説明

補助モータ付きチェーンブロック

【課題】
補助モータ付きチェーンブロックにおいて、機械的な回転力伝達機構によりハンドホイルに生じる負荷の大きさに応じてハンドホイルの回転補助を行う補助モータ付きチェーンブロックを提供すること。
【解決手段】
ハンドホイル17に負荷が生じた際、外側回転軸21と内側回転軸23とに回転角度の差が生じることによりテーパホイル25が移動し、ラチェット爪30が補助モータ32により回転するラチェットホイル31と勘合して回転力が伝えられる。ハンドホイル17に生じる負荷が減り、外側回転軸21と内側回転軸23の回転角度の差がなくなると、テーパホイル25は元の位置まで戻り、ラチェット爪30がラチェットホイル31から外れて補助モータ32による回転力が伝達されなくなる。これにより、ハンドホイル17に生じる負荷の大きさに応じてハンドホイル17の回転補助を行うことが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物の昇降を行なうチェーンブロックにおいて、荷物を吊り上げる際の負荷を軽減する補助モータが設けられた補助モータ付きチェーンブロックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、工場や建設現場などにおいて、人力では直接持ち上げることが困難な荷物を移動させる際には、ハンドホイルの回転をロードホイルに減速機を介して伝達し、ロードホイルに掛けられたロードチェーンにより荷物の昇降を行なうチェーンブロックが使用されていた。特に重量が大きい荷物の場合には、チェーンブロックを人力で動作させるのみでは持ち上げる事が困難な場合があり、チェーンブロックのハンドホイルの回転を補助する着脱自在な補助モータが設けられた補助モータ付きチェーンブロックが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような通常の補助モータ付きチェーンブロックでは、図1に示すチェーンブロック1のように、荷物吊り上げフック11、ロードチェーン12、ロードホイル13、取り付けフック14、減速機15、ハンドチェーン16、ハンドホイル17を備えている。
【0004】
チェーンブロック1は、取り付けフック14により天井や梁等に吊り下げられる。移動を行なう荷物は、荷物吊り上げフック11へ直接、又はロープ等で取り付けられる。ハンドチェーン16を引いてハンドホイル17を回転させ、減速機15を介してロードホイル13を回転させる。ロードホイル13の回転方向により、ロードチェーン12が巻き上げ、又は巻き下げ状態となり、それにともない荷物吊り上げフック11が上昇、又は下降して荷物を移動する。
【0005】
特に重い荷物を引き上げる際には、ハンドホイル17に設けられた取り付け穴2へ補助モータ3の駆動軸4を差込む。ハンドチェーン16を引くのに合わせて補助モータ3をハンドホイル17と同じ回転方向に駆動させることにより、ハンドホイル17に発生する負荷を軽減させる。
【0006】
このような補助モータ付きチェーンブロックでは、荷物の重量が比較的軽く、人力のみでも高速に上昇させることが可能である時や、負荷のかからない巻き下げ時などにおいては、補助モータとの接続を解除して不要な負荷が生じないようにするため、電磁クラッチ等の回転力伝達機構により補助モータとハンドホイルとの接続及び解除を行っている。
【特許文献1】特開2004−026498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、電磁クラッチは質量が大きいため、チェーンブロックそのものの重量を増大させる問題があった。また、電磁クラッチは動作タイミングの設定が困難であって、接触面の磨耗などの問題があった。更に、電磁クラッチは高価な部品であり、製品価格を上げる一因でもあった。
【0008】
本発明はこのような問題に対してなされたものであって、安価で設定が容易であり、耐久性の高い機械的な回転力伝達機構により、ハンドホイルに生じる負荷の大きさに応じてハンドホイルの回転補助を行う補助モータ付きチェーンブロックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の補助モータ付きチェーンブロックでは、前記目的を達成するために、移動させる荷物に取り付けるロードチェーンが巻き掛けられたロードホイルと、巻き掛けられたハンドチェーンを引くことにより回転し、前記ロードホイルを回転させるハンドホイルと、前記ハンドホイルに取り付けられた外回転軸と、前記外回転軸の内側に前記外回転軸に対して回転自在に設けられ、前記ロードホイルに自己の回転を伝達するようにされた内回転軸と、前記外回転軸と前記内回転軸とを逆方向に回転するように前記外回転軸と前記内回転軸との間に取り付けられた圧縮型のバネと、円筒形状を成し、一端を前記内回転軸の中心に固定され、円筒形状の軸方向に対して傾斜したガイド溝が円筒形状外周面上に形成された円筒カムと、一方の面にテーパ面が形成され、前記ガイド溝と嵌合するカムガイドピンが設けられたカム取付け穴が回転中心に形成されたテーパホイルと、前記外回転軸に設けられ、前記テーパホイルが軸方向に移動可能に取り付けられるガイドピンと、一端に前記テーパ面に接触して移動するカムフォロアが取り付けられ、外周面に軸方向へ向って平行に形成された係合溝を備えたラチェットホイルの前記係合溝と係合する爪を備えたラチェット爪が他端に取り付けられたリンクレバーと、前記円筒カムの他端が回転中心に固定され、前記リンクレバーを支持するリンクレバープレートと、前記ラチェットホイルを回転させる補助モータと、前記テーパホイルの前記ガイドピン軸方向の移動量を検出することにより前記外回転軸に生じている負荷を検出するトルク検出機構と、前記トルク検出機構により検出された負荷の大きさに応じて前記補助モータの回転力を制御する制御手段と、を備えたことを特徴としている。
【0010】
また、本発明は前記発明において、前記トルク検出機構は、前記テーパホイル外周部に嵌合し該テーパホイルとともに移動するレバー部と、前記レバー部の位置に応じて抵抗値が変化するスライド抵抗を備えたことを特徴としている。
【0011】
更に、本発明は前記発明において、前記円筒カムの前記ガイド溝に前記カムガイドピンが嵌合するように、前記テーパホイルの中心部に形成された前記カム取付け穴へ前記円筒カムが挿入され、前記外回転軸と前記内回転軸との間で回転角度の差が生じ前記外回転軸に対して前記円筒カムが回転した際、前記カムガイドピンが前記ガイド溝に沿って移動することにより前記テーパホイルが前記外回転軸に設けられた前記ガイドピンの軸方向に沿って移動することを特徴としている。
【0012】
更に、本発明は前記発明において、前記カムフォロアは前記テーパホイルが前記外回転軸に設けられた前記ガイドピンの軸方向に沿って移動することにより前記テーパホイルのテーパ面に沿って移動し、前記カムフォロアが移動することにより前記リンクレバーが移動して前記ラチェット爪が前記ラチェットホイルの前記係合溝と係合または前記係合溝から外れることを特徴としている。
【0013】
本発明によれば、移動させる荷物に取り付けるロードチェーンが巻き掛けられたロードホイルを回転させるハンドホイルには外回転軸が固定されている。外回転軸の内側には間に圧縮バネを介して内回転軸が回転自在に設けられ、内回転軸は減速機を介してロードホイルと接続されている。
【0014】
内回転軸は、ロードホイルと接続されている面とは逆側の面の回転中心に円筒カムの一端が固定されている。円筒カムの円筒形状外周面上には円筒形状の軸方向に対して傾斜したガイド溝が形成されている。円筒カムは一方の面にテーパ面が形成されたテーパホイルの回転中心に形成されたカム取付け穴に挿入される。カム取付け穴の内部にはカムガイドピンが設けられ、カムガイドピンは円筒カムのガイド溝と嵌合する。テーパホイルは、外回転軸上に設けられたガイドピンに、ガイドピンの軸方向へ移動可能となるように取り付けられている。
【0015】
これにより、圧縮バネにより外回転軸と内回転軸とを逆方向に回転させる力よりもハンドホイルを回転させた際にロードホイルに生じる負荷が大きくなると、内回転軸が残り外回転軸だけ回転して外回転軸と内回転軸との間で回転角度の差が生じる。回転角度に差が生じると、外回転軸に設けられたガイドピンの軸方向に移動可能に取り付けられているテーパホイルが外回転軸とともに回転し、カムガイドピンが円筒カムの円筒形状外周面上に形成されたガイド溝に沿って移動することによりテーパホイルがガイドピンの軸方向に沿って移動する。
【0016】
移動するテーパホイルの移動量は、テーパホイル外周部に嵌合しテーパホイルとともに移動するレバー部と、レバー部の位置に応じて抵抗値が変化するスライド抵抗を備えたトルク検出機構により抵抗値の変化として検出され、制御手段によりトルクの大きさの変化が算出される。
【0017】
また、テーパホイルに挿入された円筒カムの内回転軸が取り付けられた側とは逆側の他端にはリンクレバープレートが取り付けられている。リンクレバープレートは外周部がベアリング等により回転可能に支持され、リンクレバープレートの回転面上にはリンクレバーが支持されている。リンクレバーの一端にはテーパホイルのテーパ面に接触して移動するカムフォロアが取り付けられ、他端にはリンクレバープレートとの間に取り付けられたバネにより一方向へ押圧されたラチェット爪が取り付けられている。
【0018】
カムフォロアはテーパホイルが移動することによりテーパ面に沿って移動する。それにともない、リンクレバーの他端に取り付けられたラチェット爪も移動する。これにより、ラチェット爪はテーパホイルの移動に合わせて移動し、外周面に軸方向へ向って平行に形成された係合溝を備えたラチェットホイルの係合溝と係合または係合溝から外れる。ラチェットホイルは補助モータと接続されており、トルク検出機構により検出されたトルクに応じて回転している。
【0019】
これらにより、ハンドホイルに生じる負荷に応じてテーパホイルが移動し、ラチェット爪が移動することで補助モータにより回転するラチェットホイルと係合して回転力が伝えられる。ハンドホイルに生じる負荷が減り、外側回転軸と内側回転軸の回転角度の差がなくなると、テーパホイルは元の位置まで戻り、ラチェット爪がラチェットホイルの係合溝から外れて補助モータによる回転力が伝達されなくなる。よって、ハンドホイルに不要な負荷が生じることが無く、素早く、僅かな力で荷物を吊り上げることが出来るとともに、電磁クラッチ等の高価な部品を使用しなくとも、安価で設定が容易であり、高い耐久性でハンドホイルに生じる負荷の大きさに応じて回転補助が行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明の補助モータ付きチェーンブロックによれば、円筒カムを利用した安価で設定が容易であり、耐久性の高い機械的な回転力伝達機構により、ハンドホイルに生じる負荷の大きさに応じてハンドホイルの回転補助を行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下添付図面に従って本発明に係る補助モータ付きチェーンブロックの好ましい実施の形態について詳説する。最初に本発明に係る補助モータ付きチェーンブロックの構成について説明する。図2は本発明に係る補助モータ付きチェーンブロックの外観斜視図、図3は部品構成を示した斜視図である。
【0022】
図2に示すようにチェーンブロック10は、荷物吊り上げフック11、ロードチェーン12、ロードホイル13、取り付けフック14、減速機15、ハンドチェーン16、ハンドホイル17を備えている。カバー18内部には回転力伝達機構20が備えられている。
【0023】
回転力伝達機構20は、図3に示すように、外回転軸21、ガイドピン22、22、内回転軸23、円筒カム24、テーパホイル25、トルク検出機構26、リンクレバー27、カムフォロア28、リンクレバープレート29、ラチェット爪30、ラチェットホイル31、補助モータ32、及び不図示の制御手段等により構成されている。
【0024】
外回転軸21は、中心部に内回転軸23が回転自在に取り付けられる穴と不図示の圧縮型バネを取り付けるバネ溝21Aを備えた円板形状を成し、一方の面にガイドピン22、22が設けられている。外回転軸21のガイドピン22、22が設けられた面とは反対側の面はハンドホイル17に固定され、外回転軸21はハンドチェーン16を引くことによりハンドホイル17と共に回転する。
【0025】
内回転軸23は円板形状を成し、一方の面には減速機15を介してロードホイル13と接続され、他方の面に円筒カム24の一端が取り付けられている。内回転軸23は外回転軸21中心部に回転自在に取り付けられ、バネ溝21Aに取り付けられた不図示の圧縮型バネにより外回転軸21に対して逆方向に回転するように回転力が生じている。
【0026】
円筒カム24は図4に示すように円筒形状を成し、円筒形状外周面上には円筒形状の軸方向に対して傾斜したガイド溝33、33が形成されている。円筒カム24は一方の面にテーパ面25Aが形成された円盤状形状を成すテーパホイル25の回転中心に形成されたカム取付け穴25Bに挿入される。カム取付け穴25Bの内部には不図示のカムガイドピンが設けられ、カムガイドピンは円筒カム24のガイド溝33、33と嵌合する。
【0027】
テーパホイル25は、外回転軸21上に設けられたガイドピン22、22に、ガイドピン22、22の軸方向へ移動可能となるように取り付けられている。
【0028】
これにより、圧縮バネにより外回転軸21と内回転軸23とを逆方向に回転させる回転力よりもハンドホイル17を回転させた際にロードホイル13に生じる負荷が大きくなると、内回転軸23が残り外回転軸21だけ回転して外回転軸21と内回転軸23との間で回転角度の差が生じる。回転角度に差が生じると、外回転軸21に設けられたガイドピン22、22の軸方向に移動可能に取り付けられているテーパホイル25が外回転軸21とともに回転し、カムガイドピンが円筒カム24の円筒形状外周面上に形成されたガイド溝33、33に沿って移動することによりテーパホイル25がガイドピン22、22の軸方向に沿って移動する。
【0029】
トルク検出機構26は、テーパホイル25外周部に嵌合しテーパホイル25とともに移動するレバー部26Aと、レバー部26Aの位置に応じて抵抗値が変化するスライド抵抗26Bにより構成される。トルク検出機構26は移動するテーパホイル25の移動量を抵抗値の変化として検出し、検出された抵抗値の変化を接続された制御手段に送りハンドホイル17に生じるトルクの大きさの変化が制御手段により算出される。
【0030】
テーパホイル25に挿入された円筒カム24の内回転軸23が取り付けられた側とは逆側の他端にはリンクレバープレート29が取り付けられている。リンクレバープレート29は外周部がベアリング34等により回転可能に支持され、リンクレバープレート29の回転面上にはリンクレバー27が支持されている。
【0031】
リンクレバー27の一端にはテーパホイル25のテーパ面25Aに接触して移動するカムフォロア28が取り付けられ、他端にはラチェット爪30が取り付けられている。また、ラチェット爪30とリンクレバープレート29との間には不図示のバネが取り付けられ、ラチェット爪30に対して常に一方方向(本実施の形態においてはリンクレバープレート29の中心に向う方向)へ移動するように押圧している。
【0032】
カムフォロア28はテーパホイル25が移動することによりテーパ面25Aに沿って移動する。それにともない、リンクレバー27の他端に取り付けられたラチェット爪30も移動する。これにより、ラチェット爪30はテーパホイル25の移動に合わせて移動し、外周面に軸方向へ向って平行に形成された係合溝を備えたラチェットホイル31の係合溝と係合、または係合溝から外れる。
【0033】
ラチェットホイル31はタイミングベルト35を介して補助モータ32と接続され、トルク検出機構26により検出されたトルクに応じて回転力が制御された補助モータ32により回転している。
【0034】
これらにより、ハンドホイル17に生じる負荷に応じてテーパホイル25が移動し、ラチェット爪30が補助モータ32により回転するラチェットホイル31と係合して回転力が伝えられる。ハンドホイル17に生じる負荷が減り、外回転軸21と内回転軸23の回転角度の差がなくなると、テーパホイル25は元の位置まで戻り、ラチェット爪30がラチェットホイル31の係合溝から外れて補助モータによる回転力が伝達されなくなる。よって、ハンドホイル17に不要な負荷が生じることが無く、素早く、僅かな力で荷物を吊り上げることが出来るとともに、電磁クラッチ等の高価な部品を使用しなくとも、安価で設定が容易であり、高い耐久性でハンドホイル17に生じる負荷の大きさに応じて回転補助が行うことが可能となる。
【0035】
次に、本発明に係る補助モータ付きチェーンブロックの作用について説明する。図5は本発明に係る補助モータ付きチェーンブロックの構成を模式的に表した断面図である。
【0036】
チェーンブロック10は、図2に示す取り付けフック14により天井や梁等に吊り下げられる。移動を行なう荷物は、荷物吊り上げフック11へ直接、又はロープ等で取り付けられる。ハンドチェーン16を引いてハンドホイル17を回転させ、減速機15を介してロードホイル13を回転させる。ロードホイル13の回転方向により、ロードチェーン12が巻き上げ、又は巻き下げ状態となり、それにともない荷物吊り上げフック11が上昇、又は下降して荷物を移動する。
【0037】
図5に示すように、ハンドホイル17が回転していない状態では、回転力伝達機構20の外回転軸21と内回転軸23とは、外回転軸21のバネ溝21Aに取り付けられた圧縮型バネ36が伸びた状態で静止している。
【0038】
ハンドチェーン16を引いてハンドホイル17を矢印A方向に回転させ、ロードホイル13に巻き掛けられたロードチェーン12により荷物を引き上げようとした場合、ロードホイル13には荷物により回転負荷がかかりロードホイル13に接続された内回転軸23にも同様に回転負荷がかかる。このとき、圧縮型バネ36の伸長方向に働くバネ力よりも回転負荷が大きく、圧縮型バネ36が縮んで内回転軸23が回転することなく外回転軸21のみが回転すると内回転軸23と外回転軸21との間に回転角度の差が生じる。
【0039】
内回転軸23と外回転軸21との間に回転角度の差が生じると、ガイドピン22、22の軸方向に移動可能に取り付けられたテーパホイル25は外回転軸21と共に回転し、回転していない内回転軸23へ一端が取り付けられた円筒カム24に対して回転することとなる。これにより、円筒カム24に形成されたガイド溝33、33と嵌合しているテーパホイル25に設けられたカムガイドピン37がガイド溝33、33に沿って移動する。
【0040】
ガイド溝33、33は円筒カム24の円筒形状の軸方向に対して傾斜して形成されているため、テーパホイル25は図6に示すように回転しながらガイドピン22、22の軸方向(本実施の形態においてはハンドホイル17へ接近する方向)に移動する。
【0041】
テーパホイル25が移動すると、ラチェット爪30とリンクレバープレート29との間に取り付けられた不図示のバネの力により、カムフォロア28がテーパホイル25のテーパ面25Aに接触して移動する。これによりリンクレバー27が下がりラチェット爪30がラチェットホイル31に形成された係合溝と係合する。
【0042】
また、テーパホイル25の移動により、トルク検出機構26のレバー部26Aが移動し、スライド抵抗26Bの抵抗値が変化する。抵抗値の変化量はトルク検出機構26と接続された制御手段38へ送くられ、ハンドホイル17に生じるトルクの大きさの変化が算出される。制御手段38は算出されたトルクの大きさに合わせて電源39より送られる電力を制御することなどにより補助モータ32の回転力を制御する。
【0043】
補助モータ32の回転力はタイミングベルト35を介してラチェットホイル31へ伝達される。ラチェットホイル31はラチェット爪30と係合しており、これによりリンクレバープレート29が補助モータ32の回転力で回転する。リンクレバープレート29中心部には、内回転軸23に取り付けられている側とは反対側の円筒カム24の一端が取り付けられているので、リンクレバープレート29が回転することにより内回転軸23も補助モータ32の回転力で回転する。
【0044】
内回転軸23が補助モータ32の回転力により回転することで、減速機15を介して内回転軸23と接続されるロードホイル13に生じる回転負荷が軽減され、ハンドホイル17を回転させるのに必要な力が軽減される。
【0045】
ハンドホイル17の回転を止め、外回転軸21の回転が止まると、内回転軸23と外回転軸21は圧縮型バネ36のバネ力により再び図5に示す状態まで回転するとともに、テーパホイル25が移動し、カムフォロア28がテーパ面25Aに押されることによりラチェット爪30、30が移動してラチェットホイル31の係合溝より外れ、補助モータ32の回転力の伝達が終了する。
【0046】
また、荷物を巻き下げる際には、ロードホイル13に生じる負荷が小さく、圧縮型バネ36のバネ力により内回転軸23と外回転軸21が伴って回転するので、ラチェット爪30、30がラチェットホイル31と係合することがなく、ハンドホイル17には不要な負荷は発生しない。
【0047】
以上説明したように、本発明に係る補助モータ付きチェーンブロックは、ハンドホイル17に生じる負荷に応じてテーパホイル25が移動し、ラチェット爪30が補助モータ32により回転するラチェットホイル31と係合して回転力が伝えられる。ハンドホイル17に生じる負荷が減り、外回転軸21と内回転軸23の回転角度の差がなくなると、テーパホイル25は元の位置まで戻り、ラチェット爪30がラチェットホイル31から外れて補助モータ32による回転力が伝達されなくなる。よって、ハンドホイル17に不要な負荷が生じることが無く、素早く、僅かな力で荷物を吊り上げることが出来るとともに、電磁クラッチ等の高価な部品を使用しなくとも、安価で設定が容易であり、高い耐久性でハンドホイル17に生じる負荷の大きさに応じて回転補助が行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】通常の補助モータ付きチェーンブロックの構成図。
【図2】本発明に係る補助モータ付きチェーンブロックの全体斜視図。
【図3】本発明に係る補助モータ付きチェーンブロックの構成を示した斜視図。
【図4】円筒カムの形状を示した斜視図。
【図5】本発明に係る補助モータ付きチェーンブロックの構成を模式的に示した断面図。
【図6】回転力の補助を行っている状態を示した断面図。
【符号の説明】
【0049】
1、10…チェーンブロック,2…取り付け穴,3、32…補助モータ,4…駆動軸,11…荷物吊り上げフック,12…ロードチェーン,13…ロードホイル,14…取り付けフック,15…減速機,16…ハンドチェーン,17…ハンドホイル,18…カバー,20…回転力伝達機構,21…外回転軸,21A…バネ溝,22…ガイドピン,23…内回転軸,24…円筒カム,25…テーパホイル,25A…テーパ部,25B…カム取付け穴,26…トルク検出機構,26A…レバー部,26B…スライド抵抗,27…リンクレバー,28…カムフォロア,29…リンクレバープレート,30…ラチェット爪,31…ラチェットホイル,32…補助モータ,33…ガイド溝,34…ベアリング,35…タイミングベルト,36…圧縮型バネ,37…カムガイドピン,38…制御手段,39…電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動させる荷物に取り付けるロードチェーンが巻き掛けられたロードホイルと、
巻き掛けられたハンドチェーンを引くことにより回転し、前記ロードホイルを回転させるハンドホイルと、
前記ハンドホイルに取り付けられた外回転軸と、
前記外回転軸の内側に前記外回転軸に対して回転自在に設けられ、前記ロードホイルに自己の回転を伝達するようにされた内回転軸と、
前記外回転軸と前記内回転軸とを逆方向に回転するように前記外回転軸と前記内回転軸との間に取り付けられた圧縮型のバネと、
円筒形状を成し、一端を前記内回転軸の中心に固定され、円筒形状の軸方向に対して傾斜したガイド溝が円筒形状外周面上に形成された円筒カムと、
一方の面にテーパ面が形成され、前記ガイド溝と嵌合するカムガイドピンが設けられたカム取付け穴が回転中心に形成されたテーパホイルと、
前記外回転軸に設けられ、前記テーパホイルが軸方向に移動可能に取り付けられるガイドピンと、
一端に前記テーパ面に接触して移動するカムフォロアが取り付けられ、外周面に軸方向へ向って平行に形成された係合溝を備えたラチェットホイルの前記係合溝と係合する爪を備えたラチェット爪が他端に取り付けられたリンクレバーと、
前記円筒カムの他端が回転中心に固定され、前記リンクレバーを支持するリンクレバープレートと、
前記ラチェットホイルを回転させる補助モータと、
前記テーパホイルの前記ガイドピン軸方向の移動量を検出することにより前記外回転軸に生じている負荷を検出するトルク検出機構と、
前記トルク検出機構により検出された負荷の大きさに応じて前記補助モータの回転力を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする補助モータ付きチェーンブロック。
【請求項2】
前記トルク検出機構は、前記テーパホイル外周部に嵌合し該テーパホイルとともに移動するレバー部と、前記レバー部の位置に応じて抵抗値が変化するスライド抵抗を備えたことを特徴とする請求項1に記載の補助モータ付きチェーンブロック。
【請求項3】
前記円筒カムの前記ガイド溝に前記カムガイドピンが嵌合するように、前記テーパホイルの中心部に形成された前記カム取付け穴へ前記円筒カムが挿入され、前記外回転軸と前記内回転軸との間で回転角度の差が生じ前記外回転軸に対して前記円筒カムが回転した際、前記カムガイドピンが前記ガイド溝に沿って移動することにより前記テーパホイルが前記外回転軸に設けられた前記ガイドピンの軸方向に沿って移動することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の補助モータ付チェーンブロック。
【請求項4】
前記カムフォロアは前記テーパホイルが前記外回転軸に設けられた前記ガイドピンの軸方向に沿って移動することにより前記テーパホイルのテーパ面に沿って移動し、前記カムフォロアが移動することにより前記リンクレバーが移動して前記ラチェット爪が前記ラチェットホイルの前記係合溝と係合または前記係合溝から外れることを特徴とする請求項1、2、または3のいずれか1項に記載の補助モータ付チェーンブロック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−220953(P2009−220953A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−67410(P2008−67410)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【出願人】(000129367)株式会社キトー (101)