の経方向に沿って装飾帯部Dが配設された装飾経編地であって、
この装飾帯部Dは、鎖編糸2により鎖編組織W・W…が経方向に沿って並列してそれぞれ編成され、これら各鎖編組織Wは、各針床列に対応して装飾経編地の表側と裏側に配設される一対の表側鎖編みWAおよび裏側鎖編みWBの二層構造から成る一方、
装飾扁平糸1の折り返し部が両端の鎖編組織Wに編絡して前記鎖編組織W・Wの間に亙り緯方向にジグザグに折り返された状態で挿入されて編み込まれて構成されており、
前記装飾扁平糸1は、扁平面11表面に装飾部が形成された長手の扁平部材であって、この装飾扁平糸1は、これら鎖編みWA・WB間において所定角度に揃えて一様に傾斜した並列状態に挟持されて一体に編成保持されており、
この装飾帯部Dは、前記装飾扁平糸1の扁平面11・11…の配列面側が、装飾経編地全体の表裏面に露出する向きになるように配設されており、
この装飾扁平糸1の扁平面11が装飾経編地表面となす角度の視角によって、並列した扁平面11の可視面積が増減することにより、異なる外観を呈するようにするという技術的手段を採用したことによって、装飾経編地を完成させた。
【0010】
また、本発明は、編地の経方向に沿って装飾帯部Dが配設された装飾経編地であって、
この装飾帯部Dは、鎖編糸2により鎖編組織W・W…が経方向に沿って並列してそれぞれ編成され、これら各鎖編組織Wは、各針床列に対応して装飾経編地の表側と裏側に配設される一対の表側鎖編みWAおよび裏側鎖編みWBの二層構造から成る一方、
装飾扁平糸1の各折り返し部が両端の鎖編組織Wに編絡して前記鎖編組織W・Wの間に亙り緯方向にジグザグに折り返された状態で挿入されて編み込まれて構成されており、
前記装飾扁平糸1は、扁平面11表面に装飾部が形成された長手の扁平部材であって、単数または複数の装飾扁平糸1を具備して成り、
当該装飾扁平糸1は、これら鎖編みWA・WB間において所定角度で交互に傾斜したハの字型の並列状態で挟持されて一体に編成保持されており、
この装飾帯部Dは、前記装飾扁平糸1の扁平面11・11…の配列面側を、装飾経編地全体の表裏面に露出する向きになるように配設されており、
これら各装飾扁平糸1の各扁平面11・11…の配列角度を色毎にそれぞれ揃えることによって、装飾経編地表面となす各角度の視角によってそれぞれ異なる色合いを呈するようにするという技術的手段を採用したことによって、装飾経編地を完成させた。
【0011】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、複数の装飾扁平糸1を、少なくとも互いに異なる色の装飾扁平糸1A・1B…を具備して成るようにするという技術的手段を採用することができる。
【0012】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、装飾扁平糸1を、少なくとも3針以上の振りの間隔で、鎖編組織W・Wに亙り緯方向に挿入するという技術的手段を採用することができる。
【0013】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、装飾扁平糸1の扁平面11の傾斜角度を、装飾経編地表面に対して30〜60度で鎖編みWA・WB間に挟持するという技術的手段を採用することができる。
【0014】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、装飾扁平糸1を、表面にラメ加工されたラメ糸にするという技術的手段を採用することができる。
【0015】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、装飾扁平糸1を、表面に金属蒸着された反射スリット糸にするという技術的手段を採用することができる。
【0016】
また、本発明は、編地の経方向に沿って装飾帯部Dを配設した装飾経編地を製造するにあたり、
この装飾帯部Dは、鎖編糸2により鎖編組織W・W…を経方向に沿って並列させてそれぞれ編成して、これら各鎖編組織Wは、各針床列に対応して装飾経編地の表側と裏側に配設される一対の表側鎖編みWAおよび裏側鎖編みWBの二層構造から構成する一方、
装飾扁平糸1の折り返し部を両端の鎖編組織Wに編絡して前記鎖編組織W・Wの間に亙り緯方向にジグザグに折り返した状態で挿入して編み込んで構成して、
前記装飾扁平糸1は、扁平面11表面に装飾部が形成された長手の扁平部材であって、この装飾扁平糸1を、これら鎖編みWA・WB間において所定角度に揃えて一様に傾斜した並列状態で挟持して一体に編成保持して、
この装飾帯部Dを、前記装飾扁平糸1の扁平面11・11…の配列面側を、装飾経編地全体の表裏面に露出する向きになるように配設して、
この装飾扁平糸1の扁平面11が装飾経編地表面となす角度の視角によって、並列した扁平面11の可視面積が増減することにより、異なる外観を呈するようにするという技術的手段を採用したことによって、装飾経編地の製造方法を完成させた。
【0017】
また、本発明は、編地の経方向に沿って装飾帯部Dを配設した装飾経編地を製造するにあたり、
この装飾帯部Dは、鎖編糸2により鎖編組織W・W…を経方向に沿って並列させてそれぞれ編成して、これら各鎖編組織Wは、各針床列に対応して装飾経編地の表側と裏側に配設される一対の表側鎖編みWAおよび裏側鎖編みWBの二層構造から構成する一方、
装飾扁平糸1の各折り返し部を両端の鎖編組織Wに編絡して前記鎖編組織W・Wの間に亙り緯方向にジグザグに折り返した状態で挿入して編み込んで構成して、
前記装飾扁平糸1は、扁平面11表面に装飾部が形成された長手の扁平部材であって、単数または複数の装飾扁平糸1を具備して成り、
当該装飾扁平糸1を、これら鎖編みWA・WB間において所定角度で交互に傾斜したハの字型の並列状態で挟持して一体に編成保持して、
この装飾帯部Dを、前記装飾扁平糸1の扁平面11・11…の配列面側を、装飾経編地全体の表裏面に露出する向きになるように配設して、
これら各装飾扁平糸1の各扁平面11・11…の配列角度を色毎にそれぞれ揃えることによって、装飾経編地表面となす各角度の視角によってそれぞれ異なる色合いを呈するようにするという技術的手段を採用したことによって、装飾経編地の製造方法を完成させた。
【0018】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、複数の装飾扁平糸1を、少なくとも互いに異なる色の装飾扁平糸1A・1B…を具備して成るようにするという技術的手段を採用することができる。
【0019】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、少なくとも2列の針床列を備えたダブルラッセル編み機を用いて編成するという技術的手段を採用することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明にあっては、装飾帯部を、鎖編糸により鎖編組織が経方向に沿って並列してそれぞれ編成して、これら各鎖編組織は、各針床列に対応して装飾経編地の表側と裏側に配設される一対の表側鎖編みおよび裏側鎖編みの二層構造から構成する一方、
装飾扁平糸の折り返し部を両端の鎖編組織に編絡して前記鎖編組織の間に亙り緯方向にジグザグに折り返した状態で挿入して編み込んで構成して、前記装飾扁平糸は、扁平面表面に装飾部が形成された長手の扁平部材であって、この装飾扁平糸を、これら鎖編み間において所定角度に揃えて一様に傾斜した並列状態に挟持して一体に編成保持して、この装飾帯部を、前記装飾扁平糸の扁平面の配列面側が、装飾経編地全体の表裏面に露出する向きになるように配設して、この装飾扁平糸の扁平面が装飾経編地表面となす角度の視角によって、並列した扁平面の可視面積が増減することにより、異なる外観を呈するようにすることができる。
【0021】
また、装飾扁平糸の各折り返し部を両端の鎖編組織に編絡して前記鎖編組織の間に亙り緯方向にジグザグに折り返した状態で挿入されて編み込んで構成して、前記装飾扁平糸は、扁平面表面に装飾部が形成された長手の扁平部材であって、単数または複数の装飾扁平糸を具備して成り、
当該装飾扁平糸を、これら鎖編み間において所定角度で交互に傾斜したハの字型の並列状態で挟持して一体に編成保持して、この装飾帯部を、前記装飾扁平糸の扁平面の配列面側が、装飾経編地全体の表裏面に露出する向きになるように配設して、これら各装飾扁平糸の各扁平面の配列角度を色毎にそれぞれ揃えることによって、装飾経編地表面となす各角度の視角によってそれぞれ異なる色合いを呈するようにすることもできる。
【0022】
したがって、本発明の装飾経編地およびその製造方法によれば、簡素な工程で製造することができ、立体感に富み、経編地の表面からの見る角度が若干変わるだけでも異なる外観を呈することができることから、産業上の利用価値は頗る大きいと云える。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態の装飾経編地の構造を表わす概略図である。
【図2】本発明の第1実施形態の装飾経編地の装飾帯部の製造工程を表わす概略側面図である。
【図3】本発明の第1実施形態の装飾経編地の装飾帯部の製造工程を表わす概略側面図である。
【図4】本発明の第1実施形態の装飾経編地の装飾帯部の製造工程を表わす概略側面図である。
【図5】本発明の第1実施形態の装飾経編地の製造工程を表わす部分斜視図である。
【図6】本発明の第1実施形態の装飾経編地を斜めから見た状態を表わす概略図である。
【図7】本発明の第1実施形態の装飾経編地を斜めから見た状態を表わす概略図である。
【図8】本発明の第1実施形態の装飾経編地の編み組織図である。
【図9】本発明の第2実施形態の装飾経編地の構造を表わす概略図である。
【図10】本発明の第2実施形態の装飾経編地の装飾帯部の製造工程を表わす概略側面図である。
【図11】本発明の第2実施形態の装飾経編地の装飾帯部の製造工程を表わす概略側面図である。
【図12】本発明の第2実施形態の装飾経編地の装飾帯部の製造工程を表わす概略側面図である。
【図13】本発明の第2実施形態の装飾経編地の製造工程を表わす部分斜視図である。
【図14】本発明の第2実施形態の装飾経編地の製造工程を表わす部分斜視図である。
【図15】本発明の第2実施形態の装飾経編地を斜めから見た状態を表わす概略図である。
【図16】本発明の第2実施形態の装飾経編地を斜めから見た状態を表わす概略図である。
【図17】本発明の第3実施形態の装飾経編地の装飾帯部の製造工程を表わす概略側面図である。
【図18】本発明の第3実施形態の装飾経編地の装飾帯部の製造工程を表わす概略側面図である。
【図19】本発明の第3実施形態の装飾経編地の装飾帯部の製造工程を表わす概略側面図である。
【図20】本発明の第3実施形態の装飾経編地の製造工程を表わす部分斜視図である。
【図21】本発明の製造実施例1の編み組織図である。
【図22】本発明の製造実施例2の編み組織図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明を実施するための形態を、具体的に図示した図面に基づいて、更に詳細に説明すると、次のとおりである。
【0025】
『第1実施形態』
本発明の第1実施形態を図1から図8に基づいて説明する。図中、符号1で指示するものは装飾扁平糸であり、この装飾扁平糸1は、扁平面11表面に装飾部が形成された長手の扁平部材である。本実施形態では、この装飾扁平糸1として、ポリエステルフィルムの表面に金属光沢加工されたラメ糸を採用することができる。
【0026】
また、符号2で指示するものは鎖編糸であり、この鎖編糸2は、ポリエステル等の合成繊維や天然繊維などを採用することができる。
【0027】
しかして、本実施形態においては、編地の経方向に沿って装飾帯部Dを配設した装飾経編地であって、その構成および製造手順を以下に説明する。
【0028】
本実施形態では、少なくとも2列の針床列を備えたダブルラッセル編み機を用いて編成する。
【0029】
まず、装飾帯部Dは、鎖編糸2により鎖編組織W・W…を経方向に沿って並列させてそれぞれ編成して、これら各鎖編組織Wは、各針床列に対応して装飾経編地の表側と裏側に配設される一対の表側鎖編みWAおよび裏側鎖編みWBの二層構造から構成する。
【0030】
具体的には、図に示すように、ダブルラッセル編み機の一方の針床列Aにおいては、鎖編糸2により表側鎖編みWA・WA…を編成する一方、他方の針床列Bにおいて、鎖編糸2により裏側鎖編みWB・WB…を編成する。また、これらの鎖編糸2はそれぞれ筬L2、L5から供給される。
【0031】
そして、これら表側鎖編みWAと裏側鎖編みWBとの間を通りながら装飾扁平糸1の各折り返し部を両端の鎖編組織Wに編絡して前記鎖編組織W・Wの間に亙り緯方向にジグザグに折り返した状態で挿入して編み込んで装飾帯部Dを構成する。
【0032】
この際、本実施形態では、装飾扁平糸1を、少なくとも3針以上の振りの間隔で、鎖編組織W・Wに亙り緯方向に挿入することができる。具体的には、装飾扁平糸1を3針の間隔で挿入し、中央の1針の鎖編糸を抜いて1ウェール分の編目列を空けておくことにより、装飾扁平糸1を1ウェール分完全に露出させることができる。
【0033】
この場合、装飾扁平糸1が両端の鎖編内で折返しながら隣の中央の露出部へと挿入されるので、折り返しによる捻じれが装飾扁平糸1の露出部に及ぶ懸念があるため、より好ましくは装飾扁平糸1の挿入間隔を5針以上として、両端の鎖編を2針以上で装飾扁平糸1を挟持させることにより捻じれを防ぐことができる。
【0034】
また、両端の鎖編み内に挿入されている装飾扁平糸1が編糸の間から見え隠れすると、扁平面11の露出部の際立ちが劣るので、両端の鎖編内への挿入部分の最外層に2針以上の挿入糸を設けることによって、前記装飾扁平糸1が鎖編みの間から見え隠れするのを隠蔽することができて好ましい。
【0035】
そして、前記装飾扁平糸1は、扁平面11表面に装飾部が形成された長手の扁平部材であって、本実施形態では、金色や銀色などのラメ糸を採用する。なお、この装飾扁平糸1は筬L4から供給される。
【0036】
次いで、この装飾扁平糸1を、これら鎖編みWA・WB間において所定角度に揃えて一様に傾斜した並列状態で挟持して一体に編成保持する(図2〜図4に示す構造側面図参照)。
【0037】
この際、装飾扁平糸1は、鎖編糸2によって鎖編組織が形成されていくタイミングに挿入されるため、装飾扁平糸1は自然に鎖編糸2にかかる編み込みテンションによって傾斜した状態で挟持することができる(図5参照)。
【0038】
本実施形態では、装飾扁平糸1の扁平面11の傾斜角度を、装飾経編地表面に対して30〜60度にして鎖編みWA・WB間に挟持することができ、更に好ましくは45度にすることによって、見る方向を変えた時の可視面積の違いによる外観の違いをより際立たせることができる。
【0039】
なお、装飾扁平糸1の扁平面11の装飾経編地表面に対する傾斜角度(α)は、実測することもできるが、便宜上、次式で求めることができる。
〔数1〕
α=tan−1(2T/L)
ただし、α:装飾扁平糸1の扁平面11の傾斜角度(°)
L:編目列WAまたはWBの1つの編目長さ(mm)
T:編目列WAとWBの間隙(mm)
【0040】
然る後、この装飾帯部Dを、前記装飾扁平糸1の扁平面11・11…の配列面側を、装飾経編地全体の表裏面に露出する向きになるように配設する。本実施形態では、ダブルラッセル編み機の何れか一方の針床列にて基布部Fを連続的に一体編成することができる。
【0041】
こうすることにより、例えば、編地の斜め上から見た場合と斜め下から見た場合とでは、この装飾扁平糸1の扁平面11が装飾経編地表面となす角度の視角によって、並列した扁平面11の可視面積が増減することにより、斜め上から見た場合には扁平面11が全部見える一方(図6参照)、斜め下から見た場合には、扁平面11が見えなくなって装飾扁平糸1・1…の隙間から経編地の反対側を透過して見ることができ(図7参照)、異なる外観を呈する装飾経編地を完成することができる。なお、本実施形態における装飾経編地の編み組織図は図8のとおりである。
【0042】
『第2実施形態』
本発明の第2実施形態を図9から図16に基づいて説明する。本実施形態では、複数の装飾扁平糸1(1A・1B…)をハの字に配列して成る点に最大の特徴がある。
【0043】
しかして、本実施形態においては、第1実施形態と同様に、編地の経方向に沿って装飾帯部Dを配設した装飾経編地であって、その構成および製造手順を以下に説明する。
【0044】
本実施形態では、少なくとも2列の針床列を備えたダブルラッセル編み機を用いて編成する。
【0045】
まず、本実施形態の装飾帯部Dは、鎖編糸2により鎖編組織W・W…を経方向に沿って並列させてそれぞれ編成して、これら各鎖編組織Wは、各針床列に対応して装飾経編地の表側と裏側に配設される一対の表側鎖編みWAおよび裏側鎖編みWBの二層構造から構成する。
【0046】
具体的には、図に示すように、ダブルラッセル編み機の一方の針床列Aにおいては、鎖編糸2により表側鎖編みWA・WA…を編成する一方、他方の針床列Bにおいて、鎖編糸2により裏側鎖編みWB・WB…を編成する。また、これらの鎖編糸2はそれぞれ筬L2、L5から供給される。
【0047】
そして、これら表側鎖編みWAと裏側鎖編みWBとの間を通りながら装飾扁平糸1の各折り返し部を両端の鎖編組織Wに編絡して前記鎖編組織W・Wの間に亙り緯方向にジグザグに折り返した状態で挿入して編み込んで装飾帯部Dを構成する。
【0048】
本実施形態では、複数の装飾扁平糸1を(例えば2本)用いて、扁平面11表面に装飾部が形成された長手の扁平部材であって、少なくとも互いに異なる色の装飾扁平糸1A・1Bを具備して成り、本実施形態では、金色と銀色の2種類の色のラメ糸を採用する。なお、これらの装飾扁平糸1A・1Bはそれぞれ筬L3、L4から供給される。
【0049】
次いで、当該装飾扁平糸1を、これら鎖編みWA・WB間において所定角度で交互に傾斜したハの字型の並列状態で挟持して一体に編成保持する(図10〜図12に示す構造側面図参照)。
【0050】
この際、装飾扁平糸1は、鎖編糸2によって鎖編組織が形成されていくタイミングに挿入されるため、装飾扁平糸1は自然に鎖編糸2にかかる編み込みテンションによって傾斜した状態でハの字型に挟持することができる(図13および図14参照)。
【0051】
然る後、第1実施形態と同様に、この装飾帯部Dを、前記装飾扁平糸1の扁平面11・11…の配列面側を、装飾経編地全体の表裏面に露出する向きになるように配設する。本実施形態では、ダブルラッセル編み機の何れか一方の針床列にて基布部Fを連続的に一体編成することができる。
【0052】
こうすることにより、これら各装飾扁平糸1の各扁平面11・11…の配列角度を色毎にそれぞれ揃えることによって、例えば、図15に示すような編地の斜め上から見た場合と、図16に示すような斜め下から見た場合とでは、異なる色の各装飾扁平糸1の各扁平面11・11…の見える面積比率が変わるので、装飾経編地表面となす各角度の視角によってそれぞれ異なる色合いを呈する装飾経編地を完成することができる。
【0053】
『第3実施形態』
本発明の第3実施形態を図17から図20に基づいて説明する。本実施形態では、単数の装飾扁平糸1をハの字に配列して成る点に最大の特徴がある。
【0054】
まず、本実施形態においても、少なくとも2列の針床列を備えたダブルラッセル編み機を用いて編成する。
【0055】
そして、本実施形態の装飾帯部Dは、鎖編糸2により鎖編組織W・W…を経方向に沿って並列させてそれぞれ編成して、これら各鎖編組織Wは、各針床列に対応して装飾経編地の表側と裏側に配設される一対の表側鎖編みWAおよび裏側鎖編みWBの二層構造から構成する。
【0056】
具体的には、図に示すように、ダブルラッセル編み機の一方の針床列Aにおいては、鎖編糸2により表側鎖編みWA・WA…を編成する一方、他方の針床列Bにおいて、鎖編糸2により裏側鎖編みWB・WB…を編成する。また、これらの鎖編糸2はそれぞれ筬L2、L5から供給される。
【0057】
そして、これら表側鎖編みWAと裏側鎖編みWBとの間を通りながら装飾扁平糸1の各折り返し部を両端の鎖編組織Wに編絡して前記鎖編組織W・Wの間に亙り緯方向にジグザグに折り返した状態で挿入して編み込んで装飾帯部Dを構成する。
【0058】
そして、本実施形態は、単数の装飾扁平糸1を用いて、扁平面11表面に装飾部が形成された長手の扁平部材であって、この装飾扁平糸1は筬L4から供給される。
【0059】
次いで、当該装飾扁平糸1を、これら鎖編みWA・WB間において所定角度で交互に傾斜したハの字型の並列状態で挟持して一体に編成保持する(図17〜図19に示す構造側面図参照)。
【0060】
この際、装飾扁平糸1は、鎖編糸2によって鎖編組織が形成されていくタイミングに挿入されるため、装飾扁平糸1は自然に鎖編糸2にかかる編み込みテンションによって傾斜した状態でハの字型に挟持することができる(図20参照)。
【0061】
本実施形態では、装飾扁平糸1として、例えば、装飾扁平糸1自身が見る角度により見え方が異なる偏光フィルムのようなスリット糸を用いることにより、互いに隣り合う装飾扁平糸が異なった色で見え、しかも見る角度によりその色が変化する効果がある。
【0062】
このように、見る角度で色が変化するようなフィルム糸や反射糸などでは隣接するフィルム糸は明確に色が異なりはっきりとした外観の相違が現れる。
【実施例】
【0063】
〔製造実施例1〕
装飾扁平糸1として、金色にメッキされたスリット糸を用い、そのスリット糸が鎖編みWA・WB間において所定角度で一様に傾斜し、並列状態に挟持されて一体に編成保持された装飾経編地を下記条件で製作した。
【0064】
なお、筬L4のスリット糸の5針振りの中央位置が編地幅の2:1の割合位置になるように配置し、前記中央となる1針分には筬L2、L3の鎖編およびL1の扁平糸隠蔽糸、L6の緯挿入糸が掛からないように糸通しを行った。
【0065】
<編成条件>
製作編機 ダブルラッセル機 24ゲージ
編組織 図21の組織図に示す
編幅 1.2cm
糸使い L1 帝人社製 ポリエステル 167 dtex(デシテックス)
L2 帝人社製 ポリエステル 167 dtex
L4 泉工業社製 スリット糸 80 切
L5 帝人社製 ポリエステル 167 dtex
L6 帝人社製 ポリエステル 167 dtex
編成密度 ウェール 29.6ウェール/inch
コース 34.0コース/inch
【0066】
こうして得られた装飾経編地は、装飾扁平糸であるスリット糸の扁平面が編地面に対してほぼ45°の角度差で一様に傾斜した状態で長手方向に連続して露出しており、見る角度によりスリット糸の金色が大きく変化し、意匠性に優れていることを確認した。
【0067】
〔製造実施例2〕
次いで、第二に実施例として装飾扁平糸1として金色にメッキされたスリット糸と銀色にメッキされたスリット糸の2種類を交互に挿入して、スリット糸が鎖編みWA・WB間において所定角度で交互に傾斜して並列状態に挟持されて一体に編成保持された装飾経編地を下記条件で製作した。
【0068】
なお、装飾扁平糸である2種のスリット糸は同一ニードル間の挿入になるように糸通しを行い、鎖編および扁平糸隠蔽糸、緯挿入糸の糸通しは実施例1と同様にした。
【0069】
<編成条件>
製作編機 ダブルラッセル機 24ゲージ
編組織 図22の組織図に示す
編幅 1.2cm
糸使い L1 帝人社製 ポリエステル 167 dtex(デシテックス)
L2 帝人社製 ポリエステル 167 dtex
L3 泉工業社製 スリット糸 80 切
L4 泉工業社製 スリット糸 80 切
L5 帝人社製 ポリエステル 167 dtex
L6 帝人社製 ポリエステル 167 dtex
編成密度 ウェール 29.6ウェール/inch
コース 34.0コース/inch
【0070】
こうして得られた装飾経編地は、装飾扁平糸であるスリット糸の扁平面が編地面に対してほぼ45°の角度差で交互に傾斜した状態で長手方向に連続して露出しており、その露出個所が見る角度により金色、金銀混合色、銀色と多彩に変化し、これまでにない意匠性が発揮された装飾経編地であることを確認した。
【0071】
本発明は、概ね上記のように構成されるが、図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、装飾扁平糸1は、ラメ糸に限らず、織布、不織布、ニット、人工皮革、合成皮革、樹脂等をマイクロスリットしたものや扁平成型品、表面に金属蒸着された反射スリット糸を採用することもでき、また、表面と裏面とでそれぞれ違う色や模様などの装飾部が形成されているものであっても良く、さらには幅替りがあるものであっても良い。
【0072】
また、装飾扁平糸1は、3種類以上の異なる外観のものを使用することもできるし、更にまた、装飾扁平糸1の扁平面11が露出する間隔は、編地の形態が安定している範囲で、3針以上の振りで、鎖編組織W・Wに亙り緯方向に挿入することもできる。
【0073】
更にまた、本実施形態では、編地の長手方向にゴムなどの弾性糸を配設して、この弾性糸の伸縮により装飾扁平糸の傾斜角度を変化させて、装飾部の外観が変化するように構成することができる。この弾性糸は、鎖編組織の内部に長手方向に沿って挿入するものであっても良いし、弾性糸自体で鎖編組織を編成するものであっても良く、これら何れのものも本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0074】
1(1A・1B) 装飾扁平糸
11 扁平面
2 鎖編糸
W 鎖編組織
WA 表側鎖編み
WB 裏側鎖編み
D 装飾帯部
F 基布部
A 針床列
B 針床列
【特許請求の範囲】
【請求項1】
編地の経方向に沿って装飾帯部(D)が配設された装飾経編地であって、
この装飾帯部(D)は、鎖編糸(2)により鎖編組織(W・W…)が経方向に沿って並列してそれぞれ編成され、これら各鎖編組織(W)は、各針床列に対応して装飾経編地の表側と裏側に配設される一対の表側鎖編み(WA)および裏側鎖編み(WB)の二層構造から成る一方、
装飾扁平糸(1)の折り返し部が両端の鎖編組織(W)に編絡して前記鎖編組織(W・W)の間に亙り緯方向にジグザグに折り返された状態で挿入されて編み込まれて構成されており、
前記装飾扁平糸(1)は、扁平面(11)表面に装飾部が形成された長手の扁平部材であって、この装飾扁平糸(1)は、これら鎖編み(WA・WB)間において所定角度に揃えて一様に傾斜した並列状態に挟持されて一体に編成保持されており、
この装飾帯部(D)は、前記装飾扁平糸(1)の扁平面(11・11…)の配列面側が、装飾経編地全体の表裏面に露出する向きになるように配設されており、
この装飾扁平糸(1)の扁平面(11)が装飾経編地表面となす角度の視角によって、並列した扁平面(11)の可視面積が増減することにより、異なる外観を呈するようにしたことを特徴とする装飾経編地。
【請求項2】
編地の経方向に沿って装飾帯部(D)が配設された装飾経編地であって、
この装飾帯部(D)は、鎖編糸(2)により鎖編組織(W・W…)が経方向に沿って並列してそれぞれ編成され、これら各鎖編組織(W)は、各針床列に対応して装飾経編地の表側と裏側に配設される一対の表側鎖編み(WA)および裏側鎖編み(WB)の二層構造から成る一方、
装飾扁平糸(1)の各折り返し部が両端の鎖編組織(W)に編絡して前記鎖編組織(W・W)の間に亙り緯方向にジグザグに折り返された状態で挿入されて編み込まれて構成されており、
前記装飾扁平糸(1)は、扁平面(11)表面に装飾部が形成された長手の扁平部材であって、単数または複数の装飾扁平糸(1)を具備して成り、
当該装飾扁平糸(1)は、これら鎖編み(WA・WB)間において所定角度で交互に傾斜したハの字型の並列状態で挟持されて一体に編成保持されており、
この装飾帯部(D)は、前記装飾扁平糸(1)の扁平面(11・11…)の配列面側が、装飾経編地全体の表裏面に露出する向きになるように配設されており、
これら各装飾扁平糸(1)の各扁平面(11・11…)の配列角度を色毎にそれぞれ揃えることによって、装飾経編地表面となす各角度の視角によってそれぞれ異なる色合いを呈するようにしたことを特徴とする装飾経編地。
【請求項3】
複数の装飾扁平糸(1)が、少なくとも互いに異なる色の装飾扁平糸(1A・1B…)を具備して成ることを特徴とする請求項2記載の装飾経編地。
【請求項4】
装飾扁平糸(1)が、少なくとも3針以上の振りの間隔で、鎖編組織(W・W)に亙り緯方向に挿入されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の装飾経編地。
【請求項5】
装飾扁平糸(1)の扁平面(11)の傾斜角度が、装飾経編地表面に対して30〜60度で鎖編み(WA・WB)間に挟持されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載の装飾経編地。
【請求項6】
装飾扁平糸(1)が、表面にラメ加工されたラメ糸であることを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載の装飾経編地。
【請求項7】
装飾扁平糸(1)が、表面に金属蒸着された反射スリット糸であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載の装飾経編地。
【請求項8】
編地の経方向に沿って装飾帯部(D)を配設した装飾経編地を製造するにあたり、
この装飾帯部(D)は、鎖編糸(2)により鎖編組織(W・W…)を経方向に沿って並列させてそれぞれ編成して、これら各鎖編組織(W)は、各針床列に対応して装飾経編地の表側と裏側に配設される一対の表側鎖編み(WA)および裏側鎖編み(WB)の二層構造から構成する一方、
装飾扁平糸(1)の折り返し部を両端の鎖編組織(W)に編絡して前記鎖編組織(W・W)の間に亙り緯方向にジグザグに折り返した状態で挿入して編み込んで構成して、
前記装飾扁平糸(1)は、扁平面(11)表面に装飾部が形成された長手の扁平部材であって、この装飾扁平糸(1)を、これら鎖編み(WA・WB)間において所定角度に揃えて一様に傾斜した並列状態で挟持して一体に編成保持して、
この装飾帯部(D)を、前記装飾扁平糸(1)の扁平面(11・11…)の配列面側を、装飾経編地全体の表裏面に露出する向きになるように配設して、
この装飾扁平糸(1)の扁平面(11)が装飾経編地表面となす角度の視角によって、並列した扁平面(11)の可視面積が増減することにより、異なる外観を呈するようにすることを特徴とする装飾経編地の製造方法。
【請求項9】
編地の経方向に沿って装飾帯部(D)を配設した装飾経編地を製造するにあたり、
この装飾帯部(D)は、鎖編糸(2)により鎖編組織(W・W…)を経方向に沿って並列させてそれぞれ編成して、これら各鎖編組織(W)は、各針床列に対応して装飾経編地の表側と裏側に配設される一対の表側鎖編み(WA)および裏側鎖編み(WB)の二層構造から構成する一方、
装飾扁平糸(1)の各折り返し部を両端の鎖編組織(W)に編絡して前記鎖編組織(W・W)の間に亙り緯方向にジグザグに折り返した状態で挿入して編み込んで構成して、
前記装飾扁平糸(1)は、扁平面(11)表面に装飾部が形成された長手の扁平部材であって、単数または複数の装飾扁平糸(1)を具備して成り、
当該装飾扁平糸(1)を、これら鎖編み(WA・WB)間において所定角度で交互に傾斜したハの字型の並列状態で挟持して一体に編成保持して、
この装飾帯部(D)を、前記装飾扁平糸(1)の扁平面(11・11…)の配列面側を、装飾経編地全体の表裏面に露出する向きになるように配設して、
これら各装飾扁平糸(1)の各扁平面(11・11…)の配列角度を色毎にそれぞれ揃えることによって、装飾経編地表面となす各角度の視角によってそれぞれ異なる色合いを呈するようにすることを特徴とする装飾経編地の製造方法。
【請求項10】
複数の装飾扁平糸(1)を、少なくとも互いに異なる色の装飾扁平糸(1A・1B…)にすることを特徴とする請求項9記載の装飾経編地の製造方法。
【請求項11】
少なくとも2列の針床列を備えたダブルラッセル編み機を用いて編成することを特徴とする請求項8〜10の何れか一つに記載の装飾経編地の製造方法。
【請求項1】
編地の経方向に沿って装飾帯部(D)が配設された装飾経編地であって、
この装飾帯部(D)は、鎖編糸(2)により鎖編組織(W・W…)が経方向に沿って並列してそれぞれ編成され、これら各鎖編組織(W)は、各針床列に対応して装飾経編地の表側と裏側に配設される一対の表側鎖編み(WA)および裏側鎖編み(WB)の二層構造から成る一方、
装飾扁平糸(1)の折り返し部が両端の鎖編組織(W)に編絡して前記鎖編組織(W・W)の間に亙り緯方向にジグザグに折り返された状態で挿入されて編み込まれて構成されており、
前記装飾扁平糸(1)は、扁平面(11)表面に装飾部が形成された長手の扁平部材であって、この装飾扁平糸(1)は、これら鎖編み(WA・WB)間において所定角度に揃えて一様に傾斜した並列状態に挟持されて一体に編成保持されており、
この装飾帯部(D)は、前記装飾扁平糸(1)の扁平面(11・11…)の配列面側が、装飾経編地全体の表裏面に露出する向きになるように配設されており、
この装飾扁平糸(1)の扁平面(11)が装飾経編地表面となす角度の視角によって、並列した扁平面(11)の可視面積が増減することにより、異なる外観を呈するようにしたことを特徴とする装飾経編地。
【請求項2】
編地の経方向に沿って装飾帯部(D)が配設された装飾経編地であって、
この装飾帯部(D)は、鎖編糸(2)により鎖編組織(W・W…)が経方向に沿って並列してそれぞれ編成され、これら各鎖編組織(W)は、各針床列に対応して装飾経編地の表側と裏側に配設される一対の表側鎖編み(WA)および裏側鎖編み(WB)の二層構造から成る一方、
装飾扁平糸(1)の各折り返し部が両端の鎖編組織(W)に編絡して前記鎖編組織(W・W)の間に亙り緯方向にジグザグに折り返された状態で挿入されて編み込まれて構成されており、
前記装飾扁平糸(1)は、扁平面(11)表面に装飾部が形成された長手の扁平部材であって、単数または複数の装飾扁平糸(1)を具備して成り、
当該装飾扁平糸(1)は、これら鎖編み(WA・WB)間において所定角度で交互に傾斜したハの字型の並列状態で挟持されて一体に編成保持されており、
この装飾帯部(D)は、前記装飾扁平糸(1)の扁平面(11・11…)の配列面側が、装飾経編地全体の表裏面に露出する向きになるように配設されており、
これら各装飾扁平糸(1)の各扁平面(11・11…)の配列角度を色毎にそれぞれ揃えることによって、装飾経編地表面となす各角度の視角によってそれぞれ異なる色合いを呈するようにしたことを特徴とする装飾経編地。
【請求項3】
複数の装飾扁平糸(1)が、少なくとも互いに異なる色の装飾扁平糸(1A・1B…)を具備して成ることを特徴とする請求項2記載の装飾経編地。
【請求項4】
装飾扁平糸(1)が、少なくとも3針以上の振りの間隔で、鎖編組織(W・W)に亙り緯方向に挿入されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の装飾経編地。
【請求項5】
装飾扁平糸(1)の扁平面(11)の傾斜角度が、装飾経編地表面に対して30〜60度で鎖編み(WA・WB)間に挟持されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載の装飾経編地。
【請求項6】
装飾扁平糸(1)が、表面にラメ加工されたラメ糸であることを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載の装飾経編地。
【請求項7】
装飾扁平糸(1)が、表面に金属蒸着された反射スリット糸であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載の装飾経編地。
【請求項8】
編地の経方向に沿って装飾帯部(D)を配設した装飾経編地を製造するにあたり、
この装飾帯部(D)は、鎖編糸(2)により鎖編組織(W・W…)を経方向に沿って並列させてそれぞれ編成して、これら各鎖編組織(W)は、各針床列に対応して装飾経編地の表側と裏側に配設される一対の表側鎖編み(WA)および裏側鎖編み(WB)の二層構造から構成する一方、
装飾扁平糸(1)の折り返し部を両端の鎖編組織(W)に編絡して前記鎖編組織(W・W)の間に亙り緯方向にジグザグに折り返した状態で挿入して編み込んで構成して、
前記装飾扁平糸(1)は、扁平面(11)表面に装飾部が形成された長手の扁平部材であって、この装飾扁平糸(1)を、これら鎖編み(WA・WB)間において所定角度に揃えて一様に傾斜した並列状態で挟持して一体に編成保持して、
この装飾帯部(D)を、前記装飾扁平糸(1)の扁平面(11・11…)の配列面側を、装飾経編地全体の表裏面に露出する向きになるように配設して、
この装飾扁平糸(1)の扁平面(11)が装飾経編地表面となす角度の視角によって、並列した扁平面(11)の可視面積が増減することにより、異なる外観を呈するようにすることを特徴とする装飾経編地の製造方法。
【請求項9】
編地の経方向に沿って装飾帯部(D)を配設した装飾経編地を製造するにあたり、
この装飾帯部(D)は、鎖編糸(2)により鎖編組織(W・W…)を経方向に沿って並列させてそれぞれ編成して、これら各鎖編組織(W)は、各針床列に対応して装飾経編地の表側と裏側に配設される一対の表側鎖編み(WA)および裏側鎖編み(WB)の二層構造から構成する一方、
装飾扁平糸(1)の各折り返し部を両端の鎖編組織(W)に編絡して前記鎖編組織(W・W)の間に亙り緯方向にジグザグに折り返した状態で挿入して編み込んで構成して、
前記装飾扁平糸(1)は、扁平面(11)表面に装飾部が形成された長手の扁平部材であって、単数または複数の装飾扁平糸(1)を具備して成り、
当該装飾扁平糸(1)を、これら鎖編み(WA・WB)間において所定角度で交互に傾斜したハの字型の並列状態で挟持して一体に編成保持して、
この装飾帯部(D)を、前記装飾扁平糸(1)の扁平面(11・11…)の配列面側を、装飾経編地全体の表裏面に露出する向きになるように配設して、
これら各装飾扁平糸(1)の各扁平面(11・11…)の配列角度を色毎にそれぞれ揃えることによって、装飾経編地表面となす各角度の視角によってそれぞれ異なる色合いを呈するようにすることを特徴とする装飾経編地の製造方法。
【請求項10】
複数の装飾扁平糸(1)を、少なくとも互いに異なる色の装飾扁平糸(1A・1B…)にすることを特徴とする請求項9記載の装飾経編地の製造方法。
【請求項11】
少なくとも2列の針床列を備えたダブルラッセル編み機を用いて編成することを特徴とする請求項8〜10の何れか一つに記載の装飾経編地の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図21】
【図22】
【図5】
【図13】
【図14】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図21】
【図22】
【図5】
【図13】
【図14】
【図20】
【公開番号】特開2012−224969(P2012−224969A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96303(P2011−96303)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(591168932)株式会社SHINDO (22)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(591168932)株式会社SHINDO (22)
【Fターム(参考)】
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